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明細書 :オリゴヌクレオチド、グルココルチコイド感受性増強剤、医薬組成物、及び発現ベクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6049143号 (P6049143)
登録日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発行日 平成28年12月21日(2016.12.21)
発明の名称または考案の名称 オリゴヌクレオチド、グルココルチコイド感受性増強剤、医薬組成物、及び発現ベクター
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAG
C12N 15/00 A
A61P 37/08
A61P 37/06
A61P 29/00
A61K 31/7088
A61P 35/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 27
出願番号 特願2013-549158 (P2013-549158)
出願日 平成24年10月31日(2012.10.31)
国際出願番号 PCT/JP2012/078245
国際公開番号 WO2013/088853
国際公開日 平成25年6月20日(2013.6.20)
優先権出願番号 2011274897
優先日 平成23年12月15日(2011.12.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月20日(2015.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】田中 あかね
【氏名】松田 浩珍
【氏名】松田 彬
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】伊藤 良子
参考文献・文献 J Biol Chem,2003年,Vol.278, No.29,p.27112-27118
RNA,2007年,Vol.13, No.8,p.1287-1300
J Biol Chem,2005年,Vol.280, No.14,p.14230-14239
調査した分野 C12N 15/00-15/90JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、
配列番号2に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、
配列番号3に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、
配列番号4に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、及び、
配列番号5に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、
のいずれかであるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を有効成分として含むグルココルチコイド感受性増強剤。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む医薬組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む発現ベクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド、グルココルチコイド感受性増強剤、医薬組成物、及び発現ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイドは、副腎皮質で作られるホルモンの一種であり、代謝や免疫に関与する。グルココルチコイドは、強い消炎作用及び免疫抑制作用を有することから、その人工合成物がアレルギー疾患や自己免疫性疾患の治療薬として使用されてきた。
また、グルココルチコイドは、がん化したリンパ球に対して増殖抑制作用を有することから、その人工合成物がリンパ腫及びリンパ性白血病の化学療法に用いられてきた。骨髄抑制や激しい消化器症状などの副作用がグルココルチコイド投与で発現することは非常に稀であることから、グルココルチコイドはリンパ腫及びリンパ性白血病に対して必須の治療薬である。
【0003】
様々な疾患に使用されてきたグルココルチコイドであるが、患者の中にはグルココルチコイドに対する耐性を発現する症例があり、グルココルチコイドが効かないことがある。グルココルチコイド耐性は、喘息患者の5~10%、リウマチ患者の約30%、炎症性腸疾患患者の20~50%、小児の急性リンパ性白血病患者の10~25%にも上ると報告されており、グルココルチコイド耐性を解除する技術の開発が待たれている。
【0004】
グルココルチコイド受容体(Glucocorticoid receptor、GR)については、下記の知見が得られている。
GRは、グルココルチコイドと結合すると、核内で転写因子として働く。
ヒトGR遺伝子の塩基配列は既知である(NR3C1、Gene ID:2908、NCBI Reference Sequence:NC_000005.9)。ヒトGR遺伝子には9個のエキソンが存在し、エキソン9(塩基数4111)の内部の選択的スプライシングによって、2つのスプライシングバリアント、GRαとGRβが作られる。
GRαは、エキソン1~9が連結した成熟mRNAから翻訳される、777アミノ酸残基の蛋白質である。GRαはリガンド依存的に核内移行し、転写因子として働く。
GRβは、エキソン1~8とエキソン9の一部(エキソン9の5’末端側から2631~4111番目)とが連結した成熟mRNAから翻訳される、742アミノ酸残基の蛋白質である。GRβはリガンド結合ドメインの一部が欠損しており、リガンド結合能を有しない。GRβは、核内において、リガンドと結合したGRαと競合的に拮抗し、GRαの転写因子活性を阻害する。
【0005】
細胞のグルココルチコイド耐性に関しては、下記の報告がなされている。
イヌのリンパ腫及び白血病に由来する細胞株(CL-1細胞、GL-1細胞)において、Nuclear factor-κB(NF-κB)の機能を阻害することでグルココルチコイド耐性が解除され、グルココルチコイド添加によって細胞増殖が抑制されることが報告されている(例えば、文献1参照)。このことから、NF-κBの機能を阻害すると細胞内のGRの発現量が増加し、グルココルチコイドの細胞増殖抑制作用が細胞に及びやすくなるものと考えられた。
また、ヒトのバーキットリンパ腫由来のRaji細胞及び急性リンパ性白血病患者の末梢血由来細胞において、siRNAを用いてNF-κBの機能を阻害すると、グルココルチコイド耐性が解除されることと、GRαの発現量が増加することが報告されている(例えば、文献2参照)。このことから、細胞内においてGRαの発現量が増加することで、グルココルチコイド耐性が解除される可能性が示唆された。
【0006】
GRの発現に関しては、下記の報告がなされている。
大腸癌細胞株(HT-29細胞)及び乳癌細胞株(MCF-7細胞)において、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるトリコスタチンAや酪酸ナトリウム、及びDNAメチル基転移酵素の阻害剤である5-アザ-2’-デオキシシチジンが、GRαの発現量を増加させGRβの発現量を減少させることが報告されている(例えば、文献3参照)。そのとき同時にセリン/アルギニンリッチ蛋白質(Serine/arginine-rich protein、SR蛋白質)の1種であるASF/SF2の発現量が増加していることから、ASF/SF2は、GRのmRNAのスプライシング制御に関与している可能性が示唆された。SR蛋白質はスプライシング因子であり、細胞の核内でプレmRNAから成熟mRNAへのスプライシングを制御する蛋白質である。
ほかに、28人の健康なボランティアの末梢血白血球におけるmRNAの発現量を比較した研究で、SR蛋白質の1種であるセリン/アルギニンリッチ蛋白質30c(Serine/arginine-rich protein 30c、SRp30c)の発現量と、GRαとGRβとの発現量比(GRα/GRβ)に負の相関関係があることが報告されている(例えば、文献4参照)。
さらに、好中球様細胞株(レチノイン酸によって刺激されたPLB-985細胞)において、SRp30cをアンチセンスオリゴヌクレオチドによってノックダウンすると、GRβのmRNA発現量が減少しGRαのmRNA発現量が増加することが報告されている(例えば、文献5参照)。
また、GR遺伝子にはAGGACという5塩基が比較的高い頻度で存在することが見出され、SRp30cの認識配列と予想された(例えば、文献6参照)。
【0007】
以上の知見から、GR遺伝子のエキソン9内部の選択的スプライシングは、SR蛋白質の1種であるSRp30cによって制御されているものと考えられる。即ち、GRのプレmRNAのエキソン9には、SRp30cが結合する部位が存在し、SRp30cはこの部位に結合して、GRのプレmRNAをGRβの成熟mRNAへとスプライシングさせているものと考えられる。
ただし、SRp30cの機能阻害によって細胞のグルココルチコイド感受性が実際に変化するかについては、これまで報告がなく、不明である。
【0008】
ところで、SR蛋白質のリン酸化を抑制することで、その機能を阻害する技術が開示されている。例として、SR蛋白質のリン酸化酵素の阻害剤であるイソニコチンアミド化合物SRPIN340を抗ウイルス剤として用いる技術が開示されている(例えば、文献7及び文献8参照)。
【0009】
文献1:Matsuda A, et al. Res. Vet. Sci., 2010, 89(3):378-382.
文献2:Matsuda A, et al. The 14th International Congress of Immunology, Aug. 2010, Volume 22, Supplement number 1, p. v8.
文献3:Piotrowska H, et al. Arch. Med. Res., 2009, 40:156-162.
文献4:Watanuki T, et al. J. Affect. Disord., 2008, 110(1-2):62-69.
文献5:Xu Q, et al. J. Biol. Chem., 2003, 278:27112-27118.
文献6:Paradis C, et al. RNA, 2007, 13:1287-1300.
文献7:Karakama Y, et al. Antimicrob. Agents Chemother., 2010, 54(8):3179-318.
文献8:国際公開第2005/063293号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SR蛋白質リン酸化酵素の阻害剤によってSR蛋白質のリン酸化を抑制する手段(例えば、文献7及び文献8参照)では、特定のSR蛋白質の活性を制御することは難しく、あらゆるSR蛋白質の活性を抑制してしまうおそれがある。
また、SRp30cは、GRのほかに、性腺刺激ホルモン受容体のスプライシングにも関与することが知られており、SRp30cのみの活性を抑制した場合でも、生体の恒常性を乱す可能性は否定できない。
副作用を起こすことなく細胞のグルココルチコイド感受性を上げるには、SRp30cが担っているGRスプライシングバリアント制御を選択的に阻害する技術が要求される。
【0011】
本発明は、上記状況のもとになされた。
上記状況のもと、細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性を有する新規な化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決することを目的に、本開示は、下記のオリゴヌクレオチド、グルココルチコイド感受性増強剤、医薬組成物、及び発現ベクターを開示する。
<1> 生体内において、グルココルチコイド受容体遺伝子のプレmRNAとセリン/アルギニンリッチ蛋白質30c(SRp30c)との結合を妨げるオリゴヌクレオチド。
<2> 配列番号22に示す塩基配列の連続する一部に相補的な15~50塩基長の塩基配列である、前記<1>に記載のオリゴヌクレオチド。
<3> 前記配列番号22に示す塩基配列の連続する一部は、アデニンとグアニンの合計のモル比が50%以上の塩基配列である、前記<2>に記載のオリゴヌクレオチド。
<4> 配列番号1に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、配列番号2に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、配列番号3に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、配列番号4に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、及び、配列番号5に示す塩基配列であるオリゴヌクレオチド、のいずれかである、前記<1>に記載のオリゴヌクレオチド。
<5> 前記<1>~<4>に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を有効成分として含むグルココルチコイド感受性増強剤。
<6> 前記<1>~<4>に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む医薬組成物。
<7> 前記<1>~<4>に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む発現ベクター。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性を有するオリゴヌクレオチドが提供される。
また、本発明によれば、前記オリゴヌクレオチドを有効成分として含むグルココルチコイド感受性増強剤が提供される。
また、本発明によれば、前記オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、前記オリゴヌクレオチドを発現する発現ベクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例2における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【図2】実施例2における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【図3】実施例2における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【図4】実施例2における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【図5】実施例2における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【図6】実施例4における細胞増殖抑制率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。なお、これらの説明および実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。

【0016】
<オリゴヌクレオチド>
本発明のオリゴヌクレオチドは、生体内において、グルココルチコイド受容体遺伝子(GR遺伝子)のプレmRNAと、セリン/アルギニンリッチ蛋白質30c(Serine/arginine-rich protein 30c、SRp30c)との結合を妨げるオリゴヌクレオチドである。
前記オリゴヌクレオチドは、グルココルチコイド受容体(Glucocorticoid receptor、GR)のプレmRNAがGRβの成熟mRNAへとスプライシングされることを阻害するので、GRαのGRβに対する相対的な発現量を増加させると考えられる。その結果、細胞のグルココルチコイド感受性が上昇すると考えられる。

【0017】
GRのプレmRNAのエキソン9に存在しSRp30cが結合する部位(スプライス要素)の候補として、GRのプレmRNAのエキソン9の連続する一部であって、アデニン(A)とグアニン(G)の合計のモル比が50%以上である塩基配列が挙げられる。
SR蛋白質はA及び/又はGが豊富な塩基配列と結合しやすいと考えられており、SR蛋白質の1種であるSRp30cも、A及び/又はGが豊富な塩基配列と結合しやすいと考えられる。したがって、GRのプレmRNAのエキソン9の連続する一部であって、アデニンとグアニンの合計のモル比が50%以上である塩基配列は前記スプライス要素である可能性が高い。

【0018】
上記を理由に、ヒトGR遺伝子(NR3C1、Gene ID:2908、NCBI Reference Sequence:NC_000005.9)のエキソン9から、アデニンとグアニンの合計のモル比が50%以上(好ましくは60%以上)である例えば15~50塩基長の塩基配列を選択し、この塩基配列に相補的な15~50塩基長の塩基配列を本発明のオリゴヌクレオチドとしてよい。
このオリゴヌクレオチドは、前記スプライス要素に完全に若しくは部分的に重なってGRのプレmRNAに結合するか、または前記スプライス要素に充分に近い位置でGRのプレmRNAに結合するものと考えられる。そのため、SRp30cと前記スプライス要素との結合が阻害され、GRβの成熟mRNAの作製が阻害され、GRαのGRβに対する相対的な発現量が増加するものと考えられる。その結果、細胞のグルココルチコイド感受性が上がるものと考えられる。

【0019】
配列番号22に示す塩基配列は、ヒトGR遺伝子の塩基番号156091~157582に相当し、即ち、ヒトGR遺伝子のエキソン9の一部(エキソン9の5’末端側から2620~4111番目)に相当する。GRβは、GRのプレmRNAのエキソン1~8とエキソン9の一部(ヒトにおいては、エキソン9の5’末端側から2631~4111番目)とが連結した成熟mRNAから翻訳される蛋白質である。したがって、ヒトGRのプレmRNAの配列番号22に示す塩基配列内に、前記スプライス要素が存在すると考えられる。
上記を理由に、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号22に示す塩基配列の連続する一部に相補的な15~50塩基長の塩基配列であることが好ましい。
さらに、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号22に示す塩基配列の連続する一部であってアデニンとグアニンの合計のモル比が50%以上(より好ましくは60%以上)である塩基配列に相補的な、15~50塩基長の塩基配列であることがより好ましい。

【0020】
本発明のオリゴヌクレオチドは、以下のオリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5のいずれかであることが好ましい。オリゴヌクレオチド1~5は、細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性を有する。

【0021】
オリゴヌクレオチド1:配列番号1に示す塩基配列(5’-CTTTCTGGTTTTAACCACATAACATTCTATA-3’)であるオリゴヌクレオチド。
配列番号1の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の連続する一部(エキソン9の5’末端側から2626~2656番目)に相補的な塩基配列である。

【0022】
オリゴヌクレオチド2:配列番号2に示す塩基配列(5’-AAAAGGGCACAGCTTCTTTTCCCATTTAATGAAA-3’)であるオリゴヌクレオチド。
配列番号2の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の連続する一部(エキソン9の5’末端側から2796~2829番目)に相補的な塩基配列である。

【0023】
オリゴヌクレオチド3:配列番号3に示す塩基配列(5’-TAAGATGACTTTCTTTTCCCCCACGTATCCT-3’)であるオリゴヌクレオチド。
配列番号3の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の連続する一部(エキソン9の5’末端側から2830~2860番目)に相補的な塩基配列である。

【0024】
オリゴヌクレオチド4:配列番号4に示す塩基配列(5’-TTTGTCCCCATTATATAGCATTT-3’)であるオリゴヌクレオチド。
配列番号4の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の連続する一部(エキソン9の5’末端側から3730~3752番目)に相補的な塩基配列である。

【0025】
オリゴヌクレオチド5:配列番号5に示す塩基配列(5’-CAGATTTTTTTATTATGATGT-3’)であるオリゴヌクレオチド。
配列番号5の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の連続する一部(エキソン9の5’末端側から4080~4100番目)に相補的な塩基配列である。

【0026】
オリゴヌクレオチド1~5は、前記スプライス要素に完全に若しくは部分的に重なってGRのプレmRNAに結合するか、または前記スプライス要素に充分に近い位置でGRのプレmRNAに結合するものと考えられる。そのため、SRp30cと前記スプライス要素との結合が阻害され、GRβの成熟mRNAの作製が阻害され、GRαのGRβに対する相対的な発現量が増加するものと考えられる。その結果、細胞のグルココルチコイド感受性が上がるものと考えられる。
オリゴヌクレオチド1~5は、その塩基配列から、GRのプレmRNAのエキソン9の特定部位に配列特異的に結合するものと考えられる。そのため、オリゴヌクレオチド1~5は、SRp30c以外のSR蛋白質の機能には影響を及ぼさず、また、SRp30cが制御しているスプライシングのうち、GRのエキソン9以外のスプライシングには影響を及ぼさないと考えられる。

【0027】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5のいずれかと相同性が認められるオリゴヌクレオチドも包含される。
例えば、オリゴヌクレオチド1と相同性が認められるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド1と同等程度の作用を示せばよく、好ましくは80%以上の相同性、より好ましくは90%以上の相同性、更に好ましくは95%以上の相同性を有する。オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5のいずれかと相同性が認められるオリゴヌクレオチドについても、上記と同様である。
相同性は、例えば、汎用されている相同性検索アルゴリズムであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)(NCBI、又はAltschul, S. F. et al. J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))を用いた配列比較で決定することができる。

【0028】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド1と同等程度の作用を示すものであれば、配列番号1と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも包含される。
配列番号1と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド1と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15~45塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが15塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが45塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、20~40塩基長がより好ましく、22~38塩基長が更に好ましく、23~35塩基長が特に好ましく、24~30塩基長が最も好ましい。

【0029】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド2と同等程度の作用を示すものであれば、配列番号2と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも包含される。
配列番号2と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド2と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15~50塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが15塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが50塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、20~45塩基長がより好ましく、25~40塩基長が更に好ましく、28~38塩基長が特に好ましく、30~34塩基長が最も好ましい。

【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド3と同等程度の作用を示すものであれば、配列番号3と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも包含される。
配列番号3と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド3と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15~45塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが15塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが45塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、20~40塩基長がより好ましく、22~38塩基長が更に好ましく、23~35塩基長が特に好ましく、24~30塩基長が最も好ましい。

【0031】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド4と同等程度の作用を示すものであれば、配列番号4と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも包含される。
配列番号4と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド4と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは12~35塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが12塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが35塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、15~32塩基長がより好ましく、18~30塩基長が更に好ましく、20~28塩基長が特に好ましく、22~25塩基長が最も好ましい。

【0032】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド5と同等程度の作用を示すものであれば、配列番号5と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドも包含される。
配列番号5と相補的な塩基配列であるオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド5と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは12~35塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが12塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが35塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、15~30塩基長がより好ましく、16~25塩基長が更に好ましく、18~23塩基長が特に好ましく、20~22塩基長が最も好ましい。

【0033】
オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法等に従って行うことができる。
前記ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19mM~約40mM、好ましくは約19mM~約20mMで、温度が約50℃~約70℃、好ましくは約60℃~約65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。

【0034】
本発明のオリゴヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5のいずれかにおいて塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドも包含される。
例えば、オリゴヌクレオチド1において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド1と同等程度の作用を示せばよく、塩基の欠失、置換又は付加の位置は特に限定されない。オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5のいずれかにおいて塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドについても、上記と同様である。

【0035】
オリゴヌクレオチド1において、欠失した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~10塩基であり、好ましくは1塩基~5塩基であり、より好ましくは1塩基又は2塩基である。付加した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。
オリゴヌクレオチド1において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド1と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは20~40塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが20塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが40塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、22~38塩基長がより好ましく、23~35塩基長が更に好まし、24~30塩基長が特に好ましい。

【0036】
オリゴヌクレオチド2において、欠失した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~10塩基であり、好ましくは1塩基~5塩基であり、より好ましくは1塩基又は2塩基である。付加した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。
オリゴヌクレオチド2において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド2と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは20~45塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが20塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが45塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、25~40塩基長がより好ましく、28~38塩基長が更に好まし、30~34塩基長が特に好ましい。

【0037】
オリゴヌクレオチド3において、欠失した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~10塩基であり、好ましくは1塩基~5塩基であり、より好ましくは1塩基又は2塩基である。付加した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。
オリゴヌクレオチド3において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド3と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは20~40塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが20塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが40塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、22~38塩基長がより好ましく、23~35塩基長が更に好まし、24~30塩基長が特に好ましい。

【0038】
オリゴヌクレオチド4において、欠失した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~10塩基であり、好ましくは1塩基~5塩基であり、より好ましくは1塩基又は2塩基である。付加した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。
オリゴヌクレオチド4において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド4と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15~32塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが15塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが32塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、18~30塩基長がより好ましく、20~28塩基長が更に好まし、22~25塩基長が特に好ましい。

【0039】
オリゴヌクレオチド5において、欠失した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~10塩基であり、好ましくは1塩基~5塩基であり、より好ましくは1塩基又は2塩基である。付加した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、例えば1塩基~15塩基であり、好ましくは1塩基~10塩基であり、より好ましくは1塩基~5塩基である。
オリゴヌクレオチド5において塩基が欠失、置換又は付加したオリゴヌクレオチドの長さは、オリゴヌクレオチド5と同等程度の作用を示せば特に限定されない。当該オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15~30塩基長である。当該オリゴヌクレオチドの長さが15塩基長以上であると、配列非特異的な結合が起こりにくく、また、標的mRNAとの結合の安定性が高い。他方、当該オリゴヌクレオチドの長さが30塩基長以下であると、細胞内及び核内に移行しやすい。上記観点から、当該オリゴヌクレオチドの長さは、16~25塩基長がより好ましく、18~23塩基長が更に好まし、20~22塩基長が特に好ましい。

【0040】
本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴDNA及びオリゴRNAのみならず、ホスホロチオエートオリゴDNA及びホスホロチオエートオリゴRNAであってよい。
ホスホロチオエートヌクレオチドは、ヌクレオチド間の結合部位にあるリン酸基の酸素原子が硫黄原子で置換されたヌクレオチドである。ホスホロチオエートヌクレオチドは、各種の核酸分解酵素に対して耐性があることから、ヌクレオチドよりも安定性が高く好ましい。
本発明のオリゴヌクレオチドは、安定性の観点から、オリゴDNAが好ましく、ホスホロチオエートオリゴDNAがより好ましい。

【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドは、通常のオリゴヌクレオチド合成の方法に従って化学合成することで得ることができる。
また、オリゴヌクレオチド1は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2626~2656番目の配列を含む部位を鋳型にして、適当なプライマーを用いてPCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド2は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2796~2829番目の配列を含む部位を鋳型にして、適当なプライマーを用いてPCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド3は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2830~2860番目の配列を含む部位を鋳型にして、適当なプライマーを用いてPCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド4は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から3730~3752番目の配列を含む部位を鋳型にして、適当なプライマーを用いてPCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド5は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から4080~4100番目の配列を含む部位を鋳型にして、適当なプライマーを用いてPCR法により合成できる。

【0042】
本発明において、オリゴヌクレオチドについて言う「細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性」とは、当該オリゴヌクレオチドを細胞に接触させた場合、当該オリゴヌクレオチドを細胞に接触させない場合に比して、細胞のグルココルチコイドに対する感受性を上げる活性をいう。
オリゴヌクレオチドが「細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性」を有するか否かは、当該オリゴヌクレオチドとグルココルチコイドとを細胞に接触させた場合と細胞に接触させない場合とについて、細胞増殖率を比較することで確認できる。例えば、リンパ腫またはリンパ性白血病に由来する細胞に当該オリゴヌクレオチドを導入し、当該細胞の培地にグルココルチコイドを添加して、細胞増殖率が低下することで確認できる。

【0043】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該オリゴヌクレオチドを含む培地で細胞を培養することで、細胞への導入が可能である。このとき、オリゴヌクレオチドとリポフェクタミンとを混合して用いることで、細胞への導入効率を上げることができる。ほかに、電気穿孔法によっても細胞への導入効率を上げることができる。

【0044】
<グルココルチコイド感受性増強剤>
本発明のグルココルチコイド感受性増強剤は、薬学的に許容し得る媒質中に、本発明のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を有効成分として含む。
前記グルココルチコイド感受性増強剤の投与により、細胞におけるGRαのGRβに対する相対的な発現量を増やすことができる。このため、前記グルココルチコイド感受性増強剤は、生体のグルココルチコイド感受性を増強させる薬剤として用いることができる。

【0045】
前記グルココルチコイド感受性増強剤の調製に用いられる媒質および製剤用添加物の種類は、特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖)及び液体媒質(例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液)が挙げられる。製剤用添加物としては、界面活性剤(例えば、糖類、多価アルコール、多価アルコールエステル)、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム)等が挙げられる。

【0046】
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、静脈内投与するのに適した液体媒質に、本発明のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を適当量含有させたものが好ましい。この場合、前記グルココルチコイド感受性増強剤の投与は、適用対象者の静脈内に注射または点滴することにより行われる。
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、保存安定性の観点からは、凍結乾燥された状態も好ましい。この場合は用時に液体媒質に溶かして用いればよい。

【0047】
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、通常、副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドと共に用いられる。両者を共に用いる場合、前記グルココルチコイド感受性増強剤は、グルココルチコイドと同時に投与してもよく、グルココルチコイドの投与前に或いはグルココルチコイドの投与後に投与してもよい。
共に用いられるグルココルチコイドは、天然物の精製物でもよく、人工合成物であるステロイド剤(例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン等)でもよい。

【0048】
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫性疾患、リンパ腫、リンパ性白血病などのステロイド剤の投与対象となりうる全ての患者に投与することができる。
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、上記の患者でグルココルチコイド耐性になっている患者に使用するほか、グルココルチコイド耐性になっていない患者にも使用できる。この場合、グルココルチコイド投与量の減量が可能になるという点で有用である。

【0049】
前記グルココルチコイド感受性増強剤は、対象となる疾患の種類や重傷度などにもよるが、成人1回当たりの有効量として0.01mg/kg~100mg/kgの投与が好ましく、0.1mg/kg~30mg/kgの投与がより好ましい。投与回数に特に制限はなく、1回投与で用いてもよく、反復投与で用いてもよく、持続投与で用いてもよい。投与間隔および投与期間は、臨床所見、画像所見、血液所見、併存する疾患、既往歴などに応じて、当業者が選択できる。

【0050】
前記グルココルチコイド感受性増強剤の使用は、ヒトでの使用に限定されない。ウシ、ウマ、ヒツジ等の家畜や、イヌ、ネコ、サル等のペット等に用いてもよい。

【0051】
前記グルココルチコイド感受性増強剤に有効成分として含まれるオリゴヌクレオチドとしては、オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
オリゴヌクレオチド1~5は、GRのプレmRNAにおけるエキソン9の特定部位に配列特異的に結合し、SRp30cと前記スプライス要素との結合を選択的に阻害するものと考えられる。そのため、オリゴヌクレオチド1~5の少なくとも1種を有効成分として含むグルココルチコイド感受性増強剤は、生体へ投与しても副作用の懸念が少ない。

【0052】
<医薬組成物>
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る媒質中に、本発明のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種を含む。
前記医薬組成物は、細胞におけるGRαのGRβに対する相対的な発現量を増やし、生体のグルココルチコイド感受性を増強させうる医薬組成物を提供するものである。

【0053】
前記医薬組成物の調製に用いられる媒質および製剤用添加物の種類は、特に制限されない。媒質および製剤用添加物としては、前記グルココルチコイド感受性増強剤について既述した固体媒質、液体媒質、界面活性剤、緩衝剤などが挙げられる。

【0054】
前記医薬組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、がん、内分泌疾患、精神疾患、感染症、外傷などの各種の疾患や身体損傷の治療のために使用することができる。なかでも、前記医薬組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、リンパ腫、リンパ性白血病などのステロイド剤の投与対象となりうる患者に好適である。
前記医薬組成物は、血管内投与、膀胱投与、腹腔内投与、局所投与等の方法で患者に投与することができる。
したがって、前記医薬組成物によれば、各種の疾患や身体損傷(例えば、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、がん、内分泌疾患、精神疾患、感染症、外傷など)の治療方法が提供される。当該治療方法は、各種の疾患や身体損傷(例えば、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、がん、内分泌疾患、精神疾患、感染症、外傷など)の患者に、前記医薬組成物を投与することを含む。当該治療方法において「治療」とは、症状の改善であればよく、重症化の抑制や症状の軽減若しくは緩和もこの用語に包摂される。

【0055】
前記医薬組成物は、副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドと共に用いることができる。両者を共に用いる場合、前記医薬組成物は、グルココルチコイドと同時に投与してもよく、グルココルチコイドの投与前に或いはグルココルチコイドの投与後に投与してもよい。
共に用いられるグルココルチコイドは、天然物の精製物でもよく、人工合成物であるステロイド剤(例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン等)でもよい。

【0056】
前記医薬組成物の使用は、ヒトでの使用に限定されない。ウシ、ウマ、ヒツジ等の家畜や、イヌ、ネコ、サル等のペット等に用いてもよい。

【0057】
前記医薬組成物に含まれるオリゴヌクレオチドとしては、オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
オリゴヌクレオチド1~5は、GRのプレmRNAにおけるエキソン9の特定部位に配列特異的に結合し、SRp30cと前記スプライス要素との結合を選択的に阻害するものと考えられる。そのため、オリゴヌクレオチド1~5の少なくとも1種を有効成分として含む医薬組成物は、生体へ投与しても副作用の懸念が少ない。

【0058】
<発現ベクター>
本発明の発現ベクターは、本発明のオリゴヌクレオチドを含み、本発明のオリゴヌクレオチドの発現に用いられる。前記発現ベクターは、本発明のオリゴヌクレオチド(好ましくはDNA)を一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチド(好ましくは二本鎖DNA)を、任意のベクターに挿入することにより得ることができる。

【0059】
前記二本鎖ヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13、YEp24、YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージDNA(例えば、Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルス等の動物ウイルス由来のベクター、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルス由来のベクターを用いることもできる。

【0060】
オリゴヌクレオチド1を一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチドは、例えば、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2626~2656番目を鋳型にして、適当な制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド2のオリゴヌクレオチドを一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチドは、例えば、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2796~2829番目を鋳型にして、適当な制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド3を一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチドは、例えば、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2830~2860番目を鋳型にして、適当な制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド4を一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチドは、例えば、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から3730~3752番目を鋳型にして、適当な制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR法により合成できる。
オリゴヌクレオチド5を一方の鎖に含む二本鎖ヌクレオチドは、例えば、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から4080~4100番目を鋳型にして、適当な制限酵素部位を含むプライマーを用いて、PCR法により合成できる。
そして、このようにして得た二本鎖ヌクレオチドを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入すれば、前記発現ベクターが得られる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
<実施例1>
〔GRα及びGRβの発現量の検討〕
[オリゴヌクレオチドの用意]
細胞内に導入するオリゴヌクレオチドとして、オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2、オリゴヌクレオチド3、オリゴヌクレオチド4、及びオリゴヌクレオチド5を用意した。これらのオリゴヌクレオチドは、常法の化学合成によって得た。これらの塩基配列を表1に示す。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0006049143B2_000002t.gif
【実施例】
【0064】
表1において、「エキソン9中の対応位置」とは、ヒトGR遺伝子のエキソン9(塩基数4110)において、各オリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列が存在する位置(エキソン9の5’末端側から数えた塩基番号)である。換言すれば、例えば、オリゴヌクレオチド1の塩基配列は、ヒトGR遺伝子のエキソン9の5’末端側から2626~2656番目の塩基配列に相補的な塩基配列である。
【実施例】
【0065】
[細胞の培養]
実験には、ヒトのバーキットリンパ腫由来のRaji細胞(Japan Health Science Foundation製)を用いた。
Raji細胞は、10%牛胎児血清(FBS)(Filtoron製)、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地(Gibco製)を用いて、37℃/5%CO雰囲気で培養し維持した。
【実施例】
【0066】
[オリゴヌクレオチドの細胞内への導入]
2×10個のRaji細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて洗浄後、Amaxa cell line Nucleofector Kit V(Lonza製)のトランスフェクション用試薬100μlに懸濁した。オリゴヌクレオチドを300nMの濃度となるように添加した後、速やかにNucleofector I device(Lonza製)を用いて電気穿孔法による細胞内への導入を行なった。
濃度依存性を確かめる実験においては、オリゴヌクレオチドの濃度を5nM、10nM、50nM、100nM、及び500nMとした。
Raji細胞は、前記培地で24時間培養した後、以降の各種実験に供した。
【実施例】
【0067】
[GRα及びGRβの発現量の測定]
オリゴヌクレオチドを導入したRaji細胞における、GRα及びGRβの発現量を、RT-PCR法及びPCR法により測定した。内在性コントロールとしては、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現量を測定した。
Raji細胞はPBSで洗浄した後、FastPure RNA Kit(Takara bio製)を用いてRNAを抽出し、PrimeScript 1st strand cDNA synthesis kit(Takara bio製)を用いて逆転写反応を行なった。得られたcDNAは、Platinum Taq DNA polymerase(Invitrogen製)及び目的遺伝子に特異的なPCR用プライマー(表2にその塩基配列を示す)を用いて増幅した。PCR条件は、初回解離処理を94℃で2分間行ない、解離(94℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、伸長(72℃、1分間)を35サイクル行なった。さらに最終伸長を72℃で4分間行なった。
【実施例】
【0068】
【表2】
JP0006049143B2_000003t.gif

【実施例】
【0069】
PCR後、エチジウムブロマイド添加2%アガロースゲルによる二次元電気泳動でDNAを分離し、バンドの輝度をイメージアナライザー Gel Print 2000i/VGA(Genomic Solutions製)によって数値化した。
オリゴヌクレオチド1~5のいずれかを導入したRaji細胞における、GAPDH、GRα及びGRβの発現量を表3に示す。表3中の「GRα/GRβの相対値」は、オリゴヌクレオチドを導入していない細胞における「GRαの発現量をGRβの発現量で除した値」を1としたときの相対値である。
また、濃度を変えてオリゴヌクレオチド1を導入したRaji細胞における、GAPDH、GRα及びGRβの発現量を表4に示す。
なお、各実験は3回行った。表3及び表4にはその平均を示す。
【実施例】
【0070】
【表3】
JP0006049143B2_000004t.gif
【実施例】
【0071】
【表4】
JP0006049143B2_000005t.gif

【実施例】
【0072】
表3に明らかなように、オリゴヌクレオチド1~5のいずれかを導入した細胞では、「GRα/GRβの相対値」が1.1を超えていた。このことから、これらのオリゴヌクレオチドを細胞内に導入することにより、細胞のグルココルチコイド感受性が上昇する可能性が示唆された。
表4に明らかなように、オリゴヌクレオチド1は、濃度依存的にGRβの発現量を低下させた。
【実施例】
【0073】
<実施例2>
〔オリゴヌクレオチド導入細胞のグルココルチコイド感受性の検討〕
[オリゴヌクレオチド1導入細胞]
オリゴヌクレオチド1の導入による細胞のグルココルチコイド感受性の変化を検討するため、5-ブロモ-2-デオキシウリジン(BrdU)取り込み試験を行い、細胞増殖の定量を行った。グルココルチコイドとしてデキサメサゾン(Biomol製)を使用し、デキサメサゾンの濃度は、0μM(添加なし)、0.1μM、0.5μM、1μM、5μM、及び10μMとした。
【実施例】
【0074】
細胞周期を同期化するため、Raji細胞を血清の入っていないRPMI1640培地中で12時間培養した後、血清の入ったRPMI1640培地に再懸濁し96穴プレートに播種した。
デキサメサゾンの添加後22時間培養し、BrdUを添加してさらに2時間培養した。遠心分離した後、上清を捨て、乾燥させ固定した後、ペルオキシダーゼ標識抗BrdU抗体と1時間、室温で反応させた。その後、PBSで3回洗浄し、テトラメチルベンジディンを加え、適度な発色が得られた段階でHSO(1M)を添加して反応を停止した。よく攪拌した後、プレートリーダーによって450nmで吸光度を測定した。その結果を表5に示す。
【実施例】
【0075】
デキサメサゾンを添加していないRaji細胞を対照として、前記吸光度の相対比によって細胞増殖抑制率(%)を算出した。その結果を表6及び図1に示す。ここで、統計学的有意差の判定には、一元配置分散分析法及び多重比較法を用いた。多重比較としてはTukey法を使用した。危険率P< .05(vsオリゴヌクレオチド無添加)を有意な差とした。
なお、各実験は3回行った。表5及び表6にはその平均を示す。
【実施例】
【0076】
【表5】
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【実施例】
【0077】
【表6】
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【実施例】
【0078】
表5、表6及び図1に明らかなように、オリゴヌクレオチド1を導入したRaji細胞では、オリゴヌクレオチドを導入していないRaji細胞に比べて、デキサメサゾンの添加により、BrdUの取り込み量が有意に低下し、また、細胞増殖抑制率が有意に増加した。このことから、オリゴヌクレオチド1を導入することにより、細胞のグルココルチコイド感受性が上昇したことが分る。
したがって、本発明によれば、細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性を有するオリゴヌクレオチドを提供できる。
【実施例】
【0079】
[オリゴヌクレオチド2~5導入細胞]
上記と同様にしてBrdU取り込み試験を行い、オリゴヌクレオチド2~5いずれかの導入による細胞のグルココルチコイド感受性の変化を検討した。細胞増殖抑制率(%)を表7及び図2~図5に示す。なお、各実験は4回行い、表7にはその平均を示す。
【実施例】
【0080】
【表7】
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【実施例】
【0081】
表7及び図2~図5に明らかなように、オリゴヌクレオチド2~5のいずれかを導入したRaji細胞では、オリゴヌクレオチドを導入していないRaji細胞に比べて、デキサメサゾンによる細胞増殖抑制率が有意に増加した。このことから、オリゴヌクレオチド2~5のいずれかを導入することにより、細胞のグルココルチコイド感受性が上昇したことが分る。
したがって、本発明によれば、細胞のグルココルチコイド感受性を上げる活性を有するオリゴヌクレオチドを提供できる。
【実施例】
【0082】
<実施例3>
〔エストロゲン受容体の発現量の検討〕
エストロゲン受容体(ER)には2つのスプライシングバリアント、ERαとERβが存在する。ERのmRNAのスプライシング制御に、SRp30cが関与することが知られている。
オリゴヌクレオチド1を導入したRaji細胞における、ERα及びERβの発現量を、RT-PCR法及びPCR法により測定した。
【実施例】
【0083】
実施例1における[細胞の培養]及び[オリゴヌクレオチドの細胞内への導入]と同様にして、オリゴヌクレオチド1を導入したRaji細胞を得た。なお、オリゴヌクレオチド1の細胞内への導入時の濃度は、300nMとした。
【実施例】
【0084】
[エストロゲン受容体の発現量の測定]
Raji細胞はPBSで洗浄した後、FastPure RNA Kit(Takara bio製)を用いてRNAを抽出し、PrimeScript 1st strand cDNA synthesis kit(Takara bio製)を用いて逆転写反応を行なった。得られたcDNAは、Platinum Taq DNA polymerase(Invitrogen製)及び目的遺伝子に特異的なPCR用プライマー(表8にその塩基配列を示す)を用いて増幅した。PCR条件は、初回解離処理を94℃で2分間行ない、解離(94℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、伸長(72℃、1分間)を35サイクル行なった。さらに最終伸長を72℃で4分間行なった。
内在性コントロールとして、配列番号10及び11のPCRプライマーを用いてGAPDHの発現量を測定した。
【実施例】
【0085】
【表8】
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【実施例】
【0086】
PCR後、エチジウムブロマイド添加2%アガロースゲルによる二次元電気泳動でDNAを分離し、バンドの輝度をイメージアナライザー Gel Print 2000i/VGA(Genomic Solutions製)によって数値化した。
オリゴヌクレオチド1を導入したRaji細胞における、GAPDH、ERα及びERβの発現量を表9に示す。表9中の「ERα/ERβの相対値」は、オリゴヌクレオチドを導入していない細胞における「ERαの発現量をERβの発現量で除した値」を1としたときの相対値である。
【実施例】
【0087】
【表9】
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【実施例】
【0088】
表9に明らかなように、オリゴヌクレオチド1を導入しても、「ERα/ERβの相対値」がほぼ1であった。このことから、オリゴヌクレオチド1を細胞に導入しても、ERのmRNAのスプライシング制御に影響を及ぼさないことが分る。
【実施例】
【0089】
<実施例4>
〔オリゴヌクレオチドの抗腫瘍効果の検討〕
[オリゴヌクレオチド4発現用ベクターの作製]
オリゴヌクレオチド4をベクターへ挿入するため、表10に示すオリゴヌクレオチドを用意した。
【実施例】
【0090】
【表10】
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【実施例】
【0091】
上記の2種類のオリゴヌクレオチド、ON4-Sense及びON4-Antisenseをそれぞれ50μMとなるように混和し、アニーリング処理(95℃で30秒、続いて72℃で2分間、続いて37℃で2分間、続いて25℃で2分間)を行い、二本鎖DNAを作製した。この二本鎖DNAを以降の実験に使用するまで-20℃で保管した。
【実施例】
【0092】
RNAi-Ready pSIREN-RetroQ-ZsGreen vector(Takara bio製)と上記二本鎖DNAを混和し、Ligation kit(Takara bio製)を用いてライゲーションを行った。同様に、キットに附属のコントロールDNAもRNAi-Ready pSIREN-RetroQ-ZsGreen vectorとのライゲーションを行い、陰性コントロール用のベクターとした。
表11に示すプライマーを用いてPCRを行い、上記ベクターと二本鎖DNAがライゲーションされ環状プラスミド(プラスミドベクター)が作製されたことを確認した。
【実施例】
【0093】
【表11】
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【実施例】
【0094】
上記で得たプラスミドベクターをHIT competent cells HIT-DH5a(RBC Bioscience製)と混和し、4℃で5分間保持した後、寒天培地に播種し、37℃で18時間の培養を行った。
発生した大腸菌コロニーを採取し、表11に示すプライマーを用いてPCRを行い、プラスミドベクターが大腸菌に導入されていることを確認した。
【実施例】
【0095】
上記プラスミドベクターを導入した大腸菌を液体培地に播種し、37℃で16時間の培養を行った後、Endofree plasmid purification kit(Qiagen製)を用いてプラスミドベクターを抽出した。表11に示すプライマーを用いてPCRを行い、目的のプラスミドベクターが抽出されたことを確認した。
【実施例】
【0096】
上記プラスミドベクターとpCMV-VSV-G envelope vector(Cell Biolabs製)をFuGene HD transfection reagent(Roche製)を用いてPlatinum-GP retroviral packaging cell line(Cell Biolabs製)に導入し、レトロウイルスベクターを作製した。このレトロウイルスベクターを含む培養上清を回収しフィルトレーション後、-20℃で保管した。
【実施例】
【0097】
[オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞の作製]
上記培養上清を含む培地でRaji細胞を48時間培養し、レトロウイルスベクターをRaji細胞に感染させ、オリゴヌクレオチド4を恒常的に発現するRaji細胞(この細胞は、蛍光タンパク質ZsGreenによって標識されている。)を作製した。
そして、ZsGreen陽性細胞をFACSソーティングにより分取した。
【実施例】
【0098】
[GRα及びGRβの発現量の測定]
実施例1における[GRα及びGRβの発現量の測定]と同様にして、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞における、GRα及びGRβの発現量を測定した。内在性コントロールとしては、GAPDHの発現量を測定した。
GAPDH、GRα及びGRβの発現量を表12に示す。表12中の「GRα/GRβの相対値」は、コントロールRaji細胞における「GRαの発現量をGRβの発現量で除した値」を1としたときの相対値である。なお、実験は3回行い、表12にはその平均を示す。
【実施例】
【0099】
【表12】
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【実施例】
【0100】
表12に明らかなように、オリゴヌクレオチド4を恒常的に発現させると、GRαの発現量が増加し、GRβの発現量が減少することが確認された。
【実施例】
【0101】
[グルココルチコイド感受性の検討]
オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞のグルココルチコイド感受性を検討するため、実施例2と同様にしてBrdU取り込み試験を行い、細胞増殖の定量を行った。デキサメサゾンの濃度は、0μM(添加なし)及び5μMとした。吸光度の測定結果を表13に示す。なお、各実験は3回行い、表13にはその平均を示す。
【実施例】
【0102】
【表13】
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【実施例】
【0103】
表13に明らかなように、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞では、コントロールRaji細胞に比べて、デキサメサゾンの添加によりBrdUの取り込み量が有意に低下した。このことから、オリゴヌクレオチド4の恒常的な発現により、グルココルチコイド感受性が高まることが確認された。
【実施例】
【0104】
[in vivo試験]
6週齢のSCIDマウス(n=10)に、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞及びコントロールRaji細胞をそれぞれ1×10細胞/匹、腹腔内に接種し、デキサメサゾン15mg/kgを毎日、腹腔内投与して観察した。生存率(%)を表14に示し、生存曲線を図6に示す。
【実施例】
【0105】
【表14】
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【実施例】
【0106】
表14及び図6に明らかなように、コントロールRaji細胞を接種したマウスと、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞を接種したマウスとは、同程度の致死率であった。コントロールRaji細胞を接種したマウスにデキサメサゾンを投与しても、マウスの生存率を上昇させなかったが、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞を接種したマウスにデキサメサゾンを投与すると、マウスの生存率を顕著に上昇させた。
【実施例】
【0107】
<実施例5>
〔オリゴヌクレオチドのブロッキング活性の検討〕
オリゴヌクレオチド4によってSRp30cとGRのプレmRNAとの結合が阻害されていることを確認するため、RNAクロマチン免疫沈降反応を行った。
【実施例】
【0108】
[RNAクロマチン免疫沈降反応]
オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞及びコントロールRaji細胞を1%ホルムアルデヒドで固定し、核酸とタンパク質をクロスリンケージさせた。
各細胞を洗浄後、RNA ChIP-IT kit(Active motif製)を用いて、細胞の溶解、DNase処理、及び抗RNase処理を行い、抗SRp30c抗体とprotein G magnetic beads(以下「ビーズ」)で免疫沈降反応(4℃で4時間の反応)を行った。
続いて、ビーズを回収し洗浄し、脱クロスリンケージ処理を行った。
表15に示すプライマーを使用し、RT-PCR法及びPCR法により、SRp30cと結合していたGRのプレmRNAを検出した。PCR条件は、初回解離処理を94℃で2分間行ない、解離(94℃、30秒間)、アニーリング(55℃、30秒間)、伸長(72℃、1分間)を35サイクル行なった。さらに最終伸長を72℃で4分間行なった。
なお、表15に示すプライマーは、GRのプレmRNAの一部であって、ヒトGR遺伝子の塩基番号152873~153556に対応する部位を増幅するように設計した。
【実施例】
【0109】
【表15】
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【実施例】
【0110】
PCR後、エチジウムブロマイド添加2%アガロースゲルによる二次元電気泳動でDNAを分離し、バンドの輝度をイメージアナライザー Gel Print 2000i/VGA(Genomic Solutions製)によって数値化した。陽性コントロールの輝度を1としたときの相対値を表16に示す。なお、実験は3回行い、表16にはその平均を示す。
【実施例】
【0111】
【表16】
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【実施例】
【0112】
表16に明らかなように、オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞からの抽出物においては、SRp30cと結合していたGRのプレmRNAの量が有意に低かった。オリゴヌクレオチド4発現Raji細胞においては、SRp30cとGRのプレmRNAの結合が阻害されていることが確認された。
【実施例】
【0113】
2011年12月15日に出願の日本国出願番号第2011-274897号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5