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明細書 :カルボン酸アミドの製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-160212 (P2016-160212A)
公開日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 カルボン酸アミドの製法
国際特許分類 C07C 231/02        (2006.01)
C07C 233/10        (2006.01)
C07C 233/21        (2006.01)
C07C 233/20        (2006.01)
C07C 233/09        (2006.01)
C07C 233/11        (2006.01)
C07C 233/65        (2006.01)
C07C 233/15        (2006.01)
C07C 269/06        (2006.01)
C07C 271/22        (2006.01)
C07D 487/04        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 231/02
C07C 233/10
C07C 233/21
C07C 233/20
C07C 233/09 B
C07C 233/11
C07C 233/65
C07C 233/15
C07C 269/06
C07C 271/22
C07D 487/04 145
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-040104 (P2015-040104)
出願日 平成27年3月2日(2015.3.2)
発明者または考案者 【氏名】石原 一彰
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C050
4H006
4H039
Fターム 4C050AA01
4C050BB06
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF02
4C050GG01
4C050HH01
4H006AA02
4H006AC53
4H006BA51
4H006BA53
4H006BC34
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM73
4H006BP30
4H006BV22
4H006BV25
4H006BV36
4H006RA04
4H039CA71
4H039CL25
要約 【課題】カルボン酸アミドの製法において、従来に比べて簡素な化学構造のアリールボロン酸を用いる。
【解決手段】本発明は、カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを得るカルボン酸アミドの製法に関する。カルボン酸として、α位に2つ以上の水素原子を有するカルボン酸、α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸、α位に水素原子を有しβ位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸、芳香族カルボン酸を用いる。また、触媒として、B(OH)3やPhB(OH)2などを用い、添加剤として、4-ジメチルアミノピリジンやそのN-オキシドなどを用いる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを得るカルボン酸アミドの製法であって、
前記カルボン酸として、α位に2つ以上の水素原子を有するカルボン酸、α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸又はα位に水素原子を有しβ位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸を用い、
触媒として、B(OH)3又は式(1)で表されるアリールボロン酸(式(1)中、Ra及びRbは、両方とも水素原子か、両方ともハロゲン原子か、一方が水素原子で他方がハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基若しくはシアノ基)を用い、
添加剤として、4位に-NR12(R1及びR2は、互いに同じであっても異なっていてもよいアルキル基であるか、互いに繋がって炭化水素鎖をなす)を有するピリジン又はそのN-オキシドを用いる、
カルボン酸アミドの製法。
【化1】
JP2016160212A_000011t.gif

【請求項2】
前記触媒は、B(OH)3又はPhB(OH)2である、請求項1に記載のカルボン酸アミドの製法。
【請求項3】
カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを得るカルボン酸アミドの製法であって、
前記カルボン酸として、芳香族カルボン酸を用い、
触媒として、アリールボロン酸(式(1)中、Ra及びRbは、両方ともハロゲン原子か、一方が水素原子で他方がハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基若しくはシアノ基)を用い、
添加剤として、4位に-NR12(R1及びR2は、互いに同じであっても異なっていてもよいアルキル基であるか、互いに繋がって炭化水素鎖をなす)を有するピリジン又はそのN-オキシドを用いる、
カルボン酸アミドの製法。
【化2】
JP2016160212A_000012t.gif

【請求項4】
前記触媒は、カルボン酸又はアミンに対して1~20mol%使用し、前記添加剤は、前記触媒に対してモル比で0.5~2倍使用する、請求項1~3のいずれか1項に記載のカルボン酸アミドの製法。
【請求項5】
前記添加剤は、前記ピリジンのN-オキシドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のカルボン酸アミドの製法。
【請求項6】
前記添加剤は、4-ジアルキルアミノピリジン又はそのN-オキシドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のカルボン酸アミドの製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸アミドの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸アミドの製法としては、カルボン酸とアミンとを脱水縮合させる方法が知られている。最近、本発明者は、この種のカルボン酸アミドの製法において、アリールボロン酸として、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸又は3,5-ジニトロ-p-トリルボロン酸を用い、添加剤として、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)又はそのN-オキシド(DMAPO)を用いると、アミド化が促進されることを報告した(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】日本化学会春季年会第94春季年会予稿集1PC-239(2014年3月27-30日開催)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1で用いたアリールボロン酸は、2つ以上の置換基を有するため分子量が大きく、その結果使用する重量が大きくなる傾向があった。また、これらのアリールボロン酸は、比較的高価なことから、より安価な触媒の開発が望まれていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、カルボン酸アミドの製法において、従来に比べて簡素な化学構造のアリールボロン酸を用いることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者は、カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを製造するにあたり、カルボン酸の種類によっては簡素な化学構造のアリールボロン酸であっても添加剤としてDMAPOなどのピリジン誘導体を用いると脱水縮合反応が促進されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第1のカルボン酸アミドの製法は、カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを得るカルボン酸アミドの製法であって、前記カルボン酸として、α位に2つ以上の水素原子を有するカルボン酸、α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸又はα位に水素原子を有しβ位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸を用い、触媒として、B(OH)3又は式(1)で表されるアリールボロン酸(式(1)中、Ra及びRbは、両方とも水素原子か、両方ともハロゲン原子か、一方が水素原子で他方がハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基若しくはシアノ基)を用い、添加剤として、4位に-NR12(R1及びR2は、互いに同じであっても異なっていてもよいアルキル基であるか、互いに繋がって炭化水素鎖をなす)を有するピリジン又はそのN-オキシドを用いるものである。
【0008】
【化1】
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【0009】
本発明の第2のカルボン酸アミドの製法は、カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応によりカルボン酸アミドを得るカルボン酸アミドの製法であって、前記カルボン酸として、芳香族カルボン酸を用い、触媒として、アリールボロン酸(式(1)中、Ra及びRbは、両方ともハロゲン原子か、一方が水素原子で他方がハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基若しくはシアノ基)を用い、添加剤として、4位に-NR12(R1及びR2は、互いに同じであっても異なっていてもよいアルキル基であるか、互いに繋がって炭化水素鎖をなす)を有するピリジン又はそのN-オキシドを用いるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法によれば、従来に比べて簡素な化学構造のアリールボロン酸を触媒として用いることができるため、触媒にかかるコストが低減される。また、従来に比べて触媒の分子量が小さくなるため、従来と同じモル数の触媒を使用する場合でも重量が小さくなり、その点でもコストが低減される。
【0011】
また、本発明の第1のカルボン酸アミドの製法において、カルボン酸としてα位に水素原子を有しβ位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸を用いた場合、α,β-不飽和カルボン酸アミドのほかに、そのカルボン酸アミドのβ位にアミンが1,4-付加した副生成物が副生する。しかし、添加剤として4位に-NR12を有するピリジン又はそのN-オキシドを添加しているため、添加剤を添加しない場合に比べてα,β-不飽和カルボン酸アミドの収率や生成比率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1のカルボン酸アミドの製法で使用するカルボン酸は、α位に2つ以上の水素原子を有するカルボン酸、α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸又はα位に水素原子を有しβ位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸である。α位に2つ以上の水素原子を有するカルボン酸とは、α位に側鎖を有さないカルボン酸である。α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸とは、α位に側鎖としてメチル基を1つだけ有するカルボン酸である。これらのカルボン酸は、α位以外の位置(例えばβ位など)に側鎖を有していてもよい。その場合、側鎖としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基のほか、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基のような保護アミノ基などが挙げられる。こうした保護アミノ基を有するカルボン酸からアミドを合成することは、ペプチド合成に繋がることから有用である。保護アミノ基を有するカルボン酸としては、例えばtert-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又はベンゾイル(Bz)で保護されたアミノ基をβ位に有するβ-アミノ酸などが挙げられる。α位に水素原子を有し(つまりα位に側鎖を有さず)β位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸とは、例えば、α位に水素原子を有しβ位にシクロアルキル基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を有するアクリル酸などが挙げられる。アルケニル基の二重結合はアクリル酸の二重結合と共役していてもよい。β位の置換基は1つであってもよいし2つであってもよい。

【0013】
本発明の第2のカルボン酸アミドの製法で使用するカルボン酸は、芳香族カルボン酸である。芳香族カルボン酸は、R3CO2H(R3は芳香環基)で示される化合物であり、芳香環は、炭化水素系芳香環でもよいし複素環でもよい。炭化水素系芳香環としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ピレンなどが挙げられる。また、複素環としては、フラン、チオフェンなどが挙げられる。また、芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。

【0014】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法で使用するアミンとしては、第1級アミンでもよいし第2級アミンでもよい。

【0015】
第1級アミンとしては、例えば、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アラルキルアミン、アリールアミンなどが挙げられる。アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンなどが挙げられる。シクロアルキルアミンとしては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミンなどが挙げられる。アラルキルアミンとしては、ベンジルアミン、α-メチルベンジルアミン、α-エチルベンジルアミン、フェネチルアミン、α-メチルフェネチルアミン、β-メチルフェネチルアミン、α-エチルフェネチルアミン、β-エチルフェネチルアミン、1-(1-ナフチル)エチルアミン、1-(2-ナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。アリールアミンとしては、アニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミンなどが挙げられる。

【0016】
第2級アミンとしては、ジアルキルアミン、アルキルアラルキルアミン、アルキルアリールアミン、環式アミンなどが挙げられる。ジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどが挙げられる。アルキルアラルキルアミンとしては、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-メチルフェネチルアミン、N-エチルフェネチルアミンなどが挙げられる。アルキルアリールアミンとしては、N-メチルアニリン、N-メチル-1-ナフチルアミン、N-メチル-2-ナフチルアミンなどが挙げられる。環式アミンとしては、ピロリジン、ピペリジン、モノホリン、ピペラジンなどのほか、これらを含む縮合環などが挙げられる。

【0017】
こうした第1級アミンや第2級アミンは、適宜置換基を有していてもよい。例えば、アルキル基が有する置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、第3級アミノ基、アルコキシ基などが挙げられ、アラルキル基やアリール基、環式アミンが有する置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。

【0018】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、カルボン酸とアミンとのモル比は、通常1:1とすればよいが、一方を過剰に用いても構わない。

【0019】
本発明の第1のカルボン酸アミドの製法で使用する触媒は、B(OH)3又は式(1)で表されるアリールボロン酸(式(1)中、Ra及びRbは、両方とも水素原子か、両方ともハロゲン原子か、一方が水素原子で他方がハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基若しくはシアノ基)である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。このうち、フッ素原子が好ましい。アリールボロン酸は、通常、単量体で単離することは難しく、環状三量体であったり、二量体であったり、オリゴマーであったりしており、それらの混合物として存在することが多い。そのため、本発明で使用するアリールボロン酸は、単量体、二量体、環状三量体及びオリゴマーのうちの1種であってもよいし2種以上の混合物であってもよい。こうしたアリールボロン酸の具体例としては、フェニルボロン酸、2,6-ジフルオロフェニルボロン酸、2,6-ジクロロフェニルボロン酸、2,6-ジブロモフェニルボロン酸、2,6-ジヨードフェニルボロン酸、2-クロロ-6-フルオロフェニルボロン酸、2-ブロモ-6-フルオロフェニルボロン酸、2-フルオロ-6-ヨードフェニルボロン酸、2-フルオロフェニルボロン酸、2-クロロフェニルボロン酸、2-ブロモフェニルボロン酸、2-ヨードフェニルボロン酸、2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸、2-ニトロフェニルボロン酸、2-シアノフェニルボロン酸などが挙げられる。このうち、フェニルボロン酸、2-フルオロフェニルボロン酸、2,6-ジフルオロフェニルボロン酸、2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸が好ましく、フェニルボロン酸が特に好ましい。フェニルボロン酸は、これらの中で化学構造が比較的単純で安価なうえ、分子量が比較的小さく、しかも基質適用範囲が比較的広いからである。B(OH)3も、化学構造が単純で安価なうえ、分子量が小さいため好ましい。

【0020】
本発明の第2のカルボン酸アミドの製法で使用するボロン酸は、2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸、2-ニトロフェニルボロン酸又は2-シアノフェニルボロン酸である。このうち、2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸が好ましい。

【0021】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法で使用する添加剤は、4位に-NR12(R1及びR2は、互いに同じであっても異なっていてもよいアルキル基であるか、互いに繋がって炭化水素鎖をなす)を有するピリジン又はそのN-オキシドである。アルキル基としては、直鎖であっても分岐していてもよい。こうしたアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。R1及びR2が互いに繋がって炭化水素鎖をなす場合、-NR12はアジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環などになるが、これらの環上の水素原子がアルキル基で置換されていてもよい。

【0022】
こうした添加剤としては、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、4-(N,N-ジエチルアミノ)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)-ピリジン(PPY)、4-(1-ピペリジニル)-ピリジン、4-(4-メチル-1-ピペリジニル)-ピリジン及びそれらのN-オキシドなどが挙げられる。このうち、DMAP、そのN-オキシド(DMAPO)、PPY及びそのN-オキシド(PPYO)が好ましく、特にN-オキシド(DMAPOやPPYO)がより好ましい。N-オキシドの方が反応をより活性化しやすいからである。

【0023】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、触媒の使用量は、反応基質に対して1~20mol%が好ましく、1~10mol%がより好ましい。また、触媒と添加剤とのモル比は、通常1:1であればよいが、必要に応じて1:0.5~1:2の範囲に設定すればよい。

【0024】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、反応溶媒は、アミド縮合に影響しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば炭化水素系溶媒やニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン溶媒が好ましい。炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、ブチロニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。ニトロ系溶媒としては、ニトロメタン、ニトロエタンなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、フェニルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルなどが挙げられる。アミド系溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、α,α,α-トリフルオロトルエン、フルオロベンゼンなどが挙げられる。また、これらの混合溶媒を用いてもよい。

【0025】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、反応温度は反応速度などを考慮して適宜設定すればよいが、例えば、20~200℃の範囲で設定するのが好ましく、40~160℃の範囲で設定するのがより好ましい。また、アミド縮合では、カルボン酸アミド化合物と共に水が生成するが、カルボン酸アミド化合物の収率を向上させるには脱水を効率よく行うことが好ましい。例えば、反応温度を溶媒の還流温度とし、共沸脱水しながら還流してもよい。あるいは、反応溶液中に乾燥剤(例えばモレキュラーシーブスなど)を投入し、溶媒の還流温度未満で反応してもよい。

【0026】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、反応時間は、反応基質、反応温度などに応じて適宜設定すればよいが、通常は数時間~数10時間である。なお、アミド縮合は反応基質が完全に消費されるまで行ってもよいが、反応が進むにつれて反応基質の消失速度が極端に遅くなる場合には反応基質が完全に消費されなくても反応を終了してカルボン酸アミド化合物を取り出した方が好ましい場合もある。

【0027】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、目的とするカルボン酸アミドを単離するには、通常知られている単離手法を適用すればよい。例えば、反応混合物中の反応溶媒を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーや再結晶などで精製することにより、目的とするカルボン酸アミド化合物を単離することができる。

【0028】
本発明の第1及び第2のカルボン酸アミドの製法において、反応終了後、アリールボロン酸と添加剤との塩(ボロン酸塩)が反応溶液中で沈澱する場合には、沈殿したボロン酸塩を回収し、再利用してもよい。

【0029】
本発明の第1及び2のカルボン酸アミドの製法によれば、種々のカルボン酸アミドを製造することができる。この製法は、特に、アミド結合を有する医薬品又はその中間体の合成に用いることができる。例えば、バルサルタンのような高血圧治療薬、アトルバスタチンのような高脂血症治療薬、エドキサバントシル酸塩水和物、リバロキサバン、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩のような抗凝血薬、ミラベグロン、ビベグロンのような過活動膀胱治療薬、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、テネリグリプチンのようなDPP-4阻害剤、アタナザビル、ダルナビル、ラルテグラビル、バニプレビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、レジパスビル、パリタプレビル、オムビタスビルのような抗ウイルス薬、スニチニブ、ダサチニブのような分子標的薬、スボレキサントのようなオレキシン受容体拮抗薬などの医薬品又はこれらの中間体を挙げることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[実験例1-1~1-8]
表1の上段に記載した式に示すように、N-Boc-シタグリプチンの合成を行った。これらは、カルボン酸として、β位に保護アミノ基を有しα位に2つの水素原子を有するアミノ酸を用いた例である。代表的な実験例として、実験例1-4の手順を以下に示す。5,6,7,8-テトラヒドロ-3-(トリフルオロメチル)-1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピラジン塩酸塩114mg(0.50mmol)に4M苛性ソーダ水溶液0.125mL(0.50mmol)を加えたのち水を蒸発乾固した。これにフルオロベンゼン2.5mL、(3R)-N-Boc-4-(1,3,4-トリフルオロフェニル)-3-アミノ-ブタン酸183mg(0.55mmol)、更に触媒としてフェニルボロン酸(6.1mg, 0.05mmol)、添加剤としてDMAPO(6.9mg, 0.05mmol)を加え、100℃(オイルバス温度)で23時間、共沸脱水を行いながら反応した。反応混合物を濃縮後、2mLの酢酸エチルに溶かし、40mLのヘキサンをゆっくり滴下することによって、目的とするN-Boc-シタグリプチンを233mg(収率92%)の白色固体として得た。表1の他の実験例も、この手順に準じて行った。
【実施例】
【0032】
実験例1-1~1-8の結果を表1に示す。実験例1-1,1-2では、触媒としてホウ酸(B(OH)3)を用い、実験例1-1ではDMAPOを添加せず、実施例1-2ではDMAPOを添加した。実験例1-3,1-4では、触媒としてフェニルボロン酸(PhB(OH)2)を用い、実験例1-3ではDMAPOを添加せず、実施例1-4ではDMAPOを添加した。実験例1-5,1-6では、触媒として2,6-ジフルオロフェニルボロン酸を用い、実験例1-5ではDMAPOを添加せず、実施例1-6ではDMAPOを添加した。実験例1-7,1-8では、触媒として2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸を用い、実験例1-7ではDMAPOを添加せず、実施例1-8ではDMAPOを添加した。実験例1-1~1-8から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてN-Boc-シタグリプチンの収率が向上した。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。
【実施例】
【0033】
【表1】
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【実施例】
【0034】
[一般的実験手順]
ここでは、脱水共沸還流でアミドを合成する一般的合成手順を説明する。まず、丸底フラスコに、カルボン酸と触媒と溶媒を入れる。場合によって、添加剤も入れる。そのフラスコに、テフロン(登録商標)で被覆されたマグネティックスターラーバーを入れ、綿栓とモレキュラーシーブス4Å(ペレット)を入れた側管付き滴下ロートを取り付ける。滴下ロートの上には、還流冷却器を取り付ける。混合液を5分間室温で撹拌し、その後、アミンを滴下する。その混合液を脱水共沸還流条件下で水を除去しながら所定時間加熱する。反応混合液を室温に冷却し、その後、溶媒を減圧留去する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的とするアミドを得る。なお、モレキュラーシーブス4Åは予めよく乾燥したものを用いる。
【実施例】
【0035】
[実験例2-1~2-4]
一般的実験手順にしたがって、表2の上段に記載した式に示すように、安息香酸(0.5mmol)とベンジルアミン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。これらは、カルボン酸として、芳香族カルボン酸を用いた例である。実験例2-1,2-2では、触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して5mol%使用し、実験例2-1ではDMAPOを添加せず、実験例2-2ではDMAPOを添加した。実験例2-3,2-4では、触媒として2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸をカルボン酸に対して10mol%使用し、実験例2-3ではDMAPOを添加せず、実験例2-4ではDMAPOを添加した。表2に示した収率から明らかなように、触媒がフェニルボロン酸の場合にはDMAPOを添加した場合も添加しなかった場合もほとんど反応は進行しなかった(実験例2-1,2-2)。これに対して、触媒が2-トリフルオロメチルフェニルボロン酸の場合には反応が進行したが、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が向上した(実験例2-3,2-4)。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。
【実施例】
【0036】
【表2】
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【実施例】
【0037】
[実験例3-1,3-2]
一般的実験手順にしたがって、表3の上段に記載した式に示すように、2-メチル-3-フェニルプロピオン酸(0.5mmol)とアニリン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。これらは、カルボン酸として、α位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸を用いた例である。触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して10mol%使用した。実験例3-1ではDMAPOを添加せず、実験例3-2ではDMAPOを触媒と等モル添加した。表3に示した収率から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が向上した。すなわち、カルボン酸としてα位に水素原子とメチル基を有するカルボン酸を用いた場合、DMAPOによる反応促進効果が認められた。
【実施例】
【0038】
【表3】
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【実施例】
【0039】
なお、触媒としてフェニルボロン酸(カルボン酸に対して5mol%)を用いて2-フェニルブタン酸(0.5mmol)とベンジルアミン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドの合成を試みたところ、DMAPO(触媒と等モル)を添加しても添加しなくても、アミドはほとんど生成しなかった。すなわち、カルボン酸としてα位に水素原子とメチル基よりも嵩高い基を有するカルボン酸を用いた場合、DMAPOによる反応促進効果は認めらなかった。
【実施例】
【0040】
[実験例4-1~4-4]
一般的実験手順にしたがって、表4の上段に記載した式に示すように、3-フェニルプロピオン酸(0.5mmol)とアニリン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。これらは、カルボン酸として、α位に2つの水素原子を有するカルボン酸を用いた例である。触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して5mol%使用した。実験例4-1では添加剤を添加せず、実験例4-2~4-4では添加剤としてそれぞれDMAPO、PPYO、DMAPを触媒と等モル添加した。表4に示した収率から明らかなように、添加剤を添加した実験例4-2~4-4では、添加剤を添加しなかった実験例4-1に比べてアミドの収率が向上した。すなわち、添加剤による反応促進効果が認められた。また、DMAPOやPPYOのようなN-オキシドの方が、DMAPに比べて反応促進効果が顕著であった。
【実施例】
【0041】
【表4】
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【実施例】
【0042】
[実験例5-1,5-2]
一般的実験手順にしたがって、表5の上段に記載した式に示すように、3-フェニルプロピオン酸(0.5mmol)と4-ブロモアニリン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。これらは、カルボン酸として、α位に2つの水素原子を有するカルボン酸を用いた例である。触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して5mol%使用した。実験例5-1ではDMAPOを添加せず、実験例5-2ではDMAPOを触媒と等モル添加した。表5に示した収率から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が顕著に向上した。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。
【実施例】
【0043】
【表5】
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【実施例】
【0044】
[実験例6-1,6-2]
一般的実験手順にしたがって、表6の上段に記載した式に示すように、β位に保護アミノ基を有しα位に2つの水素原子を有するアミノ酸(実施例1で用いたアミノ酸と同じ、0.5mmol)とベンジルアミン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して5mol%使用した。実験例6-1ではDMAPOを添加せず、実験例6-2ではDMAPOを触媒と等モル添加した。表6に示した収率から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が顕著に向上した。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。なお、反応時間を6時間に設定したが、より長く反応させれば収率は更に向上すると予測される。
【実施例】
【0045】
【表6】
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【実施例】
【0046】
[実験例7-1,7-2]
一般的実験手順にしたがって、表7の上段に記載した式に示すように、1-ナフタレン酢酸(1mmol)とベンジルアミン(1mmol)との脱水縮合反応により、対応するアミドを合成した。触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して5mol%使用した。実験例7-1ではDMAPOを添加せず、実験例7-2ではDMAPOを触媒と等モル添加した。表7に示した収率から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が顕著に向上した。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。なお、反応時間を3時間に設定したが、より長く反応させれば収率は更に向上すると予測される。
【実施例】
【0047】
【表7】
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【実施例】
【0048】
[実験例8-1~8-16]
一般的実験手順にしたがって、表8の上段に記載した式に示すように、α位に水素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸(0.5mmol)と第1級アミン(0.5mmol)との脱水縮合反応により、対応するα,β-不飽和カルボン酸アミド(目的物)を合成した。この場合、α,β-不飽和カルボン酸アミドに更にアミンが1,4付加したβ-アミノカルボン酸アミド(副生成物)が副生した。ここでは、α位に水素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸として、β位にシクロアルキル基を有するもの(実験例8-1~8-6)、アルキル基を有するもの(実験例8-7~8-10)、アルケニル基を有するもの(実験例8-11~8-14)、アリール基を有するもの(実験例8-15,8-16)を使用した。
【実施例】
【0049】
実験例8-1~8-4では、3-シクロヘキシルアクリル酸とフェネチルアミンとの脱水縮合反応を、触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して10mol%使用して行った。実験例8-1では添加剤を添加しなかったが、実験例8-2~8-4では添加剤としてそれぞれDMAPO、DMAP、PPYOを触媒と等モル添加した。表8に示した収率から明らかなように、添加剤を添加した実験例8-2~8-4の方が添加剤を添加しなかった実験例8-1に比べてアミドの収率が向上した。すなわち、添加剤による反応促進効果が認められた。また、表8に示したモル比から明らかなように、添加剤を添加した場合の方が添加しなかった場合に比べて目的物のモル数の割合が高くなった。
【実施例】
【0050】
実験例8-5,8-6では、3-シクロヘキシルアクリル酸と4-メトキシアニリンとの脱水縮合反応を行った。実験例8-7,8-8では、3-n-プロピルアクリル酸と4-メトキシアニリンとの脱水縮合反応を行った。実験例8-9,8-10では、3-n-ペンチルアクリル酸と4-メトキシアニリンとの脱水縮合反応を行った。実験例8-11,8-12では、ソルビン酸(2,4-ヘキサジエン酸)と4-メトキシアニリンとの脱水縮合反応を行った。実験例8-13,8-14では、ソルビン酸とフェネチルアミンとの脱水縮合反応を行った。実験例8-15,8-16では、3-フェニルアクリル酸とフェネチルアミンとの脱水縮合反応を行った。いずれの脱水縮合反応も、触媒としてフェニルボロン酸をカルボン酸に対して10mol%使用して行った。また、実験例8-5,8-7,8-9,8-11,8-13,8-15では添加剤を添加しなかったが、実験例8-6,8-8,8-10,8-12,8-14,8-16では添加剤としてDMAPOをカルボン酸に対して10mol%(触媒と等モル)添加した。表8に示した収率から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べてアミドの収率が向上した。すなわち、DMAPOによる反応促進効果が認められた。また、表8に示したモル比から明らかなように、DMAPOを添加した場合の方が添加しなかった場合に比べて目的物のモル数の割合が高くなった。なお実験例8-11~8-14では、副生成物としてβ-アミノアミドのほかδ-アミノアミドも生成した。
【実施例】
【0051】
【表8】
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【実施例】
【0052】
なお、実験例1-2,1-4,1-6,1-8,3-2,4-2,4-3,4-4,5-2,6-2,7-2,8-2,8-3,8-4,8-6,8-8,8-10,8-12,8-14,8-16が本発明の第1のカルボン酸アミドの製法の実施例に相当する。実験例2-4が本発明の第2のカルボン酸アミドの製法の実施例に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、主に薬品化学産業に利用可能であり、例えば医薬品や農薬、化粧品の中間体などを製造する際に利用することができる。