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明細書 :新規抗悪性腫瘍剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 新規抗悪性腫瘍剤
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 39/00
A61P 35/02
G01N 33/574 A
国際予備審査の請求
全頁数 42
出願番号 特願2013-555281 (P2013-555281)
国際出願番号 PCT/JP2013/051275
国際公開番号 WO2013/111770
国際出願日 平成25年1月23日(2013.1.23)
国際公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
優先権出願番号 2012010580
優先日 平成24年1月23日(2012.1.23)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】三宅 康広
【氏名】山本 和秀
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C085
Fターム 4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC021
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE06
要約 本発明は、悪性腫瘍に対する分子標的薬であって、安全性の高い抗腫瘍剤を提供する。悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする抗悪性腫瘍剤による。本発明の悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質は、癌細胞ができたとしても、本来生体内に備わっていると考えられる発病に至らない生体防御機構のひとつの物質と考えられる。具体的には、発現の亢進しているリボソームタンパク質はRPL29及び/又はRPS4Xである。RPL29及び/又はRPS4Xを標的とする物質が、抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質、生体内に抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体の産生を誘導しうる物質、あるいはRPL29及び/又はRPS4Xのアンタゴニストである。本発明は、さらに抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価を指標とする悪性腫瘍の検査方法にも及ぶ。
特許請求の範囲 【請求項1】
悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする抗悪性腫瘍剤。
【請求項2】
悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質が、RPL29及び/又はRPS4Xである、請求項1に記載の抗悪性腫瘍剤。
【請求項3】
RPL29を標的とする物質が、抗RPL29抗体、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体を活性化若しくは増強しうる物質、生体内に抗RPL29抗体産生を誘導しうる物質、又はRPL29アンタゴニストである、請求項2に記載の抗悪性腫瘍剤。
【請求項4】
RPS4Xを標的とする物質が、抗RPS4X抗体、生体内に存在する内在性抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質、生体内に抗RPS4X抗体産生を誘導しうる物質、又はRPS4Xアンタゴニストである、請求項2に記載の抗悪性腫瘍剤。
【請求項5】
生体内に存在する内在性抗RPL29抗体及び/又は内在性抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質が免疫賦活化剤であり、生体内に抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体産生を誘導しうる物質がワクチンである、請求項3又は4に記載の抗悪性腫瘍剤。
【請求項6】
悪性腫瘍が、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌である、請求項1~5のいずれか1に記載の抗悪性腫瘍剤。
【請求項7】
生体検体中の抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価を測定することを特徴とする悪性腫瘍の検査方法。
【請求項8】
悪性腫瘍の検査が、悪性腫瘍の予後予測である、請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
悪性腫瘍が、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌である、請求項7又は8に記載の検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有する新規抗腫瘍剤に関する。さらには、本発明は新規抗腫瘍剤に有効成分として含有されるリボソームタンパク質を標的とする物質の作製方法に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2012-010580号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
現在の悪性腫瘍に対する分子標的薬としては、肝癌や腎癌に使用されるソラフェニブ、大腸癌に使用されるセツキシマブやベバシズマブ、肺癌に使用されるエルロチニブやゲフィチニブ、乳癌に使用されるトラスツズマブなど多くの薬剤が開発されており、実地臨床で使用されている。各薬剤の標的物質としては、例えば癌キナーゼ、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、HER2タンパク質等が挙げられる。しかし、悪性腫瘍に対する分子標的薬は、皮膚障害や消化管穿孔、間質性肺炎、肝不全など重篤な副作用による死亡例も報告されている。よって、より安全性の高い分子標的薬の登場が望まれている。一方、健常者においても毎日数千個の悪性腫瘍(癌)細胞ができるといわれているが、必ずしも全員が発病するわけではない。自己免疫性肝炎(AIH)における肝発癌率は0.7% /年程度 (Aliment Pharmacol Ther 2006;24:1197)と報告されており、C型慢性肝炎の3% /年(Ann Intern Med 1999;131:174)に比べて明らかに低率である。
【0004】
リボソームタンパク質であるRPL29 (Ribosomal protein L29)は、大腸癌(非特許文献1)、肝癌(非特許文献2)、胃癌(非特許文献3)、甲状腺癌(非特許文献4)、乳癌(非特許文献5)等様々な悪性腫瘍細胞で発現が亢進していることが報告されている。RPL29は細胞表面に発現している膜タンパクであり、RPL29の発現を低下させるとアポトーシスに陥る細胞が増加したり(非特許文献6)細胞の分化が誘導される(非特許文献1)ことが報告されている。また、リボソームタンパク質であるRPS4X (Ribosomal protein S4, X-linked)は、大腸癌(非特許文献7)と乳癌(非特許文献8)等様々な悪性腫瘍細胞で発現が亢進していることが報告されている。しかしながら、リボソームタンパク質であるRPL29やRPS4Xを標的とする物質が、腫瘍を改善したという報告はない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】J Cell Physiol., 2006; 207(2):287-92
【非特許文献2】Life Sci. 2007 Jan 23;80(7):690-8. Epub 2006 Dec 6
【非特許文献3】BMC Cancer, 2010; 10: 240
【非特許文献4】Cancer Res., 1998; 58: 4745
【非特許文献5】Cancer Res., 1997; 57: 5148
【非特許文献6】Carcinogenesis, 2004; 25 (6): 873-879
【非特許文献7】Clin Cancer Res., 2011; 17(4): 700-9. Epub 2011 Feb 8.
【非特許文献8】Cancer Sci., 2011; 102(7): 1410-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、悪性腫瘍に対する分子標的薬であって、安全性の高い抗腫瘍剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、健常者においても毎日数千個の悪性腫瘍(癌)細胞ができるといわれているにもかかわらず、必ずしも全員が癌を発病するわけではないことや、自己免疫性肝炎(AIH)における肝発癌率は0.7% /年程度と報告されており、C型慢性肝炎の3% /年に比べて明らかに低率であることに着目した。そして、自己免疫性肝炎患者血清中に、悪性腫瘍細胞の増殖を抑制しうる免疫グロブリン(IgG)が存在することを確認し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする抗悪性腫瘍剤。
2.悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質が、RPL29及び/又はRPS4Xである、前項1に記載の抗悪性腫瘍剤。
3.RPL29を標的とする物質が、抗RPL29抗体、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体を活性化若しくは増強しうる物質、生体内に抗RPL29抗体産生を誘導しうる物質、又はRPL29アンタゴニストである、前項2に記載の抗悪性腫瘍剤。
4.RPS4Xを標的とする物質が、抗RPS4X抗体、生体内に存在する内在性抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質、生体内に抗RPS4X抗体産生を誘導しうる物質、又はRPS4Xアンタゴニストである、前項2に記載の抗悪性腫瘍剤。
5.生体内に存在する内在性抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質が免疫賦活化剤であり、生体内に抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体産生を誘導しうる物質がワクチンである、前項3又は4に記載の抗悪性腫瘍剤。
6.悪性腫瘍が、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌である、前項1~5のいずれか1に記載の抗悪性腫瘍剤。
7.生体検体中の抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価を測定することを特徴とする悪性腫瘍の検査方法。
8.悪性腫瘍の検査が、悪性腫瘍の予後予測である、前項7に記載の検査方法。
9.悪性腫瘍が、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌である、前項7又は8に記載の検査方法。
【発明の効果】
【0009】
悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする本発明の抗悪性腫瘍剤は、悪性腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。本発明の悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質は、悪性腫瘍細胞ができたとしても、本来生体内に備わっていると考えられる発病に至らない生体防御機構のひとつの物質と考えられる。係る物質を有効成分として含む抗悪性腫瘍剤は、安全性が高い薬剤であり、有用である。
【0010】
また、本発明の検査方法では悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質の量、例えば抗体の場合は抗体価を測定することで、癌患者の予後も予測することができ、その結果に応じて癌患者に最適な治療方法を提供可能な点で、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果を示す図である。(参考例1)
【図2】健常者群(62例)由来各血清について、抗RPL抗体価を示す図である。(参考例3)
【図3】AIH患者群(52例)由来各血清について、抗RPL抗体価を示す図である。(参考例3)
【図4】各種ヒト肝癌細胞株でのRPL29及びRPS4Xの発現を確認した写真図である。(参考例4)
【図5】ヒト膵癌細胞株中のRPL29の発現を確認した写真図である。(参考例5)
【図6】血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7における各種細胞内シグナル変化を確認した写真図である。(参考例6)
【図7】ヒト各種悪性腫瘍細胞株でのRPL29及びRPS4Xの発現を確認した写真図である。(参考例7)
【図8】抗RPL29抗体による肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果を示す図である。(実施例1)
【図9】切除不能膵癌患者における血清中抗RPL29抗体価を示す図である。(実施例2)
【図10】切除不能膵癌患者における血清中抗RPL29抗体価と各患者の生存期間との関係を示す図である。(実施例2)
【図11】抗RPL29抗体による肝癌細胞株PLC/PRF/5の増殖抑制効果を示す図である。(実施例3)
【図12】抗RPL29抗体による肝癌細胞株Huh7における各種細胞内シグナル変化を確認した写真図である。(実施例4)
【図13】血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果の相関関係を示す図である。(実施例5)
【図14】血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株PLC/PRF/5の増殖抑制効果の相関関係を示す図である。(実施例5)
【図15】血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果を示す図である。(実施例6)
【図16】血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株PLC/PRF/5の増殖抑制効果を示す図である。(実施例6)
【図17】抗RPL29抗体による膵癌細胞株Panc-1の増殖抑制効果を示す図である。(実施例7)
【図18】抗RPL29抗体による膵癌細胞株AsPC-1の増殖抑制効果を示す図である。(実施例8)
【図19】抗RPL29抗体による膵癌細胞株AsPC-1における各種細胞内シグナル変化を示す写真図である。(実施例9)
【図20】手術施行膵癌患者における血清中抗RPL29抗体価を示す図である。(実施例10)
【図21】手術施行膵癌患者における血清中抗RPL29抗体価と各患者の術後再発との関係を示す図である。(実施例10)
【図22】AIH-31の血清中IgGによる膵癌細胞株及び大腸癌細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例11)
【図23】AIH-45の血清中IgGによる膵癌細胞株及び大腸癌細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例11)
【図24】AIH-31の血清中IgGによる各種悪性腫瘍細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例12)
【図25】AIH-45の血清中IgGによる各種悪性腫瘍細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例12)
【図26】抗RPL29抗体によるヒト各種悪性腫瘍細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例13)
【図27】抗RPS4X抗体による肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果を示す図である。(実施例14)
【図28】抗RPS4X抗体による肝癌細胞株及び膵癌細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例15)
【図29】抗RPS4X抗体によるヒト各種悪性腫瘍細胞株の増殖抑制効果を示す図である。(実施例16)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、悪性腫瘍に対する分子標的薬であって、安全性の高い抗悪性腫瘍剤に関し、詳しくは悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする抗悪性腫瘍剤に関する。

【0013】
本発明の内容を説明する前に、まず本発明をなすに至った経緯を説明する。背景技術の欄でも示したように、健常者においても毎日数千個の悪性腫瘍(癌)細胞ができるといわれているが、必ずしも全員が発病するわけではない。悪性腫瘍細胞ができたとしても、発病に至らない生体防御機構が、本来生体内に備わっているものと考えられる。例えば自己免疫性肝炎(AIH)における肝発癌率は0.7% /年程度 (Aliment Pharmacol Ther 2006;24:1197)と報告されており、C型慢性肝炎の3% /年(Ann Intern Med 1999;131:174)に比べて明らかに低率である。ここには、自己免疫性肝炎(AIH)における、癌発症に至るまでの何らかの防御機構が存在し、有効に作用していると思われる。そこで、本発明者らは、倫理委員会の承認を得、自己免疫性肝炎患者の血清中に存在する自己抗体の対応抗原を同定する解析を行った。まず、自己免疫性肝炎患者血清中の抗体、即ち免疫グロブリン(以下、単に「IgG」ともいう。)をプロテインGを用いて吸着、溶出させ、精製した。精製したIgG含有溶液(以下、「精製IgG溶液」という。)を悪性腫瘍細胞株のin vitro培養系に加えたところ、自己免疫性肝炎患者の血清由来精製IgG溶液について、悪性腫瘍細胞の増殖抑制が認められた場合と、増殖抑制が認められない場合が確認された。そこで、悪性腫瘍細胞膜タンパク質抽出物と各患者の血清中IgGを反応させることで抗原抗体複合体を形成させ、当該反応溶液からIgGをプロテインGにより吸着させ、吸着したタンパク質を溶出した。悪性腫瘍細胞株の増殖抑制効果の違いと、溶出したタンパク質について質量分析計(LC/MS)で分析し、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているタンパク質を確認した。その結果、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているタンパク質としては、RPL29 (Ribosomal protein L29)及びRPS4X (Ribosomal protein S4, X-linked)が検出された。RPL29及びRPS4Xは、いずれもリボソームタンパク質であり、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質という点で共通している。詳細については、後述の参考例にて説明する。

【0014】
細胞内のタンパク質翻訳装置の本体であるリボソームは RNAとタンパク質が協調して働き、3~4種類のRNA(リボ核酸)と50種類以上のリボソームタンパク質から構成される。リボソーム全分子量の約3分の2をリボソームRNA(rRNA)が、残りの3分の1をタンパク質が占めている。大小2つのサブユニットからなり、小サブユニットは遺伝暗号の解読を、大サブユニットはペプチド鎖を伸張する反応を担当している。タンパク質翻訳装置を構成するリボソームタンパク質は、進化上、非常に起源の古いタンパク質であり、rRNAの立体構造構築と保護の役割を担い、rRNAが酵素活性を発現するのを助けていると考えられる。さらにリボソームタンパク質の中にはメッセンジャーRNA(mRNA)に結合することで翻訳時の発現制御を行なうことが知られているものもある。すなわちリボソームタンパク質はRNAと密接なコンタクトを保って、生命現象の根幹である翻訳とその制御に関わってきたタンパク質群である。

【0015】
本発明の抗悪性腫瘍剤は、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする。本発明の抗悪性腫瘍剤に含有される「リボソームタンパク質を標的とする物質」は、悪性腫瘍細胞ができたとしても、本来生体内に備わっていると考えられる発病に至らない生体防御機構のひとつの物質と考えられる。有効成分が、本来生体内に備わっていると考えられる発病に至らない生体防御機構のひとつの物質であるため、安全性が高い薬剤であり、各種悪性腫瘍の治療及び/又は予防剤として用いることができ、有用である。本発明の抗悪性腫瘍剤に含有される「リボソームタンパク質を標的とする物質」は、各種悪性腫瘍(癌)細胞の増殖抑制剤として作用する。本発明の「リボソームタンパク質を標的とする物質」の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法であってもよいし、以降開発される新規な方法であってもよい。

【0016】
本発明において、悪性腫瘍細胞において発現の亢進している「リボソームタンパク質を標的とする物質」としては、(1)各物質に対する抗体、(2)各物質に対する抗体のうち生体内に存在する抗体を活性化若しくは増強しうる物質、(3)生体内に各物質に対する抗体産生を誘導しうる物質、あるいは(4)各物質に対するアンタゴニストが挙げられる。

【0017】
発明において、「悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質」であるRPL29及び/又はRPS4X」を標的としうる物質として、(1)各物質に対する抗体としては抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体が挙げられ、(2)生体内に存在する抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を活性化若しくは増強しうる物質としては、免疫賦活化剤が挙げられ、さらに(3)生体内にRPL29及び/又はRPS4Xに対する抗体産生を誘導しうる物質としてはワクチンが挙げられる。同様に(4)各物質に対するアンタゴニストとしては、RPL29及び/又はRPS4Xに対するアンタゴニストが挙げられる。

【0018】
本発明において、「抗RPL29抗体」は、RPL29と結合しうる抗体であればよく、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。また、抗体の型としてはFabなどの抗原抗体反応をしうる部分ペプチドであってもよいが、好ましくはインタクト型の抗体が挙げられる。同様に、「抗RPS4X抗体」は、RPS4Xと結合しうる抗体であればよく、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。これらの抗体に関し、抗体の型としてはFabなどの抗原抗体反応をしうる部分ペプチドであってもよいが、好ましくはインタクト型の抗体が挙げられる。本発明の抗悪性腫瘍剤に含まれる有効成分としての抗体は、悪性腫瘍細胞ができたとしても、発病に至らない生体防御機構として、癌を発症しにくい健常人が自己の生体内に備えている成分を有効成分とすることを考えているため、通常生体内に存在しうるインタクト型の抗体であるのが好ましい。

【0019】
上記各物質に対する抗体は、自体公知の方法によって製造することができる。出発原料は天然物由来の材料であってもよいし、遺伝子組換え等の手法に従ってもよい。抗体は、採取した生体成分を原料として作製することができる。採取した生体成分は、抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を産生しうる生体成分であればよく、特に限定されない。本発明において生体成分とは、上記抗体を含有する生体成分であれば特に制限されず、例えば血漿、血清等の血液、脊髄液、リンパ液、尿、涙、乳等が広く例示される。好適な生体成分は、血漿、血清等の血液成分や抗体産生細胞を含む成分等が挙げられる。例えば、本発明の抗悪性腫瘍剤を投与される者自身の生体成分であってもよいし、他人の生体成分であってもよい。例えば、抗体がモノクローナル抗体の場合は、採取した生体成分から抗体産生細胞を採取し、通常の方法により抗体産生ハイブリドーマを作製し、抗体を作製することができる。生体内の抗体産生細胞としては、例えば、B細胞や形質細胞が挙げられる。ハイブリドーマを作製する場合のパートナー細胞は、前記抗体産生細胞と融合し、細胞を増殖させうる細胞であればよく、自体公知の細胞又は今後開発される細胞を含めることができる。例えば、抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を作製する場合は、抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を産生しうる細胞を選別し、上記手法により作製することができる。また、採血により得た生体成分のうち、特に血清成分から、抗体成分を分離精製することで、抗RPL29ポリクローナル抗体及び/又は抗RPS4Xポリクローナル抗体を高力価で含む本発明の抗悪性腫瘍剤を製造することができる。さらに、生体成分としては、悪性腫瘍細胞(培養細胞または患者から採取した腫瘍細胞)であってもよい。悪性腫瘍細胞からRPL29又はRPS4Xを精製し、抗原として使用することで自体公知の方法により抗体を製造することができる。

【0020】
本発明において、「抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体に対する免疫賦活化剤」は、悪性腫瘍(癌)細胞が発生したとしても、発病に至らない生体防御機構として、癌を発症しにくい健常人が自己の生体内に備えている抗体をさらに活性化若しくは増強しうる物質であればよい。生体内の抗RPL29抗体及び/又は生体内の抗RPS4X抗体に対する免疫賦活化剤としては、例えば生体内の抗体産生細胞の活性化剤、例えばIL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13、GM-CSF、TNF-α、細菌及びその菌体成分、植物や真菌の多糖体、核酸、脂溶性ビタミン、ミネラルオイルなどが挙げられる。生体内の抗体産生細胞としては、例えばB細胞や形質細胞が挙げられる。これらの免疫賦活化剤は、自体公知又は今後開発されるあらゆる方法によって製造することができる。IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13、GM-CSF、TNF-α、細菌及びその菌体成分、植物や真菌の多糖体、核酸、脂溶性ビタミン、ミネラルオイルなどは、天然物由来のものであってもよいし、遺伝子組換えや化学合成の手法により製造することができる。

【0021】
本発明において、生体内にRPL29及び/又はRPS4Xに対する抗体産生を誘導しうる物質としての「ワクチン」は、悪性腫瘍(癌)細胞が発生したとしても、発病に至らない生体防御機構として、癌を発症しにくい健常人が自己の生体内に備えている抗体と同様の作用を有する抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を産生しうる抗原性を有していればよい。このような分子として、RPL29及び/又はRPS4X分子自体そのもの、あるいはこれらの分子の部分ペプチドなどが挙げられる。これらのワクチンは、自体公知又は今後開発されるあらゆる方法によって製造することができる。例えばRPL29及び/又はRPS4X分子自体そのもの、あるいはこれらの分子の部分ペプチドなどは、遺伝子組換えの手法により作製してもよいし、ペプチド合成によっても作製することができる。

【0022】
さらに、RPL29及び/又はRPS4Xに対するアンタゴニストとしては、PL29及び/又はRPS4Xに対する拮抗薬、拮抗剤、拮抗物質、遮断薬、ブロッカーなどが挙げられる。RPL29又はRPS4Xに直接作用する物質であってもよいし、RPL29受容体又はRPS4X受容体と相互作用することで、RPL29又はRPS4Xを阻害しうる物質であってもよい。

【0023】
本発明の抗悪性腫瘍剤には、薬理学的に許容しうる担体を含ませることができる。上記の抗悪性腫瘍剤に用いられる薬理学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤、崩壊剤若しくは崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤若しくは溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。

【0024】
本発明の抗悪性腫瘍剤の投与形態としては、局所的に投与しても全身的に投与してもよい。非経口投与用の製剤は、滅菌した水性の、又は非水性の溶液、懸濁液及び乳濁液を含んでいてもよい。非水性希釈剤の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油及び有機エステル組成物、例えば、エチルオレエートであり、これらは注射用に適している。水性担体には、水、アルコール性水性溶液、乳濁液、懸濁液、食塩水及び緩衝化媒体が含まれていてもよい。非経口的担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、リンゲル乳酸及び結合油が含まれていてもよい。静脈内担体には、例えば、液体用補充物、栄養及び電解質(例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの)が含まれていてもよい。本発明の抗悪性腫瘍剤はさらに、保存剤及び他の添加剤、例えば,抗微生物化合物、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなどを含むことができる。

【0025】
本発明の抗悪性腫瘍剤が作用する疾患は、本発明の抗悪性腫瘍剤に含有される有効成分としての、リボソームタンパク質を標的とする物質が、予防的及び/又は治療的に作用しうる悪性腫瘍であればよく、特に限定されない。悪性腫瘍が、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌である。好ましくは、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌であり、特に好ましくは肝癌、膵癌である。

【0026】
悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質に対する抗体、具体的には抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体は、本来生体内に存在するべきものである。悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質に対する抗体、具体的には抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体が、悪性腫瘍細胞ができたとしても、発病に至らない生体防御機構のひとつとして考えられ、毎日数千個の悪性腫瘍(癌)細胞ができていたとしても癌を発症しにくい状態が維持できているものと思われる。

【0027】
そこで、本発明は、生体内の抗RPL29抗体及び/又は抗RPS4X抗体を測定することで、悪性腫瘍の発症予測や、発症後の予後予測が可能であると考えられる。各抗体の検査は、定量的に行うのが好ましい。具体的には、生体検体中の抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価を測定することによる。本発明は、生体検体中の抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価を指標することを特徴とする悪性腫瘍の検査方法にも及ぶ。本発明において生体検体とは、上記抗体を含有する可能性のある生体検体であればよく、特に制限されない。例えば血漿、血清等の血液、脊髄液、リンパ液、尿、涙、乳等が広く例示される。好適な生体検体は、血漿、血清等の血液成分が挙げられる。抗体価の測定方法は、自体公知の方法によることができ、あるいは今後開発される方法によることができる。例えば段階血清希釈法や一定濃度血清希釈法などを適用することができる。具体的には、酵素免疫法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、ラテックス凝集比濁法(LA)などの方法を適用することができる。本発明の悪性腫瘍の検査は、特に好適には悪性腫瘍の予後予測のために行うことができる。抗RPL29抗体価及び/又は抗RPS4X抗体価が高い患者は、予後がよく、再発率が低く、生存率が高いと考えられる。ここで、各抗体価のカットオフ値は、検査手技、検査機器等により定めることができる。例えば、後述する本実施例の方法に従ってELISA法で測定した場合に、波長405nmの吸光度として0.3-0.7 OD405nmとすることができ、好ましくは0.5 OD405nmとすることができる。なお、特定の波長の吸光度は、測定条件、測定機器によっても変動があるため、検査方法を一般化する場合には、適切なカットオフ値を定めることが必要である。

【0028】
検査方法に適用可能な悪性腫瘍の種類としては、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺腺様嚢胞癌、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、粘液性脂肪肉腫、膠芽腫、胞巣状横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、乏突起膠細胞腫、副腎皮質癌、多発性骨髄腫、髄芽腫、子宮内膜癌、食道癌及びユーイング肉腫から選択される一種又は複数種の癌について行うことができる。好ましくは、肝癌、膵癌、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌であり、特に好ましくは肝癌、膵癌である。
【実施例】
【0029】
本発明の理解を深めるために、参考例、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは、いうまでもない。参考例では、本発明を完成するに至った研究経緯を示す。以下の臨床検体を用いた本研究は、岡山大学内の倫理委員会により承認されている。
【実施例】
【0030】
(参考例1) 血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果の検討
本参考例では血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果を検討した。
Huh7を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma chemical, MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co.)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。
【実施例】
【0031】
倫理委員会の承認を得た後、自己免疫性肝炎(AIH)患者の血清中に存在する自己抗体の対応抗原を同定する解析を行った。まず、AIH患者(Case1, Case2)から得た血清試料について、抗体精製用アフィニティー担体であるプロテインG(Invitrogen Dynal AS, Oslo, Norway)を添加し、血清中のIgGを非特異的に吸着し、プロテインGを洗浄液(0.1M Na-Phosphate Buffer, pH 7.4)で洗浄し、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)でプロテインGに吸着したタンパク質を溶出させ、AIH患者血清から抽出したIgGを0.25-0.5μg/μl含有する溶液(精製IgG溶液)を得た。
【実施例】
【0032】
前記培養開始24時間後に、前記AIH患者血清から抽出して得たIgG 1μgを各wellに加え、10μg/mlとなるようにした。コントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始42時間後に、 [methyl-3H]-チミジン (TRK637; GE Healthcare Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK) を各wellに添加し、Huh7の増殖を確認した。培養開始48時間後に液体シンチレーションカウンターで測定し、測定結果をコントロールに対する比率で表した。その結果、AIH Case1の場合において、Huh7の増殖抑制が認められた(図1参照)。上記の結果により、AIH患者血清中に、Huh7の増殖を抑制するIgGを有する症例が存在するものと考えられた。
【実施例】
【0033】
(参考例2)肝癌細胞株Huh7の増殖を抑制するIgGの対応抗原について
本参考例では、参考例1で確認されたHuh7の増殖を抑制するIgGの対応抗原について、解析を行った。
1)ProteoJETTM Membrane Protein Extraction Kit(Thermo Fischer Scientific Inc., IL, USA)を使用してHuh7より膜タンパクを抽出した。
2)参考例1の各AIH患者(Case1, Case2)から得た血清試料について、抗体精製用アフィニティー担体であるプロテインG(Invitrogen Dynal AS, Oslo, Norway)を添加し、血清中のIgGを非特異的に吸着した。
3)プロテインGを0.1M Na-Phosphate Buffer, pH 7.4で洗浄後、抗原としてHuh7の膜タンパク抽出物を含む溶液に加えて室温で1 時間処理し、プロテインGに非特異的に吸着された血清中IgGと抗原とを反応させた。血清中に膜タンパクに対する抗体が存在する場合に抗原との間で抗原抗体反応が生じ、抗原抗体複合体が形成される。
4)0.1M Na-Phosphate Buffer, pH 7.4で洗浄後、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)でプロテインGに吸着したタンパク質を溶出させ、前記溶出したタンパク質をProteoExtractTM All-in-One Trypsin Digestion Kit(Calbiochem, Darmstadt, Germany)を使用してトリプシン消化し、質量分析計(LC/MS)で測定した。測定した結果をデータベースSwiss-Protで検索した。
【実施例】
【0034】
その結果を表1及び表2に示した。その結果、AIH患者血清に存在し、Huh7の増殖抑制効果を示すIgGの対応抗原がRPL29(Ribosomal protein L29)及びRPS4X(Ribosomal protein S4, X-linked)である可能性が示された。
【表1】
JP2013111770A1_000003t.gif
【実施例】
【0035】
【表2】
JP2013111770A1_000004t.gif
【実施例】
【0036】
(参考例3) 血清中抗RPL29抗体価の検討
本実施例では、健常者群62例(図2)及びAIH患者群52例(図3)の血清について、血清中の抗RPL29抗体価を測定し、各群における抗RPL29抗体価の傾向を確認した。
抗体価の測定は、ELISA法により、以下の方法で行った。
1)1μg/mlのRecombinant RPL29 (H00006259-P01: Avnova, Taipei, Taiwan) を96 wellマイクロプレートの各wellに100μl加えて1 時間静置し抗原を固相化した。
2)1% ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)を300μl/well加えて15分間のブロッキング処理後、健常者又はAIH患者の各血清を100倍に希釈した血清溶液100μl/well添加し、1 時間反応させた。
3)洗浄後、1μg/mlのHRP標識抗ヒトIgG抗体を100μl/well添加し、1 時間反応させた。
4)さらに洗浄後、2,2'-azino-bis[3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonateを100μl/well添加し、十分反応させた。
5)ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、波長405 nmでの吸光度を測定した。参考例1に示すAIH患者(Case1)血清を陽性コントロールとし、陰性コントロールは血清のかわりに血清の希釈液とした。吸光度測定後に陰性コントロールの吸光度を引いた値を抗RPL29抗体価とした。
【実施例】
【0037】
AIH患者群の血清中抗RPL29抗体価は症例により様々であったが、参考例1において、Huh7の増殖抑制を示したCase 1では抗RPL29抗体価1.8465 OD405 nmと比較的高値であった(図3参照)。一方、Huh7細胞の増殖抑制を認めなかったCase 2では抗RPL29抗体価0.369 OD405 nmと低値であった(図3参照)。健常人の血清中にも抗RPL29抗体は存在するが、抗体価は自己免疫性肝炎症例に比較すると概ね低値であった(P <0.0001)。また、87% の健常人で抗体価が0.5 OD nm未満であった(図2参照)。
【実施例】
【0038】
(参考例4)ヒト肝癌細胞株でのRPL29及びRPS4Xの発現確認
ヒト肝癌細胞株である各細胞株(Huh7、PLC/PRF/5、Hep3B、HepG2、HLE、HLF、SK-Hep-1)を細胞培養用6 wellプレートに2 ml/wellで播種した。培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma chemical, MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co.)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。細胞が80% コンフルエントになった時点で培養液を除去し、Pierce IP Lysis Buffer (Thermo Fisher Scientific Inc., IL) 400μlを各wellに加えた。 15分間攪拌した後、ビーズ破砕機(TAITEC, Saitama, Japan)で細胞を破砕した。その後、13,000gで10分間遠沈処理し、上澄を回収した。得られた上澄に等量の2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4% SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 10% メルカプトエタノール, 0.004% ブロモフェノールブルー(BPB))を添加し、5分間煮沸し、タンパク質を抽出した。
【実施例】
【0039】
各種ヒト肝癌細胞株から抽出したタンパク質を、常法に従ってSDS-PAGEにより電気泳動した。泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングした。PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal (TOYOBO, Osaka, Japan)で1 時間のブロッキング処理後、一次抗体としてマウス抗RPL29抗体(H00006259-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan)または抗RPS4X抗体(PAB17574: Avnova, Taipei, Taiwan)、抗β-actin抗体 (Sigma-Aldrich Co., MO)で1 時間処理した。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗IgG抗体(RPN2124: GE Healthcare, UK)を二次抗体として1 時間反応させた。洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
【実施例】
【0040】
検討に使用した7種類のすべてのヒト肝癌細胞株で、程度の差はあるもののRPL29及びRPS4Xのタンパク質発現を認めた(図4参照)。
【実施例】
【0041】
(参考例5) ヒト膵癌細胞株でのRPL29の発現確認
ヒト膵癌細胞株である各細胞株(ASPC-1、BxPC-3、PANC-1、 MIA PaCa-2、KLM-1、 Suit-2、T3M4)を各々10cm径のシャーレに培養した。培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma chemical, MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co.)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。細胞が100% コンフルエントになった時点で2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4% SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 10% メルカプトエタノール, 0.004% ブロモフェノールブルー(BPB))を添加し、セルスクレイパーで細胞を回収し、5分間煮沸し、タンパク質を抽出した。
【実施例】
【0042】
上記の方法によりヒト膵癌細胞株から抽出したタンパク質を、常法に従ってSDS-PAGEにより電気泳動を行った。泳動したタンパク質を常法に従ってポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンにブロッティングした。PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal (TOYOBO, Osaka, Japan)で1 時間のブロッキング処理後、一次抗体としてマウス抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan)で1 時間処理した。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗マウスIgG抗体(RPN2124: GE Healthcare社、UK)を二次抗体として1 時間反応させた。洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。その結果、検討に使用した7種類すべてのヒト膵癌細胞株でRPL29の発現を認めた(図5)。
【実施例】
【0043】
(参考例6) 血清中IgGによる肝癌細胞株Huh7の細胞内シグナル変化
肝癌細胞株Huh7を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用6 wellプレートに2 ml/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。
【実施例】
【0044】
前記培養開始12時間後に、AIH患者又は健常人血清から参考例1と同手法により抽出して得たIgG 10μgを各wellに加えた(5μg/ml)。コントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始24時間後に培養液を除去し、Pierce IP Lysis Buffer (Thermo Fisher Scientific Inc., IL) 400μlを各wellに加えた。15分間攪拌した後、ビーズ破砕機(TAITEC, Saitama, Japan)で細胞を破砕した。その後、13,000gで10分間遠沈し、上澄を回収した。得られた上澄に等量の2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4% SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 10% メルカプトエタノール, 0.004% ブロモフェノールブルー(BPB))を添加し、5分間煮沸し、タンパク質を抽出した。
【実施例】
【0045】
ヒトIgG刺激後のHuh7から上述の方法で抽出したタンパク質を、常法に従ってSDS-PAGEにより電気泳動を行った。電気泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングした。PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal (TOYOBO, Osaka, Japan)で1 時間のブロッキング処理後、β-catenin, CyclinD1, p-mTOR(Ser2448)及びp-p70 S6 Kinase (Thr389)の各一次抗体 (Cell signaling Techonology, Inc., MA)又は抗β-actin抗体 (Sigma-Aldrich Co., MO)で1 時間処理した。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗IgG抗体(RPN2124: GE Healthcare, UK)を二次抗体として1 時間反応させた。メンブレンを洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
【実施例】
【0046】
自己免疫性肝炎患者の血清中から参考例1と同手法により抽出して得たIgGの投与により、Huh7において細胞内β-catenin及びCyclin D1の発現低下、更にm-TORのリン酸化と下流のp70 S6キナーゼのリン酸化の低下を認める例があった(図6)。
【実施例】
【0047】
(参考例7) ヒト各種悪性腫瘍細胞でのRPL29及びRPS4Xの発現確認
ヒト各種悪性腫瘍細胞株(大腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌)から参考例5と同手法にてタンパク質を抽出し、RPL29及びRPS4Xの発現を確認した。
大腸癌細胞株HCT15又は小細胞肺癌細胞株H1048、非小細胞肺癌細胞株PC-9、乳癌細胞株MCF-7、前立腺癌細胞株PC-3を径10cm dishに播種した。なお、培養液はRPMI-1640 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 10% 加熱不活化 FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。同様に、膵癌細胞株AsPC-1とPanc-1をDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。80% コンフルエントになった時点で2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4% SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 10% メルカプトエタノール, 0.004% BPB)を添加し、セルスクレイパーで回収し5分間煮沸した。
【実施例】
【0048】
ヒト各種悪性腫瘍細胞株(大腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌)から抽出したタンパクを、常法に従ってSDS-PAGEにより電気泳動を行った。泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングした。PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal (TOYOBO, Osaka, Japan)で1 時間のブロッキング処理後、一次抗体としてマウス抗RPL29抗体(H00006259-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan)または抗RPS4X抗体(PAB17574: Avnova, Taipei, Taiwan)、抗β-actin抗体 (Sigma-Aldrich Co., MO)で1 時間処理した。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗IgG抗体(RPN2124: GE Healthcare社、UK)を二次抗体として1 時間反応させた。メンブレンを洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
【実施例】
【0049】
検討に使用したヒト各種悪性腫瘍細胞株(大腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌)で、程度の差はあるもののRPL29及びRPS4Xのタンパク発現を認めた(図7参照)。
【実施例】
【0050】
(実施例1) 抗RPL29抗体による肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果
肝癌細胞株Huh7を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始24時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml, 1μg/ml又は5μg/ml、recombinant RPL29 (H00006259-P01: Avnova, Taipei, Taiwan)を、0μg/ml又は 5μg/ml加えた。培養開始42時間後に、 [methyl-3H]-thymidine (TRK637; GE Healthcare Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK) を各wellに添加し、培養開始48時間後に液体シンチレーションカウンターで測定し、細胞増殖を確認した。測定結果をコントロールに対する比率で表した。
【実施例】
【0051】
抗RPL29抗体は濃度依存的にHuh7の増殖を抑制することが確認された。抗RPL29抗体とrecombinant RPL29を加えることで、抗RPL29抗体のHuh7に対する増殖抑制効果は相殺されることも観察された。一方、抗RPL29抗体の作用を相殺可能な濃度以上の過剰なrecombinant RPL29を加えても、Huh7の増殖は亢進されなかった。これらの結果より、抗RPL29抗体の存在が、Huh7の増殖に関係していることが考えられた(図8参照)。
【実施例】
【0052】
(実施例2)切除不能膵癌患者における血清中抗RPL29抗体と予後
本実施例では、細胞診又は組織診で膵癌と診断され、UICC分類でステージ4(TNM分類でステージ4b)の切除不能進行膵癌39例を対象とし、治療開始前の血清中抗RPL29抗体価を測定し、治療開始時から患者死亡時までの期間との関連をKaplan-meier法で解析し、血清中抗RPL29抗体価と予後予測の可能性を検討した。血清中抗RPL29抗体の抗体価の測定は、参考例3と同手法により行った。
【実施例】
【0053】
1)対象:細胞診又は組織診で膵癌と診断され、UICC分類でステージ4(TNM分類でステージ4b)の切除不能進行膵癌39例を対象とした。なお、全例がECOG Performance status 0、1又は2に該当した。
2)治療:4週間を1コースとし、Day 1, 8, 15にゲムシタビン(Gemcitabine)1000mg/m2を点滴静注した。
3)解析:治療開始前の血清中抗RPL29抗体価を参考例3と同手法にて測定し、治療開始時から患者死亡時までの期間との関連をKaplan-meier法で解析した。上記各患者の血清中抗RPL29抗体価を図9に示し、生存期間を図10に示した。切除不能膵癌患者の血清中に、種々の抗体価で抗RPL29抗体を認めた。血清中抗RPL29抗体価が0.5 OD405 nm以上の症例では、0.5 OD405 nm未満の症例に比べて明らかに生存期間が長期であった。
【実施例】
【0054】
(実施例3) 抗RPL29抗体による肝癌細胞株PLC/PRF/5の増殖抑制効果
肝癌細胞株PLC/PRF/5を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml, 1μg/ml又は5μg/ml、recombinant RPL29 (H00006159-P01: Avnova, Taipei, Taiwan)0μg/ml,又は 5μg/ml加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0055】
抗RPL29抗体は濃度依存的に肝癌細胞株PLC/PRF/5の細胞増殖を抑制した。抗RPL29抗体とrecombinant RPL29を加えることで、抗RPL29抗体による肝癌細胞株PLC/PRF/5に対する細胞増殖抑制効果は相殺された(図11参照)。このことより、肝癌細胞増殖抑制効果を示した物質が抗RPL29抗体であることが確認された。これにより、抗RPL29抗体を投与したり、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体を活性化若しくは増強しうる物質や生体内に抗RPL29抗体産生を誘導しうる物質を投与することにより、生体内に高い抗RPL29抗体が認められ、効果的な抗腫瘍効果が期待できる。
【実施例】
【0056】
(実施例4) 抗RPL29抗体による肝癌細胞株Huh7の細胞内シグナル変化
肝癌細胞株Huh7を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用6 wellプレートに2 ml/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan)を0μg/ml, 1μg/ml又は5μg/ml加えた。培養開始24時間後に培養液を除去し、Pierce IP Lysis Buffer (Thermo Fisher Scientific Inc., IL) 400μlを各wellに加えた。15分間攪拌した後、ビーズ破砕機(TAITEC, Saitama, Japan)で細胞を破砕した。その後、13,000gで10分間遠沈し、上澄を回収した。得られた上澄に等量の2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4% SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 10% メルカプトエタノール, 0.004% ブロモフェノールブルー(BPB))を添加し、5分間煮沸し、タンパク質を抽出した。
【実施例】
【0057】
抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan)刺激後のHuh7から上述の方法で抽出したタンパク質を、常法に従ってSDS-PAGEにより電気泳動を行った。泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングした。PVDF Blocking Reagent for Can Get Signal (TOYOBO, Osaka, Japan)で1 時間のブロッキング処理後Casein Kinase 1α, Axin1, Pan-GSK, p-GSK-3β (ser9), p-β-Catenin (Thr41/Ser45), β-Catenin, Cyclin D1, c-Jun, Met, Survivin, p-Tuberin/TSC2 (Thr1462), p-mTOR (Ser2448)及びp-p70 S6 Kinase (Thr389)の各一次抗体 (Cell signaling Techonology, Inc., MA)又は抗β-actin抗体 (Sigma-Aldrich Co., MO)で1 時間処理した。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗IgG抗体(RPN2124: GE Healthcare社、UK)を二次抗体として1 時間反応させた。メンブレンを洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
【実施例】
【0058】
正常状態では、Wnt刺激により細胞内に蓄積したβ-カテニは核内に移行した後、cyclin D1等の遺伝子発現を促進する。Wnt 刺激のない状態では、β-カテニンがAPC、GSK-3βと共にAxin に結合し、このAxin 複合体中でcasein kinase 1αとGSK-3βによるリン酸化とそれに伴うユビキチン化を受け、最終的にはプロテアソームにより分解される。癌細胞ではβ-カテニンが細胞質や核内に異常蓄積することでcyclin D1やc-Jun、Met、Survivinなどの癌関連遺伝子の過剰発現を介して異常な細胞増殖が誘導されると考えられている(Cell Signal 2008;20:1697、Oncogene 2012 17;31:2580、Mol Cancer Res 2009;7:1189)。本実施例では、肝癌細胞株Huh7に抗RPL29抗体を投与することにより、細胞内のβ-カテニンを分解の方向へ調節するGSK-3βやAxin 1、casein kinase 1αの発現増強と細胞内β-カテニン量の低下、標的遺伝子であるcyclin D1やc-Jun、Met、Survivinのタンパク発現の低下を認めた(図12参照)。
【実施例】
【0059】
細胞内セリン/スレオニンキナーゼであるmTORは、リン酸化により活性化されるとmRNAの翻訳やタンパク質合成を促進し、細胞成長と増殖を誘導する(Cell 2012;149: 274)。本実施例では、肝癌細胞株huh7に抗RPL29抗体を投与することで、細胞内mTOR及び下流エフェクターp70 S6 kinaseの活性低下を認めた(図12参照)。
【実施例】
【0060】
AMPK阻害により膵癌細胞(Int J Oncol 2012;41:2227)や大腸癌細胞(J Surg Oncol 2012;106:680)、前立腺癌細胞(Mol Cancer Ther 2009;8:733)で増殖抑制が認められると報告されている。本実施例でも、抗RPL29抗体投与により、肝癌細胞株Huh7において細胞内AMPKの活性低下を認めた(図12参照)。
【実施例】
【0061】
(実施例5) 血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株の増殖抑制効果の関係について(1)
肝癌細胞株であるHuh7又はPLC/PRF/5を各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、参考例3で抗RPL29抗体を測定した自己免疫性肝炎患者のうち25例について、参考例1と同手法により得た精製IgG溶液を各wellに加えた(5μg/ml)。この時のコントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0062】
自己免疫性肝炎患者において、血清中IgGの抗RPL29抗体価と肝癌細胞株の増殖抑制効果の間に強い相関を認めた。本結果により、血清中に含まれる抗RPL29抗体価が高いほど肝癌細胞の増殖抑制効果が高いことが示された(図13、14参照)。よって、血清中抗RPL29抗体量を増加させることにより、より強い抗腫瘍効果が得られると考えられた。
【実施例】
【0063】
(実施例6) 血清中抗RPL29抗体価と血清中IgGによる肝癌細胞株の増殖抑制効果の関係について(2)
肝癌細胞株であるHuh7又はPLC/PRF/5を各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、参考例3で抗RPL29抗体を測定した自己免疫性肝炎患者のうち4例において、参考例1と同手法により得た精製IgG溶液についてIgGを0μg/ml又は5μg/ml、及びrecombinant RPL29 (H00006159-P01: Avnova, Taipei, Taiwan)を0μg/ml又は 1μg/ml加えた。この時のコントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0064】
RPL29を加えることで、血清中抗RPL29抗体価の高い自己免疫性肝炎患者の血清から抽出して得たIgGの肝癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果は相殺された(図15、16参照)。血清中抗RPL29抗体の抗体価の測定は、参考例3と同手法により行った。このことより、肝癌細胞増殖抑制効果を示した物質が抗RPL29抗体であることが確認された。これにより、抗RPL29抗体を投与したり、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体を活性化若しくは増強しうる物質や生体内に抗RPL29抗体産生を誘導しうる物質を投与することにより、生体内に高い抗RPL29抗体が認められ、効果的な抗腫瘍効果が期待できる。
【実施例】
【0065】
(実施例7) 抗RPL29抗体による膵癌細胞株Panc-1の増殖抑制効果
膵癌細胞株Panc-1を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/ml加えた。その後24時間又は48時間後(培養開始36時間又は60時間後)に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度はコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0066】
抗RPL29抗体は濃度及び時間依存的に膵癌細胞株Panc-1の細胞増殖を抑制した(図17参照)。
【実施例】
【0067】
(実施例8) 抗RPL29抗体による膵癌細胞株AsPC-1の増殖抑制効果
膵癌細胞株AsPC-1を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/ml加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度はコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0068】
抗RPL29抗体は濃度及依存的に膵癌細胞株AsPC-1の細胞増殖を抑制した(図18参照)。
【実施例】
【0069】
(実施例9) 抗RPL29抗体による膵癌細胞株AsPC-1細胞内シグナル変化
膵癌細胞株AsPC-1を細胞培養用10cmプレートに播種した。なお、培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。60% コンフルエントの状態で、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を1μg/ml加えた。抗RPL29抗体投与48時間後に、Proteome ProfilerTM Phospho-Kinase Array Kit(R&D Systems, Inc., MN, USA)を用いて、細胞内シグナルの解析を行った。なお、コントロールは、抗RPL29抗体非投与のものとした。
【実施例】
【0070】
抗RPL29抗体投与を行った膵癌細胞株AsPC-1では、細胞内β-カテニン及びp-mTOR (S2448)の低下が認められた。これらは、抗RPL29抗体がcell cycle及びcell proliferationに関与する細胞内シグナル伝達系を抑制していることを示している(図19参照)。
【実施例】
【0071】
(実施例10)膵癌切除後患者における血清中抗RPL29抗体と再発
本実施例では、細胞診又は組織診で膵癌と診断され遠隔転移巣を認めない切除可能膵癌症例であって、膵癌原発巣に対して根治的切除術を施行した患者31例を対象とし、根治的切除術前の血清中抗RPL29抗体価を参考例3と同手法にて測定し、根治的切除術時から膵癌再発時までの期間との関連をKaplan-meier法で解析し、血清中抗RPL29抗体価と予後予測の可能性を検討した。血清中抗RPL29抗体の抗体価の測定は、参考例3と同手法により行った。
【実施例】
【0072】
膵癌切除後患者における抗RPL29抗体価を図20に示した。血清中抗RPL29抗体価が0.5 OD405 nm以上の症例、0.5 OD405 nm未満の症例に分類し、これらの患者背景を表3に示した。
【表3】
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【実施例】
【0073】
血清中抗RPL29抗体価が0.5 OD405 nm以上の症例と0.5 OD405 nm未満の症例の間で、患者背景に有意な差を認めなかった。しかしながら、血清中抗RPL29抗体価が0.5 OD405 nm以上の症例では、0.5 OD405 nm未満の症例に比べて術後再発までの期間が明らかに長期であった(図21参照)。
【実施例】
【0074】
(実施例11) 血清中IgGによる膵癌及び大腸癌の増殖抑制効果
膵癌細胞株であるAsPC-1、Panc-1及び大腸癌細胞株HCT15を各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、膵癌細胞株培養用の培養液は、DMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。大腸癌細胞株培養用の培養液は、RPMI-1640 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 10% 加熱不活化 FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)とし、同条件で培養した。血清中抗RPL29抗体価が高値を示す自己免疫性肝炎患者2例(AIH-31、AIH-45)から、参考例1と同手法により血清からIgGを抽出した。培養開始12時間後に、前記抽出して得たIgGを0μg/ml又は5μg/ml加えた。さらに、recombinant RPL29 (H00006159-P01: Avnova, Taipei, Taiwan)を0μg/ml又は1μg/ml加えた。コントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0075】
血清中抗RPL29抗体価の高い自己免疫性肝炎患者の血清から抽出したIgGには、膵癌及び大腸癌においてRPL29を標的とした増殖抑制効果が認められた(図22、23参照)。また、これらの増殖抑制効果は、recombinant RPL29を加えることで相殺されることも観察された。このことより、膵癌及び大腸癌において細胞増殖抑制効果を示した物質が抗RPL29抗体であることが確認された。これにより、抗RPL29抗体を投与したり、生体内に存在する内在性抗RPL29抗体を活性化若しくは増強しうる物質や生体内に抗RPL29抗体産生を誘導しうる物質を投与することにより、生体内に高い抗RPL29抗体が認められ、効果的な抗腫瘍効果が期待できる。
【実施例】
【0076】
(実施例12) 血清中IgGによるヒト各種悪性腫瘍細胞の増殖抑制効果
乳癌細胞株MCF-7又は小細胞肺癌培養株H1048、非小細胞肺癌細胞株PC-9、前立腺癌細胞株PC-3を各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はRPMI-1640 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 10% 加熱不活化 FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、血清中抗RPL29抗体が高値を示す自己免疫性肝炎患者2例(AIH-31、AIH-45)から、参考例1と同手法により血清から抽出したIgGを0μg/ml又は5μg/mlで加えた。コントロールには、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)のみを同量加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0077】
血清中抗RPL29抗体価の高い自己免疫性肝炎患者の血清から抽出したIgGには、乳癌および小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌に対する増殖抑制効果が認められた(図24、25参照)。
【実施例】
【0078】
(実施例13) 抗RPL29抗体によるヒト各種悪性腫瘍細胞の増殖抑制効果
抗RPL29抗体によるヒト各種悪性腫瘍細胞(大腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌)の増殖抑制効果を調べた。
乳癌細胞株MCF-7又は大腸癌細胞株HCT15、非小細胞肺癌細胞株PC-9、小細胞肺癌細胞株H1048、前立腺細胞株PC-3を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はRPMI-1640 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 10% 加熱不活化 FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPL29抗体(H00006159-B02P : Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/mlで加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0079】
抗RPL29抗体は乳癌細胞及び大腸癌細胞、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌における細胞増殖を抑制した(図26参照)。
【実施例】
【0080】
(実施例14) 抗RPS4X抗体による肝癌細胞株Huh7の増殖抑制効果
肝癌細胞株Huh7を5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPS4X抗体(PAB17574: Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/mlで加えた。その後24時間又は48時間(培養開始36時間又は60時間)に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0081】
抗RPS4X抗体は濃度及び時間依存的に肝癌細胞株Huh7の細胞増殖を抑制した(図27参照)。
【実施例】
【0082】
(実施例15) 抗RPS4X抗体による悪性腫瘍細胞(肝癌、膵癌)の増殖抑制効果
肝癌細胞株PLC/PRF/5又は膵癌細胞株であるPanc-1及びAsPC-1を、各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。培養液はDMEM (Invitrogen Co., Carlsbad, CA) + 10% 加熱不活化FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% 非必須アミノ酸 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 1% ピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich Co., MO) +1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPS4X抗体(PAB17574: Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/mlで加えた。培養開始60時間後に、 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0083】
抗RPS4X抗体は肝癌細胞及び膵癌細胞の細胞増殖を濃度依存的に抑制した(図28参照)。
【実施例】
【0084】
(実施例16) 抗RPS4X抗体による各種悪性腫瘍細胞の増殖抑制効果の検討
抗RPS4X抗体による各種悪性腫瘍細胞(大腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、前立腺癌)の増殖抑制効果を検討した。
乳癌細胞株MCF-7又は大腸癌細胞株HCT15、非小細胞肺癌細胞株PC-9、小細胞肺癌細胞株H1048、前立腺癌細胞株PC-3を、各々5.0×104 cell/ml に調整後、細胞培養用96 wellプレートに100μl/wellで播種した。なお、培養液はRPMI-1640 (Sigma-Aldrich Co., MO) + 10% 加熱不活化 FBS (Vitromex, Vilshofen, Germany) + 1% ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co., MO)を用い、37℃で5% CO2下に培養した。培養開始12時間後に、抗RPS4X抗体(PAB17574: Avnova, Taipei, Taiwan) を0μg/ml、1μg/ml又は5μg/ml加えた。培養開始60時間後に、3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide (MTT:5 mg/ml in phosphate buffered saline) 溶液10μlを各wellに加えた。MTT添加4 時間後に培養液を除去し、DMSO 100μlを各wellに加えた。ELISAリーダー (Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories Ltd., Tokyo, Japan) で、570 nmの吸光度を測定した。各条件における吸光度をコントロールに対する比で表した。
【実施例】
【0085】
抗RPS4X抗体は乳癌細胞及び大腸癌細胞、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、前立腺癌における細胞増殖を抑制した(図29参照)。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上詳述したように、悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質を有効成分として含有することを特徴とする本発明の抗悪性腫瘍剤は、悪性腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。本発明の悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質は、悪性腫瘍細胞ができたとしても、本来生体内に備わっていると考えられる発病に至らない生体防御機構のひとつの物質と考えられる。係る物質を有効成分として含む抗悪性腫瘍剤は、安全性が高い薬剤であり、有用である。
【0087】
また、本発明の検査方法では悪性腫瘍細胞において発現の亢進しているリボソームタンパク質を標的とする物質の量、例えば抗体の場合は抗体価を測定することで、癌患者の予後も予測することができ、その結果に応じて癌患者に最適な治療方法を提供可能な点で、非常に有用である。
図面
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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