TOP > 国内特許検索 > 光誘起キャリヤライフタイム測定装置及び光誘起キャリヤライフタイム測定方法 > 明細書

明細書 :光誘起キャリヤライフタイム測定装置及び光誘起キャリヤライフタイム測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6052536号 (P6052536)
公開番号 特開2013-145868 (P2013-145868A)
登録日 平成28年12月9日(2016.12.9)
発行日 平成28年12月27日(2016.12.27)
公開日 平成25年7月25日(2013.7.25)
発明の名称または考案の名称 光誘起キャリヤライフタイム測定装置及び光誘起キャリヤライフタイム測定方法
国際特許分類 H01L  21/66        (2006.01)
FI H01L 21/66 M
請求項の数または発明の数 12
全頁数 16
出願番号 特願2012-253129 (P2012-253129)
出願日 平成24年11月19日(2012.11.19)
優先権出願番号 2011276215
優先日 平成23年12月16日(2011.12.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月20日(2015.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】鮫島 俊之
個別代理人の代理人 【識別番号】100090398、【弁理士】、【氏名又は名称】大渕 美千栄
【識別番号】100090387、【弁理士】、【氏名又は名称】布施 行夫
審査官 【審査官】堀江 義隆
参考文献・文献 特開2011-082312(JP,A)
特開2005-277417(JP,A)
調査した分野 H01L 21/66
G01N 22/00
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体基体に発生した光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する光誘起キャリヤライフタイム測定装置において、
前記半導体基体に対して、光誘起キャリヤを発生させるための波長の異なる少なくとも2種類の連続光を照射する光照射部と、
前記半導体基体に照射するマイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、
前記半導体基体を透過したマイクロ波の強度を検出する検出部と、
前記検出部で検出されたマイクロ波強度に基づき実効キャリヤライフタイムを算出する演算部とを含み、
前記演算部が、
前記少なくとも2種類の連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づいて、前記少なくとも2種類の連続光の波長毎の実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムに基づき前記半導体基体のバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度とを算出する、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記演算部が、
バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の値を求める、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記演算部が、
バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値
を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度の値を求める、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記演算部が、
半導体基体の表面にパッシベーション膜が形成された参照試料に対して周期的なパルス光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料の実効キャリヤライフタイムと、前記参照試料に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料のキャリヤ面密度とに基づいて、キャリヤ発生率を求め、被測定試料である半導体基体に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記被測定試料のキャリヤ面密度と、前記キャリヤ発生率とに基づいて、前記実効キャリヤライフタイムの測定値を算出する、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記少なくとも2種類の連続光は、前記半導体基体に対する吸収係数の異なる2種類の連続光である、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記少なくとも2種類の連続光は、前記半導体基体に対する吸収係数が少なくとも2倍以上異なる2種類の連続光である、光誘起キャリヤライフタイム測定装置。
【請求項7】
半導体基体に発生した光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する光誘起キャリヤライフタイム測定方法において、
前記半導体基体に対して、光誘起キャリヤを発生させるための波長の異なる少なくとも2種類の連続光を照射するとともに、前記半導体基体にマイクロ波を照射し、
前記半導体基体を透過したマイクロ波の強度を検出し、
前記少なくとも2種類の連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づいて、前記少なくとも2種類の連続光の波長毎の実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムに基づき前記半導体基体のバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度とを算出する、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
【請求項8】
請求項7において、
バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の値を求める、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
【請求項9】
請求項7において、
バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度の値を求める、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
【請求項10】
請求項8又は9において、
半導体基体の表面にパッシベーション膜が形成された参照試料に対して周期的なパルス光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料の実効キャリヤライフタイムと、前記参照試料に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料のキャリヤ面密度とに基づいて、キャリヤ発生率を求め、被測定試料である半導体基体に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記被測定試料のキャリヤ面密度と、前記キャリヤ発生率とに基づいて、前記実効キャリヤライフタイムの測定値を算出する、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかにおいて、
前記少なくとも2種類の連続光は、前記半導体基体に対する吸収係数の異なる2種類の連続光である、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記少なくとも2種類の連続光は、前記半導体基体に対する吸収係数が少なくとも2倍以上異なる2種類の連続光である、光誘起キャリヤライフタイム測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光誘起キャリヤライフタイム測定装置及び光誘起キャリヤライフタイム測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基体に発生した光誘起キャリヤ(少数キャリヤ)の実効キャリヤライフタイムを測定する方法として、μ-PCD法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、マイクロ波を半導体基体に照射した状態で、極めて短時間の光パルスを照射する。光パルスによって誘起されたキャリヤによってマイクロ波が反射され、反射強度の時間変化を測定することにより光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する。
【0003】
また、半導体基体の光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する方法として、QSSPC法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。この方法では、インダクタンスコイルを半導体基体に直面して配置し、RF周波数の電磁波を印加する。そして、半導体基体に極めて短時間の光パルスを照射する。光パルスによって誘起されたキャリヤによってRF周波数の電磁波が反射され、反射波の時間変化をコイルに流れる電流の変化として測定することにより光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する。
【0004】
また、半導体基体の光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する方法として、マイクロ波光干渉吸収法が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この方法では、導波管で形成したマイクロ波干渉計に半導体基体を挿入し、マイクロ波を照射した状態で連続光を照射する。連続光によって誘起されたキャリヤによってマイクロ波が吸収され、このときのマイクロ波の透過率の減少を測定することにより光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する。
【0005】
さらに、非特許文献3に記載の方法において、半導体基体に周期的間歇的パルス光を照射する方法が知られている(例えば、非特許文献4、特許文献1参照)。この方法では、パルス光の照射時間と周期を変えることにより、照射光強度に関係なく実効キャリヤライフタイムを求めることができる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J.M.Borrego, R.J.Gutmann, N.Jensen, and O.Paz: Solid-Sate Electron.30(1987)195.
【非特許文献2】G.S.Kousik, Z.G.Ling, and P.K.Ajmera: J.Appl.Phys.72(1992)141.
【非特許文献3】T.SAMESHIMA, H.HAYASAKA, and T.HABA: Jpn.J.Appl.Phys.48 (2009)021204-1-6.
【非特許文献4】Toshiyuki Sameshima. Tomokazu Nagao, Shinya Yoshidomi, Kazuya Kogure, and Masahiko Hasumi: “Minority Carrier Lifetime Measurements by Photo-Induced Carrier Microwave Absorption Method”, Jpn.J.Appl.Phys.50(2011)03CA02.
【0007】

【特許文献1】国際公開第11/099191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の様々な技術によって、半導体基体の光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定することが可能になった。光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムは、一般に半導体基体固有のライフタイム(バルクキャリヤライフタイム)と半導体表面に存在する欠陥により生じる表面再結合速度によって決まる。ソーラーセル、CCD等の光誘起キャリヤを有効に利用するデバイス製造においては、バルクキャリヤライフタイムを大きくするとともに表面再結合速度を小さくして実効キャリヤライフタイムを増大せしめることが重要である。そして、実効キャリヤライフタイムの測定装置(解析装置)において、バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度が実験的に得られることが望ましい。
【0009】
しかしながら、従来の技術では、実効キャリヤライフタイムを精密に求めることはできるものの、バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度を決定する手段がなかった。すなわち、従来の技術では、バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度のいずれか一方を仮定して他方を求める手法が一般的であった。シリコン等間接エネルギーバンド型結晶半導体の場合、バルクキャリヤライフタイムは大きいと予想されるので、通常はバルクキャリヤライフタイムを十分に大きいと仮定し、測定で得た実効キャリヤライフタイムから表面再結合測定を求めていた。しかしながら、仮定したバルクキャリヤライフタイムの不確定度は残り、精密な解析を行う上で問題点があった。
【0010】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体基体のバルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度を精度良く測定することが可能な光誘起キャリヤライフタイム測定装置及び光誘起キャリヤライフタイム測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、半導体基体に発生した光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する光誘起キャリヤライフタイム測定装置において、
前記半導体基体に対して、光誘起キャリヤを発生させるための波長の異なる少なくとも2種類の光を照射する光照射部と、
前記半導体基体に照射するマイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、
前記半導体基体を透過したマイクロ波の強度を検出する検出部と、
前記検出部で検出されたマイクロ波強度に基づき実効キャリヤライフタイムを算出する演算部とを含み、
前記演算部が、
前記少なくとも2種類の光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づいて、前記少なくとも2種類の光の波長毎の実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムに基づき前記半導体基体のバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度とを算出することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、半導体基体に発生した光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを測定する光誘起キャリヤライフタイム測定方法において、
前記半導体基体に対して、光誘起キャリヤを発生させるための波長の異なる少なくとも2種類の光を照射するとともに、前記半導体基体にマイクロ波を照射し、
前記半導体基体を透過したマイクロ波の強度を検出し、
前記少なくとも2種類の光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づいて、前記少なくとも2種類の光の波長毎の実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムに基づき前記半導体基体のバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度とを算出することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、波長の異なる少なくとも2種類の光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき少なくとも2種類の光の波長毎の実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムに基づき前記半導体基体のバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度とを算出することで、バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度を精度良く測定することができる。
【0014】
(2)また本発明に係る誘起キャリヤライフタイム測定装置及び誘起キャリヤライフタイム測定方法では、
バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の値を求めてもよい。
【0015】
このようにすると、半導体基体のバルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の両方を、一方を仮定することなく測定することができる。
【0016】
(3)また本発明に係る誘起キャリヤライフタイム測定装置及び誘起キャリヤライフタイム測定方法では、
バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度をパラメータとして求められる前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値と、検出されたマイクロ波強度に基づき算出した前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値とを、前記パラメータの値を変化させながら比較し、前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの計算値が前記波長毎の実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するときの前記バルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度の値を求めてもよい。
【0017】
このようにすると、半導体基体のバルクキャリヤライフタイムの深さ分布及び表面再結合速度の両方を、一方を仮定することなく測定することができる。
【0018】
(4)また本発明に係る誘起キャリヤライフタイム測定装置及び誘起キャリヤライフタイム測定方法では、
半導体基体の表面にパッシベーション膜が形成された参照試料に対して周期的なパルス光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料の実効キャリヤライフタイムと、前記参照試料に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記参照試料のキャリヤ面密度とに基づいて、キャリヤ発生率を求め、被測定試料である半導体基体に対して連続光を照射したときに検出されたマイクロ波強度に基づき求めた前記被測定試料のキャリヤ面密度と、前記キャリヤ発生率とに基づいて、前記実効キャリヤライフタイムの測定値を算出してもよい。
【0019】
このようにすると、実効キャリヤライフタイムの測定値を精度よく求めることができる。
【0020】
(5)また本発明に係る誘起キャリヤライフタイム測定装置及び誘起キャリヤライフタイム測定方法では、
前記少なくとも2種類の異なる光は、前記半導体基体に対する吸収係数の異なる2種類の光でもよい。
【0021】
(6)また本発明に係る誘起キャリヤライフタイム測定装置及び誘起キャリヤライフタイム測定方法では、
前記少なくとも2種類の異なる光は、前記半導体基体に対する吸収係数が少なくとも2倍以上異なる2種類の光でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の測定装置(光誘起キャリヤライフタイム測定装置)の構成の一例を示す図。
【図2】結晶シリコンの光吸収係数の波長による変化を示す図。
【図3】本実施形態の計測装置によって測定した半導体基体について説明するための図。
【図4】本実施形態の計測装置による実効キャリヤライフタイムの測定結果を示す図。
【図5】本実施形態の計測装置によるキャリヤ体積濃度の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。

【0024】
1.測定原理
本実施形態の測定方法及び測定装置では、被測定試料である半導体基体に対して吸収係数の異なる少なくとも2種類の光を照射する。

【0025】
例えば、半導体基体に対して大きな吸収係数を持つ短波長の光を照射したとき、光は半導体基体の極表面領域で吸収される。半導体基体の表面再結合速度が大きいとき、半導体基体の表面領域で発生した光誘起キャリヤは速やかに再結合して消滅するため、基体内に存在するキャリヤの濃度は小さくなる。よって、半導体基体にマイクロ波を照射したときのマイクロ波の吸収度は小さく(透過率は大きく)なり、実効キャリヤライフタイムは小さくなる。

【0026】
一方、半導体基体に対して小さな吸収係数を持つ長波長の光を照射したときには、光は半導体基体の中奥深くに進入する。そのため、表面再結合速度の影響が小さくなり、半導体基体のバルクキャリヤライフタイムが十分大きいときは、短波長光の照射時よりもキャリヤ濃度が大きくなり、実効キャリヤライフタイムは大きくなる。

【0027】
すなわち、実効キャリヤライフタイムが表面再結合速度により制限される場合(表面再結合速度が大きい場合)には、測定される実効キャリヤライフタイムは波長依存性を持ち、短波長の光を照射したときに検出されるマイクロ波透過率から測定した実効キャリヤライフタイムと、長波長の光を照射したときに検出されるマイクロ波透過率から測定した実効キャリヤライフタイムとが異なる値となる。

【0028】
なお、半導体基体の表面がパッシベーションされ、実効キャリヤライフタイムがバルクキャリヤライフタイムにより制限される場合(表面再結合速度が十分に小さい場合)には、光誘起キャリヤは半導体基体中のいたる所で同じ割合で消滅するため、測定される実効キャリヤライフタイムは波長依存性を持たない。

【0029】
このように、半導体基体に対して波長の異なる少なくとも2種類の光を照射したときの実効キャリヤライフタイムをそれぞれ測定し、測定した少なくとも2つの実効キャリヤライフタイムを解析することで、半導体基体の表面再結合速度及びバルクキャリヤライフタイムの評価が可能となる。

【0030】
2.構成
図1は、本実施形態の測定装置(光誘起キャリヤライフタイム測定装置)の構成の一例を示す図である。本実施形態の測定装置1は、被測定試料である半導体基体Sの実効キャリヤライフタイムの測定と、測定した実効キャリヤライフタイムを解析して半導体基体Sのバルクキャリヤライフタイムと表面再結合速度の測定を行う装置として構成されている。

【0031】
測定装置1は、半導体基体Sに入射させるマイクロ波を発生するマイクロ波発生部10と、半導体基体Sに光誘起キャリヤを発生させるための光(誘起光)を照射する光源20、22(光照射部)と、半導体基体Sを透過したマイクロ波の強度を検出する検出部30と、マイクロ波発生部10で発生したマイクロ波を検出部30へ伝搬する導波管40と、演算部50とを含む。

【0032】
導波管40には、半導体基体Sが挿入される間隙42が設けられている。また、導波管40内部の間隙42よりもマイクロ波発生部10側には、光源20、22からの光を半導体基体Sに入射するための反射板24が設けられている。光源20、22からの光は光ファイバ26を通り反射板24で拡散反射されて半導体基体Sに入射する。反射板24は、例えばテフロン(登録商標)板からなる。なお、反射板24に代えて導光板を設けることで、光源20、22からの光を半導体基体Sに入射するように構成してもよい。

【0033】
光源20、22は、それぞれ例えばレーザ光源からなり、互いに波長の異なる光(半導体基体Sに対する吸収係数の異なる光)を発生する。光源20は、半導体基体Sに短波長の光(例えば、半導体基体Sの表面領域にキャリヤを発生させる光)を照射するための光源であり、光源22は、半導体基体Sに長波長の光(例えば、半導体基体Sの内部領域にキャリヤを発生させる光)を照射するための光源である。

【0034】
演算部50(コンピュータ)は、検出部30で検出されたマイクロ波の強度情報に基づいて、半導体基体Sの光誘起キャリヤの実効キャリヤライフタイムを算出し、算出した実効キャリヤライフタイムに基づき半導体基体Sのバルクキャリヤライフタイムと、表面再結合速度とを算出する演算処理を行う。

【0035】
演算部50は、光源20からの短波長の光を半導体基体Sに照射したときに検出されたマイクロ波の強度情報からマイクロ波の透過率の変化を求め、求めた透過率の変化に基づき、光源20からの光を半導体基体Sに照射したときの(光源20からの光の波長に対応する)実効キャリヤライフタイムを算出する。また、演算部50は、光源22からの長波長の光を半導体基体Sに照射したときに検出されたマイクロ波の強度情報からマイクロ波の透過率の変化を求め、求めた透過率の変化に基づき、光源22からの光を半導体基体Sに照射したときの(光源22からの光の波長に対応する)実効キャリヤライフタイムを算出する。

【0036】
そして、演算部50は、測定した2つの実効キャリヤライフタイムτeff(光源20からの光を半導体基体Sに照射したときの実効キャリヤライフタイムの測定値と、光源22からの光を半導体基体Sに照射したときの実効キャリヤライフタイムの測定値)に最も合致するバルクキャリヤライフタイムτと、表面再結合速度(誘起光が照射される面(照射面)側の表面再結合速度Stopと、照射面側と反対側の表面再結合速度Srear)を解析して求める。なお、バルクキャリヤライフタイムτと表面再結合速度Stop、Srearの解析は、フォトキャリヤの進入長を考慮して行われる。

【0037】
以下、本実施形態の測定装置及び測定方法で採用するバルクキャリヤライフタイムτと表面再結合速度Stop、Srearの解析法について説明する。

【0038】
半導体基体の表面に連続光を照射したとき、表面(照射面)からの深さxにおける定常的光誘起少数キャリヤ体積濃度n(x)は、半導体基体中の少数キャリヤの拡散係数をDとすると、次式の微分式に従う。

【0039】
【数1】
JP0006052536B2_000002t.gif

【0040】
ここで、G(x)は、深さxにおける単位面積当たりの少数キャリヤの発生率である。G(x)は、半導体基体の光吸収係数αに依存し、光吸収係数αは光波長に依存する。図2に、結晶シリコン(半導体基体の一例)の光吸収係数の光波長による変化を例示する。図2に示すように、結晶シリコンは紫外線に対しては非常に大きな吸収係数を示す。よって、紫外線は結晶シリコンの極表面で吸収される。これに対して、バンドギャップに近い赤外線に対しては吸収係数が小さくなる。よって、赤外線は結晶シリコン半導体中の奥深くに進入する。

【0041】
単位面積当たりの強度Iの光を半導体基体表面に照射したときの深さxにおける単位体積当たりの光強度J(x)は、光吸収係数αを用いて、次式のように表すことができる。

【0042】
【数2】
JP0006052536B2_000003t.gif

【0043】
ここで、Jは、I/αであり、半導体基体の表面における光体積強度である。G(x)は、J(x)に比例し、光強度が大きいほどG(x)は大きくなり、多くのキャリヤが発生する。G(x)は、J(x)と、波長に対応するフォトンエネルギーhν(hはプランク定数、νは光振動数)と、キャリヤ生成内部量子効率ηを用いて、次式のように表すことができる。

【0044】
【数3】
JP0006052536B2_000004t.gif

【0045】
半導体基体の表面に存在する欠陥に起因する表面再結合速度Stop、Srearは、次式のように、半導体基体の表面における微分係数の境界条件として与えられる。

【0046】
【数4】
JP0006052536B2_000005t.gif

【0047】
ここで、dは、半導体基体の厚さである。

【0048】
すなわち、式(1)を、式(4)、式(5)を境界条件として、波長に対応したG(x)を用いて解くことにより、キャリヤ体積濃度n(x)を求めることができる。

【0049】
そして、n(x)を半導体基体の深さ方向に積分したキャリヤ面密度N(単位:cm-2)と、G(x)を半導体基体の深さ方向に積分した単位面積当たりのキャリヤ発生率H(単位:cm-2-1)は、次式で与えられる。

【0050】
【数5】
JP0006052536B2_000006t.gif

【0051】
そして、実効キャリヤライフタイムτeffが、次式により求められる。

【0052】
【数6】
JP0006052536B2_000007t.gif

【0053】
例えば、式(1)~(5)を有限要素差分法でプログラム化し、τ、Stop及びSrearをパラメータとしてn(x)を求め、求めたn(x)を積分してNを求める。また、G(x)を積分してHを求め、求めたNとHを式(8)に代入して実効キャリヤライフタイムτeffの計算値を求める。なお、半導体基体の吸収係数が大きい波長帯の光を照射した場合、τeffは、次式で与えられる。

【0054】
【数7】
JP0006052536B2_000008t.gif

【0055】
以上のようにτ、Stop及びSrearをパラメータとして計算で求められるτeffの計算値(理論値)と、検出されたマイクロ波強度から測定したτeffの測定値とを比較することにより、最も確からしいτ、Stop及びSrearを求める。本実施形態では、互いに異なる波長の複数種類の光の照射を行っており、照射する光(誘起光)の波長によりG(x)の値が異なるものとなる。そのため、誘起光の波長によってτeffの計算値が異なることになる。従って、照射する光の波長毎に計算で求められるτeffの計算値と、照射する光の波長毎に測定したτeffの測定値とを、パラメータであるτ、Stop及びSrearの値を変化させながら比較し、τeffの計算値がτeffの測定値に最も合致するときのτ、Stop及びSrearの値を求める。

【0056】
例えば、図1の構成においては、光源20の光の波長に基づき計算されるτeffの計算値と光源20からの光を照射したときのτeffの測定値とをパラメータの値を変化させながら比較し、且つ、光源22の光の波長に基づき計算したτeffの計算値と光源22からの光を照射したときのτeffの測定値とをパラメータの値を変化させながら比較することで、最も確からしいτ、Stop及びSrearを求める。

【0057】
なお、式(1)のτが、表面からの深さxにおけるバルクキャリヤライフタイムτ(x)となるときは、上記の有限要素法を発展した数値解析によりバルクキャリヤタイム
の深さ分布(深さx毎のバルクキャリヤライフタイムτ)を求めることができる。この場合には、半導体基体の厚さdをM(Mは正の整数)層に分割して、それぞれの層の厚さd/Mについて、式(1)の微分式を差分式に変更する。そして、表面と裏面には式(4)と式(5)の境界条件を設ける。具体的には、式(5)の境界条件を満たすn(d)を仮定し、順次nM(第M層のキャリヤ体積濃度)、nM-1(第M-1層のキャリヤ体積濃度)、・・・n1(第1層のキャリヤ体積濃度)を、式(1)の差分式を満たすように初期値を少しずつ変えて計算する。そして、最終的に式(4)の境界条件を満たす値を数値解とする。

【0058】
次に、実効キャリヤライフタイムτeffの具体的な測定手法について説明する。式(8)より、τeffの測定値は、キャリヤ面密度Nとキャリヤ発生率Hが分かれば精度よく求めることができる。しかしながら、Hは、次式に示すように、入射光のフォトンフラックスF、キャリヤ生成内部量子効率η、光反射ロスRに依存する。

【0059】
【数8】
JP0006052536B2_000009t.gif

【0060】
更に、ηは、半導体基体に依存し、Rは、屈折率、光吸収係数、膜厚、表面形状に依存するため、Hを精度よく測定することは容易でない。そこで、Hを正確に求めるために、特許文献1に開示された周期的パルス法によるτeffの測定法を応用した。周期的パルス法では、連続光照射と同レベルの微弱な光照射によるτeffの測定が可能である。しかしながら、周期的パルス法は、10μ未満の非常に小さいτeffの測定には不向きである。そこで、被測定試料と類似の参照試料を用いたτeffの測定手法を開発した。

【0061】
この手法では、被測定試料が結晶シリコンの場合は、シリコン単結晶を参照試料として用いる。また、参照試料の表面には、表面のキャリヤ再結合欠陥を低く抑えて大きなτeffが得られるように、熱酸化膜等のパッシベーション膜を形成する。なお、被測定試料にも酸化膜が形成されている場合には、参照試料の熱酸化膜を被測定試料の酸化膜と同じ膜厚にする。また、被測定試料がベア半導体の場合は、反射率に影響のない薄膜酸化膜(例えば、厚さが10nmの熱酸化膜)を形成する。また、被測定試料の表面にテクスチャー等の凹凸がある場合には、参照試料にも同様のテクスチャーを形成する。

【0062】
まず、周期的パルス法によって参照試料のτeffを求める。なお、一般にτeffは光強度に依存して変化するので、周期的パルス法の平均光強度を後述する連続光の光強度と同じに設定しておく。次に、参照試料に連続光を照射してマイクロ波吸収測定を行って参照試料のキャリヤ面密度Nを求める。そして、Nとτeffの測定値を式(8)に代入して、連続光照射におけるキャリヤ発生率Hを求める。

【0063】
次に、被測定試料に連続光を照射してマイクロ波吸収測定を行って被測定試料のキャリヤ面密度Nを求める。そして、被測定試料のキャリヤ面密度Nとキャリヤ発生率Hの測定値を式(8)に代入して、被測定試料のτeffを求める。この手法により、正確なHを用いて、精度良く被測定試料のτeffを測定することができる。

【0064】
3.測定結果
3-1.第1の実施例
表面がパッシベーションされた半導体基体を第1の試料とし、第1の試料に対して加熱処理を施したものを第2の試料として、本実施形態の測定装置により各試料の実効キャリヤライフタイム、バルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の測定を行った。

【0065】
本測定では、図3に示すように、第1の試料として、100nm厚の熱酸化膜で両面をコーティングした500μm厚のn型シリコン基板を用いた。また、図3に示す第1の試料に対して、波長940nmのレーザ光を5×10W/cmの高強度で表面全面に照射する処理(加熱処理)を行ったものを第2の試料として用いた。このようなレーザ照射を用いた加熱処理によって実効キャリヤライフタイムが低下することは先行文献により明らかになっている。

【0066】
また、本測定では、マイクロ波発生部10として、9.35GHzのマイクロ波を発振する発振器を使用した。また、短波長の光源20として波長635nmのレーザ光源を使用し、長波長の光源22として波長980nmのレーザ光源を使用した。波長635nmの光は、シリコンに対する進入長が2.7μmと小さく、シリコン基板の極表面領域で吸収され、波長980nmの光は、シリコンに対する進入長は90μmと大きく、シリコン基板の内部領域まで侵入することが分かっている。

【0067】
図4は、第1の試料と第2の試料のそれぞれについて、波長635nmの光を照射したときの実効キャリヤライフタイムと、波長980nmの光を照射したときの実効キャリヤライフタイムを測定した測定結果である。図中白抜き点は、波長980nmの光を照射したときの測定結果であり、図中黒塗り点は波長635nmの光を照射したときの測定結果である。

【0068】
図4に示すように、熱酸化膜コーティングが施されたn型シリコン基板(第1の試料)については、実効キャリヤライフタイムが2msと高く、635nmと980nmの両波長で殆ど同じライフタイム値となった。これに対して、レーザ照射による加熱処理が施されたn型シリコン基板(第2の試料)については、波長635nmの光照射時の実効キャリヤライフタイムが5μsとなり、波長980nmの光照射時の実効キャリヤライフタイムが35μsとなった。すなわち、レーザ照射による加熱処理によって、実効キャリヤライフタイムが小さくなり、且つ、短波長の光照射時に比べて長波長の光照射時の実効キャリヤライフタイムが大きくなることが確認された。

【0069】
次に、上述した解析法によって、第1の試料について測定した2つの実効キャリヤライフタイムの測定値と、635nmと980nmの両波長でそれぞれ計算される実効キャリヤライフタイムの計算値とを比較し、2つの実効キャリヤライフタイムの測定値に最も合致するバルクキャリヤライフタイムτと表面再結合速度Stop、Srearを求めた。その結果、バルクキャリヤライフタイムτは20msであり、第1の試料の表面再結合速度Stop、Srearはそれぞれ12.3cm/sであった。

【0070】
同様に、第2の試料について測定した2つの実効キャリヤライフタイム値に最も合致するバルクキャリヤライフタイムτと表面再結合速度Stop、Srearを、上述した解析法により求めた。その結果、第2の試料の照射面の表面再結合速度Stopは25000cm/sとなり、レーザ照射による加熱処理によって照射面の表面再結合速度が大きくなることが分かった。

【0071】
図5(A)、図5(B)に、第2の試料についての解析結果から得られたキャリヤ体積濃度n(x)の深さx分布を示す。図5(A)は、波長635nmの光照射時の分布であり、図5(B)は、波長980nmの光照射時の分布である。

【0072】
図5(A)に示すように、波長635nmの光を照射する場合、シリコン基板の光吸収係数が大きく、キャリヤは基板表面に発生するため、大きな表面再結合速度Stopによってキャリヤ体積濃度は小さくなる。また、図5(B)に示すように、波長980nmの光を照射する場合、シリコン基板の光吸収係数は小さいため光はシリコン基板の奥深くま
で侵入し、キャリヤはシリコンバルク中で発生する。このため、拡散によりキャリヤは表面に達するまでの時間の間生き延びることになり、キャリヤ体積濃度は大きくなり、実効キャリヤライフタイムも大きくなる。

【0073】
このように本実施形態の測定装置及び測定方法によれば、半導体基体のバルクキャリヤライフタイム及び表面再結合速度の両方を、一方を仮定することなく測定することができる。

【0074】
3-2.第2の実施例
本実施例では、試料として、熱酸化膜を施した700μm厚のシリコン基板を用いた。このシリコン基板に対して、シリコン原子を70keVにてイオン注入(注入量:1×1014cm-2)を施した。本試料について、イオン注入前とイオン注入後の実効キャリヤライフタイムτeffを波長635nm及び波長980nmの光照射にて測定した。そして、測定結果を有限要素法により解析して、表面再結合速度Stop、Srearと、バルクキャリヤライフタイムの深さ分布τ(x)を求めた。バルクキャリヤライフタイムについては、基板の厚さを複数層に分割して、それぞれの層についてτを求めた。測定結果と解析結果を表1に示す。

【0075】
【表1】
JP0006052536B2_000010t.gif

【0076】
表1において、第1層は、表面からの深さxが0~490μmの層であり、第2層は、表面からの深さxが490~700μmの層である。

【0077】
イオン注入前の試料では、波長635nmの光照射の場合と波長980nmの光照射の場合ともに大きなτeffが得られた。この測定値を解析した結果、Stop、Srearの値が190cm/sであり、τの値が基板の厚さ方向全体で1msであるときに測定値と良く一致した。

【0078】
これに対して、イオン注入後の試料では、τeffが大きく低下し、特に波長980nmの光照射時のτeffが小さかった。これはシリコン表面側の奥深くに渡ってτが低下していることを示している。この測定値を解析した結果、τは表面から490μmにも渡って10μsに低下していることが分かった。イオン注入によってシリコン原子が注入される深さは高々0.1μm程度であるから、本測定によって、イオンが注入される深さよりも遥かに深い部分にまで、高エネルギーイオンによるキャリヤ再結合欠陥形成が及んでいることが明らかになった。

【0079】
3-3.第3の実施例
本実施例では、試料として、100nm厚の熱酸化膜を施した500μm厚のn型シリコン基板を用いた。このシリコン基板に対して、出力50wのアルゴンプラズマを1分間照射した。本試料について、プラズマ処理前とプラズマ処理後の実効キャリヤライフタイムτeffを波長635nm及び波長980nmの光照射にて測定した。そして、測定結果を有限要素法により解析して、表面再結合速度Stop、Srearと、バルクキャリヤライフタイムτを求めた。測定結果と解析結果を表2に示す。

【0080】
【表2】
JP0006052536B2_000011t.gif

【0081】
プラズマ処理前の試料では、波長635nmの光照射の場合と波長980nmの光照射の場合ともに大きなτeffが得られた。この測定値を解析した結果、Stop、Srearの値が8cm/sであり、τの値が基板の厚さ方向全体で100msであるときに測定値と良く一致した。

【0082】
これに対して、プラズマ処理後の試料では、τeffは大きく低下し、特に波長635nmの光照射時のτeffが小さかった。これはシリコン表面側に欠陥が局在していることを示している。この測定値を解析した結果、τとSrearの値はプラズマ処理前と変化せず、表面の再結合速度Stopのみが8000cm/sと大きくなっていることが分かった。本測定によって、プラズマアルゴン処理によりシリコン表面にキャリヤ再結合欠陥が形成されることが明らかになった。

【0083】
4.変形例
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【0084】
例えば、図1の測定装置1は、半導体基体Sを図1中X軸方向に移動させるX軸移動ステージと、半導体基体Sを図1中Y軸方向に移動させるY軸移動ステージとを備えていてもよい。このように構成すると、半導体基体SにおけるXY平面上の任意の位置について測定を行うことが可能となる。また、光源20、22からの光をパルス変調し、マイクロ波強度をロックイン検出するように測定装置1を構成してもよい。また、測定装置1は、光誘起キャリヤを発生させるための互いに波長の異なる光を照射する光源を2つ以上備えていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 測定装置、10 マイクロ波発生部、20 光源、22 光源、24 反射板、26
光ファイバ、30 検出部、40 導波管、42 間隙、50 演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4