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明細書 :内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5986589号 (P5986589)
登録日 平成28年8月12日(2016.8.12)
発行日 平成28年9月6日(2016.9.6)
発明の名称または考案の名称 内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法
国際特許分類 C01B   3/06        (2006.01)
C01B  13/02        (2006.01)
B01J   8/26        (2006.01)
B01J   8/24        (2006.01)
FI C01B 3/06
C01B 13/02 B
B01J 8/26
B01J 8/24 301
B01J 8/24 311
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2013-556494 (P2013-556494)
出願日 平成25年1月31日(2013.1.31)
国際出願番号 PCT/JP2013/052211
国際公開番号 WO2013/115316
国際公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
優先権出願番号 2012018199
優先日 平成24年1月31日(2012.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月21日(2015.10.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】児玉 竜也
【氏名】郷右近 展之
【氏名】櫻井 篤
【氏名】松原 幸治
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
【識別番号】100133639、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 卓哉
【識別番号】100188994、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 裕介
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 国際公開第2011/068122(WO,A1)
特開昭55-024515(JP,A)
特表平08-504739(JP,A)
PERRY, R. H.,Perry's Chemical Engineers' Handbook,McGraw-Hill,2007年,8th ed.,17-4,5,11-13,16-19,ISBN: 978-0-07-142294-9
調査した分野 C01B 3/06
B01J 8/24
B01J 8/26
特許請求の範囲 【請求項1】
金属酸化物の粒子からなる流動層を収容した反応器と、この反応器に収容された前記流動層へ太陽光を集光して照射する太陽光集光手段を備え、
前記反応器は、熱還元反応を行う熱還元反応器と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器と、下方から前記熱還元反応器に低酸素分圧ガスを導入する低酸素分圧ガス導入手段と、下方から前記水熱分解反応器に水蒸気を導入する水蒸気導入手段と、前記熱還元反応器から発生した酸素を含んだガスを回収する酸素回収手段と、前記水熱分解反応器から発生した水素を含んだガスを回収する水素回収手段とを備え、
前記熱還元反応器は横長に形成され、前記水熱分解反応器は縦長に形成されるとともに、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器とは、別々に相互に離間して構成され、
前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の上部には、前記熱還元反応器の内部と前記水熱分解反応器の内部を連通する上部連通口がそれぞれ形成され、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の下部には、前記熱還元反応器の内部と前記水熱分解反応器の内部を連通する下部連通口がそれぞれ形成され、
前記熱還元反応器の前記上部連通口と、前記水熱分解反応器の前記上部連通口と、前記熱還元反応器の前記下部連通口と、前記水熱分解反応器の前記下部連通口は、前記流動層内に埋没しており、
前記熱還元反応器の前記上部連通口と前記水熱分解反応器の前記上部連通口との間には、前記熱還元反応器から前記水熱分解反応器へ前記流動層を運搬する第1の運搬手段が設けられ、
前記熱還元反応器の前記下部連通口と前記水熱分解反応器の前記下部連通口との間には、前記水熱分解反応器から前記熱還元反応器へ前記流動層を運搬する第2の運搬手段が設けられ、
前記太陽光集光手段により前記熱還元反応器に収容された前記流動層の上面へ太陽光が照射されるように構成されたことを特徴とする内循環流動層を用いた水熱分解装置。
【請求項3】
前記第1の運搬手段と前記第2の運搬手段は、スクリューコンベアであることを特徴とする請求項1記載の内循環流動層を用いた水熱分解装置。
【請求項4】
前記熱還元反応器の上部に、上方に向かって前記熱還元反応器の水平断面積を拡大する拡大部が形成され、前記拡大部の上部に、太陽光が透過する石英製の窓を備えたことを特徴とする請求項1又は3記載の内循環流動層を用いた水熱分解装置。
【請求項5】
前記低酸素分圧ガス導入手段と前記水蒸気導入手段は、多孔質材料から形成された分散板であり、前記低酸素分圧ガス導入手段は、前記熱還元反応器の前記下部連通口の最下部の高さと略一致した高さに設けられ、前記水蒸気導入手段は、前記水熱分解反応器の最下部を最低部として傾斜して設けられたことを特徴とする請求項1、3又は4記載の内循環流動層を用いた水熱分解装置。
【請求項8】
請求項1、3、4のいずれか1項記載の内循環流動層を用いた水熱分解装置を用いて、前記流動層を前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の間で内循環流動させながら、低酸素分圧ガス雰囲気下で前記流動層の一部を太陽光により加熱して金属酸化物から酸素を放出させる酸素発生反応と、酸素を放出した後の金属酸化物に水蒸気を接触させ水素を発生させる水素発生反応の2つの反応を同時に進行させることを特徴とする内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項9】
前記酸素発生反応を1400℃以上で進行させ、前記水素発生反応を1400℃以下で進行させることを特徴とする請求項8記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項10】
前記金属酸化物は、フェライト又はフェライトを担持したジルコニアであることを特徴とする請求項9記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項11】
前記ジルコニアは、単斜晶ジルコニア、立方晶ジルコニア、正方晶ジルコニアのいずれかであり、前記立方晶ジルコニアは安定化剤としてイットリア、カルシア、マグネシアのいずれかを含有することを特徴とする請求項10記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項12】
前記金属酸化物は、ニッケルフェライト又はニッケルフェライトを担持した単斜晶ジルコニアであることを特徴とする請求項9記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項13】
前記金属酸化物は、酸化セリウム又は酸化セリウムを担持したジルコニアであることを特徴とする請求項9記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項14】
前記金属酸化物の粒子の粒径は、100~750μmであることを特徴とする請求項12又は13記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
【請求項15】
前記低酸素分圧ガスは、窒素又はアルゴンであることを特徴とする請求項8~14のいずれか1項記載の内循環流動層を用いた水熱分解法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を集光して得られる1000℃以上の熱を利用して水熱分解により水素を製造する方法として、鉄酸化物、酸化セリウム等の金属酸化物による二段階水熱分解サイクルが有望視されており、そのための反応器の開発が各国の研究機関で行われている。
【0003】
本発明者らは、金属酸化物粒子が内循環流動する流動層式ソーラー反応器を開発するとともに、この流動層式ソーラー反応器を用いて、二段階水熱分解サイクルの2つの反応である水素製造反応と酸素製造反応を、金属酸化物粒子が内循環流動する反応器内で同時に進行させ、水素と酸素を同時に製造する方法を開発した(特許文献1)。
【0004】
この流動層式ソーラー反応器は、図16に示すように、ステンレス合金とインコネル合金からなる反応器101を備え、この反応器101には、金属酸化物の粒子からなる流動層102が収容されている。反応器101の内部には、上下方向に開口した筒状のドラフト管103が備えられ、ドラフト管103は、流動層102に埋没して流動層102の中央部に配置されている。また、反応器101の底部には、中央部と周辺部にそれぞれ分散板104,105が設けられている。分散板104,105は、流動層102を構成する金属酸化物の粒子を反応器101内に保持するともに、反応器101の底部から気体を導入することができるように、多孔質材料から形成されている。反応器101の天井には、太陽光が透過できるように石英製の窓106が設けられている。また、ドラフト管103の上方には、ドラフト管103の内側から上方に放出されるガスと、ドラフト管103の外側から上方に放出されるガスを分流するために、逆裁頭円錐形状のガスセパレータ107が設けられている。そして、反応器101の上部の側方には、ガスセパレータ107により分流されたガスを取り出すための取り出し口108,109が設けられている。201はヘリオスタットと呼ばれる地上反射鏡、202はタワー反射鏡であり、これら地上反射鏡201とタワー反射鏡202によりビームダウン型の集光システムが構成される。そして、このビームダウン型の集光システムにより、太陽光Sが集光されて反応器101に収容された流動層102の上面中央部へ照射されるようになっている。
【0005】
そして、分散板104からドラフト管103の内側に窒素を導入し、同時に、分散板105からドラフト管103の外側に水蒸気を導入する。ドラフト管103の内側における窒素の流量を、ドラフト管103の外側における水蒸気の流量よりも大きくすることにより、流動層102をドラフト管103の内外で循環させる。すなわち、ドラフト管103の内側の領域において流動層103が上昇し、ドラフト管103の外側と反応器101の間の領域において流動層103が下降する内循環流動を生じさせる。続いて、地上反射鏡201,タワー反射鏡202により集光された太陽光Sを、窓106を通して流動層102の上面中央部へ照射し、流動層102を加熱する。太陽光Sが照射された流動層102の上面中央部の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成され、この高温部Hで熱還元反応が進行し、金属酸化物の粒子から酸素が放出される。放出された酸素は、ガスセパレータ107の上方を通って取り出し口108から回収される。還元された金属酸化物の粒子は、内循環流動によりドラフト管103の外側と反応器101の間の領域を通って反応器101の下部に送られる。金属酸化物の粒子は反応器101の下部に送られる間に温度が低下し、その結果、流動層102の下部に1400℃以下の低温部Lが形成される。この低温部Lで水熱分解反応が進行し、熱還元反応により還元された金属酸化物の粒子は酸化されてもとの金属酸化物となり、同時に水素が発生する。発生した水素は、ガスセパレータ107の下方を通って取り出し口109から回収される。
【0006】
上記の従来の方法は、太陽光Sの照射によって形成される流動層103の温度分布に着目し、酸素発生反応と水素発生反応をそれぞれ流動層103の上部と下部で同時に進行させることを特徴とするものである。しかし、この方法には、以下のような問題点があることが判明した。
1 反応器の構造上、流動層102の表面とガスセパレータ107の隙間を通じて酸素と水素が混合して酸素と水素の一部が再結合してしまうため、水素の回収量が低下する。なお、隙間と通じたガス混合を防止するためにガスセパレータ107を流動層102の表面に密着させた場合は、金属酸化物粒子の内循環流動が阻害され、2つの反応を円滑に進行させることが困難となる。
2 流動層102の上部と下部で反応温度の異なる2つの反応が同時に進行するが、2つの反応温度をそれぞれ任意に制御することが困難である。
3 流動層102の上部と下部で反応速度の異なる2つの反応が同時に進行するとともに、金属酸化物粒子がドラフト管103の内側を上昇して外側を下降するが、2つの反応時間をそれぞれ任意に制御することが困難であり、酸素と水素の発生濃度の増加に限界がある。
4 流動層102の下部で進行する水素発生反応は発熱反応であり、流動層102の上部で進行する酸素発生反応は吸熱反応であるが、それぞれの反応の反応時間および反応速度を任意に制御することが困難であるため、水素発生反応で発生した反応熱(放熱量)を酸素発生における吸熱反応に十分活用できず、太陽熱→水素転換効率の向上が困難である。
5 太陽光Sが照射された流動層102の上面中央部の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成されるが、反応器の構造上、集光された太陽光Sの一部がガスセパレータ107により遮られ、ドラフト管103の外側と反応器101の間の領域を加熱できず太陽エネルギーの利用効率が低くなる。
6 反応器の構造上、流動層102の上面中央部の近傍の一部がガスセパレータ107により遮られるため、1400℃以上の高温部Hの領域を広げ、酸素生成量を増加させることが困難である。
7 反応器の構造上、1400℃以下の低温部Lの領域が流動層102の下部に限られ、低温部Lの領域を広げ、水素生成量を増加させることが困難である。
8 反応器の構造上、流動層102の上面中央部の近傍に形成される高温部Hの金属酸化物粒子は、速やかにドラフト管103の外側と反応器101の間の領域に移動するため、高温部Hの金属酸化物粒子の持つ1400℃以上の高温の顕熱を排熱として熱回収して再利用することが困難である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】WO2011/068122国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、発生した酸素と水素を確実に分離して回収することができ、流動層で同時に進行する反応の反応温度、反応速度、反応時間、反応領域をそれぞれ任意に制御することができ、さらに、高効率で高温熱を排熱として回収して再利用することができる、内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置は、金属酸化物の粒子からなる流動層を収容した反応器と、この反応器に収容された前記流動層へ太陽光を集光して照射する太陽光集光手段を備え、前記反応器は、熱還元反応を行う熱還元反応器と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器と、下方から前記熱還元反応器に低酸素分圧ガスを導入する低酸素分圧ガス導入手段と、下方から前記水熱分解反応器に水蒸気を導入する水蒸気導入手段と、前記熱還元反応器から発生した酸素を含んだガスを回収する酸素回収手段と、前記水熱分解反応器から発生した水素を含んだガスを回収する水素回収手段とを備え、前記熱還元反応器の内部と前記水熱分解反応器の内部は上部連通口と下部連通口により連通しており、前記上部連通口と前記下部連通口は、前記流動層内に埋没して、前記上部連通口と前記下部連通口を通じて、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の間で前記流動層が流動できるように構成され、前記太陽光集光手段により前記熱還元反応器に収容された前記流動層の上面へ太陽光が照射されるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器は、仕切り板により仕切られるとともに、前記熱還元反応器の内部と前記水熱分解反応器の内部は前記仕切り板に形成された上部連通口と下部連通口により直接的に連通しており、前記上部連通口と前記下部連通口は、前記流動層内に埋没して、前記上部連通口と前記下部連通口を通じて、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の間で直接的に前記流動層が流動できるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
また、前記上部連通口及び下部連通口に、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器との間で前記流動層を運搬するスクリューコンベアが設けられたことを特徴とする。
【0012】
また、前記熱還元反応器の上部に、上方に向かって前記熱還元反応器の水平断面積を拡大する拡大部が形成され、前記拡大部の上部に、太陽光が透過する石英製の窓を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器とは、別々に相互に離間して構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記熱還元反応器の上部連通口と前記水熱分解反応器の下部連通口の間に前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器との間で前記流動層を運搬する運搬手段が設けられ、前記熱還元反応器の下部連通口と前記水熱分解反応器の上部連通口は直接的に連通していることを特徴とする。
【0015】
また、前記熱還元反応器の内部において前記熱還元反応器内の流動層を移動させる移動手段が設けられたことを特徴とする。
【0016】
本発明の内循環流動層を用いた水熱分解法は、本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置を用いて、前記流動層を前記熱還元反応器と前記水熱分解反応器の間で内循環流動させながら、低酸素分圧ガス雰囲気下で前記流動層の一部を太陽光により加熱して金属酸化物から酸素を放出させる酸素発生反応と、酸素を放出した後の金属酸化物に水蒸気を接触させ水素を発生させる水素発生反応の2つの反応を同時に進行させることを特徴とする。
【0017】
また、前記酸素発生反応を1400℃以上で進行させ、前記水素発生反応を1400℃以下で進行させることを特徴とする。
【0018】
また、前記金属酸化物は、フェライト又はフェライトを担持したジルコニアであることを特徴とする。
【0019】
また、前記ジルコニアは、単斜晶ジルコニア、立方晶ジルコニア、正方晶ジルコニアのいずれかであり、前記立方晶ジルコニアは安定化剤としてイットリア、カルシア、マグネシアのいずれかを含有することを特徴とする。
【0020】
また、前記金属酸化物は、ニッケルフェライト又はニッケルフェライトを担持した単斜晶ジルコニアであることを特徴とする。
【0021】
また、前記金属酸化物は、酸化セリウム又は酸化セリウムを担持したジルコニアであることを特徴とする。
【0022】
また、前記金属酸化物の粒子の粒径は、100~750μmであることを特徴とする。
【0023】
さらに、前記低酸素分圧ガスは、窒素又はアルゴンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法によれば、熱還元反応器と水熱分解反応器は、仕切り板により仕切られるとともに、熱還元反応器の内部と水熱分解反応器の内部は仕切り板に形成された上部連通口と下部連通口により直接的に連通しており、上部連通口と下部連通口は、流動層内に埋没して、上部連通口と下部連通口を通じて、熱還元反応器と水熱分解反応器の間で直接的に流動層が流動できるように構成されているため、熱還元反応器において発生した酸素と水熱分解反応器において発生した水素を確実に分離して回収することができるとともに、熱還元反応器の流動層と水熱分解反応器の流動層で同時に進行する2つの反応の反応温度、反応速度、反応時間と反応領域を容易にそれぞれ任意に制御することができ、さらに、高効率で水熱分解反応器において発生する反応熱を回収して熱還元反応器において再利用することができる。さらに、熱還元反応器および水熱分解反応器において発生する高温熱を排熱として、それぞれ高効率で回収して再利用することができる。
【0025】
すなわち、本発明により従来の方法の問題点を以下のように解決できる。
1 熱還元反応器と水熱分解反応器において、それぞれ酸素と水素が別々に発生するため、従来のようにガスセパレータ等による酸素と水素のガス分離が不要となり、回収される酸素と水素の純度が向上する。
2 熱還元反応器と水熱分解反応器において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、反応温度の異なる2つの反応の反応温度をそれぞれ任意に制御することが容易となり、それぞれの反応器からの酸素発生および水素発生量が向上する。
3 熱還元反応器と水熱分解反応器において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、2つの反応時間をそれぞれ任意に制御することが容易となり、それぞれの反応器の酸素発生量および水素発生量が向上し、回収される酸素と水素の発生濃度が向上する。
4 熱還元反応器と水熱分解反応器において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、それぞれの反応の反応時間および反応速度を任意に制御することが容易であり、水素発生反応で発生した反応熱(放熱量)を酸素発生における吸熱反応に十分活用でき、太陽熱→水素転換効率が向上する。
5 集光された太陽光が、ガスセパレータに遮られることなく、熱還元反応器内の流動層の上面の近傍に広く照射され1400℃以上の高温部の形成に寄与できるため、太陽エネルギーを有効に金属酸化物粒子の加熱に利用でき、太陽エネルギーの利用効率が高くなる。
6 集光された太陽光が、ガスセパレータに遮られることなく、熱還元反応器内の流動層の上面の近傍に広く照射され1400℃以上の高温部の形成に寄与できるため、1400℃以上の高温部の領域を拡張することができ、酸素生成量を増加させることができる。
7 反応器の構造上、水熱分解反応器の大きさを任意に変えられるため、水熱分解反応器内に形成される1400℃以下の低温部の領域を拡張することができ、水素生成量を増加させることができる。
8 反応器の構造上、熱還元反応器内の流動層の上面の近傍に形成される高温部の金属酸化物粒子は、流動層の上面よりも上部連通口が下部に位置しているため、その一部が高温部H周辺で滞留することでより高温に加熱されるため、熱還元反応がより進行しやすくなり、酸素発生量が向上する。
9 反応器の構造上、熱還元反応器内の流動層の上面の近傍に形成される高温部の金属酸化物粒子は、流動層の上面よりも上部連通口が下部に位置しているため、その一部が高温部H周辺で滞留し、高温部Hの金属酸化物粒子の持つ1400℃以上の高温の顕熱を高効率で排熱として熱回収して再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の一実施例を示す模式図である。
【図2】実施例2におけるシミュレーションモデルを示す。
【図3】実施例2における粒子体積分率の時間変化を示す計算結果図を示す。
【図4】実施例2における粒子とガスの時間平均流速ベクトルを示す計算結果図である。
【図5】実施例3における水熱分解反応器4から生成した水素生成速度の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例3における熱還元反応器3から生成した酸素生成速度の経時変化と水熱分解反応器4から流入した水素を計測したグラフである。
【図7】実施例4における水熱分解反応器4から生成した水素生成速度の経時変化と熱還元反応器3から流入した酸素を計測したグラフである。
【図8】実施例4における熱還元反応器3から生成した酸素生成速度の経時変化と水熱分解反応器4から流入した水素を計測したグラフである。
【図9】実施例4における水熱分解反応器4から生成した水素発生速度を、熱還元反応器3から生成した酸素発生速度で割った値である水素/酸素生成速度比の経時変化を示すグラフである。
【図10】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の別の実施例を示す模式図である。
【図11】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の別の実施例を示す上面からの模式図である。
【図12】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の別の実施例を示す模式図である。
【図13】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の別の実施例を示す模式図である。
【図14】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の別の実施例を示す模式図である。
【図15】本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置のさらに別の実施例を示す模式図である。
【図16】従来の内循環流動層を用いた水熱分解装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法の実施例について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法は、太陽日射が年間1800kWh/m以上のサンベルト地域で好適に実施されるものである。
【実施例1】
【0028】
はじめに、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置の構成について説明する。
本発明の内循環流動層を用いた水熱分解装置の一実施例を示す図1において、1はステンレス合金とインコネル合金からなる反応器であり、この反応器1には、金属酸化物の粒子からなる内循環流動層としての流動層2が収容されている。
【実施例1】
【0029】
この金属酸化物としては、例えば、Fe,NiFe,CoFeなどの鉄酸化物又は多金属を含有した鉄酸化物、これらの鉄酸化物をジルコニア等の担体に担持したもの、酸化セリウム(CeO)、酸化セリウムをジルコニア等の担体に担持したもの、或いは、鉄イオン又はセリウムイオンをジルコニアに固溶させたものなどを使用することができる。上記のジルコニアとしては、単斜晶ジルコニア、立方晶ジルコニア、正方晶ジルコニアのいずれも用いることができる。なお、立方晶ジルコニアとは、イットリア、カルシア、マグネシア等の安定化剤を含有した安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアであって、結晶層として少なくとも立方晶を含むジルコニアである。好ましくは、金属酸化物の粒子としては、MFe(M=Fe,Zn,Mn,Ni,Co,Mg)で表されるフェライトの微粉体、MFe/m-ZrO(M=Fe,Zn,Mn,Ni,Co,Mg)で表されるフェライトを担持した単斜晶ジルコニアの微粉体、又はMFe/YSZ(M=Fe,Zn,Mn,Ni,Co,Mg)で表されるフェライトを担持したイットリア安定化立方晶ジルコニアの微粉体が用いられる。より好ましくは、NiFe,NiFe/m-ZrOの微粉体が用いられる。また、酸化セリウムの微粉体、酸化セリウムを担持したジルコニアの微粉体も好適に用いられる。金属酸化物の粒子の大きさは、流動層2の流動性を保つために30~1000μmが好ましく、より好ましくは100~750μmである。
【実施例1】
【0030】
なお、フェライトを担持したジルコニアは、例えば、Fe(II)塩の水溶液にジルコニアの微粉体を分散させ、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加してFe(II)水酸化物のコロイドを生成させ、これに空気をバブリングして酸化させ、Fe(II)水酸化物のコロイドが水溶液に溶解した後、Feとなって析出する溶解析出反応を進行させ、分散させたジルコニアの微粉体上にFeを成長させることにより得ることができる。或いは、Fe(II)塩の水溶液にジルコニアの微粉体を分散させ、これを蒸発乾固させた後、焼成してジルコニア上のFe(II)塩を金属酸化物とし、この金属酸化物を300℃以上で焼成することによっても得ることができる。
【実施例1】
【0031】
反応器1は、熱還元反応を行う熱還元反応器3と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器4からなる。熱還元反応器3と水熱分解反応器4は、1枚の仕切り板5により仕切られており、仕切り板5の上部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を直接的に連通する上部連通口6が形成され、仕切り板5の下部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を直接的に連通する下部連通口7が形成されている。また、上部連通口6と下部連通口7は、流動層2内に埋没している。そして、上部連通口6と下部連通口7を通じて、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で直接的に流動層2が流動できるように構成されている。
【実施例1】
【0032】
熱還元反応器3の下部には、熱還元反応器3内へ窒素などの低酸素分圧ガスを導入するための分散板8、水熱分解反応器4の下部には、水熱分解反応器4内へ水蒸気を導入するための分散板9が設けられている。分散板8,9は、下部連通口7における流動層2の流動を妨げないように、下部連通口7の最下部7’に連結して設けられている。分散板8の面は、下部連通口7の最下部7’の高さと略一致しており、分散板9は、下部連通口7の最下部7’を最低部として傾斜して設けられている。また、分散板8,9は、流動層2を構成する金属酸化物の粒子を反応器1内に保持するともに、反応器1の底部から気体を導入することができるように、多孔質材料から形成されている。熱還元反応器3の底部には、低酸素分圧ガスを導入するための導入管10、水熱分解反応器4の底部には、水蒸気を導入するための導入管11が設けられている。
【実施例1】
【0033】
熱還元反応器3の上部には、上部連通口6の最上部6’の上方で熱還元反応器3の側壁と仕切り板5に連結されるとともに、上方に向かって熱還元反応器3の水平断面積を拡大する拡大部12が形成されている。この拡大部12により、太陽光Sが熱還元反応器3の壁に遮られることなく流動層2に照射されるようになっている。熱還元反応器3の拡大部12の上部の天井には、太陽光が透過できるように、石英製の窓13が設けられている。熱還元反応器3の拡大部12の上部の側方には、熱還元反応により発生した酸素を含んだガスの取り出し口14が設けられ、水熱分解反応器4の天井面には、水熱分解反応により発生した水素を含んだガスの取り出し口15が設けられている。
【実施例1】
【0034】
201はヘリオスタットと呼ばれる地上反射鏡、202は図示しないタワーに設置されたタワー反射鏡であり、これら地上反射鏡201とタワー反射鏡202によりビームダウン型の集光システムが構成される。そして、このビームダウン型の集光システムにより、太陽光Sが集光されて熱還元反応器3に収容された流動層2の上面へ照射されるようになっている。
【実施例1】
【0035】
つぎに、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置による水熱分解法について説明する。
【実施例1】
【0036】
分散板8から熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入し、同時に、分散板9から水熱分解反応器4に水蒸気を導入する。低酸素分圧ガスとしては、例えば純度99.999%の窒素が用いられる。ここで、熱還元反応器3に導入する低酸素分圧ガスは、酸素分圧の低いガスであればよく、窒素に限定されず、例えば、アルゴンであってもよい。また、水熱分解反応器4に導入するガスは、水蒸気を含んでいればよく、例えば、水蒸気と窒素の混合ガスであってもよい。そして、窒素の流量を水蒸気の流量よりも大きくすることにより、流動層2を熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で循環させる。すなわち、熱還元反応器3において流動層2が上昇し、水熱分解反応器4において流動層2が下降する内循環流動を生じさせる。
【実施例1】
【0037】
続いて、地上反射鏡201,タワー反射鏡202により集光された太陽光Sを、窓13を通して流動層2へ照射し、流動層2を加熱する。太陽光Sが照射された熱還元反応器3中の流動層2の上面の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成され、この高温部Hで熱還元反応が進行し、金属酸化物の粒子から酸素が放出される。放出された酸素は、取り出し口14から回収される。
【実施例1】
【0038】
例えば、金属酸化物にNiFeを用いた場合、熱還元反応の反応式は下記のようになる。
NiFe → 3Ni1/3Fe2/3O + (1/2)O
【実施例1】
【0039】
また、例えば、金属酸化物にCeOを用いた場合、熱還元反応の反応式は下記のようになる。
CeO → CeO2-x + (x/2)O (0<x≦0.5)
【実施例1】
【0040】
還元された金属酸化物の粒子は、内循環流動により上部連通口6を通って水熱分解反応器4に送られる。金属酸化物の粒子は水熱分解反応器4内で流動している間に温度が低下し、その結果、水熱分解反応器4中の流動層2に1400℃以下、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下の低温部Lが形成される。この低温部Lで水熱分解反応が進行し、熱還元反応により還元された金属酸化物の粒子は酸化されてもとの金属酸化物となり、同時に水素が発生する。発生した水素は、取り出し口15から回収される。
【実施例1】
【0041】
例えば、金属酸化物にNiFeを用いた場合、水熱分解反応の反応式は下記のようになる。
3Ni1/3Fe2/3O + HO → NiFe + H
【実施例1】
【0042】
また、例えば、金属酸化物にCeOを用いた場合、水熱分解反応の反応式は下記のようになる。
CeO2-x + xHO → CeO + xH (0<x≦0.5)
【実施例1】
【0043】
また、水熱分解反応器4の流動層2から、仕切り板5を介して、熱還元反応器3の下部の流動層2へ向けて熱が移動する。熱移動が円滑に進行するためには、熱還元反応器3の下部の流動層2の温度が、水熱分解反応器4の流動層2の温度よりも低くなり十分な温度差が必要となる。本実施例の流動層2では、熱還元反応器3に窒素を、水熱分解反応器4には水蒸気を同時に導入し、窒素の流量を水蒸気の流量よりも大きくして流動層2を反応器1内で流動させることから、熱還元反応器3の下部の流動層2と水熱分解反応器4の流動層2に大きな温度差が形成され、水熱分解反応器4の流動層2から熱還元反応器3の流動層2に向けて熱移動が行える。すなわち、低温部Lの流動層2の反応粒子の顕熱が、低温部Lから高温部Hへ移動する途中の流動層2の反応粒子により熱回収される。また、低温部Lの流動層2の反応粒子は、水素発生反応により発熱することから、その反応熱が低温部Lから高温部Hへ移動する途中の流動層2の反応粒子に熱移動し、吸熱反応である酸素発生反応の熱源として利用できる。さらに、低温部Lにおける反応粒子の移動にはある程度時間を要するため、低温部Lから高温部Hへ移動する反応粒子に大きな熱量が移動できる。したがって、エネルギー効率が向上する。
【実施例1】
【0044】
以上のように、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置は、金属酸化物の粒子からなる流動層2を収容した反応器1と、この反応器1に収容された前記流動層2へ太陽光Sを集光して照射する太陽光集光手段としての地上反射鏡201とタワー反射鏡202とを備え、前記反応器1は、熱還元反応を行う熱還元反応器3と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器4と、下方から前記熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入する低酸素分圧ガス導入手段としての分散板8と導入管10と、下方から前記水熱分解反応器4に水蒸気を導入する水蒸気導入手段としての分散板9と導入管11と、前記熱還元反応器3から発生した酸素を含んだガスを回収する酸素回収手段としての取り出し口14と、前記水熱分解反応器4から発生した水素を含んだガスを回収する水素回収手段しての取り出し口15とを備え、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4は、仕切り板5により仕切られるとともに、前記熱還元反応器3の内部と前記水熱分解反応器4の内部は前記仕切り板5に形成された上部連通口6と下部連通口7により直接的に連通しており、前記上部連通口6と前記下部連通口7は、前記流動層2内に埋没して、前記上部連通口6と前記下部連通口7を通じて、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4の間で直接的に前記流動層2が流動できるように構成され、前記太陽光集光手段としての地上反射鏡201とタワー反射鏡202により前記熱還元反応器3に収容された前記流動層2の上面へ太陽光Sが照射されるように構成されたものである。
【実施例1】
【0045】
また、前記熱還元反応器3の上部に、上方に向かって前記熱還元反応器3の水平断面積を拡大する拡大部12が形成され、前記拡大部12の上部に、太陽光Sが透過する石英製の窓13を備えたものである。
【実施例1】
【0046】
本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解法は、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置を用いて、前記低酸素分圧ガス導入手段としての分散板8と導入管10から導入される低酸素分圧ガスの流量を前記水蒸気導入手段としての分散板9と導入管11から導入される水蒸気の流量よりも大きくすることにより前記流動層2を前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4の間で内循環流動させながら、低酸素分圧ガス雰囲気下で前記流動層2の一部を太陽光Sにより加熱して金属酸化物から酸素を放出させる酸素発生反応と、酸素を放出した後の金属酸化物に水蒸気を接触させ水素を発生させる水素発生反応の2つの反応を同時に進行させるものである。
【実施例1】
【0047】
以上の本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法によれば、熱還元反応器3における酸素発生反応と、水熱分解反応器4における水素発生反応が同時に進行するため、酸素と水素の回収を連続的に行うことができる。また、熱還元反応器3と水熱分解反応器4は、仕切り板5により明確に仕切られており、酸素が熱還元反応器3、水素が水熱分解反応器4で発生するため、発生した酸素と水素が混合することがない。したがって、発生した酸素と水素を確実に分離して回収することができ、その結果、回収される水素の純度が向上し、水素の製造コストを削減することができる。また、反応温度の異なる2つの反応が熱還元反応器3と水熱分解反応器4で別々に進行するため、同時に進行する反応の反応温度と反応時間を制御することが容易となり、それぞれの反応効率が向上し、酸素と水素の発生濃度が向上する。また、発熱反応における放熱量と吸熱反応における吸熱量を制御することが容易になることから、高効率で反応熱を回収して再利用することができ、エネルギー損失が減少し、太陽エネルギーの利用効率が向上する。また、熱還元反応器3と水熱分解反応器4からそれぞれ発生する一定温度のガスからの廃熱利用が容易となることから、一層、エネルギー損失が減少し、太陽エネルギーの利用効率が向上する。
【実施例2】
【0048】
実施例1の内循環流動層を用いた水熱分解装置について、図2に示す計算条件の下、熱流体解析ソフトウエア(ANSYS
FLUENT ver.13)を用いて反応器1内の流動粒子と流通ガスの挙動について流動化シミュレーションを行った。本シミュレーションは固気混相流に対して圧縮性ナビエ・ストークス方程式を物理モデルとして採用し、粒子とガスの相互作用についてはオイラー・グラニュラーモデルを適用した。さらに流動層2の伝熱解析にはエネルギー方程式と輻射輸送方程式を結合させ、輻射伝熱量は球面調和関数法により解析した。流動層2は直径450μmのCeO粒子が反応器1内に充填されているものとした。
【実施例2】
【0049】
その結果を図3、図4に示す。図3は固相の体積分率を示し、左上から右下の順で時間進行している。この結果から下部流入口より気泡が発生していることがわかった。粒子流速分布(図4左)から、流動粒子は熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間を内循環流動することがわかった。また、ガス流速分布(図4右)から、熱還元反応器3で生成する酸素と水熱分解反応器4で生成する水素は、相互に混じり合うことなく、酸素と水素を分離したまま反応器1外に取り出せることがわかった。
【実施例3】
【0050】
流動層2を構成する金属酸化物として粒径106~710μmのCeOの微粉体1429gを用いて、熱還元反応と水熱分解反応を同時に行った。使用した反応器1の熱還元反応器3の幅および奥行きはともに60mm、水熱分解反応器4の幅および奥行きはともに40mmであった。また、太陽光Sの代わりに7kWのキセノンランプ3台を用いて、5.1kWの光を照射した。そして、熱還元反応器3には、純度99.999%の窒素を8L/分の流量、2.22m/分の線流速で流し、水熱分解反応器4には、水蒸気と窒素の混合ガスを4L/分の流量、1.77m/分の線流速で流した。熱還元反応器3および水熱分解反応器4から生成したガスの種類とその生成速度を質量分析器およびガスクロマトグラフで定量分析した。
【実施例3】
【0051】
このときの水熱分解反応器4から生成した水素発生量の経時変化を図5に示す。水熱分解反応器4から生成した総水素発生量は554ml(1気圧、25℃)であった。また水熱分解反応器4に連結したガス排出口から酸素の生成は見られなかった。この結果から、熱還元反応器3から生成した酸素が水熱分解反応器4に混入しないことがわかる。
【実施例3】
【0052】
熱還元反応器3から生成した酸素発生量の経時変化を図6に示す。熱還元反応器3から生成した総酸素発生量は318ml(1気圧、25℃)であった。熱還元反応器3に連結したガス排出口から水素の生成は見られなかった。この結果から、水熱分解反応器4生成した水素が熱還元反応器3に混入しないことがわかる。
【実施例3】
【0053】
これの結果から、生成した酸素と水素が反応器内を再結合せず、反応器の分離が機能することが実証された。
【実施例3】
【0054】
また、反応後の流動層2は焼結、凝集せず、粉末状の形態を有していた。したがって、流動層2にCeOの微粉体を使用した場合において、反応時間をさらに延ばすことで酸素発生量及び水素発生量を増加させることができることが確認された。
【実施例4】
【0055】
流動層2を構成する金属酸化物として粒径106~710μmのCeOの微粉体1391gを用いて、熱還元反応と水熱分解反応を同時に行った。使用した反応器1の熱還元反応器3の幅および奥行きはともに60mm、水熱分解反応器4の幅および奥行きはともに40mmであった。また、太陽光Sの代わりに7kWのキセノンランプ3台を用いて、5.1kWの光を照射した。そして、熱還元反応器3には、純度99.999%の窒素を13L/分の流量速度で流し、水熱分解反応器4には、水蒸気と窒素の混合ガスを4.5L/分の流量速度で流した。熱還元反応器3および水熱分解反応器4から生成したガスの種類とその生成速度をそれぞれ質量分析器で定量分析した。
【実施例4】
【0056】
このときの水熱分解反応器4から生成した水素発生量の経時変化を図7に示す。水熱分解反応器4から生成した総水素発生量は847ml(1気圧、25℃)であった。また水熱分解反応器4に連結したガス排出口から酸素の生成はほとんど見られなかった。この結果から、熱還元反応器3から生成した酸素が水熱分解反応器4に混入しないことがわかる。
【実施例4】
【0057】
熱還元反応器3から生成した酸素発生量の経時変化を図8に示す。熱還元反応器3から生成した総酸素発生量は1319ml(1気圧、25℃)であった。熱還元反応器3に連結したガス排出口から水素の生成はほとんど見られなかった。この結果から、水熱分解反応器4生成した水素が熱還元反応器3に混入しないことがわかる。
【実施例4】
【0058】
これの結果から、生成した酸素と水素が反応器内を再結合せず、反応器の分離が機能することが実証された。
【実施例4】
【0059】
また、反応後の流動層2は焼結、凝集せず、粉末状の形態を有していた。したがって、流動層2にCeOの微粉体を使用した場合において、反応時間をさらに延ばすことで酸素発生量及び水素発生量を増加させることができることが確認された。
【実施例4】
【0060】
また、水熱分解反応器4から生成した水素発生速度を、熱還元反応器3から生成した酸素発生速度で割った値である水素/酸素生成速度比の経時変化を図9に示す。時間の経過とともに生成する水素/酸素比が水分子(H2O)の化学量論比である2に近づくことが分かる。したがって、反応器内での二段階水熱分解反応は化学量論比に従って進行することが分かる。
【実施例5】
【0061】
つぎに、熱還元反応器と水熱分解反応器との間の金属酸化物の粒子の移動に、スクリューコンベヤを用いた例について説明する。なお、上記実施例1と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は省略する。
【実施例5】
【0062】
本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置を示す図10において、熱還元反応器3と水熱分解反応器4とは、別々に相互に離間して構成されている。熱還元反応器3と水熱分解反応器4の上部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を連通する上部連通口6a,6bがそれぞれ形成され、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の下部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を連通する下部連通口7a,7bがそれぞれ形成されている。また、上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bは、流動層2内に埋没している。
【実施例5】
【0063】
上部連通口6a,6b間には、スクリューコンベア21が設けられ、熱還元反応器3から水熱分解反応器4へ流動層2が運搬されるように構成されている。また、下部連通口7a,7b間には、スクリューコンベア22が設けられ、水熱分解反応器4から熱還元反応器3へ流動層2が運搬されるように構成されている。なお、スクリューコンベア21,22は、それぞれモータ23,24により駆動されるようになっており、スクリューコンベア21,22の回転数は制御可能に構成されている。そして、上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bを通じて、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で流動層2が流動できるように構成されている。
【実施例5】
【0064】
熱還元反応器3の下部には、熱還元反応器3内へ窒素などの低酸素分圧ガスを導入するための分散板8、水熱分解反応器4の下部には、水熱分解反応器4内へ水蒸気を導入するための分散板9が設けられている。分散板8,9は、下部連通口7における流動層2の流動を妨げないように、下部連通口7a,7bの最下部7a’,7b’に連結して設けられている。分散板8の面は、下部連通口7aの最下部7a’の高さと略一致しており、分散板9は、下部連通口7bの最下部7b’を最低部として傾斜して設けられている。
【実施例5】
【0065】
なお、図11(a)に示すように、2つのスクリューコンベア21,22が熱還元反応器3の中心と水熱分解反応器4の中心を結ぶ線上に位置していてもよく、図11(b)に示すように、2つのスクリューコンベア21,22が熱還元反応器3の中心から離れた部分と水熱分解反応器4の中心を離れた部分を結ぶ同じ線上に位置していてもよく、図11(c)に示すように、2つのスクリューコンベア21,22が熱還元反応器3の中心から離れた部分と水熱分解反応器4の中心を離れた部分を結ぶ別々の線上に位置していてもよく、上部、及び下部のスクリューコンベアを複数配置してもよいし、傾斜させてもよい。
【実施例5】
【0066】
また、スクリューコンベア21,22を構成するスクリューは、1軸であっても2軸であってもよく、スクリューコンベア21,22のいずれか一方を省略して構成してもよい。
【実施例5】
【0067】
上記の構成において、分散板8から熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入し、同時に、分散板9から水熱分解反応器4に水蒸気を導入する。そして、モータ23,24によりスクリューコンベア21,22を駆動させて、上部連通口6a,6bを通じて、熱還元反応器3から水熱分解反応器4へ流動層2を運搬させ、下部連通口7a,7bを通じて、水熱分解反応器4から熱還元反応器3へ流動層2を運搬させることにより、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で流動層2を循環させる。すなわち、上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bを通じて、熱還元反応器3において流動層2が上昇し、水熱分解反応器4において流動層2が下降する内循環流動を生じさせる。
【実施例5】
【0068】
続いて、太陽光Sを、窓13を通して流動層2へ照射し、流動層2を加熱する。太陽光Sが照射された熱還元反応器3中の流動層2の上面の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成され、この高温部Hで熱還元反応が進行し、金属酸化物の粒子から酸素が放出される。
【実施例5】
【0069】
還元された金属酸化物の粒子は、内循環流動により上部連通口6a,6bを通って水熱分解反応器4に送られる。金属酸化物の粒子は水熱分解反応器4内で流動している間に温度が低下し、その結果、水熱分解反応器4中の流動層2に1400℃以下、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下の低温部Lが形成される。この低温部Lで水熱分解反応が進行し、熱還元反応により還元された金属酸化物の粒子は酸化されてもとの金属酸化物となり、同時に水素が発生する。
【実施例5】
【0070】
以上のように、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置は、金属酸化物の粒子からなる流動層2を収容した反応器1と、この反応器1に収容された前記流動層2へ太陽光Sを集光して照射する太陽光集光手段を備え、前記反応器1は、熱還元反応を行う熱還元反応器3と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器4と、下方から前記熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入する低酸素分圧ガス導入手段としての分散板8と、下方から前記水熱分解反応器4に水蒸気を導入する水蒸気導入手段としての分散板9と、前記熱還元反応器3から発生した酸素を含んだガスを回収する酸素回収手段と、前記水熱分解反応器4から発生した水素を含んだガスを回収する水素回収手段とを備え、前記熱還元反応器3の内部と前記水熱分解反応器4の内部は上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bにより連通しており、前記上部連通口6a,6bと前記下部連通口7a,7bは、前記流動層2内に埋没して、前記上部連通口6a,6bと前記下部連通口7a,7bを通じて、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4の間で前記流動層2が流動できるように構成され、前記太陽光集光手段により前記熱還元反応器3に収容された前記流動層2の上面へ太陽光Sが照射されるように構成されたものである。
【実施例5】
【0071】
また、前記上部連通口6a,6b及び下部連通口7a,7bに、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4との間で前記流動層2を運搬する運搬手段としてのスクリューコンベア21,22が設けられたものである。
【実施例5】
【0072】
また、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4とは、別々に相互に離間して構成されているものである。
【実施例5】
【0073】
以上の本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法によれば、スクリューコンベア21,22を設置することにより、実施例1の構成のように流動層2を形成するためにガス流量を調整することが不要となり、流動層2を形成する金属酸化物粒子を熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で強制的に移動させることが可能となる。さらに、スクリューコンベア21,22内の金属酸化物粒子群によるガスシール作用により、発生した酸素と水素を確実に分離して回収することができる。
【実施例5】
【0074】
したがって、下記のことが有利に実施できる。
1 熱還元反応器3と水熱分解反応器4において、それぞれ酸素と水素が別々に発生するため、従来のようにガスセパレータ等による酸素と水素のガス分離が不要となり、回収される酸素と水素の純度が向上する。
2 熱還元反応器3と水熱分解反応器4において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、反応温度の異なる2つの反応の反応温度をそれぞれ任意に制御することが容易となり、それぞれの反応器からの酸素発生量および水素発生量が向上する。
3 熱還元反応器3と水熱分解反応器4において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、2つの反応時間をそれぞれ任意に制御することが容易となり、それぞれの反応器の酸素発生量および水素発生量が向上し、回収される酸素と水素の発生濃度が向上する。
4 熱還元反応器3と水熱分解反応器4において、それぞれ熱還元反応と水熱分解反応を進行させるため、それぞれの反応の反応時間および反応速度を任意に制御することが容易であり、水素発生反応で発生した反応熱(放熱量)を酸素発生における吸熱反応に十分活用でき、太陽熱→水素転換効率が向上する。
5 集光された太陽光が、ガスセパレータに遮られることなく、熱還元反応器3内の流動層の上面の近傍に広く照射され1400℃以上の高温部の形成に寄与できるため、太陽エネルギーを有効に金属酸化物粒子の加熱に利用でき、太陽エネルギーの利用効率が高くなる。
6 集光された太陽光が、ガスセパレータに遮られることなく、熱還元反応器3内の流動層の上面の近傍に広く照射され1400℃以上の高温部Hの形成に寄与できるため、1400℃以上の高温部Hの領域を拡張することができ、酸素生成量を増加させることができる。
7 反応器の構造上、水熱分解反応器4の大きさを任意に変えられるため、水熱分解反応器4内に形成される1400℃以下の低温部Lの領域を拡張することができ、水素生成量を増加させることができる。
8 反応器の構造上、熱還元反応器3内の流動層の上面の近傍に形成される高温部Hの金属酸化物粒子は、流動層2の上面よりも上部連通口6aが下部に位置しているため、その一部が高温部H周辺で滞留し、より高温に加熱されるため、熱還元反応がより進行しやすく、酸素発生量が向上する。
9 反応器の構造上、熱還元反応器3内の流動層2の上面の近傍に形成される高温部Hの金属酸化物粒子は、流動層2の上面よりも上部連通口6aが下部に位置しているため、その一部が高温部H周辺で滞留し、高温部Hの金属酸化物粒子の持つ1400℃以上の高温の顕熱を高効率で排熱として熱回収して再利用できる。
【実施例6】
【0075】
本実施例は実施例5の変形例である。実施例5と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は省略する。
【実施例6】
【0076】
本実施例では、図12に示すように、スクリューコンベア21,22の出口が縮小されている。すなわち、熱還元反応器3における上部連通口6aの開口量よりも、水熱分解反応器4における上部連通口6bの開口量が小さくなっている。また、水熱分解反応器4における下部連通口7bの開口量よりも、熱還元反応器3における下部連通口7aの開口量が小さくなっている。
【実施例6】
【0077】
熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部の流動層2の流動状態が変化したときに、熱還元反応器3内のガスと水熱分解反応器4内のガスが混合する場合がある。特に、太陽が雲に隠れたためガスの流量を変化させたとき、スタートアップ時、シャットダウン時、瞬間的な停電時に、熱還元反応器3内のガスと水熱分解反応器4内のガスが混合する虞がある。これに対して、本実施例では、上記のようにスクリューコンベア21,22の出口を縮小することにより、上部連通口6bと下部連通口7aにおける金属酸化物粒子の充填密度が大きくなる。したがって、熱還元反応器3内のガスと水熱分解反応器4内のガスが混合することを激減させることができる。そして、その結果、水素生成効率を向上させることができる。
【実施例7】
【0078】
本実施例は実施例5の別の変形例である。実施例5と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は省略する。
【実施例7】
【0079】
本実施例では、図13に示すように、熱還元反応器3に金属酸化物粒子の上昇を助長するためのスクリューコンベア27が配置されている。
【実施例7】
【0080】
熱還元反応器3内の金属酸化物粒子を流動、上昇させるためには、多くの窒素などの低酸素分圧ガスを供給する必要がある。本実施例では、縦置きのスクリューコンベア27により、金属酸化物粒子の上昇運動を促進させることができる。なお、スクリューコンベア27は1軸でもよく、2軸、又は多数軸にしてもよい。本実施例によれば、金属酸化物粒子の上昇のために供給される低酸素分圧ガスの供給量を大きく削減できる。このため、窒素などの低酸素分圧ガスを製造する装置を小型化でき、また、低酸素分圧ガスを製造する装置の運転費を削減することができる。そして、その結果、水素製造のコストを削減させることができる。
【実施例7】
【0081】
なお、本実施例に、実施例6のようにスクリューコンベア21,22の出口を縮小する構成を組み合わせてもよい。
【実施例8】
【0082】
さらに別の実施例について説明する。なお、上記実施例1、5と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は省略する。
【実施例8】
【0083】
本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置を示す図14において、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の上部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を連通する上部連通口6a,6bがそれぞれ形成され、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の下部には、熱還元反応器3の内部と水熱分解反応器4の内部を連通する下部連通口7a,7bがそれぞれ形成されている。また、下部連通口7a,7bは、流動層2内に埋没している。
【実施例8】
【0084】
上部連通口6aと下部連通口7bの間には、ベルトコンベア25が設けられ、水熱分解反応器4から熱還元反応器3へ流動層2が運搬されるように構成されている。また、熱還元反応器3の内部にスクリューコンベア26が設けられ、熱還元反応器3内の流動層2が上部連通口6aが設けられた一端側から下部連通口7aが設けられた他端側に向けて運搬されるように構成されている。また、熱還元反応器3の下部連通口7aは、水分解反応器4の上部連通口6bに直接的に連通している。そして、上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bを通じて、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で流動層2が流動できるように構成されている。
【実施例8】
【0085】
熱還元反応器3の下部には、熱還元反応器3内へ窒素などの低酸素分圧ガスを導入するための分散板8、水熱分解反応器4の下部には、水熱分解反応器4内へ水蒸気を導入するための分散板9が設けられている。分散板8,9は、下部連通口7における流動層2の流動を妨げないように、下部連通口7a,7bの最下部7a’,7b’に連結して設けられている。分散板8の面は、下部連通口7aの最下部7a’を最低部として傾斜して設けられており、分散板9は、下部連通口7bの最下部7b’の高さと略一致している。
【実施例8】
【0086】
上記の構成において、分散板8から熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入し、同時に、分散板9から水熱分解反応器4に水蒸気を導入する。そして、ベルトコンベア25、スクリューコンベア26を駆動させて、下部連通口7aと上部連通口6bを通じて、熱還元反応器3から水熱分解反応器4へ流動層2を運搬させ、下部連通口7bと上部連通口6aを通じて、水熱分解反応器4から熱還元反応器3へ流動層2を運搬させることにより、熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で流動層2を循環させる。すなわち、上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bを通じて、内循環流動を生じさせる。
【実施例8】
【0087】
続いて、太陽光Sを、窓13を通して流動層2へ照射し、流動層2を加熱する。太陽光Sが照射された熱還元反応器3中の流動層2の上面の近傍では1400℃以上の高温部Hが形成され、この高温部Hで熱還元反応が進行し、金属酸化物の粒子から酸素が放出される。
【実施例8】
【0088】
還元された金属酸化物の粒子は、下部連通口7aと上部連通口6bを通って水熱分解反応器4に送られる。金属酸化物の粒子は水熱分解反応器4内で流動している間に温度が低下し、その結果、水熱分解反応器4中の流動層2に1400℃以下、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下の低温部Lが形成される。この低温部Lで水熱分解反応が進行し、熱還元反応により還元された金属酸化物の粒子は酸化されてもとの金属酸化物となり、同時に水素が発生する。
【実施例8】
【0089】
なお、上記の構成において、熱還元反応器3における流動層2の移動は、傾斜した分散板8から低酸素分圧ガスを導入することでも可能であり、スクリューコンベア26を省略することもできる。また、熱還元反応器3に振動を与えることで、流動層2を移動させ、傾斜した分散板8から低酸素分圧ガスの導入を省略してもよい。
【実施例8】
【0090】
以上のように、本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置は、金属酸化物の粒子からなる流動層2を収容した反応器1と、この反応器1に収容された前記流動層2へ太陽光Sを集光して照射する太陽光集光手段を備え、前記反応器1は、熱還元反応を行う熱還元反応器3と、水熱分解反応を行う水熱分解反応器4と、下方から前記熱還元反応器3に低酸素分圧ガスを導入する低酸素分圧ガス導入手段としての分散板8と、下方から前記水熱分解反応器4に水蒸気を導入する水蒸気導入手段としての分散板9と、前記熱還元反応器3から発生した酸素を含んだガスを回収する酸素回収手段と、前記水熱分解反応器4から発生した水素を含んだガスを回収する水素回収手段とを備え、前記熱還元反応器3の内部と前記水熱分解反応器4の内部は上部連通口6a,6bと下部連通口7a,7bにより連通しており、前記下部連通口7a,7bは、前記流動層2内に埋没して、前記上部連通口6a,6bと前記下部連通口7a,7bを通じて、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4の間で前記流動層2が流動できるように構成され、前記太陽光集光手段により前記熱還元反応器3に収容された前記流動層2の上面へ太陽光Sが照射されるように構成されたものである。
【実施例8】
【0091】
また、前記上部連通口6a及び下部連通口7bに、前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4との間で前記流動層2を運搬する運搬手段としてのベルトコンベア25が設けられたものである。
【実施例8】
【0092】
また、前記熱還元反応器3の上部連通口6aと前記水熱分解反応器4の下部連通口7bの間に前記熱還元反応器3と前記水熱分解反応器4との間で前記流動層2を運搬する運搬手段としてのベルトコンベア25が設けられ、前記熱還元反応器3の下部連通口7aと前記水熱分解反応器4の上部連通口6bは直接的に連通しているものである。
【実施例8】
【0093】
また、前記熱還元反応器3の内部において前記熱還元反応器3内の流動層2を移動させる移動手段としてのスクリューコンベア26が設けられたものである。
【実施例8】
【0094】
以上の本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置及び水熱分解法によれば、ベルトコンベア25又はこれに加えてスクリューコンベア26を設置することにより、実施例1の構成のように流動層2を形成するためにガス流量を調整することが不要となり、流動層2を形成する金属酸化物粒子を熱還元反応器3と水熱分解反応器4の間で強制的に移動させることが可能となる。
【実施例9】
【0095】
本実施例は実施例8の変形例である。実施例8と同じ部分には同じ符号を付し、その部分の説明は省略する。
【実施例9】
【0096】
本実施例の内循環流動層を用いた水熱分解装置を示す図15において、金属酸化物粒子は、熱還元反応器3と連結された貯蔵タンク28に保持され、熱還元反応器3内にスクリューコンベア29により運搬移動されるようになっている。また、熱還元反応器3内において金属酸化物粒子を流動させるために、スクリューコンベア26が配置されている。このスクリューコンベア26は横方向のほか、縦方向、ななめ方向に配置してもよく、本実施例では、横方向、縦方向、ななめ方向に3つのスクリューコンベア26が配置されている。
【実施例9】
【0097】
また、水熱分解反応器4内において金属酸化物粒子を流動させるために、スクリューコンベア30が配置されている。このスクリューコンベア30は本実施例のように縦方向に配置する構成に限らず、横方向、ななめ方向に配置してもよい。また、水熱分解反応器4の下部には、水熱分解反応後の金属酸化物粒子を貯蔵する貯蔵タンク31が設けられている。そして、水熱分解反応器4から貯蔵タンク31へ金属酸化物粒子を移動、運搬するためのスクリューコンベア32が配置されている。
【実施例9】
【0098】
また、貯蔵タンク31と貯蔵タンク28の間には、水熱分解反応後の金属酸化物粒子の移動、運搬を行うためのベルトコンベア25が設けられている。
【実施例9】
【0099】
本実施例によれば、貯蔵タンク28,31を備えたことにより、水熱分解反応後の金属酸化物粒子を一時的に貯蔵することができる。このため、ベルトコンベア25による金属酸化物粒子の移動を夜間に行うことが可能となる。
【実施例9】
【0100】
なお、本発明は、上記各実施例に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【実施例9】
【0101】
例えば、熱還元反応器や水熱分解反応器の形状は縦長の直方体に限らず、横長の直方体、立方体、縦長の円柱状、横長の円柱状、縦長のだ円柱状、横長のだ円柱状でもよい。また、熱還元反応器や水熱分解反応器の底面形状は水平、傾斜していてもよい。また、金属酸化物粒子の移動には、スクリューコンベアやベルトコンベアのほか、バケツ等の容器や、外力を加えることで生ずる振動を利用してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 反応器
2 流動層
3 熱還元反応器
4 水熱分解反応器
5 仕切り板
6,6a,6b 上部連通口
7,7a,7b 下部連通口
8 分散板(低酸素分圧ガス導入手段)
9 分散板(水蒸気導入手段)
10 導入管(低酸素分圧ガス導入手段)
11 導入管(水蒸気導入手段)
12 拡大部
13 窓
14 取り出し口(酸素回収手段)
15 取り出し口(水素回収手段)
21,22 スクリューコンベア(運搬手段)
25 ベルトコンベア(運搬手段)
26 スクリューコンベア(移動手段)
201 地上反射鏡
202 タワー反射鏡(太陽光集光手段)
S 太陽光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15