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明細書 :III族窒化物結晶および半導体装置の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5904421号 (P5904421)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
発行日 平成28年4月13日(2016.4.13)
発明の名称または考案の名称 III族窒化物結晶および半導体装置の製造方法
国際特許分類 C30B  29/38        (2006.01)
C30B  19/12        (2006.01)
FI C30B 29/38 D
C30B 19/12
請求項の数または発明の数 19
全頁数 40
出願番号 特願2013-553314 (P2013-553314)
出願日 平成25年1月10日(2013.1.10)
国際出願番号 PCT/JP2013/050342
国際公開番号 WO2013/105618
国際公開日 平成25年7月18日(2013.7.18)
優先権出願番号 2012003637
優先日 平成24年1月11日(2012.1.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年4月24日(2014.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】森 勇介
【氏名】今出 完
【氏名】吉村 政志
【氏名】平尾 美帆子
【氏名】今西 正幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
審査官 【審査官】今井 淳一
参考文献・文献 特開2010-222254(JP,A)
特開2008-143772(JP,A)
特開2007-254258(JP,A)
特開2012-006772(JP,A)
調査した分野 C30B 29/38
C30B 19/12
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のドット状のIII族窒化物、III族窒化物結晶の生成および成長のための複数の種結晶として準備する種結晶準備工程と、
前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる結晶成長工程とを含
前記種結晶が、六方晶であり、
前記種結晶準備工程において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、前記複数の種結晶から成長した複数の前記III族窒化物結晶を結合させることを特徴とする、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記種結晶準備工程において、
前記複数の種結晶が、基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記種結晶準備工程、前記接触工程および前記結晶成長工程において、前記基板および前記種結晶から構成されたユニットを、複数、近接させて並列に配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させる、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記基板が、AlGa1-xN(0<x≦1)、AlGa1-xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項2または3記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数のドット状の種結晶の直径が、0.01~10mmの範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記種結晶が、c面を有し、
前記種結晶準備工程において、前記c面を前記種結晶の結晶成長面として選択し、
互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置する請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
互いに隣接する前記種結晶どうしの距離が、0.05mm以上である請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
予め準備されたIII族窒化物結晶層上に、複数のドット状の貫通孔を有するマスクを配置し、前記複数の貫通孔から露出した前記III族窒化物結晶層の面を、複数の結晶成長部として選択する結晶成長部選択工程と、
前記結晶成長部の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させてIII族窒化物結晶を生成させ成長させる結晶成長工程とを含み、
前記III族窒化物結晶層が、六方晶であり、
前記マスクの厚みが0.05mm以上であり、
前記結晶成長部選択工程において、互いに隣接する前記結晶成長部のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記結晶成長部を選択し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、前記複数の結晶成長部から成長した複数の前記III族窒化物結晶を結合させることを特徴とする、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項9】
前記マスクが、前記III族窒化物結晶層に密着していない請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記結晶成長部選択工程、前記接触工程および前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶層および前記マスクから構成されたユニットを、複数、近接させて並列に配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させる、請求項8または9記載の製造方法。
【請求項11】
前記マスクにおいて、前記ドット状の貫通孔の直径が、0.01~10mmの範囲である請求項8から10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記III族窒化物結晶層が、c面を有し、
前記結晶成長部準備工程において、前記c面を前記結晶成長部の結晶成長面として選択し、
互いに隣接する前記結晶成長部のa軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置する請求項8から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記マスクが、AlGa1-xN(0<x≦1)、AlGa1-xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項8から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
互いに隣接する前記マスク貫通孔どうしの距離が、0.05mm以上である請求項8から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記結晶成長工程において生成し成長する前記III族窒化物結晶が、AlGaIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物結晶である請求項1から14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
製造されるIII族窒化物結晶の長径が15cm以上である請求項1から15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
製造されるIII族窒化物結晶の転位密度が、1.0×10cm-2以下である請求項1から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の製造方法によりIII族窒化物結晶を製造した後、前記III族窒化物結晶さらに成長させる工程を含む、III族窒化物結晶の製造方法
【請求項19】
半導体を含む半導体装置の製造方法であって、
前記半導体が、III族窒化物結晶であり、
前記III族窒化物結晶を、請求項1から17のいずれか一項に記載の製造方法により製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物結晶の製造方法、III族窒化物結晶および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などのIII族窒化物半導体(III族窒化物化合物半導体、またはGaN系半導体などともいう)は、レーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)等の各種半導体素子の材料として広く用いられている。例えば、青色光を発するレーザダイオード(LD)は、高密度光ディスクやディスプレイに応用され、青色光を発する発光ダイオード(LED)は、ディスプレイや照明などに応用される。また、紫外線LDは、バイオテクノロジなどへの応用が期待され、紫外線LEDは、蛍光灯の紫外線源として期待されている。
【0003】
III族窒化物(例えばGaN)結晶基板を製造するための一般的な方法としては、例えば、気相エピタキシャル成長がある。一方、より高品質なIII族窒化物単結晶を製造可能な方法として、液相中での結晶成長法も行われている。この液相成長法(LPE:Liquid Phase Epitaxy)は、高温高圧を必要とするという問題があったが、近年の改良により、比較的低温低圧で行うことができるようになり、量産にも適した方法となっている。
【0004】
また、サファイア基板上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metalorganic Chemical Vapor Deposition)によってIII族窒化物結晶層を成膜したのち、液相成長法によってIII族窒化物結晶をさらに成長させる方法も報告されている。特に、特許文献1では、サファイア基板上にMOCVD等で形成したIII族窒化物半導体層の複数の部分を種結晶として選択し、前記種結晶をアルカリ金属融液に接触させてIII族窒化物結晶を成長させている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4588340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、以下のとおり、従来のIII族窒化物結晶の製造方法では、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶の製造は、きわめて困難である。
【0007】
すなわち、まず、気相エピタキシャル成長等によってIII族窒化物結晶を製造する場合、エピタキシャル成長のための基板が必要である。この基板としては、一般に、安価なサファイア基板が用いられる。しかし、サファイア基板とIII族窒化物結晶とでは、格子定数、熱膨張係数等がかなり異なるために、III族窒化物結晶に、歪み、転位、反り等の欠陥が生じる。この欠陥の問題は、結晶が大きくなればなるほど顕著になる。なお、本発明において、「サファイア」は、特に断らない限り、酸化アルミニウム結晶、または酸化アルミニウムを主成分とする結晶をいう。
【0008】
また、格子定数の差の問題を解消するために、前記サファイア基板に代えて、大サイズでかつ欠陥が少ないIII族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させることが考えられる。より具体的には、例えば、前記サファイア基板に代えてIII族窒化物基板を用い、これを種結晶とすることが考えられる。しかし、III族窒化物基板等の大きなIII族窒化物種結晶は、非常に高価であるため、コスト高になってしまう。また、従来技術では、そもそも、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質であるIII族窒化物種結晶の入手は、ほぼ不可能である。このため、成長させたIII族窒化物結晶が、前記種結晶の結晶欠陥を受け継いでしまうことになり、問題の根本的な解決は困難である。
【0009】
その他に、大サイズで欠陥が少ないIII族窒化物結晶の製造方法としては、微小種結晶を液相中で長時間かけて成長させる等の方法も考えられる。しかし、このようにして大サイズの結晶を得ることも、きわめて難しい。
【0010】
また、特許文献1には、前述のとおり、III族窒化物半導体層の複数の部分を種結晶としてIII族窒化物結晶を成長させることが記載されている。この場合、前記複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶が、成長により結合(会合)することになる。しかし、前記複数のIII族窒化物結晶が、それらの境界において、整然と結合(会合)せずに結晶欠陥を生じる恐れがある。
【0011】
したがって、本発明は、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能なIII族窒化物結晶の製造方法、前記製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、およびそれを用いた半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、
予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、
前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる結晶成長工程とを含む、III族窒化物結晶の製造方法であって、
前記種結晶が、六方晶であり、
前記種結晶選択工程において、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、前記複数の種結晶から成長した複数の前記III族窒化物結晶を結合させることを特徴とする。
【0013】
本発明のIII族窒化物結晶は、前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、または前記III族窒化物結晶をさらに成長させて製造されるIII族窒化物結晶である。
【0014】
本発明の半導体装置は、半導体である前記本発明のIII族窒化物結晶を含む半導体装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能なIII族窒化物結晶の製造方法、前記製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、およびそれを用いた半導体装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の製造方法(III族窒化物結晶層上にドット状の複数の貫通孔を有するマスクが形成されたユニットを用いる、III族窒化物結晶の製造方法)の一例を示す工程断面図である。
【図2】図2は、図1の工程断面図による製造方法を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の製造方法の別の一例を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の製造方法のさらに別の一例を示す平面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の製造方法(基板上に形成された複数のIII族窒化物結晶を用いる製造方法)の一例を示す工程断面図である。
【図6】図6は、m面同士を会合させる製造方法の一例を模式的に示す平面図である。
【図7】図7は、本発明の第3の製造方法に用いるユニットを模式的に例示する図である。
【図8】図8(a)は、基板上に成長させたIII族窒化物結晶の歪みを例示する断面図であり、図8(b)~(d)は、複数のユニットを用いてその歪みを解消した状態を例示する断面図である。
【図9】図9は、本発明の第1の製造方法において、ユニットを複数、近接させて並列に配置する場合を例示する斜視図である。
【図10】図10は、参考例(ポイントシード法)において製造した結晶の写真およびXRC(X線ロッキングカーブ回折法)図である。
【図11】図11は、図10の結晶の断面を示す写真である。
【図12】図12は、実施例で用いたユニットを模式的に示す斜視図である。
【図13】図13は、実施例で製造した結晶の一例を示す写真である。
【図14】図14は、実施例で製造した結晶の別の一例を示す写真である。
【図15】図15は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図16】図16は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図17】図17は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図18】図18は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図19】図19は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図20】図20は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図21】図21は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図22】図22は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図23】図23は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図24】図24は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図25】図25は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図26】図26は、比較例で製造した結晶の一例を示す写真である。
【図27】図27は、比較例で製造した結晶の別の一例を示す写真である。
【図28】図28は、比較例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図29】図29は、比較例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図30】図30は、比較例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図31】図31は、実施例および比較例で製造した結晶の、XRCにより測定した半値幅(FWHM)を示すグラフである。
【図32】図32は、実施例で製造した結晶のさらに別の一例を示す写真である。
【図33】図33は、参考例で製造した結晶のCL(カソードルミネセンス)像の一例である。
【図34】図34は、実施例で製造した結晶のCL(カソードルミネセンス)像の一例である。
【図35】図35は、実施例で製造した結晶のCL(カソードルミネセンス)像の別の一例である。
【図36】図36は、実施例で製造した結晶のCL(カソードルミネセンス)像のさらに別の一例である。
【図37】図37は、c面種結晶において、隣接する2つの種結晶の配置を例示する平面図である。
【図38】図38は、c面種結晶において、隣接する2つの種結晶の配置の別の例を示す平面図である。
【図39】図39は、m面種結晶における種結晶の配置を例示する図である。
【図40】図40は、a面種結晶における種結晶の配置を例示する図である。
【図41】図41は、a軸またはc軸が結晶成長面に対し傾いている種結晶の配置を例示する図である。
【図42】図42は、互いに隣接する種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしが互いに傾いている配置を例示する図である。
【図43】図43は、本発明の製造方法に用いる装置の一例の構成を示す模式図である。
【図44】図44は、本発明の製造方法に用いる装置の別の一例の構成を示す模式図である。
【図45】図45は、本発明の製造方法に用いる装置のさらに別の一例の構成を示す模式図である。
【図46】図46は、マスク貫通孔からの結晶成長機構を模式的に例示する断面図である。
【図47】図47は、実施例の半導体装置の構造を模式的に示す側面図である。
【図48】図48は、図47の半導体装置の逆方向耐圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。

【0018】
<1.本発明の製造方法>
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、前述のとおり、
予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、
前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる結晶成長工程とを含む、III族窒化物結晶の製造方法であって、
前記種結晶が、六方晶であり、
前記種結晶選択工程において、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、前記複数の種結晶から成長した複数の前記III族窒化物結晶を結合させることを特徴とする。

【0019】
また、本発明の製造方法において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することが好ましい。なお、六方晶において、「a軸」は、a1、a2、a3の3本があり、全て等価である。本発明において、隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う状態とは、前記3本のa軸のうち任意の1本どうしがほぼ重なり合う状態をいう。また、本発明において、「ほぼ重なり合う」または「実質的に重なり合う」は、完全に重なり合う場合、および、若干ずれているが実質的に重なり合っている場合の両方を含む。他の状態について「ほぼ」または「実質的に」と表す場合も、同様である。

【0020】
前述のように、大サイズのIII族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させると、成長させたIII族窒化物結晶が、前記種結晶の結晶欠陥を受け継いでしまう。本発明者らは、この問題を解決するために、小さなIII族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させて大きくすることを見出した。このように、小さなIII族窒化物種結晶を用いることで、成長するIII族窒化物結晶の欠陥を少なくできる。その理由は必ずしも明らかでないが、大きいIII族窒化物種結晶を用いる場合と比較して、成長するIII族窒化物結晶が、前記種結晶の結晶欠陥を受け継ぎにくいためと考えられる。

【0021】
しかし、小さなIII族窒化物種結晶を用いた場合、成長させて得られるIII族窒化物結晶の大きさに限界がある。そこで、大きい結晶を得るために、複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶を、それらの成長により結合させることが考えられる。ところが、本発明者らによる検討の結果、前記複数の結晶が成長により結合する過程で、それらの結合部に欠陥が生じるおそれがあることが分かった。本発明者らは、この問題を解決するために、さらに検討を重ねた。その結果、六方晶である種結晶から成長した結晶のm面どうしを実質的に接合させないこと、すなわち、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することを見出した。これにより、前記2つの種結晶の結合部における欠陥を防止または低減することができる。また、本発明者らは、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)ように前記種結晶を配置すると、さらに欠陥が少なく高品質な結晶を製造できることをも見出した。

【0022】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法により製造されるIII族窒化物結晶(本発明のIII族窒化物結晶)において、転位密度は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-2以下、より好ましくは1.0×10cm-2以下、さらに好ましくは1.0×10cm-2以下である。前記転位密度は、理想的には0であるが、通常、0であることはあり得ないので、例えば、0を超える値であり、測定機器の測定限界値以下であることが特に好ましい。なお、前記転位密度の値は、例えば、結晶全体の平均値であっても良いが、結晶中の最大値が前記値以下であれば、より好ましい。また、本発明のIII族窒化物結晶において、XRCによる半値幅の、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅は、それぞれ、例えば100秒以下、好ましくは30秒以下であり、理想的には0である。

【0023】
なお、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、製造したIII族窒化物結晶をさらに成長させる結晶再成長工程をさらに含んでいても良い。前記結晶再成長工程は、具体的には、例えば、製造したIII族窒化物結晶をカットして任意の面(例えば、c面、m面、a面、またはその他の非極性面)を露出させ、その面を結晶成長面として前記III族窒化物結晶をさらに成長させても良い。これにより、前記任意の面を大面積で有し、かつ厚みが大きいIII族窒化物結晶を製造することも可能である。

【0024】
<2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等>
前述のとおり、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置する。また、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することが好ましい。以下、図37~42を用いて、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない配置、および、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合う配置について説明する。ただし、これらの図は例示であって、本発明を限定しない。なお、以下において、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件を「条件(M)」ということがあり、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件を「条件(A)」ということがあり、互いに隣接する2つの種結晶のc軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件を「条件(C)」ということがある。

【0025】
まず、図37(a)~(e)を例に用いて、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件(条件(A))、および、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件(条件(M))について説明する。なお、本発明において、前記種結晶の結晶成長面は、特に限定されないが、例えば、c面、m面、a面またはその他の任意の面でも良く、非極性面であることが好ましく、c面またはm面がより好ましい。図37(a)~(e)は、c面を有する種結晶(c面種結晶)の前記c面を結晶成長面として選択し、前記c面から結晶が成長する場合を示す。

【0026】
図37(a)~(e)は、それぞれ、互いに隣接する2つの種結晶の配置を例示する平面図である。前記各図において、c面(結晶成長面)は、紙面と平行である。また、前記各図には、説明の便宜のために、ドット状の2つの種結晶から2つの六角形の結晶が生成した場合の、前記結晶を示す。これらの結晶における3本のa軸は、前記六角形の中心を通る3本の対角線と重なるとともに、これらの結晶の生成由来である種結晶のa軸と一致する。

【0027】
まず、前記条件(A)について説明する。図37(a)に、前記条件(A)を満たす配置の一例として、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしが完全に重なり合う状態を示す。本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、互いに隣接する2つの種結晶が、このような配置となることが理想的である。ただし、前記条件(A)を満たすためには、互いに隣接する種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合えば良い。前記条件(A)において、前記a軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)状態は、図37(a)のように完全に重なり合う状態も含むが、これのみに限定されず、例えば、前記a軸どうしが若干ずれた状態も含む。具体的には、例えば、図37(b)のように、一方の種結晶のa軸が、他方の種結晶のa軸から若干傾いた状態であっても良い。また、図37(a)および(b)のように、2つの種結晶のa軸どうしが重なる、または交わる配置に限定されず、図37(e)のように、2つの種結晶のa軸どうしが平行であって、若干ずれた状態でも良い。

【0028】
前記条件(A)において、前記a軸どうしのなす角は、30度(°、degree)未満であり、なるべく小さいことが好ましい。前記a軸どうしのなす角は、好ましくは、5度以下、より好ましくは1度以下、さらに好ましくは0.1度以下、さらに好ましくは0.02度以下であり、特に好ましくは、0度である。なお、図37(a)のように、前記a軸どうしが完全に重なり合う場合、および、図37(e)のように、前記a軸どうしが平行である場合は、前記a軸どうしのなす角は、0度である。ただし、前記a軸どうしのなす角は、通常、完全に0度となることはなく、若干の方位ズレが生じる。

【0029】
なお、前記2つの種結晶は、六方晶であるため、各3本ずつa軸を有する。本発明の前記条件(A)を満たすか否かの判断において、前記a軸およびそれらのなす角は、下記(1)~(3)により定義するものとする。

(1) 隣接する2つの種結晶のそれぞれにおいて、3本のa軸の中から任意の1本を選択する。この選択によるa軸の組み合わせは、3×3=9通り存在する。
(2) 前記(1)で選択した2本のa軸のなす角をとる。
(3) 前記(1)の9通りの組み合わせのうち、前記(2)におけるなす角が最小になるa軸の組み合わせを、前記a軸とし、その組み合わせにおけるa軸どうしのなす角(前記(2))を、a軸どうしのなす角とする。

【0030】
また、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしの距離が離れ過ぎていると、前記a軸どうしが実質的に重なり合わないため、前記条件(A)を満たさない。前記a軸どうしが平行である場合の距離は、例えば、図37(c)および(e)において、符号dで示す長さである。前記a軸どうしが平行でない場合の前記a軸どうしの距離は、一方のa軸から他方のa軸に下ろした垂線が、前記2つの種結晶のいずれかと少なくとも一点で重なる場合において、最長である垂線の長さ(例えば、図示の六角形が種結晶であると仮定した場合の、図37(b)または(d)の符号dで示す長さ)とする。前記条件(A)において、前記a軸どうしの距離は、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下、理想的には0である。なお、前記a軸どうしの距離が0である場合とは、前記a軸どうしが完全に重なり合う場合(例えば、図37(a))をいう。

【0031】
図37(c)および(d)に、前記条件(A)を満たさない場合の例を示す。図37(c)は、隣接する2つの種結晶のa軸どうしが平行であるが、前記a軸どうしの距離dがきわめて大きいために、前記a軸どうしが実質的に重ならない。なお、図37(c)は、前記2つの種結晶のm軸どうしが重なっており、このために、前記2つの種結晶から生成した結晶のm面(図示の六角形における各辺)どうしが対向している。隣接する2つの種結晶どうしがこのように配置されていると、例えば、後述の比較例に示すように、前記2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが対向した(重なり合った)状態で会合(結合)する。すなわち、互いに隣接する前記2つの種結晶から成長した各結晶のm面どうしが重なり合うため、前記条件(M)を満たさない。このような場合、会合(結合)面に結晶欠陥が生じるため、高品質なIII族窒化物結晶が得られず、本発明の目的を達成できない。すなわち、本発明では、互いに隣接する2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが、実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)ことが必要である。なお、図37(e)では、図示のように、a軸どうしの距離dが小さいために、図の2つの結晶が成長した場合に、m面どうしが対向する(重なり合う)部分が少ない。m面どうしが対向する(重なり合う)部分がきわめて少なければ、m面どうしが実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)といえる。本発明では、例えば、前記条件(A)を満たすことにより、互いに隣接する2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが、実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)という条件を満たすことができる。なお、例えば、図37(a)のように、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしが完全に重なり合うと、これらの種結晶から成長した結晶どうしが会合(結合)するとき、後述するように、m面どうしが対向した(重なり合った)状態で会合(結合)することがない。

【0032】
また、図37(d)は、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしのなす角が30度であり、前記条件(A)を満たさない。前記a軸どうしのなす角は、なるべく小さいことが好ましく、具体的には、前述のとおりである。

【0033】
なお、図37(c)および(d)は、いずれも、左側の種結晶の中心が、右側の種結晶のm軸と重なっている。本発明において、種結晶がドット形状の場合、一方の種結晶の中心が、他方の種結晶のm軸と重なった状態(例えば、図37(c)および(d))でないことが好ましい。

【0034】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法において、前記種結晶の形状は、特に限定されないが、例えば、ドット形状が好ましい。前記ドット形状は、特に限定されないが、例えば、円、正多角形、またはそれに近い形状である。前記正多角形としては、例えば、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形等が挙げられる。これらの中で、円または正六角形が、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさ(等方性等)の観点から、特に好ましい。前記ドット形状の種結晶の大きさは、特に限定されないが、欠陥が少なく高品質のIII族窒化物結晶を製造する観点からは、なるべく小さいことが好ましい。ただし、III族窒化物結晶の製造効率(成長効率)の観点からは、前記ドット形状の種結晶の大きさは、小さすぎないことが好ましい。前記ドット形状の種結晶は、その結晶成長面(例えば、c面種結晶においてはc面)における直径が、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1mm以下である。前記直径の下限値は、例えば0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上である。なお、本発明において、前記種結晶または前記III族窒化物結晶の形状が円形(真円)以外である場合、その「直径」は、「長径(最も長い径)」を表すものとする。

【0035】
また、前記種結晶の形状は、ドット形状のみに限定されず、例えば、矩形、楕円形、ストライプ形状、もしくはそれらに近い形状、またはその他の任意の形状であっても良い。ただし、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさ(等方性等)の観点からは、ドット形状の方が好ましい。前記矩形、楕円形、ストライプ形状等の種結晶の大きさは特に限定されないが、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさの観点から、その幅が、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1mm以下である。前記幅の下限値は、III族窒化物結晶の製造効率(成長効率)の観点から、例えば0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上である。

【0036】
図38(a)および(b)に、c面を有する種結晶(c面種結晶)における複数の種結晶の配置の他の例を示す。これらの図において、c面(結晶成長面)は、紙面と平行である。図38(a)は、矩形、楕円形等の種結晶から成長した細長い六角形の結晶どうしが隣接する例である。このような場合も、図37(a)~(e)における説明と同様に、互いに隣接する種結晶のa軸どうしのなす角、および距離を考慮して、前記条件(A)に適合するか否かを判断すれば良い。なお、図38(a)は、前記a軸どうしが完全に重なり合い、成長した結晶どうしの六角形の頂点どうしが会合(結合)する例である。また、図38(b)は、ストライプ状の種結晶の長辺が、そのa軸と、ほぼ(または完全に)垂直である例である。このような場合、前記種結晶の方向とほぼ(または完全に)垂直方向の任意の位置にa軸があると考えることができるから、互いに隣接する種結晶のa軸どうしの距離は考慮せず、なす角のみを考慮して、前記条件(A)に適合するか否かを判断すれば良い。

【0037】
また、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法において、互いに隣接する種結晶間の距離は、特に限定されないが、欠陥が少なく高品質な結晶を得る観点から、前記距離が小さすぎないことが好ましい。各結晶を十分に成長させてから結合させた方が、前記種結晶の欠陥を受け継ぎにくく、欠陥が少ない高品質な結晶が得られやすいためである。一方、III族窒化物結晶の製造効率の観点からは、互いに隣接する種結晶間の距離が大き過ぎないことが好ましい。前記互いに隣接する種結晶間の距離の上限値は、例えば50mm以下、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。前記互いに隣接する種結晶間の距離の下限値は、例えば0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1mm以上である。

【0038】
なお、図37および38は、c面を有する種結晶(c面種結晶)の前記c面から結晶が成長した場合について説明した。結晶成長面が、c面以外の任意の面(例えばm面等)である場合は、前記種結晶の大きさ、距離等の数値範囲は、特に限定されないが、例えば、結晶成長面がc面である場合と同じである。

【0039】
つぎに、前記条件(M)、すなわち、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。

【0040】
まず、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしがほぼ平行である(すなわち、前記m軸どうしのなす角がほぼ0度である)場合、前記条件(M)は、例えば、前記両種結晶のm軸が、互いに他の種結晶の内部を通らない条件でも良い。この条件を満たす例として、図37(a)、図37(e)等が挙げられる。なお、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしが重なる場合(この場合、前記m軸どうしのなす角は0度である)は、図37(c)に例示したように、必ず、前記両種結晶のm軸が、互いに他の種結晶の内部を通ることになる。図37(c)では、前述のとおり、互いに隣接する前記2つの種結晶から成長した各結晶のm面どうしが重なり合うため、前記条件(M)を満たさない。

【0041】
また、前記条件(M)は、m軸が隣接する他の種結晶の内部を通るか通らないかにかかわらず、前記条件(A)を満たす条件でも良い。図37(а)、(b)、(e)および図38(a)、(b)で説明したように、前記条件(A)を満たせば、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないためである。また、後述の図39および40に例示するように、前記条件(C)(隣接する種結晶のc軸どうしがほぼ重なり合う)を満たす場合も、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない。したがって、前記条件(M)は、m軸が隣接する他の種結晶の内部を通るか通らないかにかかわらず、前記条件(C)を満たす条件でも良い。

【0042】
m軸どうしがほぼ平行であるという場合、前記m軸どうしのなす角は、例えば1度以下、好ましくは0.1度以下、特に好ましくは0.02度以下、理想的には0度である。また、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしが平行ではない場合、例えば図37(d)のように、前記各種結晶から成長した各結晶のm面(同図における六角形の各辺)どうしが重なり合わないことが明らかであり、前記条件(M)を満たす。この場合において、前記m軸どうしのなす角は、例えば5度以上、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは20度以上、特に好ましくは25度以上である。なお、本発明において、前記種結晶は、六方晶であるため、各3本ずつm軸を有する。本発明において、互いに隣接する種結晶のm軸どうしのなす角を定義する場合は、a軸をm軸に変える以外は前記条件(A)の前記(1)~(3)と同様の手順で定義するものとする。

【0043】
なお、図37および図38の例は、c面が紙面と平行(すなわち、結晶のc軸が紙面に垂直)であるため、互いに隣接する種結晶どうしが前記条件(C)(すなわち、c軸どうしがほぼ重なる)を満たすことはない。しかし、前記条件(M)を満たすことにより、また、好ましくは、さらに前記条件(A)を満たすことにより、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。

【0044】
つぎに、m面種結晶およびa面種結晶における複数の種結晶の配置の例について説明する。

【0045】
図39(a)~(c)に、m面種結晶における複数の種結晶の配置の例を示す。図39(a)および(b)において、m面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、図39(c)は、図39(b)を紙面下方から見た図であり、図39(c)においては、c面が紙面に平行である。

【0046】
図39(a)は、方形の種結晶を4つ、2列×2行で配置した例を模式的に示す図である。図示のとおり、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、互いのc軸どうしが重なり合っており、前記条件(C)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。また、紙面左右方向に隣接する種結晶どうしは、互いのa軸どうしが重なり合っており、前記条件(A)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。

【0047】
なお、本発明の前記条件(A)において、互いに隣接する種結晶のa軸どうしのなす角および距離は、前記種結晶の結晶成長面がc面以外の任意の面(例えばm面)である場合も、前記c面種結晶(結晶成長面がc面)の場合と同様で良い。また、本発明の前記条件(C)において、互いに隣接する種結晶のc軸どうしのなす角および距離は、前記a軸を前記c軸に変える以外は、前記条件(A)の場合と同様で良く、結晶成長面がm面以外の任意の面(例えばa面)である場合も同様で良い。

【0048】
また、図39(a)の各種結晶は六方晶であるから、これらから成長する各結晶の結晶形を模式的に示すと、図39(b)のようになる。ただし、図39(b)は例示であり、本発明を限定しない。図39(b)に示すように、各結晶において、a軸は、紙面左右方向において、各結晶と交わる任意の位置にあるとみなすことができる。図39(a)の種結晶においても同様である。

【0049】
また、図39(c)に示すように、これらの種結晶およびそれらから成長する結晶において、m面は、結晶成長面と平行であるから、m面どうしが互いに重なり合うことはない。なお、同図において、直線Xは、種結晶の結晶成長面に平行な面を表す。

【0050】
つぎに、図40(a)~(c)に、a面種結晶における複数の種結晶の配置の例を示す。図40(a)および(b)において、a面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、図40(c)は、図40(b)を紙面下方から見た図であり、図40(c)においては、c面が紙面に平行である。

【0051】
図40(a)は、方形の種結晶を4つ、2列×2行で配置した例を模式的に示す図である。図示のとおり、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、互いのc軸どうしが重なり合っており、前記条件(C)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。一方、紙面左右方向に隣接する種結晶どうしは、互いのm軸どうしが重なり合っており、前記条件(M)を満たさないとともに、前記条件(A)および(C)も満たさない。

【0052】
図40(a)の各種結晶は六方晶であるから、これらから成長する各結晶の結晶形を模式的に示すと、図40(b)のようになる。ただし、図40(b)は例示であり、本発明を限定しない。また、図40(b)においては、各結晶の上部を、結晶成長面に平行な面でカットしてa面を出している。これを紙面下方から見ると、図40(c)に示す通り、左右に隣接する種結晶のm面どうしが対向しており、前記条件(M)を満たさないことが分かる。なお、同図において、直線Xは、種結晶の結晶成長面に平行な面を表す。

【0053】
本発明において、互いに隣接する種結晶の全てが本発明の条件を満たすことが好ましいが、一部のみが本発明の条件を満たしていても良い。例えば、図40(a)または(b)のように、紙面左右方向に隣接する種結晶が本発明の前記条件(M)を満たさず、紙面上下方向に隣接する種結晶のみが本発明の前記条件(M)を満たしていても良い。図40(a)または(b)の場合、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、前記条件(M)および前記条件(C)を満たすため、結晶結合部(会合部)における欠陥の発生を防止または軽減することが可能である。

【0054】
なお、a面種結晶の場合、成長した結晶のm面どうしが対向しない(重なり合わない)ようにするには、例えば、m軸(図40(a)および(b)では、紙面左右方向)に平行なストライプ状の種結晶を複数、互いのc軸どうしがほぼ重なり合うように平行に配置すれば良い。この場合、ストライプの長手方向と垂直な任意の位置にc軸があるとみなすことができる。

【0055】
また、本発明において、結晶成長面は、c面、m面、a面のみに限定されず、それらに対し傾斜した任意の面であっても良い。図41(a)および(b)に、それぞれ一例を示す。前記両図において、直線Xは、結晶成長面に平行な面を表す。図41(a)は、a軸が、結晶成長面に対し若干傾斜しており、図41(b)は、c軸が、結晶成長面に対し若干傾斜している。

【0056】
また、図42(a)~(c)に、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、m軸どうしまたはc軸どうしが互いに傾斜している例を示す。図42(a)は、m面種結晶において、互いに隣接する種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしが互いに傾斜している状態を示し、m面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、図42(b)および(c)は、互いに隣接する種結晶の結晶成長面が、互いに異なる面である例を模式的に示す図である。これらの図において、直線Xは、それぞれ、結晶成長面に平行な面を表す。図42(b)において、結晶成長面は、左側の種結晶のa軸に平行であるとともに、右側の種結晶のm軸に平行である。図42(c)において、結晶成長面は、左側の結晶のc軸に平行であるとともに、右側の結晶のc軸に対し傾斜している。

【0057】
本発明において、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、c軸どうしおよびm軸どうしは、互いに傾斜している場合(図37(d)、図42(a)~(c)等)よりも、全ての軸がほぼ同じ方向に揃っている場合(すなわち平行である場合、図37(a)、図39(a)~(c)、図40(a)~(c)等)が好ましい。前記「ほぼ同じ方向に揃っている(平行である)」は、a軸どうし、c軸どうしまたはm軸どうしのなす角が、例えば5度以下、好ましくは1度以下、より好ましくは0.03度以下、特に好ましくは0.005度以下、理想的には0度であることをいう。ただし、前記全ての軸がほぼ同じ方向に揃っていても、例えば、図37(c)のように本発明の前記条件(M)を満たさない場合は、本発明の条件を満たさない。すなわち、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法は、前記条件(M)を満たし、さらに、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、c軸どうしおよびm軸どうしが、全て、ほぼ同じ方向に揃っていることが好ましい。

【0058】
なお、前記条件(A)に関し、図37(a)、(b)、(e)および図38(a)、(b)を、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法の前記条件(A)に適合する例として説明し、図37(c)および(d)を、前記条件(A)に適合しない例として説明した。しかし、これらの図は、説明の便宜のための模式図に過ぎないため、本発明の前記条件(A)におけるa軸どうしのなす角および距離等は、これらの図示により何ら限定されるものではない。前記条件(M)および前記条件(C)においても同様に、図示によって何ら限定されるものではない。

【0059】
<3.III族窒化物結晶の組成等>
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法において、前記予め準備されたIII族窒化物(種結晶)は、六方晶であること以外は特に限定されないが、例えば、AlGaIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物である。前記予め準備されたIII族窒化物(種結晶)は、例えば、前記組成で表されるAlGaN、InGaN、InAlGaN、GaN等が挙げられ、GaNが特に好ましい。

【0060】
前記結晶成長工程において、前記窒素と反応させる前記III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つであり、Gaであることが特に好ましい。

【0061】
前記結晶成長工程において生成し成長する前記III族窒化物結晶は、特に限定されないが、例えば、AlGaIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物結晶であり、例えば、前記組成で表されるAlGaN、InGaN、InAlGaN、GaN等が挙げられ、GaNが特に好ましい。前記結晶成長工程において生成し成長する前記III族窒化物結晶の組成は、前記種結晶と同じでも異なっていても良いが、同じであることが、欠陥が少ない高品質なIII族窒化物結晶を得る観点から好ましい。

【0062】
本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法としては、より具体的には、例えば、下記第1の製造方法および第2の製造方法が挙げられる。

【0063】
<4.第1の製造方法>
本発明の第1の製造方法は、本発明による前記III族窒化物結晶の製造方法であって、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、III族窒化物結晶層であり、前記III族窒化物結晶層上に、複数の貫通孔を有するマスクが配置され、
前記貫通孔から露出した前記III族窒化物結晶層の面を、前記種結晶として選択する。

【0064】
なお、前述のとおり、本発明の製造方法において、結晶成長面は、特に限定されない。本発明の第1の製造方法において、例えば、前記III族窒化物結晶層が、c面を有するIII族窒化物結晶層であり、前記c面上に前記マスクが配置され、前記貫通孔から露出した前記c面を、前記種結晶(前記種結晶の結晶成長面)として選択しても良い。または、前記III族窒化物結晶層が、m面を有するIII族窒化物結晶層であり、前記m面上に前記マスクが配置され、前記貫通孔から露出した前記m面を、前記種結晶(前記種結晶の結晶成長面)として選択しても良い。以下、主に、前記結晶成長面がc面である場合について説明するが、結晶成長面をm面等の他の面に代える以外は同様にしても良い。

【0065】
図1(a)~(f)の工程断面図に、本発明の第1の製造方法によるIII族窒化物結晶の製造工程を模式的に例示する。すなわち、まず、図1(a)に示すように、六方晶であるIII族窒化物結晶層11のc面上に、複数の貫通孔12aを有するマスク12を配置する。この貫通孔12aから露出したIII族窒化物結晶層11のc面が、種結晶となる。すなわち、この、マスク12を配置する工程が、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶を選択する種結晶選択工程であるということができる。III族窒化物結晶層11は、特に限定されず、例えば、III族窒化物結晶基板等でも良いが、コストおよび簡便性の観点から、別の基板(図示せず)上に形成されたIII族窒化物結晶が好ましい。一方、III族窒化物結晶層11は、さらに欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造する観点からは、高品質なIII族窒化物基板であることが好ましい。前記III族窒化物基板は、例えば、他の基板上に形成されていない独立の基板(自立基板)であっても良い。ただし、本発明によれば、別の基板上に形成されたIII族窒化物結晶を用いても、前述のように、欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することができる。III族窒化物結晶層11の厚みも特に限定されないが、例えば1~100μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μmである。前記別の基板は、特に限定されないが、例えば、サファイア基板、炭化珪素基板等が挙げられる。マスク12は、III族窒化物結晶層11のc面上に、堆積、塗布等により形成しても良いが、あらかじめ複数の貫通孔12aを有するマスク12を準備し、単にIII族窒化物結晶層11の上に置くことが簡便で好ましい。また、マスク12は、マスク12の再利用が容易である等の理由により、III族窒化物結晶層11に密着していないことが好ましい。マスク12の材質も特に限定されないが、アルカリ金属融液と反応しにくい材質が好ましく、例えば、炭素系材料、酸化物等が挙げられる。前記マスクは、例えば、AlGa1-xN(0<x≦1)、AlGa1-xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいても良い。なお、本発明において、マスク12は、コスト、簡便性等の観点から、サファイアマスクが特に好ましい。また、マスク12の厚みも特に限定されないが、例えば0.0005~2mm、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.05~0.5mmである。

【0066】
つぎに、貫通孔12aから露出したIII族窒化物結晶層11のc面(種結晶)を、アルカリ金属融液に接触させる(接触工程)。さらに、窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる(結晶成長工程)。この結晶成長工程を、図1(b)~(e)に示す。図1(b)および(c)に示すように、種結晶表面からIII族窒化物結晶13が生成し成長する。そのIII族窒化物結晶13が、図1(d)および(e)に示すように、さらに成長させて結合させることにより、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することができる。このIII族窒化物結晶は、例えば、c面と平行な面(図1(e)に、点線14として示す)で切断し、図1(f)のようにして用いても良い。図1(f)には、切断後のIII族窒化物結晶の下部を示しているが、上部も用いることができる。このようにカット(ダイシングともいうことがある。)することで、例えば、半導体装置用の半導体基板等として用いやすくなる。また、例えば、図1(f)のIII族窒化物結晶の切断面(c面)を結晶成長面としてさらに成長させ、厚型化しても良い。この工程は、前述の「結晶再成長工程」に該当する。

【0067】
図2(a)~(f)の平面図に、図1(a)~(f)の工程を上方から見た図を示す。図2(a)~(f)において、図1(a)~(f)と同じ部分は、同じ符号で示している。図示のとおり、貫通孔12aは、ドット状であり、種結晶から生成するIII族窒化物結晶は、正六角形である。それが、成長により、結合し、図2(d)および(e)に示すように結合する。図2(a)に示すように、ドット(種結晶)12aが一直線上に3つ並んでいるため、3つの結晶の結合後は、図2(e)のように細長い六角形の結晶になる。

【0068】
なお、貫通孔12aのドットの大きさ(すなわち、種結晶であるドットの大きさ)、互いに隣接する種結晶のa軸どうしの配置関係、および前記ドット間の距離等については、前記「2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」に記載のとおりである。III族窒化物結晶層11のa軸の方向は、例えば、XRD(X線回折法)により確認することができるので、それに基づき、貫通孔12aの配置を決定することができる。図1および2の場合、貫通孔12aから露出した複数の種結晶は、一体であるIII族窒化物結晶層11の複数の部分である。したがって、例えば、貫通孔12aを、III族窒化物結晶層11のa軸方向に沿って並ぶように配置すれば良い。

【0069】
貫通孔12aの配置は、図1および2の配置に限定されない。例えば、図3(a)~(f)の工程平面図に示すように、3つのドットを正三角形の各頂点上に配置しても良いし、そのパターンを繰り返すことで、図4(a)~(e)に示すように、さらに多数のドットを配置しても良い。このようにドット数を増やすことで、さらに大きなIII族窒化物結晶を製造することができる。なお、図3および4において、図1および2と同様の構成要素は、同じ符号で示している。

【0070】
なお、図6のように、III族窒化物結晶13のm面(正六角形の辺)どうしが対向する(重なり合う)配置は、結晶成長によりm面どうしが会合(結合)するときに会合部に欠陥を生じるため好ましくない。これについては、前記「2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」にも記載したとおりである。

【0071】
本発明の製造方法においては、前述のとおり、複数の小さなIII族窒化物種結晶を用いることで、欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。本発明の第1の製造方法においては、前記マスクを用いることで、さらに欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することも可能である。この理由は明らかではないが、例えば、結晶が成長過程で貫通孔から出て横に広がるときに、結晶の転位等の欠陥が横に広がり、上に広がらないためと考えられる。図46に、その一例を示す。同図において、201は、III族窒化物(例えばGaN)結晶層である。202は、III族窒化物結晶層201上に形成したマスク(例えば、サファイアマスク)である。図示のとおり、マスク202に形成された小さな貫通孔から、III族窒化物結晶201の表面の一部が露出しており、この露出した小さな部分を種結晶として、III族窒化物結晶203が成長する。このようにすると、結晶欠陥204が横方向に広がるため、成長したIII族窒化物結晶203の上部では、前記結晶欠陥が生じにくいと考えられる。ただし、図46は、推測可能なメカニズムの一例を模式的に示すに過ぎず、本発明は、同図およびその説明により、何ら限定されない。

【0072】
なお、従来のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、例えば、基板と結晶との熱膨張係数が相違する場合等に、前記結晶の製造中または使用中に、基板の反りにより、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがあった。図8(a)の断面図に、その例を模式的に示す。図示のとおり、サファイア基板1002上にGaN結晶1003が形成されている。両者の熱膨張係数の相違により、GaN結晶1003が、サファイア基板1002とともに反っている。これにより、GaN結晶1003に歪みが生じ、場合によっては、割れが生じる恐れがある。しかし、本発明の第1の製造方法によれば、このような問題を防止または軽減できると考えられる。

【0073】
すなわち、本発明の第1の製造方法によれば、製造されるIII族窒化物結晶と、前記III族窒化物結晶層(種結晶)とが、前記貫通孔以外の点において、直接接触せず、前記マスクにより隔てられている。このため、前記マスクの下の前記III族窒化物結晶層(種結晶)またはその下に存在する前記別の基板等に反りが生じても、前記マスク上に形成したIII族窒化物結晶に、反り、歪み、割れ等が生じる恐れが少ない。また、本発明の第1の製造方法によれば、前記マスク上に前記種結晶を形成しないため、前記種結晶から成長する前記III族窒化物結晶と、前記マスクとが、直接接触していない。このため、前記マスクと前記III族窒化物結晶との熱膨張係数が異なる場合(例えば、前記マスクがサファイアで、前記III族窒化物結晶がGaN)であっても、前記マスクの反りにより、前記III族窒化物結晶に反り、歪み、割れ等が生じる恐れが少ない。

【0074】
<5.第2の製造方法>
つぎに、本発明の第2の製造方法は、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法であって、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶であり、
前記複数のIII族窒化物結晶を、前記種結晶として選択する。

【0075】
なお、本発明の第2の製造方法において、結晶成長面は、前記第1の製造方法と同様、特に限定されない。

【0076】
図5(a)~(g)の工程断面図に、本発明の第2の製造方法の一例を示す。まず、図5(a)に示すとおり、基板52の上に、種結晶となるIII族窒化物結晶層53を形成する。この方法は特に限定されないが、例えば、MOCVD等の気相成長法であっても良い。III族窒化物結晶層53の厚みも特に限定されないが、例えば1~100μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μmである。基板52の材質も特に限定されないが、例えば、AlGa1-xN(0<x≦1)、AlGa1-xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいても良い。基板52は、コスト、簡便性等の観点から、サファイア基板が特に好ましい。

【0077】
つぎに、図5(b)に示すとおり、基板52の上部の一部およびその上のIII族窒化物結晶層53を、エッチング等により除去し、基板52の複数の凸部52aと、その上に配置された複数のIII族窒化物結晶層(種結晶)53を残す。この種結晶を、図5(c)~(f)のように、成長させて結合させる。この結晶は、例えば、図5(g)に示すように、c面と平行な面(図5(f)中に、点線(切断面)54で示す)でカットして用いても良い。また、例えば、図5(g)のIII族窒化物結晶の切断面(c面)54を結晶成長面としてさらに成長させ、厚型化しても良い。この工程は、前述の「結晶再成長工程」に該当する。

【0078】
種結晶53の形状、大きさ、配置、間隔(隣接する種結晶どうしの距離)等は、例えば、本発明の前記第1の製造方法における種結晶と同様でも良い。例えば、図2~4において、マスク12を基板52に代え、貫通孔12aを凸部52aに代え、III族窒化物結晶(種結晶)13を結晶53に代えて、本発明の第2の製造方法を模式的に表すこともできる。なお、図5では、複数の種結晶53を、基板の複数の凸部52a上に配置しているが、本発明の第2の製造方法は、これに限定されない。例えば、凹凸がない平坦な基板上に前記複数の種結晶を配置しても良いし、前記複数の種結晶を配置している部分が、凸部に代えて凹部であっても良い。なお、例えば、図5のように、基板の凸部上に前記複数の種結晶を形成することで、製造される結晶が、前記凸部以外の部分で前記基板と直接接触しにくいと考えられる。これにより、例えば、前述の、基板と結晶との熱膨張係数の相違による結晶の反り、歪み、割れ等を軽減または防止することも可能である。

【0079】
本発明の第2の製造方法は、マスクおよび貫通孔を用いず、基板上に直接種結晶を配置することで、結晶の成長(育成)効率がより優れていると考えられる。一方、本発明の第1の製造方法は、マスクおよび貫通孔を用いることで、例えば前述のように、成長させた結晶中に転位が広がりにくいという効果が高まり、さらに欠陥が少なく高品質のIII族窒化物結晶を得ることができると考えられる。例えば、目的に応じて、本発明の第1または第2の製造方法を使い分けても良い。

【0080】
<6.接触工程、結晶成長工程およびそれらに用いる装置等>
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、前述のとおり、予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる結晶成長工程とを含む、III族窒化物結晶の製造方法であって、前記種結晶が、六方晶であり、前記種結晶選択工程において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置し、前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、前記複数の種結晶から成長した複数の前記III族窒化物結晶を結合させることを特徴とする。具体的には、例えば前記「1.本発明の製造方法」から「5.第2の製造方法」において説明したとおりである。これら以外は、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、特に限定されず、例えば、アルカリ金属融液を用いた一般的な液相成長法(LPE)によるIII族窒化物結晶の製造方法と同様に行っても良い。以下、その例について説明する。

【0081】
例えば、LEDやパワーデバイスの半導体基板に使用される、窒化ガリウム(GaN)の製造方法の1つに、ナトリウムフラックス法(Naフラックス法)がある。この方法は、例えば、まず、坩堝内に、種結晶(例えば、サファイア基板上に形成されたGaN薄膜)をセットする。また、前記坩堝内に、前記種結晶とともに、ナトリウム(Na)とガリウム(Ga)を適宜な割合で収納しておく。つぎに、前記坩堝内のナトリウムおよびガリウムを、高温(例えば、800~1000℃)、高圧(例えば、数十気圧)の環境下で、溶融させ、その融液内に窒素ガス(N)を溶け込ませる。これにより、前記坩堝内のGaN種結晶を成長させ、目的のGaN結晶を製造することができる。

【0082】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、例えば、前記坩堝内にセットする前記種結晶を、前記種結晶選択工程にしたがって、例えば、前記「1.本発明の製造方法」から「5.第2の製造方法」において説明したように準備すれば良い。その後の工程は、例えば、前記一般的なナトリウムフラックス法と同様の方法で、または適宜変更を加えて行っても良い。例えば、Gaは、他の任意のIII族元素にしても良い。より具体的には、例えば、前記「3.III族窒化物結晶の組成等」に記載のとおりである。

【0083】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法において、前記結晶成長工程は、前述のとおり、窒素を含む雰囲気下で行う。前記「窒素を含む雰囲気下」において、窒素の形態は、特に制限されず、例えば、ガス、窒素分子、窒素化合物等が挙げられる。前記「窒素を含む雰囲気下」は、窒素含有ガス雰囲気下であることが好ましい。前記窒素含有ガスが、前記フラックスに溶けてIII族窒化物結晶の育成原料となるからである。前記窒素含有ガスは、前述の窒素ガス(N)に加え、またはこれに代えて、アンモニアガス(NH)等の他の窒素含有ガスを用いても良い。窒素ガスおよびアンモニアガスの混合ガスを用いる場合、混合率は任意である。特に、アンモニアガスを使用すると、反応圧力を低減できるので、好ましい。

【0084】
前記アルカリ金属融液(フラックス)は、ナトリウムに加え、またはこれに代えて、リチウム等の他のアルカリ金属を用いても良い。より具体的には、前記アルカリ金属融液は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)およびフランシウム(Fr)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、例えば、NaとLiとの混合フラックス等であっても良い。前記アルカリ金属融液は、ナトリウム融液であることが特に好ましい。また、前記アルカリ金属融液は、アルカリ金属以外の成分を1種類または複数種類含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記アルカリ金属以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ土類金属が挙げられ、前記アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)があり、この中で、CaおよびMgが好ましく、より好ましくはCaである。また、前記アルカリ金属以外の成分としては、例えば、炭素(炭素単体または炭素化合物)を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。好ましいのは、前記融液において、シアン(CN)を発生する炭素単体および炭素化合物である。また、炭素は、気体状の有機物であってもよい。このような炭素単体および炭素化合物としては、例えば、シアン化物、グラファイト、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン等があげられる。前記炭素の含有量は、特に限定されないが、前記融液、前記III族元素および前記炭素の合計を基準として、例えば、0.01~20原子(at.)%の範囲、0.05~15原子(at.)%の範囲、0.1~10原子(at.)%の範囲、0.1~5原子(at.)%の範囲、0.25~7.5原子(at.)%の範囲、0.25~5原子(at.)%の範囲、0.5~5原子(at.)%の範囲、0.5~2.5原子(at.)%の範囲、0.5~2原子(at.)%の範囲、0.5~1原子(at.)%の範囲、1~5原子(at.)%の範囲、または1~2原子(at.)%の範囲である。この中でも、0.5~5原子(at.)%の範囲、0.5~2.5原子(at.)%の範囲、0.5~2原子(at.)%の範囲、0.5~1原子(at.)%の範囲、1~5原子(at.)%の範囲、または1~2原子(at.)%の範囲が好ましい。

【0085】
III族元素に対するアルカリ金属の添加割合は、例えば、0.1~99.9mol%、好ましくは1~99mol%、より好ましくは5~98mol%である。また、アルカリ金属とアルカリ土類金属の混合フラックスを使用する場合のモル比は、例えば、アルカリ金属:アルカリ土類金属=99.99~0.01:0.01~99.99、好ましくは99.9~0.05:0.1~99.95、より好ましくは99.5~1:0.5~99である。前記融液の純度は、高いことが好ましい。例えば、Naの純度は、99.95%以上の純度であることが好ましい。高純度のフラックス成分(例えば、Na)は、高純度の市販品を用いてもよいし、市販品を購入後、蒸留等の方法により純度を上げたものを使用してもよい。

【0086】
III族元素と窒素含有ガスとの反応温度および圧力も、前記の数値に限定されず、適宜設定して良い。適切な反応温度および圧力は、融液(フラックス)の成分、雰囲気ガス成分およびその圧力によって変化するが、例えば、温度100~1500℃、圧力100Pa~20MPaであり、好ましくは、温度300~1200℃、圧力0.01MPa~20MPaであり、より好ましくは、温度500~1100℃、圧力0.1MPa~10MPaであり、さらに好ましくは、温度700~1100℃、圧力0.1MPa~10MPaである。また、反応時間、すなわち結晶の成長(育成)時間は、特に限定されず、結晶が適切な大きさに成長するように適宜設定すれば良いが、例えば1~1000hr、好ましくは5~600hr、より好ましくは10~400hrである。

【0087】
本発明の製造方法において、場合によっては、前記フラックスによって、窒素濃度が上昇するまでに、前記種結晶が溶解するおそれがある。これを防止するために、少なくとも反応初期において、窒化物を前記フラックス中に存在させておいても良い。前記窒化物としては、例えば、Ca、LiN、NaN、BN、Si、InN等があり、これらは単独で使用してもよく、2種類以上で併用してもよい。また、前記窒化物の前記フラックスにおける割合は、例えば、0.0001mol%~99mol%であり、好ましくは、0.001mol%~50mol%であり、より好ましくは0.005mol%~10mol%である。

【0088】
本発明の製造方法において、前記混合フラックス中に、不純物を存在させることも可能である。このようにすれば、不純物含有のGaN結晶を製造できる。前記不純物は、例えば、珪素(Si)、アルミナ(Al)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、窒化インジウム(InN)、酸化珪素(SiO)、酸化インジウム(In)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、ゲルマニウム(Ge)等がある。

【0089】
本発明の製造方法において、前記融液を撹拌する撹拌工程をさらに含んでもよい。前記撹拌工程を行う段階は、特に制限されないが、例えば、前記結晶成長工程の前、前記結晶成長工程と同時、および前記結晶成長工程の後における少なくとも一つにおいて行ってもよい。より具体的には、例えば、前記結晶成長工程の前に行っても、前記結晶成長工程と同時に行っても、その両方で行ってもよい。

【0090】
本発明のIII族窒化物の製造方法に用いる装置は、特に限定されないが、一般的な液相成長法に用いる装置(LPE装置)と同様でも良く、具体的には、例えば、特許文献1(特許第4588340号公報)に記載のLPE装置等であっても良い。以下、図43~45を用いて、そのようなLPE装置について説明する。

【0091】
図43(a)および(b)の模式図に、LPE装置の構成の一例を示す。図43(a)のLPE装置は、原料ガスである窒素ガス、またはアンモニアガス(NHガス)と窒素ガスとの混合ガスを供給するための原料ガスタンク361と、育成雰囲気の圧力を調整するための圧力調整器362と、リーク用バルブ363と、結晶育成を行うためのステンレス容器364と、電気炉365とを備える。図43(b)は、ステンレス容器364を拡大したものであって、ステンレス容器364の内部には、坩堝366がセットされている。坩堝366は、ボロンナイトライド(BN)、アルミナ(Al)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG、Yttrium Aluminum Garnet)等からなる。坩堝366は、温度を600℃~1000℃に制御できる。原料ガスタンク361から供給された雰囲気圧力(100atm(100×1.013×10Pa)~150atm(150×1.013×10Pa))は、圧力調整器362によって100atm(100×1.013×10Pa)以下の範囲に制御できる。

【0092】
図44に、大型のLPE装置(電気炉)の一例を示す。図示のとおり、このLPE装置は、ステンレス製のチャンバー371と炉蓋372とを有する電気炉370を備え、10atm(10×1.013×10Pa)の気圧に耐えられるようになっている。チャンバー371内には、加熱用のヒータ373が配置されている。チャンバー371は、ゾーン3700a、3700b、3700cからなる3つのゾーンから構成されており、それぞれには熱電対374a~374cが取り付けられている。3つのゾーンは、温度範囲が±0.1℃に収まるように制御されており、炉内の温度は均一に制御される。炉心管375は、炉内の温度の均一性を向上させるとともに、ヒータ373から不純物が混入することを防止するために配置される。

【0093】
炉心管375の内部には、窒化ホウ素(BN)からなる坩堝376が配置されている。坩堝376に材料を投入し、坩堝の温度を上昇させることによって融液377が調製される。種結晶となる基板10は基板固定部378に取り付けられる。図44の装置では、複数枚の基板10を基板固定部378に固定できる。この基板10は、回転モータ379aによって回転される。融液377には、撹拌用のプロペラ3701が浸漬できるようになっている。プロペラ3701は、回転モータ379bによって回転される。例えば、雰囲気圧力が10atm(10×1.013×10Pa)以下である場合は、通常の回転モータを使用しても良いが、10atm(10×1.013×10Pa)以上の雰囲気圧力下では、電磁誘導型の回転機構を使用することが好ましい。雰囲気ガス(原料ガス)は、ガス源3702から供給される。雰囲気ガスの圧力は、圧力調整器3703によって調整される。雰囲気ガスはガス精製部3704によって不純物が除去されたのちに、炉内に送られる。

【0094】
図45に、揺動型LPE装置の一例を示す。図示のとおり、この揺動型LPE装置380は、ステンレス製の育成炉381と流量調節器388とを備え、育成炉381と流量調節器388とは管389で連結されている。育成炉381は、加熱用のヒータ382および熱電対383が配置され、50atm(50×1.013×10Pa)の気圧に耐えられるようになっている。さらに育成炉381内には、坩堝固定台384があり、回転軸3802を中心に図中の矢印(回転方向)3801の方向に回転する機構が取り付けられている。坩堝固定台384内に窒化ホウ素(BN)からなる坩堝385を固定し、坩堝385内に融液386および種結晶387を配置する。坩堝固定台384が回転することにより、坩堝385内の融液386が左右に移動し、これにより、種結晶上の成長方向が一定方向に制御される。本例では、融液386の揺動方向が、種結晶(GaN種結晶基板)387上のストライプ状のマスク膜に対して平行方向になるように、GaN種結晶基板387が固定されることが望ましい。雰囲気圧力は、流量調整器388によって調整される。原料ガスである窒素ガス、またはアンモニアガス(NHガス)と窒素ガスとの混合ガスを供給するための原料ガスタンクから図中の矢印(雰囲気ガス供給方向)3800方向に供給される雰囲気ガスは、ガス精製部によって不純物が除去されたのちに、育成炉381内に送られる。

【0095】
<7.第3の製造方法(さらに大サイズなIII族窒化物結晶の製造方法等)>
本発明の前記第1の製造方法において、前記III族窒化物結晶層および前記マスクから構成されたユニットを複数用いるか、または、本発明の前記第2の製造方法において、前記基板および前記III族窒化物結晶から構成されたユニットを複数用いても良い。より具体的には、前記種結晶選択工程、前記接触工程および前記結晶成長工程において、前記ユニットを複数、近接させて並列に配置し、前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させれば良い。以下、この製造方法を、本発明の第3の製造方法という。

【0096】
図8(a)を用いて説明したとおり、基板と結晶との熱膨張係数が相違する場合等に、前記結晶の製造中または使用中に、基板の反りにより、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがある。しかし、例えば、図8(b)に示すように、サファイア基板1002が複数に分かれていれば、サファイア基板1002の反りによるGaN結晶1003の反り、歪み、割れ等を防止または軽減できると考えられる。本発明の第3の製造方法によれば、例えば、このように、製造されるIII族窒化物結晶の反り、歪み、割れ等を防止または軽減する効果を得ることが可能である。ただし、あえて本発明の第3の製造方法を用いず(すなわち、複数のユニットを用いずに)、基板(またはマスク)とIII族窒化物結晶との熱膨張係数の相違等を逆に利用し、意図的に前記基板または前記マスクを反らせて、III族窒化物結晶を分割する(割る)こともできる。

【0097】
図7の平面図に、本発明の第3の製造方法に用いるユニットの一例を模式的に示す。同図は、本発明の第2の製造方法において、基板52およびIII族窒化物結晶(種結晶)53から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置した状態を表す。また、本発明の第1の製造方法においては、例えば、図7の基板52をIII族窒化物結晶層11に代え、種結晶53を種結晶(貫通孔)12aに代えた配置でも良い。同図では、1つの基板(ユニット)上に配置した種結晶の数は2つであるが、これに限定されず、1つでも良いし、3つ以上の任意の数でも良い。また、各基板の大きさも特に限定されず、III族窒化物結晶の製造効率、および、製造される結晶の反り、歪み、割れ等の防止または軽減効果等を考慮して適宜設定すれば良い。なお、図8(c)および(d)の断面図に、本発明の第3の製造方法によりIII族窒化物結晶を製造した例を、模式的に示す。図8(c)は、本発明の第1の製造方法を用いた例である。同図は、III族窒化物結晶層11およびマスク12から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置し、互いに隣接する前記各ユニットから成長したIII族窒化物結晶13どうしを結合させたこと以外は、図1(f)と同様である。図8(d)は、本発明の第2の製造方法を用いた例である。同図は、基板52およびIII族窒化物結晶(種結晶)53から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置し、互いに隣接する前記各ユニットから成長したIII族窒化物結晶53どうしを結合させたこと以外は、図5(g)と同様である。これにより、製造される結晶の反り、歪み、割れ等を防止または軽減することが可能である。なお、互いに隣接する各ユニット間において、隣接する種結晶どうしが、前記条件(M)を満たす必要があり、さらに、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすことが好ましい。

【0098】
前述のとおり、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。本発明の第3の製造方法によれば、例えば、さらに大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することもできる。図9の斜視図に、その一例を、模式的に示す。同図は、本発明の第1の製造方法を、本発明の第3の製造方法に用いた例である。まず、図9(a)に示すとおり、III族窒化物結晶層11およびその上に配置されたマスク12から形成されたユニットを複数、近接させて並列に配置する。マスク12には、複数の貫通孔12aが形成されている。III族窒化物結晶層11、マスク12および貫通孔12aについては、例えば、前記「2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」および「4.第1の製造方法」で説明したとおりである。このとき、各ユニット内のみならず、互いに隣接するユニット間で隣接する種結晶(貫通孔12a)どうしにおいても、前記条件(M)、すなわち、互いに隣接する前記種結晶から成長した結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件を満たすようにする。好ましくは、さらに、互いに隣接する種結晶どうしが、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすようにする。すなわち、図9(a)は、前記種結晶選択工程の一部を表している。

【0099】
また、図9(a)に示す通り、この例においては、III族窒化物結晶層11は、別の基板10の上に形成され、III族窒化物結晶層11およびマスク12とともに前記ユニットを形成している。別の基板10の材質は、特に限定されないが、例えば、本発明の第2の製造方法における前記基板と同様であり、コストおよび簡便性の観点から、サファイア等が特に好ましい。

【0100】
図9(a)の状態から、前記接触工程および前記結晶成長工程を行い、III族窒化物結晶13を成長(育成)させる。これにより、図示の各ユニット内および各ユニット間で、成長した結晶が結合し、図9(b)に示すとおり、1つの大きなIII族窒化物結晶13を製造することができる。

【0101】
近年の技術の進歩により、大サイズの半導体結晶が製造可能になり、これにより、半導体装置の設計の幅が広がっている。例えば、シリコン半導体基板等においては、直径6インチ(約15cm)、8インチ(約20cm)等の大サイズの結晶が実用化されている。しかし、GaN等のIII族窒化物結晶においては、そのような大サイズの結晶の製造は不可能であった。前述のとおり、従来のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、基板(図8では、サファイア基板1002)と結晶(図8では、GaN結晶1003)との熱膨張係数との相違等により、前記結晶の製造中または使用中に、基板の反りにより、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがある。大サイズの基板を用いて大サイズのIII族窒化物結晶を製造すれば、この問題がさらに顕著となる。例えば、結晶が割れやすくなることに加え、種結晶から成長させた結晶に受け継がれる結晶欠陥が、前記結晶の反り、歪み等により、いっそう大きくなると考えられる。GaN等のIII族窒化物結晶は、これまで、2インチ基板(直径約5cm)等を用いて製造されており、基板の大きさよりも大きいIII族窒化物結晶は製造されていなかった。

【0102】
しかし、本発明の第3の製造方法では、例えば図9に示すように、前記ユニットを複数並列に配置することで、基板の反りによる結晶の反り、歪み、割れ等の問題を軽減しながら、大サイズの結晶を製造することができる。また、本発明の第1の製造方法と組み合わせることで、さらに前記問題を軽減できると考えられる。

【0103】
なお、図9は、本発明の第1の製造方法を用いた例であるが、本発明の第1の製造方法のユニットに代えて、本発明の第2の製造方法の前記ユニットを用いる以外は同じように行うこともできる。また、各ユニットは、図9では、縦横2×2=4個のユニットを並べているが、並べる個数は、これに限定されず任意であり、例えば、縦横1×2=2個、縦横1×3=3個、縦横3×3=9個等であっても良い。

【0104】
また、本発明の第3の製造方法において、互いに隣接する各ユニット間の一部がつながっていても良い。特に、本発明の第1の製造方法において、前記マスクは、互いに隣接する各ユニット間でつながっている方が、互いに隣接する種結晶間の前記条件(M)を満たすように(より好ましくは、さらに、互いに隣接する種結晶どうしが、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすように)設定しやすく好ましい。例えば、図9(a)では、マスク12として、各ユニット毎に1枚のマスクを用いているが、図9(c)のように、これらがつながって、全体で1枚の大きなマスクを形成していても良い。

【0105】
本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物結晶のサイズは、特に限定されないが、長径が15cm(約6インチ)以上であることが好ましく、20cm(約8インチ)以上であることがより好ましく、25cm(約10インチ)以上であることが特に好ましい。また、前記III族窒化物結晶の高さも特に限定されないが、例えば、1cm以上であっても良く、好ましくは5cm以上、より好ましくは10cm以上である。このような大サイズのIII族窒化物結晶は、本発明の第3の製造方法を用いずに製造しても良いが、本発明の第3の製造方法により製造することが好ましい。特に、径(横方向サイズ)が大きいIII族窒化物結晶は、本発明の第3の製造方法により製造することが好ましい。ただし、本発明の製造方法は、このような大サイズのIII族窒化物結晶の製造に限定されず、例えば、従来と同サイズのIII族窒化物結晶をさらに高品質に製造するために用いることも可能である。

【0106】
<8.III族窒化物結晶および半導体装置>
本発明のIII族窒化物結晶は、前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、または前記III族窒化物結晶をさらに成長させて製造されるIII族窒化物結晶である。本発明のIII族窒化物結晶は、例えば、大サイズで、かつ、欠陥が少なく高品質である。品質は、特に限定されないが、例えば、転位密度が、前記「1.本発明の製造方法」に記載した数値範囲であることが好ましい。サイズについても特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。また、本発明のIII族窒化物結晶の用途も特に限定されないが、例えば、半導体としての性質を有することにより、半導体装置に使用可能である。

【0107】
本発明によれば、前述のとおり、従来技術では不可能であった6インチ径以上のIII族窒化物(例えばGaN)結晶を提供することができる。これにより、例えば、Si(シリコン)の大口径化が基準となっているパワーデバイス、LED等の半導体装置において、Siに代えてIII族窒化物を用いることで、さらなる高性能化も可能である。これにより本発明が半導体業界に与えるインパクトは、きわめて大きい。本発明のIII族窒化物結晶は、これらに限定されず、例えば、太陽電池等の任意の半導体装置に用いることもできるし、また、半導体装置以外の任意の用途に用いても良い。
【実施例】
【0108】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されない。
【実施例】
【0109】
以下の実施例、参考例および比較例における結晶の製造(育成)には、実施例5、6および8を除いて、全て、図43に示す構造のLPE装置を用いた。坩堝は、実施例5、6および8を除いて、全て、YAGすなわちイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet)製の坩堝を用いた。また、Ga:Naは、用いたガリウムとナトリウムとの物質量比(モル比)を表す。
【実施例】
【0110】
<参考例1>
図12の模式図に示す構造のユニットを用いてGaN結晶を製造した。図示のとおり、このユニットは、サファイア基板10の上に、c面GaNテンプレート基板(III族窒化物結晶層)11をサファイア治具10aで固定し、その上にサファイアマスク12(Disco社製)を載せて構成されている。サファイアマスク12には、貫通孔12aが形成され、貫通孔12aからGaNテンプレート基板11のc面が露出している。本参考例では、貫通孔12aの数は1つであり、貫通孔12aの形状は円形、直径は1.2mmであった。
【実施例】
【0111】
このユニットを用いて、窒素ガス雰囲気下、下記の条件で結晶成長(育成)を行い、GaN結晶を製造した。なお、下記「C[mol%] 0.5」は、炭素粉末を、ガリウム(Ga)、ナトリウム(Na)および前記炭素粉末の物質量の合計に対し、0.5mol%添加したことを示す。操作としては、まず、坩堝366をステンレス容器364の中にいれ、ステンレス容器364を、電気炉(耐熱耐圧容器)365の中に入れた。原料ガスタンク361から、窒素ガスをステンレス容器364内に導入すると同時に、ヒータ(図示せず)により加熱して電気炉(耐熱耐圧容器)365内を、870℃、36atm(約3.6MPa)の高温高圧条件下とし、200時間反応させて結晶成長(育成)を行い、目的とするGaN結晶を製造した。

温度[℃] 870
圧力[MPa] 3.6
時間[h] 200
Ga:Na 15:85
C[mol%] 0.5
坩堝 YAG
【実施例】
【0112】
図10に、製造したGaN結晶の写真、および、そのXRC測定結果のグラフを、併せて示す。写真に示す通り、製造された結晶は、上部が先細りになった六角柱形状である。上のグラフは、結晶表面のXRC測定結果を示し、横軸は、半値幅(FWHM)を表し、縦軸は、その強度を表す。なお、「arcsec」は、秒の逆数(s-1)と同義である。以下において同じである。また、下のグラフは、結晶縦断面のXRC図であり、横軸は、結晶中心からの距離を表し、縦軸は、半値幅(FWHM)を表す。図示のとおり、結晶全体にわたってきわめて転位が少なく均質で高品質なGaN結晶が得られたことが確認された。また、図11に、このGaN結晶の縦断面の各部の拡大写真を示す。図示のとおり、(10-11)方向成長部分および横方向成長部分に、各面に平行な成長縞が観測された。また、(10-11)方向・横方向成長部分ともにダークスポットが見られなかったことから、転位等の結晶欠陥がきわめて少ないことが確認された。
【実施例】
【0113】
また、図33に、製造したGaN結晶のCL像を示す。同図に示すように、転位密度は10cm-2ときわめて小さかった。
【実施例】
【0114】
<実施例1~2>
貫通孔12a(図12)の数を2つにしたことと、貫通孔12a間の距離を0.5mmとし、貫通孔12aから露出した種結晶(GaN結晶層11のc面)のa軸どうしが完全に重なるようにしたこと以外は前記参考例1と同様にして、結晶の成長(育成)時間200hrでGaN結晶を製造した(実施例1)。また、Ga:Na物質量比は15:85のままで、それぞれ実施例1の2倍量ずつ用いたことと、結晶成長(育成)時間を96時間にすること以外は実施例1と同様にして、GaN結晶を製造した(実施例2)。なお、以下の実施例および比較例においては、貫通孔12aは、特に断らない限り、全て、直径1.2mmの円形であり、互いに隣接する貫通孔12a間の距離は、特に断らない限り、全て、0.5mmとした。また、全ての実施例において、互いに隣接した種結晶から成長した結晶のm面どうしが重なり合わず(対向せず)、かつ、互いに隣接する種結晶間のa軸どうしが重なり合うように(図2~4および37(a)に例示したように、成長した結晶の六角形の頂点どうしが会合するように)貫通孔12aを配置した。
【実施例】
【0115】
図13~16に、本実施例で製造した結晶の写真、および、それをc面に平行に(横に)またはm面に平行に(縦に)カット(ダイシング)した断面の写真を示す。図13は、実施例2で製造した結晶の写真であり、図14~16は、実施例1で製造した結晶の写真である。図示のとおり、これらの結晶は、2つの結晶が成長により結合(会合)してできているために、横長の六角錐に近い形状をしている。図13の断面写真に示す通り、2つの結晶の会合(結合)部(右下の写真における楕円内)において、インクルージョン等の結晶欠陥は観測されなかった。また、XRCによれば、転位密度が5×10cm-2と、きわめて小さかった。さらに、200hrかけて育成した(成長させた)実施例1の結晶(図14~16)の方が、2倍量のGaおよびNaを用いて96hrで育成した実施例2の結晶よりも、いっそう欠陥が少なかった。
【実施例】
【0116】
また、図13下段中央図および図14に示すように、c面またはm面に平行にダイシングし、光を当てて撮影しても、2つの結晶の会合部にインクルージョン等は観測されなかった。
【実施例】
【0117】
さらに、図15に示すように、c面に平行なダイシングにより、下部(結晶成長初期)と上部(結晶成長後期)に分離し、それぞれについて、XRC半値幅により、結晶欠陥の大きさを測定した。その結果を、図16に示す。図示のとおり、結晶成長初期(図16左側)および結晶成長後期(図16右側)のいずれも、きわめて小さい半値幅を示したことから、欠陥が少ない高品質な結晶であることが確認された。特に、結晶成長後期の方が、結晶成長初期よりもさらに半値幅が小さいことから、いっそう欠陥が少ない高品質な結晶であることが確認できた。なお、図18および19に、図15および16における結晶下部(結晶成長初期)の写真をさらに拡大した写真を示す。また、図20に、図15および16における結晶上部(結晶成長後期)の写真をさらに拡大した写真を示す。
【実施例】
【0118】
<実施例3>
貫通孔12a(図12)を直径1.0mmの円形としたこと以外は実施例2と同様にして、GaN結晶を製造した。図17に、その写真を示す。同図に示す通り、実施例2よりも貫通孔の直径が小さかったために得られた結晶が小さかったが、2つの結晶の結合により、結晶欠陥が観察されない高品質の結晶が得られた。
【実施例】
【0119】
<実施例4>
貫通孔12a(図12)を3つ、正三角形の各頂点に配置したことと、Ga:Na物質量比は15:85のままで、それぞれ実施例1の2倍量ずつ用いたことと、結晶成長(育成)時間を120時間にしたこと以外は実施例1と同様にして、GaN結晶を製造した。図21および図22上段に、その写真を示す。また、図22下段および図23に、c面に平行にダイシングした後の、下部(結晶成長初期)の断面写真を示す。図示のとおり、きわめて欠陥が少ない高品質の結晶が得られた。また、ダイシングした断面に後ろから光を当てて撮影しても、3つの結晶の会合部(結合部)に、インクルージョン等の欠陥は観察されなかった。
【実施例】
【0120】
<実施例5~6>
図44に示す構造のLPE装置を用いたことと、図24左上の表に示す反応条件を用いたことと、アルミナ坩堝を用いたことと、同図右上に示すc面GaNテンプレート基板およびサファイアマスク(貫通孔の直径0.5mm、互いに隣接する貫通孔間の距離0.5mm)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてGaN結晶を製造した(実施例5)。また、互いに隣接する貫通孔間の距離を1.0mmとすること以外は実施例5と同様にしてGaN結晶を製造した(実施例6)。なお、図24左上の表において、「Ga:Na(2倍量)」は、実施例1に対し2倍量のGaおよびNaを用いたことを表す。また、前記サファイアマスクは、多数の貫通孔を有するものを用いた。前記貫通孔の配置は、図24右上に模式的に示したとおり、c面GaNテンプレート基板のa軸およびm軸のそれぞれの方向に沿って、複数の貫通孔が等間隔で並ぶようにした。
【実施例】
【0121】
図24左下に、実施例5で製造したGaN結晶をc軸方向から観察した写真を示す。また、図25上側の写真に、同じ結晶のSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)像を示す。図示のとおり、各貫通孔から成長したGaN結晶が前記サファイアマスク上で結合しており、前記サファイアマスクから剥離して自立させることが可能であった。XRCおよびCL像(図示せず)によれば、特に、a軸方向(互いに隣接する結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う方向)において、結晶会合部(結合部)の欠陥が少なく、高品質な結晶が得られたことが確認された。
【実施例】
【0122】
図24右下に、実施例6で製造したGaN結晶(2つ)を、c軸方向から観察した写真を示す。図示のとおり、実施例5と同様に、各貫通孔から成長したGaN結晶が前記サファイアマスク上で結合しており、前記サファイアマスクから剥離して自立させることが可能であった。XRCおよびCL像(図示せず)によれば、a軸方向において、結晶会合部(結合部)の欠陥が少なく、高品質な結晶が得られた。しかし、m軸方向(互いに隣接する結晶のm軸どうしがほぼ重なり合う方向)では、結晶会合部(結合部)において、欠陥が大きくて強度が弱く、割れやすかった。また、図25下側の写真に、実施例6で製造したGaN結晶のSEM像を示す。同図において、写真上部が、実施例6で製造したGaN結晶であり、下部が、実施例5で製造したGaN結晶である。図示のとおり、実施例6によれば、各種結晶から成長した結晶が、実施例5よりも大きく成長した状態で結合していた。このことは、より欠陥が少なく高品質なGaN結晶が得られたことを示唆している。
【実施例】
【0123】
<比較例1~4>
2つの種結晶(貫通孔12aから露出する、GaN結晶層11のc面)を、それらのm軸が重なり合うように(すなわち、図37(c)で模式的に例示したとおり、成長した結晶のm面どうしが対向した状態で重なり合って会合するように)配置したこと以外は実施例1と同様にしてGaN結晶を製造した(比較例1)。
【実施例】
【0124】
また、Ga:Naの物質量比を10:80にすることと、アルミナ製の坩堝を用いること以外は比較例1と同様にしてGaN結晶を製造した(比較例2)。
【実施例】
【0125】
さらに、結晶成長(育成)時間を200時間に代えて96時間とする以外は比較例1と同様にしてGaN結晶を製造した(比較例3)。
【実施例】
【0126】
さらに、Ga:Naの物質量比を10:90にすることと、結晶成長(育成)時間を200時間に代えて96時間とする以外は比較例1と同様にしてGaN結晶を製造した(比較例4)。
【実施例】
【0127】
図26~29に、これらの結晶の写真およびXRC結果を示す。図26上段および図28は、比較例1の結晶をc面に平行にダイシングした後の、下部(結晶成長初期)の断面写真である。また、図28には、XRC結果(グラフの横軸は半値幅、縦軸は強度)およびCL(カソードルミネセンス)像およびSEM像も併せて示す。図26下段は、比較例2の結晶をc面に平行にダイシングした後の、下部(結晶成長初期)の断面写真である。図27は、比較例3の結晶の写真である。図29は、比較例4の結晶をc面に平行にダイシングした後の、下部(結晶成長初期)の断面写真である。図示のとおり、反応条件を種々変化させた比較例1~4は、いずれも、2つの結晶の会合部(結合部)に、ボイド(空孔)、インクルージョン等の欠陥が、目視により確認された。図27に示すように、特に、坩堝の気液界面側において、欠陥が著しかった。また、図28に示すように、2つの結晶の会合部(結合部)のボイド周辺では、XRC半値幅が特に大きかったことと、CL像およびSEM像により転位が観察されたことから、前記ボイド周辺に特に転位が多いことが確認された。
【実施例】
【0128】
<比較例5>
3つの種結晶(貫通孔12aから露出する、GaN結晶層11のc面)を、正三角形の各頂点に配置し、互いに隣接する種結晶のm軸どうしが重なり合うように配置したことと、Ga:Na物質量比は15:85のままで、それぞれ実施例1の2倍量ずつ用いたことと、結晶成長(育成)時間を95時間にしたこと以外は実施例1と同様にして、GaN結晶を製造した。
【実施例】
【0129】
図30に、得られたGaN結晶の写真を示す。下段の写真は、後ろから光を当てて撮影した写真である。図示のとおり、比較例1~4と同様に、各結晶のm面(六角形の辺)どうしが対向して(重なり合って)会合する部分において、結合状態が良くなく、結晶に欠陥があった。
【実施例】
【0130】
<XRC半値幅>
図31のグラフに、前記実施例1~4および比較例1~5において測定したXRC半値幅(FWHM)を、まとめて示す。図示のとおり、比較例(m方向合一)の結晶は、各部のXRC半値幅(FWHM)のばらつきが大きかった。特に、結晶の会合部(結合部)において、XRC半値幅(FWHM)が大きいことから、転位等の結晶欠陥が大きいことが確認された。これに対し、実施例(a方向合一)の結晶成長初期では、XRC半値幅(FWHM)およびそのばらつきが小さくなり、実施例(a方向合一)の結晶成長後期では、XRC半値幅(FWHM)およびそのばらつきがさらに小さくなっていた。すなわち、前記各実施例によれば、欠陥が少ない高品質なGaN結晶が得られ、結晶成長後期では、さらに欠陥が少ない高品質なGaN結晶が得られたことが確認された。
【実施例】
【0131】
<実施例7>
GaN結晶から、a面を有する基板(自立基板)を切り出した。さらに、この自立基板を、a面が結晶成長面となるように、かつ、m軸およびc軸がそれぞれ辺と平行になるように、3mm角に切断し、種結晶とした。この種結晶2つを、イットリア治具を用いて、図32上段右側に示すように、互いのc軸どうしがほぼ重なり合うように、かつ、互いの間隔が約0.5mmとなるように配置した。さらに、図32上段左側の表に示す成長条件で結晶育成(成長)を行い、III族窒化物結晶を製造した。図32下段に、製造したIII族窒化物結晶の写真を示す。同図(写真)に示す結晶の上面がa面であり、紙面側に向いている側面が、m面である。図示のとおり、c軸どうし(c面どうし)がほぼ重なり合う方向において、会合部(結合部)における欠陥が少なく高品質に結合した結晶が得られた。なお、同図(写真)において、結晶のa面側に隙間ができているが、これは、イットリア治具の凹凸に由来する隙間であり、結晶欠陥ではない。
【実施例】
【0132】
実施例7によれば、隣接する種結晶のc軸どうしがほぼ重なり合う方向において、成長した結晶どうしの会合部(結合部)における欠陥が少なく高品質に結合することが確認された。また、実施例1~6によれば、前述のとおり、隣接する種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う方向において、成長した結晶どうしの会合部(結合部)における欠陥が少なく高品質に結合することが確認されている。したがって、m面(図32の写真の結晶における紙面側の側面)を結晶成長面とするm面種結晶を用いれば、互いに隣接する種結晶から成長した結晶どうしが、c軸(c面)方向およびa軸(a面)方向において欠陥が少なく高品質に結合することが分かる。このようにして、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。
【実施例】
【0133】
<実施例8>
種結晶間距離(互いに隣接する、サファイアマスクの貫通孔どうしの間の距離)を1cmとする以外は実施例5と同様にしてGaN結晶を製造した。その結果、最大高さ13.5mm、最大径19.8mmと大サイズであり、かつ、結晶どうしの会合部(結合部)における欠陥が少なく高品質なGaN結晶が、LPE収率50%(71.90g)という高収率で得られた。
【実施例】
【0134】
<CL像>
図34~36に、実施例8のGaN結晶のCL像を示す。図34および35は、m面に水平に(縦に)ダイシングした断面写真であり、図36は、c面に水平に(横に)ダイシングした断面写真である。これら各図に示す通り、大きな結晶欠陥は観察されなかった。特に、図34に示すように、2つの結晶の合一部(会合部または結合部と同義)においても、結晶欠陥は観察されなかった。
【実施例】
【0135】
<実施例9>
結晶成長(液相成長)時に、さらに、ゲルマニウム(Ge)を前記坩堝に入れたこと以外は、実施例8と同様にしてGaN結晶を製造した。このとき、前記ガリウム(Ga)の物質量と前記ゲルマニウム(Ge)の物質量との合計に対し、前記ゲルマニウム(Ge)の物質量が0.25mol%となるようにした。すなわち、前記ガリウム(Ga)と前記ゲルマニウム(Ge)との物質量の関係は、下記数式(I)で表される。

{Ge/(Ga+Ge)}×100=0.25[mol%] (I)
【実施例】
【0136】
本実施例で製造した上記GaN結晶には、不純物としてのゲルマニウムが1×1018cm-3の濃度でドーピングされていた。このGaN結晶を、厚さ0.5mmにカットし、GaN基板を作製した。本実施例において、このGaN基板を「n-GaN基板」という。つぎに、図47に示す通り、n-GaN基板(n-GaN Sub.)471の上に、有機金属気相成長(MOVPE)法により、Si(シリコン)を2×1016cm-3でドーピングしたn-GaN層472を7μm積層させた。さらに、n-GaN基板471の下面にニッケル電極(オーミック電極)473を、n-GaN層472の上面にチタン/アルミ電極(ショットキー電極)474をそれぞれ形成して図47に示す半導体装置(デバイス)を得た。なお、ショットキー電極474の周辺には、終端構造を形成しなかった。
【実施例】
【0137】
図47のデバイスに対し、下側(オーミック電極473側)を正、上側(ショットキー電極474側)を負とする電圧(逆方向電圧)をかけて、流れる電流(逆方向電流)の大きさを測定し、前記デバイスの逆方向耐圧について検証した。なお、前記デバイスにおいて測定点を数箇所設定し、それぞれについて前記逆方向電圧および前記逆方向電流を測定した。図48のグラフに、その結果を示す。同図右側および左側のグラフは、それぞれ、前記逆方向電圧と前記逆方向電流との関係を図示したグラフである。前記両グラフにおいて、それぞれ、横軸(Reverse Bias(V))は、逆方向電圧(V)を表し、縦軸(Reverse Current(A))は、逆方向電流(A)を表す。また、同図左側のグラフは、リニア表示によるグラフであり、同図右側のグラフは、対数表示によるグラフである。なお、縦軸の目盛において、例えば、「4.E-03」は、4×10-3を表し、「1.E-11」は、1×10-11を表す。図示のとおり、本実施例のデバイス(半導体装置)は、逆方向電圧の大きさを800Vまで上昇させても、逆方向電流の大きさは最大で約8×10-3Aにとどまったことから、きわめて高い逆方向耐圧特性を有することが確認された。n-GaN層472の成長条件を最適化し、さらに高品質とすれば、さらに逆方向耐圧特性が向上し、1kV以上の逆方向電圧にも耐えうると考えられる。
【実施例】
【0138】
以上、実施例1~8に示したとおり、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、大サイズで、欠陥が少なく高品質(高性能)なIII族窒化物結晶を製造可能であることが確認された。本実施例で製造したGaN結晶が、欠陥が少なく高品質であることは、前述のとおり、X線半値幅、転位密度等の測定により検証された。また、このGaN結晶を用いた実施例9の半導体装置(デバイス)は、逆方向耐圧特性がきわめて優れた高性能な半導体装置であった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上説明したとおり、本発明によれば、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能なIII族窒化物結晶の製造方法、前記製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、およびそれを用いた半導体装置を提供可能である。本発明により製造される窒化物結晶は、例えば、Si(シリコン)の大口径化が基準となっているパワーデバイス、LED等の半導体装置において、Siに代えて用いることで、さらなる高性能化も可能である。これにより本発明が半導体業界に与えるインパクトは、きわめて大きい。さらに、本発明は、これに限定されず、他の任意の半導体装置、またはその他の広範な技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0140】
10 基板
10a 治具
11 III族窒化物結晶層
12 マスク
12a 貫通孔
13 III族窒化物結晶
14 切断面
52 基板
52a 凸部
53 III族窒化物結晶層
54 切断面
201 III族窒化物結晶
202 マスク
203 III族窒化物結晶
204 結晶欠陥
361 原料ガスタンク
362 圧力調整器
363 リーク用バルブ
364 ステンレス容器
365 電気炉
366 坩堝
370 電気炉
371 チャンバー
372 炉蓋
373 ヒータ
3700a、3700b、3700c ゾーン
374a、374b、374c 熱電対
375 炉心管
376 坩堝
377 融液
378 基板固定部
379a、379b 回転モータ
3701 プロペラ
3702 ガス源
3703 圧力調整器
3704 ガス精製部
380 揺動型LPE装置
381 育成炉
382 ヒータ
383 熱電対
384 坩堝固定台
385 坩堝
386 融液
387 種結晶
388 流量調整器
389 管
3800 雰囲気ガス供給方向
3801 回転方向
3802 回転軸
1002 サファイア基板
1003 GaN結晶
471 n-GaN基板
472 n-GaN層
473 ニッケル電極
474 チタン/アルミ電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図12】
9
【図37】
10
【図38】
11
【図39】
12
【図40】
13
【図41】
14
【図42】
15
【図43】
16
【図44】
17
【図45】
18
【図46】
19
【図47】
20
【図48】
21
【図10】
22
【図11】
23
【図13】
24
【図14】
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【図15】
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【図16】
27
【図17】
28
【図18】
29
【図19】
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【図20】
31
【図21】
32
【図22】
33
【図23】
34
【図24】
35
【図25】
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【図26】
37
【図27】
38
【図28】
39
【図29】
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【図30】
41
【図31】
42
【図32】
43
【図33】
44
【図34】
45
【図35】
46
【図36】
47