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明細書 :microRNAを有効成分とするIMPDH阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5632101号 (P5632101)
登録日 平成26年10月17日(2014.10.17)
発行日 平成26年11月26日(2014.11.26)
発明の名称または考案の名称 microRNAを有効成分とするIMPDH阻害剤
国際特許分類 A61K  31/7105      (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  31/10        (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
A61P  31/12        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 31/7105 ZNA
A61K 48/00
C12N 9/99
A61P 43/00 111
A61P 37/06
A61P 35/00
A61P 9/00
A61P 29/00
A61P 31/10
A61P 17/06
A61P 31/12
C12N 15/00 G
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2013-545886 (P2013-545886)
出願日 平成24年11月14日(2012.11.14)
国際出願番号 PCT/JP2012/079467
国際公開番号 WO2013/077228
国際公開日 平成25年5月30日(2013.5.30)
優先権出願番号 2011257158
優先日 平成23年11月25日(2011.11.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年4月30日(2014.4.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】大内田 守
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】深草 亜子
参考文献・文献 Proteomics,2011年 9月,Vol.11,No.17,p.3531-3539
調査した分野 A61K 31/7088
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の、配列番号1及び/又は2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを有効成分として含む、イノシン一リン酸脱水素酵素生合成抑制剤
1)配列番号1(UGUGCAAAUCUAUGCAAAACUGA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号2(AGUUUUGCAUAGUUGCACUACA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
請求項に示すいずれかのオリゴヌクレオチドが挿入されたベクターを含む請求項に記載のイノシン一リン酸脱水素酵素生合成抑制剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、microRNAを有効成分とするイノシン一リン酸脱水素酵素(inosine 5'-monophosphate dehydrogenase:IMPDH)阻害剤に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2011-257158号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
microRNA(以下、「miRNA」という場合もある。)は、蛋白をコードしていない約22~25塩基からなる一本鎖RNAで、これまでに約5,000個以上のmiRNAが登録されている。細胞の増殖、分化、発生に関わっている機能性低分子RNAであり、遺伝子発現の制御において重要な役割を担っている。miRNAは、核内で前駆体としてより長いRNAの形でDNAから転写され、pri-miRNAとして合成され、Droshaによってpre-miRNAとなり細胞質に運ばれる。このpre-miRNAはDicerの作用により約22~25塩基の二本鎖RNAとなり、一方のRNAが放出され、残された鎖がRISC(RNA-induced silencing complex)複合体に取込まれ、miRNAとして遺伝子機能制御に関与する。RISC複合体中のmiRNAは、標的となる遺伝子mRNAの3'非翻訳領域(3'UTR)に結合する。miRNAは標的mRNAを分解することなくmRNAの蛋白合成を抑制するために、mRNAアレイのようなmRNAの変動を調べる技術では真の標的遺伝子を見出すことが不可能である。また、miRNAの結合様式は、全配列がペアを形成するのではなく、miRNAの5'側の約8塩基(シード配列と呼ばれる)領域を中心として結合し、全体としてミスマッチを含んだ形で結合する。このことが、miRNAの標的遺伝子の探索を困難なものにしており、単純な塩基配列同士のアライメント解析ソフトでは標的遺伝子群は見いだせない。
【0004】
イノシン一リン酸脱水素酵素(以下、「IMPDH」という。)はグアノシンヌクレオチドのde novo合成に関連する酵素である。生物におけるヌクレオチド類の合成は一般に生物の細胞分裂および複製に必要とされる。哺乳類におけるヌクレオチド合成は新生経路と再利用経路の二経路のうちの一方を通じて実現される。増殖の早いヒト白血球細胞系や、その他の腫瘍細胞系において、IMPDHの活性上昇が観察されており、IMPDHが免疫抑制療法や抗癌療法のための標的となり得ることが示唆される。また、ウイルスに感染した細胞系におけるウイルスの複製において、IMPDHが関与することも知られている。これらのことから、IMPDHは種々の医薬品の開発において着目されており、例えば免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウイルス剤となり得ると考えられる。
【0005】
IMPDH阻害剤として、マイコフェノール酸(mycophenolic acid; MPA)誘導体などの免疫抑制剤、リバビリン等の抗ウイルス剤、プリン代謝阻害薬等の抗癌剤等が実用化されている。新規なIMPDH阻害剤については各種特許出願(特許文献1~5)がなされているが、これらの特許文献に開示される物質は、いずれも低分子化合物である。IMPDH阻害剤は副作用を有するなど問題点があり、さらに効果的なIMPDH阻害剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001-261663号公報
【特許文献2】特表2003-503408号公報
【特許文献3】特表2002-539258号公報
【特許文献4】特表2002-528533号公報
【特許文献5】特表2001-526638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、miRNAによる新規なIMPDH阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、miRNAのうちmicroRNA 19a(miR-19a)がIMPDH遺伝子のmRNAに作用することでIMPDH蛋白の生合成を抑制うることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.以下の1)~5)から選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを1種又は2種以上を有効成分として含有する、IMPDH阻害剤:
1)配列番号1(UGUGCAAAUCUAUGCAAAACUGA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号2(AGUUUUGCAUAGUUGCACUACA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)上記配列番号1又は2に示す塩基配列に対して1~3個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)上記1)~3のいずれか1に示すオリゴヌクレオチドの塩基配列に対して、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)上記1)~4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチド。
2.配列番号1及び/又は2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを有効成分として含む、前項1に記載のIMPDH阻害剤。
3.前項1又は2に示すいずれかのオリゴヌクレオチドが挿入されたベクターを含む前項1又は2に記載のIMPDH阻害剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオリゴヌクレオチド、すなわち1)配列番号1(UGUGCAAAUCUAUGCAAAACUGA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;2)配列番号2(AGUUUUGCAUAGUUGCACUACA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;3)上記配列番号1又は2に示す塩基配列に対して1~3個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;4)上記1)~3のいずれか1に示すオリゴヌクレオチドの塩基配列に対して、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;5)上記1)~4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチドは、IMPDH遺伝子のmRNAに作用することでIMPDH蛋白の生合成を抑制し、IMPDH阻害剤として機能しうることが確認された。IMPDH阻害剤として機能しうることから、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウイルス剤となり得ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヒトのmiR-19aステムループを示す図である。
【図2】MCF-7細胞に、miR-19a、miR-20a、miR-92に対するアンチセンス鎖miRNA(anti-miRNA Locked Nucleic Acid: anti-miR-LNA)であるanti-miR-19a、anti-miR-20a、anti-miR-92を導入したときに、対応するmiRNAの発現量の変動を、TaqMan Real-time PCR法により確認した結果を示す図である。(参考例1)
【図3】各アンチセンス鎖miRNAをMCF-7細胞に導入した場合の、MCF-7細胞による蛋白の生合成を二次元電気泳動により確認した結果を示す写真図である。(参考例2)
【図4】MCF-7細胞から抽出した蛋白を二次元電気泳動後、蛍光染色したゲルイメージ像について、画像解析ソフトを用いて約2000スポット蛋白の検出及び定量し、両群間の蛋白生合成量の差を比較解析したもののうち、PPP2R2A、ARHGAP1、IMPDH1及びNPEPL1の4種の結果を示す写真図である。(参考例2)
【図5】二次元電気泳動により得られたスポットの一つについて蛋白を質量分析計にて分析した結果を示す図である。ここではPPP2R2Aが同定された。(参考例3)
【図6】二次元電気泳動により得られたスポットの一つについて蛋白を質量分析計にて分析した結果を示す図である。ここではARHGAP1が同定された。(参考例3)
【図7】二次元電気泳動により得られたスポットの一つについて蛋白を質量分析計にて分析した結果を示す図である。ここではIMPDH1が同定された。(参考例3)
【図8】二次元電気泳動により得られたスポットの一つについて蛋白を質量分析計にて分析した結果を示す図である。ここではNPEPL1が同定された。(参考例3)
【図9】各候補遺伝子のmiRNA標的部位を示す図である。(実施例1)
【図10】候補遺伝子に対する各miRNAの作用を確認するために、各候補遺伝子のmiRNA標的部位をルシフェラーゼ遺伝子の3'UTR側に導入したときの遺伝子の状態を示す図である。(実施例1)
【図11】各候補遺伝子のmiRNA標的部位を配置したルシフェラーゼレポータープラスミドをHEK293細胞内に導入した場合のルシフェラーゼ活性を確認した結果を示す図である。(実施例1)
【図12】各候補遺伝子のmiRNA標的部位を配置したルシフェラーゼレポータープラスミドと各アンチセンス鎖miRNAをHEK293細胞内に導入した場合のルシフェラーゼ活性を確認した結果を示す図である。(実施例2)
【図13】MCF-7細胞内に各アンチセンス鎖miRNAを導入した場合の各蛋白の生合成を、ウエスタンブロッティングにより確認した結果を示す写真図である。(実施例3)
【図14】IMPDH1及びNPEPL1の各mRNAについて、アンチセンス鎖miRNAを加えてmiRNAをノックダウンすることによるmiRNAの有無によるmRNA発現量の違いをRT-PCR法により解析した結果を示す図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特定のオリゴヌクレオチドを有効成分とするイノシン一リン酸脱水素酵素(inosine 5'-monophosphate dehydrogenase:IMPDH)阻害剤に関する。

【0013】
本明細書におけるIMPDH阻害剤に含まれる有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、1)~5)から選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを1種又は2種以上を含有する:
1)配列番号1(UGUGCAAAUCUAUGCAAAACUGA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号2(AGUUUUGCAUAGUUGCACUACA)に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)上記配列番号1又は2に示す塩基配列に対して1~3個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)上記1)~3のいずれか1に示すオリゴヌクレオチドの塩基配列に対して、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)上記1)~4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチド。

【0014】
上記において、配列番号1に記載の塩基配列は図1より参照することができる。図1において、配列番号1に記載の配列はmiR-19aを示す配列であり、図1の配列番号2に示す配列は、配列番号1に記載の配列に対してほぼ相補的な逆向きの配列となる。背景技術の欄でも説明したように、miRNAの前駆体であるpri-miRNA(primary miRNA)はmiRNAの配列と、それに相補的な逆向きの配列とを含むヘアピンループ構造(ステムループ構造)をとる。本明細書において、相補的とは、必ずしも完全に相補的であることを意味せず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。

【0015】
本発明において、有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、IMPDH蛋白の生合成を抑制する機能を有する限りその長さを問わない。本発明の有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、IMPDH蛋白の生合成を抑制する機能を有するmiRNAを発現可能なオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、オリゴヌクレオチドがmiRNAの成熟型である場合は15~30塩基とすることができ、好ましくは20~25塩基である。最も好ましくは、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、即ちmiR-19a又はmiR-19a*が挙げられる。前記有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、miRNAの前駆体型に含まれていてもよい。miRNAの前駆体型は通常80~120塩基前後の大きさである。例えば前記有効成分としてのオリゴヌクレオチドを発現可能なベクターを作製する場合に、miRNA前駆体を含む約240塩基程度のオリゴヌクレオチドをベクターに導入して作製することができる。miRNA前駆体を示すオリゴヌクレオチドの例として、図1の配列番号3に示すオリゴヌクレオチドを参照することができる。

【0016】
本発明では、miR-19aの標的遺伝子を確認した結果、miR-19aがIMPDH蛋白の生合成を抑制しうることを確認した。本発明において、miR-19aの標的遺伝子は、プロテオミクス解析方法により解析したが、miRNAの標的遺伝子を解析可能な方法であれば、既存の公知の方法であってもよいし、今後開発されるあらゆる方法により解析することができ、解析方法自体は特に限定されない。

【0017】
本発明のIMPDH阻害剤において、有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において公知のいずれの手法により設計し、合成してもよい。例えば、公知の核酸合成反応により合成することができる。例えば、市販の合成機を用いて独自に合成することもできるし、受託サービスを利用して合成依頼することもできる。

【0018】
本発明のIMPDH阻害剤は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウイルス剤となり得ると考えられる。本発明のIMPDH阻害剤は、それぞれの使用目的に応じて治療上有効量のオリゴヌクレオチドを投与することができる。投与方法としては、有効成分としてのオリゴヌクレオチドが病原細胞やウイルス等の標的部位に送達され、その機能を発揮しうる投与方法であればよく、特に限定されない。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドの投与により、標的部位において有効成分としてのオリゴヌクレオチド、例えばmiR-19aが発現されればよい。

【0019】
本発明の有効成分としてのオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドそのもの、又はオリゴヌクレオチドを導入したベクターとともに適宜投与することができる。ベクターとしては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、リポソーム、ポリマーベースのナノ粒子、コレステロール結合体、シクロデキストラン複合体、ポリエチレンイミンポリマー又は蛋白複合体などの非ウイルスベクターを利用することができる。

【0020】
本発明の有効成分としてのオリゴヌクレオチドや、当該オリゴヌクレオチドを含むベクターは、薬学上許容される担体と共に投与することができる。投与方法としては、例えば標的部位に局所投与するほか、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与、腹腔内投与、経膣投与、肛門投与、経口投与、眼内投与、髄腔内投与などの投与方法により投与することができる。局所投与のための製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、座薬、スプレー、液体又は粉末の製剤が挙げられ、担体としては水性、粉末又は油性基材、増粘剤等の通常の担体が所望に応じて使用されうる。また、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与や腹腔内投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、糖調剤、懸濁剤、増粘剤、分散剤、安定剤や保存剤などから選択されるいずれかを適宜含みうる水性又は非水性の溶液や乳剤などが挙げられる。
【実施例】
【0021】
本発明の理解を助けるために、本発明を実施するまでの予備検討としての参考例を示し、さらに実施例、比較例、実験例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【実施例】
【0022】
(参考例1)miRNAのアンチセンス鎖遺伝子の導入による各miRNA発現量の確認
本参考例では、miR-19a(配列番号1)、miR-20a(配列番号4)及びmiR-92について、各アンチセンス鎖miRNAの導入による各miRNAの発現抑制効果を確認した。ここで、各アンチセンス鎖miRNAは、それぞれの5'末端の4塩基及び3'末端の4塩基に人工核酸(Locked Nucleic Acid:LNATM)を用い、anti-miR-LNAとした。以降の参考例及び実施例において、単にanti-miR-19a、anti-miR-20a、anti-miR-92という場合は、各々についてLNAが導入されたanti-miR-LNAを意味する。各アンチセンス鎖miRNAは、ジーンデザイン株式会社に合成依頼した。
【実施例】
【0023】
MCF-7細胞(ヒト乳ガン由来細胞株)に、miR-19a、miR-20a及びmiR-92に対するアンチセンス鎖miRNA(anti-miR-LNA)であるanti-miR-19a、anti-miR-20a、anti-miR-92を導入したときの各対応するmiRNAの発現量の変動を、リアルタイムPCR法(TaqMan(R) Real-time PCR法、TaqMan MicroRNA Assay kit; Applied Biosystems社)により確認した。
【実施例】
【0024】
MCF-7細胞を24穴培養プレートに播種し、10%子牛血清を含むOPTI-MEM培地(インビトロジェン社)にて培養24時間後に、各アンチセンス鎖miRNA(50nM)を遺伝子導入試薬(リポフェクタミン2000試薬、インビトロジェン社)を用いて導入した。
【実施例】
【0025】
アンチセンス鎖miRNAを各々MCF-7細胞へ導入後、24時間、48時間及び72時間経過後にRNA抽出試薬(Isogen、ニッポンジーン社)を用いてRNAを抽出し、各miRNAの発現量をリアルタイムPCR法にて確認した。コントロールとして、各アンチセンス鎖miRNA導入0時間目の各miRNAの発現量を測定し、100とした。その結果、図2に示すように、各アンチセンス鎖miRNAを導入した場合について、各miRNAの発現量が低下することが確認され、導入48時間目で各miRNAの発現量が最も低下することが確認された。特に、miR-19aに対するanti-miR-19aが、最も効果的に対応するmiRNA、即ちmiR-19aの発現を低下させうることが確認された。
【実施例】
【0026】
(参考例2)二次元電気泳動による解析
本参考例では、参考例1に記載の各アンチセンス鎖miRNA(anti-miR-LNA)をMCF-7細胞に導入した場合と、コントロールとして、MCF-7細胞内mRNAに全く反応しない塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、LNAを導入したもの(以降、「ランダム配列LNA」)を導入した場合についてMCF-7細胞による蛋白の生合成を二次元電気泳動により確認した(図3参照)。即ち、各アンチセンス鎖miRNAをMCF-7細胞に導入することで、各miRNAの発現を抑制し、その結果として生合成に変動のある蛋白を確認することで、各種miRNAの標的蛋白を確認した。
【実施例】
【0027】
MCF-7細胞から抽出した蛋白を二次元電気泳動処理した後、蛍光染色したゲルイメージ像について、画像解析ソフトを用いて約2000スポット蛋白を検出し、定量し、両群間の蛋白生合成量の差を比較解析した(図4参照)。アンチセンス鎖miRNAを導入したときに、生合成量の有意な上昇が認められた蛋白123個のスポットを切り出し、液体クロマトグラフィー質量分析計(アジレント社ナノフローLC/MS/MSシステム)を用いて、各スポットの蛋白を同定した(図5~8参照)。上記参考例2で解析した123個の蛋白からmiRNAの真の標的蛋白を絞り込む為の検討を行った。
【実施例】
【0028】
ここではmiRNA結合領域解析ソフトを用いて、同定された蛋白に対応する遺伝子mRNAの3'UTR領域に、各miRNAが結合する標的配列があるものを選択し、PPP2R2A (protein phosphatase 2 (formerly 2A)) 、ARHGAP1 (Rho GTPase activating protein 1)、IMPDH1 (IMP dehydrogenase 1)及びNPEPL1 (Homo sapiens aminopeptidase-like 1)の4種に絞り込んだ(図9参照)。
【実施例】
【0029】
(実施例1)標的遺伝子に対する各miRNAの作用1
本実施例では、標的候補遺伝子に対する各miRNAの作用及び標的蛋白の生合成量をルシフェラーゼ(Luciferase)レポーター解析により確認した。
参考例1で絞り込んだ4種の標的候補遺伝子について、これらの遺伝子のmiRNA標的配列(正方向)を各々ルシフェラーゼ遺伝子の3'UTR側に配置したルシフェラーゼレポータープラスミドを作製した(図10参照)。当該各miRNA標的配列を配置させたルシフェラーゼレポータープラスミドを各々HEK293細胞に導入した。各miRNA標的配列(逆方向)を導入したものをコントロールとした。各々についてルシフェラーゼ活性を比較検討した。その結果、4種の標的候補遺伝子の全てに対して、各miRNA標的配列(正方向)の導入によりルシフェラーゼ活性の減少が確認された(図11)。すなわち、各標的候補遺伝子のmiRNA標的配列に対して各miRNAが作用することでルシフェラーゼ蛋白の生合成が抑制されているものと考えられた。
【実施例】
【0030】
上記において、PPP2R2A遺伝子のmiR-20a(配列番号4)に対する標的配列は、配列番号5(5'-TAGGTAAGGGTAGGGCACTTTT-3')に示す塩基配列からなり、ARHGAP1遺伝子のmiR-19a(配列番号1)に対する標的配列は配列番号6(5'-TCATGTATTTCACCGTTTGCACTTTT-3')に示す塩基配列からなり、同様にIMPDH1遺伝子のmiR-19aに対する標的配列は配列番号7(5'-TGAGTGGTCCACAGATTTGCACT-3')及び配列番号8(5'-GTCGAAGGCTTTAACTTTGCACA-3')に示す塩基配列からなり、NPEPL1遺伝子のmiR-19aに対する標的配列は配列番号9(5'-GATCTTTTACCTCACTTTGCACT-3')に示す塩基配列からなる(図10参照)。
【実施例】
【0031】
(実施例2)標的遺伝子に対する各miRNAの作用2
本実施例では、各miRNAを各アンチセンス鎖miRNA(anti-miR-LNA)で作用させたときのルシフェラーゼ活性の測定により、標的遺伝子に対する各miRNAの作用確認試験を行った。アンチセンス鎖miRNAは、参考例1に示すanti-miR-19a、anti-miR-20a及びanti-miR-92を用いた。実施例1で作製したルシフェラーゼレポータープラスミドと、対応する各アンチセンス鎖miRNAを同時にHEK293細胞に導入してmiRNAを各々ノックダウンさせた。アンチセンス鎖miRNAのかわりにランダム配列LNAをコントロールとし、各々についてルシフェラーゼ活性を比較検討した。
【実施例】
【0032】
その結果、4種の標的遺伝子候補すべてについて、アンチセンス鎖miRNAの導入によりルシフェラーゼ活性が復活することが確認された(図12)。すなわち、アンチセンス鎖miRNAの導入により対応する各miRNAが抑制され、その結果各遺伝子の標的配列を介して抑制されていたルシフェラーゼの生合成が回復しているものと考えられた。本実施例の結果からも各標的候補遺伝子のmiRNA標的配列に対して、各miRNAが作用していることが確認された。
【実施例】
【0033】
(実施例3)標的遺伝子に対する各miRNAの作用3
本実施例では、各miRNAに対応する各アンチセンス鎖miRNA(anti-miR-LNA)をMCF-7細胞に導入したときの蛋白の生合成に及ぼす影響を確認した。その結果、miR-19aに対応するアンチセンス鎖miRNA(anti-miR-19a)をMCF-7細胞に導入した場合に、IMPDH1蛋白及びNPEPL1蛋白が増加することが確認された(図13)。
【実施例】
【0034】
(実施例4)標的遺伝子に対する各miRNAの作用4
miRNAは、mRNAを分解することなく、蛋白合成阻害を行うと考えられている。実施例3の結果により、miR-19aに対応するアンチセンス鎖miRNA(anti-miR-LNA)存在下では、IMPDH1蛋白及びNPEPL1蛋白が増加することが確認された。そこで、本実施例ではIMPDH1及びNPEPL1の各mRNAについて、miRNAの有無によるmRNA発現量の違いをRT-PCR法により解析した。
その結果、アンチセンス鎖miRNAを加えてmiRNAをノックダウンしても、標的蛋白に関するmRNAの発現量には影響を与えていないことが確認された(図14)。
以上より、miR-19aの標的遺伝子はIMPDH1遺伝子及びNPEPL1遺伝子であり、特にIMPDH1蛋白の生合成に影響を及ぼすことが明らかとなった。従って、miR-19aはIMPDH1抑制剤として機能しうることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上詳述したように、本発明のmiR-19aに係るオリゴヌクレオチドは、IMPDH遺伝子のmRNAに作用し、IMPDH蛋白の生合成を抑制し、IMPDH阻害剤として機能しうることが確認された。本発明のオリゴヌクレオチドがIMPDH阻害剤の有効成分として機能しうることから、当該機能により、本発明のオリゴヌクレオチドを有効成分として含有するIMPDH阻害剤は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウイルス剤となり得ると考えられる。特に、ウイルスに対して作用させることで、従来の抗ウイルス剤を用いた場合などによるウイルスの突然変異にかかわらず、本発明のIMPDH阻害剤は抗ウイルス作用を発揮しうるものと考えられる。
図面
【図1】
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【図9】
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