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明細書 :アブラヤシ由来のバイオマス粉末およびその製造方法ならびにバイオマス複合成形体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5946226号 (P5946226)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
発明の名称または考案の名称 アブラヤシ由来のバイオマス粉末およびその製造方法ならびにバイオマス複合成形体およびその製造方法
国際特許分類 B27N   1/00        (2006.01)
B27N   3/02        (2006.01)
B27N   3/00        (2006.01)
FI B27N 1/00
B27N 3/02 A
B27N 3/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2013-545787 (P2013-545787)
出願日 平成24年11月20日(2012.11.20)
国際出願番号 PCT/JP2012/007427
国際公開番号 WO2013/076960
国際公開日 平成25年5月30日(2013.5.30)
優先権出願番号 2011256880
優先日 平成23年11月25日(2011.11.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年9月24日(2015.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】西田 治男
【氏名】安藤 義人
【氏名】永田 浩一
【氏名】白井 義人
【氏名】スビアン カルプチャーミー
【氏名】アーマド ノルディン ノール イダ アマリナ
【氏名】ヒダヤ ビンティ アリフィン
【氏名】モハド アリ ハッサン
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特開平11-42611(JP,A)
特開平6-285819(JP,A)
特開2000-6116(JP,A)
特開2004-209462(JP,A)
特開2012-40701(JP,A)
調査した分野 B27N 1/00
B27N 3/00
B27N 3/02
B27J 7/00
B27K 5/00
B27L 11/06
特許請求の範囲 【請求項1】
熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有し、50質量%以上が長径1~500μmの範囲にあるアブラヤシ由来のバイオマス粉末。
【請求項2】
アブラヤシの中果皮から油分を絞り取った後の繊維質残滓を原料とすることを特徴とする請求項1記載のバイオマス粉末。
【請求項3】
アブラヤシの茎葉から糖成分を絞り取った後の繊維質残滓を原料とすることを特徴とする請求項1記載のバイオマス粉末。
【請求項4】
アブラヤシの果実から小果を取り去った後の空房を原料とすることを特徴とする請求項1記載のバイオマス粉末。
【請求項5】
原料を170~250℃の水蒸気を用いて10分~6時間処理した後に、粉砕することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオマス粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオマス粉末と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のプレポリマーとを5:95~80:20の質量比で含有する組成物を成形してなるバイオマス複合成形体。
【請求項7】
溶融成形することを特徴とする請求項6記載のバイオマス複合成形体の製造方法。
【請求項8】
射出成形法または押出成形法で成形することを特徴とする請求項7記載のバイオマス複合成形体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱帯地域において豊富に存在しかつ利用が不十分であるアブラヤシ由来のバイオマスの利用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラヤシは、中果皮と内果皮から油脂が採取される。作付け単位面積当たり得られる油脂の量は植物中屈指であるため、熱帯地域、とりわけマレーシアとインドネシアにおいて、プランテーション農法により大規模に栽培されている。アブラヤシの成木は単一の幹(トランク)からなり、高さ20mに達する。茎葉はフロンドと呼ばれ、羽状で長さ3~5mほどのものが、年間に若木では約30枚、樹齢10年以上の木では約20枚が新しく生える。アブラヤシの果実はフレッシュフルーツバンチ(以下、FFBと略記する)と呼ばれ、1房のFFBは鶏卵大の小果が200個ほど集まったものである。重さは1房あたり40-50kgほどになる。
FFBの個々の小果は油分の多い多肉質の中果皮(メソカープ)と、同じく油分に富んだ1つの果実殻(シェル)から構成される。小果から油分を絞り取った後の中果皮部分はセルロース繊維質に富みメソカープファイバー(以下、MFと略記する)と呼ばれる。また、小果を取り去った後の空房をエンプティーフルーツバンチ(以下、EFBと略記する)という。
【0003】
プランテーションから排出されるバイオマスは膨大であり、フロンド、MF、およびEFBともに年間排出量はそれぞれ1千万トン以上といわれている。これらのバイオマスはプランテーションやパーム油の製造プロセスで再利用されており、たとえば、フロンドはアブラヤシの根元に敷き詰められ肥料として用いられ、またMFはパーム油の搾油工場の燃料として用いられている。フロンドやMFは上質のセルロース繊維質に富むにもかかわらず、これら膨大な量のバイオマスの利用は限定的である。
【0004】
たとえばMFやフロンドの利用方法として、MFやフロンドを酸の存在下に蒸解してパルプ及び有機酸変性リグニンを採取する方法(特許文献1参照)、ヤシ繊維を主成分とする繊維マットを熱硬化性樹脂で接着させた後、圧縮成形により得られる内装用の断熱材(特許文献2参照)、パレットやトレイ等の圧縮成形体(特許文献3参照)、さらにMFを放射線及び/又は高圧蒸気の存在下で殺菌処理した後に飼料として用いる方法(特許文献4参照)などが開示されているにすぎない。
また、同じアブラヤシ果実由来のEFBは、MFやフロンドと同様の利用方法の他に、バイオマスエタノールへの転換(特許文献5参照)、断熱壁体構造(特許文献6参照)、成形ボード(特許文献7参照)などの工業製品素材として利用されている。
【0005】
フロンド、MFおよびEFBを工業用繊維質素材として利用しようとする場合、幾つかの問題点がある。たとえば、大量の水分を含有すること、組成や形状が不均質であること、および加熱時に臭気成分が揮発してくることなどである。
これらの問題を解決することで、これら膨大な量のバイオマスをより付加価値の高い工業用繊維質素材として有効利用することが可能となる。
【0006】
アブラヤシ由来のバイオマスから効率的に脱水乾燥する方法として、120~300℃の油中にて、その温度における油の飽和蒸気圧以上の加圧下で処理する方法が開示されている(特許文献8参照)。しかしこの技術はバイオマスを燃料化するための方法であり、工業用素材とするにはさらに脱油プロセスが必要となるため好適な乾燥方法ではない。
【0007】
不均質な組成や形状をより均質なものとするには、化学的に成分を分離するかあるいは微細に粉砕・混合して物理的に均質なものとする方法がある。
化学的な方法としては、たとえば、EFBの場合、苛性ソーダ等を用いた蒸解が用いられる(特許文献9参照)。化学的処理によって成分を分離した場合、黒液と呼ばれるリグニン成分が溶解した廃液が排出され、その処理がまた課題となっている。物理的な均質化方法としては、茎葉の中の小葉のような柔らかい成分を機械的に微粉砕し、凍結乾燥等の方法で乾燥させて食品へ応用する技術が開示されている(特許文献10参照)。しかし、EFBのような繊維質のバイオマスは、その強固な繊維組織のために機械的な方法での破砕・粉砕は容易ではない。
ところで、竹繊維を用いたグリーンコンポジット開発についてのものであるが、竹繊維の取出し方法として、孟宗竹を多数回繰り返して爆砕処理して長繊維を得、その後ミキサーで解繊し竹単繊維を得る方法や、爆砕処理にさらにアルカリ処理を組み合わせて竹繊維を得る方法が開示されている。そして、これらの方法で得られる竹繊維の予備成形体をホットプレス処理することにより、得られるコンポジットの強度向上が図れるとされている(非特許文献1参照)。
しかし、竹の組織構造とアブラヤシの組織構造は、大きく異なるため、この竹についての技術をアブラヤシに適用したときに所望の効果が得られるかどうかは定かではない。
【0008】
アブラヤシ由来のバイオマスを加熱した際に発生する特有の臭気は、熱分解・気化した成分に基づくものである。バイオマスは、通常、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンからなっており、これらの主成分の内、ヘミセルロースが最も低温で分解しやすく(非特許文献2参照)、酢酸や蟻酸などの揮発物質を発生する。このヘミセルロースの分解は180~320℃の温度範囲にピークがあり、一般的な熱可塑性プラスチックの溶融成形温度と重なる。従って、バイオマスと熱可塑性プラスチックとをブレンドして、200℃付近まで加熱すると、ヘミセルロース成分が分解し、特有の臭気を発する。
【0009】
なお、アブラヤシ由来のバイオマスを、特に均質処理することなく、透湿度が良好で強度の大きい繊維板として利用する方法として、EFBの繊維成分である直径100~600μm、長さ5~30cmの屈曲性と剛性の高い素材を解繊し、熱硬化性樹脂を接着剤成分として加えて、100~200℃の温度範囲で圧縮成形する方法が開示されている(特許文献11参照)。しかし、この方法では、複雑な形状の成形体を効率的に得ることが難しい。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2006-112004号公報
【特許文献2】特開平10-138210号公報
【特許文献3】特表2008-502517号公報
【特許文献4】特開平09-168367号公報
【特許文献5】特開2009-125050号公報
【特許文献6】特開平10-183797号公報
【特許文献7】特開平06-285819号公報
【特許文献8】特表2004-209462号公報
【特許文献9】特表2010-090487号公報
【特許文献10】特開2005-218425号公報
【特許文献11】特開2000-006116号公報
【0011】

【非特許文献1】高橋宣也ら、Bamboo Journal No.22、2005年、81-92頁
【非特許文献2】X. F. Sunら、CarbohydrateResearch、Vol. 340、2005年、97-106頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする第一の問題点は、従来のアブラヤシ由来のバイオマスが高い含水率を示し、不均質な組成や形状を有しており、そのままでは工業用繊維質素材として用いるのは難しい点である。
【0013】
また、解決しようとする第二の問題点は、アブラヤシ由来のバイオマスと樹脂との複合化に際し、微細な粉末化が難しく、かつ熱分解に伴う臭気成分の発生のため、熱可塑性樹脂の特性を活かした溶融射出成型や押出成形が難しい点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るアブラヤシ由来のバイオマス粉末は、熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有し、50質量%以上が長径1~500μmの範囲にある。
【0015】
また、本発明に係るアブラヤシ由来のバイオマス粉末は、好ましくは、アブラヤシの中果皮から油分を絞り取った後の繊維質残滓(MF)を原料とすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るアブラヤシ由来のバイオマス粉末は、好ましくは、アブラヤシの茎葉から糖成分を絞り取った後の繊維質残滓(フロンドファイバー)を原料とすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るアブラヤシ由来のバイオマス粉末は、好ましくは、アブラヤシの果実から小果を取り去った後の空房を原料とすることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るバイオマス粉末の製造方法は、上記のバイオマス粉末の製造方法であって、原料を170~250℃の水蒸気を用いて10分~6時間処理した後に、粉砕することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るバイオマス複合成形体は、上記のバイオマス粉末と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のプレポリマーとを5:95~80:20の質量比で含有する組成物を成形してなる。
【0020】
また、本発明に係るバイオマス複合成形体の製造方法は、溶融成形してバイオマス複合成形体を得ることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るバイオマス複合成形体の製造方法は、射出成形法または押出成形法で成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るバイオマス粉末は、50質量%以上が長径1~500μmの範囲にあるため、物理的に均質な工業用繊維質素材として利用することが可能である。また、熱可塑性樹脂との混合物を射出成型や押出成形のような複雑な成形体を得ることが可能な成形方法に適用することができる。このとき、バイオマス粉末が熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有するため、成形体を得る際に、バイオマス中のヘミセルロース成分が分解することで発生する臭気成分の量を低減することができる。
また、本発明に係るバイオマス粉末の製造方法は、本発明に係るバイオマス粉末を好適に得ることができる。
また、本発明に係るバイオマス複合成形体は、繊維質のバイオマス粉末と熱可塑性樹脂とを5:95~80:20の質量比で含有する組成物を成形したものであるため、機械的物性に優れた複合成形体を好適に得ることができる。
また、本発明に係るバイオマス複合成形体の製造方法は、本発明に係るバイオマス複合成形体を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、バイオマス粉末作製実施例2で作製した中果皮繊維粉末の光学顕微鏡写真である。
【図2】図2は、バイオマス粉末作製実施例2で作製した中果皮繊維粉末の長径サイズ分布図である。
【図3a】図3aは、バイオマス粉末作製実施例1、2および比較例1で作製した中果皮繊維粉末の熱重量減少曲線(TG)である。
【図3b】図3bは、バイオマス粉末作製実施例1、2および比較例1で作製した中果皮繊維粉末の熱重量減少微分曲線(DTG)である。
【図4】図4は、バイオマス粉末作製実施例3で作製した茎葉繊維粉末の光学顕微鏡写真である。
【図5】図5は、バイオマス粉末作製実施例3で作製した茎葉繊維粉末の長径サイズ分布図である。
【図6a】図6aは、バイオマス粉末作製実施例3および比較例2で作製した茎葉繊維粉末の熱重量減少曲線(TG)である。
【図6b】図6bは、バイオマス粉末作製実施例3および比較例2で作製した茎葉繊維粉末の熱重量減少微分曲線(DTG)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態という。)について、以下に説明する。
アブラヤシ(oil palm, Elaeis)は、ヤシ科アブラヤシ属に分類される植物の総称であり、西アフリカを原産とするギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)と、中南米の熱帯域原産のアメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)の2種が知られている。本発明の実施の形態において、用いるアブラヤシの種類を限定するものではない。
また、本発明の実施の形態において、アブラヤシとは幹(トランク)、茎葉(フロンド)、果実(FFB)、中果皮(メソカープ)、果実殻(シェル)からなる総体的なものを意味するが、とりわけ、中果皮から油分を絞り取った後のセルロース繊維質が豊富な成分であるMFと糖成分を絞り取った後の繊維質のフロンドファイバー、および果実から小果を取り去った後の空房(EFB)が本実施の形態のバイオマス粉末の原料として好適である。

【0025】
アブラヤシ由来のバイオマスは、その主要な構成成分として、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンからなる。
ヘミセルロースはセルロースとリグニン、あるいはセルロース同士を結合させる接着剤の役割を担っている。このヘミセルロースは、たとえば、バイオマス粉末を樹脂にブレンドして高温で成形した際、分解生成物が揮発し、ブレンド体の物性を低下させるのみならず、作業環境の悪化を引き起こす。
本実施の形態のバイオマス粉末は、化学的には、主要成分としてのセルロースとリグニン、ヘミセルロースの混合物であり、さらにその他の微量成分としてのシリカ微粒子などの混合も含まれる。

【0026】
本実施の形態のバイオマス粉末は、熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有する。熱重量減少の微分曲線は、示差熱重量測定装置(Differential Thermal Gravimetrical Analyzer)を用いて窒素中で10℃/分の昇温速度で測定した熱重量曲線を機械的に微分することで測定することができる。
熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲のピークは、ヘミセルロースの分解に基づくものであり、本実施の形態のバイオマス粉末がこの温度範囲に実質的にピークを有さないということは、バイオマス粉末がヘミセルロースを含まないか、あるいはヘミセルロース含量が示差熱重量測定装置の検出限界以下であることを意味する。300~400℃の温度範囲のピークは、セルロースの分解に基づくものであり、バイオマス粉末がこの温度範囲にピークを有するということは、バイオマス粉末がセルロースを含むことを示している。
すなわち、本実施の形態のバイオマス粉末は、セルロース成分に富み、ヘミセルロース成分が上記測定方法によっては検出されない。

【0027】
本実施の形態のバイオマス粉末は、形状が短繊維状である。
本実施の形態のバイオマス粉末は、50質量%以上が長径1~500μmの範囲にある。ここで長径とは、短繊維状粒子の長軸径をいう。長径1~500μmの範囲の粒子の質量比率は、短繊維状のバイオマス粉末の粒子の形状を楕円体と見做しかつ比重を一定と見做して体積Vの比率を質量の比率と同一として、顕微鏡観察により、長軸径aと短軸径bの測定から、下記式により測定粒子の長径と質量を計測することで得ることができる。ここで、πは円周率である。
体積V=4πab/3
なお、長径1~500μmの範囲の粒子の質量比率の概略値は、篩い分け法により簡便に得ることもできる。
バイオマス粉末は、上記の長径範囲の粉末が、80質量%以上あることが好ましく、90質量%以上あることがより好ましい。また、バイオマス粉末は、上記の含有量の粉末の長径が10~250μmの範囲にあることが好ましく、50μm~150μmの範囲にあることがより好ましい。
バイオマス粉末が長径が500μmを超える粒子を含む場合、熱可塑性樹脂との複合材の原料として用いるときに、熱可塑性樹脂の溶融成形時に溶融流動性を阻害する恐れがある。このとき、さらに、1μm~500μmの範囲にあるバイオマス粉末の含有量が50質量%を下回ると、バイオマス粉末を樹脂と混合して加熱溶融成形する際に、混合物の流動性を阻害し、成形機のスクリュー内部で詰まってしまう場合がある。一方、バイオマス粉末が長径1μmを下回る粒子を含み、極めて小さい粉末が多くなると、取り扱いが容易ではなくなる。とりわけ、溶融した樹脂複合体の流動性を要求する射出成型においては、1μm篩上~500μm篩下の範囲にあるバイオマス粉末の含有量が90質量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であることが望ましい。

【0028】
以上説明した本実施の形態のバイオマス粉末は、物理的に均質な工業用繊維質素材として利用することが可能である。また、熱可塑性樹脂との混合物を射出成型や押出成形のような複雑な成形体を得ることが可能な成形方法に適用することができる。このとき、バイオマス粉末が熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有するため、成形体を得る際に、バイオマス中のヘミセルロース成分が分解することで発生する臭気成分の量を低減することができる。

【0029】
つぎに、本実施の形態のバイオマス粉末を好適に得ることができる本実施の形態のバイオマス粉末の製造方法について説明する。
本実施の形態のバイオマス粉末の製造方法は、アブラヤシ由来の原料を170~250℃の水蒸気を用いて10分~6時間処理した後に、所望のサイズにまで粉砕する。ここで、アブラヤシ由来の原料はそれ自体バイオマスであるが、得られる本実施の形態のバイオマス粉末と区別するために、原料と呼ぶ。

【0030】
処理とは、170~250℃に加熱された水蒸気をバイオマスに接触させることである。170℃未満では、水蒸気処理効果、すなわち、原料中のヘミセルロースを主体とする低温分解成分の分解の程度が小さく、処理に長時間を要する。さらに、後段で述べるように170℃は逆転移温度であるため、その温度以上では乾燥処理も同時に実施可能である。一方、250℃を超える温度では、原料の分解が必要以上に進行しやすく、炭化が起こりやすくなってしまうので好ましくない。加熱水蒸気処理温度としては、より好ましくは190~240℃、さらに好ましくは、200~230℃の範囲である。

【0031】
ここで170~250℃の水蒸気とは、飽和圧力から常圧の圧力範囲で170~250℃の温度範囲にある水蒸気である。このような水蒸気には、常圧過熱水蒸気と加圧飽和水蒸気がある。常圧過熱水蒸気とは、定容積状態で加熱して得られる加圧飽和水蒸気と異なり、膨張できる状態で100℃の水蒸気をさらに加熱して得られる、標準気圧下で100℃以上の過熱水蒸気をいう。

【0032】
加圧飽和水蒸気のメリットは、加圧であるため、(1)水蒸気中の水分子濃度が高く、反応が速く短時間で処理が可能、(2)水蒸気が、反応の間、圧力容器中に保持され放出されないので、水蒸気の利用効率が高いなどの点である。一方、常圧過熱水蒸気のメリットは、圧力が常圧であるため、(1)たとえば反応容器を用いる場合、容器の耐圧が不要であり、(2)スケールアップが容易であるという点である。また、(3)常圧過熱水蒸気によって分解除去される成分が、水蒸気流に乗って排出されるため、たとえばば反応容器を用いる場合、反応容器内で分解気化物が液化滞留しない点である。さらに、(4)170℃の水の逆転移温度以上では、乾燥空気以上に処理物の乾燥速度が速くなるため、処理後の生成物の乾燥工程が不要という点である。
加圧飽和水蒸気と常圧過熱水蒸気は、双方ともに上記したような異なるメリットを有しているため、その他の条件(処理量、処理時間、分解生成物の排出条件など)に合わせて、適宜、加圧飽和~常圧過熱の間で選択することができる。バイオマスを大量に処理する場合には、常圧過熱水蒸気処理および圧力ダンパーを用いた微加圧条件下での水蒸気処理がより好ましい処理方法である。さらに、バイオマスの乾燥を同時に実施する場合には、逆転移温度(170℃)以上での常圧過熱水蒸気処理がより好適な処理方法である。

【0033】
加熱水蒸気処理は、反応容器内にアブラヤシ由来の原料を配置し、反応容器中に水蒸気を導入して行うことができる。この場合、原料を反応容器の内部に収容できる寸法に切って用いる。なお、大型の常圧反応容器を用いれば、原料の裁断は実質的にほとんど不要になる。また、加熱水蒸気処理は、連続コンベアー上にバイオマスを乗せて移動させ、常圧過熱水蒸気を吹き付けて行う方式を採用してもよく、この場合、原料の裁断は実質的に不要となり、また、連続処理により処理効率が高い。さらに、加熱水蒸気処理が、ロータリーキルン内で加熱水蒸気を吹き付けて行う方式を採用してもよく、この場合、原料と水蒸気との接触がより均一となり、さらに、原料の破砕および粉砕を装置内で同時に行うこともできるため、処理効率が高い。

【0034】
加熱水蒸気処理の時間は、加圧飽和水蒸気と常圧加熱水蒸気のどちらを使うか、また処理温度を何℃で行うかによって異なる。加圧飽和水蒸気を用いる場合、好ましくは、加圧昇温と減圧降温プロセスを含めて30分~4時間の範囲で選択する。一方、常圧過熱水蒸気を用いる場合、反応進行は加圧飽和水蒸気に比べて遅いが、圧力の昇降プロセスが不要であるため、好ましくは、30分~7時間の範囲で選択する。この中で、正味の水蒸気処理時間としては、加圧飽和水蒸気を用いる場合で10分~3時間、常圧過熱水蒸気を用いる場合で30分~6時間、より好ましくは、1~3時間である。

【0035】
加熱処理後のアブラヤシ由来の原料は、易分解性のヘミセルロースが優先的に分解し、揮発分としてその一部が除去されているため、容易に粉砕することができる。粉砕前に必要に応じて行う破砕および粉砕は、適宜の装置を用いて行うことができる。また、このとき、粗粉砕後に微粉砕を行う2段処理を行ってもよい。粉砕に用いる装置としては、一般公知の破砕およびび粉砕装置が使用可能である。好適に用いられる粉砕装置を例示すれば、たとえばば、ハンマーミル、カッターミル、ピンミル、クラッシャーミル、ボールミル、ロッドミル、バーミル、ディスクミル、ブレードミル、振動ミル、およびこれらの個々の方法を組み合わせた粉砕方法である。

【0036】
粉砕された直後のバイオマス粉末は、そのままでも本実施の形態のバイオマス粉末として使用できるが、より高度な特性を発現させるために、分級操作によって、粒度分布を制御することが好適である。分級操作に用いられる方法としては、一般公知の分級方法が何ら制限なく使用できる。好適に用いられる分級方法を例示すれば、たとえばば、篩分級、気流式分級、渦遠心式分級、静電分離型分級などであり、これらに超音波や縦および横振動などの負荷を様々に組み合わせた分級方法がある。具体的には、振動篩い装置、サイクロン、風力分級装置、および回転ドラム型静電分離装置などが好適な分級装置である。これらの装置を用いて、本実施の形態のバイオマス粉末を好適に得ることができる。

【0037】
以上説明した本実施の形態のバイオマス粉末の製造方法は、アルカリ性や酸性物質を使った化学的な処理操作を実質的に伴わず、また、使用した化学物質を後処理することなく、安全で簡易な方法で本実施の形態のバイオマス粉末を好適に得ることができる。

【0038】
つぎに、本実施の形態のバイオマス複合成形体について説明する。
本実施の形態のバイオマス複合成形体は、本実施の形態の(1)バイオマス粉末と(2)熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のプレポリマーを混合し溶融成形する。バイオマス粉末と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のプレポリマーの質量比は、バイオマス粉末:熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のプレポリマー=5:95~80:20であり、好ましくは、10:90~60:40、より好ましくは20:80~55:45である。バイオマス粉末の比率が5未満では、バイオマス粉末の添加効果が明確には発現しない。また、80を超える割合では、バイオマス複合成形体の機械的強度の低下をまねきやすい。

【0039】
熱可塑性樹脂は、バイオマス粉末と複合化が可能なものあれば何ら制限なく用いることが可能である。好適に用いられる熱可塑性樹脂を例示すると、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリスチレンやアクリロニトニル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトニル-スチレン(AS)樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂などのスチレン系樹脂類;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などの芳香族ポリエステル類;ポリ乳酸やポリカプロラクトン、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリテトラメチルグリコリド、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル類等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、成形の容易さの観点から、ポリオレフィン類が特に好適である。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。

【0040】
熱可塑性樹脂以外にも、熱可塑性である熱硬化性樹脂のプレポリマーを用いることができる。代表的な熱硬化性樹脂のプレポリマーとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シラン架橋ポリエチレン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、架橋ゴムなどのプレポリマーである。これらの熱硬化性樹脂のプレポリマーの中でも、本発明に係るバイオマス粉末との複合化の容易さなどから、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂などのプレポリマーが好適である。

【0041】
バイオマス粉末と熱可塑性樹脂を配合し溶融成形する方法は、バイオマス粉末を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることのできる方法であれば、公知の方法を何ら制限なく利用することができる。
たとえば、熱可塑性樹脂を熱溶融させて、バイオマス粉末にせん断応力をかけながら練り込む溶融混練法、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し、バイオマス粉末を加えて分散させた後に、溶剤を気化除去する溶液混合法、熱したロール上で熱可塑性樹脂を柔らかくし、その上にバイオマス粉末を添加し、熱ロールによって圧着しながら練り込むカレンダー成型法などがある。これらの複合化の方法の中でも、効率性と汎用性の点で溶融混練法が最も好適である。

【0042】
溶融混練法としては、具体的には、射出成型機を用いた射出成型法、押出成形機を用いた押出成形法、ブロー成型機を用いたブロー成形法等があり、さらに押出成形法によって作製したシート状成形体を用い、真空成型機を用いた真空成型法や圧縮成型機を用いた圧縮成型法等が好適に用いられる。これらの成形法の中でも、汎用性と拡張性等の点から、射出成型法と押出成形法がより好適に用いられる。

【0043】
射出成形とは、加熱溶融させた材料を金型キャビティー内に射出注入し、冷却・固化させることとによって、成形品を得る方法であり、スプルーおよびランナーと呼ばれる部分を通って、成形体の金型キャビティー内に溶融したバイオマス含有樹脂溶融物が充填される。ここで、バイオマス粉末は溶融しないので、溶融流動性を必要とする射出成型を実施する際には、流動性に優れた熱可塑性樹脂が選択される。

【0044】
押出成形とは、加熱されたシリンダーの中でスクリューの回転に伴うせん断応力と発熱により溶融・混合させた材料をダイスの押出口から一定速度で押し出しながら冷却固化させる成形法である。射出成型のような高い流動性は必要としないので、押出口から押し出された後、変形しないような粘性の高い高分子量の熱可塑性樹脂が選択される。さらに、押出成形においては、スクリューによる混練が効果的に行われる。スクリューの形状および回転方向は様々にあり、用途目的に応じて選択可能である。本発明のバイオマス複合成形体の製造においては、より混練度を高めるために、二軸同方向回転スクリューによる混練がより好適な方法である。

【0045】
本実施の形態のバイオマス複合成形体の製造方法において、たとえば、射出成型機を用いてバイオマス複合成形体を成形する場合、高い溶融流動性が要求され、また、金型内に充填する前にスクリーンを通してサイズの大きい不溶物を濾取するため、バイオマス粉末の粒度が比較的小さい方に多く分布している方が有効である。一方、押出成形を用いてバイオマス複合成形体を成形する場合、長い繊維状の成分を含むバイオマス粉末は、溶融した熱可塑性樹脂の中で配向して流動する。そのため、結果として配向した繊維状のバイオマス粉末を含む複合成形体が得られ、繊維強化による機械的物性の向上が発現しやすく好適な製造方法の態様である。

【0046】
また、本実施の形態に係るバイオマス粉末は、水蒸気処理によって分解しやすいヘミセルロース成分を予め減量したものであるため、熱可塑性樹脂との溶融成型複合化の際に分解に伴う臭気の発生が効果的に低減されている。さらに、臭気を排除するには、溶融成形の際に、溶融成形機のシリンダーに設置されたベントから、揮発生成物を選択的に排除することも可能であり、好ましい態様の一つである。

【0047】
熱可塑性樹脂に代えて熱硬化性樹脂のプレポリマーを用いる場合も上記した製造方法を用いることができるが、このとき、バイオマス粉末と熱硬化性樹脂のプレポリマー、および必要に応じて硬化剤を混合した組成物を硬化反応が進行しない条件で溶融成型し、その後、加熱や水蒸気、光照射などの刺激により硬化させることで、機械的強度に優れたバイオマス複合成形体を得ることができる。

【0048】
以上説明した本実施の形態のバイオマス複合成形体の製造方法によって、溶融成型性と機械的性質に優れたバイオマス複合成形体を効率的に得ることができる。本実施の形態のバイオマス複合成形体の製造方法によって得られるバイオマス複合成形体は、合成木質素材として各種住宅建築資材類に、また、家電・IT機器類の各種部品や自動車内装品等の各種溶融成型体の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0050】
(アブラヤシ由来のバイオマス粉末作製の実施例1~2、比較例1)
[作製方法および得られるバイオマス粉末のサイズ等]
中果皮繊維(アブラヤシの中果皮から油分を絞り取った後の繊維質残滓)300gを以下の仕様の直本工業社製過熱水蒸気処理装置に入れ、下表1に示した条件で常圧過熱水蒸気処理を行った。処理した中果皮繊維を取り出し、下記の粉砕装置を用いて7000rpmで微粉砕を行った。粉砕時間は、投入サンプルの粉砕が完了した時間とし、実施例1で約10分、実施例2で約5分であった。
粉砕したサンプルは、顕微鏡観察により粒度分布(サイズ分布)を測定した。また、水分測定装置により水分含有量を確認した。結果を表1に併記した。なお比較例1として、常圧過熱水蒸気処理をしていない中果皮繊維粉末(バイオマス粉末)についても、同じ装置を用いて微粉砕試験を試みた。
熱水蒸気処理装置の仕様:
蒸気発生部: ヒーター容量 6.3 kW
換算蒸発量 9.45 kg/h
最高使用圧力 0.11 MPa
処理槽: ヒーター容量 8 kW
庫内寸法 W 590 x D 385
x H 555 mm
粉砕装置の仕様: 奈良機械製作所製 自由粉砕機M-2型
水分測定装置の仕様: 島津製作所製水分計(MOC-120H)
【実施例】
【0051】
【表1】
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【実施例】
【0052】
表1の結果から、中果皮繊維を過熱水蒸気処理することによって、実施例1、2の中果皮繊維は容易に粉砕されていることがわかる。また、水蒸気処理温度の低い実施例1よりも水蒸気処理温度の高い実施例2の方が、粉砕時間が短くて済むことがわかった。表1の結果から、実施例2よりも実施例1の方が顕微鏡観察により測定した中果皮繊維粉末のサイズが小さい傾向にあるが、これは、粉砕時間が2倍長かった結果である。また、いずれの場合も粒子の長径が1~500μm内に100%存在した。しかも、その水分率は5~7%であり、そのまま乾燥工程なしに、以下に説明する複合成形体の作製が可能であった。一方、常圧過熱水蒸気処理をしていない比較例1の中果皮繊維粉末については、中果皮繊維の強度が大きいため、粉砕を20分継続しても全てを粉砕するのは不可能だった。
図1に実施例2の粉砕された中果皮繊維粉末の光学顕微鏡写真を示す。様々の長さの短繊維が広く分布していることがわかる。また、図2に、長径サイズ範囲を表1のものよりも細かく区分けしたヒストグラムの一例として、実施例2で得られた中果皮繊維粉末の長径サイズ分布図を示す。
【実施例】
【0053】
[熱重量分析計による熱重量変化の分析]
常圧過熱水蒸気処理を行った中果皮繊維粉末の組成変化を確認するために、バイオマス粉末サンプルをアルミニウムパンに取り、セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6200を用いて50mL/分の窒素気流下、10℃/分の昇温速度で熱重量分析を行った。
バイオマス粉末作製実施例1、2で得られたサンプルの熱重量減少曲線(TG)を図3aに、およびその微分曲線(DTG)図3bにそれぞれを示す。実施例1、2の水蒸気処理後のサンプルは、180~320℃の温度範囲においてヘミセルロースの分解に基づくピークを有さず、300~400℃の温度範囲にセルロースの分解に基づくピークを示した。一方、バイオマス粉末作製比較例1の無処理の中果皮繊維は、熱重量減少曲線(TG)(図3aに併記)とその微分曲線(DTG)(図3bに併記)を示すように、180~320℃の温度範囲にヘミセルロースの分解に基づくピークと300~400℃の温度範囲にセルロースの分解に基づくピークの双方を示した。
これらの結果は、過熱水蒸気処理によって、中果皮繊維組織の中のヘミセルロース成分が優先的に分解除去されたことを示している。
【実施例】
【0054】
(アブラヤシ由来のバイオマス粉末を用いた複合成形体作製の実施例1~4、比較例1)
バイオマス粉末作製実施例1、2で作製した中果皮繊維粉末を、アズワン株式会社製ミニ篩振とう機MVSIを使って、100メッシュ(目開き150μm)の篩を用いて篩いわけを行った。得られた長径10~150μmの中果皮繊維粉末とポリプロピレン(PP:日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6)を、下表2に示したように、それぞれ中果皮繊維粉末:ポリプロピレン=20:80および50:50(重量比)で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸スクリュー、スクリュー直径:20mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の複合成形体を作製した。ポリプロピレンとの複合化の溶融混練条件は、ホッパー下温度65℃、バレル内温度190℃、ダイス温度190℃、スクリュー回転数14rpmで行った。比較例1として、ポリプロピレン単独で同様に成形体を作製した。
複合成形体作製実施例1~4および比較例1のいずれの場合も、ホッパーから投入された中果皮繊維粉末とポリプロピレンとの溶融混練物は、約3分でダイスよりストランドとし押し出された。成形状況は良好であり、目詰まりなどは一切起こらなかった。
【実施例】
【0055】
得られたストランド状の複合成形体は、ペレット状にした後、井元製作所製のIMC-18D1型簡易射出成形機を用いて、210℃で曲げ試験用の試験片を作製した。作製した試験片のサイズは、長さ30mm、幅5.1mm、厚み2.1mmである。曲げ試験は、JIS K 7171に従って、10mm/minのヘッドスピードで行った。得られた結果から、曲げ強度と曲げ弾性率を求め、表2に併記した。
【実施例】
【0056】
【表2】
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【実施例】
【0057】
表2の結果から、アブラヤシ由来のバイオマス粉末として中果皮繊維粉末を含んだ複合成形体の曲げ強度および曲げ弾性率は、ポリプロピレン単独の場合よりも高くなることが明らかとなった。
【実施例】
【0058】
(アブラヤシ由来のバイオマス粉末作製の実施例3、比較例2)
[作製方法および得られるバイオマス粉末のサイズ等]
茎葉繊維(アブラヤシの茎葉から糖成分を絞り取った後の繊維質残滓)50gを、バイオマス粉末作製実施例1の中果皮繊維と同様にして、過熱水蒸気処理装置を用いて、下表3に示した条件で常圧過熱水蒸気処理を行った。処理した茎葉繊維を取り出し、奈良機械製作所製の粉砕装置を用いて7000rpmで微粉砕を行った。粉砕時間は、投入サンプルの粉砕が完了した時間とし、バイオマス粉末作製実施例3で約7分であった。粉砕したサンプルは、顕微鏡観察により粒度分布、水分測定装置により水分含有量を確認した。結果を表3に併記した。図4に、バイオマス粉末作製実施例3で作製した茎葉繊維粉末の光学顕微鏡写真を示す。なおバイオマス粉末作製比較例2として、常圧過熱水蒸気処理をしていない茎葉繊維についても、同じ装置・条件を用いて微粉砕試験を試みた。
【実施例】
【0059】
【表3】
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【実施例】
【0060】
表3の結果から、茎葉繊維を過熱水蒸気処理することによって、バイオマス粉末作製実施例3の茎葉繊維は容易に粉砕され、粒子サイズが1~500μm内に100%に存在した。一方、常圧過熱水蒸気処理をしていないバイオマス粉末作製比較例2の茎葉繊維については、茎葉繊維の強度が大きいため、粉砕を20分継続しても全てを粉砕するのは不可能だった。比較例2の顕微鏡観察によるバイオマス粉末のサイズ分布データは省略した。
図4に実施例3の粉砕された茎葉繊維粉末の光学顕微鏡写真を示す。様々の長さの短繊維が広く分布していることがわかる。また、図5に実施例3で得られた茎葉繊維粉末の長径サイズ分布のヒストグラムを示す。
【実施例】
【0061】
[熱重量分析計による熱重量変化の分析]
常圧過熱水蒸気処理を行った茎葉繊維中の組成変化を確認するために、茎葉繊維サンプルをアルミニウムパンに取り、セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6200を用いて50mL/分の窒素気流下、10℃/分の昇温速度で熱重量分析を行った。
バイオマス粉末作製実施例3で得られたサンプルの熱重量減少曲線(TG)を図6aに、およびその微分曲線(DTG)図6bにそれぞれを示す。実施例2の水蒸気処理後のサンプルは、180~320℃の温度範囲において分解ピークを有さず、300~400℃の温度範囲にセルロースの分解に基づくピークを示した。一方、バイオマス粉末作製比較例2の無処理の茎葉繊維は、熱重量減少曲線(TG)(図6aに併記)とその微分曲線(DTG)(図6bに併記)を示すように、180~320℃の温度範囲に低温分解性リグニン成分とヘミセルロース成分の分解に基づくピークと300~400℃の温度範囲にセルロースの分解に基づくピークの双方を示した。これらの結果は、過熱水蒸気処理によって、茎葉繊維組織の中のヘミセルロース成分および低温分解性リグニン成分が優先的に分解除去されたことを示している。
【実施例】
【0062】
(アブラヤシ由来のバイオマス粉末を用いた複合成形体作製の実施例5、6、比較例2)
バイオマス粉末作製実施例3で作製した茎葉繊維粉末を、アズワン株式会社製ミニ篩振とう機MVSIを使って、100メッシュ(目開き150μm)の篩を用いて篩いわけを行った。得られた長径10~150μmの茎葉繊維粉末とポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY-6)を、表4に示したように、それぞれ茎葉繊維粉末:ポリプロピレン=20:80および50:50(重量比)で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸スクリュー、スクリュー直径:20mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状の複合成形体を作製した。ポリプロピレンとの複合化の溶融混練条件は、ホッパー下温度65℃、バレル内温度190℃、ダイス温度190℃、スクリュー回転数14rpmで行った。比較例2として、ポリプロピレン単独で同様に成形体を作製した。複合成形体作製実施例3、4および比較例2のいずれの場合も、ホッパーから投入された茎葉繊維粉末とポリプロピレンとの溶融混練物は、約3分でダイスよりストランドとして押し出された。成形状況は良好であり、目詰まりなどは一切起こらなかった。
【実施例】
【0063】
得られたストランド状の複合成形体は、ペレット状にした後、井元製作所製のIMC-18D1型簡易射出成形機を用いて、210℃で曲げ試験用の試験片を作成した。作成した試験片のサイズは、長さ30mm、幅5.1mm、厚み2.1mmである。曲げ試験は、JIS K 7171に従って、10mm/minのヘッドスピードで行った。得られた結果から、曲げ強度と曲げ弾性率を求め、表4に併記した。
【実施例】
【0064】
【表4】
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【実施例】
【0065】
表4の結果から、アブラヤシ由来のバイオマスとして茎葉繊維粉末を含んだ複合成形体の曲げ強度および曲げ弾性率は、ポリプロピレン単独の場合よりも高くなることが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3a】
2
【図3b】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6a】
6
【図6b】
7