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明細書 :非特異的腎集積が低減された放射性標識ポリペプチド作製用薬剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6164556号 (P6164556)
登録日 平成29年6月30日(2017.6.30)
発行日 平成29年7月19日(2017.7.19)
発明の名称または考案の名称 非特異的腎集積が低減された放射性標識ポリペプチド作製用薬剤
国際特許分類 C07K   5/083       (2006.01)
C07K   1/13        (2006.01)
A61K  38/06        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  51/08        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  31/00        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
C07K  16/00        (2006.01)
FI C07K 5/083 ZNA
C07K 1/13
A61K 38/06
A61K 39/395 C
A61K 39/395 L
A61K 51/08 100
A61K 51/08 200
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 31/00
A61P 9/00
A61P 25/00
C07K 14/00
C07K 16/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 18
出願番号 特願2013-547226 (P2013-547226)
出願日 平成24年11月30日(2012.11.30)
国際出願番号 PCT/JP2012/081033
国際公開番号 WO2013/081091
国際公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
優先権出願番号 2011263647
優先日 平成23年12月1日(2011.12.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年11月27日(2015.11.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】荒野 泰
【氏名】上原 知也
【氏名】花岡 宏史
【氏名】鈴木 千恵
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】坂崎 恵美子
参考文献・文献 特開2005-047821(JP,A)
国際公開第2011/040574(WO,A1)
特開2002-293796(JP,A)
Drug Delivery System,2011年,Vol.26, No.4,p.366-372
核医学,2008年,Vol.45, No.3,p.S192
調査した分野 C07K 5/083
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容される塩、
【化1】
JP0006164556B2_000011t.gif
ここで、R1は水素原子、メチル基、またはカルボキシメチル基(CH2-COOH)であり、R2はCH2-CH2-NH-CH2-COOH、CH2-CH2-N(CH2-COOH)2、 CH2-CH2-NH2、 CH2-CH2-NHR3、カルボキシメチル基、またはCH2-CH2-NR3R4であって、R3およびR4はそれぞれ異なっていてもよいアルキル基であり、
X、Y、およびZはそれぞれグリシン、L-フェニルアラニン、およびリジンであり、
Fはポリペプチドと結合することができる官能基である。
【請求項2】
ポリペプチドと結合することができる官能基Fがカルボン酸およびその活性エステル、マレイミド基、ブロモアセチル基、ヨードアセチル基、イソチオシアナート基、並びにアミノ基からなる群から選ばれるいずれか1の官能基である請求項1に記載の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
ポリペプチドと結合することができる官能基Fがマレイミド基である請求項1に記載の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
下式(II)で示される化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【化2】
JP0006164556B2_000012t.gif

【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩に、標的分子に結合するポリペプチドを結合させてなる化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
標的分子に結合するポリペプチドが、抗体のFab断片である請求項5に記載の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む放射性標識ポリペプチド作製用薬剤。
【請求項8】
標的分子に結合するポリペプチドを結合させた請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤。
【請求項9】
金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である請求項8に記載の放射性標識薬剤。
【請求項10】
標的分子に結合するポリペプチドが、抗体のFab断片である請求項8または請求項9に記載の放射性標識薬剤。
【請求項11】
抗体のFab断片を結合させた下式(II)で示される化合物とテクネチウム-99mとから形成される錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤。
【化3】
JP0006164556B2_000013t.gif

【請求項12】
標的分子に結合するポリペプチドを結合させた請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を有効成分として含む診断用医薬組成物。
【請求項13】
金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である請求項12に記載の診断用医薬組成物。
【請求項14】
標的分子に結合するポリペプチドを結合させた請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を有効成分として含む治療用医薬組成物。
【請求項15】
金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である請求項14に記載の治療用医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩の、放射性標識ポリペプチドの製造における使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は非特異的腎集積が低減された放射性標識ポリペプチド作製用薬剤に関する。より詳しくは、本発明は非特異的腎集積が低減された放射性テクネチウム標識ポリペプチドまたは放射性レニウム標識ポリペプチドの作製用薬剤に関する。また本発明は、該放射性標識ポリペプチド作製用薬剤を使用して作製された放射性標識ポリペプチド、該放射性標識ポリペプチドを有効成分とする画像診断用または治療用の医薬組成物、並びに該放射性標識ポリペプチドを使用した画像診断方法および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性標識薬剤は、放射性同位体(RI)により標識された化合物を含む薬剤であり、疾患の診断や治療、例えば腫瘍の診断や治療などに広く利用されている。放射性標識薬剤を用いた診断や治療においては、有用な核種の選択や、該薬剤を特定の組織や細胞に集積させるための薬剤設計が行われてきた。
【0003】
放射性同位体で標識した抗体フラグメントなどの低分子ポリペプチドは、がんを始めとする分子イメージングのプローブとして、さらにβ線放出核種を用いた内部放射線治療薬剤としての応用が期待されている。しかし、RI標識低分子ポリペプチドを生体に投与すると、投与早期から長時間にわたり腎臓に放射活性が観察される。そのため、腎臓の被曝および腎障害のおそれがあり、投与量の調整が必要とされている。このように、放射性標識ポリペプチドの腎臓への集積は、画像診断や治療へのその応用の大きな障害となっている。
【0004】
これに対して本発明者らは、低分子ポリペプチドと尿排泄性の高い標識薬剤とを、腎臓刷子縁膜酵素の基質を介して結合する薬剤設計を考案した。そして、放射性ヨウ素を用いた検討から、かかる薬剤設計の有用性を明らかにした(非特許文献1)。さらに、この薬剤設計の金属放射性同位体標識への応用性を検証するため、有機レニウム化合物への展開を行い、その可能性を示した(非特許文献2、特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-47821号公報。
【0006】

【非特許文献1】アラノ(Arano, Y.)ら、「Chemical Design of Radiolabeled Antibody Fragments for Low Renal Radioactivity levels」、キャンサー リサーチ(Cancer Research)、1999年、第59巻、p.128-134。
【非特許文献2】ウエハラ(Uehara, T.)ら、「Design, synthesis and evaluation of [188Re]organorhenium-labeled antibody fragments with renal enzyme-cleavable linkage for low renal radioactivity levels、バイオコンジュゲート ケミストリー(Bioconjugate Chemistry)、2007年、第18巻、第1号、p.190-198。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低分子ポリペプチドと尿排泄性の高い標識薬剤とを、腎臓刷子縁膜酵素の基質を介して結合する薬剤設計により標識ポリペプチドを作製するには、複数にわたる工程が必要とされる。そのため、前臨床や臨床に使用するためのこのような標識ポリペプチドを製造することは実際には困難である。
【0008】
本発明の課題は、簡便な操作で製造でき、かつ標的部位への高い集積性を有し非特異的腎集積が低減された放射性標識薬剤を与えることのできる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、放射性テクネチウム-99m(99mTc)および放射性レニウム-186および188(186/188Re)と錯体を形成する配位子構造並びに腎臓刷子縁膜酵素の基質構造の検討を行った。
【0010】
その結果、下式(II)で示される化合物が結合したポリペプチドと[M(CO)3(OH2)3]+(M= Tc or Re)とを混和するだけの操作で、放射性ヨウ素標識薬剤や金属レニウム標識薬剤とほぼ同様の体内動態を示し、非特異的腎集積が低減された金属RI標識ポリペプチドを作製することができた。本発明は本知見に基づいて達成したものである。
【0011】
【化1】
JP0006164556B2_000002t.gif

【0012】
即ち、本発明は以下に関する。
(1)下式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容される塩、
【化2】
JP0006164556B2_000003t.gif
ここで、R1は水素原子、メチル基、またはカルボキシメチル基(CH2-COOH)であり、R2はCH2-CH2-NH-CH2-COOH、CH2-CH2-N(CH2-COOH)2、 CH2-CH2-NH2、 CH2-CH2-NHR3、カルボキシメチル基、またはCH2-CH2-NR3R4であって、R3およびR4はそれぞれ異なっていてもよいアルキル基であり、
X、Y、およびZはいずれもそれぞれ異なっていてもよいアミノ酸であり、
Fはポリペプチドと結合することができる官能基である。
(2)ポリペプチドと結合することができる官能基Fがカルボン酸およびその活性エステル、マレイミド基、ブロモアセチル基、ヨードアセチル基、イソチオシアナート基、並びにアミノ基からなる群から選ばれるいずれか1の官能基である、前記(1)の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
(3)X、Y、およびZがそれぞれグリシン、L-フェニルアラニン、およびリジンである前記(1)または(2)の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
(4)ポリペプチドと結合することができる官能基Fがマレイミド基である前記(1)から(3)のいずれかの化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
(5)下式(II)で示される化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
【化3】
JP0006164556B2_000004t.gif
(6)前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩に、標的分子に結合するポリペプチドを結合させてなる化合物またはその薬理学的に許容される塩。
(7)標的分子に結合するポリペプチドが、抗体のFab断片またはFv断片である前記(6)の化合物、またはその薬理学的に許容される塩。
(8)前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む放射性標識ポリペプチド作製用薬剤。
(9)標的分子に結合するポリペプチドを結合させた前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩と、金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤。
(10)金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である前記(9)の放射性標識薬剤。
(11)標的分子に結合するポリペプチドが、抗体のFab断片またはFv断片である前記(9)または(10)の放射性標識薬剤。
(12)抗体のFab断片を結合させた下式(II)で示される化合物とテクネチウム-99mとから形成される錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤。
【化4】
JP0006164556B2_000005t.gif
(13)標的分子に結合するポリペプチドを結合させた前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を有効成分として含む診断用医薬組成物。
(14)金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である前記(13)の診断用医薬組成物。
(15)標的分子に結合するポリペプチドを結合させた前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を有効成分として含む治療用医薬組成物。
(16)金属放射性同位体がテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177から選択されるいずれか1の金属放射性同位体である前記(15)の治療用医薬組成物。
(17)前記(1)から(5)のいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩の、放射性標識ポリペプチドの製造における使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、腎集積が低い放射性標識ポリペプチドの作製を容易にする新規化合物またはその薬理学的に許容される塩、および該化合物またはその薬理学的に許容される塩と放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤を提供できる。本発明に係る放射性標識ポリペプチドの製造は複数にわたる工程を必要とせず簡便な方法で製造できる。
【0014】
本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容される塩を使用して作製された放射性標識薬剤は、非特異的腎集積が従来に比べて遙かに低いため、前臨床研究や臨床研究への応用が可能である。また、本発明に係る放射性標識薬剤は、非特異的腎集積が低いという特性により、低分子ポリペプチドを用いた内部放射線治療において問題とされている腎障害を大きく低減することが可能であり、99mTcのみならず細胞殺傷性のβ線を放出する186/188Reによる標識への応用も可能となる。
【0015】
このように本発明は、従来に比べて高い放射活性を有する放射性標識ポリペプチドの安全な投与を可能にするものであり、放射線画像診断や内部放射線治療に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】放射性標識Fab断片の構造を示す図である。99mTc-PGGFML-IT-Fabは、2-イミノチオラン(IT)によりFab断片を結合させたPGGFMLと99mTcとから形成される錯体構造を有する錯体である。[125I]HML-IT-Fabは、ITによりFab断片を結合させたヒプリル ε-N-マレオイル-L-リジン(HML)と125Iとから形成される錯体構造を有する錯体である。99mTc-PG-Fabは、Fab断片のリジン残基を介して結合させたPGと99mTcとから形成される錯体構造を有する錯体である。(実施例1、2、3)
【図2】99mTc-PGGFML-IT-Fabは、マウスへの投与後、血中および腎臓からの迅速な消失が認められたが、99mTc-PG-Fabは血中からの消失は同様に速いものの腎臓からの消失は遅かったことを示す図である。99mTc-PGGFML-IT-Fabの血中および腎臓からの消失速度は、[125I]HML-IT-Fabとほぼ同程度であった。(実施例3)

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、非特異的腎集積が低減された放射性標識ポリペプチド作製用薬剤に関する。本発明はまた、該放射性標識ポリペプチド作製用薬剤を使用して作製された放射性標識ポリペプチド、該放射性標識ポリペプチドを有効成分とする画像診断用または治療用の医薬組成物、並びに該放射性標識ポリペプチドを使用した画像診断方法および治療方法に関する。
【0018】
本発明に係る放射性標識ポリペプチド作製用薬剤は、下式(I)で示される化合物を含む。
【0019】
【化5】
JP0006164556B2_000006t.gif
ここで、R1は水素原子、メチル基、またはカルボキシメチル基(CH2-COOH)であり、R2はCH2-CH2-NH-CH2-COOH、CH2-CH2-N(CH2-COOH)2、 CH2-CH2-NH2、 CH2-CH2-NHR3、カルボキシメチル基、またはCH2-CH2-NR3R4であって、R3およびR4はそれぞれ異なっていてもよいアルキル基であり、
X、Y、およびZはいずれもそれぞれ異なっていてもよいアミノ酸であり、
Fはポリペプチドと結合することができる官能基である。
【0020】
上記式(I)で示される化合物において官能基Fはスペーサーであり、官能基Fを介してポリペプチドを該化合物に結合することができる。官能基Fはポリペプチドと結合することができるものである限り特に限定されないが、好ましくは、カルボン酸およびその活性エステル、マレイミド基、ブロモアセチル基、ヨードアセチル基、イソチオシアナート基、並びにアミノ基からなる群から選ばれるいずれか1の官能基であり、より好ましくはマレイミド基である。
【0021】
上記式(1)で示される化合物において、X-Y-Zで表されるアミノ酸配列は、腎臓において腎臓刷子縁膜酵素により切断されるアミノ酸配列であり、このアミノ酸配列の存在により該化合物は腎臓で容易に代謝されて尿中に排出される。X-Y-Zで表されるアミノ酸配列は、腎臓刷子縁膜酵素により切断されるアミノ酸配列である限り特に限定されない。Xは、特に限定されないが、好ましくはグリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、メチオニン、ロイシン、メチオニン、およびイソロイシンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸残基、より好ましくはグリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、およびメチオニンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸残基である。Yは、特に限定されないが、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、およびβアラニンからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸残基である。Zは、側鎖に官能基のあるアミノ酸である限りにおいて特に限定されず、好ましくはリジン、オルニチン、チロシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、およびシステインからなる群より選択されるいずれかのアミノ酸残基である。具体的には、X、Y、およびZとしてそれぞれグリシン、L-フェニルアラニン、およびリジンを挙げることができる。
【0022】
上記式(I)で示される化合物の好ましい具体例として、下式(II)で示される化合物を挙げることができる。
【0023】
【化6】
JP0006164556B2_000007t.gif

【0024】
本発明に係る化合物は、遊離体のままでもよく、薬理学的に許容される塩であってもよい。薬理学的に許容される塩として、酸付加塩及び塩基付加塩を挙げることができる。酸付加塩として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、またはリン酸塩などの無機酸塩、およびクエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはパラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を例示できる。塩基付加塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはアンモニウム塩などの無機塩基塩、およびトリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩を例示できる。
【0025】
本発明においてはまた、上記式(I)で示される化合物に、標的分子に結合するポリペプチドを結合させてなる化合物を提供することができる。
【0026】
標的分子に結合するポリペプチドは、本明細書において「標的分子認識素子」と呼ぶことがあり、標的分子に特異的に結合するポリペプチドをいう。特異的に結合するとは、標的分子に結合するが、標的分子以外の分子には結合しないか、弱い結合であることをいう。標的分子とは、放射性標識薬剤による診断や治療の対象となる標的部位、例えば組織や細胞に存在する分子、好ましくは特異的に発現する分子をいう。特異的に結合するとは、標的部位に発現するが、標的部位以外の部位には発現しないか、低い発現であることをいう。本発明において、標的分子認識素子として、具体的には、炎症や腫瘍細胞浸潤などに伴う組織構築において高い発現が認められるタンパク質や腫瘍細胞に特異的に発現するタンパク質に結合するリガンド、並びに抗体および抗体の抗原結合領域断片などを例示できる。抗体の抗原結合領域断片として、Fab断片、F(ab')2断片、F(ab)2断片、および可変領域(Fv)断片を例示できる。Fab断片とは、抗体のパパイン分解により生ずるN末端側の産物およびこれと同様のドメイン構造を有する断片を意味する。F(ab')2断片とは、抗体のF(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を還元することにより得られる断片およびこれと同様のドメイン構造を有する断片を意味する。F(ab)2断片とは、2分子のFab断片が互いにジスルフィド結合で結合した二量体を意味する。Fv断片とは、抗体の断片であって抗原との結合活性を有する最小の断片を意味する。より具体的には、特定のがん細胞に特異的に発現するタンパク質に対する抗体、およびそのFab断片やFv断片を例示できる。また、がんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有する環状ペンタペプチド、例えばシクロ-Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys[配列表の配列番号1、c(RGDfK)と略称する]を挙げることができる。そのほか、造骨性のがん(骨転移)に多く存在するヒドロキシアパタイトへの親和性を有するビスフォスフォン酸やオリゴアスパラギン酸、オリゴグルタミン酸、マクロファージの表面に存在する走査因子の受容体と親和性があるペプチドであるfMet-Leu-Phe(fMLP)、がん細胞に発現が認められる葉酸受容体と結合する葉酸とその誘導体などを例示できる。標的分子認識素子は、これら例示されたポリペプチドに限定されず、標的分子に結合するポリペプチドであればいずれを使用することもできる。
【0027】
本発明に係る化合物を使用して、当該化合物を含む放射性標識ポリペプチド作製用薬剤を提供できる。放射性標識ポリペプチド作製用薬剤は、当該化合物の他に、水性緩衝液などのpH調節剤、およびアスコルビン酸やp-アミノ安息香酸などの安定化剤などの添加物を含むことができる。
【0028】
本発明においてはまた、標的分子に結合するポリペプチドを結合させた前記化合物と金属放射性同位体とから形成される錯体構造を有する錯体からなる放射性標識ポリペプチド、および該放射性標識ポリペプチドを含む放射性標識薬剤を提供できる。本発明に係る放射性標識薬剤は、放射性標識ポリペプチドの他に未反応物や不純物を含んでいても良いし、製造後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法などの精製法により精製された放射性標識ポリペプチドを含むものであっても良い。
【0029】
用語「錯体」とは、金属および金属類似元素の原子またはイオンを中心にして、配位子が配位した物質を意味し、配位化合物ともいう。配位とは、配位子が中心の金属と配位結合を形成して中心金属の周囲に配列することをいう。錯体は、配位子と金属との配位結合により形成される。配位子と金属による錯体の形成を、錯形成と称することがある。配位結合とは、1本の結合にあずかる2個の原子価電子が、一方の原子のみから提供されている結合をいう。
【0030】
金属放射性同位体は、本発明に係る化合物と配位子を形成するものであれば特に限定されないが、好ましくはテクネチウム同位体、レニウム同位体、インジウム同位体、イットリウム同位体、およびルテチウム同位体、より好ましくはテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177、さらに好ましくはテクネチウム-99m、レニウム-186、およびレニウム-188を例示できる。金属放射性同位体は、これら具体例に限定されず、放射性標識薬剤を用いた診断や、がん疾患などの疾患の内部放射線治療などの目的に適当な放射線、放射線量、半減期を有する限りにおいていずれも使用することができる。放射線画像診断および内部放射線治療において正常の組織や細胞への影響を少なくするという観点から、短半減期金属放射性同位体が好ましく使用される。
【0031】
錯体の製造は、標的分子認識素子と結合させた上記化合物を配位子として用い、金属放射性同位体とインビトロで錯形成させることにより実施できる。錯形成は、従来知られている錯形成反応を利用する簡便な操作で実施できる。
【0032】
本発明に係る放射性標識ポリペプチドとして、上記式(II)で示される化合物に抗体のFab断片を結合させた化合物を配位子として用い、金属放射性同位体とインビトロで錯形成させることにより形成された錯体構造を有する錯体からなる放射性標識ポリペプチドを好ましく例示できる。より好ましくは、金属放射性同位体としてテクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177からなる群より選択されるいずれか1の金属放射性同位体、さらに好ましくは金属放射性同位体としてテクネチウム-99m、レニウム-186、およびレニウム-188からなる群より選択されるいずれか1の金属放射性同位体を使用して形成された錯体構造を有する錯体を含む放射性標識薬剤を例示できる。
【0033】
本発明により作製される放射性標識ポリペプチドは、腎臓で選択的に切断されるアミノ酸配列X-Y-Zを有するため、対象に投与された後に、選択的に酵素分解され、その代謝産物は腎臓に蓄積することなく、速やかに尿中に排泄される。このように腎集積が低いという特徴を有する本発明に係る放射性標識ポリペプチドは、低分子ポリペプチドを用いたアイソトープ治療において問題とされている腎障害を大きく低減することが可能であり、短半減期金属放射性同位体のみならず細胞殺傷性のβ線を放出する金属放射性同位体による標識への応用も可能である。またこの特徴により、放射性画像診断において腹部のバックグラウンドとなる放射能が少ないため、腹部の病巣部位の検出・診断が容易となる。さらに、本発明に係る放射性標識ポリペプチドは、標的分子認識素子を有するため、標的部位に特異的に結合することができ、そのため標的部位に効率的に集積する。このような性質のため、本発明に係る放射性標識ポリペプチドは、画像診断の感度や治療効果を向上させることができる。
【0034】
このように本発明に係る放射性標識ポリペプチドを含む放射性標識薬剤は、従来に比べて高い放射活性を有する放射性標識ポリペプチドの安全な投与を可能にするものであり、放射性画像診断や内部放射線治療に有用である。本発明に係る放射性標識薬剤は、上記放射性標識ポリペプチドを有効成分として含むほか、必要に応じて、1種類または2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含む医薬組成物として調製できる。医薬用担体として、水性緩衝液、酸、および塩基などのpH調節剤、アスコルビン酸やp-アミノ安息香酸などの安定化剤、D-マンニトールなどの賦形剤、等張化剤、並びに保存剤などを例示できる。また、放射化学的純度を改良するのに役立つクエン酸、酒石酸、マロン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウムなどの化合物を添加してもよい。本発明に係る放射性標識薬剤は、水溶液の形態、凍結溶液の形態、および凍結乾燥品のいずれでも提供が可能である。
【0035】
本発明に係る放射性標識薬剤は、腫瘍、炎症、感染症、心循環器疾患、脳・中枢系疾患等の各種疾患および臓器・組織の放射線画像診断、あるいは内部放射線治療に用いられる。好ましくはがん疾患の放射線画像診断や内部放射線治療に使用されるが、適用疾患は特に限定されず、画像診断や内部放射線治療が適用される疾患であればいずれにも適用できる。診断や治療の対象となる標的の特性にしたがって、標的分子認識素子を選択することにより、多種類多様な標的の診断や治療が可能であり、本発明に係る放射性標識薬剤は診断および治療の分野で広く使用できる。
【0036】
本発明に係る放射性標識薬剤の投与経路として、静脈内投与あるいは動脈内投与などの非経口投与、あるいは経口投与を挙げることができ、静脈内投与を好ましく挙げることができる。投与経路はこれら経路に限定されず、放射性標識薬剤の投与後に、その作用が有効に発現し得る経路であればいずれも利用できる。
【0037】
本発明に係る放射性標識薬剤の放射活性強度は、本標識薬剤を投与したことにより目的を達成し得る強度であり、かつ、被験者の放射線被爆が可能な限り低い臨床投与量である限りにおいて任意である。放射性強度は、放射性標識薬剤を使用する一般的な診断方法や治療方法で使用されている放射活性強度を参考にして決定できる。その投与量は患者の年齢、体重、適当な放射線イメージング装置、および対象疾患の状態などの諸条件を考慮し、イメージングおよび治療が可能と考えられる放射能および投与量が決定される。ヒトを対象とする場合、テクネチウム-99m標識体を用いた診断剤の投与量は、テクネチウム-99mの放射能量として37MBq~111MBqである。レニウム-186またはレニウム-188標識体を用いた治療剤の場合は、放射能量として37MBq~18500MBqの範囲であり、好ましくは370MBq~7400MBqである。
【0038】
本発明において、上記化合物と、金属放射性同位体を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキットを提供できる。本発明に係るキットとして、上記式(II)で示される化合物と、テクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177からなる群より選択されるいずれか1の金属放射性同位体を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキットを好ましく例示できる。テクネチウム-99m、レニウム-186、レニウム-188、インジウム-111、イットリウム-90、およびルテチウム-177からなる群より選択されるいずれか1の金属放射性同位体を含む薬剤は、好ましくは溶液の形態で提供される。金属放射性同位体を含む薬剤は、より好ましくはテクネチウム-99m、レニウム-186、およびレニウム-188からなる群より選択されるいずれか1の金属放射性同位体を含む薬剤である。キットに含まれる化合物および薬剤はいずれも、必要に応じて、上記のような1種類または2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含むことができる。
【0039】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
下式(I)に記載の化合構造において、R1がカルボキシメチル基(CH2-COOH)、R2が水素原子、Xがグリシン、YがL-フェニルアラニン、ZがL-リジン、Fがマレイミド基である化合物、2-{2-[2-({2-[(カルボキシメチル-アミノ)-メチル]-ピリジン-4-カルボニル}-アミノ)-アセチルアミノ]-3-フェニル-プロピオニルアミノ}-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-ピロール-1-イル)-ヘキサン酸(2-{2-[2-({2-[(Carboxymethyl-amino)-methyl]-pyridine-4-carbonyl}-amino)-acetylamino]-3-phenyl-propionylamino}-6-(2,5-dioxo-2,5-dihydro-pyrrol-1-yl)-hexanoic acid、本明細書においてPGGFMLと略称する)を、イソニコチン酸メチル(1)を原料として、化学反応式1に示すように合成した。
【0041】
【化7】
JP0006164556B2_000008t.gif

【0042】
(化学反応式1)
【化8】
JP0006164556B2_000009t.gif

【0043】
1.化合物2の合成
イソニコチン酸メチル(1)(Methyl isonicotinate (1)、9.93 g, 72.4 mmol)をメタノール(MeOH、100 mL)に溶解し、触媒量の硫酸(0.33 mL)を加えた。加熱還流下、過硫酸アンモニウム(30 g, 131.5 mol)の飽和水溶液(55 mL)を滴下し、混合物を還流温度で30分間撹拌した。冷却後、炭酸ナトリウムを加えpHを7付近に調節し、反応物をろ過し、ろ液のMeOHを減圧留去して得た水層を酢酸エチル(AcOEt、150 mL×5)で抽出、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をAcOEt:n- ヘキサン(Hex)=1:1の溶液を移動相とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、黄色結晶を得た。得られた結晶をAcOEt(20 mL) に溶解し、Hex(40mL)を加えることで析出した結晶を、ろ取して、4.80 g(収率39.7 %)のメチル 2-ヒドロキシメチルイソニコチネート(2)(methyl 2-hydroxymethylisonicotinate (2))を白色針状結晶として得た。1H-NMR (CDCl3):δ8.69- 8.71 [1H, d, pyridine], δ7.81 [1H, s, pyridine],δ7.74- 7.75 [1H, d, pyridine], δ4.82[2H, s, CH2OH], δ3.95 [3H,s, COOCH3]. FAB-MS計算値:C8H9NO3[M+H]+:m/z 168, 測定値168.
【0044】
2.化合物3の合成
化合物2(4.04 g,24.0 mmol)を乾燥トルエン(80 mL)に溶解し、氷冷下、塩化チオニル(20.8 mL, 288 mmol)を滴下した。室温で1時間撹拌し、溶媒を減圧留去することで、5.19 g(収率97.4 %)のメチル 2-クロロシメチルイソニコチネート(3)(methyl 2-chloromethylisonicotinate (3))を白色結晶として得た。1H-NMR(CDCl3) : δ8.79- 8.81 [1H, d, pyridine], δ8.26 [1H, s, pyridine], δ8.04-8.05[1H, d, pyridine], δ4.96 [2H, s, CH2OH], δ4.02 [3H, s, COOCH3].
【0045】
3.化合物4の合成
H-Gly-OtertBu・HCl(0.59 g, 3.51 mmol) と炭酸カリウム(1.13 g, 8.19 mmol)を乾燥アセトニトリル(MeCN、5 mL)に懸濁し、氷冷下、乾燥MeCN(5 mL)に溶解した化合物3(0.26 g, 1.17 mmol)を滴下した。室温で一晩撹拌後、反応溶液をろ過し、ろ液を減圧留去した。残渣をAcOEt(10 mL)に溶解し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10 mL×3)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をAcOEt:Hex=1:2の溶液を移動相とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製することで、323.4 mg(収率87.7 %)の化合物4を黄色油状物質として得た。1H-NMR(CDCl3) : δ8.71- 8.70 [1H, d, pyridine], δ8.08 [1H, s, pyridine], δ7.70-7.69[1H, d, pyridine], δ4.01 [2H, s, pyr-CH2], δ3.95 [3H, s, COOCH3], δ3.38 [2H, s, NHCH2CO], δ1.47 [9H, s, tBu].
【0046】
4.化合物5の合成
化合物4(287.4 mg, 1.03 mmol)を乾燥ジクロロメタン(CH2Cl2、3 mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.171 mL, 1.23 mmol)を加えた。氷冷下、乾燥CH2Cl2(2 mL)に溶解した二炭酸-tert-ジブチル(268 mg, 1.23 mmol)を滴下した。室温で4時間撹拌後、反応液を5% クエン酸水溶液(5 mL×3)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をAcOEt:Hex=1:5の溶液を移動相とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製することで、246.1 mg(収率62.8 %)の化合物5を無色透明油状物質として得た。1H-NMR(CDCl3) : δ8.68- 8.67 [1H, d, pyridine], δ7.87 [1H, s, pyridine], δ7.73-7.72[1H, d, pyridine], δ4.61 [2H, s, pyr-CH2], δ3.95 [3H, s, COOCH3], δ3.86 [2H, s, NHCH2CO], δ1.43 [18H, s, tBu, Boc].
【0047】
5.化合物6の合成
化合物5(246.1 mg, 0.65 mmol)をMeOH(1 mL)に溶解し、氷冷下、2N 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液(1 mL)を加えた。室温で3時間撹拌後、1N 塩酸(HCl)水溶液を加えてpH 7付近に調節し、MeOHを減圧留去した。得られた水溶液をクロロホルム(CHCl3、3 mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することで、112.0 mg(収率47.3 %)の化合物6を白色結晶として得た。1H-NMR(CDCl3) : δ8.67- 8.65 [1H, d, pyridine], δ7.94 [1H, s, pyridine], δ7.89-7.88[1H, d, pyridine], δ4.78 [2H, s, pyr-CH2], , δ4.12 [2H, s, NCH2], δ1.42 [18H, s, tBu, Boc].
【0048】
6.化合物7の合成
Cl-Trt(2-Cl)Resin(124.8 mg, 0.196 mmol)、Fmoc-Lys(Z)-OH(98.5 mg, 0.196 mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(139.3 μL, 0.78 mmol)をCH2Cl2中、室温で90分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(139.3 μL, 0.78 mmol)とMeOH(0.38 mL)を加え、室温で15分間撹拌した。樹脂をジメチルホルムアミド(DMF、5 mL×3)、CH2Cl2(5 mL×3)、イソプロパノール(5 mL×3)、ジエチルエーテル(Et2O、5 mL×3)で洗浄し、減圧乾燥した。次いで、20% ピペリジン/DMF(v/v)(3 mL)を加え、20分間室温で撹拌した。樹脂をDMF(5 mL×8)で洗浄した後、樹脂の一部を採取してカイザーテスト(Kaiser test)を行い、Nα-Fmoc基の脱保護を確認した。
【0049】
H-Lys(Z)-Trt(2-Cl)Resin(0.196 mmol)と、2.5等量の保護アミノ誘導体、Fmoc-Phe-OH(189.6mg, 0.49 mmol)、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(75.4 μL, 0.49 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(75.0 mg, 0.49 mmol)をDMF(0.5 mL)中、室温で2時間撹拌した。樹脂をDMF(5 mL×8)で洗浄した後、樹脂の一部を採取してカイザーテストを行い、縮合反応の終了を確認した。次いで、20% ピペリジン/DMF (v/v)(3 mL)を加え、20分間室温で撹拌した。樹脂をDMF(5 mL×8)で洗浄した。さらに、保護アミノ酸Fmoc-Gly-OH(145.7 mg, 0.49 mmol)を用いて同様の反応を行い、H-Gly-Phe-Lys(Z)-Trt(2-Cl)Resinを作製した。
【0050】
H-Phe-Gly-Lys(Z)-Trt(2-Cl)Resin(0.196 mmol)と化合物6(71.8 mg, 0.196 mmol)、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(30.3 μL, 0.196 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(30.0 mg, 0.196 mmol)を DMF(1 mL)中、室温で一晩撹拌した。樹脂をDMF(5 mL×8)次いでCH2Cl2(5 mL×8)で洗浄し、減圧乾燥した。
【0051】
7.化合物8の合成
PG(Boc)-OtBu-Phe-Gly-Trt(2-Cl)Resin(0.196 mmol)に、酢酸(AcOH):2,2,2-トリフロロエタノール:CH2Cl2=3:1:6 (v/v/v)(5 mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をろ過した後ろ液を減圧留去した。残渣をトルエン(5 mL×3)で共沸し、得られた薄黄色油状物質をEtOH(0.2 mL)に溶解し、Et2O(10 mL)を加えることにより析出した白色結晶をろ取して92.8 mg(収率56.9 %)のPG(Boc)-OtBu-Gly-Phe-Lys(Z)-OHを白色結晶として得た。本化合物はこれ以上の精製を行わず、そのまま次の反応に用いた。なお、PGは2-((カルボキシアミノ)メチル)イソニコチン酸(2-((carboxyamino)methyl)isonicotinic acid)の略称である。
【0052】
8.化合物9の合成
化合物8(50 mg, 0.060 mmol)をMeOH:H2O:AcOH=9:0.5:0.5 (v/v/v)の溶液(4 mL)に溶解し、10% Pd/C(5.0 mg, 0.0047 mmol)を懸濁させ、H2雰囲気下、室温で8時間撹拌した。反応溶液を少量のセライト(celiteを用いて吸引ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣にEt2O(5 mL)を加え、析出した結晶をろ取することで、34.6 mg(収率82. 6%)の PG(Boc)-OtBu-Gly-Phe-Lys-OHを灰色結晶として得た。本化合物はこれ以上の精製を行わず、そのまま次の反応に用いた。
【0053】
9.化合物10の合成
PG(Boc)-OtBu-Gly-Phe-Lys-OH(34.6 mg, 0.050 mmol)を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2 mL)に溶解し、氷冷下、N-(メトキシカルボニル)マレイミド(8.5 mg, 0.055 mmol)を加えた。氷冷下、40分間撹拌した後、室温で50分間撹拌した。再び氷冷し、濃硫酸を加えpH 3付近に調節し、酢酸エチル(3 mL×3)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することで、16.5 mg(収率42.4 %)のPG(Boc)-OtBu-Gly-Phe-Lys(mal)-OHを白色結晶として得た。1H-NMR(DMSO) : δ8.98- 8.97 [1H, d, NH], δ8.63[1H, s, NH], δ8.30-8.28 [1H, m, NH], δ.16-8.14 [1H, d, pyridine], δ7.68-7.65 [2H, m, pyridine], δ7.23-7.16 [5H, m, aromatic], δ6.99 [2H, s, COCHCHCO],δ4.58-4.51 [3H, m, NHCHCH2C6H5,pyr-CH2], δ4.13-4.12 [2H, m,NHCHCOOH], δ4.00-3.76 [4H, m, NHCH2, NCH2], δ3.16 [2H, s, CH2-mal],δ2.77-2.63 [2H, q, CHCH2-C6H5],δ1.72-1.62 [2H, m, CHCH2CH2],δ1.48-1.47 [2H, m, CH2 CH2NH],δ1.39-1.37 [18H, m, tBu,Boc], δ1.27-1.23[2H, m, CHCH2CH2].
【0054】
10.化合物11(PGGFML)の合成
PG(Boc)-OtBu-Gly-Phe-Lys(mal)-OH(16.5 mg, 0.021 mmol) をEtOAc(0.5 mL)に溶解し、4N HCl/EtOAc(1.5 mL)を加えた。室温で2時間撹拌後、析出した結晶をろ取し、分取用逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で精製することで、8.6 mg(収率62.3 %)のPGGFMLの塩酸塩を白色結晶として得た。1H-NMR(DMSO) : δ9.02 [1H, d, NH], δ8.69[1H, s, NH], δ8.25-8.24 [1H, d, NH], δ8.20-8.18 [1H, d, pyridine], δ7.84 [1H, s, pyridine], δ7.69-7.68 [1H, d, pyridine], δ7.24-7.17 [5H, m, aromatic], δ6.99 [2H, s, COCHCHCO],δ4.56 [1H, m, NHCHCH2C6H5],δ4.11 [4H, s, NHCH2COOH,pyr-CH2], δ3.91-3.79 [2H, dq, NHCH2,],δ3.05-3.00 [1H, m, NHCHCOOH], δ2.80-2.74[2H, m, CH2-mal], δ2.33 [2H,m, CHCH2-C6H5],δ1.75-1.72 [2H, m, CHCH2CH2],δ1.48-1.46 [2H, m, CH2 CH2NH],δ1.28-1.24 [2H, m, CHCH2CH2].ESI-MS計算値:C30H34N6O9[M-H]-:m/z 621, 測定621.
【実施例2】
【0055】
PGGFMLに抗体のFab断片を結合させた化合物PGGFML-IT-Fabを作製した。
【0056】
まず、2-イミノチオラン(2-IT)によりチオール化したFab溶液(100 μL)に、DMFに溶解したPGGFML(50 mg/mL)を1 μL加え、室温で4時間反応した。次いで、0.1 Mリン酸緩衝液(pH 6.0)を用いてヨードアセトアミド溶液(10 mg/mL)を調製し、これを14.8 μL加えた後、室温で30分間反応を行い、未反応のチオール基をアルキル化した。その後、PGGFML-IT-Fabは0.1M リン酸緩衝液(pH 7.0)で平衡化したセファデックス G-50 Fineを用いるスピンカラム法で精製した。この反応により、抗体1分子当たり平均0.95分子のPGGFMLが導入された。
【実施例3】
【0057】
(1)PGGFML-IT-Fabの99mTc標識化
PGGFML-IT-Fabを99mTcにより標識化した。標識化は、PGGFML-IT-Fabを[99mTc(CO)3(OH2)3]+と錯形成反応させることにより実施した。また、対照化合物としてPGのカルボン酸をFabのリジン由来のアミノ基に結合して作製したPG-Fabを同様に99mTcにより標識化して使用した。
【0058】
まず、[99mTc(CO)3(OH2)3]+を調製した。ナトリウムボラノカーボネート(sodium boranocarbonate、3 mg)、四ホウ酸ナトリウム・十水和物(sodium tetraborate decahydrate、1.9 mg)、酒石酸(+)-ナトリウム・二水和物(sodium(+) tartrate dihydrate、4.8 mg)、炭酸ナトリウム(5.7 mg)を窒素置換したミリQ(milliQ)水1.0 mlに溶解し、1.5 mlエッペンドルフチューブに100 μlずつ分注し、凍結乾燥することで、99mTc-アクアキットを作成した。99mTc-アクアキットにジェネレータから溶出した99mTcO4-生理食塩水溶液 100 μlを加え、100 ℃で20分間反応させることで、 [99mTc(CO)3(OH2)3]+を得た。室温まで放冷し、1N HCl水溶液を約10 μl加え、pHを7付近に調整して用いた。[99mTc(CO)3(OH2)3]+の生成はRP-HPLCを用いて確認した。99mTcO4-は2.8 分および[99mTc(CO)3(OH2)3]+は4.9 分に認められ、放射化学的収率は100 %であった。
【0059】
次に、錯形成反応を行った。0.1 Mリン酸緩衝水 pH 7.0 を用いて3.0 mg/mlに調製したPGGFML-IT-FabもしくはPG-Fab溶液10 μlに[99mTc(CO)3(OH2)3]+溶液10 μlを加え、40 ℃で60 分間インキュベーションした。放射化学的収率はサイズ排除HPLC(SE-HPLC)およびRP-TLCにより分析した。放射化学的収率は96.2 %であった。
【0060】
(2)99mTc-PGGFML-IT -Fabのマウス血漿中での安定性の評価
99mTc-PGGFML-IT-Fab溶液を0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7.0)で0.5 mg/mlの濃度に調製し、その溶液20 μLをマウス血漿230 μLに加えた。37 ℃でインキュベーションし、1、3、6時間後に試料の一部を、逆相薄層クロマトグラフィー(RP-TLC)およびSE-HPLCにより分析し、Fabから遊離した放射活性の割合を算出した。
【0061】
その結果、99mTc-PGGFML-IT-Fabおよび99mTc-Fabをマウス血漿と37 ℃でインキュベートしたところ、6時間後まで98.3%以上が未変化体として存在した(表1)。
【0062】
【表1】
JP0006164556B2_000010t.gif

【0063】
(3)RI標識抗体フラグメントの体内動態実験
99mTc-PGGFML-IT-Fabをマウス尾静脈より投与し、それぞれの組織の放射活性の経時変化を測定した。対照化合物として99mTc-PG-Fabおよび[125I]HML-IT-Fabを使用して同様に各組織の放射活性の経時変化を測定した。[125I]HML-IT-Fabは、[125I]-ヨードヒプリル N-マレオイル-L-リジン([125I]HML)にITを介してFab断片を結合させた化合物であり、非特許文献1に記載の方法で作製した。試験した放射性標識化合物の構造を図1に示す。
【0064】
図2に示すように、試験したすべての放射性標識化合物は、ほぼ同じ血中消失速度を示した。一方、99mTc-PG-Fabは投与6時間後でも腎臓において高い放射活性を示したのに対し、99mTc-PGGFML-IT-Fabは投与早期から腎臓の放射活性が大きく低減し、その程度は[125I]HML-IT-Fabと同程度であった。また、血中の放射活性に対する腎臓の放射活性の割合を算出したところ、99mTc-PGGFML-IT-Fabおよび[125I]HML-IT-Fabは99mTc-PG-Fabと比較して著しく低いことが判明した。
【0065】
この結果から、99mTc-PGGFML-IT-Fabは非特異的腎集積が低減していることが明らかになった。このように、PGGFMLを使用し、これに標的物質に結合できる低分子ポリペプチドを結合させ、放射性同位体で標識することにより、非特異的腎集積が低減した放射性標識薬剤を簡便な操作で製造することができる。
【配列表フリ-テキスト】
【0066】
配列番号1:第10フィブロネクチンタイプIII反復領域に由来する環状ペプチド。
図面
【図1】
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【図2】
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