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明細書 :角膜内皮細胞の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6041270号 (P6041270)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
発明の名称または考案の名称 角膜内皮細胞の製造方法
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
C12N   5/074       (2010.01)
C12N   5/0797      (2010.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A61K  35/44        (2015.01)
A61P  27/02        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/071
C12N 5/074
C12N 5/0797
C12N 5/10
A61K 35/44
A61P 27/02
A61L 27/00 D
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 18
全頁数 21
出願番号 特願2013-537580 (P2013-537580)
出願日 平成24年10月5日(2012.10.5)
国際出願番号 PCT/JP2012/076048
国際公開番号 WO2013/051722
国際公開日 平成25年4月11日(2013.4.11)
優先権出願番号 2011222138
2012076080
優先日 平成23年10月6日(2011.10.6)
平成24年3月29日(2012.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月1日(2015.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】榛村 重人
【氏名】羽藤 晋
【氏名】坪田 一男
【氏名】吉田 悟
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査官 【審査官】原 大樹
参考文献・文献 特開2009-268433(JP,A)
羽藤晋ら,角膜実質幹細胞から角膜内皮細胞への分化誘導,再生医療,2011年 2月 1日,Vol.10 増刊号,pp.163
羽藤晋ら,角膜実質幹細胞から角膜内皮細胞への分化誘導,日本角膜学会総会・日本角膜移植学会プログラム・抄録集,2011年 2月,Vol.35th-27th,pp.59
YOSHIDA,S. et al.,Isolation of multipotent neural crest-derived stem cells from the adult mouse cornea.,Stem Cells,2006年12月,Vol.24, No.12,pp.2714-22
TOMA,J.G. et al.,Isolation of multipotent adult stem cells from the dermis of mammalian skin.,Nat. Cell Biol.,2001年 9月,Vol.3, No.9,pp.778-84
LEE,G. et al.,Derivation of neural crest cells from human pluripotent stem cells.,Nat. Protoc.,2010年 4月,Vol.5, No.4,pp.688-701
調査した分野 C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
A61K 35/00-35/768
A61L 27/00-27/60
A61P 1/00-43/00
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を製造する方法であって、該分化誘導培地が、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤及びレチノイン酸を含むものであり、幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞、角膜実質由来神経堤幹細胞又は皮膚由来多能性前駆細胞である、方法。
【請求項2】
さらに、TGFb2およびインスリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該分化誘導培地が、分化誘導初期において、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含み、分化誘導後期において、bFGF、GSK3阻害剤およびROCK阻害剤を含むものである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該分化誘導培地が、分化誘導初期において、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤およびレチノイン酸を含み、分化誘導後期において、ROCK阻害剤を含むものである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
該分化誘導培地が、GSK3阻害剤、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を含むものである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
GSK3阻害剤が、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
ROCK阻害剤が、(+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩(Y-27632)である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
レチノイン酸が、全トランス-レチノイン酸である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項9】
該分化誘導培地が無血清培地である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を分化誘導する方法であって、該分化誘導培地が、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤及びレチノイン酸を含むものであり、幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞、角膜実質由来神経堤幹細胞又は皮膚由来多能性前駆細胞である、方法。
【請求項11】
該分化誘導培地が、さらにTGFb2およびインスリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該分化誘導培地が、分化誘導初期において、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含み、分化誘導後期において、bFGF、GSK3阻害剤およびROCK阻害剤を含むものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該分化誘導培地が、分化誘導初期において、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤およびレチノイン酸を含み、分化誘導後期において、ROCK阻害剤を含むものである、請求項10又は11記載の方法。
【請求項14】
該分化誘導培地が、GSK3阻害剤、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を含むものである、請求項11記載の方法。
【請求項15】
GSK3阻害剤が、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、請求項10又は11記載の方法。
【請求項16】
ROCK阻害剤が、(+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩(Y-27632)である、請求項10又は11記載の方法。
【請求項17】
レチノイン酸が、全トランス-レチノイン酸である、請求項10又は11記載の方法。
【請求項18】
該分化誘導培地が無血清培地である、請求項1017のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞から角膜内皮細胞を製造する方法、幹細胞から角膜内皮細胞を分化誘導する方法に関する。さらに本発明は、該方法により得られた角膜内皮細胞、並びにそれを用いた医薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚情報は、眼球の最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が網膜に達して網膜の神経細胞を興奮させ、発生した電気信号が視神経を経由して大脳の視覚野に達することで認識される。つまり、角膜は、生体が視覚情報を得る際に光が通る通路の前面に位置する。したがって、損傷等により角膜に濁りが生じることは、視覚機能に重大な影響を及ぼす。
【0003】
角膜は、組織学的には、外表面側から、角膜上皮、角膜実質、及び角膜内皮の3層からなる構造を有する。角膜の透明性は、角膜内皮のNa,K-ATPaseによるNa能動輸送(ポンプ機能)とバリア機能(ZO-1等のタイトジャンクションタンパク質)により、含水率が一定に保たれることにより保持されている。
【0004】
角膜内皮細胞の減少などの角膜内皮の損傷により、上記の角膜内皮細胞の機能が損なわれ、角膜実質部に浮腫が生じる。これは角膜の透明性の低下を招き、視力を低下させる。このような状態は、水疱性角膜症と呼ばれている。一方で、ヒトの角膜内皮細胞は、一度障害を受けると再生する能力をほとんど持たないことが知られている。従って、なんらかの傷害により角膜内皮細胞が減少した場合、その治療は角膜移植が有効な、場合によって唯一の手段となる。実際、角膜移植適応例の約半数は角膜内皮機能不全による水疱性角膜症が占める。
【0005】
現在、角膜内皮損傷患者は、角膜の上皮、実質及び内皮の3層構造の全てを移植する全層角膜移植により処置されている。全層角膜移植は、確立された技術ではあるが、日本での角膜提供は不足しているのが現状であり、また、拒絶反応が問題となる。かかる問題点を解消するために、損傷を受けた組織のみを移植する「パーツ移植」が普及しつつある。角膜内皮を温存して、ドナーの上皮と実質のみを移植する深層層状角膜移植(Deep Lamellar Keratoplasty:DLKP)(非特許文献1および2)や内皮を含む一部の角膜だけを移植する角膜内皮移植(特許文献1および2、非特許文献3)等が知られている。しかしながら、例えば角膜内皮移植の場合、その移植材料の供給源となるのは依然として角膜内皮そのものであり、角膜の提供者が限られていることを鑑みれば、全層角膜移植同様、ドナー不足の問題点を克服することができない。さらに角膜内皮細胞は培養が難しく、移植に十分な数の培養細胞を調製することには時間的及び費用的な負担が大きい。
【0006】
近年、マウス角膜実質より幹細胞の特徴をもつ細胞の分離が報告されている(非特許文献4)。神経堤由来であるこの幹細胞は分化誘導培地を用いることで神経細胞や脂肪細胞などにも分化する能力を有する。
【0007】
組織幹細胞/前駆細胞を、TGFb2を添加した培地中で接着培養することにより、これらの細胞を角膜内皮細胞へと分化誘導し得ることが報告されているが(特許文献3)、角膜内皮細胞としての機能(例えばポンプ機能)の有無については示されていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2004-24852号公報
【特許文献2】特開2005-229869号公報
【特許文献3】特開2009-268433号公報
【0009】

【非特許文献1】Aggarwal RK. Br J Ophthalmol 1997;81:178-179.
【非特許文献2】Shimmura S. et al., Cornea 2005;24(2):178-181.
【非特許文献3】Price FW Jr, Price MO. J Refract Surg. 2005;21(4):339-345.
【非特許文献4】Yoshida S. et al., Stem Cells. 2006;24(12):2714-2722.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、角膜内皮細胞をより効率的に製造する方法を提供することであり、より好ましくは幹細胞をより効率的に角膜内皮細胞へと分化誘導することによって角膜内皮細胞を多量に安定して製造することである。さらに本発明は、本発明の方法により得られた角膜内皮細胞を用いた医薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、幹細胞を、特定の分化誘導因子を含む培地中で培養することにより、効率的に角膜内皮細胞へと分化誘導させることが可能なことを見出し、さらに得られた角膜内皮細胞の機能を確認して本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下を提供する。
[1]幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を製造する方法であって、該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである、方法。
[1’]幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を製造する方法であって、該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)及びレチノイン酸を含むものである、方法。
[1’’]該分化誘導培地が、さらにTGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記[1’]記載の方法。
[2]該分化誘導培地が、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびレチノイン酸を含むものである、上記[1’’]記載の方法。
[3]該分化誘導培地が、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含むものである、上記[1]記載の方法。
[3’]該分化誘導培地が、分化誘導初期において、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含み、分化誘導後期において、bFGF、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含むものである、上記[1’’]記載の方法。
[3’’]該分化誘導培地が、分化誘導初期において、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびレチノイン酸を含み、分化誘導後期において、ROCK阻害剤を含むものである、上記[1’’]記載の方法。
[4]該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含むものである、上記[1]記載の方法。
[5]該分化誘導培地が、さらにbFGFを含む、上記[4]記載の方法。
[6]該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を含むものである、上記[1’’]記載の方法。
[7]GSK3阻害剤が、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、上記[1]又は[1’’]記載の方法。
[8]ROCK阻害剤が、(+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩(Y-27632)である、上記[1’’]記載の方法。
[9]レチノイン酸が、全トランス-レチノイン酸である、上記[1]又は[1’’]記載の方法。
[10]幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞又は角膜実質由来神経堤幹細胞である、上記[1]又は[1’’]記載の方法。
[11]幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞である、上記[10]記載の方法。
[12]さらに、iPS細胞から神経堤幹細胞を誘導する工程を含む、上記[11]記載の方法。
[13]幹細胞が、皮膚由来多能性前駆細胞である、上記[1]又は[1’’]記載の方法。
[A]該分化誘導培地が無血清培地である、上記[1]~[13]、[1’]、[1’’]、[3’]及び[3’’]のいずれか1項に記載の方法。
[14]幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を分化誘導する方法であって、該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである、方法。
[14’]幹細胞を分化誘導培地で培養する工程を含む、幹細胞から角膜内皮細胞を分化誘導する方法であって、該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)及びレチノイン酸を含むものである、方法。
[14’’]該分化誘導培地が、さらにTGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記[14’]記載の方法。
[15]該分化誘導培地が、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびレチノイン酸を含むものである、上記[14’’]記載の方法。
[16]該分化誘導培地が、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含むものである、上記[14]記載の方法。
[16’]該分化誘導培地が、分化誘導初期において、レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含み、分化誘導後期において、bFGF、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含むものである、上記[14’’]記載の方法。
[16’’]該分化誘導培地が、分化誘導初期において、ROCK阻害剤、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびレチノイン酸を含み、分化誘導後期において、ROCK阻害剤を含むものである、上記[14’’]記載の方法。
[17]該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含むものである、上記[14]記載の方法。
[18]該分化誘導培地が、さらにbFGFを含む、上記[17]記載の方法。
[19]該分化誘導培地が、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を含むものである、上記[14’’]記載の方法。
[20]GSK3阻害剤が、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、上記[14]又は[14’’]記載の方法。
[21]ROCK阻害剤が、(+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩(Y-27632)である、上記[14’’]記載の方法。
[22]レチノイン酸が、全トランス-レチノイン酸である、上記[14]又は[14’’]記載の方法。
[23]幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞又は角膜実質由来神経堤幹細胞である、上記[14]又は[14’’]記載の方法。
[24]幹細胞が、iPS細胞由来神経堤幹細胞である、上記[23]記載の方法。
[25]さらに、生体外でiPS細胞から神経堤幹細胞を誘導する工程を含む、上記[24]記載の方法。
[26]幹細胞が、皮膚由来多能性前駆細胞である、上記[14]又は[14’’]記載の方法。
[B]該分化誘導培地が無血清培地である、上記[14]~[26]、[14’]、[14’’]、[16’]及び[16’’]のいずれか1項に記載の方法。
[27]上記[1]~[13]、[1’]、[1’’]、[3’]、[3’’]及び[A]のいずれか1項に記載の製造方法で得られた角膜内皮細胞を含む、医薬。
[28]移植用である、上記[27]記載の医薬。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、より効率的に幹細胞から角膜内皮細胞を製造することができる。該製造方法により得られた角膜内皮細胞は、角膜移植用の角膜シート等の角膜内皮細胞の機能不全により生じる疾患の治療用の医薬、そのような疾患を治療するための細胞医療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】角膜内皮機能と角膜内皮細胞マーカーの関係を模式的に示した図である。
【図2】マウス角膜実質由来神経堤幹細胞(COPs)の分化誘導前後での角膜内皮細胞マーカーの発現を比較した結果を示す図である。誘導後全てのマーカーが発現していることが確認された。
【図3】ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞の分化誘導後の角膜内皮細胞マーカーの発現を調べた結果を示す図である。誘導後全てのマーカーが発現していることが確認された。
【図4】ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞誘導細胞、マウスCOPs誘導細胞、マウス角膜内皮細胞、及び3T3細胞におけるポンプ機能を測定した結果を示す図である。1種以上の分化誘導因子を添加した培地で培養したヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞誘導細胞、及びマウスCOPs誘導細胞において、顕著なポンプ機能の発現が確認された。
【図5】マウスCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞をウサギ角膜に移植した結果を示す図である。移植眼は、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が確認された。
【図6】ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞を分化誘導して得られた角膜内皮細胞をウサギ角膜に移植した結果を示す図である。移植眼は、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が確認された。
【図7】ヒトCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞シートの顕微鏡写真である。
【図8】ヒトCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞をウサギ角膜に移植した結果を示す図である。移植眼は、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が確認された。
【図9】マウスSKPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞シートの顕微鏡写真である。
【図10】マウスSKPsから誘導した角膜内皮細胞、マウス培養角膜内皮細胞、3T3細胞、マウスCOPs、及びマウスCOPsから誘導した角膜内皮細胞におけるポンプ機能を測定した結果を示す図である。
【図11】マウスSKPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞をウサギ角膜に移植した結果を示す図である。移植眼は、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が確認された。
【図12】ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞の分化誘導後の角膜内皮細胞マーカーの発現を調べた結果を示す図である。誘導後全てのマーカーが発現していることが確認された。
【図13】Collagen vitrigelをキャリアーとして、ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞を無血清の分化誘導培地で分化誘導して得られた角膜内皮細胞シートの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
本発明において「幹細胞」とは、インビトロにおいて培養することが可能で、かつ、生体を構成する複数系列の細胞に分化し得る細胞をいうが、中でも角膜内皮細胞に分化し得る細胞をいう。具体的には胚性幹細胞(ES細胞)、胎児の始原生殖細胞由来の多能性幹細胞(EG細胞)、精巣由来の多能性幹細胞(GS細胞)、体細胞由来人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS細胞)、ヒトの体性幹細胞(組織幹細胞)が挙げられ、角膜内皮細胞への分化誘導が可能なものが挙げられる。より好ましくはiPS細胞由来の神経堤幹細胞及び角膜実質由来の神経堤幹細胞である。神経堤幹細胞とは、自己複製能と多分化能を持つ多能性の幹細胞であり、脊椎動物の発生過程では、神経管の背側から体中に移動し、様々な組織の形成に寄与することが知られている。角膜内皮は角膜実質と同じく神経堤由来とされている。

【0016】
ES細胞としては、任意の温血動物、好ましくは哺乳動物に由来する細胞を使用できる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒト等が挙げられる。好ましくはヒトに由来するものが使用できる。
具体的には、ES細胞としては、例えば、着床以前の初期胚を培養することによって樹立した哺乳動物等のES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立したES細胞、及びこれらのES細胞の染色体上の遺伝子を遺伝子工学の手法を用いて改変したES細胞が挙げられる。各ES細胞は当分野で通常実施されている方法や、公知文献に従って調製することができる。

【0017】
iPS細胞としては、任意の温血動物、好ましくは哺乳動物に由来する細胞を使用できる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒト等が挙げられる。好ましくはヒトに由来するものが使用できる。
具体的には、iPS細胞としては、例えば、皮膚細胞等の体細胞に複数の遺伝子を導入して得られる、ES細胞同様の多分化能を獲得した細胞が挙げられ、例えばOct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、C-Myc遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(Nat Biotechnol 2008; 26: 101-106)等が挙げられる。他にも、導入遺伝子をさらに減らした方法(Nature. 2008 Jul 31;454(7204):646-50)、低分子化合物を利用した方法(Cell Stem Cell. 2009 Jan 9;4(1):16-9、Cell Stem Cell. 2009 Nov 6;5(5):491-503)、遺伝子の代わりに転写因子タンパク質を利用した方法(Cell Stem Cell. 2009 May 8;4(5):381-4)など、iPS細胞の作成法については技術的な改良が鋭意行なわれているが、作製されたiPS細胞の基本的な性質、すなわち多分化能を有するという点は作出方法によらず同等であり、いずれも本発明の方法に用い得る。
本発明では、より好ましくはiPS細胞由来の神経堤幹細胞を用いる。神経堤幹細胞を用いることで角膜内皮細胞への分化誘導が容易になる。iPS細胞からの神経堤幹細胞の誘導は当分野で知られている手法に従って、あるいはそれに準じた方法で実施することができる。例えばNature Protocols, 2010 vol. 5, No.4, 688-701に記載された方法に準じて実施することができる。

【0018】
体性幹細胞としては、ヒトに由来するものが使用できる。ここで体性幹細胞とは、角膜内皮細胞へと分化し得る細胞であり、例えば角膜実質に由来する神経堤幹細胞(COPs)、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)、皮膚由来多能性前駆細胞(skin-derived precursors:SKPs)等が挙げられる。好ましくはCOPs及びSKPsである。COPsは、例えば非特許文献4に記載の方法によって調製することができる。具体的には、マウス角膜から上皮、内皮を取り除いた後の角膜実質をコラゲナーゼ処置し、EGF、FGF2、B27サプリメント、LIFを添加したDMEM/F12培地で分離した細胞を培養することによってスフェア状の細胞塊を形成する細胞集団を得て調製する。SKPsは、例えばNat Cell Biol., 2001 vol. 3, 778-784に記載された方法に準じて調製することができる。

【0019】
1.細胞の製造方法(細胞の分化誘導方法)
本発明の製造方法は、幹細胞から角膜内皮細胞を製造する方法であるが、より未分化な状態にある細胞をより分化した状態へと分化誘導する方法でもある。

【0020】
本発明は、幹細胞を、GSK3阻害剤、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む培地(以下、本発明の分化誘導培地とも称する)で培養する工程、好ましくはGSK3阻害剤及びレチノイン酸を必須的に含む分化誘導培地で培養する工程を含む、角膜内皮細胞の製造方法を提供する。
本工程で用いる幹細胞は上述の通りであるが、好ましくは角膜内皮細胞への分化が運命付けられた細胞であり、具体的には、iPS細胞由来神経堤幹細胞及び角膜実質由来神経堤幹細胞(COPs)である。皮膚由来多能性前駆細胞(SKPs)を用いることもまた好ましい。例えばiPS細胞やES細胞等のより未分化な幹細胞を用いる場合には上記工程の前に、神経堤幹細胞へと誘導する工程を実施することができ、また、実施することが好ましい。かかる工程は、例えば、Nature Protocols, 2010 vol. 5, No.4, 688-701に記載の方法、及びそれに準じた方法によって実施することができる。

【0021】
セリン/スレオニンプロテインキナーゼであるGSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)は、グリコーゲンの産生やアポトーシス、幹細胞の維持などにかかわる多くのシグナル経路に関与する。GSK3には異なる遺伝子にコードされアミノ酸レベルで高い相同性を有するGSK3αとGSK3βのアイソフォームが存在する。また、GSK3βがWntシグナルにも関与し、GSK3βを阻害することによりWntシグナルが活性化されることが知られている。GSK3阻害剤として、GSK3α阻害剤及びGSK3β阻害剤が挙げられる。GSK3阻害剤として、具体的にはCHIR98014、CHIR99021、ケンパウロン(Kenpaullone)、AR-AO144-18、TDZD-8、SB216763、BIO、TWS-119、SB415286、およびRo3303544等が例示される。これらはいずれも商業的に入手可能であるか、当業者であれば既知文献に従って調製することもできる。本工程では、好ましくは、GSK3β阻害剤が用いられ、特に好ましくは、BIO(6-Bromoindirubin-3'-oxime)が用いられる。GSK3阻害剤の培地中の濃度は、用いる阻害剤の種類によって適宜設定されるが、BIOの場合、通常0.5~5μM、好ましくは1μM程度である。1種又は2種以上のGSK3阻害剤を組み合わせて用いても良い。

【0022】
本工程で用いるレチノイン酸としては、全トランス-レチノイン酸、9-シス-レチノイン酸、11-シス-レチノイン酸、13-シス-レチノイン酸などが例示される。これらはいずれも商業的に入手可能であるか、当業者であれば既知文献に従って調製することもできる。本工程では、好ましくは、全トランス-レチノイン酸である。レチノイン酸の培地中の濃度は、用いるレチノイン酸の種類によって適宜設定されるが、全トランス-レチノイン酸の培地中の濃度は、通常0.5~5μM、好ましくは1μM程度である。

【0023】
TGFb2(形質転換成長因子β2)は、潜在タンパクとして分泌され、細胞表面と細胞外基質で貯えられるジスルフィド結合の二量体タンパクのスーパーファミリーのメンバーである。TGFb2は、細胞外基質の合成と沈着と同様に、細胞の増殖、成長、分化及び運動性を制御することが知られている。本発明で用いるTGFb2の由来は、角膜内皮細胞への分化誘導に有効である限り、特に限定されないが、角膜移植への適用を考慮した場合、ヒト由来であることが好ましい。TGFb2は商業的に入手可能であるか、当業者であれば既知文献に従って調製することもできる。例えば、既知の塩基配列、アミノ酸配列に基づいて合成することができる。TGFb2の培地中の濃度は、通常0.5~10ng/ml、好ましくは1~5ng/ml程度である。

【0024】
インスリンは、膵臓ランゲルハンス島のB細胞が分泌するペプチドホルモンで、各組織のインスリンレセプターに結合して、グルコースの取り込み促進、アミノ酸の取り込み促進、蛋白質、RNA、DNAの合成促進、蛋白質分解の抑制等の広範な薬理作用を有していることが知られている。また、無血清培地への添加因子としても頻用されている。本発明で用いるインスリンの由来は、角膜内皮細胞への分化誘導に有効である限り、特に限定されないが、角膜移植への適用を考慮した場合、ヒト由来であることが好ましい。インスリンは商業的に入手可能であるか、当業者であれば既知文献に従って調製することもできる。例えば、既知の塩基配列、アミノ酸配列に基づいて合成することができる。インスリンの培地中の濃度は、通常0.5~10μM、好ましくは1μM程度である。

【0025】
ROCK阻害剤とは、Rhoキナーゼの活性を阻害する物質をいう。Rhoキナーゼとは、GTP(グアノシン三リン酸)の分解酵素であるGTPアーゼの範疇に含まれる低分子量GTP結合タンパク質(低分子量Gタンパク質)の1種で、アミノ末端にセリン/スレオニンキナーゼ領域、中央部にコイルドコイル領域およびカルボキシ末端にRho相互作用領域を有する。
本工程で用いるROCK阻害剤としては、例えば、1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジン(H-7)、1-(5-イソキノリンスルホニル)-3-メチルピペラジン(イソH-7)、N-2-(メチルアミノ)エチル-5-イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(H-8)、N-(2-アミノエチル)-5-イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(H-9)、N-[2-(p-ブロモシンナミルアミノ)エチル]-5-イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(H-89)、N-(2-グアニジノエチル)-5-イソキノリンスルホンアミド塩酸塩(HA-1004)、1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン二塩酸塩(Fasudil/HA-1077)、(S)-(+)-2-メチル-4-グリシル-1-(4-メチルイソキノリニル-5-スルホニル)ホモピペリジン二塩酸塩(H-1152)、(+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩(Y-27632)が挙げられる。
これらはいずれも商業的に入手可能であり、なかでも特にY-27632が好ましい。ROCK阻害剤の培地中の濃度は、用いる阻害剤の種類によって適宜設定されるが、Y-27632の場合、通常5~20μM、好ましくは10μM程度である。1種又は2種以上のROCK阻害剤を組み合わせて用いても良い。

【0026】
上記した、GSK3阻害剤、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を総称して、本発明の分化誘導因子と称する。本発明では、分化誘導因子は少なくとも1種を分化誘導培地に含める。好ましくは、GSK3阻害剤、レチノイン酸、インスリンおよびROCK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種を分化誘導培地に含める。より好ましくは、GSK3阻害剤およびレチノイン酸を分化誘導培地に含める。さらにより好ましくはGSK3阻害剤、レチノイン酸およびROCK阻害剤を分化誘導培地に含める。特に好ましくはGSK3阻害剤、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤全ての分化誘導因子を含む分化誘導培地を用いる。
レチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を分化誘導培地に含めることも好ましい。GSK3阻害剤およびROCK阻害剤を分化誘導培地に含めることも又好ましく、この場合さらにbFGFを含めることがより好ましい。

【0027】
本工程において、各分化誘導因子は、培地中に同時に添加されてもよく、また、幹細胞の角膜内皮細胞への分化を誘導し得る限り、別個に時間差を設けて培地中に添加されてもよい。各分化誘導因子は培地中に同時に添加されることが簡便であり、また好ましい。分化誘導が所望される細胞の種類によっては、分化誘導の初期(使用する幹細胞によって異なるが、例えば、誘導後0~2日目;あるいは誘導後0~4日目)と後期(使用する幹細胞によって異なるが、例えば、誘導後2日目以降;あるいは誘導後4日目以降)で、異なる分化誘導因子(あるいはその組合せ)が添加されてなる分化誘導培地を用いることが好ましい場合がある。

【0028】
本工程で用いる培地は、上記のように各分化誘導因子を含有している限り特に限定されず、通常、幹細胞を培養するのに用いられる培地(以下、便宜上、基礎培地とも称する)に各分化誘導因子を添加してなるものである。基礎培地としては、例えば、MEM培地、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、及びこれらの混合培地等、動物細胞の培養に用いることができる培地であれば特に限定されない。これらの培地は、商業的に入手可能である。さらに本工程で用いられる培地は、血清含有培地、無血清培地であり得る。好ましくは無血清培地である。本工程で用いられる培地が血清含有培地である場合には、ウシ血清(Bovine Serum)、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)などの哺乳動物の血清が使用でき、該血清の培地中の濃度は0.1~20%、好ましくは1~10%である。
本工程で用いる基礎培地は、好ましくは、MEM培地である。

【0029】
本工程で用いられる培地はまた、血清代替物を含んでいてもよい。血清代替物としては、例えば、アルブミン(例えば、脂質リッチアルブミン)、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素(例えば亜鉛、セレンなど)、増殖因子(EGF、bFGF等)、B-27サプリメント、N2サプリメント、ノックアウトシーラムリプレースメント、2-メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などが挙げられる。これらの血清代替物もまた商業的に入手可能である。また、必要に応じてビタミン、緩衝剤、無機塩類、抗生物質(例えばペニシリンやストレプトマイシン)等を含有できる。

【0030】
本工程で用いる分化誘導培地の好適な一実施態様としては、分化誘導因子としてGSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、レチノイン酸、TGFb2、インスリンおよびROCK阻害剤を含有する血清含有培地である。

【0031】
本工程で用いる分化誘導培地の別の好適な一実施態様としては、分化誘導の初期(分化誘導後0~2日目)には、分化誘導因子としてレチノイン酸、TGFb2およびROCK阻害剤を含有する血清含有培地を用い、分化誘導の後期(分化誘導後2日目以降)には、分化誘導因子としてGSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)、bFGFおよびROCK阻害剤を含有する血清含有培地を用いる。

【0032】
本工程で用いる分化誘導培地の別の好適な一実施態様としては、分化誘導因子としてレチノイン酸、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含有する無血清培地である。

【0033】
本工程で用いる分化誘導培地の別の好適な一実施態様としては、分化誘導の初期(分化誘導後0~4日目)には、分化誘導因子としてレチノイン酸、GSK3阻害剤(好ましくはGSK3β阻害剤)およびROCK阻害剤を含有する無血清培地を用い、分化誘導の後期(分化誘導後4日目以降)には、分化誘導因子としてROCK阻害剤を含有する無血清培地を用いる。

【0034】
本工程は、使用する幹細胞の培養に適した培養温度、通常30~40℃、好ましくは37℃程度で、角膜内皮細胞へと分化誘導するに十分な期間、1~10%、好ましくは5%の二酸化炭素を通気したCOインキュベーター内にて培養することによって実施される。幹細胞としてiPS細胞由来神経堤幹細胞またはCOPs、あるいはSKPsを用いる場合には、好ましくは7~10日間培養する。必要に応じて適宜培地交換を行う(例、3日に1回)。上述のように必要に応じて、添加する分化誘導因子の種類(組合せ)を変えることができ、また好ましい。幹細胞としてより未分化な状態、すなわちiPS細胞を用いる場合には、本発明の方法の前にiPS細胞から神経堤幹細胞へと分化誘導する工程をさらに行う(例えば、Nature Protocols, 2010 vol. 5, No.4, 688-701に記載の方法、およびそれを改良した方法によって実施することができる)が、該工程には通常1カ月程度要する。角膜実質からCOPsへの分化誘導も同様に通常1カ月程度要する(該工程の詳細は非特許文献4及び実施例を参照)。神経堤幹細胞への分化誘導はTwist1(TWIST, DROSOPHILA, HOMOLOG OF, 1)、Sox9(SRY(性決定領域Y)-box9)等の神経堤幹細胞マーカーの発現を調べることによって確認することができる。

【0035】
本工程において、幹細胞が角膜内皮細胞に分化誘導されたことの確認は、角膜内皮細胞としての機能を発揮するためのタンパク質やそれをコードする遺伝子(角膜内皮細胞マーカー)の発現の有無を評価することによって行うことができる。タンパク質の発現は抗原抗体反応を利用した方法等によって、遺伝子の発現はRT-PCRを利用した方法等によって評価することができる。該マーカーとしては、N-cadherin、Na,K-ATPase、Na,HCO-co-transporter、collagen typeIV、collagen typeVIII、carbonic anhydrase、Keratin 8、Keratin 18、Paired-like homeodomain transcription factor 2、Integrin alpha 3、Claudin 10b等が挙げられる。各マーカーの角膜内皮機能との関連性を模式的に図1に示す。

【0036】
また、幹細胞が角膜内皮細胞に分化誘導されたことの確認は、細胞のNa,K-ATPaseポンプ機能を測定することによって評価することができる。細胞のNa,K-ATPaseポンプ機能は、例えばUssing chamberを用いてInvestigative Ophthlmology & Visual Science, 2010 vol. 51, No. 8, 3935-3942やCurrent Eye Research, 2009 vol. 34, 347-354に記載の方法に従って測定することができる。

【0037】
簡便には、細胞形態を評価することによっても分化誘導を確認することができる。内皮細胞へと分化した細胞はモザイク状の増殖形態を示す。

【0038】
本発明の製造方法では、幹細胞を角膜内皮細胞へ効率的に分化誘導することにより、角膜内皮細胞を大量に供給できる。得られた角膜内皮細胞は、角膜移植用の角膜内皮細胞シート等の医薬として利用することができる。

【0039】
2.細胞を含む医薬
本発明は、上記した本発明の製造方法により製造された角膜内皮細胞を含む医薬(本明細書中、本発明の医薬と略記する場合がある)を提供する。
角膜内皮細胞を含む医薬を、角膜内皮細胞シートとして製造する場合には、幹細胞(好ましくはiPS細胞由来神経堤幹細胞、角膜実質由来神経堤幹細胞、皮膚由来多能性前駆細胞)を培養基材上に播種し、本発明の分化誘導培地で培養することによって、該培養基材上で角膜内皮細胞への分化を誘導する。本発明において用いられる培養基材としては、細胞培養用であれば特に限定されないが、例えば、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ラミニン等の天然物由来の高分子材料、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)等の合成高分子材料、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解性高分子材料、ハイドロキシアパタイト、羊膜等が挙げられる。好ましくは、移植の際に拒絶反応を引き起こさないようなものが、移植対象によって適宜設定される。

【0040】
移植には、コンフルエントな状態になった角膜内皮細胞が用いられる。その為には、通常、幹細胞(好ましくはiPS細胞由来神経堤幹細胞、角膜実質由来神経堤幹細胞、皮膚由来多能性前駆細胞)の細胞数を、細胞シートを形成させることができる細胞密度となるよう設定して播種する。通常、播種される細胞密度は、1.0×10~5.0×10細胞数/cm、より好ましくは、1.0×10~1.0×10細胞数/cmである。

【0041】
本発明によって得られる角膜内皮細胞シートは、角膜内皮の移植が必要な疾患、例えば水疱性角膜症、角膜浮腫、角膜白斑等の治療における移植片として用いることができる。

【0042】
また、シート以外の別の態様としては、本発明の医薬は、得られた角膜内皮細胞をそのまま、もしくはフィルター濾過などにより濃縮したペレットなどの細胞塊などとして用いられる。さらに、該医薬は、グリセロール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、プロピレングリコール、アセトアミドなどの保護剤を加え、凍結保存することもできる。該医薬は、医薬として、より安全に利用するために、加熱処理、放射線処理など、角膜内皮細胞としての機能を残しつつ、病原体のタンパク質が変性する程度の条件下での処理に付してもよい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、使用する試薬及び材料は特に限定されない限り商業的に入手可能である。
本明細書中で用いた主な略語はそれぞれ以下の通り。
(略語一覧)
iPS細胞:induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞
COPs:Corneal-derived progenitors:角膜実質由来神経堤幹細胞
SKPs:Skin-derived precursors:皮膚由来多能性前駆細胞
GSK3:Glycogen synthase kinase 3
TGFb2:Transforming growth factor beta-2
EGF:Epidermal Growth Factor
FGF2:Fibroblast growth factor 2
bFGF:Basic fibroblast growth factor
LIF:Leukemia Inhibitory Factor
DMEM:Dulbecco's Modified Eagle's Medium
BME:Basal Medium Eagle
MEM:Minimum Essential Medium
IMDM:Iscove's Modified Dulbecco's Medium
RPMI:Roswell Park Memorial Institute medium
Atp1a1(ATP1A1):Na+,K+-ATPase α1-subunit
Slc4a4:Na+,HCO3-Co-transporter
Car2:Carbonic anhydrase
K8:Keratin 8
K18:Keratin 18
Col4a2:Collagen IV
Col8a2:Collagen VIII
Pitx2:Paired-like homeodomain transcription factor 2
Itga3:Integrin alpha 3
Cdh2:N-cadherin
Cldn10b:Claudin 10b
Gapdh:Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase
【実施例】
【0044】
実施例1:マウスCOPsからの角膜内皮細胞への分化誘導
(材料と方法)
1.マウスCOPsの分離
既報(非特許文献4)に従ってマウスCOPsをマウス角膜から分離した。マウス(C57BL/6マウス)から角膜実質のディスクを切り出し小片として0.05%トリプシン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で37℃、30分間消化した。続いて、78U/mlのコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)および38U/mlのヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrich)で37℃、30分間処理した。実質細胞を機械的に解離させ単一の細胞とし、20ng/ml EGF(Sigma-Aldrich)、10ng/ml FGF2(Sigma-Aldrich)、B27サプリメント(Invitrogen, Carlsbad, CA)、および103U/ml LIF(Chemicon International, Temecula)を含むDMEM/F-12(1:1)培地中で培養した。播種密度1×10細胞/mlで37℃、5%COの加湿雰囲気下で培養した。最初の培養は35mmディッシュで行い、その後25cm培養フラスコで14~21日間培養した。形成されたスフェア(球形の細胞の塊)をさらに75cmの培養フラスコで14~21日間培養した。培地は5~7日毎に交換した。スフェア形成に用いたディッシュおよびフラスコはコーティングしていないポリスチレン製のものを用いた(Asahi Techno Glass (Tokyo, Japan))。かくしてCOPsが得られた。
2.分化誘導培地の調製
基礎培地として、MEM培地(Sigma-Aldrich)を用い、1%ウシ血清及び分化誘導因子を添加した。分化誘導因子としては以下のものを用いた。
(i) BIO(GSK3阻害剤)(濃度:1μM)入手先:Calbiochem
(ii) 全トランス-レチノイン酸(濃度:1μM)入手先:Sigma-Aldrich
(iii) TGFb2(濃度:5ng/ml)入手先:Peprotech
(iv) インスリン(濃度:1μM)入手先:Sigma-Aldrich
(v) Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
(結果)
マウス角膜実質より分離したCOPsを密度1.0×10細胞/mlでゼラチンコートした35mmディッシュ(Asahi Techno Glass)に播種し、分化誘導培地中、37℃、5%CO存在下で7日間培養して分化誘導を行った。得られた細胞を位相差顕微鏡で観察したところ、細胞塊状であったCOPsは内皮細胞とよく似たモザイク状の増殖形態を示すようになった。
【実施例】
【0045】
実施例2:ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞からの角膜内皮細胞への分化誘導(1)
(材料と方法)
1.ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞の調製
既報(Nature Protocols, 2010 vol. 5, No.4, 688-701)に基づいてヒトiPS細胞から神経堤幹細胞を得た。本実施例では、iPS細胞を培養する際にマトリゲルを用いず浮遊培養した点が上記既報とは異なっている。浮遊培養することによってより効率的に神経堤幹細胞へと分化誘導することができた。ヒトiPS細胞は、201B7(山中伸弥教授(京都大学)、岡野栄之教授(慶應大学)から供与された)を用いた。
2.分化誘導培地の調製
実施例1で用いた分化誘導培地と同様にして調製した。
(結果)
ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞を密度1.0×10細胞/mlでゼラチンコートした35mmディッシュ(Asahi Techno Glass)に播種し、分化誘導培地中、37℃、5%CO存在下で7日間培養して分化誘導を行った。得られた細胞を位相差顕微鏡で観察したところ、分化誘導培地中で培養した細胞は内皮細胞とよく似たモザイク状の増殖形態を示すようになった。
【実施例】
【0046】
実施例3:角膜内皮細胞の評価(角膜内皮細胞マーカー測定)
実施例1と同様にして調製された、COPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞と実施例2と同様にして得られた、ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞を分化誘導して得られた角膜内皮細胞とを用いて、角膜内皮細胞マーカーの発現状況をRT-PCR法により調べた。用いたプライマーを表1(マウス用)および表2(ヒト用)に示す。
【実施例】
【0047】
【表1】
JP0006041270B2_000002t.gif
【実施例】
【0048】
【表2】
JP0006041270B2_000003t.gif
【実施例】
【0049】
分化誘導前後でのCOPsにおける角膜内皮細胞マーカーの発現を比較した結果を図2に示す。
ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞の分化誘導後の細胞における、角膜内皮細胞マーカーの発現を調べた結果を図3に示す。
いずれも、分化誘導後、全てのマーカーが発現していることがわかる。
【実施例】
【0050】
実施例4:角膜内皮細胞の評価(Na,K-ATPaseポンプ機能測定)
実施例1で得られたCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮細胞と実施例2で得られたヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞を分化誘導して得られた角膜内皮細胞とを用いて、Na,K-ATPaseポンプ機能を測定した。
対照として、培養マウス角膜内皮細胞、3T3細胞、分化誘導前のCOPs、1種の分化誘導因子(TGFb2、又はGSK3阻害剤)のみを含有する培地で培養したCOPsについてもポンプ機能を測定した。
各細胞を専用のポリエステルトランスウェル(Corning Incorporated)上でコンフルエントにした後、Ussing chamber(Physiological Instrument; EM-CSYS-2)に挿入してウェルの表裏のshort circuit current (SCC)を測定し、10μMのウワバイン添加前後のSCCの差よりNa,K-ATPaseポンプ機能を定量した。結果を図4に示す。
本発明の分化誘導培地を用いて得られた角膜内皮細胞は、優れたポンプ機能を有していることが示された。
【実施例】
【0051】
実施例5:角膜移植実験
(準備)
COPsあるいはヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞を蛍光色素PKH26(赤色)(Sigma-Aldrich)で標識後、ゼラチンコートした1型コラーゲンシート上で実施例1で調製した分化誘導培地と同様の分化誘導培地で37℃、5%CO存在下、7日間培養し、コンフルエントの細胞シート(I)を作成した。
(手順)
1.ヒアルロン酸で前房を形成する。
2.ウサギの角膜を7.0mmトレパンで打ち抜く。
3.購入したホスト角膜(フナコシ)を8.0mmパンチで打ち抜き、デスメ膜をセッシで剥離する(II)。
4.8.0mmパンチでIの細胞シートを打ち抜き、IIの角膜後面にのせ、MQAスポンジで水分を吸収させ、数秒間自然乾燥させる(III)。
5.IIIをもとのウサギの角膜に戻し、10-0ナイロンで縫合した。
(測定)
角膜厚は角膜厚測定装置(トーメーコーポレーション;SP-100)を、眼圧は眼圧測定装置(ホワイトメディカル;AccuPen(ACCUTOME社製))を、それぞれ用いて測定した。
(結果)
COPsを分化誘導して得られた角膜内皮シートを移植したウサギ眼を図5に、ヒトiPS細胞を分化誘導して得られた角膜内皮シートを移植したウサギ眼を図6に示す。いずれの角膜内皮シートも移植することで、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が認められた。
【実施例】
【0052】
実施例6:ヒトCOPsからの角膜内皮細胞への分化誘導
(材料と方法)
1.ヒトCOPsの分離
実施例1を一部改変することによりヒトからCOPsを得た。具体的には、ヒト角膜から上皮、内皮を取り除いた後の角膜実質をコラゲナーゼ処置し、EGF、FGF2、B27サプリメント、N2サプリメント、ヘパリンを添加したDMEM/F12培地で分離した細胞を培養することによってスフェア状の細胞塊を形成する細胞集団を得て調製した。
2.分化誘導培地の調製
基礎培地として、MEM培地(Sigma-Aldrich)を用い、1%ウシ血清及び分化誘導因子を添加した。分化誘導因子としては以下のものを用いた。
(分化誘導培地A:分化誘導0~2日目)
(i)全トランス-レチノイン酸(濃度:1μM)入手先:Sigma-Aldrich
(ii)TGFb2(濃度:1ng/ml)入手先:Peprotech
(iii)Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
(分化誘導培地B:分化誘導2日目以降)
(i)BIO(GSK3阻害剤)(濃度:1μM)入手先:Calbiochem
(ii)bFGF(濃度:40ng/ml)入手先:Sigma Aldrich
(iii)Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
(結果)
実施例5と同様にして、ヒト角膜より分離したCOPsをゼラチンコートした1型コラーゲンシート上で分化誘導培地中、37℃、5%CO存在下、7日間培養し(0~2日間は分化誘導培地Aで、2日目以降は同シート上で培地を分化誘導培地Bに交換して培養した)、コンフルエントの細胞シートを作成した(図7)。ヒトCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮シートを実施例5と同様にしてウサギの角膜に移植した。角膜内皮シートを移植することで、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が認められた(図8)。
【実施例】
【0053】
実施例7:マウスSKPsからの角膜内皮細胞への分化誘導
(材料と方法)
1.マウスSKPsの分離
既報(Nat Cell Biol., 2001 vol. 3, 778-784)に従ってマウス皮膚からSKPsを得た。
2.分化誘導培地の調製
実施例1と同様にして分化誘導培地を調製した。
(結果)
実施例5と同様にして、マウス皮膚より分離したSKPsを蛍光色素PKH26(赤色)(Sigma-Aldrich)で標識後、ゼラチンコートした1型コラーゲンシート上で分化誘導培地中、37℃、5%CO存在下、7日間培養し、コンフルエントの細胞シートを作成した(図9)。
得られたSKPsを分化誘導して得られた角膜内皮シートを用いて、実施例4と同様にしてNa,K-ATPaseポンプ機能を測定した。対照として、培養マウス角膜内皮細胞、3T3細胞、分化誘導前のマウスCOPs、実施例5で調製したマウスCOPsを分化誘導して得られた角膜内皮シートについてもポンプ機能を測定した。結果を図10に示す。
本発明の分化誘導培地を用いて得られた角膜内皮細胞は、優れたポンプ機能を有していることが示された。
さらに、マウスSKPsを分化誘導して得られた角膜内皮シートを実施例5と同様にしてウサギの角膜に移植した。角膜内皮シートを移植することで、内皮機能不全による角膜浮腫が改善され、さらに角膜厚においても改善効果が認められた(図11)。
【実施例】
【0054】
実施例8:ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞からの角膜内皮細胞への分化誘導(2)
実施例2と同様にして得られた、ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞を分化誘導して得られた角膜内皮細胞を用いて、角膜内皮細胞マーカーの発現状況をRT-PCR法により調べた。用いたプライマーを表3に示す。
【実施例】
【0055】

【表3】
JP0006041270B2_000004t.gif

【実施例】
【0056】
本実施例では基礎培地として、MEM培地(Sigma-Aldrich)を用い、分化誘導因子を添加した無血清培地を分化誘導培地として用いた。分化誘導因子としては以下のものを用いた。
(i) BIO(GSK3阻害剤)(濃度:1μM)入手先:Calbiochem
(ii) 全トランス-レチノイン酸(濃度:1μM)入手先:Sigma-Aldrich
(iii)Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
結果を図12に示す。いずれも、分化誘導後、全てのマーカーが発現していることがわかる。
【実施例】
【0057】
実施例9:ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞からの角膜内皮細胞への分化誘導(3)
(材料と方法)
1.ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞
実施例2と同様にしてヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞を調製した。
2.分化誘導培地の調製
基礎培地として、MEM培地(Sigma-Aldrich)を用い、分化誘導因子を添加した。血清は添加しなかった(無血清培地)。分化誘導因子としては以下のものを用いた。
(分化誘導培地A:分化誘導0~4日目)
(i)全トランス-レチノイン酸(濃度:1μM)入手先:Sigma-Aldrich
(ii) BIO(GSK3阻害剤)(濃度:1μM)入手先:Calbiochem
(iii)Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
(分化誘導培地B:分化誘導4日目以降)
(i)Y-27632(ROCK阻害剤)(濃度:10μM)入手先:ナカライテスク
(結果)
実施例2と同様にして調製した、ヒトiPS細胞由来の神経堤幹細胞をフィブロネクチンコートした1型コラーゲンシート上で分化誘導培地A中、37℃、5%CO存在下、2日間培養した後、細胞をいったん回収した。回収した細胞を分化誘導培地A中、ゼラチン及びラミニンでコートしたコラーゲンビトリゲル(Collagen vitrigel)上に播種し(5.0×10細胞/cm)、37℃、5%CO存在下、2日間培養した。培地を分化誘導培地Bに交換して、さらに37℃、5%CO存在下、3日間培養し、コンフルエントの細胞シートを作成した(図13)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法によれば、より効率的に幹細胞から角膜内皮細胞を製造することができる。該製造方法により得られた角膜内皮細胞は、角膜移植用の角膜シート等の角膜内皮細胞の機能不全により生じる疾患の治療用の医薬、そのような疾患を治療するための細胞医療に用いることができる。
【0059】
本出願は、日本で出願された特願2011-222138(出願日2011年10月6日)及び特願2012-076080(出願日2012年3月29日)を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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