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明細書 :肝線維化修復剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-141664 (P2016-141664A)
公開日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明の名称または考案の名称 肝線維化修復剤
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  31/7115      (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 45/00 ZNA
A61P 1/16
A61K 48/00
A61P 43/00 111
A61K 31/7105
A61K 31/7115
A61K 9/127
C12N 15/00 G
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-020308 (P2015-020308)
出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
発明者または考案者 【氏名】中島 美紀
【氏名】小田 祐輝
【氏名】原島 秀吉
【氏名】佐藤 悠介
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C076
4C084
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA05
4B024HA17
4B024HA20
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC16
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA24
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC41
要約 【課題】有効性が高く、安全性が高い長期使用可能な新規な肝線維化修復剤の提供。
【解決手段】マイクロRNAであるmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有する物質を含む肝線維化修復剤。前記物質は、miR-34aの相補配列であるオリゴヌクレオチド;miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド等であることが好ましく、前記オリゴヌクレオチドはカチオン性膜脂質に封入されている事が好ましい。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロRNAであるmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有する物質を含む肝線維化修復剤。

【請求項2】
前記物質が、以下のいずれか1以上である請求項1に記載の肝線維化修復剤。
(1)miR-34aの相補配列であるオリゴヌクレオチド
(2)miR-34aの相補配列であり、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド
(3)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド
(4)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド
(5)上記(1)~(4)のオリゴヌクレオチドに対して1~4個の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド

【請求項3】
前記物質が、配列番号1に記載のオリゴヌクレオチドである請求項1又は2に記載の肝線維化修復剤。

【請求項4】
前記物質が、配列番号1に記載のオリゴヌクレオチドに対して1~4個の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチドである請求項1又は2に記載の肝線維化修復剤。

【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが化学修飾されている請求項2~4のいずれか1に記載の肝線維化修復剤。

【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドがカチオン性膜脂質に封入されている請求項2~5のいずれか1に記載の肝線維化修復剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する物質を含む肝線維化修復剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(肝線維症)
肝線維症は、肝細胞障害に対する創傷治癒の結果、I型コラーゲンなどの細胞外マトリクスが過剰に蓄積した病態である。肝線維症が進行すると肝硬変、肝癌へと進展するが、現在までに有効な治療法が確立されていない。
これまでmiRNAを治療標的とする試みがいくつかなされている。例えば、miR-122 はC型肝炎ウイルスの複製に必要とされるものであるが、実際にC型肝炎ウイルスを感染させたチンパンジーにアンチセンスオリゴを用いてmiR-122をノックダウンすると、ウイルス数の低下および肝機能の回復が認められたことが報告されている。
【0003】
(miRNA)
miRNA(マイクロRNA)は、発生や細胞の分化、増殖など重要な生命現象の制御に関わっており、この制御の異常が癌などの疾患に関与していると考えられている。
現在、ヒトにおいて 2,500 種類以上の miRNA が報告されており、それぞれの miRNA における標的 mRNA も種々の in silicoツールで予測することができる。ヒト全 mRNA の 60%程度が miRNA によって制御されていると推定されている。
本発明者らは、ベンゾ[a]ピレンの代謝的活性化やエストラジオールの 4 位水酸化反応を担う cytochrome P450 (CYP) 1B1 が miR-27b によって翻訳抑制を受けること、 ニトロソアミンをはじめとする化学発癌物質の代謝的活性化やアルコール代謝を担う CYP2E1 が miR-378 によって翻訳抑制を受けること、CYP3A4 などの薬物代謝酵素やトランスポーターの発現に関与する pregnane X receptor (PXR) が miR-148a により翻訳抑制されること、CYP の酵素活性を促進する重要な補因子であるシトクロムb5がmiR-223により制御され、その発現制御が CYP 酵素活性に影響を及ぼすことを明らかにしている。さらに CYP24とその発現誘導に関与する vitamin D receptor (VDR)が共に miR-125b によって発現抑制を受けること、脂質代謝や異物代謝に働く遺伝子の発現に関与する peroxisome proliferator-activated receptorα(PPARα) がmiR-21 および miR-27b よって翻訳抑制されることを明らかにしてきた。
以上により、miRNA は薬物代謝酵素やその発現に関与する転写因子の発現調節にも関与しており、薬物動態分野においても発現変動に関与する重要な因子と考えられる。
【0004】
非特許文献1では、「miR-34aの発現を低下させることにより肝線維化を抑制することができる可能性があること」を開示している。しかし、非特許文献1は、「miR-34aの発現を低下させることにより線維化した肝組織を修復できること」を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Biochemical Pharmacology 90 (2014) 179-187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
線維症自体を修復する試みは研究中であり、いくつかの方法(炎症を抑える、肝星状細胞活性の抑制、コラーゲン合成や代謝の抑制、星状細胞の収縮抑制及び細胞外基質分解の促進)が検討されている。
しかしながら、多くの薬剤は通常長期使用には毒性が強すぎるか、又は有効性が証明されていない。
そこで、本発明者らは、新規な肝線維化修復剤を開発することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、肝線維化に伴いmiR-34aの発現量が上昇することを見出しており、miR-34aの作用に注目した。
そして、本発明者らは、miR-34aの発現を低下させることにより、線維化した肝組織を修復できることを確認し、miR-34aの発現を低下させる物質を含む肝線維化修復剤を完成した。
【0008】
本発明は以下からなる。
「1.マイクロRNAであるmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有する物質を含む肝線維化修復剤。
2.前記物質が、以下のいずれか1以上である前項1に記載の肝線維化修復剤。
(1)miR-34aの相補配列であるオリゴヌクレオチド
(2)miR-34aの相補配列であり、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド
(3)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド
(4)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド
(5)上記(1)~(4)のオリゴヌクレオチドに対して1~4個の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド
3.前記物質が、配列番号1に記載のオリゴヌクレオチドである前項1又は2に記載の 肝線維化修復剤。
4.前記物質が、配列番号1に記載のオリゴヌクレオチドに対して1~4個の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつ、miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチドである前項1又は2に記載の肝線維化修復剤。
5.前記オリゴヌクレオチドが化学修飾されている前項2~4のいずれか1に記載の肝線維化修復剤。
6.前記オリゴヌクレオチドがカチオン性膜脂質に封入されている前項2~5のいずれか1に記載の肝線維化修復剤。」
【発明の効果】
【0009】
本発明の肝線維化修復剤は、線維化した肝組織の優れた修復能力を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】CCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスの血漿のALT値。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1、2、4、8週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、血漿試料は採取され、ALT値を測定した。データは平均値±SDで示している(オリーブ油、n=3;CCl4、n=4)。Student's t-testにより*P < 0.05で解析した。
【図2】CCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスの組織病理学的変化。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1、2、4、8週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に肝臓を採取し、HE及びPSRにより染色した(倍率40倍)。
【図3】CCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスのmature miR-34aの発現量。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1、2、4、8週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、肝臓を採取し、mature miR-34aはreal-time RT-PCR法により測定し、U6 snRNA量により標準化された。データは平均値±SDで示している(オリーブ油、n=3;CCl4、n=4)。*Student's t-testにより**P < 0.01と***P < 0.001で解析した。
【図4】MEND化AMO miR-34aの投与によるmature miR-34aの発現量とALT値への影響。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、CCl4の最初の投与の24時間前に静脈投与した。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、(A)mature miR-34aの発現量と(B)ALT値は測定した。バーは各群の平均を示す。データは、平均値±SDで示している(MEND empty+オリーブ油とMEND化AMO miR-34a+オリーブ油、n=3;MEND empty+ CCl4、n=8;MEND化AMO miR-34a+ CCl4、n=7)。***P < 0.001では、MEND empty+オリーブ油と比較した。**P < 0.01。
【図5】MEND化AMO miR-34aの投与によるCCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスの組織病理学的変化への影響。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、CCl4の最初の投与の24時間前に静脈投与した。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、肝臓を採取し、HE及びPSRにより染色した(倍率40倍)。
【図6】MEND化AMO miR-34aの投与によるCCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスの肝線維化関連因子のmRNA発現量への影響。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、CCl4の最初の投与の24時間前に静脈投与した。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、(A)αSMA、(B)Col1a1、(C)Tgfβ1 mRNAの発現量はreal-time RT-PCR法により測定し、β-actin mRNA発現量により標準化した。バーは各群の平均を示す。データは平均値±SDで示している(MEND empty+オリーブ油とMEND化AMO miR-34a+オリーブ油、n=3;MEND empty+ CCl4、n=8;MEND化AMO miR-34a+ CCl4、n=7)。
【図7】MEND化AMO miR-34aの投与によるCCl4を用いて作製した肝線維化モデルマウスのcytochrome cタンパク質発現量への影響。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、CCl4の最初の投与の24時間前に静脈投与した。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1週間投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、cytochrome cタンパク質発現量はウェスタンブロッティングにより測定し、β-actinタンパク質発現量により標準化した。数値は平均値±SDで示されている(MEND empty+オリーブ油とMEND化AMO miR-34a+オリーブ油、n=3;MEND empty+ CCl4、n=8;MEND化AMO miR-34a+ CCl4、n=7)。Tukey's testにより*P < 0.01で解析された。
【図8】肝線維化進行段階における肝線維化モデルマウスへのMEND化AMO miR-34aの投与スケジュール。
【図9】肝線維化進行段階における肝組織へのmiR-34aノックダウンの影響。雄性、8週齢の肝線維化モデルマウスを用いた。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、4週間投与された。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、CCl4投与4週目の24時間前に静脈投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、(A)ALT値と(B)mature miR-34aの発現量を測定した。バーは各群の平均を示す。データは平均値±SDで示されている(オリーブ油、n=6;CCl4およびMEND empty+ CCl4およびMEND化AMO miR-34a+ CCl4、n=5)。
【図10】肝線維化進行段階における肝線維化マーカーmRNA 発現量へのmiR-34aノックダウンの影響。CCl4(オリーブ油で1 mL/kgに希釈)は腹腔内に週2回、1週間投与した。MEND化AMO miR-34a(1 mg/kg)は、4週間目のCCl4の投与の24時間前に静脈投与した。CCl4の最終投与の72時間後に、(A)αSMA、(B)Col1a1 mRNAの発現量がreal-time RT-PCR法により測定し、β-actin mRNA発現量により標準化した。バーは各群の平均を示す。データは平均値±SDで示されている(オリーブ油、n=6;CCl4およびMEND empty+ CCl4およびMEND化AMO miR-34a+ CCl4、n=5)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(肝線維化修復剤)
本発明の肝線維化修復剤は、少なくとも、マイクロRNAであるmiR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する物質を含む。
本発明の「miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する」とは、該阻害物質が肝臓(肝組織、肝細胞)中に存在した場合において、該阻害物質が存在しない場合と比較して、miR-34aの発現量が肝臓(肝組織、肝細胞)で低下している、及び/又は、miR-34aの特有の機能(例:アポトーシス促進)が肝臓(肝組織、肝細胞)で低下していることを意味する。
本発明の「肝線維化修復」とは、肝組織の線維化を予防、遅延、減弱、停止だけでなく、一度線維化した肝組織を正常の肝組織に戻すことを意味する。

【0012】
(miR-34a)
miR-34aは、miR-34 ファミリー(miR-34a、miR-34b、miR-34c の 3 miRNAs から構成されている)に属し、これらmiRNAs のseed sequence は同一であるため、共通した遺伝子を標的とすると考えられている。マウスにおいて、miR-34aはほとんどの臓器に発現が認められるのに対し、miR-34b/c は肺を除いてその発現量が miR-34a と比べて低値であることから、生体内では主に miR-34a が標的遺伝子の発現に寄与していると考えられる。miR-34a は B-cell lymphoma 2 をはじめとする癌遺伝子の発現を抑制することから、癌抑制遺伝子として知られている。

【0013】
(miR-34aの発現を阻害する物質)
本発明の「miR-34aの発現を低下させる及び/又は機能を阻害する物質」とは、特に限定されないが、例えば、以下を例示することができる。
(1)miR-34aの相補配列であるオリゴヌクレオチド。
(2)miR-34aの相補配列であり、かつ、miR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド。
ここで、「miR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド」とは、配列番号1に記載のオリゴヌクレオチドが有するmiR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用と比較して、低くても高くても良い。例えば、低い場合には、約10%~90%であり、高い場合には、110%~500%である。
(3)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。
(4)miR-34aとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、miR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド。
ここで、「ストリジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイズが形成されるが、非特異的なハイブリダイズが形成されない条件を意味する。例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上相同性を有するDNA(オリゴヌクレオチド)同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸同士がハイブリダイズしない条件を意味する。
(5)上記(1)~(4)のオリゴヌクレオチドに対して1~4個(又は、1個、1~2個、1~3個)の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつmiR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド。
(6)配列番号1(ACAACCAGCTAAGACACTGCCA)に記載のオリゴヌクレオチド。
(7)配列番号1(ACAACCAGCTAAGACACTGCCA)に記載のオリゴヌクレオチドに対して1~4個(又は、1個、1~2個、1~3個)の塩基が欠失、置換又は付加されており、かつmiR-34aの発現を低下させる又は機能を阻害する作用を有するオリゴヌクレオチド。
加えて、上記オリゴヌクレオチドは、自体公知の核酸合成法を使用して合成することができる。

【0014】
(化学修飾)
上記で述べたオリゴヌクレオチドは、好ましくは、一部もしくは全ての塩基を化学修飾する。例えば、2'-OMe化修飾、S化修飾、LNA化修飾、PNA化修飾、コレステロール修飾、α-トコフェロール修飾等を例示することができるが、特に好ましいのは全塩基の2'-OMe化修飾およびS化修飾である。

【0015】
(封入体)
上記で述べたオリゴヌクレオチドは、肝臓(肝組織、肝細胞)への導入効率を考慮して、自体公知の封入体を使用することができる。例えば、pH応答性カチオン性膜脂質、リポソーム、ナノミセル、ハイドロゲル、アテロコラーゲン等を例示することができるが、特に好ましいのは、pH応答性カチオン性膜脂質である。

【0016】
(肝線維化修復剤の適用対象)
本発明の肝線維化修復剤は、一度線維化した肝組織を正常の肝組織に戻す作用があるので、本発明の肝線維化修復剤の適用対象は、主に、すでに線維化が発生している場合、線維化の進行が重篤な場合を対象とする。

【0017】
(肝線維化修復剤の治療対象)
本発明の肝線維化修復剤の治療対象は、哺乳動物を包括的に含む。哺乳動物の例として、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル等であるが、特に限定されない。

【0018】
(肝線維化修復剤に含まれる生理活性物質)
本発明の肝線維化修復剤には、生理活性物質が含まれていても良い。生理活性物質は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、多糖(例えばヘパリン)、オリゴ糖、単糖、二糖、有機化合物、有機金属化合物、又は無機化合物等が挙げられるが特に限定されない。より詳しくは、生物学的に活性な分子、例えば、ホルモン、増殖因子、増殖因子産生ウイルス、増殖因子阻害薬、増殖因子受容体、抗炎症薬、代謝拮抗薬、インテグリン遮断薬、又はセンス遺伝子若しくはアンチセンス遺伝子等が挙げられる。
さらにより詳しくは、増殖因子の例としては、白血病阻害因子(LIF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)、インスリン様増殖因子(IGF)、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ヒト成長ホルモン、血小板誘発増殖因子(PDGF)、インターロイキン、サイトカイン、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。

【0019】
(肝線維化修復剤に含まれる担体)
本発明の肝線維化修復剤には、担体が含まれていても良い。担体の例としては、生理食塩水、溶媒、分散培地、細胞培養液、水溶性緩衝、抗酸化剤等が挙げられるが特に限定されない。

【0020】
(肝線維化修復剤の投与形態)
本発明の肝線維化修復剤の投与経路は特に限定されない。例えば、経口投与、静脈内注射投与、動脈内注射投与、門脈内注射投与、皮内注射投与、皮下注射投与、筋肉内注射投与、又は腹腔内注射投与等を利用することができる。
本発明の「miR-34aの発現を低下させる及び/又は作用を阻害する物質」がオリゴヌクレオチドの場合には、投与対象の生体内(特に、肝臓内)で該オリゴヌクレオチドの複製を行うことができる組換えベクターを使用しても良い。該組換えベクターは、自体公知のベクター(アデノウイルス等)を使用することができる。さらに、該オリゴヌクレオチドは、細胞中に直接導入してもよい。例えば、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン、カルシウムリン酸トランスフェクション等を例示することができる。

【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、本実施例は、金沢大学動物実験規程に従って行った。
【実施例1】
【0022】
(使用した材料、測定器具及び方法)
使用した各材料、使用した各測定器具及び使用した各方法は、以下の通りである。
【実施例1】
【0023】
(使用した各材料及び使用した各測定器具)
CCl4、オリーブ油、マイヤーヘマトキシリン溶液、エオジン溶液、ファストグリーンFCF、及びワンギーソン液Pは、市販品(和光純薬工業)を使用した。ALT値測定装置は、富士ドライケムシステムを使用した。染色剤であるDirectred 80はSigma-Aldrich (St. Louis, MO) より購入した。RNA抽出液であるRNAisoは、タカラバイオ (Shiga, Japan) より購入した。凍結組織切片作製用包埋剤であるOptimal cutting temperature (O.C.T) compoundは、サクラファインテックジャパン (Tokyo, Japan) より購入した。脂溶性の封入材であるMount-quickは、大道産業 (Saitama, Japan) より購入した。マウスモノクローナルcytochrome c抗体は、Abcam (Cambridge, UK) より購入した。IRDye 680LTヤギ抗マウスIgGは、LI-COR Biosciencesより購入した。
さらに、その他の試薬は和光純薬工業等の特級または生化学用のものを用いた。
【実施例1】
【0024】
(使用したアンチマイクロRNA)
本実施例で使用したアンチマイクロRNA(5'-ACAACCAGCTAAGACACTGCCA-3':配列番号1)に化学修飾(2'-OMe化およびS化修飾)したanti-miRNA oligonucleotide(AMO)for miR-34a (AMO miR-34a)は、北海道システムサイエンスに合成を依頼して、作成した。
【実施例1】
【0025】
(MEND)
Multifunctional envelope-type nano device (MEND) は、本発明者である北海道大学の原島教授らによって開発されたpH応答性カチオン性膜脂質である。血中では、MENDは電気的に中性を示し、ApoEタンパク質と結合してlow density lipoprotein receptorを発現する肝実質細胞にエンドサイトーシスにより取り込まれる。エンドソームの成熟化に伴ってエンドソーム内が酸性化すると、MENDはカチオン性に変化しエンドソーム膜との静電的に相互作用して予め内封しておいた核酸を細胞質に効率良く送達することができる。
【実施例1】
【0026】
{Picrosiriusred (PSR) 溶液}
Directred 80及びファストグリーンFCF 0.2 gをワンギーソン液P 200 mLに溶解させて、作製した。なお、PSR溶液は、染色液である。
【実施例1】
【0027】
(マウスへのCCl4の投与と採血並びに肝臓の採取)
C57BL/6Jマウス (雄性、8週齢 22~25g; 日本SLC, Shizuoka, Japan) を馴化飼育した後、オリーブ油で5倍希釈したCCl4 1 mL/kgを週2回、1、2、4、8週間、腹腔内投与した (n=4)。コントロール群 (n=3) には、同じ容量のオリーブ油を腹腔内投与した。最終投与より72時間後に下行大静脈より採血を行い、肝臓を採取した。採血にはヘパリナイズしたシリンジを用いた。
【実施例1】
【0028】
(血漿の分離およびALT値の測定)
上記で採血した血液を12,000 rpm、4 ℃で5分間遠心分離し、血漿を回収した。その後、血漿10 μLをスライドにアプライし、富士ドライケムシステムであるDRI-CHEM 4000V (富士フイルム) を用いてALT値を測定した。
【実施例1】
【0029】
(HE染色及びPSR染色)
O.C.T. compoundで封入した肝組織をミクローム社のクリオスタットHM505E (Walldorf, Germany) を用いて10 μmの厚さにスライスし、スライドに貼り付け組織切片を作製した。室温で1時間風乾後、30秒間水に浸して洗浄した。
HE染色では、マイヤーヘマトキシリン溶液に1分間浸し、水洗した後、エオジン溶液に1分間浸した。
PSR染色では、PSR溶液に30分間浸した。水洗した後、70%エタノール、90%エタノール、99.5%エタノール、100%エタノール、キシレンの順に5分間浸して脱水し、風乾後にMount-quickを用いて封入した。
【実施例1】
【0030】
(マウスへのMEND化AMO miR-34aの投与)
MENDはアルコール希釈法を用いて調製した。総脂質量が3090 nmolとなるようにYSK13-C3 (3-(dimethylamino)propyl (12Z,15Z)-3-((9Z,12Z)-octadeca- 9,12-dien-1-yl) henicosa2,12,15-trienoate) 、コレステロール、メトキシエチレングリコール2000 ジメチルグリセロールを含む90% tert-ブタノール溶液400 μLに、撹拌下でAMO miR-34a 80μgを含む水溶液200μLを添加した。さらに20 mMクエン酸緩衝液 (pH4.0) 2 mLに、撹拌下で脂質- AMO miR-34a混合溶液を注入した。続いて10-14 mLのPBSを添加後に限外濾過精製を計2回行った。調製したMENDの平均粒子径は80 nm程度、AMO miR-34aの封入率は90%程度であった。MEND emptyはAMO miR-34aを含まない精製水を使用し、上記と同様の操作により調製した。
C57BL/6Jマウスに、PBSで希釈したMEND化AMO miR-34a (1 mg/kg、容量は10 mL/kg) またはAMO miR-34aを封入していないMEND empty (10 mL/kg) を静脈投与し、24時間後より、上記の「マウスへのCCl4の投与と採血並びに肝臓の採取」に準じてマウスへのCCl4の投与を1週間行った。最終投与より72時間後に下行大静脈より採血を行い、肝臓を採取した。
【実施例1】
【0031】
(マウス肝サンプルにおけるmature miR-34aおよびmRNA発現量の測定)
マウス肝(約1 mg)にRNAisoを1 mL加え、ガラスホモジナイザーでホモジナイズした後、1.5 mLチューブに回収した。次に、200 μLのクロロホルムを加え激しく撹拌し、5分間室温に置いた後15,000 rpm、4℃で15分間遠心分離した。水層を別の1.5 mLチューブに回収し、500 μLのイソプロパノールを加え、転倒撹拌した後室温に5分間放置した。15,000 rpm、4℃で10分間遠心分離し、沈殿を1 mLの70%エタノールで洗浄した。この沈殿を風乾し、DEPC処理精製水を加え、60℃の水浴で10分間溶解させて、total RNAを調製した。
次に、TaqMan MicroRNA Assayを用いたreal-time RT-PCR法によりmature miR-34aを測定した。より詳しくは、上記のtotal RNAからTaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kitを用いてcDNAを合成した。Total RNA 75 ng、100 mM dNTPs 0.075μL、Reverse Transcription Buffer 0.75μL、MultiScribe Reverse Transcriptase 0.5μL、RNase Inhibitor 0.095μL、miR-34a用RT primer 1.5 μL、Nuclease-free waterを加え全量7.5 μLとし、5分間氷冷した。
その後、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間、サーマルサイクラーを用いて反応させcDNAを合成した。得られたcDNAサンプル1.33 μLに、TaqMan Universal PCR Master Mix 10 μL、TaqMan MicroRNA Assay mix 1 μL、Nuclease-free waterを加え全量20 μLとした。反応は、「ホールド反応を95℃で10分間行った後、解離反応を95℃で15秒間、アニーリングと伸長反応を60℃で60秒間とし、40サイクル」で行った。
【実施例1】
【0032】
(マウス肝サンプルにおけるmRNA発現量の測定)
上記のtotal RNAを使用して逆転写反応を行った。より詳しくは、Total RNA 2 μg、ランダムヘキサマー (150 ng/μL) 1 μLにDEPC処理精製水を加えて29 μLとし、サーマルサイクラーを用いて70℃で10分間反応後、氷冷した。Reaction buffer for ReverTra Ace 8 μL、10 mM dNTPs 2 μL、ReverTra Ace (100 units/μL) 1 μLを加えて全量を40μLとした。30℃で10分間、42℃で1時間、98℃で10分間、サーマルサイクラーを用いて反応させて、cDNAを合成した。
次に、上記cDNAに、下記で示すプライマーを用いてαSMA、Col1a1、Tgfβ1、β-actin mRNA発現量を測定した。
なお、αSMAおよびCol1a1は、ホールド反応を95℃で30秒間行った後、解離反応を94℃で20秒間、アニーリングと伸長反応を64℃で20秒間とし、40サイクル行った。
Tgfβ1は、ホールド反応を95℃で30秒間行った後、解離反応を94℃で20秒間、アニーリングを60℃で30秒間、伸長反応を72℃で20秒間とし、40サイクル行った。
β-actinは、ホールド反応を94℃で30秒間行った後、解離反応を94℃で20秒間、アニーリングと伸長反応を68℃で20秒間とし、40サイクル行った。
【実施例1】
【0033】
(プライマー配列)
αSMA forward:5'-AAC ACG GCA TCA TCA CCA AC-3'(配列番号2)
αSMA reverse:5'-ATA CAT GGC GGG GAC ATT GA-3' (配列番号3)
Tgfβ1 forward:5'-ACC GCA ACA ACG CCA TCT ATG-3' (配列番号4)
Tgfβ1 reverse:5'-CGT CAA AAG ACA GCC ACT CAG-3' (配列番号5)
Col1a1 forward:5'-GCC AAG AAG ACA TCC CTG AAG-3' (配列番号6)
Col1a1 reverse:5'-CCT CGA CTC CTA CAT CTT CTG-3'(配列番号7)
β-actin forward:5'-ACG GCC AGG TCA TCA CTA TTG G-3'(配列番号8)
β-actin reverse:5'-CTA GGA GCC AGA GCA GTA ATC TC-3'(配列番号9)
【実施例1】
【0034】
(Whole cell lysateの調製とタンパク質定量)
マウス肝約20 mgに最終濃度が500 μg/mL APMSF(4-Amidinophenylmethanesulfonyl fluoride hydrochloride)、50 μg/mLロイペプチン、100 μg/mLアプロチニンになるように添加したNP-40 lysis bufferを加え、テフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いてホモジナイズし、氷上で1時間インキュベートした。その際、15分間に1回激しく撹拌した。13,000 rpm、4 ℃で、15分間遠心分離後、上清を回収しwhole cell lysateを得た。
次に、タンパク質定量はBradford法 (Bradford, 1976) に従い、Bio-RadのProtein Assay kitを用いた。γ-グロブリン溶液0、 5、10、15、20 mg/mLを検量線に、精製水で10倍希釈したtotal cell homogenate 10 μLと精製水で5倍希釈したDye Reagent (Bio-Rad) 490 μLを混合し、室温で反応させた。595 nmの吸光度をBiotrak II plate reader (GE Healthcare Bio-Sciences, Piscataway, NJ) を用いて測定した。
【実施例1】
【0035】
(SDS-PAGEとウェスタンブロッティング)
上記のwhole cell lysateを用いて、厚さ1 mm、15%ポリアクリルアミドゲルにタンパク質を20μgアプライした。SDS-PAGE後、Transfer cellを用いタンパク質をアクリルアミドゲルからImmobilon-P PVDF膜に電気的に転写した。この際、ろ紙、アクリルアミドゲル、PVDF膜は転写用緩衝液に浸して行った。転写後、PVDF膜をOdyssey blocking buffer (LI-COR Biosciences, Cambridge, UK) で1時間ブロッキングし、1次抗体反応を室温で行った。1次抗体として、マウスモノクローナルcytochrome c抗体(500倍希釈)を用い、一晩反応させた。次に、0.1% PBSTで5分間ずつ4回洗浄後、2次抗体を反応室温で行った。2次抗体として、IRDye 680LT標識ヤギ抗マウスIgG (PBSTで10,000 倍希釈) を用い、1時間反応させた。その後、0.1% PBSTで5分間ずつ3回、さらに0.1% PBST/0.01% SDSで5分間洗浄し、最後にPBSで5分間洗浄した。バンドの検出には、Odysseyインフラレッドイメージングシステム (LI-COR Biosciences) を使用し、定量にはOdyssey software (ver 1.2) を用いた。
【実施例1】
【0036】
(統計解析)
二群間の比較はStudent's t-testにより、多群間の比較はOne-way ANOVAとTukey's testにより解析した。P < 0.05の時、統計学的に有意とした。
【実施例2】
【0037】
(肝線維化におけるmiR-34aの役割)
本実施例では、肝線維化モデルの評価、Mature miR-34aの発現変動解析、肝線維化発症における肝組織へのmiR-34aノックダウンの影響、肝線維化マーカーmRNA発現量へのmiR-34aノックダウンの影響及びcytochrome cタンパク質発現量へのmiR-34aノックダウンの影響を確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例2】
【0038】
(肝線維化モデルの評価)
CCl4反復投与後1、2、4、8週目に採取した血漿を用いてALT値を測定した (参照:図1)。CCl4群は投与1週目からオリーブ油群と比べて高値を示す傾向が認められ、8週目では有意に高値を示した。
HE染色に関し、投与1週目から炎症細胞の浸潤および細胞死が認められ、その程度は投与期間依存的に増大した (参照:図2上)。また、投与1週目では一部の門脈域周辺に線維化も認められ、その範囲は投与期間依存的に拡大し、投与4週目、8週目では隣接する門脈域の間に線維性架橋の形成が認められた。
PSR染色に関し、投与1週目からコラーゲンの沈着が認められ、投与4週目、8週目ではコラーゲン蓄積量の増大および架橋の形成が認められた(参照:図2下)。
以上より、CCl4の反復投与により線維化モデルが作製できることを確認した。
【実施例2】
【0039】
(Mature miR-34aの発現変動解析)
miR-34aが肝線維化のどの段階に関与しているか調べるため、mature miR-34a発現量を測定した (参照:図3)。CCl4群は、投与1週目からオリーブ油群と比べて、mature miR-34a発現量が有意に高値を示し、その上昇の程度は線維化の度合いに関わらず一定であった。従って、miR-34aは肝線維化の初期段階から関与していることを確認した。
【実施例2】
【0040】
(肝線維化発症における肝組織へのmiR-34aノックダウンの影響)
miR-34aノックダウンによる肝線維化の発症への影響を調べるために、CCl4投与前にMEND化AMO miR-34aを投与し、翌日よりCCl4を1週間反復投与して検討した。mature miR-34a発現量は、オリーブ油を投与した場合では、MEND化AMO miR-34a投与によりMEND empty投与に比べて顕著に低い値を示した (参照:図4A)。また、CCl4投与により認められたmature miR-34a発現量の上昇もMEND化AMO miR-34a投与により有意に抑制されたことから、AMO miR-34aが肝臓内で機能的に働いていることが示された。ALT値は、CCl4投与によりMEND empty群で顕著に高い値を示す個体が1匹存在したが、CCl4投与により認められたALT値の上昇へのMEND化AMO miR-34a投与の影響は認められなかった (参照:図4B)。
次に、MEND化AMO miR-34a投与により肝線維化の程度が変化するか調べる目的でHE染色およびPSR染色による病理組織学的評価を行った (参照:図5)。CCl4投与により認められた細胞死 (HE染色)、および一部のコラーゲン沈着 (PSR染色) が、MEND化AMO miR-34a投与により減弱していた。従って、miR-34aは肝線維化の発症に関与していることを確認した。さらに、AMO miR-34aは肝線維化に対して予防作用があることを示した。
【実施例2】
【0041】
(肝線維化マーカーmRNA発現量へのmiR-34aノックダウンの影響)
MEND化AMO miR-34a投与による肝線維化への予防作用をより詳細に調べるため、肝線維化マーカーのmRNA発現量を測定した。αSMA mRNA発現量はCCl4投与により上昇し、その上昇はMEND化AMO miR-34a投与により抑制される傾向が認められた (参照:図6A)。
αSMAは活性化した肝星細胞に高発現している遺伝子であることから、AMO miR-34aは肝星細胞の活性化、増殖を抑制している可能性が考えられた。
一方、肝星細胞が産生する細胞外マトリクスであるCol1a1および肝星細胞の活性化因子であるTgfβ1 mRNA発現量に関してはMEND化AMO miR-34a投与による影響は認められなかった (参照:図6B、C)。
【実施例2】
【0042】
(Cytochrome cタンパク質発現量へのmiR-34aノックダウンの影響)
肝線維化は肝細胞が障害され、それに対する創傷治癒の結果、コラーゲンなどの細胞外マトリクスが過剰に蓄積した状態である。miR-34aはBcl-2やSIRT1などの抗アポトーシス遺伝子を発現抑制することでアポトーシスを誘導することが知られている。
これにより、アポトーシスのマーカーであるcytochrome cタンパク質発現量への影響を調べた (参照:図7)。
Cytochrome cタンパク質発現量はCCl4投与により上昇し、その上昇はMEND化AMO miR-34a投与により有意に抑制された。
以上より、AMO miR-34aはアポトーシスを減弱させることによっても肝線維化の発症を抑制していることを確認した。
【実施例3】
【0043】
(miR-34aのアンチマイクロオリゴヌクレオチドによる線維化した肝組織の修復作用)
miR-34aの発現を低下させる又は作用を阻害する物質であるAMO miR-34aが、線維化した肝組織の修復作用を有するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例3】
【0044】
(肝線維化進行段階における肝線維化モデルマウスへのMEND化AMO miR-34aの投与)
MENDへのAMO miR-34aの封入は、前記の「マウスへのMEND化AMO miR-34aの投与」に準じて行った。図8に記載のMEND化AMO miR-34aの投与スケジュールに従い、C57BL/6JマウスにCCl4の投与を4週間行った。CCl4投与4週目の24時間前にPBSで希釈したMEND化AMO miR-34a (1 mg/kg、容量は10 mL/kg) またはAMO miR-34aを封入していないMEND empty (10 mL/kg) を静脈投与し、CCl4の最終投与より72時間後に下行大静脈より採血を行い、肝臓を採取した。
【実施例3】
【0045】
(肝線維化進行段階における肝組織へのmiR-34aノックダウンの影響)
miR-34aノックダウンにより肝線維化の進行に対しても抑制作用が認められるか調べるために、4週間CCl4を反復投与して肝線維化を進行させている条件下、CCl4投与4週目の24時間前にMEND化AMO miR-34aを単回投与し、肝線維化に対する修復能を検討した。mature miR-34a発現量およびALT値は、CCl4投与により上昇し、その上昇はMEND化AMO miR-34a投与により抑制される傾向が認められた。 (参照:図9A、B)。
【実施例3】
【0046】
(肝線維化進行段階における肝線維化マーカーmRNA発現量へのmiR-34aノックダウンの影響)
MEND化AMO miR-34a投与による肝線維化の修復作用をより詳細に調べるため、肝線維化マーカーのmRNA発現量を測定した。
αSMA mRNA発現量はCCl4投与により上昇し、その上昇はMEND化AMO miR-34a投与により抑制される傾向が認められた (参照:図10A)。αSMAは活性化した肝星細胞に高発現している遺伝子であることから、AMO miR-34aは線維化の進行段階においても肝星細胞の活性化、増殖を抑制している可能性が考えられた。
一方、肝星細胞が産生する細胞外マトリクスであるCol1a1 mRNA発現量に関し、MEND化AMO miR-34a投与による影響は認められなかった (参照:図10B)。
以上により、本実施例及び実施例2の結果により、miR-34aの発現を低下させる又は作用を阻害する物質は、線維化した肝組織の修復作用を有すると考えられる。
【実施例3】
【0047】
(総論)
miR-34aの発現を低下させる又は作用を阻害する物質であるAMO-miR-34a投与によりコラーゲン沈着の減弱が認められた(参照:図5)。すなわち、miR-34aの発現を低下させる又は作用を阻害する物質により、線維化した肝組織が修復している。
加えて、実施例2及び3の結果から、miR-34aの発現を低下させる又は作用を阻害する物質の投与により、matrix metalloproteinases (MMPs) 等のコラーゲンの分解に関与する因子が活性化され、肝細胞障害だけでなく線維化の様々な過程に抑制的に作用することで線維化した肝組織の修復を促進できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明では、新規な肝線維化修復剤を提供できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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