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明細書 :発光素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004404号 (P6004404)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月12日(2016.10.12)
発明の名称または考案の名称 発光素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  33/16        (2010.01)
H01L  33/28        (2010.01)
H01L  33/32        (2010.01)
FI H01L 33/16
H01L 33/28
H01L 33/32
請求項の数または発明の数 15
全頁数 14
出願番号 特願2014-500969 (P2014-500969)
出願日 平成25年2月25日(2013.2.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/054702
国際公開番号 WO2013/125719
国際公開日 平成25年8月29日(2013.8.29)
優先権出願番号 2012037567
優先日 平成24年2月23日(2012.2.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年12月11日(2015.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】村井 友和
参考文献・文献 特開2008-244387(JP,A)
特開2000-349333(JP,A)
調査した分野 H01L 33/00-33/64
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子であって、
前記n型層、前記p型層、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、複数の種類の微粒子が混合されて焼結された微粒子層を具備し、前記複数の種類の微粒子には、少なくとも平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とし発光のピーク波長がそれぞれ異なる複数の種類のZnO微粒子が含まれることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子であって、
前記n型層、前記p型層、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、複数の種類の微粒子が混合されて焼結された微粒子層を具備し、前記複数の種類の微粒子には、少なくとも平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子とが含まれることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
前記微粒子層は前記n型層及び/又は前記p型層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記微粒子層は、前記n型層と前記p型層の間に挿入されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項5】
前記微粒子層は前記p型層であり、前記ZnO微粒子は窒素ドープされたp型ZnO微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項6】
前記微粒子層は、前記複数の種類の微粒子がバインダーと共に焼結されて構成されたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記基板上に、導電層を介して、前記n型層と前記p型層とが形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記基板及び前記導電層は前記微粒子層が発する光に対して透明であることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子の製造方法であって、
前記n型層を形成する工程、前記p型層を形成する工程、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層を形成する工程として、平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とし発光のピーク波長がそれぞれ異なる複数の種類のZnO微粒子が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が溶媒に混合された塗布液を塗布した後に焼成して前記微粒子が焼結された微粒子層を形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項10】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子の製造方法であって、
前記n型層を形成する工程、前記p型層を形成する工程、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層を形成する工程として
平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子とが少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が溶媒に混合された塗布液を塗布した後に焼成して前記微粒子が焼結された微粒子層を形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記微粒子層は前記n型層及び/又は前記p型層であり、前記微粒子層形成工程によって前記n型層及び/又は前記p型層を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記微粒子層形成工程によって、前記微粒子層を前記n型層と前記p型層の間に形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記微粒子層は前記p型層であり、前記ZnO微粒子は窒素ドープされたp型ZnO微粒子であることを特徴とする請求項9又は10に記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記p型ZnO微粒子を製造することを特徴とする請求項13に記載の発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記基板上に、導電層及び前記n型層とをスパッタリング法によって順次形成する下地工程を具備し、
当該下地工程の後に、前記微粒子層形成工程によって前記p型層を前記n型層の上に形成することを特徴とする請求項13又は14に記載の発光素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛を用いた発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より広く使用されている蛍光灯を置換する発光素子として、より低消費電力でありより長寿命であるLED(半導体のpn接合を利用した発光ダイオード)を用いたものが使用されている。また、LEDよりも大面積で面発光をする有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子も知られている。
【0003】
一般に、このような発光素子による発光は単色あるいは準単色であり、その波長は発光素子を構成する材料で決定される。例えば、この波長は、LEDの場合にはLEDを構成する半導体の禁制帯幅で決まり、有機EL素子においても、EL素子を構成する材料の励起子発光の波長が発光波長となる。このため、所望の波長の発光を得るためには、何らかの工夫が必要となる。また、単色でない光(白色)を得ることも容易ではなく、例えば白色LEDにおいては、青色(単色)を発するLED素子と、この光を吸収して黄色の発光をする蛍光体とが同時に用いられ、LED素子が発する青色光と蛍光体が発する黄色光が混合された疑似白色光を発する。
【0004】
このような発光素子に対しては、これをより低コストで製造できることが要求されており、特に大面積の面発光素子において、この点は重要となる。しかしながら、例えばLED素子は非常に高強度であるが、その材料は非常に高価な上に、大面積化が極めて困難である。これに対して、EL素子はLED素子よりは大面積化が容易であるが、更なる低コスト化が必要とされている。
【0005】
酸化亜鉛(ZnO)は、発光素子材料として知られるものの中では特に安価で、大面積化も可能であり、かつ人体に対する毒性も低いために有望な材料である。しかしながら、その禁制帯幅は波長370nmの紫外線に対応するために、発光をこれよりも長波長とする(可視光とする)ための構成が提案されている。例えば、特許文献1には、ZnOを混晶ZnSe1-xやZnS1-xとし、混晶比xを制御することによって禁制帯幅を変えることによって赤色や緑色の発光をさせる、あるいはこれらを混在させた構成が記載されている。
【0006】
また、希土類(Eu)やアルカリ金属(Li)を不純物としてドープしたZnOの焼結体からの蛍光波長が赤色となることを利用することが特許文献2に記載されている。
【0007】
この構造、製造方法によれば、安価なZnOを用いて可視光域の発光をする発光素子を得ることができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-16656号公報
【特許文献2】特開平6-84591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、特許文献1に記載の技術においては、SeやSが大量に混合された混晶を形成することが必要となる。特に大面積の発光素子を得る場合において、このような混晶材料を大面積で均一に得ることは困難であり、特にこれを安価に得ることは困難であった。また、特にSeについては、人体に対する毒性が問題になるため、結局その処理に手間がかかり、特にその製造を低コストで行うことは困難であった。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術において添加されるEuやLiは非常に高価である。このため、この技術を用いて安価に発光素子を製造することも困難であった。
【0011】
更に、どちらの場合においても、n型のZnO層を形成することは比較的容易であるが、p型のZnO層を形成することは困難であった。このため、ZnOのpn接合を用いた発光素子を製造することは困難であった。
【0012】
すなわち、簡易な構造、製造方法で白色光を発する安価な発光素子を得ることは困難であった。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の発光素子は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子であって、前記n型層、前記p型層、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、複数の種類の微粒子が混合されて焼結された微粒子層を具備し、前記複数の種類の微粒子には、少なくとも平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とし発光のピーク波長がそれぞれ異なる複数の種類のZnO微粒子が含まれることを特徴とする。
本発明の発光素子は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子であって、前記n型層、前記p型層、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、複数の種類の微粒子が混合されて焼結された微粒子層を具備し、前記複数の種類の微粒子には、少なくとも平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子とが含まれることを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記微粒子層は前記n型層及び/又は前記p型層であることを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記微粒子層は、前記n型層と前記p型層の間に挿入されたことを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記微粒子層は前記p型層であり、前記ZnO微粒子は窒素ドープされたp型ZnO微粒子であることを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記微粒子層は、前記複数の種類の微粒子がバインダーと共に焼結されて構成されたことを特徴とする。
本発明の発光素子は、前記基板上に、導電層を介して、前記n型層と前記p型層とが形成されたことを特徴とする。
本発明の発光素子において、前記基板及び前記導電層は前記微粒子層が発する光に対して透明であることを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子の製造方法であって、前記n型層を形成する工程、前記p型層を形成する工程、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層を形成する工程として、平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とし発光のピーク波長がそれぞれ異なる複数の種類のZnO微粒子が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が溶媒に混合された塗布液を塗布した後に焼成して前記微粒子が焼結された微粒子層を形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが積層構造中に形成された構成を具備する発光素子の製造方法であって、前記n型層を形成する工程、前記p型層を形成する工程、又は前記n型層と前記p型層の間に挿入された層を形成する工程として、平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子とが少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が溶媒に混合された塗布液を塗布した後に焼成して前記微粒子が焼結された微粒子層を形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法において、前記微粒子層は前記n型層及び/又は前記p型層であり、前記微粒子層形成工程によって前記n型層及び/又は前記p型層を形成することを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法は、前記微粒子層形成工程によって、前記微粒子層を前記n型層と前記p型層の間に形成することを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法において、前記微粒子層は前記p型層であり、前記ZnO微粒子は窒素ドープされたp型ZnO微粒子であることを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法は、減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記p型ZnO微粒子を製造することを特徴とする。
本発明の発光素子の製造方法は、前記基板上に、導電層及び前記n型層とをスパッタリング法によって順次形成する下地工程を具備し、当該下地工程の後に、前記微粒子層形成工程によって前記p型層を前記n型層の上に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されているので、ZnOを用いて大面積の発光素子を安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態となる発光素子の断面図である。
【図2】p型ZnO微粒子の粒径分布を実測した結果である。
【図3】p型ZnO微粒子においてアーク電流と窒素濃度を実測した結果である。
【図4】p型ZnO微粒子において熱処理に際して脱離する酸素、窒素、水素濃度を測定した結果である。
【図5】p型ZnO微粒子の第1の例の発光スペクトルを測定した結果である。
【図6】p型ZnO微粒子の第2の例の発光スペクトルを測定した結果である。
【図7】p型ZnO微粒子の第3の例の発光スペクトルを測定した結果である。
【図8】ZnO微粒子とGaN微粒子が混在する際のバンド図を模式的に示す図である。
【図9】本発明の実施の形態となる発光素子において電流-電圧特性を実測した結果である。
【図10】本発明の実施の形態となる発光素子の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発光素子に使用される主材料(発光をする主材料)は、酸化亜鉛(ZnO)である。本発明の実施の形態に係る発光素子は、面発光をする発光素子として使用することができる。その断面図を図1に示す。

【0018】
この発光素子10においては、透明な基板11の上にZnO系透明導電膜(導電層)12が形成され、その上にn型ZnO系薄膜(n型層)13が順次形成されている。このn型ZnO系薄膜13の上に、p型層となる微粒子層14が形成されている。図1中の左側においてはn型ZnO系薄膜13等は部分的に除去され、その上にn側電極15が形成されている。また、微粒子層14の上にはp側電極16が形成されている。n側電極15とp側電極16間に図示されるように通電が行われることによって主に微粒子層14が発光してこの発光素子10は発光する。この際、図1中の矢印で示されるように、この発光を基板11を通して下側に取り出すことが可能である。また、この発光は微粒子層14の全域にわたるため、この発光は面発光となる。この構成は、特開2008-244387号公報に記載の発光素子と類似しているが、特に微粒子層14が大きく異なる。

【0019】
透明な基板11として、例えば、ガラス基板等を用いることができる。基板11の上にZnO系透明導電膜12とn型ZnO系薄膜13を順次成膜することができることが必要となる。ただし、これらの成膜は例えばマグネトロンスパッタリング法(スパッタリング法)等で行うことができ、この場合には成膜温度は低いため、透明な樹脂基板等を基板11として使用することも可能である。

【0020】
ZnO系透明導電膜12としては、例えばGaドープZnO膜を使用することができる。ここでは、ZnOにGaが多量にドープされることによって導電性が付与され、かつ可視光に対しては高い透過率を具備する。その厚さは、電気抵抗、可視光透過率やこの上におけるn側電極15の成膜のしやすさの観点から、例えば5%ガリウムドープZnO膜を用いる場合には、50~200nmとすることができる。

【0021】
また、ZnO系透明導電膜12に入れる不純物として、Ga以外のIII族元素(例えばAl)や、VII族元素(ハロゲン:Cl等)を用いてもよい。また、これらの不純物を含んだMgZn1-xO混晶薄膜(ただしX=0~0.3)を用いることもできる。この場合、Mgの添加によりZnO系透明導電膜12の吸収端が短波長側にシフトするため、微粒子層14からの発光のZnO系透明導電膜12による吸収を小さくすることができる。基板11上へのZnO系透明導電膜12の形成方法は、マグネトロンスパッタリング法やCVD法を用いることができる。

【0022】
n型ZnO系薄膜13としては、例えばGaやAlをドープしたZnOを用いることができる。ただし、そのドープ量はZnO系透明導電膜12よりも小さい。ただし、n型ZnO系薄膜13は単結晶である必要はない。n型ZnO系薄膜13としては、単結晶、多結晶、非晶質、微粒子あるいはこれらを複合したもののうちのいずれをも用いることができる。

【0023】
このため、n型ZnO系薄膜13の形成方法は、マグネトロンスパッタリング法やCVD法等を使用することができる。この場合、基板11上にZnO系透明導電膜12とn型ZnO系薄膜13を連続して形成することも可能である。

【0024】
また、ZnO微粒子とMgO微粒子を混合した粉末をZnO系透明導電膜12上に塗布し、その後焼結してn型MgZn1-xO混晶薄膜(ただしX=0~0.3)をn型ZnO系薄膜13として用いることもできる。ここでX=0の場合はn型ZnOとなる。

【0025】
微粒子層14は、この発光素子10におけるp型の発光層となる層であり、複数の種類の微粒子が焼結されて構成される。ここで、複数の種類の微粒子とは、主成分となる材料が異なる、あるいは製造条件が異なる微粒子に対応する。このうちの少なくとも1種類はZnO微粒子である。微粒子層14の詳細については後述する。

【0026】
n側電極15とp側電極16は、共に電気抵抗の低い金属で構成され、その材料としては、例えば金、アルミニウム等、あるいはこれらを含む積層構造を用いることができる。これらには図1に示されるように電圧が印加される端子が接続されるため、その厚さは、この接続が可能な程度に適宜設定される。また、基板11やZnO系透明導電膜12とは異なり、可視光の透過性は必要ない。

【0027】
図1の構造においては、n型ZnO系薄膜13と微粒子層14との間でpn接合が形成される。このうち、特に微粒子層14を構成するZnO微粒子の結晶性を高くすることができるため、n側電極15とp側電極16間に、このpn接合における順方向の電圧を印加することにより、微粒子層14を発光させることができる。後述するように、この発光波長は適宜設定することが可能であり、多色の発光も可能であるため、多色の発光を混合した白色の発光も可能である。

【0028】
以下に、微粒子層14の詳細について説明する。この層は、ZnO微粒子の単粒子層がn型ZnO系薄膜13上に塗布等の方法によって形成され、その後で焼成されることによって形成される。ここでは、この層を形成する粒子として、第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142の2種類があり、これらはランダムに分散している。

【0029】
ZnO微粒子とは、平均粒径が10~500nm程度のp型ZnOで構成された微粒子であり、バルクのZnOとは異なる性質をもつ。このため、バルクのZnOよりも長波長の発光をさせることが可能である。その製造方法は、例えば特開2005-60145号公報に記載されている。この微粒子は、ガス中蒸発法で製造することができる。ここでは、その図1に示されるように、チャンバー内において亜鉛(Zn)で構成されたターゲットが設置される。チャンバー内を酸素を含む減圧雰囲気とした中で、このターゲットと近接して真空中に設置された電極とこのターゲット間でアーク放電を発生させることによって、ターゲット表面からZnを蒸発させる。蒸発したZnは、雰囲気中の酸素によって酸化されてZnOとなり、チャンバーの内壁に粒子となって付着し、これがZnO微粒子となる。ターゲットの原料としては、濃度の高くない亜鉛インゴット、たとえば4N(純度99.99%)を用いることができる。このような純度の低い安価なインゴットを用いた場合であっても、ZnO微粒子においては、高品質なp型ZnO結晶が得られる。微粒子の平均粒径は、例えばJISZ8901に記載の方法で測定される。

【0030】
具体的には、チャンバー内の雰囲気として、例えば酸素ガスと窒素ガスを空気と同様の4:1のモル比としたものを用いることができる。このガス雰囲気を、アーク放電を生じやすい程度の圧力まで減圧する。これにより、Znを酸化させてZnOとすると同時に、アクセプタとなる窒素(N)を同時に微粒子中にドーピングすることができる。このため、形成されたZnO微粒子をp型とすることができる。また、特開2005-60145号公報に記載されたように、この微粒子内のZnOの結晶性は高い。このため、このp型ZnO微粒子の発光効率を高くすることができる。

【0031】
この際、ZnO微粒子の特性(粒子径、導電型、キャリア濃度等)は、雰囲気のガス成分、圧力、アーク放電の電流値等によって制御することが可能である。この際、ZnO微粒子の発光のピーク波長を調整することも可能である。例えば、微粒子中における点欠陥が多く発生した場合には、青色に近い発光をし、微粒子中における酸素欠損が多く発生した場合には、緑色に近い発光をする。このため、第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142においては、このピーク波長が異なる設定とされる。

【0032】
微粒子層14は、単層、すなわち、第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142が最密に一層だけ充填されて焼結されている。このため、微粒子層14の厚さはこれらの微粒子の粒子径とほぼ等しい。ただし、これらの粒子は総て同一形状でなく、径にもばらつきが生じているのが通常であるため、おおよそ単層とみなせればよい。なお、単層(または単層と見なせる層)であるほうが欠陥が少なくなるため好適な発光特性を有する、また、面内で均一な発光強度が得られる。ただし、これらの微粒子同士は必ずしも最密に接合している必要はなく、離散的に分布していても、n型ZnO系薄膜13と焼結されていればpn接合として働く。また、微粒子層14の膜厚が均一で発光強度が均一である限りにおいて、微粒子層14を上記の微粒子の2層以上の構造とすることもできる。この場合においては、各層において第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142が混合分散された構成とすることが好ましい。

【0033】
このように、微粒子層14を第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142で構成することにより、両者の発する光を混合して発することができる。例えば、第1のZnO微粒子141の発光のピークを青色、第2のZnO微粒子142の発光のピークを黄色とすれば、両者が混合され、微粒子層14は疑似白色の発光をすることができる。

【0034】
次に、ZnO微粒子の発光特性を具体的に調べた結果について説明する。一般に、微粒子はバルク結晶とは異なる特性を示す場合が多く、この特性は、例えば粒径によっても異なる。前記の通り、特開2005-60145号公報に記載されたようなZnO微粒子においては高い結晶性が得られるものの、その点欠陥によって電気特性や発光特性(特に発光のピーク波長)が影響を受ける。特に、欠陥が存在しない場合においては、ZnOは、その禁制帯幅に対応した紫外線の発光をするのに対して、こうした点欠陥が介在した発光においては、ピーク波長がこれよりも長い可視光を発光させることが可能である。すなわち、安価なZnOを用いて可視光域の発光をさせることが可能である。

【0035】
例えば、ZnO結晶における酸素空孔が多い場合には、520nm程度のピーク波長の発光(緑色の発光)をし、格子間酸素が多い場合には、670nm程度のピーク波長の発光(赤色の発光)をする。これらは酸素量の化学量論組成からのずれ量によって制御することができ、例えば、前者はZnO微粒子を高温で熱処理することによって酸素欠損を生じさせることによって実現することができる。また、後者は、ガス中蒸発法におけるアーク放電の際の雰囲気中の酸素組成を増やすことによって実現することができる。

【0036】
また、前記のガス中蒸発法によってZnO微粒子が得られた後で、更にボールミル等を用いてこの微粒子を粉砕して、平均粒径を小さくすることもできる。これによっても、発光のピーク波長やそのスペクトルの広がりを変えることが可能である。図2は、特開2005-60145号公報に記載されたようにガス中蒸発法によって得られたZnO微粒子を更に粉砕した微粒子の平均粒径分布を測定した結果である。

【0037】
また、このZnO微粒子がガス中蒸発法で形成される際には、雰囲気中の窒素が導入されてアクセプタとなる。図3は、アーク放電の電流値とZnO微粒子中の窒素濃度の関係をHORIBA製EMGA930を用いて測定した結果である。ここで、放電の際には窒素と酸素が4:1のガスを5L/min流し、圧力は150Torrとしている。この結果より、窒素ドープ量は放電電流に大きく依存し、50Aの場合に最も多くドープされており、この場合の窒素濃度は7×1018cm-3程度であった。ホール測定によってこのZnO微粒子のキャリア濃度等を測定したところ、ホール濃度が9×1016~2.9×1017cm-3、移動度が0.53~0.21cm/V/sであるp型となっていることが確認された。

【0038】
ただし、アクセプタとなる窒素は熱処理によって脱離する。図4は、放電電流を20AとしたZnO微粒子に対して行った熱処理の温度と、熱処理の際に脱離する酸素、窒素、水素の濃度を図3と同様に測定した結果である。この結果より、窒素は300℃程度の熱処理で脱離することがわかる。このため、p型微粒子をp型層として使用する際には、その製造工程で300℃を越えないようにすることが好ましい。

【0039】
図5~7は、ガス中蒸発法における諸条件、熱処理条件、粉砕加工条件を調整することによってそれぞれが異なる発光スペクトルをもつp型ZnO微粒子の発光スペクトルを実測した結果である。図5の例は、150Torr,50Aで製造され、ピーク波長が400nmの紫色の発光をする。図6の例は、760Torr,90Aで製造され、ピーク波長が670nmの赤色の発光をする。図7の例は、610Torr,30Aで製造した粒子を粒子径20nm粉砕して製造され、ピーク波長が570nm程度であるがスペクトルの広がりが大きいために白色に近い発光が得られている。

【0040】
同様に、製造条件を適宜変えることにより、他の色の発光を行わせることも可能である。各色を発光するZnO微粒子を適宜混合して微粒子層14を形成すれば、白色初め、任意の色の発光をさせることが可能である。

【0041】
また、例えば微粒子層14を構成する2種類の微粒子を、共にZnO微粒子とする必要はなく、一方を他の材料で構成された微粒子とすることも可能である。この材料としては、例えばZnOと同様に広い禁制帯幅をもつ窒化ガリウム(GaN)や酸化錫(SnO)とすることができる。この場合には、微粒子層14中において、ZnOとこれらの材料との間でヘテロ接合が形成される。図8は、ZnOとGaNが混在して構成されたヘテロ接合のバンド構造を模式的に示す図である。このバンド構造においては、ZnOとGaNの伝導帯と価電子帯のエネルギーの違いによって、伝導体エネルギーEcと価電子帯エネルギーEvが界面で不連続的に変化する。ここで、Ec(ZnO)、Ev(ZnO)は、ZnOが単独で存在した際の伝導帯エネルギー、価電子帯エネルギーをそれぞれ表し、Ec(GaN)、Ev(GaN)は、GaNが単独で存在した際の伝導体エネルギー、価電子帯エネルギーをそれぞれ表す。

【0042】
図8のバンド構造においては、矢印で示されるように、ZnOの伝導帯から隣接したGaNの価電子帯への電子の遷移が可能となる。この場合に得られる発光光子のエネルギーはEc(ZnO)とEv(GaN)の差分となり、これはZnOの禁制帯幅のエネルギー(Ec(ZnO)-Ev(ZnO))よりも小さくなる。すなわち、ZnOの禁制帯幅に対応する波長よりも長い波長の発光をさせることが可能である。GaNの代わりにSnOを用いた場合であっても同様である。

【0043】
図9は、p型微粒子を用いて微粒子層を形成した場合の図1の構造の発光素子の電流-電圧特性を実測した結果である。ダイオードとして機能していることが確認され、その順方向においてp型層(微粒子層)が発光していることが確認された。

【0044】
次に、上記の発光素子10の製造方法について説明する。図10は、この製造方法を示す工程断面図である。ここでは、微粒子層14を構成する微粒子を、発光のピーク波長が異なる2種類のZnO微粒子を用いる場合について記載するが、GaNやSnOを混合する場合についても同様である。

【0045】
まず、図10(a)に示されるように、基板11上にZnO系透明導電膜12、n型ZnO系薄膜13を連続して成膜する(下地工程)。これらの成膜は、前記の通り、マグネトロンスパッタリング法やCVD法によって行うことができる。この場合、例えばマグネトロンスパッタリング法においては同一チャンバー内でスパッタリングターゲットを切り替えること、CVD法においては同一CVD炉内においてガスを切り替えること、によって、基板11をチャンバーやCVD炉から取り出すことなしに、ZnO系透明導電膜12、n型ZnO系薄膜13を連続して成膜することが可能である。

【0046】
次に、図10(b)に示されるように、第1のZnO微粒子141、第2のZnO微粒子142をn型ZnO系薄膜13上に分散させる。この際には、まず、所定の混合比率で第1のZnO微粒子141、第2のZnO微粒子142をSOG(Spin On Glass)液等で構成されたバインダー、溶媒(例えばアルコール等の有機溶媒)と混合した液体中においてボールミル等を用いて混合した液体(塗布液)を製造する。この塗布液を、n型ZnO系薄膜13の全面上にスピンコート、ディップコート等の方法を用いて一様な膜厚で塗布する。あるいは、印刷法、インクジェット法等を用いた場合には、所望の領域のみにパターニングして塗布することも可能である。溶媒やバインダーの種類や粘度は、塗布の方法に応じて適宜選択することができる。

【0047】
その後、図10(c)に示されるように、焼成を行うことにより、分散された第1のZnO微粒子141、第2のZnO微粒子142が焼結して微粒子層14が形成される(微粒子層形成工程)。この焼成は、例えば大気中で200~300℃の温度範囲で行うことができる。前記の通り、焼結後におけるp型導電性を確保するためには、この温度を300℃以下とすることが好ましいが、SOGを使用した場合、焼結をこの温度範囲で行うことができる。また、SOG成分は可視光に対して透明である点も好ましい。なお、基板11として例えば耐熱性の低い樹脂基板等を用いた場合には、パルスレーザー光を表面に照射することにより、表面の温度のみを局所的に高めてこの焼成を行うことも可能である。

【0048】
その後、図10(d)に示されるように、局所的に微粒子層14、n型ZnO系薄膜13をエッチングによって除去する(エッチング工程)。図10(d)においては、左側の領域において、微粒子層14、n型ZnO系薄膜13が除去されるために、ZnO系透明導電膜12が露出する。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって、微粒子層14等を除去しない領域においてフォトレジスト層を形成し、その後にウェットエッチングを行うことによって行うことができる。この際のエッチング液としては、例えば酢酸を用いることができる。この際、微粒子層14とn型ZnO系薄膜13に対して異なるエッチング液を使用することも可能である。

【0049】
次に、図10(e)に示されるように、露出したZnO系透明導電膜12上と、残存した微粒子層14の上にそれぞれn側電極15とp側電極16を形成する(電極形成工程)。n側電極15とp側電極16は同じ材料で構成することもできる。この場合、DCスパッタリング法等によって図10(d)の構造の上面全体にこの材料を成膜した後に、前記のエッチング工程と同様に、n側電極15とp側電極16が存在する領域以外におけるこの材料をエッチングすることによって、図10(e)の構成とすることができる。あるいは、n側電極15とp側電極16が残存する領域以外の領域にフォトレジスト層を形成してからこの材料を全面に成膜した後に、フォトレジスト層を除去することによって、図10(e)の形態を実現することもできる(リフトオフ法)。

【0050】
最後に、n側電極15とp側電極16に配線を接続し、電源を接続すれば、図1の発光素子10が製造される。

【0051】
この製造方法においては、微粒子層14を、発光ピーク波長の異なる第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142で構成しているが、これらの微粒子が混合された塗布液を使用することによって、微粒子層14を特に容易に製造することができる。2種類の発光の混合比率も、塗布液中における第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142の混合比率で調整することによって容易に行うことができる。特に、発光面積(微粒子層14の面積)が大きな場合でも、第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142が分散して混合された塗布液を用いて、均一な発光が得られる微粒子層14を容易に形成することができる。

【0052】
すなわち、上記の製造方法によって、安価なZnOを用いて可視光の発光をする大面積の発光素子を容易かつ安価に製造することができる。

【0053】
なお、上記の例では、微粒子層14を構成するZnO微粒子として、第1のZnO微粒子141と第2のZnO微粒子142の2種類を想定したが、3種類以上を用いても、同様に微粒子層14を形成することができることは明らかである。すなわち、3種類以上の光を混合して発する発光素子を同様に製造することができることは明らかである。

【0054】
なお、上記の例では、発光に対して透明な基板11、ZnO系透明導電膜12を発光層となる微粒子層14の下側に設けた図1の構成の発光素子について記載した。この構成においては、発光は図1中の下側から取り出される。しかしながら、例えば特開2008-244387号公報の図6、図8~9に記載の発光素子と同様に、微粒子層14の上側に透明導電膜を形成してその一部にp側電極を接続させて形成した場合には、上側から発光を取り出すことも可能である。この場合には、基板11に対しては、可視光(発光)の透過性は要求されないため、その上で良質のn型ZnO系薄膜13が得られるか否かや、その機械的強度の観点から、基板11を構成する材料を選択することが可能である。また、特開2008-244387号公報の図7に示されるようなダブルヘテロ構造や、同じく図10に示されるようなMIS構造を同様に製造できることも明らかである。

【0055】
なお、上記の例では、基板11として絶縁性のガラス基板を用い、その上に導電性のZnO系透明導電膜12を形成したが、特に上側(基板と反対側)から発光を取り出す構成の場合には、基板11として導電性の材料を用い、n型ZnO系薄膜の下側にZnO系透明導電膜を形成しない構成とすることも可能である。

【0056】
また、微粒子層を構成するZnO微粒子には窒素(N)がドープされてp型とされたものとしたが、これ以外の他の元素を適宜ドープしてもよい。これによってもZnO微粒子の発光波長を調整することが可能である。

【0057】
更に、上記の例では、微粒子層を発光素子におけるp型層として使用する場合について記載したが、n型微粒子を用いてn型層を形成することも可能である。あるいは、微粒子層を、n型層とp型層の間の発光層として使用することも可能である。すなわち、微粒子層は、n型層からp型層までの範囲におけるいずれかとして使用することができ、これらのうちの複数の層を微粒子層とすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
10 発光素子
11 基板
12 ZnO系透明導電膜(導電層)
13 n型ZnO系薄膜
14 微粒子層
15 n側電極
16 p側電極
141 第1のZnO微粒子
142 第2のZnO微粒子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9