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明細書 :不織布の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5995955号 (P5995955)
登録日 平成28年9月2日(2016.9.2)
発行日 平成28年9月28日(2016.9.28)
発明の名称または考案の名称 不織布の製造方法
国際特許分類 D04H   1/425       (2012.01)
D04H   1/544       (2012.01)
D04H   1/4382      (2012.01)
D04H   1/485       (2012.01)
FI D04H 1/425
D04H 1/544
D04H 1/4382
D04H 1/485
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2014-502199 (P2014-502199)
出願日 平成25年2月25日(2013.2.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/054723
国際公開番号 WO2013/129298
国際公開日 平成25年9月6日(2013.9.6)
優先権出願番号 2012039703
優先日 平成24年2月27日(2012.2.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年2月16日(2016.2.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】藤井 透
【氏名】大窪 和也
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査官 【審査官】長谷川 大輔
参考文献・文献 特開2005-097816(JP,A)
特開2001-054905(JP,A)
特開2003-105203(JP,A)
調査した分野 D04H 1/00-18/04
特許請求の範囲 【請求項1】
竹繊維とポリプ口ピレン繊維とを混合比が重量比で竹繊維:ポリプ口ピレン= 50~80 : 50~ 20 となるように解繊混合する解繊混合工程と、竹繊維とポリプ口ピレン繊維とからなる解繊混合繊維に、ポリビニルアルコール水溶液を含浸させてポリビ二ルアルコールを竹繊維に担持させるポリビニルアルコール担持工程と、前記解繊混合工程後、あるいは、ポリビニルアルコール担持工程後に、ニードルパンチ加工するニードルパンチ工程と、上記各工程を経たのち、熱プレスする工程と、を備えている不織布の製造方法であって、ポリビニルアルコール担持工程完了後にニードルパンチ加工工程を実施することを特徴とする不織布の製造方法
【請求項2】
竹繊維は、繊維長が 25mm 以上 50mm 以下、繊維の断面の差し渡し最大長さ 0 . 05mm 以上 0 . 3mm 以下である請求項 1 に記載の不織布の製造方法
【請求項3】
ケナフ繊維とポリプ口ピレン繊維とを混合比が重量比でケナフ繊維:ポリプ口ピレン= 50 ~ 80 : 50 ~ 20 となるように解繊混合する解繊混合工程と、ケナフ繊維とポリプ口ピレン繊維とからなる解繊混合繊維に、ポリビニルアルコール水溶液を含浸させてポリビニルアルコールをケナフ繊維に担持させるポリビニルアルコール担持工程と、前記解繊混合工程後、あるいは、ポリビニルアルコール担持工程後に、ニードルパンチ加工するニードルパンチ工程と、上記各工程を経たのち、熱プレスする工程と、を備えている不織布の製造方法であって、ポリビニルアルコール担持工程完了後にニードルパンチ加工工程を実施することを特徴とする不織布の製造方法
【請求項4】
ケナフ繊維は、繊維長が 25mm 以上 50mm 以下、繊維の断面の差し渡し最大長さ 0 . 05mm 以上 0 . 3mm 以下である請求項3 に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
ニードルパンチのパンチング密度が 20 本/cm2以上 60 本/cm2 以下である請求項 1 ~請求項4のいずれかに記載の不織布の製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、天然植物繊維の有効利用を図ることができる不織布の製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
自動車用の内装材、例えば、リアパーティションや天井材には、不織布マットが使用されている。
この種の不織布マットとしては、CO2の排出量削減など環境に配慮して、現在、ケナフ、竹などの天然植物繊維と、ポリプロピレン(PP)繊維等のバインダーの役目を果たす熱可塑性樹脂繊維などからなる不織布マットが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
すなわち、世界的な自動車生産量の増加を受け、上記のように竹繊維などの安価で剛性のある天然植物繊維の使用も重要化している
また、上記のような自動車用の内装材等に用いられる不織布マットは、必要な強度を有するだけなく、高い剛性、耐熱性、断熱性、遮音性が要求されるとともに、軽量化が喫緊の課題である。
【0004】
そこで、上記不織布マットの剛性や強度を低下させることなく軽量化する方法として、ニードルパンチを用いる方法がある。
上記のようにニードルパンチ加工することによって、面外剛性と繊維相互の絡み合いが高まるため、ニードルパンチを用いない不織布に比べ、剛性や強度を低下させることなく、目付量(繊維量)を減らして軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-160742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、竹繊維のような剛直な天然繊維では、ニードルパンチ加工を施しても繊維相互間の絡み合いが不十分で、高い曲げ剛性が得られないという問題がある。しかも、上記のようなニードルパンチ加工による軽量化には限界がある。すなわち、目付量を下げすぎると、剛性は要求性能を満たさなくなる。
一方、剛性が低い天然植物繊維に代えて、カーボン繊維などの高剛性繊維を用いたのでは、コスト的に実用的でない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、竹繊維などの剛直な天然繊維を用いることができて環境にやさしく、しかも、軽量化のために繊維の目付け量を減らしても、十分な曲げ強度や曲げ剛性を確保することができる不織布の製造方法を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる不織布の製造方法は、竹繊維とポリプ口ピレン繊維とを混合比が重量比で竹繊維:ポリプ口ピレン= 50~80 : 50~ 20 となるように解繊混合する解繊混合工程と、竹繊維とポリプ口ピレン繊維とからなる解繊混合繊維に、ポリビニルアルコール水溶液を含浸させてポリビ二ルアルコールを竹繊維に担持させるポリビニルアルコール担持工程と、前記解繊混合工程後、あるいは、ポリビニルアルコール担持工程後に、ニードルパンチ加工するニードルパンチ工程と、上記各工程を経たのち、熱プレスする工程と、を備えている不織布の製造方法であって、ポリビニルアルコール担持工程完了後にニードルパンチ加工工程を実施することを特徴としている。
また、本発明にかかる不織布の製造方法は、ケナフ繊維とポリプ口ピレン繊維とを混合比が重量比でケナフ繊維:ポリプ口ピレン= 50 ~ 80 : 50 ~ 20 となるように解繊混合する解繊混合工程と、ケナフ繊維とポリプ口ピレン繊維とからなる解繊混合繊維に、ポリビニルアルコール水溶液を含浸させてポリビニルアルコールをケナフ繊維に担持させるポリビニルアルコール担持工程と、前記解繊混合工程後、あるいは、ポリビニルアルコール担持工程後に、ニードルパンチ加工するニードルパンチ工程と、上記各工程を経たのち、熱プレスする工程と、を備えている不織布の製造方法であって、ポリビニルアルコール担持工程完了後にニードルパンチ加工工程を実施することを特徴としている。

【0009】
本発明に用いられる天然植物繊維としては、特に限定されないが、例えば、ジュートやケナフ等の麻系繊維や綿系繊維、竹繊維などが挙げられる。また、その中でも、竹繊維は、他の天然植物繊維以上の強度や剛性を有し、また、国内外を問わず持続的再生産可能な天然資源である竹から取出すことで容易かつ安価に入手可能との利点を有するため、工業生産物の強化材として好適である。なお、ここでいう「竹繊維」には、竹の単繊維のほか、複数本の単繊維が集合してなる竹繊維束も含まれる。
【0010】
上記竹繊維の原料となる竹としては、特に限定されないが、例えば、孟宗竹、真竹、淡竹、女竹、慈竹などが挙げられ、低コスト化を図るのであれば、日本国内で手に入り易い孟宗竹、真竹が好適である。
【0011】
上記天然植物繊維の長さや縦断面積(太さ)は、本発明の目的を達成することができれば、特に限定されないが、竹繊維の場合、繊維長が25mm以上50mm以下、繊維の断面の差し渡し最大長さが0.05mm以上0.3mm以下のものを用いることが好ましい。
また、ケナフ繊維の場合、繊維長が25mm以上50mm以下、繊維の断面の差し渡し最大長さが0.05mm以上0.3mm以下のものを用いることが好ましい。
すなわち、繊維長が短すぎると、不織布化できず、長すぎると、結果的には折損し、短くなるばかりでなく、ニードルパンチの際、引っかかったり、熱可塑性樹脂繊維との絡みが悪くなる恐れがある。
一方、繊維の断面の差し渡し最大長さが短すぎると、すなわち、繊維が細すぎると、成形品の剛性が高まらず、差し渡し最大長さが長すぎると、すなわち、繊維が太すぎると、ニードルパンチの際、針が折れたり、熱可塑性樹脂繊維との絡みが悪くなるおそれがある。
【0013】
バインダーの役目を果たす熱可塑性樹脂繊維としては、特に限定されないが、天然植物繊維に対して絡みやすく、天然植物繊維に対して熱圧着しやすいものが好ましく、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレン被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などが挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂繊維は、単糸でも、撚り糸状になっていても構わない。
【0014】
本発明に用いられる水溶性高分子は、天然植物繊維に対して接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、カルボキシメチルセルロースなどの生分解性を備えたものが好ましく、中でもコストの削減可能性、耐水性に優れていることからポリビニルアルコールがさらに好適である。
上記ポリビニルアルコールの分子量およびケン化度は、特に限定されないが、霧吹きでも供給できる、入手が容易との理由から、濃度4%,20℃での粘度で25~50MPa・sとなる分子量のものが好ましく、ケン化度80以上のものが好ましい。このようなポリビニルアルコールとして、例えば、市販の日本酢ビ・ポバール株式会社製JF17Lが使用できる。
【0015】
本発明の不織布は、ニードルパンチ加工工程を経て形成されるが、パンチング密度(不織布の単位面積あたりに刺される針の数)を20本/cm2以上60本/cm2以下とすることが好ましい。
すなわち、密度が小さすぎると、面外、面内いずれの剛性についても向上が不十分となり、密度が大きすぎると、却って、面内剛性を損なう恐れがある。
【0016】
上記天然植物繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合比は、不織布の用途や繊維の種類、組み合わせによって適宜決定されるが、概ね重量比で天然植物繊維:熱可塑性樹脂繊維=50~80:50~20であることが好ましい。すなわち、天然植物繊維の混合割合が少なすぎると、十分な剛性が得られず、多すぎると軽量化に問題が生じるおそれがある
【0017】
なお、水溶性高分子水溶液をスプレー塗布する代わりに、不織布を水溶液中に浸漬してもよい。
また、水溶性高分子担持工程に続いて担持体を乾燥する乾燥工程を設けてよい。
【0018】
本発明の不織布の製造方法において、上記解繊混合工程は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体と、竹繊維とを解繊機やカード機に通して解繊混合する方法が挙げられる。
また、カード機を通して得られた解繊混合物であるウエブをさらにカード機に繰り返し通すようにしても構わない。
【0019】
上記カード機としては、通常の不織布の製造に用いられるカード機(例えば、池上機械(株)社製 商品名MDKS等)を用いることができる。解繊機としては、通常の不織布の製造に用いられる解繊機(例えば、池上機械(株)社製 商品名リサイクルブレーカRB-100等)を用いることができる。
【0020】
水溶性高分子担持工程において、水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、ポリビニルアルコール水溶液のポリビニルアルコールの濃度は、特に限定されないが、2重量%以上10重量%以下が好ましい。
すなわち、濃度が低すぎると、固着効果が不十分となり、濃度が高すぎると、粘度が高くなりすぎて解繊混合物内部まで十分に浸透しないおそれがある。また、スプレー塗布が難しくなる。
【0021】
乾燥工程を設けた場合、乾燥温度は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールを用いる場合、乾燥温度を50℃以上100℃以下にすることが好ましい。
乾燥時間は、繊維の種類や混合割合、水溶性高分子の種類やその水溶液濃度などによって適宜決定される。
【0022】
ニードルパンチ加工の時期は、前記解繊混合工程と水溶性高分子担持工程との間、及び、前記水溶性高分子担持後のいずれでも構わないが、前者が好ましい。
また、ニードルパンチ加工は、カード機で得られたウエブを単独で行ってもよいし、ウエブを複数枚重ねて行うようにしても構わない。
【0023】
本発明の不織布の用途としては、特に限定されないが、例えば、自動車の内装材、医療用装置の構造材、断熱性があることから住宅のパネル、建築家屋用の内装材等が挙げられる。なお、天然繊維には、難燃剤などを必要に応じて先に含浸させて難燃加工等を施しておいても構わない。
また、本発明の不織布は、必要に応じて、他の材料と積層されたサンドイッチ材としてもよい。
【0024】
上記サンドイッチ材としては、例えば、芯材の表面に本発明の不織布を積層したものが挙げられる。
上記芯材としては、特に限定されないが、本発明の不織布以外の公知の不織布や樹脂発泡体が挙げられる。
【0025】
上記樹脂発泡体としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリエチレン発泡体などが挙げられる。
本発明の不織布と上記樹脂発泡体との接合方法は、特に限定されないが、たとえば、接着剤を介在させる方法、熱融着させる方法などが挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の不織布は、上記のように、天然植物繊維と、熱可塑性樹脂繊維とを絡み合わせた状態に混合する工程と、熱プレス工程を経て得られる不織布であって、前記天然植物繊維に対して接着力を有する水溶性高分子が前記天然植物繊維に担持されて、繊維と繊維との交絡部が前記水溶性高分子によって固着されているとともに、ニードルパンチ加工されているので、竹繊維などの剛直な天然繊維を用いることができて環境にやさしく、しかも、軽量化のために繊維の目付け量を減らしても、十分な曲げ強度や曲げ剛性を確保することができる。
特に、竹繊維を用いることによって、国内外を問わず持続的再生産可能な天然資源である竹の有効利用が図れ、より環境にやさしく、コストの低いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の不織布に用いる竹繊維と、ポリプロピレン繊維の1例をあらわしている。
【図2】図1の竹繊維と、ポリプロピレン繊維とを解繊混合して得られる第1解繊混合物の1例をあらわしている。
【図3】図2の解繊混合物をカード機に通して得られる第2解繊混合物としてのウエブの1例をあらわしている。
【図4】本発明の不織布の製造方法のニードルパンチ加工工程を説明する図である。
【図5】本発明の不織布の製造方法の熱プレス成形工程を説明する図である。
【図6】実施例に用いたニードルパンチ装置のニードルを説明する図である。
【図7】4点曲げ試験方法を説明する図である。
【図8】実施例10及び比較例5で得られた不織布の曲げ強度を対比してあらわすグラフである。
【図9】実施例10及び比較例5で得られた不織布の曲げ剛性を対比してあらわすグラフである。
【図10】参考例1~4で得られた不織布の曲げ強度を対比してあらわすグラフである。
【図11】参考例1~4で得られた不織布の曲げ剛性を対比してあらわすグラフである。
【図12】参考例1及び参考例3で得られた不織布の4点曲げ試験時の試験片の変位に対する荷重の変化を対比してあらわすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。

【0029】
本発明の不織布は、例えば、以下の(1)~(4)の工程を経て得られる。
(1)解繊混合工程
例えば、孟宗竹、真竹、慈竹等の竹材を所望長さに切断するとともに、圧力を加えて破砕して得た破砕物をアルカリ処理して竹材の主成分であるリグニン、ヘミセルロースを除去した後、冷水で十分に洗浄し、剛直な竹繊維束を抽出する。
そして、得られた剛直な竹繊維束を、解繊機に通すことにより柔軟化させて、図1(a)に示す繊維長が25mm以上50mm以下、繊維の断面の差し渡し最大長さ0.05mm以上0.3mm以下である竹繊維1を得る。
この得られた竹繊維1と、図1(b)に示すその繊維長が10mm以上100mm以下、繊度が1dtex以上5dtex以下である綿状またはスライバー状をした熱可塑性樹脂繊維としてのポリプロピレン繊維2とを、重量比で50~80:50~20の割合で、解繊機(例えば、池上機械(株)社製 商品名リサイクルブレーカRB-100)に投入し、竹繊維1とポリプロピレン繊維2とが解繊混合された図2に示すような第1解繊混合物3を得る。
この第1解繊混合物3をカード機(例えば、池上機械(株)社製 商品名MDKS)に投入し、さらに解繊混合しながら、図3に示すような第2解繊混合物であるウエブ4を得る。
(2)水溶性高分子担持工程
水溶性高分子であるポリビニルアルコールの2重量%~10重量%濃度水溶液中に、上記ウエブ4を浸漬して、ウエブにポリビニルアルコール水溶液を含浸させたのち、電気炉などに入れて乾燥させて、図5に示すようなポリビニルアルコールが担持されたウエブ41を得る。
(3)ニードルパンチ加工工程
図5に示すようにポリビニルアルコールが担持されたウエブ41をニードルパンチ装置5の上型5aと下型5bとの間で挟みこんで、20本/cm2~60本/cm2の密度でニードルパンチして図6に示すようなニードルパンチされたウエブ42を得る。
(4)熱処理工程
図6に示すように、ニードルパンチされたウエブ42を熱プレス成形装置6のポリプロピレンの融点以上に加熱された上型6aと下型6bとの間で1~10MPaの圧力で数分間挟み込んでシート状の不織布〔図示せず〕を得る。

【0030】
このようにして得られる本発明の不織布は、不織布中の竹繊維の周囲にポリビニルアルコールが担持され、繊維と繊維との交絡部分がポリビニルアルコールによって固着した状態となっているので、剛性に優れたものとなる。
しかも、ニードルパンチ加工されているので、繊維と繊維とが、しっかりと絡み合うとともに、加熱プレス加工され、ポリプロピレン繊維が竹繊維と熱融着しており、曲げ強度に優れたものとなる。

【0031】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、熱処理工程を備えていたが、熱処理工程は無くても構わない。また、加熱プレス工程の後に乾燥工程を設けてもよい。

【0032】
以下に、本発明の具体的な実施例を、詳しく説明する。

【0033】
(実施例1)
同志社大学京田辺キャンパスに自生する孟宗竹を、プレス機で破砕し、破砕物を竹材の主成分であるリグニン、ヘミセルロースを除去するためにアルカリ処理した後、冷水で十分に洗浄し、竹繊維束を抽出した。
このようにして得られた剛直な竹繊維束を、解繊機に通すことにより柔軟化させて、竹繊維(繊維長200mm、断面の差し渡し最大長さ0.3mm)1を得た。
得られた竹繊維1と綿状のポリプロピレン繊維(チッソポリプロ繊維(株)製 繊維長50mm、繊度2.2dtex,)2とを重量比で7:3の割合にして上下に重ね合わせて解繊機にまず通し、図2に示すような第1解繊混合物3を得た。
得られた第1解繊混合物3をさらにカード機に通して目付け量800g/m2の図3に示すようなウエブ4を得た。
得られたウエブ4をポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF17L)の5%水溶液中に1分間浸漬したのち、炉内温度が50℃に保たれた電気炉中で3時間乾燥させて、図4に示すようなポリビニルアルコールが担持されたウエブ41を得た。
得られたウエブ41の切断面を拡大鏡で拡大して目視で確認したところ、ポリビニルアルコールが竹繊維のほぼ表面全体を覆った状態で担持され、繊維と繊維との交絡部が固着されていた。
そして、ポリビニルアルコールが担持されたウエブ41を図4に示すように、単位面積あたりのニードル密度が40本/cm2となるようにニードルを設けたニードルパンチ装置5の上型5aと下型5bとの間で挟み込んでニードルパンチ加工を行って、図5に示すパンチ済みのウエブ42を得た。
その後、図5に示すように、上記パンチ済みのウエブ42を熱プレス成形装置6の上型6aと下型6bとの間で190℃、0.5MPaの条件下にて、5分間プレス成形を行い、厚さ2.8mmのシート状不織布A1を得た。
なお、用いたニードルは、図5に示すような構造をしており、各部の寸法は以下の通りである。
B=0.6、J=0.1、M=1、T=2.1、G=6.3、H=5(単位:mm)

【0034】
(実施例2)
ニードルの密度を20本/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布B1を得た。

【0035】
(実施例3)
ニードルの密度を60本/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布C1を得た。

【0036】
(実施例4)
ポリビニルアルコールの担持に先立ちニードルパンチ加工を施したのち、ポリビニルアルコールを担持させて、担持後にニードルパンチ加工をせず、実施例1と同様にして熱プレス成形したい以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布D1を得た。

【0037】
(実施例5)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を15%とした以外は、実施例1と同様にしてシート状不織布E1を得た。

【0038】
(実施例6)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を17%とした以外は、実施例1と同様にしてシート状不織布F1を得た。

【0039】
(実施例7)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を3%とした以外は、実施例1と同様にしてシート状不織布G1を得た。

【0040】
(実施例8)
竹繊維とポリプロピレン繊維との混合比を8:2とした以外は、実施例1と同様にしてシート状不織布H1を得た。

【0041】
(比較例1)
プレス成形しなかった以外は、実施例1と同様にしてシート状不織布I1を得た。

【0042】
(比較例2)
ニードルパンチしなかった以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布J1を得た。

【0043】
(比較例3)
ポリビニルアルコールに浸漬しなかった以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布K1を得た。

【0044】
(実施例a)
実施例1と同様にして得たウエブ4を単位面積あたりのニードルの密度を40本/cmとして、ニードルパンチ加工を行って、パンチ済みのウエブを得た。
その後190℃、0.5MPaの条件下にて、5分間プレス成形を行い、厚さ5mmのシート状ウエブを得た。
得られたシート状ウエブをポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF17L)の5%水溶液中に1分間浸漬したのち、炉内温度が50℃に保たれた電気炉中で3時間乾燥させて、ポリビニルアルコールが担持されたシート状不織布L1を得た。

【0045】
〔曲げ強度及び曲げ剛性の評価〕
上記実施例1~実施例8,実施例a及び比較例1~3で得られたシート状不織布A1~L1について、それぞれ以下のとおり4点曲げ試験を行い、曲げ強度及び曲げ剛性を評価し、その結果を表1に示した。
〔4点曲げ試験〕
得られたシート状不織布A1~L1から卓上帯鋸機を用いて、図7に示すように、長さ100mm、幅30mmの試験片をそれぞれ切り出し、外側支点間距離81mm、内側の圧子間距離27mm、変位速度30mm/minの条件のもとで4点曲げ試験を行った。試験にはAUTOGRAPH万能試験機(定格100kN、島津製作所製)を用いた。反力及び試験片中央に生じる表面ひずみを、ロードセルおよび試験片表裏に貼り付けたひずみゲージを用いて測定した。各条件での測定回数は5とした。

【0046】
【表1】
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【0047】
上記表1に示すように、実施例1~8は、(従来の製法による)比較例に比べて、強度、曲げ剛性いずれも優れた特性を示しており、本発明で示した方法が有効であることを示している。

【0048】
(実施例9)
竹材として孟宗竹に代えて慈竹を用いて実施例1と同様にして竹繊維(繊維長100mm、差し渡し最大長さ0.25mm)を得た。
この竹繊維と実施例1と同様のポリプロピレン繊維2とを重量比4:1で配合した以外は、実施例1と同様にして目付け量1.3kg/mの不織布Mを得た。

【0049】
(比較例4)
ポリビニルアルコールに浸漬しなかった以外は、上記実施例9と同様にしてシート状不織布Nを得た。
上記実施例9及び比較例5で得られたシート状不織布M,Nについて、上記シート状不織布A1~L1と同様にして4点曲げ試験を行い、その結果から求めた曲げ強度を図8に対比して示し、曲げ剛性を図9に対比して示した。

【0050】
図8及び図9から、ポリビニルアルコールを用いた場合、ポリビニルアルコールを用いない場合に比べ、曲げ強度が40%アップし、曲げ剛性が280%アップすることがわかる。
その結果、本発明にようにポリビニルアルコールを用いるようにすれば、繊維の目付け量を20%減らしても、ポリビニルアルコールを用いない場合と同等の曲げ強度及び曲げ剛性の不織布が得られることがわかる。

【0051】
(参考例1)
実施例1と同様の竹繊維のみで実施例1と同様にしてウエブを得たのち、このウエブを2枚重ねてカード機にさらに通して不織布aを得た。

【0052】
(参考例2)
参考例1で得た不織布aをさらに上記実施例1と同様のニードルパンチ装置を用いてパンチング密度20本/cm2でパンチングして不織布bを得た。

【0053】
(参考例3)
参考例1で得た不織布aをさらに上記実施例1と同様のニードルパンチ装置を用いてパンチング密度40本/cm2でパンチングして不織布cを得た。

【0054】
(参考例4)
参考例1で得た不織布aをさらに上記実施例1と同様のニードルパンチ装置を用いてパンチング密度60本/cm2でニードルパンチして不織布dを得た。

【0055】
上記参考例1~4で得られた不織布a~dについて上記4点曲げ試験をそれぞれ行い、曲げ強度及び曲げ剛性を求め、その結果を図10及び図11に対比して示した。
図10及び図11から、ニードルパンチによって、曲げ強度は上がるが、曲げ剛性は少し低下することがわかる。

【0056】
また、上記不織布a及び不織布cについて、4点曲げ試験時の試験片の変位に対する荷重の変化を調べ、その結果を図12に示した。
図12から、ニードルパンチをしない場合、積層されたウエブ間に層間剥離が発生するため、変位が10mmを越えると、荷重がほぼ平衡状態となることがわかる。

【0057】
(実施例10)
上記実施例1の竹繊維1に代えてケナフ繊維(繊維長200mm、断面の差し渡し最大長さ0.3mm)1を用いた以外は、上記の実施例1と同様にして第1解繊混合物3を得た。
得られた第1解繊混合物3をさらにカード機に通して目付け量800g/m2の図3に示すようなウエブ4を得た。
得られたウエブ4をポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF17L)の5%水溶液中に1分間浸漬したのち、炉内温度が50℃に保たれた電気炉中で3時間乾燥させて、図4に示すようなポリビニルアルコールが担持されたウエブ41を得た。
得られたウエブ41の切断面を拡大鏡で拡大して目視で確認したところ、ポリビニルアルコールが竹繊維のほぼ表面全体を覆った状態で担持され、繊維と繊維との交絡部が固着されていた。
そして、ポリビニルアルコールが担持されたウエブ41を図4に示すように、単位面積あたりのニードル密度が40本/cm2となるようにニードルを設けたニードルパンチ装置5の上型5aと下型5bとの間で挟み込んでニードルパンチ加工を行って、図5に示すパンチ済みのウエブ42を得た。
その後、図5に示すように、上記パンチ済みのウエブ42を熱プレス成形装置6の上型6aと下型6bとの間で190℃、0.5MPaの条件下にて、5分間プレス成形を行い、厚さ2.8mmのシート状不織布A2を得た。
なお、用いたニードルは、図5に示すような構造をしており、各部の寸法は以下の通りである。
B=0.6、J=0.1、M=1、T=2.1、G=6.3、H=5(単位:mm)

【0058】
(実施例11)
ニードルの密度を20本/cm2とした以外は、上記実施例10と同様にしてシート状不織布B2を得た。

【0059】
(実施例12)
ニードルの密度を60本/cm2とした以外は、上記実施例10と同様にしてシート状不織布C2を得た。

【0060】
(実施例13)
ポリビニルアルコールの担持に先立ちニードルパンチ加工を施したのち、ポリビニルアルコールを担持させて、担持後にニードルパンチ加工をせず、実施例10と同様にして熱プレス成形したい以外は、上記実施例1と同様にしてシート状不織布D2を得た。

【0061】
(実施例14)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を15%とした以外は、実施例10と同様にしてシート状不織布E2を得た。

【0062】
(実施例15)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を17%とした以外は、実施例10と同様にしてシート状不織布F2を得た。

【0063】
(実施例16)
ポリビニルアルコール水溶液濃度を3%とした以外は、実施例10と同様にしてシート状不織布G2を得た。

【0064】
(実施例17)
竹繊維とポリプロピレン繊維との混合比を8:2とした以外は、実施例10と同様にしてシート状不織布H2を得た。

【0065】
(比較例5)
プレス成形しなかった以外は、実施例10と同様にしてシート状不織布I2を得た。

【0066】
(比較例6)
ニードルパンチしなかった以外は、上記実施例10と同様にしてシート状不織布J2を得た。

【0067】
(比較例7)
ポリビニルアルコールに浸漬しなかった以外は、上記実施例10と同様にしてシート状不織布K2を得た。

【0068】
(実施例b)
実施例10と同様にして得たウエブ4を単位面積あたりのニードルの密度を40本/cmとして、ニードルパンチ加工を行って、パンチ済みのウエブを得た。
その後190℃、0.5MPaの条件下にて、5分間プレス成形を行い、厚さ5mmのシート状ウエブを得た。
得られたシート状ウエブをポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF17L)の5%水溶液中に1分間浸漬したのち、炉内温度が50℃に保たれた電気炉中で3時間乾燥させて、ポリビニルアルコールが担持されたシート状不織布L2を得た。
上記実施例10~実施例17、実施例b及び比較例5~7で得られたシート状不織布A2~L2について、上記シート状不織布A1~L1と同様に4点曲げ試験を行い、曲げ強度及び曲げ剛性を評価し、その結果を表2に示した。

【0069】
【表2】
JP0005995955B2_000003t.gif

【0070】
上記表2に示すように、実施例10~17は、(従来の製法による)比較例に比べて、強度、曲げ剛性いずれも優れた特性を示しており、本発明で示した方法が有効であることを示している。
【符号の説明】
【0071】
1 竹繊維(天然繊維)
2 ポリプロピレン繊維(熱可塑性樹脂繊維)
3 第1解繊混合物
4 ウエブ(第2解繊混合物)
41 ポリビニルアルコールが担持されたウエブ
42 ニードルパンチされたウエブ
5 ニードルパンチ装置
5a 上型
5b 下型
6 熱プレス成形装置
6a 上型
6b 下型
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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