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明細書 :環状ペプチド及びこれを含有する医薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5804463号 (P5804463)
公開番号 特開2014-141445 (P2014-141445A)
登録日 平成27年9月11日(2015.9.11)
発行日 平成27年11月4日(2015.11.4)
公開日 平成26年8月7日(2014.8.7)
発明の名称または考案の名称 環状ペプチド及びこれを含有する医薬
国際特許分類 C07K   7/64        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI C07K 7/64 ZNA
A61K 37/02
A61P 25/28
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2013-061722 (P2013-061722)
出願日 平成25年3月25日(2013.3.25)
優先権出願番号 2012284169
優先日 平成24年12月27日(2012.12.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年1月9日(2014.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】金井 求
【氏名】相馬 洋平
【氏名】新井 唯正
【氏名】佐々木 大輔
【氏名】小林 由紀
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 国際公開第1997/021728(WO,A1)
特表2003-503312(JP,A)
特表2003-532656(JP,A)
特表平11-514333(JP,A)
国際公開第2002/074931(WO,A1)
米国特許第06022859(US,A)
調査した分野 C07K 1/00-19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(1)で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のα-アミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチド又はその塩。
X-Leu-Val-Y1-Y2 (1)
(式(1)中、XはLys又はAlaを示し、Y2はPheを示し、1は式(2b)
【化1】
JP0005804463B2_000006t.gif
(式(2b)中、Ar1は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基(ここで、芳香族炭化水素基は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のハロアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、3-ピリジル基及び4-ピリジル基から選ばれる1~5個の置換基が置換していてもよい)を示し、R1は水素原子又はフェニル基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の環状ペプチド又はその塩を有効成分とする、アミロイドβペプチド凝集阻害剤。
【請求項3】
請求項1に記載の環状ペプチド又はその塩を含有する医薬。
【請求項4】
アルツハイマー病予防治療薬である請求項記載の医薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド及びこれを含有するアルツハイマー病等のアミロイド沈着が関与する疾患の予防又は治療用医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は神経細胞の変性、脱落と共に老人斑の形成と神経原線維変化の病理学的特徴を有する神経変性疾患である。アルツハイマー病は記憶、認識、思考、判断等が進行的に損失する認知症状を引き起こし、最終的に死に至らせる。
脳内に沈着した老人斑を構成する主たる蛋白質はアミロイドβペプチド(Aβ)であり、39-43個のアミノ酸から成る。Aβは細胞毒性を示し、これによりアルツハイマー病が引き起こされると考えられている(非特許文献1)。細胞から分泌されるAβは主に40個或いは42個のアミノ酸から成るポリペプチドであり、特に42個から成るAβはより凝集性が強く早期に脳内に沈着すること、及び細胞毒性が強いことが知られている(非特許文献2)。従って、Aβの凝集を阻害する薬剤は、アルツハイマー病予防治療薬として期待されている。
【0003】
Aβの部分配列であるL-[Lys-Leu-Val-Phe-Phe]は、Aβに対して凝集阻害活性を有することが知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. Hardy, D. J. Selkoe, Science 2002, 297, 353.
【非特許文献2】J. Biol. Chem., 1995, Vol. 270, p7013
【非特許文献3】J. Biol. Chem., 1996, Vol. 271, p8545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ペンタペプチドのAβ凝集阻害活性は極めて弱く、天然型アミノ酸からなるため、代謝安定性の低さが懸念される。
従って、本発明の課題は、優れたAβ凝集阻害作用を有し、医薬として有用な新たな化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記ペンタペプチドに着目し、種々の検討を行った結果、全く意外にも、前記ペンタペプチドを環化した環状ペプチドが鎖状ペプチドに比べて顕著に優れたAβ凝集阻害活性を有し、その一部のアミノ酸を他のアミノ酸に置換した環状ペプチドはさらに優れたAβ凝集阻害活性を有し、アルツハイマー病等のアミロイド沈着に起因する種々の疾患の予防治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の[1]~[10]を提供するものである。
【0008】
[1]次式(1)で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のα-アミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチド又はその塩。
【0009】
X-Leu-Val-Y1-Y2 (1)
【0010】
(式(1)中、XはLys、Arg、His、Ala、Gly、Ser又はThrを示し、Y1及びY2は同一又
は異なって、式(2)
【0011】
【化1】
JP0005804463B2_000002t.gif

【0012】
(式(2)中、Ar1は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基(ここで、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基及びアミノ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)を示し;R1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基(ここで、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基及びアミノ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)を示し;nは0~2の整数を示す。)で表される基を示す。)
[2]Xが、Lys又はAlaである[1]記載の環状ペプチド又はその塩。
[3]Ar1及びR1で示される芳香族炭化水素基が、炭素数6~14の芳香族炭化水素基である[1]又は[2]記載の環状ペプチド又はその塩。
[4]Ar1及びR1で示される芳香族複素環式基が、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1~3個含む総炭素数2~9の芳香族複素環式基である[1]~[3]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩。
[5]Ar1及びR1で示される芳香族炭化水素基が、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基から選ばれる基である[1]~[4]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩。
[6]Ar1及びR1で示される芳香族複素環式基が、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基及びインドリル基から選ばれる基である[1]~[5]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩。
[7]式(2)で表される基が、式(2a)、(2b)又は(2c)
【0013】
【化2】
JP0005804463B2_000003t.gif

【0014】
(式(2a)、(2b)、(2c)中、R1及びAr1は前記と同じ)
で表される基である[1]~[6]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩を有効成分とする、アミロイドβペプチド凝集阻害剤。
[9][1]~[7]のいずれかに記載の環状ペプチド又はその塩を含有する医薬。
[10]アルツハイマー病予防治療薬である[9]記載の医薬。
【発明の効果】
【0015】
式(1)で表される環状ペプチド又はその塩は、極めて優れたAβ凝集阻害活性を有し、アミロイドの沈着に起因する疾患、例えばアルツハイマー病、ダウン症等の予防治療用医薬として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の環状ペプチドは、前記式(1)で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のα-アミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチドである。
本発明の環状ペプチドは、式(1)中のY1及びY2の両方が芳香族アミノ酸残基である点に特徴がある。

【0017】
式(1)中、XはLys、Arg、His、Ala、Gly、Ser又はThrを示すが、Lys又はAlaが好ましい。

【0018】
式(1)中、Y1及びY2は、同一又は異なって、前記式(2)で表される基を示す。式(2)中、Ar1は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基(ここで、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基及びアミノ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)を示す。また、R1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基(ここで、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環式基は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基及びアミノ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい)を示す。

【0019】
Ar1及びR1で示される芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基がより好ましい。なお、Ar1とR1の芳香族炭化水素基は、同一でも異なっていてもよい。

【0020】
Ar1及びR1で示される芳香族複素環式基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1~3個有する芳香族複素環式基が挙げられ、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1~3個有し総炭素数2~9の芳香族複素環式基が好ましい。芳香族複素環式基の具体例としては、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基等が挙げられ、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、インドリル基が好ましく、イミダゾリル基、ピリジル基がさらに好ましい。なお、Ar1とR1の芳香族複素環式基は、同一でも異なっていてもよい。

【0021】
前記芳香族炭化水素基及び前記芳香族複素環式基は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基及びアミノ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい。ここで、アルキル基としては炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数3~8のシクロアルキル基とは炭素及び水素からなる炭素数が3~8個の一価の環状の飽和炭化水素基を意味し、炭素数3~6のシクロアルキル基が好ましい。当該シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、1個以上のハロゲン原子で任意の水素が置換された炭素数1~6のアルキル基を意味し、炭素数1~4のハロアルキル基が好ましい。当該ハロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基又は2,2,2-トリクロロエチル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、炭素数6~14の芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基がより好ましい。芳香族複素環式基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1~3個有する芳香族複素環式基が挙げられ、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を1~3個有し総炭素数2~9の芳香族複素環式基が好ましい。芳香族複素環式基の具体例としては、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基等が挙げられ、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、インドリル基が好ましく、イミダゾリル基、ピリジル基がさらに好ましい。これらの置換基は、前記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環式基上に1~5個あってもよいが、1又は2個が好ましい。

【0022】
1及びAr1の芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、C1-6アルキル-フェニル基、C3-8シクロアルキル-フェニル基、C1-4ハロアルキル-フェニル基、C1-4アルコキシ-フェニル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基等のビフェニル基、3’-ヒドロキシビフェニル基等のヒドロキシビフェニル基、ピリジル-フェニル基、ピリミジニル-フェニル基、ピリジル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、インドリル基が挙げられる。

【0023】
1で示されるアルキル基としては炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数3~6のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、炭素数1~6のハロアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のハロアルキル基が好ましく、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基又は2,2,2-トリクロロエチル基が挙げられる。アルコキシ基としては炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基が挙げられる。

【0024】
1としては、水素原子、前記芳香族炭化水素基又は前記芳香族複素環式基がより好ま
しい。

【0025】
式(2)中のnは0~2の整数を示すが、1がより好ましい。

【0026】
式(2)で表される基の好ましい例として、次の式(2a)、(2b)又は(2c)

【0027】
【化3】
JP0005804463B2_000004t.gif

【0028】
(式(2a)、(2b)、(2c)中、R1及びAr1は前記と同じ)
で表される基を挙げることができる。ここで、式(2b)、(2c)のR1としては、水素原子、前記芳香族炭化水素基又は前記芳香族複素環式基が好ましい。R1及びAr1の芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、C1-6アルキル-フェニル基、C3-8シクロアルキル-フェニル基、C1-4ハロアルキル-フェニル基、C1-4アルコキシ-フェニル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基等のビフェニル基、3’-ヒドロキシビフェニル基等のヒドロキシビフェニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピリジル-フェニル基、ピリミジニル-フェニル基が挙げられる。

【0029】
また、式(1)の環状ペプチドにおいて、さらに好ましい態様としては、式(1a)で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のα-アミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチドである。

【0030】
X-Leu-Val-Y1-Phe (1a)

【0031】
(式(1a)中、X及びY1は、前記と同じ)
式(1a)において、XはLys又はAlaが好ましく、Y1は前記の式(2a)、(2b)
又は(2c)であるのが好ましい。

【0032】
式(1)中の各アミノ酸残基は、L体でもD体でもよく、代謝安定性の点からD体が好ましい。また、式(1)の環状ペプチドの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩が挙げられる。

【0033】
式(1)の環状ペプチドの好ましい具体例を挙げる。以下の式において、Phはフェニル基、F-Phはフルオロフェニル基、bi-Phはビフェニル基、Pyはピリジル基、Phethはフェニルエチル基、Nalはナフチルアラニル基を示す。
cyclo-L-[Lys-Leu-Val-Phe-Phe] (配列番号1)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Phe-Phe] (配列番号1)
cyclo-D-[Ala-Leu-Val-Phe-Phe] (配列番号2)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Phe(βPh)-Phe] (配列番号3)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(β,β-FPh)Ala-Phe] (配列番号4)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(β,β-Py)Ala-Phe] (配列番号5)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-bi-Ph)Ala-Phe] (配列番号6)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(3-bi-Ph)Ala-Phe] (配列番号7)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(2-bi-Ph)Ala-Phe] (配列番号8)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(1-Nal)-Phe] (配列番号9)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(β-Py)Ala-Phe] (配列番号10)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(2-Py)-Ph)Ala-Phe] (配列番号11)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(Ph)Gly-Phe] (配列番号12)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(Pheth)Gly-Phe] (配列番号13)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-OH)Phe-Phe] (配列番号14)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-NH2)Phe-Phe] (配列番号15)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(2-Py)-Ph)Ala-Phe] (配列番号20)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(3-Py)-Ph)Ala-Phe] (配列番号21)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(4-Py)-Ph)Ala-Phe] (配列番号22)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(5-pyrimidine)-Ph)Ala-Phe] (配列番号23)
cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(3-hydroxyphenyl)-Ph)Ala-Phe] (配列番号24)

【0034】
本発明の環状ペプチド(1)は、通常の有機合成化学的ペプチド合成法によって製造することができる。有機合成化学的ペプチド合成法は、一般的な官能基の保護、カルボキシル基の活性化、ペプチド結合の形成、保護基の脱保護の手段によって行われる。

【0035】
本発明の環状ペプチド又はその塩は、後記実施例に示すように強力なAβ凝集阻害活性を有し、代謝安定性が高いため、Aβ凝集阻害剤として、またヒトを含む動物のアミロイド沈着、Aβ凝集が関与する疾患、例えばアルツハイマー病、ダウン症等の予防治療薬として有用である。

【0036】
本発明の環状ペプチドを人体用の医薬として使用する場合、投与量は成人1日当たり1mg~1g、好ましくは10mgから300mgの範囲である。

【0037】
本発明の環状ペプチドを含有する医薬組成物は投与法に応じ適当な製剤を選択し、薬学的に許容される担体を用いて各種製剤の調製法にて調製できる。本発明環状ペプチドを主剤とする医薬組成物の剤形としては例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤や、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性ないし水性の懸濁液等を経口用製剤として例示できる。

【0038】
注射剤としては製剤中に安定剤、防腐剤、溶解補助剤を使用することもあり、これらの補助剤を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としてもよい。また一回投与量を一の容器に収納してもよく、また多投与量を一の容器に収納してもよい。

【0039】
また外用製剤として液剤、懸濁液、乳濁液、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、スプレー、貼付剤等を例示できる。

【0040】
固形製剤としては本発明環状ペプチドとともに薬学上許容されている添加物を含み、例えば充填剤類や増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類、潤滑剤類等を必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
液体製剤としては溶液、懸濁液、乳液剤等を挙げることができるが添加剤として懸濁化剤、乳化剤等を含むこともある。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0042】
製造例1
反応容器に2-chlorotrityl chloride resin(400mg)、Fmoc-Phe-OH(232.4mg,0.6mmol)、1,2-dichloroethane(3mL)およびN,N-diisopropylethylamine(420μL,2.4mmol)を順次加え、1時間反応させた。DMFで洗浄後、methanol(400μL)およびN,N-diisopropylethylamine(278μL,1.5mmol)を加え、20分間振盪した。DMF、DMF-H2O(1:1)およびmethanolで十分洗浄した後、真空ポンプで樹脂を乾燥させ、piperidine処理により切断されたFmoc発光団量からアミノ酸の置換率を求めた(0.33mmol)。
得られたFmoc-Phe-O-resin(0.034mmol)に対し、N,N’-Diisopropylcarbodiimide(13.2μL,0.085mmol)および1-hydroxybenzotriazole(13.0mg,0.085mmol)存在下、Fmocアミノ酸(0.085mmol)を縮合し、続いて20%piperidine/DMFによるFmoc基除去を行った。本サイクルを繰り返し、保護ペプチド樹脂を構築した。得られた保護ペプチド樹脂全量に対しtriisopropylsilane-H2O-trifluoroacetic acid(2.5:2.5:95)中で60分間撹拌し、濃縮、Et2Oによる再沈殿を経て白色固体を得た(5.8mg)。この粗ペプチドをO-(7-azabenzotriazol-1-yl)-N,N,N’,N’-tetramethyluronium hexafluorophosphate(HATU,5.0mg,1.3μmol)およびN,N-diisopropylethylamine(4.6μL,2.6μmol)存在下、DMF(13mL)中で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出・brine洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣に対し20%piperidine/DMF(2mL)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出・brine洗浄し、硫酸ナトリウムによる乾燥後、濃縮した。得られた残渣をpreparative scale HPLC(0.1% aqueous TFA-CH3CN system)により精製し、凍結乾燥を経て白色無晶形の化合物1(cyclo-L-[Lys-Leu-Val-Phe-Phe])を得た(0.31mg)。
収率:1.4%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:634.3;M+Hfound:635.1;逆相ODSカラムおける保持時間=24.1min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm)、0-100%CH3CN in 0.1
% aqueous TFA)
【実施例】
【0043】
製造例2(化合物2:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Phe-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:5.2%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:634.3;M+Hfound:635.4;逆相ODSカラムおける保持時間=24.1min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0044】
製造例3(化合物3:cyclo-D-[Ala-Leu-Val-Phe-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:1.3%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:577.3;M+Hfound:578.2;逆相ODSカラムおける保持時間=27.1min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0045】
製造例4(化合物4:cyclo-D-[Lys-Ala-Val-Phe-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:1.8%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:592.3;M+Hfound:593.1;逆相ODSカラムおける保持時間=21.4min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0046】
製造例5(化合物5:cyclo-D-[Lys-Leu-Ala-Phe-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:2.5%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:606.4;M+Hfound:607.1;逆相ODSカラムおける保持時間=21.5min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0047】
製造例6(化合物6:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:0.4%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:558.4;M+Hfound:558.7;逆相ODSカラムおける保持時間=19.8min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100% CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0048】
製造例7(化合物7:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Phe-Ala])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:2.2%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:558.4;M+Hfound:558.7;逆相ODSカラムおける保持時間=20.9min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0049】
製造例8(化合物8:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-Phe(βPh)-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:10.9%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:710.4;M+Hfound:711.4;逆相ODSカラムおける保持時間=25.8min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0050】
製造例9(化合物9:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-bi-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:1.9%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:710.4;M+Hfound:711.3;逆相ODSカラムおける保持時間=27.0min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0051】
製造例10(化合物10:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(3-bi-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:2.7%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:710.4;M+Hfound:711.3;逆相ODSカラムおける保持時間=26.9min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0052】
製造例11(化合物11:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(2-bi-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:3.0%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:710.4;M+Hfound:711.2;逆相ODSカラムおける保持時間=26.5min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0053】
製造例12(化合物12:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(1-Nal)-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:21%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:684.4;M+Nafound:707.5;逆相ODSカラムおける保持時間=25.9min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0054】
製造例13(化合物13:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(2-Py)-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:2.2%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:711.4;M+Hfound:712.1;逆相ODSカラムおける保持時間=19.9min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0055】
製造例14(化合物14:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(3-Py)-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:1.3%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:711.4;M+Hfound:712.1;逆相ODSカラムおける保持時間=19.8min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0056】
製造例15(化合物15:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(4-Py)-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:2.2%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:711.4;M+Hfound:712.3;逆相ODSカラムおける保持時間=19.7min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0057】
製造例16(化合物16:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(5-pyrimidine)-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:0.4%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:712.4;M+Hfound:713.6;逆相ODSカラムおける保持時間=22.5min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0058】
製造例17(化合物17:cyclo-D-[Lys-Leu-Val-(4-(3-phenol)-Ph)Ala-Phe])
化合物1と類似の方法により合成した。収率:1.6%;MALDI-MS(TOF):Mcalc:726.4;M+Hfound:727.5;逆相ODSカラムおける保持時間=24.0min(column:YMC-Pack ODS-AM(4.6×150mm),0-100%CH3CN in 0.1% aqueous TFA)
【実施例】
【0059】
試験例1(Aβ凝集阻害試験)
AβのO-アシルイソペプチド(10μM)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4,50μL)中に、凝集阻害ペプチド溶液(DMSO溶液)を加え(阻害剤終濃度30μM,1%DMSO)、37℃で任意の時間インキュベート後、反応液の一部(10μL)を、チオフラビンT溶液(50μMチオフラビンT,10μL)と50mM glycine-NaOHバッファー(pH8.5,396μL)の混合溶液に加え、直ちに混合しチオフラビンTの蛍光強度を測定した。蛍光強度測定において励起波長として440nm、蛍光波長として480nmを用いた。
【実施例】
【0060】
得られた結果を、コントロールに用いたDMSO溶液の活性を100としたときの凝集阻害比として表1に示した。
【実施例】
【0061】
【表1】
JP0005804463B2_000005t.gif
【実施例】
【0062】
その結果、化合物1、2、3及び8~17が鎖状化合物に比べて強いAβ凝集阻害活性を示すことがわかった。特に化合物8~12のAβ凝集阻害活性は顕著に高かった。