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明細書 :半導体発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6019541号 (P6019541)
登録日 平成28年10月14日(2016.10.14)
発行日 平成28年11月2日(2016.11.2)
発明の名称または考案の名称 半導体発光素子
国際特許分類 H01L  33/06        (2010.01)
H01L  33/16        (2010.01)
H01L  33/32        (2010.01)
FI H01L 33/06
H01L 33/16
H01L 33/32
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2014-502031 (P2014-502031)
出願日 平成25年2月26日(2013.2.26)
国際出願番号 PCT/JP2013/001113
国際公開番号 WO2013/128894
国際公開日 平成25年9月6日(2013.9.6)
優先権出願番号 2012039483
優先日 平成24年2月27日(2012.2.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年2月16日(2016.2.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】只友 一行
【氏名】岡田 成仁
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査官 【審査官】吉野 三寛
参考文献・文献 国際公開第2011/022724(WO,A1)
特開2004-119783(JP,A)
国際公開第2011/007637(WO,A1)
特開2012-15566(JP,A)
特開2010-263163(JP,A)
特開平11-233824(JP,A)
S. Pereira et al.,Structural and optical properties of InGaN/GaN layers close to the critical layer thickness, Appl. Phys. Lett.,2002年,Vol. 81, No. 7,p. 1207-1209
D. Holec et al.,Critical thickness calculations for InGaN/GaN,Journal of Crystal Growth,2007年,Vol. 303,p. 314-317
調査した分野 H01L 33/00-33/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
主面が{11-22}面のGaN層と、
上記GaN層の直上にInGa1-xN(0.01<x<0.05)がエピタキシャル成長して形成され、n型ドーパントを含有した厚さ0.2μm以上のInGaN層と、
上記InGaN層の直上にエピタキシャル成長して形成され、InGaNで形成された井戸層を含む紫色に発光するように構成された多重量子井戸層と、
を備え、
上記InGaN層は、上記GaN層との間の格子不整合による歪みが完全に又は部分的に緩和しており、
上記多重量子井戸層の発光波長に対する発光強度分布の半値全幅が40nm以下である半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1に記載された半導体発光素子において、
上記GaN層が設けられた基板をさらに備えた半導体発光素子。
【請求項8】
請求項7に記載された半導体発光素子において、
上記基板がサファイア基板である半導体発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子として、サファイア基板上にn型GaN層が設けられ、さらにその上にGaNとInGaNとが交互に積層されて構成された多重量子井戸層が設けられた構造は公知である。
【0003】
また、特許文献1には、サファイア基板上にバッファ層を介してn型GaN層が設けられ、そして、その上にノンドープのInGa1-aN(0.01≦a≦0.05)で形成された厚さ180nmの歪み緩和層が設けられ、さらにその上にGaNとInGaNとが交互に積層されて構成された多重量子井戸層が設けられ、サファイア基板と多重量子井戸層との熱膨張係数の差異により発生する歪みによる応力を歪み緩和層により緩和した半導体発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平11-233824号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、主面が非極性面又は半極性面のGaN層と、
上記GaN層の直上にInGa1-xN(0<x<0.1)がエピタキシャル成長して形成され、n型ドーパントを含有した厚さ0.2μm以上のInGaN層と、
上記InGaN層の直上にエピタキシャル成長して形成され、InGaNで形成された井戸層を含む多重量子井戸層と、
を備え、
上記InGaN層は、上記GaN層との間の格子不整合による歪みが完全に又は部分的に緩和している半導体発光素子である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子の断面図である。
【図2】(a)~(e)は実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の説明図である。
【図3】InGaN層のInの含有割合xとリファレンスを基準としたPL発光強度の倍率との関係を示すグラフである。
【図4】n型InGaN層の厚さと発光強度分布の半値全幅との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。

【0008】
(半導体発光素子)
図1は実施形態に係る半導体発光素子10を示す。本実施形態に係る半導体発光素子10は、例えば半導体レーザや発光ダイオードとして好適に用いられるものである。

【0009】
本実施形態に係る半導体発光素子10は、基板11上に、u-GaN層12、n型GaN層13、n型InGaN層14、多重量子井戸層15、p型AlGaN層16、及びp型GaN層17が順に積層され、そして、エッチングにより露出したn型InGaN層14上にn型電極18及びp型GaN層17上にp型電極19がそれぞれ設けられた構成を有する。

【0010】
ここで、基板11としては、例えば、典型的にはサファイア基板(Alのコランダム構造の単結晶基板)が挙げられ、その他、ZnO基板、SiC基板等が挙げられる。また、基板11は、基板表面にエッチング等により微細凹凸を形成した加工基板であってもよく、また、基板表面に酸化窒化ケイ素(SiO)或いは窒化アルミニウム(AlN)等を部分的に設けて微細凹凸を形成した加工基板であってもよい。基板11は、例えば、発光素子の状態では矩形板状に形成されており、縦及び横のそれぞれが200~1000μm、並びに厚さが50~300μmである。

【0011】
基板11の主面は、a面<{11-20}面>、c面<{0001}面>、m面<{1-100}面>、n面<{1-123}面>及びr面<{1-102}面>のいずれであってもよく、また、他の面方位の結晶面であってもよい。

【0012】
基板11の結晶成長面は、主面であってもよく、また、加工基板の凹凸の側面であってもよい。基板11の結晶成長面は、a面<{11-20}面>、c面<{0001}面>、m面<{1-100}面>、n面<{1-123}面>及びr面<{1-102}面>のいずれであってもよく、また、他の面方位の結晶面であってもよい。

【0013】
u-GaN層12は、基板11の結晶成長面からGaNがドーパントを含まずにエピタキシャル結晶成長して形成されている。u-GaN層12の厚さは例えば2~20μmである。

【0014】
u-GaN層12の主面は、非極性面又は半極性面であり、{11-22}面であってもよく、また、{10-11}面等の他の面方位の結晶面であってもよい。

【0015】
n型GaN層13はあっても無くてもよい。n型GaN層13は、u-GaN層12の直上に、GaNがn型のドーパントを含んでu-GaN層12と同一面方位にエピタキシャル結晶成長して形成されており、従って、主面が非極性面又は半極性面である。n型ドーパントとしては、例えば、Si、Ge等が挙げられる。n型ドーパントの濃度は例えば1.0×1017~1.0×1020/cmである。n型GaN層13の厚さは例えば2~10μmである。

【0016】
n型InGaN層14は、n型GaN層13がある場合はその直上に、無い場合はGaN層12の直上に、InGa1-xNがn型のドーパントを含んでn型GaN層13と同一面方位にエピタキシャル結晶成長して形成されており、従って、主面が非極性面又は半極性面である。

【0017】
n型InGaN層14を形成するInGa1-xNは、Inの含有割合が0<x<0.1であり、好ましくは0<x<0.05であり、より好ましくは0.01<x<0.05である。n型ドーパントとしては、n型GaN層13の場合と同様、例えば、Si、Ge等が挙げられる。n型ドーパントの濃度は例えば1.0×1017~1.0×1020/cmである。n型InGaN層14は、単一層で構成されていてもよく、また、n型ドーパントの種類や濃度の異なる複数の層で構成されていてもよい。

【0018】
n型InGaN層14の厚さは0.2μm以上であるが、好ましくは0.2~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmである。

【0019】
そして、以上の構成のn型InGaN層14は、n型GaN層13との間の格子不整合による歪みが完全に又は部分的に緩和している。ここで、本出願において、「完全緩和」とは、InGaN層が下地のGaN層に対して100%緩和していることを意味し、「部分緩和」とは、緩和率>0であると定義する。

【0020】
多重量子井戸層15は、n型InGaN層14の直上に、n型InGaN層14と同一面方位に半導体がエピタキシャル結晶成長して形成され、従って、主面が非極性面又は半極性面であり、そして、障壁層15aと井戸層15bの交互積層構造を有する。障壁層15a及び井戸層15bの層数は例えば3~15層である。多重量子井戸層15は発光層を構成し、その発光波長は、可視領域の波長であって、具体的にはInGaNの発光領域の360~640nmである。多重量子井戸層15は、紫色、青色、又は緑色に発光するように構成されていることが好ましく、紫色に発光するように構成されていることがより好ましい。ここで、紫色の発光波長域は380~450nm、青色の発光波長域は450~495nm、緑色の発光波長域は495~570nmである。

【0021】
井戸層15bはInGa1-yNで形成されており、yはxよりも大きいことが好ましい。井戸層15bの厚さは例えば1~20nmである。

【0022】
障壁層15aを形成する半導体は、例えばバンドギャップが井戸層15bよりも大きいGaN等が挙げられる。障壁層15aの厚さは例えば5~20nmである。

【0023】
p型AlGaN層16は、多重量子井戸層15の直上に、AlGa1-zNがp型のドーパントを含んで多重量子井戸層15と同一面方位にエピタキシャル結晶成長して形成されており、従って、主面が非極性面又は半極性面である。p型AlGaN層16を形成するAlGa1-zNは、Alの含有割合が例えば0.05<z<0.3である。p型ドーパントとしては、例えば、Mg、C等が挙げられる。p型ドーパントの場合、アクセプタ準位が深く、ドーパント濃度と自由正孔濃度とが大きく異なることから、ホール効果で測定される自由正孔濃度を含有量評価指標とするが、その自由正孔濃度は例えば1.0×1017~5×1018/cmである。p型AlGaN層16は、単一層で構成されていてもよく、また、p型ドーパントの種類や濃度の異なる複数の層で構成されていてもよい。p型AlGaN層16の厚さは例えば10~30nmである。

【0024】
p型GaN層17は、p型AlGaN層16の直上に、GaNがp型のドーパントを含んでp型AlGaN層16と同一面方位にエピタキシャル結晶成長して形成されており、従って、主面が非極性面又は半極性面である。p型ドーパントとしては、p型AlGaN層16の場合と同様、例えば、Mg、C等が挙げられる。ホール効果測定で測定される自由正孔濃度は例えば2.0×1017~10×1017/cmである。p型GaN層17は、単一層で構成されていてもよく、また、p型ドーパントの種類や濃度の異なる複数の層で構成されていてもよい。p型GaN層17の厚さは例えば50~200nmである。

【0025】
なお、p型層については、これらのp型AlGaN層16及びp型GaN層17に限定されるものではなく、InGaN/GaNの超格子構造等の特殊な構造であってもよい。

【0026】
n型電極18の構成電極材料としては、例えば、Cr/Au,Ti/Al、Ti/Al/Mo/Au、Hf/Au等の積層構造、或いは合金等が挙げられる。n型電極18の厚さは例えばTi/Al(10nm/500nm)である。

【0027】
p型電極19としては、例えば、Pd/Pt/Au、Ni/Au、Pd/Mo/Au等の積層構造、或いは合金等、又はITO(酸化インジウム錫)などの酸化物系透明導電材料が挙げられる。p型電極19の厚さは例えばITOの場合10~200nmである。p型電極19の上にはワイヤーボンディング用のパッド電極が必要であり、多くの場合はn型電極18と同じ材料系で作製される。

【0028】
ところで、主面が非極性面であるIII族窒化物半導体を用いた半導体発光素子では、その物性の利点から高い発光効率が期待されているが、実際には、多重量子井戸層に含まれるInGaNで形成された井戸層に欠陥が入りやすいといった構造的な欠点を有し、その物性の利点を十分に生かしきれていないという問題がある。

【0029】
これに対し、上記構成の本実施形態に係る半導体発光素子10では、n型GaN層13と多重量子井戸層15との間にInGaNの層が介設されており、そのため発光層での転位の発生が抑制される。また、n型ドーパントを含有する主面が非極性面又は半極性面のn型GaN層13と多重量子井戸層15との間に、InGa1-xN(0<x<0.1)がエピタキシャル成長して形成された、n型GaN層13と同型のn型ドーパントを含有した厚さ0.2μm以上のn型InGaN層14が介設され、しかも、そのn型InGaN層14がn型GaN層13との間の格子不整合による歪みが完全又は部分的に緩和し、そのため欠陥は貫通転位とならないため、n型InGaN層14の欠陥密度が下地のn型GaN層13と同等となることにより高い発光効率を得ることができる。具体的には、多重量子井戸層15の発光波長に対する発光強度分布の半値全幅が40nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましい。なお、n型GaN層13が無く、u-GaN層12と多重量子井戸層15との間にn型InGaN層14が介設された構成であっても同様の作用効果を得ることができる。

【0030】
(半導体発光素子の製造方法)
次に、本実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法について図2(a)~(e)に基づいて説明する。

【0031】
本実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法では、ウエハ11’上にu-GaN層12、n型GaN層13(Siドープ)、n型InGaN層14(Siドープ)、発光層である多重量子井戸層15(障壁層15a:GaN、井戸層15b:InGaN)、p型AlGaN層16(Mgドープ)、及びp型GaN層17(Mgドープ)の各半導体層を順に形成した後、エッチングによりn型GaN層13を露出させ、そして、n型InGaN層14及びp型GaN層17の上にそれぞれn型電極18及びp型電極19を形成する。

【0032】
<ウエハの準備>
ウエハ11’を準備する。ウエハ11’は、その直径によっても変わるが厚さが0.3~3.0mm、及び直径が50~300mmである。なお、直径50mmのウエハ11’の場合では、1枚の上に5000~12000個の半導体発光素子10を作り込むことができる。

【0033】
ウエハ11’の表面には、必要に応じて、エッチング、或いは、酸化窒化ケイ素(SiOxNy)の堆積により、サブミクロンオーダーの多数の微細凹凸を形成加工する。

【0034】
<半導体層の形成>
以下の各半導体層の形成方法としては、有機金属気相成長法(MOVPE法)、ハロゲン気相成長法(VPE法)、分子線エピタキシ法(MBE法)、ハイドライド気相成長法(HVPE法)等が挙げられ、これらのうち有機金属気相成長法が最も一般的である。以下では、有機金属気相成長法を利用した各半導体層の形成方法について説明する。

【0035】
各半導体層の形成に用いるMOVPE装置は、各々、電子制御される、ウエハ搬送系、ウエハ加熱系、ガス供給系、及びガス排気系で構成されている。ウエハ加熱系は、熱電対及び抵抗加熱ヒータ、その上に設けられた炭素製或いはSiC製のサセプタで構成されている。そして、MOVPE装置は、ウエハ加熱系において、搬送される石英トレイのサセプタの上にセットされたウエハ11’上に反応ガスにより半導体層を結晶成長させるように構成されている。

【0036】
-u-GaN層-
上記MOVPE装置を用いて、ウエハ11’を石英トレイ上にセットした後、ウエハ11’を1050~1150℃に加熱すると共に反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内に設置したフローチャネル内にキャリアガスとしてHを流通させ、その状態を数分間保持することによりウエハ11’をサーマルクリーニングする。

【0037】
次いで、ウエハ11’の温度を1050~1150℃とすると共に反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスHを10L/min程度の流量(以下、ガス流量は基準状態(0℃、1気圧)での値とする。)で流通させながら、そこに反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給流量が0.1~5L/min、及び50~150μmol/minとなるように流す。

【0038】
このとき、ウエハ11’の結晶成長面を起点として、その上にアンドープのGaNがエピタキシャル結晶成長し、図2(a)に示すように、ウエハ11’上にu-GaN層12が構成される。

【0039】
なお、u-GaN層12を形成する前に低温バッファ層を形成する場合には、ウエハ11’の温度を400~500℃としてGaNを結晶成長させる。

【0040】
-n型GaN層-
反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスHを5~15L/minの流量で流通させながら、そこに反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、III族元素供給源1(TMG)、及びn型ドーパント供給源(SiH)を、それぞれの供給流量が0.1~5L/min、50~150μmol/min、及び1~5×10-3μmol/minとなるように流す。

【0041】
このとき、図2(b)に示すように、u-GaN層12の直上にn型GaNがエピタキシャル結晶成長してn型GaN層13が形成される。

【0042】
-n型InGaN層-
ウエハ11’の温度を600~850℃程度とすると共に反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスNを流通させながら、そこに反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、III族元素供給源1(TMG)、III族元素供給源2(TMI)、及びn型ドーパント供給源(SiH)を供給する。

【0043】
このとき、図2(c)に示すように、n型GaN層13の直上にn型InGaNがエピタキシャル結晶成長してn型InGaN層14が形成される。

【0044】
-多重量子井戸層-
ウエハ11’の温度を600~850℃程度とすると共に反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスN2を流通させながら、そこに反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給流量を流す。このとき、n型InGaN層14の直上にGaNがエピタキシャル結晶成長して障壁層15aが形成される。

【0045】
次いで、V族元素供給源(NH)、III族元素供給源1(TMG)、及びIII族元素供給源2(TMI)を流す。このとき、GaNの障壁層15aの直上にInGaNがエピタキシャル結晶成長して井戸層15bが形成される。

【0046】
そして、上記と同様の操作を交互に繰り返し、図2(d)に示すように、障壁層15aと井戸層15bとを交互に形成することにより多重量子井戸層15を構成する。なお、多重量子井戸層15の発光波長は井戸層15bの井戸幅(井戸層15bの厚み)とInN混晶比に依存し、InN混晶比が高いほど発光波長は長波長となる。InN混晶比はTMIのモル流量/(TMGのモル流量+TMIのモル流量)、V/III比と成長温度によって決定される。

【0047】
-p型AlGaN層及びp型GaN層-
ウエハ11’の温度を800~1100℃とすると共に反応容器内の圧力を10k~100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスのHを流通させながら、そこに反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、III族元素供給源1(TMG)、III族元素供給源3(TMA)、及びp型ドーパント供給源(CpMg)を流す。

【0048】
このとき、図2(e)に示すように、多重量子井戸層15の直上にp型AlGaNがエピタキシャル結晶成長してp型AlGaN層16が形成される。

【0049】
引き続き、反応ガスとして、V族元素供給源(NH)、III族元素供給源1(TMG)、及びp型ドーパント供給源(CpMg)を流す。

【0050】
このとき、図2(e)に示すように、p型AlGaN層16の直上にp型GaNがエピタキシャル結晶成長してp型GaN層17が形成される。

【0051】
<電極の形成>
半導体層を積層形成したウエハ11’を部分的に反応性イオンエッチングすることによりn型GaN層13を露出させ、真空蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法によりn型InGaN層14上にn型電極18を形成する。また、p型GaN層17上にp型電極19を形成する。なお、p型GaN層17とp型電極19との間にはITO等の透明導電膜を介設させてもよい。

【0052】
最後に、ウエハ11’を劈開することにより個々の半導体発光素子10に分断する。
【実施例】
【0053】
(試験評価1)
上記実施形態と同様の構成の半導体発光素子を作製した。
【実施例】
【0054】
基板には、表面に微細凹凸を形成した主面がr面であるサファイア基板の加工基板を用いた。そして、サファイア基板上に、低温バッファ層を介して主面が{11-22}面であるu-GaN層を結晶成長させ、その上に、半導体をエピタキシャル結晶成長させてn型GaN層、n型InGaN層、多重量子井戸層、p型AlGaN層、及びp型GaN層を順に積層形成した。従って、いずれの層も主面が{11-22}面である。
【実施例】
【0055】
半導体発光素子として、多重量子井戸層の発光波長が420nm(紫色)であるものについて、n型InGaN層におけるInの含有割合xを変量した複数種を作製した。同様に、発光波長が450nm(青色)であるもの及び発光波長が520nm(緑色)であるもののそれぞれについても、n型InGaN層におけるInの含有割合xを変量した複数種を作製した。なお、リファレンス用のn型InGaN層を設けていない半導体発光素子も作製した。
【実施例】
【0056】
そして、各半導体発光素子について、PL発光強度を測定し、リファレンスを基準としたPL発光強度の倍率を求めた。
【実施例】
【0057】
図3は、InGaN層のInの含有割合xとリファレンスを基準としたPL発光強度の倍率との関係を示す。
【実施例】
【0058】
これによれば、n型InGaN層におけるInの含有割合xが0<x<0.1の範囲において、PL発光強度の倍率は1よりも大きく、従って、高い発光効率を得ることができることが分かる。特に、0.01<x<0.05の範囲において、また、紫色の発光をするものにおいて、顕著に高い発光効率が得られることが分かる。
【実施例】
【0059】
また、各半導体発光素子について逆格子空間マッピング測定を行ったところ、少なくともn型InGaN層におけるInの含有割合xが0<x<0.15の範囲にあるものについて、n型InGaN層は、n型GaN層との間の格子不整合による歪みが完全に又は部分的に緩和していることが確認された。
【実施例】
【0060】
(試験評価2)
試験評価1と同様にして、n型InGaN層の厚さを変量した青緑色を発光する同種の半導体発光素子を作製した。なお、Inの含有割合x=0.02とした。また、リファレンス用のn型InGaN層を設けていない半導体発光素子も作製した。そして、各半導体発光素子について、20mAの電流注入時における多重量子井戸層の発光波長に対する発光強度分布の半値全幅を求めた。
【実施例】
【0061】
図4は、n型InGaN層の厚さと発光強度分布の半値全幅との関係を示す。
【実施例】
【0062】
図4によれば、リファレンス用の半導体発光素子では、発光強度分布の半値全幅が40nm強であるのに対し(図4の白丸)、n型InGaN層の厚さが0.2μm以上では、発光強度分布の半値全幅が40nm以下であり、0.3μm以上では、発光強度分布の半値全幅が35nm以下、1.0μmでは約30nmであることが分かる。つまり、これは、n型InGaN層の厚さが0.2μm以上であることにより、半導体発光素子の高い発光効率を得ることができることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は半導体発光素子について有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 半導体発光素子
11 基板
11’ ウエハ
12 u-GaN層
13 n型GaN層
14 n型InGaN層
15 多重量子井戸層
15a 障壁層
15b 井戸層
16 p型AlGaN層
17 p型GaN層
18 n型電極
19 p型電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3