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明細書 :土の引張強度を測定する方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-206690 (P2015-206690A)
公開日 平成27年11月19日(2015.11.19)
発明の名称または考案の名称 土の引張強度を測定する方法及び装置
国際特許分類 G01N   3/00        (2006.01)
E02D   1/00        (2006.01)
FI G01N 3/00 D
E02D 1/00
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-087685 (P2014-087685)
出願日 平成26年4月21日(2014.4.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年3月10日に第16回日本台湾学生セミナーにて発表
発明者または考案者 【氏名】一井 康二
【氏名】村上 雄亮
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2D043
2G061
Fターム 2D043AA00
2D043BA10
2G061AA01
2G061AA07
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA06
2G061CB03
2G061DA01
2G061DA16
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB05
2G061EC02
要約 【課題】多種多様な土の引張強度を場所を選ばずに測定できるようにする。
【解決手段】土試料1の横方向における一端側の不動部1aを固定し、土試料1の他端側の可動部1bを下向きに折れ曲がり可能な状態で支持する。可動部1bを次第に下向きに折り曲げながら、可動部1bの荷重を測定する。力のモーメントのつりあいに基づいて、可動部1bの荷重の変化から土試料1の引張強度Ftを算出する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
土の引張強度を測定する方法であって、
土試料の横方向における一端側の不動部を固定し、当該土試料の他端側の可動部を下向きに折れ曲がり可能な状態で支持する準備ステップと、
前記可動部を次第に下向きに折り曲げながら、当該可動部の荷重を測定する測定ステップと、
力のモーメントのつりあいに基づいて、前記可動部の荷重の変化から前記土試料の引張強度を算出する算出ステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
支持部材を用いて、前記不動部及び前記可動部の各々の少なくとも下部から両側部に至る範囲を支持しながら測定を行う、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記準備ステップが、
横方向に延びるように前記支持部材を土中に差し込む処理と、
前記支持部材における前記可動部を支持する部位の下側に空間を形成する処理と、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載されている土の引張強度を測定する方法、に用いられる測定装置であって、
前記不動部を収容する不動部収容体と、当該不動部収容体と折れ曲がり可能に連結されて前記可動部を収容する可動部収容体と、を有し、前記支持部材を構成する土試料収容槽と、
前記可動部収容体を支持しながら下向きに折れ曲がらせる変位装置と、
前記可動部収容体の荷重を測定する荷重測定装置と、
前記荷重測定装置の測定値を用いて前記土試料の引張強度を算出するデータ処理装置と、
を備える測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、引張応力に対する土の強さを表す、土の引張強度を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の敷設や宅地造成などの土木工事の際には、崩落などの事故を防止するためにも、現場の土壌の状態を適切に把握することが重要である。土壌の状態を把握するうえで有用と思われる指標の一つに引張強度があるが、軟弱な土、脆い土、礫や石を多く含む土など、土の品質は多種多様であるためにその測定が難しく、これまでのところ、土の引張強度は十分に活用できていないのが実情である。
【0003】
土の引張強度に関する先行技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2がある。
【0004】
特許文献1には、実験室等で間接的に行う測定方法が開示されている。具体的には、測定装置に備えられた枠内の中間まで土試料を充填した後、その土試料の上に、孔の開いた複数の有孔板が、双方の孔が一致するように重ねて載置される。
【0005】
更にこれらの上に土試料を充填し、その後、上側の有孔板を引き上げることにより、孔を通じて連続する土試料を分断させる。そうして、分断時に作用する荷重を測定し、孔の開口面積等から土試料の引張強度を算出している。
【0006】
特許文献2には、現場で直接的に行う測定方法が開示されている。具体的には、測定地点において、中央に立方体状の供試体が残るようにその周囲を掘削する。引張試験装置を設置し、その引張試験装置により、供試体の側部を挟んで上方へ引き上げ、供試体を破壊させる。そうして、その破壊力を測定し、供試体の水平面面積から引張強度を算出している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-47792号公報
【特許文献2】特開平7-259067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法は、軟弱な土や脆い土でも、比較的安定して引張強度が測定できる利点がある。しかし、測定装置や測定操作が複雑で扱い辛いうえ、土が礫や石等を含む場合には、孔に礫や石が接触するため、適切に測定できない欠点がある。測定する土のセッティングも難しい。特に、現場で測定できないため、間接的な評価しかできないという重大な欠点がある。
【0009】
それに対し、特許文献2の方法によれば、現場で測定できるが、供試体を引き上げるために土にある程度の硬さが必要とされる。そのため、軟弱な土や脆い土では測定できないし、特許文献1の方法とは逆に、実験室では測定できないという欠点がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、土の引張強度を、実験室及び現場のいずれでも測定でき、礫や石を含む土や軟弱な土でも測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る土の引張強度を測定する方法は、土試料の横方向における一端側の不動部を固定し、当該土試料の他端側の可動部を下向きに折れ曲がり可能な状態で支持する準備ステップと、前記可動部を次第に下向きに折り曲げながら、当該可動部の荷重を測定する測定ステップと、力のモーメントのつりあいに基づいて、前記可動部の荷重の変化から前記土試料の引張強度を算出する算出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
すなわち、この方法では、測定を行う土試料を、固定される不動部と、折れ曲がり可能な可動部とに、機能別に分けて支持した後、可動部を下向きに折り曲げながらその荷重を測定する。
【0013】
測定時には、土試料を下向きに折れ曲げるだけであるため、土試料に外力をほとんど加えることなく測定することができる。従って、軟弱な土や脆い土など、保形性能が乏しく測定が難しい土でも測定できる。
【0014】
更に、可動部の荷重の変化から、力のモーメントのつりあいに基づいて、折れ曲がる土試料に作用する引張応力を算出し、そこから土の引張強度を導き出すため、土試料の品質については、ほとんど制約を受けることなく測定できる。従って、礫や石を多く含む土ような、品質が不均質で測定が難しい土でも測定できる。
【0015】
しかも、測定に複雑な装置は不要であり、また、測定の操作も簡単であるため、後述するように、実験のような小スケールにも現場での実測のような大スケールにも適用でき、汎用性に優れる。
【0016】
具体的には、支持部材を用いて、前記不動部及び前記可動部の各々の少なくとも下部から両側部に至る範囲を支持しながら測定を行うのが好ましい。
【0017】
土試料は、力のモーメントがつりあった状態で下向きに折れ曲がればよいため、土試料の下部や両側部を支持しながらでも適切な測定ができる。土試料の下部や両側部を支持すれば、更に保形性能が乏しく測定が難しい土の測定が可能になる。
【0018】
例えば、前記準備ステップは、横方向に延びるように前記支持部材を土中に差し込む処理と、前記支持部材における前記可動部を支持する部位の下側に空間を形成する処理と、
を含むようにしてもよい。
【0019】
この方法によれば、現場の土壌を測定対象にして、簡易な作業で土の引張強度を実測することが可能になる。
【0020】
例えば、実験室等で測定する場合には、前記不動部を収容する不動部収容体と、当該不動部収容体と折れ曲がり可能に連結されて前記可動部を収容する可動部収容体と、を有し、前記支持部材を構成する土試料収容槽と、前記可動部収容体を支持しながら下向きに折れ曲がらせる変位装置と、前記可動部収容体の荷重を測定する荷重測定装置と、前記荷重測定装置の測定値を用いて前記土試料の引張強度を算出するデータ処理装置と、を備える測定装置を用いるのが好ましい。
【0021】
この測定装置によれば、測定を行う土を土試料収容槽に充填するだけで土試料のセッティングが可能になり、しかも、備え付けられた変位装置、荷重測定装置、及びデータ処理装置を操作するだけでよいため、多種多様な土の引張強度が容易に測定できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法等によれば、実験室及び現場のいずれにおいても、容易な操作で多種多様な土の引張強度が測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】モーメント法による測定を説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の測定装置を示す概略斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、第1の実施形態の測定方法を説明するための図である。
【図4】可動部収容体の変位に対する荷重の変化を模式的に表したグラフである。
【図5】実施例の試験結果の一例をまとめた表である。
【図6】第2の実施形態の測定システムを示す概略斜視図である。
【図7】(a)~(e)は、第2の実施形態の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。

【0025】
<測定方法の概要>
本実施形態で開示する土の引張強度の測定方法では、力のモーメントのつりあいを利用して土の引張強度を算出する(以下、モーメント法ともいう)。

【0026】
図1を用いて、モーメント法の基本的な考え方を説明する。図1に、土試料1(測定を行うために土を一定の形態にしたもの、供試体)の一例を示す。この土試料1は、機能別に、横方向の中間部位で不動部1aと可動部1bとに区分されている。

【0027】
不動部1aは、動かないように固定され、可動部1bは、図1に仮想線で示すように、下向きに折れ曲がることができる状態で、横方向(略水平方向)に真っ直ぐ延びるように支持される。

【0028】
その状態から可動部1bを次第に下向きに折り曲げていくと、土試料1に引張応力Fが作用して、その強さが次第に増加する。そうして、引張応力Fが限界に達すると、土試料1は、可動部1bと不動部1aとの境界部位で破断し、図1に仮想線で示すように、可動部1bが折れ曲がる。

【0029】
網線で示す破断面では、力のモーメントがつりあっているため、次の関係式(1)が成立している。なお、この関係式(1)では、破断面に一様に引張応力Fが作用すると仮定している。

【0030】
【数1】
JP2015206690A_000003t.gif

【0031】
F:土の引張応力(N/m)、Δf:可動部1bの荷重の変化量(N)、B:可動部1bの幅(m)、h:可動部1bの高さ(m)、L:可動部1bの長さ(m)、a:破断部位から荷重測定点Sまでの長さ(m)、mg:可動部1bの重量(Kgf)

【0032】
従って、可動部1bの荷重の変化を測定すれば、この関係式(1)から土試料1の引張応力を算出することができる。

【0033】
すなわち、モーメント法では、不動部1aを固定し、可動部1bを下向きに折れ曲がり可能な状態で支持した後、可動部1bを次第に下向きに折り曲げながら、可動部1bの荷重を測定する。そうして、力のモーメントのつりあいに基づいて、可動部1bの荷重の変化Δfから土試料1の引張応力Fを算出し、破断時の引張応力Fを求めて、それを引張強度Ftとする。

【0034】
モーメント法によれば、可動部1bを下向きに折り曲げるだけでよいため、土試料1を挟んで持ち上げたりする必要が無く、土試料1に大きな力は加わらない。

【0035】
土試料1の横断面に作用する力のモーメントに基づいて測定が行われるため、土試料1の周囲を支持しても測定への影響はほとんど無い。従って、土試料1を容器に収容するなど、その周囲を支持しながら測定することができるので、硬質な土はもちろんのこと、軟弱な土や脆い砂、礫や石を含む土であっても測定できる。

【0036】
モーメント法によれば、測定機器等を状況に合わせて選択することにより、実験室でも容易に測定できるし、現場でも容易に測定できる。

【0037】
<第1の実施形態>
本実施形態では、実験室等で行われる小スケールでの測定に適した形態を例示する。

【0038】
(測定装置)
図2に、本実施形態において、土の引張強度の測定に用いる測定装置3を示す。この測定装置3は、支持台10、土試料収容槽20(支持部材に相当)、変位装置30、変位量測定装置40、荷重測定装置50、コンピュータ60(データ処理装置に相当)などで構成されている。

【0039】
支持台10には、土試料収容槽20、変位装置30、変位量測定装置40、及び荷重測定装置50が一体に組み付けられている。支持台10にはまた、変位装置30、変位量測定装置40、及び荷重測定装置50が電気的に接続された中継端子10aが設置されていて、これら装置30,40,50は、中継端子10aを介してコンピュータ60と電気的に接続されるようになっている。土試料収容槽20は、支持台10の上部に設置されていて、測定時には、水平方向に延びるように位置決めされる。

【0040】
土試料収容槽20は、上面が開放された横長な箱状容器である。詳しくは、土試料収容槽20は、横長な矩形の底壁部21と、底壁部21の両側縁に立設されて互いに対向する一対の側壁部22,22と、一対の側壁部22,22の間を塞ぐように底壁部21の両端縁に立設されて互いに対向する一対の端壁部23,23とを有している。測定時には、土試料収容槽20に土が充填されることにより、土試料収容槽20の内部に横長な立方体状の土試料1が形成される。

【0041】
土試料収容槽20は、その長手方向の中間部位で割れて、下向きに折れ曲がるように構成されている。

【0042】
具体的には、底壁部21は、長手方向の一方の端部側の部分(不動側底壁部21a)と他方の端部側の部分(可動側底壁部21b)とで構成されている。これら不動側底壁部21a及び可動側底壁部21bは、ヒンジ部材24で連結されていて、その軸を中心に相対的に回動可能となっている。

【0043】
各側壁部22もまた、不動側底壁部21aに連なる不動側側壁部22aと、可動側底壁部21bに連なる可動側側壁部22bとに分かれて構成されている。不動側底壁部21a及び可動側底壁部21bの双方が水平な状態では、これら不動側側壁部22a及び可動側側壁部22bは、隙間無く突き合わされるようになっている。

【0044】
すなわち、土試料収容槽20は、半割容器状の不動部収容体20aと、不動部収容体20aと折れ曲がり可能に連結された半割容器状の可動部収容体20bとで構成されている。具体的には、土試料収容槽20は、不動側底壁部21a、不動側側壁部22a、及び端壁部23からなる不動部収容体20aと、可動側底壁部21b、可動側側壁部22b、及び端壁部23からなる可動部収容体20bとで構成されている。

【0045】
不動部収容体20aは支持台10に固定されている。一方、可動部収容体20bは、宙に浮いた状態となるように支持台10に片持ち状に支持されていて、下向きに折れ曲がることができるようになっている。

【0046】
従って、この測定装置3では、土試料収容槽20の内部に形成される土試料1のうち、不動部収容体20aに収容される部分によって不動部1aが構成され、可動部収容体20bに収容される部分によって可動部1bが構成される。

【0047】
変位装置30は、可動部収容体20bを支持しながら下向きに折れ曲がらせる装置であり、可動部収容体20bの下側に配置されている。変位装置30は、支持台10から上方の可動部収容体20bに向かって延びており、伸縮可能となっている。変位装置30には、例えば、エアーシリンダやジャッキなどが利用できる。

【0048】
変位装置30の伸縮により、土試料収容槽20は、不動部収容体20aと可動部収容体20bとが接合して一体化した状態(準備状態)と、可動部収容体20bが折れ曲がった状態(測定状態)とに変化する。なお、平常時の土試料収容槽20は準備状態にある。

【0049】
荷重測定装置50は、可動側底壁部21bと接するように、変位装置30の上端に設置されている。変位装置30は、この荷重測定装置50を介して可動部収容体20bを支持している。荷重測定装置50は、可動部収容体20bをその下側から受け止めて、可動部収容体20bの荷重を連続的に測定する機能を有している。荷重測定装置50には、例えばロードセルなどが利用できる。

【0050】
変位量測定装置40は、可動部収容体20bの鉛直方向の変位量を測定する装置であり、変位装置30に隣接して可動部収容体20bの下側に配置されている。

【0051】
本実施形態のコンピュータ60には、荷重測定装置50や変位量測定装置40から連続的に入力される測定値を記憶し、これら測定値を演算処理して土の引張強度を算出する測定プログラムが実装されている。また、このコンピュータ60には、変位装置30の作動を制御する制御プログラムも実装されており、測定の開始や停止、測定条件の設定などの操作がコンピュータ60から行えるようになっている。

【0052】
測定プログラムには、力のモーメントのつりあいに基づいて土の引張強度Ftを算出する関係式が組み込まれている。その関係式(2)を、次に示す。

【0053】
【数2】
JP2015206690A_000004t.gif

【0054】
関係式(2)は、上述した関係式(1)を変形したものである。土試料1の幅B、土試料1の高さh、土試料1の長さL、破断部位から荷重測定点Sまでの長さa、土試料1の重量mgは、測定前に特定される。従って、土の引張強度Ftは、破断時における可動部1bの荷重の変化量Δfを測定することで算出できる。

【0055】
(測定方法)
次に、この測定装置3を用いて、土の引張強度を測定する方法(モーメント法)について説明する。

【0056】
まず、準備状態にある土試料収容槽20に、測定を行う所定量の土を、表面が略水平になるように充填する。それにより、土試料収容槽20の内部に土試料1が形成される。容器状の土試料収容槽20に充填すればよいため、軟弱や脆い土、石や礫を含む土など、土の品質に係わらず、簡単に土試料1をセッティングすることができる。

【0057】
土試料収容槽20の内部に土試料1をセッティングした後、図3の(a)に示すように、可動部1bの高さh、長さL、重量mgを特定し、コンピュータ60に入力する。なお、可動部1bの幅B、破断部位から荷重測定点Sまでの長さaは、予めコンピュータ60に設定されている。

【0058】
そうして、測定を開始すると、荷重測定装置50及び変位量測定装置40は、測定を開始し、その測定値を連続的にコンピュータ60に出力する。また、変位装置30は、一定の速度で縮み始め、それに伴って可動部収容体20bがヒンジ部材24の軸を中心に下向きに折れ曲がっていく。

【0059】
可動部収容体20bが下向きに折れ曲がると、それに追随して土試料1も折れ曲がり、土試料1の長手方向に引張応力Fが作用する。引張応力Fが限界に達すると、図3の(b)に示すように、土試料1は、その不動部1aと可動部1bの境界部位で破断する。

【0060】
土試料1で破断が生じると、変位装置30の作動や荷重測定装置50及び変位量測定装置40の測定が停止し、測定は終了する。測定終了後には、土試料収容槽20は準備状態に復帰し、測定前の状態に戻る。

【0061】
図4に、可動部収容体20bの変位に対する荷重の変化を模式的に示す。なお、図4では測定開始時の荷重を原点に表してある。可動部収容体20bが折れ曲がって下方に変位し始めると、土試料1に引張応力Fが作用するため、可動部収容体20bの荷重は減少する。そして、土試料1が破断する時(矢印Pで示す)をピークに荷重の減少は停止する。

【0062】
コンピュータ60は、このピークを検出し、その時の荷重の変化量Δfを関係式(2)に代入することにより、破断時の引張応力Fを算出し、それを引張強度Ftとして出力する。

【0063】
(実施例)
図5に、測定装置3と同様の構成の試験装置を用いて測定を行った結果の一例を示す。図5は、土試料として、土(真砂土)及び砂(豊浦砂)を用い、それぞれ、含水比が約5%及び約7%で引張強度の測定を行った試験T1~T4の結果(各N=2)を表している。

【0064】
これら試験結果から、軟弱や脆い土であっても、モーメント法によれば安定して土の引張強度が測定できることがわかる。

【0065】
<第2の実施形態>
本実施形態では、現場で行うような大スケールでの測定に適した形態を例示する。

【0066】
図6に、本実施形態で用いる測定システム5の一例を示す。この測定システム5は、現場の土壌で、土の引張強度の測定が簡易に行えるように構成されている。

【0067】
測定システム5は、土試料形成部材70や測定部材80などで構成されている。土試料形成部材70は、測定装置3の土試料収容槽20と同等の機能を有し、測定部材80は、測定装置3の変位装置30、荷重測定装置50、変位量測定装置40、及びコンピュータ60と同等の機能を有している。

【0068】
ただし、土試料形成部材70には、不動部収容体20aの端壁部23に相当する部分は無い。具体的には、土試料形成部材70は、不動側底壁部71a及び不動側側壁部72aからなる樋形状の不動部収容体70aと、可動側底壁部71b、可動側側壁部72b、及び端壁部73からなる半割容器状の可動部収容体70bとで構成されている。不動部収容体70aと可動部収容体70bとは、ヒンジ部材74で折れ曲がり可能に連結されている。

【0069】
また、本実施形態の測定部材80には、土の引張強度を演算して出力する機能は無く、測定値を記憶する機能として、データロガー(図示せず)が搭載されている。この測定システム5では、測定後にそのデータロガーから測定値を出力してコンピュータで処理することにより、土の引張強度が算出される。

【0070】
図7に、この測定システム5を用いた測定方法を示す。

【0071】
図7の(a)は、現場の土壌90の断面を模式的に表している。まず、測定を行う土壌90の側面90aを、掘削するなどして露出させる。

【0072】
そして、図7の(b)に示すように、土試料形成部材70を略水平に支持しながら、不動部収容体70aの端部の側を露出した土壌90の側面90aに向けて、土試料形成部材70を土中に差し込んでいく。

【0073】
そうして、図7の(c)に示すように、土試料形成部材70の全体を土中に入り込ませた後、土試料形成部材70に入り込んだ土を適宜調整する。そうすれば、土試料形成部材70の内部に、現場の土壌90そのものによる土試料1をセッティングすることができる。土試料1のセッティングの完了後、可動部収容体70b内の土(可動部1bに相当)の重量等、諸元データを特定しておく。

【0074】
次に、図7の(d)に示すように、可動部収容体20bの下側の一部を掘り込み、そこに測定部材80を差し入れて、可動部収容体70bを支持した後、可動部収容体70bの下側の全体を掘り込んで、可動部収容体70bの下側に、可動部収容体70bが下向きに折れ曲がることができるように空間を形成する。これにより、測定準備が完了する。

【0075】
その後、図7の(e)に示すように、測定部材80を操作して、可動部収容体70bを下向きに折れ曲がらせ、土試料1が破断する時の可動部収容体70bの荷重の変化量を測定し、データロガーに記憶する。

【0076】
このとき、不動部収容体70aは、土壌90に差し込んであるため、確りと固定できる。そして、可動部収容体70bに収容されている土(可動部1bに相当)は、その下部から側部及び端部に至る範囲が可動部収容体70bによって支持されているため、軟弱や脆い土、石や礫を含む土など、現場の土壌90が測定し難い品質であっても安定して測定することができる。

【0077】
後は、測定部材80から測定データを回収し、諸元データとともにその測定データをコンピュータでデータ処理すれば、現場の土壌90の引張強度を得ることができる。

【0078】
このように、本発明の方法等によれば、測定が難しい土の引張強度を、実験室及び現場のいずれでも容易に測定できるようになり、礫や石を含む土や軟弱な土など、多種多様な土に対しても安定して土の引張強度の測定ができるようになる。

【0079】
また、本発明の方法等によれば、不動部1aに十分なスペースが存在するため、そのスペースを利用すれば、土に引張応力が作用する際に生じる様々な現象の解析ができる。

【0080】
例えば、土のサクション(土壌中の水分の吸引力)の測定に利用できる。具体的には、不動部1aにテンシオメーターを埋設し、テンシオメーターで測定しながら引張強度の測定を行えばよい。そうすれば、引張強度とサクションとの関係が解析でき、よりいっそう土壌の状態の適切な把握が可能になる。

【0081】
<その他>
なお、本発明にかかる方法及び装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。

【0082】
土試料1の形状は、横長な立方体形状が好ましいが、それに限らず円柱状等、仕様に応じて適宜変更できる。

【0083】
土試料1は、その幅よりも高さを大きくできるように、土試料収容槽20や土試料形成部材70を形成するのが好ましい。土試料1の高さを相対的に大きくすることで、土試料1と側壁部22との接触面積が拡大し、それによって土試料1の支持強度が高まるため、軟弱な土等での測定が、より安定してできるようになる。

【0084】
上述した実施形態では、引張応力Fが破断面に一様に作用すると仮定して、モーメントのつりあいの関係式を設定したが、破断面の形状や土試料1の状態等を考慮して破断面に作用する引張応力Fを具体的に解析し、より具体的なモーメントのつりあいの関係式を設定してもよい。そうすれば、より高精度な土の引張強度を算出することができる。

【0085】
土壌90が硬質であれば、可動部収容体70bも、不動部収容体70aと同様に、可動側底壁部71b及び可動側側壁部72bで構成してもよい。更には、土試料形成部材70を、不動側底壁部71aと可動側底壁部71bとだけで構成してもよい。要は、破断が生じるまで可動部1bの形態を保持できればよい。
【符号の説明】
【0086】
1 土試料
1a 不動部
1b 可動部
3 測定装置
10 支持台
20 土試料収容槽(支持部材)
20a 不動部収容体
20b 可動部収容体
30 変位装置
40 変位量測定装置
50 荷重測定装置
60 コンピュータ(データ処理装置)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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