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明細書 :キャパシタ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-164957 (P2016-164957A)
公開日 平成28年9月8日(2016.9.8)
発明の名称または考案の名称 キャパシタ及びその製造方法
国際特許分類 H01G  11/46        (2013.01)
H01G  11/22        (2013.01)
H01G  11/02        (2013.01)
H01G  11/86        (2013.01)
FI H01G 11/46
H01G 11/22
H01G 11/02
H01G 11/86
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2015-045380 (P2015-045380)
出願日 平成27年3月8日(2015.3.8)
発明者または考案者 【氏名】星野 勝義
【氏名】大久保 有貴
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121658、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 昌義
審査請求 未請求
テーマコード 5E078
Fターム 5E078AA01
5E078AB04
5E078BA27
5E078BB30
5E078BB39
要約 【課題】より高エネルギー化、高出力化を図ることのできるコバルトナノ構造物の製造方法及び、このコバルトナノ構造物を用いたキャパシタを提供する。
【解決手段】本発明の一観点にかかるコバルトナノ構造物の製造方法は、コバルト錯体を含む電解液に一対の電極を浸漬し、磁場中において40℃より高く80℃より低い温度範囲内で前記電解液を電気分解して一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させることを特徴とする。この場合において、限定されるわけではないが、磁場は静磁場であって、1mT以上10T以下の範囲内にあることがこのましい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
コバルト錯体を含む電解液に一対の電極を浸漬し、磁場中において40℃より高く80℃より低い温度範囲内で前記電解液を電気分解して一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させるコバルトナノ構造物の製造方法。
【請求項2】
前記磁場は静磁場であって、1mT以上10T以下の範囲内にある請求項1記載のコバルトナノ構造物の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する取り組みが重要となってきており、より環境への負担が軽く、かつ効率のよい電源が求められてきている。この要望に寄与すると期待される一つの技術として、電気化学キャパシタがある。電気化学キャパシタとは、電気化学的な作用を用いて電荷を蓄積、出力するためのデバイスであり、代表的なものとして電気二重層キャパシタ、更には、最近新たに提案されてきているものとしてレドックスキャパシタがある。
【0003】
ここで電気二重層キャパシタとは、一対の電極とこの一対の電極の間に配置される電解液とを有し、電解液と電極の界面において生じるイオンの吸着(非ファラデー反応)により形成される電気二重層を利用して電荷を蓄積することのできるキャパシタであり、非常に大きな比表面積を有する炭素材料等を電極として用いることで大容量化が可能であり、大きく期待されている。
【0004】
一方、レドックスキャパシタとは、活物質の複数の連続的なレドックス(酸化還元)反応により発現する疑似容量を利用して電荷を蓄積することのできるキャパシタであり、上記の電気二重層キャパシタよりも大容量で、かつ、電池よりも瞬時充放電特性に優れているといった利点があり、より大きく期待されている。
【0005】
上記に関連するキャパシタの公知技術としては、例えば下記特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-130980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、上記特許文献1に記載の技術は高エネルギーかつ高出力の電気化学キャパシタを実現するために有用な技術であると考えられる。
【0008】
しかしながら、キャパシタの高エネルギー化、高出力化に上限はなく、更なる高エネルギー化、高出力化を図ることは非常に重要である。
【0009】
そこで、本発明は上記に鑑み、より高エネルギー化、高出力化を図ることのできるコバルトナノ構造物の製造方法及びこのコバルトナノ構造物を用いたキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行っていたところ、コバルトナノ構造物を析出させる際に磁場を印加するとMHD効果及びマイクロMHD効果により構造が微細化し、実表面積が大きく、しかも高速イオン輸送が可能となるようなナノ構造を有するコバルトナノ構造物が創製され、電気的特性を大幅に改善できることを発見し、本件発明を完成させるに至った。ここで、「MHD効果」とは、構造物の電解析出の際に電極面に対して平行に磁場を引加すると電極面に渦状の対流が引き起こされ、析出する構造物の形態が変わる効果をいい、「マイクロMHD効果」とは、電極面に対して垂直方向の磁場を引加することで、電極表面の微小な領域でいくつもの小さな渦状の対流が引き起こされ、やはり電析物の構造を変える効果をいう。
【0011】
すなわち、本発明の第一の観点に係るコバルトナノ構造物の製造方法は、コバルト錯体を含む電解液に一対の電極を浸漬し、磁場中において40℃より高く80℃より低い温度範囲内で前記電解液を電気分解して一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によって、より高エネルギー化、高出力化を図ることのできるコバルトナノ構造物の製造方法及び、このコバルトナノ構造物を用いたキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板と印加磁場の位置の概略を示す図である。
【図2】実施形態に係るキャパシタの断面概略図である。
【図3】電気分解において用いた装置の概略を示す図である。
【図4】作製したコバルトナノ構造物のSEM像を示す図である。
【図5】実施例で作製した電極に対し、サイクリックボルタンメトリーを行った結果を示す図である。
【図6】実施例にて作製した定電流充放電試験を行った結果を示す図である。
【図7】実施例において用いた装置構成及び磁場方向の模式図を示す図である。
【図8】実施例において行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す図である。
【図9】実施例において作製した電極におけるコバルトナノ構造物のSEM像を示す図である。
【図10】実施例おける各電極に対し、ガルバノスタットを用い、定電流充放電試験を行った結果を示す図である。
【図11】実施例における各電極に対し、静電容量、放電容量、エネルギー密度、充放電曲線を確認した結果を示す図である。
【図12】120mTの場合におけるコバルトナノ構造物の繰り返し特性について測定を行った結果を示す図である。
【図13】実施例に係るコバルトナノ構造物のSEM像を示す図である。
【図14】実施例におけるガルバノスタットを用いて定電流充放電を行った結果を示す図である。
【図15】実施例の充放電繰り返し特性の結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態に係るキャパシタ(以下「本キャパシタ」という。)の製造方法(以下「本方法」という。)は、(1)コバルト錯体を含む電解液に一対の電極を浸漬し、磁場中において40℃より高く80℃より低い温度範囲内で電解液を電気分解して一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させるステップ(S1)と、(2)コバルトナノ構造物が析出した電極を、キャパシタ用電解質層を介して対向電極と対向させて配置するステップ(S2)と、を有することを特徴とする。
【0016】
本方法における(1)コバルト錯体を含む電解液に一対の電極を浸漬し、磁場中において40℃より高く80℃より低い温度範囲内で電気分解して一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させるステップは、コバルトナノ構造物を製造する方法であり、本実施形態ではキャパシタ用の電極として用いられる。
【0017】
本ステップにおける一対の電極は、導電性を有し、電解液から析出するコバルトナノ構造物を保持することのできるものであり、この限りにおいて限定されるわけではないが、導電性の板や、絶縁性の板の上に導電性の膜を配置したものを例示することができる。
【0018】
電極として導電性の板を含むものの例としては、例えば、金属板、カーボン板を例示することができる。絶縁性の板の上に導電性の膜を配置したものとしては、例えば、ガラス、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム等の絶縁性の板の上に、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アルミニウムドープ酸化スズ)、GTO(ガリウムドープ酸化スズ)等の酸化金属膜や、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の高分子膜等、導電性の膜を配置したものを例示することができる。なお、生産性、機械的強度、価格、軽量性の観点からは、金属板又はガラス基板上にITOを形成したものであることが好ましい。なお本電極における板は曲げることができる程度の可撓性を有していてもよく、導電性膜及び板に可撓性を持たせて曲げることで体積を少なくすることが可能となる。
【0019】
本ステップにおいて電解液は、イオン電導による電流が流れる物質であって、限定されるわけではないが、少なくとも溶媒、コバルト錯体、及び、支持電解質を含む。
【0020】
本ステップの電解液における溶媒としては、コバルト錯体及び支持電解質を保持するとともに、これらをイオンに解離することができるものであり、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えば水、有機溶媒を例示することができる。有機溶媒の場合、電気分解できる限りにおいて限定されるわけではないが、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ベンゾニトリル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン・炭酸プロピレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、及びそれらの溶媒の中で水に溶解する溶媒と水との混合溶媒等を例示することができる。
【0021】
また本ステップのコバルト錯体としては、電気分解によって還元され、電極上にコバルトナノ構造物として析出させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物([Co(NH]Cl)、ペンタアンミンコバルト(III)塩化物([Co(NHCl]Cl)、塩化コバルト(CoCl)、硫酸コバルト(CoSO)、及び硝酸コバルト(Co(NO)を挙げることができる。
【0022】
本ステップにおける電解液に含まれるコバルト錯体の量としては、電極上にコバルトナノ構造物を析出させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、溶媒100重量部に対して、0.001重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上10重量部以下であることがより好ましい。0.001重量部以上とすることでナノ構造体形成による電極実表面積拡大が可能となり、50重量部以下とすることでナノ構造体の密集による実表面積低下を抑制することが可能となる。
【0023】
また本ステップの支持電解質としては、コバルト金属の電解析出を妨げない限りにおいて限定されるわけではないが、溶媒が水である場合、例えばLiCl、LiBr、LiSO、LiOH、LiClO、NaCl、NaBr、NaSO、NaOH、NaClO、KCl、KBr、KSO、KOH、KClO、及び(CNOH、(CNCl、(CNBr、(CHNOH、(CHNCl、(CHNBr、及びそれらの水和物を挙げることができ、大きな実表面積を有するコバルトナノ構造物を形成する観点からは硫酸リチウム一水和物であることがより好ましい。また、溶媒が有機溶媒である場合は、例えば(CNClO、(CNBF、(CNPF、(CNClO、(CNBF、(CNPF、LiClO、NaClO、KClO、及び(CNOHを挙げることができる。なおコバルト金属への吸着の可能性がないという観点からはLiClO、NaClO、KClOであることがより好ましい。
【0024】
また本ステップにおける電解質に含まれる支持電解質の量としては、電極上にコバルトナノ構造物を析出させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、溶媒の重量を100重量部とした場合に、0.01重量部以上300重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上40重量部以下であることがより好ましい。0.01重量部以上とすることで十分な電解液の電気伝導を確保することができ、300重量部以下とすることで電解液の過度な粘度上昇を抑えることができ、コバルト金属の電解析出速度を著しく低下させない効果が発揮される。
【0025】
また本ステップにおいて電気分解は、コバルト錯体に対し電解還元を行い、電極上にコバルトナノ構造物を形成することができる限りにおいて限定されるわけではないが、一定電位の電位を印加する定電位電解還元であることは好ましい。また、電解還元は、2枚の電極のみを利用する2電極式セルを用いた電解によっても、参照電極を用いた3電極式セルを用いた電解還元によっても実施できるが、電極の電位を正確に規定するためには3電極式セルを用いた場合の方が好ましく、大量生産による製品化という観点からは2電極式セルであることが好ましい。なお、3電極式セルを用いた場合において参照電極としては、汎用される参照電極であれば用いることができ、例えば、飽和カロメル電極(SCE)、銀/塩化銀電極、標準水素電極(SHE)などが好適に使用される。またこの際における電位としては、例えば参照電極にSCEを用いた場合には、電極に-0.5V~-2V
vs.SCEの電位を印加することが好ましく、より好ましくは-0.8V~-1.5V
vs.SCEの電位範囲である。なお電解還元を行う時間としても、限定されるわけではないが、上記の望ましい電解の範囲下で0.1秒以上10時間以下行うことが好ましく、より好ましくは1秒以上1時間以下である。
【0026】
また、本ステップにおいて、電気分解における通電量は、0.01C/cm以上10.0C/cm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは3.0C/cm未満の範囲である。0.01C/cm以上とすることで実用的な充放電容量を有することができるようになるといった効果があり、また10.0C/cm以下とすることで容量の低下を引き起こすような構造変化を避けることができるといった効果がある。また3.0C/cm未満とすることで、大きな充放電容量を有するような構造を維持することができるといった効果がある。
【0027】
また本ステップでは、一対の電極を浸漬し、磁場中において電気分解する。このようにすることで、析出するコバルトナノ構造物を大きな実表面積を備え、かつ高速イオン輸送ができる形態とすることができる。より具体的には、磁場を印加しないで形成された構造と比較して、より微細かつ複雑なコバルトナノ構造物を析出させることができる。
【0028】
また本ステップにおいて印加する磁場は、静磁場であっても交流磁場であってもよいが、静磁場であることがよりコバルトナノ構造物の微細構造化を促進する観点から好ましい。静磁場を印加する場合、例えば永久磁石を用い、この永久磁石のN極及びS極の間に上記一対の電極を配置することで容易に実現でき、十分に磁石の形成する磁場が強ければ一対の電極の近傍に一つの永久磁石を配置することとしてもよい。また、交流磁場の場合、電磁石、具体的には導線からなるコイルを用い、このコイル内部に一対の電極を配置し、コイルに交流電流を流すことで交流磁場を発生させることもできる。なお図1に、印加する磁場と電極との関係の例について概略を示しておく。
【0029】
また印加する磁場の方向は、電極の面に対し略平行又は略垂直であることが好ましい。なおここで「略平行」とは、完全に平行であることを含むことはもちろんであるが、完全に平行でない場合を含め、電極の面と静磁場の方向との間において数度程度の誤差範囲を含むものであり、例えば±5度の誤差は含まれるものである。またここで「略垂直」も、完全に垂直であることを含むことはもちろんであるが、電極の面の向きが完全に平行でない場合を含め、電極の面と静磁場の方向との間において数度程度の誤差範囲を含むものであり、例えば±5度の誤差は含まれるものである。
【0030】
また本ステップにおいて、磁場の強さとしては、1mT以上10T以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは5mT以上1T以下の範囲である。1mT以上とすることでコバルトナノ構造物のナノ構造化を発現させることができるといった効果があり、10T以下とすることで、磁場強度が大きすぎることによる電極基板や配線の設置等への影響を抑えた電解操作が可能となるといった効果がある。
【0031】
また本ステップにおいて、電気分解の際の温度は、40℃より高く80℃より低い温度、好ましくは50℃以上70℃以下である。上記の範囲とすることで、今まで報告されていたキャパシタの特性を大幅に上回る特性を得ることができる。具体的には常温で作成した場合の2倍程度の容量を発現することができる。この効果については後述の実施例の結果により明らかとなる。
【0032】
以上本ステップは、上記の処理により、一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させることができる。
【0033】
本実施形態において、電極上に形成されるコバルトナノ構造物とは、実電極面積を拡大することができるよう形成されるものであり、コバルトナノ構造物としては、電極面積を拡大できる限りにおいて限定されるわけではないが、コバルトナノワイヤー、コバルトナノデンドライト、ポーラスコバルト、コバルトナノ・マイクロビーズなどを例示することができ、より大きな実表面積を形成できる観点からはコバルトナノワイヤーであることが好ましい。
【0034】
なお本ステップにより、電極の上に析出させるコバルトナノ構造物の形成される量としては、限定されるわけではないが、2μg/cm以上2000μg/cm以下の範囲にあることが好ましい。2μg/cm以上とすることで実用的な充放電容量を有することができるようになるといった効果があり、2000μg/cm以下とすることで容量の低下を引き起こすような構造変化を避けることができるといった効果がある。
【0035】
また本方法では、(2)対向電極を準備し、コバルトナノ構造物が形成された電極と対向して配置させると共にキャパシタ用電解質層をこの間に充填させるステップを有する。本ステップでは、上記(1)のステップで作製した電極を用い、具体的にキャパシタを作製するステップである。
【0036】
まず、対向電極を準備する。対向電極は、上記(1)のステップで作製した電極と対になるものであり、この一対の電極の間に電圧を印加し、電荷を蓄積させることができるようになる。
【0037】
対向電極は、導電性を有するものである限りにおいて限定されるものではないが、導電性の板や、絶縁性の板の上に導電性の膜を配置したものを例示することができる。導電性の板を含むものの例としては、例えば、金属板、カーボン板を例示することができ、絶縁性の板の上に導電性の膜を配置したものとしては、例えば、ガラス、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム等の絶縁性の板の上に、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アルミニウムドープ酸化スズ)、GTO(ガリウムドープ酸化スズ)等の導電性の膜を配置したものを例示することができる。なお、生産性、機械的強度、価格、軽量性の観点からは、金属板又はガラス基板上にITOを形成したものであることが好ましい。
【0038】
なお対向電極は、上記で示す例のものをそのまま使用することができるが、上記(1)のステップで作製した電極ももちろん採用することができ、一対の電極の両方を上記(1)のステップで作製した電極とすることが電荷蓄積量増加の観点からより好ましい。
【0039】
また本ステップにおいて、対向電極と上記(1)で作製した電極の距離は、限定されるわけではないが、10μm以上5cm以下であることが好ましく、100μm以上1cm以下とすることがより好ましい。10μm以下とすることで充放電の電気化学反応を生じさせるための電気二重層の十分な成長を行わせることができ、100μm以上とすることでこの効果が顕著となる。一方、5cm以下とすることで軽量、コンパクト化が可能となり、1cm以下とすることでこの効果が顕著となる。
【0040】
また本ステップにおいては、この一対の電極の間に、キャパシタ用電解質層をこの間に充填させる。このようにすることで、イオン導電による電流を流すことが可能となり、蓄電量を増加させることが可能となる。なお、本ステップにおいては、一対の電極を配置した後に表面張力を用いてこの間にキャパシタ用電解質を充填させてもよいし、キャパシタ用電解質内に一対の電極を挿入して一対の電極を対向させて配置することとしてもよく、また、電解質を含んだ多孔質の絶縁性スペーサーを間に配置することとしても良い。
【0041】
また本ステップにおいて、キャパシタ用電解質層は、電解質を含む層であって、支持電解質を含む溶媒を有する電解液であってもよいし、ゲル状電解質であってもよいし、固体電解質であってもよい。
【0042】
本実施形態において、キャパシタ用電解質層が電解液の場合、溶媒としては、電解質を保持することができる限りにおいて限定されるものではないが、水や有機溶媒を採用することができ、作動電圧の拡大、エネルギー密度の向上の観点からは有機溶媒を用いても良い。なお有機溶媒の場合、限定されるわけではないが、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ベンゾニトリル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン・炭酸プロピレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、及びこれらの溶媒のうち水に溶解するものの水との混合溶媒等を例示することができる。
【0043】
本実施形態において、キャパシタ用電解質層が電解液の場合、支持電解質としては、限定されるわけではないが、溶媒が水である場合、例えばLiCl、LiBr、LiSO、LiOH、LiClO、NaCl、NaBr、NaSO、NaOH、NaClO、KCl、KBr、KSO、KOH、KClO、及び(CNOH、並びにそれらの水和物を挙げることができ、コバルトナノ構造物の化学的安定性の観点からは、水酸化物が望ましい。また、溶媒が有機溶媒である場合は、例えば(CNClO、(CNF、(CNPF、(CNClO、(CNF、(CNPF、LiClO、NaClO、KClO、及び(CNOHを挙げることができる。また、コバルトナノ構造物と水系の溶媒を組み合わせたキャパシタを形成する場合、コバルトナノ構造物の化学的安定性の観点からはLiOH、NaOH、KOH、(CNOH及び(C)NOHであることが好ましい。
【0044】
また本ステップにおける電解質に含まれる支持電解質の量としては、限定されるわけではないが、溶媒の重量を100重量部とした場合に、0.01重量部以上300重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上40重量部以下であることがより好ましい。0.01重量部以上とすることで十分な電解液の電気伝導を確保することが可能となり、300重量部以下とすることで電解液の過度な粘度上昇を抑えることができ、充放電に関わるイオンの輸送を阻害しないといった効果がある。
【0045】
なお、電解液を一対の電極間に充填する方法としては、一対の電極の間に表面張力を用いて電解液を注入する方法を採用することもできるし、電解質を含んだ多孔質の絶縁性のスペーサーを間に配置することも可能である。
【0046】
また本ステップにおいて、電解質にゲル状電解質を用いた場合の例としては、限定されるわけではないが、例えばゲル状ポリマー電解質であることが好ましい。ゲル状ポリマー電解質の例としては、限定されるわけではないが、例えばポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、およびポリメチルメタクリレートを例示することができる。
【0047】
また本ステップにおいて、電解質に固体電解質を用いた場合の例としては、限定されるわけではないが、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、有機高分子、及び導電性ポリマー等を例示することができる。
【0048】
なお、本ステップにおいては、対向電極を準備し、コバルトナノ構造物が形成された電極と対向して配置させると共にキャパシタ用電解質層をこの間に充填させるが、対向して配置させる手順とキャパシタ用電解質層を充填させる手順は同時であってもよい。図2に、本方法よって製造されるキャパシタの構造の概略を示す。
【0049】
本図で示すように、本キャパシタ1は、対向する一対の電極2a、2bと、一対の電極の少なくとも一方に形成されるコバルトナノ構造物3a、3b(本図の例では一対の電極の双方に形成される)と、一対の電極の間に配置されるキャパシタ用電解質層4と、を有する。
【0050】
また本キャパシタは、外部の駆動装置と接続され、一対の電圧を印加されて電荷を蓄積するとともに、短絡することでこの蓄積した電荷を放出することができる。印加する電圧としては、充電が可能であり、材料の分解電圧を超えない限りにおいて限定されるわけではないが、電極間の電界にして0.05V/cm以上10000V/cm以下であることが好ましく、より好ましくは10V/cm以上1000V/cm以下であることがより好ましい。
【0051】
本キャパシタは、電極上にコバルトナノ構造物を配置することで、電極の実表面積が拡大し、かつコバルトナノ構造物表面は可逆的な電気化学的酸化反応(充電)及び還元反応(放電)を受けるために、より安定的な充放電特性を発現する、より高エネルギーかつ高出力の電気化学キャパシタとなる。本キャパシタは、コバルトナノ構造物表面で生じる可逆的な電気化学反応を利用するためレドックスキャパシタに分類される。
【0052】
また特に本実施形態に係るコバルトナノ構造物は、電解液に電極を浸漬し、磁場中において電解液を電気分解して前記一対の電極の一方にコバルトナノ構造物を析出させたものであり、コバルトナノ構造物は、微細かつ複雑なナノ構造物となっている。コバルトナノ構造物はMHD効果およびマイクロMHD効果によって形成されるナノ空間を形成し、より広い実表面積を実現し、高速イオン輸送効果を発現させ、より高いキャパシタ特性を発揮することができる。
【0053】
本実施形態において、コバルトナノ構造物は、磁場中において電解液を電気分解して形成されたものであって、完全にランダムな状態ではなく高速イオン輸送を可能とするような複雑かつ微細な構造をもつものである。この結果、電極の実表面積を拡大することが可能となり、上記機能を更に向上させることができている。この微細構造の程度は特に限定されるわけではないが、マイクロレベルの微細構造の中にナノレベルの構造が形成されたものと記述することができる。
【0054】
以上、本実施形態によって、より高エネルギー化、高出力化を図ることのできるキャパシタ及びその製造方法、及び、これに用いることのできるコバルトナノ構造物の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0055】
ここで、上記実施形態に係るコバルトナノ構造物の製造方法について、実際に実験を行い、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0056】
(温度依存性の確認)
まず蒸留、イオン交換を行なった水に下記式で示されるヘキサアンミンコバルト[Co(NH]Clを19mM、硫酸リチウムLiSOを0.1M含む電解液を準備し、ガラスセルの主室にこの電解質を入れ、ITOガラス基板を動作電極、対向電極を白金板として挿入し、40℃、50℃、60℃、70℃又は80℃の温度において上記動作電極に-1.03V vs.SCE(飽和カロメル電極)の電位を印加した。図3に、電気分解において用いた装置の概略を示す。またこの場合において通電電気量は1.5C/cmとした。この結果、電極基板上にコバルトナノ構造物の形成を確認した。なお図4に作製したコバルトナノ構造物のSEM像を示しておく。また図中のスケールバーの長さは50μmである。
【0057】
この結果によると、形成されたのはコバルトナノワイヤーであって、60℃までは形態にほぼ変化は見受けられなかった一方、70℃以降ではコバルトナノ構造物ワイヤーが短くなる傾向が確認でき、80℃を超えると常温よりもアスペクト比の低いナノワイヤーが形成されていることが確認できた。なおこの原因としては推論の部分もあるが形態制御剤で得あるアンモニアがナノワイヤー側面にうまく吸着せず一次元方向に成長しずらくなったためと考えられる。
【0058】
そして次に、上記作成した温度40℃、60℃、80℃で作製した電極に対し、サイクリックボルタンメトリーを行った。この結果を図5に示しておく。なお本サイクリックボルタンメトリーは、これら電極を0.1MのLiOH水溶液に浸し、掃引範囲0.05~0.55V、掃引速度10mV/sの条件下で行った結果である。
【0059】
この結果、電流密度が60℃で最も大きくなり、80℃で低下していることが確認できた。この結果から、電極形成時の溶液温度に依存してキャパシタ特性の向上が期待できることを確認した。
【0060】
また、上記作製した電極に対し、定電流充放電試験を行った。この結果得られた充放電特性を図6に、本図から得られる容量の推移を下記表1に示しておく。定電流充放電試験はガルバノスタット(HOKUTO DENKI Co.HJ1010mSM8A)、三電極式のガラスセルを用いた。なお対向電極は白金板を、電解液としては水酸化リチウム(0.1M)を用いた。
【表1】
JP2016164957A_000003t.gif

【0061】
この結果、60℃において最も高いキャパシタ特性を示すことを確認した。これは、ワイヤー形態に変化がなかったにもかかわらず、60℃まで温度を上昇させることで充放電容量が増加したため、水酸化コバルト層が増加していると考えられる。コバルトナノワイヤーは表面の水酸化コバルト部分に充放電特性を有するため、電極形成時の温度を上昇させることで水酸化コバルト層が増加し、この水酸化コバルト層の増加がキャパシタ特性の向上につながっていると考えらえる。
【0062】
(磁場依存性の確認)
次に、上記温度依存性の確認の場合と同様であるが、電極形成時の溶液温度を20℃とする一方、ネオジム磁石を配置し、電極に印加される磁場強度を30mT、60mT、90mT又は120mTとして電極を形成した。また、磁石の配置方向も調整し、磁場印加方向も複数調整した。なおこの場合における装置構成及び磁場方向の模式図を図7に示しておく。
【0063】
この結果、いずれにおいても、コバルト錯体の還元とともに動作電極上にコバルトナノ構造物の灰黒色の薄膜の形成が確認できた。
【0064】
ここで、上記作製した結果の各電極に対し、サイクリックボルタンメトリーを行った。この結果を図8に示しておく。なお本図では、0mT(無磁場印加)及び120mTの電極に対する結果を示している。この結果、磁場印加によるキャパシタ特性の向上を確認することはできた。
【0065】
また、上記各作製した電極におけるコバルトナノ構造物のSEM像を図9に示しておく。なお、図中のスケールバーは、(a)及び(b)においては40μm、(c)及び(d)においては10μmである。
【0066】
また上記作製した各電極に対し、ガルバノスタットを用い、定電流充放電試験を行った。この結果を図10に示しておく。なお本図中、Aは磁場なしの場合を、Bは60mTの磁場をコバルトナノ構造物を電極表側から垂直方向に印加した場合を、Cは60mTの磁場を電極表面に略平行な方向から印加した場合を、Dは60mTの磁場をコバルトナノ構造物を電極裏側から垂直に印加した場合をそれぞれ示している。
【0067】
この結果、磁場方向による比容量の差はほとんど見られず、磁場方向には大きく依存しないことがわかる。
【0068】
そしてさらに、上記作製した各電極に対し、静電容量、放電容量、エネルギー密度、充放電曲線を改めて確認した。この結果を図11に示しておく。なおこの場合の磁場は、上記図10の「C」と同様の磁場方向とした。
【0069】
この結果、印加磁場強度を増加させていくにつれ各特性は向上していることが確認できる一方、その増加量は小さくなっているため、200mT程度でその特性は飽和してしまうことが予測された。なお140mT程度を超える場合はコバルトナノ構造物がITO面から剥がれてしまうため磁場はこれ以下にしておくことが好ましい。
【0070】
また、120mTの場合におけるコバルトナノ構造物の繰り返し特性について測定を行った。この結果を図12に示しておく。50%の容量まで低下する繰り返し回数はレドックスキャパシタで10~10となっている一方、今回のキャパシタは10においてもこの条件を満たしており、所定の耐久性を備えているものと考えられる。
【0071】
(磁場印加及び温度調整の効果確認)
またここで上記例と同様とする一方、磁場を120mT、電極形成時の溶液温度を20℃として電極を作製した。図13にこの場合において作製されたコバルトナノ構造物のSEM像を示す。
【0072】
次に、上記したのと同様の条件にて、ガルバノスタットを用いて定電流充放電を行った。この結果を図14に示しておく。
【0073】
この結果、静電容量1510F/gが確認でき、実用電気化学キャパシタの10倍以上の値を確認できた。一方放電容量についても、市販されているリチウムイオン電池(100~200mAh/g)に匹敵する容量を得ることができた。
【0074】
さらに、上記と同様の条件において、繰り返し特性についても確認した。この結果を図15に示しておく。
【0075】
この結果、10回充放電を繰り返しを行ったとしても当初の50%以上を維持することができているため、耐久性は十分維持できていることを確認した。
【0076】
以上、本実施例により、本発明の効果を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、キャパシタとして産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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