TOP > 国内特許検索 > 引張試験機 > 明細書

明細書 :引張試験機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6112563号 (P6112563)
登録日 平成29年3月24日(2017.3.24)
発行日 平成29年4月12日(2017.4.12)
発明の名称または考案の名称 引張試験機
国際特許分類 G01N   3/04        (2006.01)
FI G01N 3/04 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2013-548236 (P2013-548236)
出願日 平成24年12月4日(2012.12.4)
国際出願番号 PCT/JP2012/081330
国際公開番号 WO2013/084861
国際公開日 平成25年6月13日(2013.6.13)
優先権出願番号 2011268295
優先日 平成23年12月7日(2011.12.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年11月17日(2015.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 朋之
【氏名】東郷 敬一郎
【氏名】島村 佳伸
個別代理人の代理人 【識別番号】100136674、【弁理士】、【氏名又は名称】居藤 洋之
審査官 【審査官】渡邊 吉喜
参考文献・文献 特開昭52-026888(JP,A)
英国特許出願公開第02101749(GB,A)
米国特許第04662227(US,A)
調査した分野 G01N3/00-3/62
特許請求の範囲 【請求項1】
引張強度がmNオーダ以下の試料における互いに異なる2つの端部を水平方向からそれぞれ把持するように水平方向に支持された一対の把持体と、
前記試料に前記一対の把持体を介して引張力を加える引張力付与手段と、
捻りモーメントを受けるためのモーメント受け体を有するとともに同モーメント受け体に加えられた前記捻りモーメントに応じた電気信号を出力するトルクメータと、
前記モーメント受け体から同モーメント受け体の中心軸の半径方向に沿って延びて前記一対の把持体のうちの一方の把持体を支持する棒状部材からなる引張力伝達体とを備えていることを特徴とする引張試験機。

【請求項2】
請求項1に記載した引張試験機において、
前記引張力伝達体は、前記一方の把持体を回転自在に支持することを特徴とする引張試験機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した引張試験機において、
前記引張力伝達体は、前記モーメント受け体に対して着脱自在に連結されていることを特徴とする引張試験機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した引張試験機において、さらに、
前記一対の把持体における相対的な変位量を測定する変位量測定手段を備えていることを特徴とする引張試験機。
【請求項5】
請求項4に記載した引張試験機において、
前記変位量測定手段は、
前記モーメント受け体の回転角および前記引張力伝達体における前記モーメント受け体と前記一方の把持体との間の長さを用いて前記一対の把持体における相対的な変位量を測定することを特徴とする引張試験機。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載した引張試験機において、
前記引張力付与手段は、
回転駆動する回転軸と、
前記回転軸から径方向に延びて形成されて前記一対の把持体のうちの前記一方または他方の把持体を支持する回転駆動力伝達体とを備え、
前記回転駆動力伝達体により伝達される前記回転軸の前記回転駆動力によって前記試料に前記引張力を加えることを特徴とする引張試験機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した引張試験機において、さらに、
前記一方の把持体を前記引張力付与手段による引張力の作用方向に直交する方向に変位させる把持体変位手段を備えることを特徴とする引張試験機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した引張試験機において、
前記トルクメータにおける前記モーメント受け体の回転変位を規制する回転変位規制手段を備えることを特徴とする引張試験機。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載した引張試験機において、
前記トルクメータは、
前記引張力伝達体と前記引張力付与手段による引張力の作用方向とが直交するように前記モーメント受け体を回転変位させる直交維持手段を備えることを特徴とする引張試験機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に引張力を加えることにより試料の機械的強度を評価するための引張試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料に対して引張力を加えることにより試料の機械的諸特性を測定するための引張試験機がある。例えば、下記特許文献1には、帯状の試料の一方の端部を固定した状態で他方の端部をロードセルを介して引張力を加えることにより試料の引張強度を測定する引張試験機が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平06-3234号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された引張試験機においては、引張力がロードセルの容量の範囲内であっても微小な引張力の変位ほど測定精度が不安定になるという問題がある。これは、ロードセルの荷重分解能が、最大荷重に応じて所定の分解能があるためである。このため、例えば、繊維状片、箔状片または膜状片のように引張強度がmNオーダ以下の試料に対して強度測定を行なう場合においては、荷重分解能が高い高価なロードセルを用いた専用の引張試験機が必要となる。すなわち、従来の引張試験機においては、微小な引張強度の試料に対する強度測定の経済的負担が大きいという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、簡易な構成で微小な引張強度の試料の引張強度測定を行なうことができる引張試験機を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の特徴は、引張強度がmNオーダ以下の試料における互いに異なる2つの端部を水平方向からそれぞれ把持するように水平方向に支持された一対の把持体と、試料に前記一対の把持体を介して引張力を加える引張力付与手段と、捻りモーメントを受けるためのモーメント受け体を有するとともに同モーメント受け体に加えられた捻りモーメントに応じた電気信号を出力するトルクメータと、モーメント受け体から同モーメント受け体の中心軸の半径方向に沿って延びて前記一対の把持体のうちの一方の把持体を支持する棒状部材からなる引張力伝達体とを備えたことにある。
【0007】
このように構成した請求項1に記載した本発明の特徴によれば、引張試験機は、試料における互いに異なる2つの端部を水平方向からそれぞれ把持する一対の把持体のうちの一方の把持体が、トルクメータのモーメント受け体に接続されて同モーメント受け体の径方向に延びる引張力伝達体によって支持されている。このため、試料に加えた引張力が引張力伝達体の長さに応じて増幅されてトルクメータのモーメント受け体に作用する。すなわち、本発明に係る引張試験機は、トルクメータのモーメント受け体に作用する力を引張力受け体の長さに応じて増幅しているため、試料の引張強度が極めて微小であっても精度良く強度測定を行なうことができる。換言すれば、本発明に係る引張試験機は、引張力伝達体の長さによってトルクメータの荷重分解能を規定することができる。これにより、引張試験機は、簡易な構成で微小な引張強度の試料の強度測定を行なうことができる。また、本発明に係る引張試験機は、試料に対して水平方向に沿って引張力を加えるため、試料の自重や試料を坦持するための治具等の重量などに起因する引張力によって試料の伸長および破壊を防止しながら精度良く試料の強度測定を行なうことができる。
【0008】
また、請求項2に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、引張力伝達体は、前記一方の把持体を回転自在に支持することにある。
【0009】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機における引張力伝達体は、把持体を回転自在に支持している。これにより、試料に引張力を加えた際に一対の把持体における一方または両方の把持体が相対変位して試料に作用する引張力の向きが変化した場合であっても、引張力伝達体に支持された把持体が試料に作用する引張力の作用方向に一致する向きに回転変位する。これにより、試料に対する引張試験時における試料の屈曲による損傷を防止して精度良く引張試験を行うことができる。なお、この場合、一対の把持体のうち他方の把持体についても試料の把持部分が回転自在に支持されることにより、他方の把持体側で把持された試料の前記損傷を防止することができる。
【0010】
また、請求項3に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、引張力伝達体は、モーメント受け体に対して着脱自在に連結されていることにある。
【0011】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機における引張力伝達体は、トルクメータのモーメント受け体に対して着脱自在に連結されている。これにより、引張試験機は、引張力伝達体を付け替えることができる。すなわち、引張試験機は、強度測定の対象となる試料の引張強度に応じた長さや材質の引張力伝達体に付け替えることにより、幅広い種類の試料に対応することができる。この場合、引張力伝達体は、把持体を着脱自在に支持するように構成してもよい。これによれば、引張力伝達体は、把持体を付け替えることにより幅広い種類の試料に対応することができる。
【0012】
また、請求項4に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、さらに、前記一対の把持体における相対的な変位量を測定する変位量測定手段を備えたことにある。
【0013】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機は、一対の把持体の相対的な変位量を測定する変位量測定手段を備えている。これにより、引張試験機は、試料の引張力に加えて試料の変位量に基づいて引張強度を測定することができる。
【0014】
この場合、例えば、請求項5に記載するように、前記引張試験機において、変位量測定手段は、モーメント受け体の回転角および引張力伝達体におけるモーメント受け体と前記一方の把持体との間の長さを用いて前記一対の把持体における相対的な変位量を測定するようにするとよい。
【0015】
また、これらの場合、請求項6に記載するように、前記引張試験機において、引張力付与手段は、回転駆動する回転軸と、回転軸から径方向に延びて形成されて前記一対の把持体のうちの前記一方または他方の把持体を支持する回転駆動力伝達体とを備え、回転駆動力伝達体により伝達される前記回転軸の回転駆動力によって試料に引張力を加えるようにするとよい。
【0016】
また、請求項7に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、さらに、前記一方の把持体を引張力付与手段による引張力の作用方向に直交する方向に変位させる把持体変位手段を備えることにある。
【0017】
このように構成した請求項7に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機は、引張力付与変位手段によって把持体に作用する引張力の作用方向に直交する方向に同把持体を変位させる把持体変位手段を備えている。この場合、把持体変位手段は、引張力伝達体に対して把持体を変位させるようにしてもよいし、引張力伝達体を変位させることにより把持体を変位させるようにしてもよいし、トルクメータを変位させることにより引張力伝達体および把持体を変位させるようにすることもできる。これらにより、引張試験機は、把持体を変位させることによって一対の把持体に支持される試料を屈曲させることなく一直線状に把持することができるとともに、試料に引張力を作用させる方向をトルクメータのモーメント受け体の中心軸の半径方向に直交させることができる。この結果、引張試験機は、引張力を効率的にトルクメータのモーメント受け体に伝達することができ、精度良く試料の強度測定を行なうことができる。
【0018】
また、請求項8に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、トルクメータにおけるモーメント受け体の回転変位を規制する回転変位規制手段を備えることにある。
【0019】
このように構成した請求項8に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機は、トルクメータにおけるモーメント受け体の回転変位を規制する回転変位規制手段を備えている。これにより、引張試験機は、トルクメータのモーメント受け体に過渡な引張力が加えられた際のモーメント受け体の回転を規制することができトルクメータの損傷を防止することができる。
【0020】
また、請求項9に記載した本発明の他の特徴は、前記引張試験機において、トルクメータは、引張力伝達体と引張力付与手段による引張力の作用方向とが直交するようにモーメント受け体を回転変位させる直交維持手段を備えることにある。
【0021】
このように構成した請求項9に係る本発明の他の特徴によれば、引張試験機は、引張力伝達体と引張力付与手段による引張力の作用方向とが直交するようにモーメント受け体を回転変位させる直交維持手段を備えて構成されている。このため、引張試験機は、試料に引張力を作用させた場合において、引張力伝達体がモーメント受け体の中心軸回りに回転しようとするに際して引張力伝達体と引張力の作用方向とが常に直角を保つようにモーメント受け体を回転駆動させることができる。これにより、引張力伝達体と引張力の作用方向とが常に直角を保った状態で試料の引張試験を行うことができるため精度良く試料の強度測定を行なうことができる。なお、直交維持手段としては、モーメント受け体を回転駆動させることができるACサーボモータをトルクメータとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る引張試験機の外観構成を模式的に示した平面図である。
【図2】図1に示した引張試験機の外観構成を模式的に示した正面図である。
【図3】図1に示す引張試験機の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【図4】図1に示す引張試験機に把持される試料が台紙に固定された状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る引張試験機および従来の汎用引張試験機による試料の引張試験の試験結果を表す応力ひずみ線図である。
【図6】試料に作用する引張力を補正する原理を説明するための説明図である。
【図7】本発明の変形例に係る引張試験機の外観構成を模式的に示した平面図である。
【図8】本発明の他の変形例に係る引張試験機の外観構成を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る引張試験機の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る引張試験機100の外観構成を模式的に示した平面図である。また、図2は、図1に示した引張試験機100の外観構成を模式的に示した正面図である。また、図3は、引張試験機100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この引張試験機100は、主として繊維状片、箔状片または膜状片の試料WKに対して引張力を加えて同試料WKの引張強度を測定する測定装置である。

【0024】
(引張試験機100の構成)
引張試験機100は、ベース101を備えている。ベース101は、引張試験機100における主として機械的な構成要素を支持するための板状の部材であり、鋼板材を図示X軸方向(図示左右方向)に延びる平面視略長方形状に形成して構成されている。このベース101上には、図示左側にトルクメータ支持台110(図1においては図示せず)が固定的に設けられている。トルクメータ支持台110は、把持体変位ステージ111を介してトルクメータ113を支持するための鋼材製の台であり、ベース101上から図示Z軸方向(図示上側)に柱状に延びて形成されている。このトルクメータ支持台110の上面には、把持体変位ステージ111が固定的に設けられている。

【0025】
把持体変位ステージ111は、上面を図示X軸方向、図示Y軸方向および図示Z軸方向にそれぞれ変位させることができる可動型のテーブルである。この把持体変位ステージ111における側面には、把持体変位ステージ111の上面を手動操作によって図示X軸方向、図示Y軸方向および図示Z軸方向にそれぞれ変位させるための操作子111a,111b,111cがそれぞれ設けられている。また、把持体変位ステージ111の上面には、支持プレート112を介してトルクメータ113および回り止め柱119がそれぞれ固定的に設けられている。支持プレート112は、トルクメータ113および回り止め柱119を支持するための鋼板製の板状部材である。

【0026】
トルクメータ113は、捻りモーメントを受けるための丸棒状のモーメント受け体113aを備えるとともに、このモーメント受け体113aに加えられた捻りモーメントをモーメント受け体113aの表面に貼り付けられた図示しないひずみゲージで電気信号に変換して出力するセンサである。本実施形態においては、トルクメータ113は、500nN・mまでの荷重を測定することができる。このトルクメータ113は、前記支持プレート112を介して把持体変位ステージ111の上面に固定されており、A/D変換器114を介して接続される外部コンピュータ装置130に対してモーメント受け体113aに加えられた捻りモーメントに応じた電気信号を出力する。A/D変換器114は、トルクメータ113および後述する変位測定器128から出力されるアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換して外部コンピュータ装置130に出力する電子回路である。

【0027】
トルクメータ113のモーメント受け体113aには、引張力伝達体115が接続されている。引張力伝達体115は、トルクメータ113のモーメント受け体113aから同モーメント受け体113aの中心軸から半径方向、換言すれば横断面方向外側(図示Y軸方向)に延びた鋼製の棒状部材である。この引張力伝達体115は、一方の端部がトルクメータ113のモーメント受け体113aに接続されて同モーメント受け体113aに支持されるとともに、他方の端部に第1支持梁116を介して第1把持体117が連結されて同第1把持体117を支持している。この場合、引張力伝達体115とトルクメータ113のモーメント受け体113aとは、引張力伝達体115に形成された貫通孔にモーメント受け体113aが貫通した状態でセットボルト115aによって固定的に接続されている。換言すれば、引張力伝達体115は、トルクメータ113のモーメント受け体113aに対してセットボルト115aによって着脱自在に接続されている。

【0028】
一方、引張力伝達体115の他方の端部に接続されている第1支持梁116は、引張力伝達体115から図示X軸方向に沿って互いに平行に延びる2つの鋼製の板状部材で構成されており、先端部に第1把持体117を支持している。この第1支持梁116は、引張力伝達体115に対して連結ピン118を介して連結されており、引張力伝達体115に対して回転自在な状態で支持されている。すなわち、この第1支持梁116は、引張力伝達体115に直交する図示X軸方向に延びて設けられた状態で第1把持体117を引張力伝達体115に対して回転自在に支持している。この場合、引張力伝達体115における第1支持梁116の回転中心と、第1把持体117によって把持される試料WKとは同一の図示X軸線上に位置するように構成されている。なお、本実施形態においては、引張力伝達体115は、トルクメータ113のモーメント受け体113aが貫通する貫通孔の中心と連結ピン118が貫通する貫通孔の中心との間の長さが18mmに設定されている。

【0029】
第1把持体117は、試料WKの一方の端部を挟持により把持する部分であり、互いに対向する2つのブロック体が取付ボルト117aの締め具合によって接触または離隔することにより試料WKを着脱自在に把持するように構成されている。すなわち、引張力伝達体115は、試料WKに加えられた引張力と引張力伝達体115の長さとによって生じる捻りモーメントをトルクメータ113のモーメント受け体113aに伝達する機能を有している。

【0030】
また、引張力伝達体115には、図示左側側面から図示X軸方向に沿って延びた状態で回り止め片115bが形成されている。回り止め片115bは、回り止め柱119とともにトルクメータ113のモーメント受け体113aの過渡な回転変位を規制するための部分である。回り止め柱119は、回り止め片115bとともにトルクメータ113のモーメント受け体113aの過渡な回転変位を規制するための鋼製の柱状部材であり、支持プレート112から起立するとともに先端部が引張力伝達体115の回り止め片115bを挟むように二股に分かれて形成されている。この場合、回り止め柱119における二股に分かれて形成された2つの各先端部には、これら2つの先端部間において回り止め片115bの回転変位量を規制するための変位量規制ボルト119aがそれぞれ設けられている。

【0031】
また、ベース101上における図示右側には、変位テーブル支持台120が固定的に設けられている。変位テーブル支持台120は、変位テーブル121および変位測定器128をそれぞれ支持するための鋼材製の台であり、ベース101上から図示Z軸方向(図示上側)に柱状に延びて形成されている。変位テーブル121は、第2把持体125を支持しつつ前記第1把持体117に対して近接および離隔する方向に変位させる可動型の載置台であり、主として、ベット部121aとテーブル部121bとで構成されている。

【0032】
これらのうち、ベット部121aは、図示X軸方向に沿って延びる直動ガイド121cの他に、図示しない固定子コイルおよびリニアエンコーダ用ヘッドを備えて構成されており、変位テーブル支持台120の上面に固定されている。また、テーブル部121bは、図示しない直動ブロック、マグネット(ネオジム)およびリニアエンコーダ用スケールを備えて構成されており、ベット部121a上に支持されている。この場合、テーブル部121bは、前記直動ブロックが直動ガイド121cに摺動可能に組み付けられることにより図示X軸方向に沿って往復変位可能に支持されている。この変位テーブル121は、ドライバ122を介して外部コンピュータ装置130に接続されており、外部コンピュータ装置130によって作成されてドライバ122内に記憶された制御プログラムによって作動が制御される。すなわち、変位テーブル121は、本実施形態においては、所謂リニアモータテーブルによって構成されている。

【0033】
変位テーブル121のテーブル部121b上には、把持体支持台123が固定的に設けられている。把持体支持台123は、前記第1把持体117に対向した状態で第2把持体125を第2支持梁124を介して支持するための鋼製の部材であり、テーブル部121b上に固定されている。第2支持梁124は、把持体支持台123から図示X軸方向に沿って互いに平行に延びる2つの鋼製の板状部材で構成されており、先端部に第2把持体125を支持している。

【0034】
この第2支持梁124は、把持体支持台123に対して連結ピン126を介して連結されており、把持体支持台123に対して回転自在な状態で支持されている。すなわち、この第2支持梁124は、図示X軸方向に延びて設けられた状態で第2把持体125を把持体支持台123に対して回転自在に支持している。この場合、把持体支持台123における第2支持梁124の回転中心と、第2把持体125によって把持される試料WKとは同一の図示X軸線上に位置するように構成されているとともに、これらは、引張力伝達体115における第1支持梁117の回転中心および第1把持体117によって把持される試料WKに対してそれぞれ同一の図示X軸線上に位置するように構成されている。

【0035】
第2把持体125は、試料WKにおける他方の端部を挟持により把持する部分であり、互いに対向する2つのブロック体が取付ボルト125aの締め具合によって接触または離隔することにより試料WKを着脱自在に把持するように構成されている。すなわち、第1把持体117と第2把持体125とは、互いに水平方向に対向配置されて試料WKの両端部を水平方向からそれぞれ把持する一対を構成する。

【0036】
変位テーブル支持台120の上面における変位テーブル121の図示右側には、測定器支持台127が固定的に設けられているとともに、この測定器支持台127上には、変位測定器128が設けられている。変位測定器128は、把持体支持台123の変位量の測定を介して第2把持体125の変位量を光学的に測定する光学式の測定装置である。より具体的には、変位測定器128は、把持体支持台123の背面に向けてレーザ光L(破線で示す)を照射するとともに同背面にて反射した反射レーザ光Lを受光して三角測量法の原理を用いて把持体支持台123の変位量を測定して同変位量を表す電気信号を出力する。この変位測定器128は、前記A/D変換器114を介して外部コンピュータ装置130に接続されており、この外部コンピュータ装置130によって作動が制御される。

【0037】
外部コンピュータ装置130は、CPU、ROM、RAMおよびハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボードおよびマウスなどからなる入力装置131からの指示に従って、図示しない引張強度測定プログラムを実行することにより試料WKの引張強度を測定する。より具体的には、外部コンピュータ装置130は、ドライバ122を介して変位テーブル121のテーブル部121bを変位させた状態で、A/D変換器114を介してトルクメータ113および変位測定器128から出力される電気信号をそれぞれ入力するとともに所定の演算処理を実行することによって試料WKの引張強度を測定する。

【0038】
また、外部コンピュータ装置130は、外部コンピュータ装置130の作動状態および試料WKの強度測定の測定結果を表示するための液晶ディスプレイからなる表示装置132を備えている。すなわち、外部コンピュータ装置130は、本実施形態においては、パーソナルコンピュータ(所謂「パソコン」)を想定しているが、前記各機能を実行できる形式のものであれば、他の形式のコンピュータであってもよいことは当然である。

【0039】
(引張試験機100の作動)
次に、上記のように構成した引張試験機100の作動について説明する。まず、ユーザは、試料WKを用意する。本実施形態においては、試料WKは、図4に示すように、厚さが約10μm、長さが約30mm、幅が約5mmの帯状のアルミニウム箔とする。この場合、ユーザは、帯状のアルミニウム箔からなる試料WKの両端部を紙製の台紙Mに貼り付けて支持させる。これにより、剛性が極めて低い試料WKを変形および/または損傷させることなく引張試験機100に保持させることができる。なお、図1および図2においては、台紙Mに支持された試料WKを二点鎖線で示している。

【0040】
次に、ユーザは、引張試験機100および外部コンピュータ装置130の各電源をそれぞれオンにした後、試料WKを引張試験機100にセットする。具体的には、ユーザは、台紙Mに支持された試料WKの両端部を第1把持体117および第2把持体125にそれぞれ把持させる。この場合、ユーザは、試料WKにおける台紙Mより内側部分の一方の端部を第2把持体125で挟んだ状態で変位テーブル121のテーブル部121bを図示X軸方向に変位させながら同内側部分における他方の端部を第1把持体117で挟む。

【0041】
次いで、ユーザは、把持体変位ステージ111の操作子111b,111cをそれぞれ操作することにより第1把持体117の図示Y軸方向および図示Z軸方向の位置をそれぞれ調整して第2把持体125に対向する位置に合わせるとともに、操作子111aを操作して第1把持体117の図示X軸方向の位置を調整することにより第1把持体117と第2把持体125とで支持された試料WKを屈曲させることなく一直線状に張る。次いで、ユーザは、台紙Mを適当な位置で鋏などにより分断する。これにより、試料WKが引張試験機100にセットされて引張試験が可能な状態となる。すなわち、試料WKが引張試験機100にセットされた状態における第1把持体117と第2把持体125との距離が評点間距離(評点距離ともいう)となる。

【0042】
次に、ユーザは、試料WKの引張試験を行う。具体的には、ユーザは、外部コンピュータ装置130の入力装置131を操作することにより、ドライバ122を介して変位テーブル121のテーブル部121bの変位を開始させる。この場合、ユーザは、ドライバ122に対して変位テーブル121のテーブル部121bを変位させる方向、量および速度を入力する。これにより、第2把持体125は、変位テーブル121のテーブル部121aの変位開始により第1把持体117から離隔する方向に変位を開始する(図2において破線矢印参照)。

【0043】
第2把持体125の変位によって試料WKに加えられた引張力は、第1把持体117、第1支持梁116および引張力伝達体115を介してトルクメータ113のモーメント受け体113aに伝達される。この場合、トルクメータ113のモーメント受け体113aには、試料WKに加えられた引張力と引張力伝達体115の長さとの外積による捻りモーメントが作用する。このため、トルクメータ113は、試料WKに作用する微小な引張力によってもモーメント受け体113aにひずみを生じさせることができるとともに同ひずみに対応する電気信号を出力する。

【0044】
また、この場合、試料WKの把持する第1把持体117および第2把持体125は、引張力伝達体115および把持体支持台123に対して連結ピン118,126によってそれぞれ回動自在に連結されている。このため、引張力の付加による引張力伝達体115の撓み変形が生じた場合および/または変位テーブル121のテーブル部121bの変位方向が試料WKの長手方向からずれた場合などであっても、第1把持体117および第2把持体125が回転することにより試料WKの長手方向と引張力の作用方向が一致するため試料WKを損傷することなく精度良く引張試験を続行することができる。

【0045】
一方、変位テーブル121に隣接配置された変位測定器128は、変位テーブル112のテーブル部112bの変位量に応じた出力する。これにより、外部コンピュータ装置130は、A/D変換器114を介して連続的に入力されるトルクメータ113からの電気信号および変位測定器128からの電気信号、すなわち、トルクメータ113のモーメント受け体113aに加えられた捻りモーメント(トルク)および第2把持体125の変位量をそれぞれ表す電気信号を取得する。したがって、外部コンピュータ装置130は、モーメント受け体113aに加えられた捻りモーメントを表す電気信号に基づいて試料WKに加えられた引張力を計算して記憶するとともに、第2把持体125の変位量を表す電気信号に基づいて試料WKの伸び量を計算して記憶する。

【0046】
この試料WKの伸び量の計算において外部コンピュータ装置130は、第2把持体125の変位量から引張力伝達体115に引張力が作用したことによる引張力伝達体115の図示X軸方向への変形量(すなわち、撓み変形量)および変位量をそれぞれ減じた量を試料WKの伸び量とする。この場合、引張力伝達体115の変形量および変位量は、引張力伝達体115およびモーメント受け体113aの形状や材質に応じてそれぞれ異なるため、ユーザは引張力伝達体115およびモーメント受け体113aの各形状や各材質に応じた各種パラメータ(例えば、引張力伝達体115およびモーメント受け体113aの各長さ、各縦弾性係数および各断面2次モーメントなど)を予め外部コンピュータ装置130に記憶しておく。なお、試料WKに加えられる引張力が引張力伝達体115およびモーメント受け体113aの剛性に対して十分小さい場合には、引張力伝達体115の変形量および/または変位量を無視することもできる。また、試料WKに加えられる引張力が引張力伝達体115およびモーメント受け体113aの剛性に対して十分に小さく、引張力伝達体115の図示X軸方向への変形(すなわち、撓み変形)および変位が生じない場合においても引張力伝達体115の変形量および/または変位量を考慮する必要はない。

【0047】
この試料WKの引張試験は、試料WKの破断または変位テーブル121のテーブル部121bが前記設定した変位量だけ変位するまでの間実行される。したがって、外部コンピュータ装置130は、試料WKが破断または変位テーブル121のテーブル部121bが前記設定した変位量だけ変位するまでの間、変位テーブル121のテーブル部121aを変位させながら試料WKに加えられた引張力および同試料WKの伸び量を連続的に記憶する。

【0048】
そして、外部コンピュータ装置130は、試料WKの破断または変位テーブル121のテーブル部121bが前記設定した変位量だけ変位したことを検出した場合には、ドライバ122を介して変位テーブル121のテーブル部121bの変位を停止させる。次いで、外部コンピュータ装置130は、前記記憶した試料WKに加えられた引張力、試料WKの伸び量、またはこれらの情報に基づいて計算した試料WKの機械的特性を表す情報(例えば、応力ひずみ線図、弾性限度、弾性係数など)を表示装置132に表示させる。したがって、ユーザは、表示装置132に表示されたこれらの情報に基づいて試料WKの引張強度を評価することができる。そして、ユーザは、第1把持体117および第2把持体125から試料WKを取り外すことにより試料WKの一連の引張試験作業を終了する。

【0049】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、引張試験機100は、試料WKにおける互いに異なる2つの端部を水平方向からそれぞれ把持する一対の把持体である第1把持体117および第2把持体125のうちの一方の第1把持体117が、トルクメータ113のモーメント受け体113aに接続されて同モーメント受け体113aの中心軸の半径方向に延びる引張力伝達体115によって支持されている。このため、試料WKに加えた引張力が引張力伝達体115の長さに応じて増幅されてトルクメータ113のモーメント受け体113aに作用する。すなわち、引張試験機100は、トルクメータ113のモーメント受け体113aに作用する力を引張力伝達体115の長さに応じて増幅しているため、試料WKの引張強度が極めて微小であっても精度良く強度測定を行なうことができる。換言すれば、引張試験機100は、引張力伝達体115の長さによってトルクメータ113の荷重分解能を規定することができる。これにより、引張試験機100は、簡易な構成で微小な引張強度の試料WKの強度測定を行なうことができる。また、本発明に係る引張試験機100は、試料WKに対して水平方向に沿って引張力を加えるため、試料WKの自重や試料WKを坦持するための治具等の重量などに起因する引張力によって試料WKの伸長および破壊を防止しながら精度良く試料WKの強度測定を行なうことができる。

【0050】
また、本発明者らは、本発明に係る引張試験機100とロードセルを用いた従来の汎用引張試験機(図示せず)とでそれぞれ引張試験を行うことにより、本発明に係る引張試験機100の引張試験精度および再現性について確認した。具体的には、本発明者らは、厚さが5μmの銅泊を試料WKとして本発明に係る引張試験機100および従来の汎用引張試験機によりそれぞれ引張試験を行った。図5は、本発明に係る引張試験機100および従来の汎用引張試験機でそれぞれ行った引張試験による応力ひずみ線図を示している。図5において、実線は従来の汎用試験機による試験結果を示しており、破線は本発明に係る引張試験機100による試験結果を示している。

【0051】
これらの試験結果(実験結果)によれば、本発明に係る引張試験機100による応力ひずみ線図と従来の汎用引張試験機による応力ひずみ線図、すなわち、試料WKの変形挙動の傾向はほぼ一致している。また、これらの試験結果は複数回(10回)行ったが、いずれも同様の傾向を示した。したがって、本発明に係る引張試験機100は、従来の汎用引張試験機と同等の精度を再現性良く発揮することができると言えるものである。また、本実験に用いたトルクメータ113の定格トルクは500mN・mでありその分解能は±0.1%である。また、本実験に用いた引張力伝達体115の長さは18mmである。このため、本実施形態の引張試験機100における荷重分解能は、下記数1により約30mNを確保できることを確認した。
(数1)
0.5mN・m/0.018m=27.7mN

【0052】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における引張試験機100と同様の構成部分には引張試験機100に付した符号と同じ符号または対応する符号を付して、その説明は省略する。

【0053】
例えば、上記実施形態においては、試料WKに引張力を作用させた際におけるトルクメータ113のモーメント受け体113aの回転変位を考慮していない。これは、試料WKに加える引張力がこれらの回転変位を無視できるほどに極めて小さいためである。しかし、試料WKに引張力を作用させた際におけるモーメント受け体113aの回転変位を考慮することもできる。具体的には、例えば、図6に示すように、試料WKの強度測定時において第1把持体117に対して第2把持体125が離間する際に、引張力伝達体115がモーメント受け体113aを中心として図示X軸方向および図示Y軸方向にθ°だけ回転変位した場合においては、捻りモーメントNは下記数2または下記数3に示す補正式によって求めることができる。
(数2)
N=r×f×COSθ×COSα
=r×f×COSθ×SIN-1[(r-r×COSθ)/L]
(数3)
N=r×f×COSθ×[1-{(r-r×COSθ)/L}]1/2

【0054】
ここで、「r」はモーメント受け体113aの回転中心と連結ピン118の回転中心との距離、すなわち引張力伝達体115の腕の長さであり、「f」は変位テーブル121による引張力の大きさであり、「L」は連結ピン118の回転中心と連結ピン126との間の試料WKを含めた距離である。また、「θ」はトルクメータ113のモーメント受け体113aの変位角、または、トルクメータ113自身が変位角を得られる場合(回転の位相差によるトルク検出)には、その変位角である。また、「α」はトルクメータ113のモーメント受け体113aが変位角θで回転変位する前後における2つの連結ピン118と連結ピン126とを結ぶ直線の回転角、換言すれば試料WKに加える引張力の作用線の変位角である。これによれば、引張力伝達体115の回転変位を考慮しながら捻りモーメントNから引張力fを計算することができ、より正確に試料WKの機械的強度を測定することができる。

【0055】
なお、トルクメータ113のモーメント受け体113aの変位角θが「0」または無視できるほどに小さい場合には、下記数4によって捻りモーメントNから引張力fを計算することができる。この場合、θ=0であるためCOSθ=1となり下記数5となって、捻じりモーメントNは「r」と「L」との積によって求められる。
(数4)
N=r×f×COSθ
(数5)
N=r×f

【0056】
また、さらに、引張試験機100は、モーメント受け体113aの変位角θを常に「0」にするように構成することもできる。具体的には、トルクメータ113としてモーメント受け体113aを回転変位させることができる機能を有するものを使用する。例えば、トルクメータ113としてACサーボモータやブラシレスDCサーボモータなどのサーボモータを用いることができる。この場合、外部コンピュータ装置130は、サーボモータからなるトルクメータ113からモーメント受け体113aの変位角θを取得してこの変位角θが「0」となるようにモーメント受け体113a(サーボモータの回転軸)を回転駆動させる。また、外部コンピュータ装置130は、トルクメータ113のモーメント受け体113aを回転駆動する電流値によって引張力伝達体115による捻りモーメントの大きさを特定することができるとともに、変位測定器128による変位テーブル112のテーブル部112bの変位量によって試料WKの伸び量を特定することができる。

【0057】
すなわち、引張試験機100は、試料WKに引張力を作用させた場合において、引張力伝達体115がモーメント受け体113aの中心軸回りに回転しようとするに際して引張力伝達体115と引張力の作用方向とが常に直角を保つようにモーメント受け体113aを回転駆動させることができる。これにより、引張力伝達体115と引張力の作用方向とが常に直角を保った状態で試料WKの引張試験を行うことができるため精度良く試料WKの強度測定を行なうことができる。すなわち、サーボモータからなるトルクメータ113が本発明に係る直交維持手段に相当する。

【0058】
なお、直交維持手段としては、サーボモータからなるトルクメータ113以外に、モーメント受け体113aや引張力伝達体115に変位角θを検出するセンサを設けるとともにこのセンサによって検出された変位角θを「0」とするようにトルクメータ113を回転変位させるサーボモータをトルクメータ113に別途設けるようにして構成することもできる。この場合、引張力fは、θ=0であるため、前記数5から求めることができる。

【0059】
また、上記実施形態においては、引張試験機100における第1把持体117および第2把持体125は、第1把持体117に対して第2把持体125を変位させるように構成した。すなわち、変位テーブル121が、本発明に係る引張力付与手段に相当する。しかし、引張力付与手段は、第1把持体117と第2把持体125とからなる一対の把持体を互いに離隔する方向に相対変位させることができる構成であればよい。すなわち、引張力付与手段は、第2把持体125を固定するとともにこの固定した第2把持体125に対して第1把持体117を変位するように構成することができる。また、引張力付与手段は、第1把持体117および第2把持体125を共に互いに離隔する方向に変位するように構成することもできる。

【0060】
例えば、図7には、第2把持体125を変位不能に固定するとともにこの固定した第2把持体125に対して第1把持体117を変位するように構成した引張試験機200を示している。この引張試験機200においては、把持体変位ステージ111と同様の構成の把持体変位ステージ211上に支持プレート112と同様の支持プレート212を固定するとともに、この支持プレート212上に第2把持体125が連結ピン126を介して回転自在に支持されている。この場合、把持体変位ステージ211は、第2把持体125の位置を調節すための可動型テーブルであり、ベース101に対して変位不能な状態で固定されている。

【0061】
一方、第1把持体117は、把持体変位ステージ111とトルクメータ113との間に配置されたサーボモータ240によって支持されている。サーボモータ240は、モーメント受け体113aを回転中心として第1把持体117をトルクメータ113とともに回転駆動するための電動機であり、外部コンピュータ装置130によって作動が制御される。このサーボモータ240は、例えば、ACサーボモータやDCサーボモータを用いることができる。なお、トルクメータ113とサーボモータ240とは、図7に示すように同軸上に配置して連結してもよいが、回転機構(例えば、歯車機構、プーリ・ベルト機構、回転軸)を介して互いに異なる軸線上に連結することもできる。また、サーボモータ240として回転角とトルクを検出できるものを用いることもできる。また、サーボモータ240以外の電動機、例えば、インバータ制御同期電動機、ステッピングモータまたは直流電動機を第1把持体117を回転駆動させるアクチュエータとして用いることもできる。

【0062】
このように構成した引張試験機200によれば、サーボモータ240の回転駆動により第1把持体117がトルクメータ113および引張力伝達体115とともにモーメント受け体113aを回転中心として回転変位する。すなわち、引張試験機200は、第1把持体117にトルクメータ113と引張力付与手段としてのサーボモータ240とがそれぞれ設けられているため、引張試験機200を簡単またはコンパクトに構成することができる。

【0063】
また、上記実施形態においては、引張力付与手段は、リニアモータテーブルからなる変位テーブル121で構成した。しかし、引張力付与手段は、第1把持体117および第2把持体125を介して試料WKに引張力を作用させることができれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、引張力付与手段として、上記変形例に示したサーボモータ240を用いることができる。

【0064】
例えば、図8には、第2把持体125をサーボモータ340によって回転変位させる構成の引張試験機300を示している。この引張試験機300は、前記把持体変位ステージ211と同様の把持体変位ステージ311上に支持プレート212と同様の支持プレート312を固定するとともに、この支持プレート312上に前記サーボモータ240と同様の構成のサーボモータ340を固定的に設けて構成されている。そして、このサーボモータ340の回転駆動軸341には、引張力伝達体115と同様の構成の引張力伝達体315が固定的に連結されるとともに、この引張力伝達体315の先端部に第2把持体125が連結ピン126を介して回転自在に連結されている。このように構成した引張試験機300によれば、サーボモータ340の回転駆動力が引張伝達体315によって増幅されて第2把持体125を回転変位させるため、より小さい力で試料WKに引張力を作用させることができる。

【0065】
なお、この引張試験機300において、引張力伝達体115の腕の長さと引張力伝達体315の腕の長さとが異なる場合においても、前記数2または数3の補正式を用いることにより正確な引張力を計算することができる。すなわち、引張試験機300は、引張力伝達体115の腕の長さと引張力伝達体315の腕の長さとが異なる場合であっても、試料WKの機械的強度を正確に測定することができる。なお、引張力伝達体115の腕の長さと引張力伝達体315の腕の長さとが同じまたは同じとみることができる場合には、試料WKは図示X軸方向に平行に引っ張られるため、図6に示した回転角αは「0」となる。このため、引張力fは、前記数2および数3に示した補正式を用いた補正はより簡単となって前記数4を用いて求めることができる。

【0066】
また、上記実施形態においては、モーメント受け体113aに捻りモーメントを作用させる所謂腕の長さは、引張力伝達体115におけるトルクメータ113のモーメント受け体113aが貫通する貫通孔の中心と連結ピン118が貫通する貫通孔の中心との間の長さであり、本実施形態においては18mmとした。しかし、この腕の長さは、試料WKの引張強度に応じて適宜設定されるものである。この場合、モーメント受け体113aに捻りモーメントを作用させる腕の長さは、引張力伝達体115の長さのみでなく、第1把持体117における試料WKの把持位置も含めて設定することができる。すなわち、本発明に係る引張試験機においては、トルクメータ113の荷重分解能および最大測定荷重は、この腕の長さによって調整することができる。

【0067】
また、上記実施形態においては、引張力伝達体115と第1支持梁116とが直交する状態で試料WKに引張力を加えるように構成した。これにより、試料WKに加えた引張力を効率的にトルクメータ113のモーメント受け体113aに伝達することができる。しかし、引張力伝達体115と第1支持梁116とが鋭角または鈍角の関係となる状態で引張力を加えるようにしても試料WKの強度測定は可能である。これによれば、前記腕の長さを長くすることができ、より小さい引張強度の試料WKの強度測定を行なうこともできる。

【0068】
また、上記実施形態においては、引張力伝達体115は、トルクメータ113のモーメント受け体113aに対して着脱自在に支持されているとともに、第1把持体117を着脱自在に支持している。これにより、引張試験機100は、試料WKの種類や試料WKに加える引張力に応じて引張力伝達体115を取り替えることができる。また、引張試験機100は、引張力伝達体115が損傷した場合においても引張力伝達体115を取り替えることもできる。しかし、引張力伝達体115を取り替える必要がない場合には、引張力伝達体115はトルクメータ113のモーメント受け体113aに対して固定的に支持されるとともに、第1把持体117を固定的に支持するように構成することもできる。また、引張力伝達体115は、角棒状に限らずその他の形状、例えば、丸棒状であってもよいことは当然である。

【0069】
また、上記実施形態においては、引張試験機100は、試料WKの伸び量を測定するために第2把持体125の変位量を測定する変位測定器128を備えて構成した。すなわち、変位測定器128が、本発明に係る変位量測定手段に相当する。しかし、引張試験機100は、試料WKの伸び量を測定する必要がない場合には、変位測定器128を省略して構成することもできる。

【0070】
また、上記実施形態においては、引張試験機100は、第1把持体117を図示X軸方向、図示Y軸方向および図示Z軸方向にそれぞれ変位させる把持体変位ステージ111を備えて構成されている。これにより、引張試験機100は、第1把持体117の図示Y軸方向および図示Z軸方向の位置を調整して第2把持体125に位置を合わせるとともに、図示X軸方向の位置を調整して第1把持体117と第2把持体125とで支持された試料WKを一直線状に張ることができる。しかし、引張試験機100は、第1把持体117の位置を調整する必要がない場合、例えば、第1把持体117と第2把持体125との位置関係が予め規定されている場合などには把持体変位ステージ111を省略して構成することもできる。

【0071】
なお、この把持体変位ステージ111は、第1把持体117を図示Y軸方向および図示Z軸方向、すなわち、試料WKに加える引張力の作用方向に直交する方向に第1把持体117を変位させることができる点において、本発明に係る把持体変位手段に相当する。したがって、把持体変位ステージ111は、少なくとも第1把持体117の位置を試料WKに加える引張力の作用方向に直交する方向、具体的には、図示Y軸方向および図示Z軸方向にそれぞれ変位させることができる構成であれば、第1把持体117における図示Y軸方向および図示Z軸方向の位置を調整することができる。すなわち、引張試験機100は、把持体変位手段を備えることにより、複数種類の腕の長さを構成する引張力伝達体115および/または第1把持体117を付け替えて試料WKの引張試験を行うことができる。

【0072】
また、上記実施形態においては、引張試験機100は、第1把持体117および第2把持体125が引張力伝達体115および把持体支持台123に対して回転自在に連結されている。しかし、引張試験100は、第1把持体115、第2把持体125が引張力伝達体115および把持体支持台123に対して回転不能な固定状態で連結されていても試料WKの強度測定を行なうことは可能である。

【0073】
また、上記実施形態においては、トルクメータ113のモーメント受け体113aに捻じりモーメントを作用させる引張力伝達体115を棒状に形成した。しかし、引張力伝達体115は、モーメント受け体113aに試料WKに作用する引張力を増幅して伝達するように形成、すなわち、モーメント受け体113aから径方向に延びて形成されていれば必ずしも、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、引張力伝達体115は、モーメント受け体113aの径方向に広がる板状(例えば、円盤状)に形成されるとともに、この板状体の盤面の径方向におけるいずれかの位置に第1把持体117が直接または第1支持梁116を介して間接的に連結されるように構成することもできる。この場合、板状の引張力伝達体115において、モーメント受け体113aの径方向における複数の位置に第1把持体117を着脱可能な構成にすることにより、容易に引張力伝達体115の腕の長さを変えることができ、荷重分解能や最大測定荷重を変更することができる。なお、モーメント受け体113aの半径方向とは、モーメント受け体113aの横断面方向を意味しており、モーメント受け体113aを丸棒に限定する意図ではない。すなわち、モーメント受け体113aは、角棒などであってもよいことは当然である。

【0074】
また、上記実施形態においては、引張試験機100は、第1把持体117に回り止め片115bを設けるとともに、トルクメータ支持台110上に回り止め柱119を設けて構成されている。これにより、引張試験機100は、トルクメータ113におけるモーメント受け体113aの過渡な回転変位を規制することができ、トルクメータ113の損傷を防止することができる。すなわち、回り止め片115bおよび回り止め柱119が、本発明に係る回転変位規制手段に相当する。しかし、回転変位規制手段は、トルクメータ113におけるモーメント受け体113aの回転変位を規制することができれば、必ずしも上記実施形態における構成に限定されるものではない。また、引張試験機100は、トルクメータ113におけるモーメント受け体113aの回転変位を規制する必要がない場合には、回り止め片115bおよび回り止め柱119、すなわち、回転変位規制手段を省略して構成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
WK…試料、M…台紙、L…レーザ光、
100,200,300…引張試験機、
101…ベース、
110…トルクメータ支持台、111,211…把持体変位ステージ、111a,111b,111c,211a,211b,211c…操作子、112,212,312…支持プレート、113…トルクメータ、113a…モーメント受け体、114…A/D変換器、115,315…引張力伝達体、115a,315a…セットボルト、115b…回り止め片、116…第1支持梁、117…第1把持体、117a…取付ボルト、118…連結ピン、119…回り止め柱、119a…変位量規制ボルト、
120…変位テーブル支持台、121…変位テーブル、121a…ベット部、121b…テーブル部、121c…直動ガイド、122…ドライバ、123…把持体支持台、124…第2支持梁、125…第2把持体、125a…取付ボルト、126…連結ピン、127…測定器支持台、128…変位測定器、
130…外部コンピュータ装置、131…入力装置、132…表示装置、
240,340…サーボモータ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7