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明細書 :屈折率測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-055495 (P2015-055495A)
公開日 平成27年3月23日(2015.3.23)
発明の名称または考案の名称 屈折率測定方法
国際特許分類 G01N  21/41        (2006.01)
FI G01N 21/41 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2013-187478 (P2013-187478)
出願日 平成25年9月10日(2013.9.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 平成25年3月29日 集会名、開催場所 第60回応用物理学会春季学術講演会 神奈川工科大学(神奈川県厚木市下萩野1030) (刊行物等) 発行日 平成25年3月11日 刊行物 2013年第60回応用物理学会春季学術講演会「講演予稿集」 (刊行物等) 開催日 平成25年6月10日 集会名、開催場所 2013 Silicon Nanoelectronics Workshop リーガロイヤルホテル京都(Rihga Royal Hotel Kyoto,京都市下京区東堀川通り塩小路下ル松明町1番地) (刊行物等) 発行日 平成25年6月9日 刊行物 2013 Silicon Nanoelectronics Workshop,Workshop Abstracts
発明者または考案者 【氏名】猪川 洋
【氏名】佐藤 弘明
【氏名】小野 篤史
出願人 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100170818、【弁理士】、【氏名又は名称】小松 秀輝
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059AA02
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE12
2G059EE17
2G059JJ05
2G059MM01
2G059MM05
要約 【課題】装置構成を簡素化すると共に光の利用効率を向上させることを可能にした屈折率測定方法を提供する。
【解決手段】屈折率測定方法は、測定光Lに対応する出力信号を出力する半導体受光素子部4と、半導体受光素子部4上に配置された回折格子部6と、を備える屈折率測定装置1の回折格子部6上に被測定物Mを配置する工程S2と、被測定物Mを配置した後に、被測定物Mに対して測定光Lを照射することにより、測定光Lの波長λと、測定光Lが照射されたときに半導体受光素子部4から出力される出力信号とが関連付けられた分光感度特性を得る工程S5と、分光感度特性を利用して被測定物Mの屈折率nを得る工程S6と、を有する。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
入射した光に対応する信号を出力する半導体受光素子部と、前記半導体受光素子部上に配置され直線状の溝が複数形成された回折格子部と、を備える屈折率測定装置の前記回折格子部上に被測定物を配置する工程と、
前記被測定物を配置した後に、前記被測定物に対して測定光を照射することにより、前記測定光の波長と、前記測定光が照射されたときに前記屈折率測定装置から出力される信号とが関連付けられた分光感度特性を得る工程と、
前記分光感度特性を利用して前記被測定物の屈折率を得る工程と、を有する屈折率測定方法。
【請求項2】
前記被測定物の屈折率を得る工程は、
前記分光感度特性を利用して前記信号のピーク値及び前記ピーク値に対応する前記測定光のピーク波長を取得する工程と、
前記ピーク値、及び前記ピーク波長と前記回折格子部の格子ピッチとの組み合わせ、の少なくとも一方を利用して前記被測定物の屈折率を得る工程と、を有する請求項1に記載の屈折率測定方法。
【請求項3】
前記分光感度特性を得る工程は、
互いに異なる波長を有する前記測定光を前記被測定物に照射することにより、前記測定光の波長と、前記波長を有する前記測定光に対応する信号との組み合わせを複数取得する工程と、
複数の前記組み合わせを利用して前記分光感度特性を得る工程と、を有する請求項2に記載の屈折率測定方法。
【請求項4】
前記被測定物が配置されていない前記回折格子部に対して基準測定光を照射することにより、前記基準測定光の波長と、前記基準測定光が照射されたときに前記屈折率測定装置から出力される基準出力信号とが関連付けられた基準分光感度特性を得る工程と、を更に有し、
前記分光感度特性を得る工程は、
前記基準分光感度特性を利用して基準ピーク波長を取得する工程と、
前記被測定物に対して前記基準ピーク波長を有する前記測定光を照射して、比較出力信号を取得する工程と、
前記基準分光感度特性における基準ピーク信号と、前記比較出力信号との差異を利用して前記分光感度特性を得る工程と、を有する請求項2に記載の屈折率測定方法。
【請求項5】
前記回折格子部に対して前記測定光を斜めに照射する請求項1~4の何れか一項に記載の屈折率測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の測定は、農業、化学、生物学及び医学などの様々な分野において応用が期待されている。屈折率を測定する技術として、特許文献1~3には、表面プラズモン共鳴を利用した屈折率の測定装置及び測定方法が記載されている。
【0003】
特許文献1には、試料の屈折率を容易に且つ高精度で求める屈折率計が記載されている。この屈折率計を用いて屈折率を測定する場合には、導波モード共鳴格子に対して測定光を所定の入射角で入射し、このときの導波モード共鳴格子からの反射光を光検出器により検出する。測定光の入射角は、所定角度範囲で走査され、これと連動して検出器に入射する反射光の出射角も入射角と同一になるように検出器の位置も移動させる。
【0004】
特許文献2には、回折格子を有し、小型化に適する表面プラズモン共鳴センサチップが記載されている。回折格子は弾性変形可能な弾性膜上に形成されている。このチップを用いて屈折率を測定する場合には、試料を回折格子面の近傍に配置した状態で、回折格子に向けて光を出射する。そして、反射光の強度を測定することにより、入射光の共鳴角を検出する。このチップでは、入射光の入射角の走査に代えて、弾性膜を膨出させて回折格子面の格子ピッチを動的に変化させる。
【0005】
特許文献3には、表面プラズモン共鳴センサが記載されている。このセンサは、測定用の光を入射する導波路コア層と、導波路コア層上に形成された測定用の試料を設けるためのサンプル層を有している。このセンサを用いて屈折率を測定する場合には、サンプル層に試料を設け、導波路コア層に光を入射させて、導波路コア層を透過する光の波長スペクトルあるいは入射角度スペクトルを測定する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-210384号公報
【特許文献2】特開2009-168469号公報
【特許文献3】特開2004-170095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に記載された屈折率測定方法では、共鳴フィルタから出射された光の強度に基づいて、共鳴ピークを与える共鳴角度を測定し、共鳴角度から屈折率を測定している。しかし、これらの方法によると、共鳴フィルタから出射された光の強度を検出するために、共鳴フィルタとは別体の光検出器が必要である。さらに、光検出器が別体であるために共鳴フィルタから出射された反射光の利用効率が低下するおそれもあった。
【0008】
そこで、本発明は、装置構成を簡素化すると共に光の利用効率を向上させることを可能にした屈折率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る屈折率測定方法は、入射した光に対応する信号を出力する半導体受光素子部と、半導体受光素子部上に配置され直線状の溝が複数形成された回折格子部と、を備える屈折率測定装置の回折格子部上に被測定物を配置する工程と、被測定物を配置した後に、被測定物に対して測定光を照射することにより、測定光の波長と、測定光が照射されたときに屈折率測定装置から出力される信号とが関連付けられた分光感度特性を得る工程と、分光感度特性を利用して被測定物の屈折率を得る工程と、を有する。
【0010】
このような屈折率測定方法によれば、被測定物を透過した測定光が回折格子部に入射し、回折格子部において特定波長の測定光が捉えられる。光電変換部は、捉えられた測定光に対応する電流を出力するため、測定光の波長と出力信号値とが関連付けられた分光感度特性が得られる。ここで、発明者らの知見によれば、分光感度特性は回折格子部と半導体受光素子部との間における位相整合条件に関連し、さらに、位相整合条件は回折格子部上に配置された被測定物の屈折率に対応しているため、分光感度特性を利用して被測定物の屈折率を得ることができる。従って、この屈折率測定方法では、外部の光検出器を不要として装置構成を簡素化すると共に、回折格子部で捉えた測定光を回折格子部と一体化された光電変換部で電流に変換することにより光の利用効率を向上させることができる。
【0011】
ここで、被測定物の屈折率を得る工程は、分光感度特性を利用して信号のピーク値及びピーク値に対応する測定光のピーク波長を取得する工程と、ピーク値、及びピーク波長と回折格子部の格子ピッチの組み合わせ、の少なくとも一方を利用して被測定物の屈折率を得る工程と、を有する。発明者らの知見によれば、分光感度特性におけるピーク信号値と屈折率との間には対応関係がある。また、分光感度特性におけるピーク波長及び格子ピッチと、屈折率との間にも対応関係がある。従って、これらの対応関係のいずれかを利用することにより、屈折率を容易に得ることができる。
【0012】
ここで、分光感度特性を得る工程は、互いに異なる波長を有する測定光を被測定物に照射することにより、測定光の波長と、波長を有する測定光に対応する信号との組み合わせを複数取得する工程と、複数の組み合わせを利用して分光感度特性を得る工程と、を有する。この工程によれば、被測定物が回折格子部上に配置されたときの分光感度特性を直接得ることができる。従って、屈折率を容易に得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る屈折率測定方法は、被測定物が配置されていない回折格子部に対して基準測定光を照射することにより、基準測定光の波長と、基準測定光が照射されたときに屈折率測定装置から出力される基準出力信号とが関連付けられた基準分光感度特性を得る工程と、を更に有し、分光感度特性を得る工程は、基準分光感度特性を利用して基準ピーク波長を取得する工程と、被測定物に対して基準ピーク波長を有する測定光を照射して、比較出力信号を取得する工程と、基準分光感度特性における基準ピーク信号と、比較出力信号との差異を利用して分光感度特性を得る工程と、を有する。これらの工程によれば、被測定物を回折格子上に配置していない状態の分光感度特性と、被測定物を回折格子上に配置したときの分光感度特性との関係を精度よく得ることができる。従って、屈折率を精度良く得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る屈折率測定方法は、回折格子部に対して測定光を斜めに照射する。この方法によれば、屈折率に対する感度を向上させることが可能となり、屈折率測定の精度を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る屈折率測定方法によれば、装置構成を簡素化すると共に光の利用効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る屈折率測定方法に用いる屈折率測定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示された光電変換部の要部断面図である。
【図3】測定光と導波路モードとの格子整合条件の関係を示す図である。
【図4】屈折率とピーク波長及びピーク値との関係を示すグラフである。
【図5】第1実施形態及び第2実施形態に係る屈折率測定方法のフロー図である。
【図6】分光感度特性を得る方法を示すグラフである。
【図7】第2実施形態の屈折率測定方法に用いる屈折率測定装置の要部断面図である。
【図8】回折格子部の格子ピッチとピーク波長との関係を示すグラフである。
【図9】分光感度特性を得る方法を示すグラフである。
【図10】第3実施形態に係る屈折率測定方法のフロー図である。
【図11】ピーク値の変化を得る方法を示すグラフである。
【図12】屈折率と正規化光電流との関係を示すグラフである。
【図13】入射光の波長と導波路モードの波長との関係を示すグラフである。
【図14】ゲート絶縁層に溝を有する屈折率測定装置の要部断面図である。
【図15】屈折率とピーク波長との関係を示すグラフである。
【図16】回折格子部を有する屈折率測定装置における屈折率とピーク波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0018】
[第1実施形態]
まず、屈折率測定方法に用いる屈折率測定装置について説明する。図1に示されるように、屈折率測定装置1は、被測定物Mに測定光Lを照射することにより被測定物Mの屈折率を得る装置である。屈折率測定装置1は、被測定物Mへ測定光Lを照射する光源装置2と、被測定物Mを透過した測定光Lに対応する出力信号を生成する光電変換部3と、光電変換部3の出力信号を処理して被測定物Mの屈折率を得る処理装置5と、を備えている。

【0019】
光源装置2は、所定の帯域に含まれる特定波長の測定光Lを出射するものである。また、光源装置2は、光電変換部3に対する測定光Lの入射角度θ(図3参照)が調整可能であり、本実施形態の光源装置2は、測定光Lが光電変換部3に対して斜めに入射するように配置されている。

【0020】
光電変換部3は、測定光Lの光強度に対応する出力信号を生成する半導体受光素子部4と、半導体受光素子部4上に設けられた回折格子部6とを備えている。なお、以下の説明においては、光電変換部3を構成する各層の積層方向をZ軸方向とし、後述する回折格子部6に形成された各格子の配列方向をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向、すなわち、格子に沿った方向をX軸方向とする。

【0021】
光電変換部3の半導体受光素子部4は、いわゆるMOS構造の横型pn接合ダイオードであり、シリコン基板7と、シリコン基板7上に配置され埋め込み絶縁層8と、埋め込み絶縁層8上に配置された半導体層9,11,12と、半導体層9,11,12上に配置されたゲート絶縁層13と、を有している。埋め込み絶縁層8は酸化シリコンからなり、半導体層9,11,12は所定のドーパントを含むシリコンからなり、ゲート絶縁層13は酸化シリコンからなる。従って、半導体受光素子部4は、シリコン基板7をサブストレートとしたSOI(Silicon On Insulator)構造を有している。

【0022】
半導体層9,11,12は、埋め込み絶縁層8上の矩形状の所定領域において、X軸方向に沿って、この順で隣接して設けられている。光導波路及び光吸収層として機能する半導体層11は、深さ方向(Z方向)の大部分が空乏化し、シリコンに対して低濃度でボロンやリン等のp型不純物又はn型不純物が添加されている。アノード電極及びカソード電極である半導体層9,12は、それぞれ、埋め込み絶縁層8上において半導体層11をX軸に沿った方向から挟むように、半導体層11とほぼ同一の厚さでp+型半導体層及びn+型半導体層として形成されている。このp+型半導体層9及びn+型半導体層12は、それぞれ、シリコンに対して高濃度(1019cm-3以上)でボロン等のp型不純物及びリン等のn型不純物が添加されており、半導体層11に並設されることでアノード電極及びカソード電極として機能する。これらの半導体層9,11,12上には、半導体層9,11,12を覆うようにゲート絶縁層13が形成されている。

【0023】
このような光電変換部3によって測定光Lを検出する際には、回折格子部6にゲート電圧Vgが印加され、シリコン基板7に基板電圧Vsubが印加される。ゲート電圧Vg及び基板電圧Vsubを調整することで、半導体層11の上下の界面における電子又は正孔の密度を広範囲で制御することができる。特に、ゲート電圧Vg及び基板電圧Vsubは、ゲート絶縁層13に接する半導体層11の界面と、埋め込み絶縁層8に接する半導体層11の界面における電子又は正孔の密度が半導体層11の真性キャリア密度よりも十分に大きくなるように設定されることが好ましい。

【0024】
ゲート絶縁層13上の少なくとも半導体層11を覆う領域には回折格子部6が配置されている。従って、回折格子部6は、ゲート絶縁層13を介して半導体層11を覆っており、半導体層9,11,12から電気的に絶縁されている。回折格子部6は、平面状の導電部材である金属膜に、半導体層11を覆う領域に亘ってX軸方向に沿ってゲート絶縁層13の表面まで貫通する複数の直線状の貫通溝6a(図2参照)が複数形成されている。そして、これら貫通溝6aは、Y軸方向に一定の格子ピッチPで並設されている。このような回折格子部6の材料としては、例えば、チタン(Ti)の付着力強化層上に形成した金(Au)等の導電性金属が用いられる。この回折格子部6は、所定波長を有する測定光Lを半導体層11へ導く役割、ゲート電極としての役割、及び被測定物Mを配置するための配置部としての役割を有する。

【0025】
光電変換部3では、回折格子部6に測定光Lが照射されると、半導体層11の導波路モードとの間で位相整合条件を満たす特定波長の測定光Lが最も効率よく半導体層11に捉えられる。半導体層11に捉えられた測定光Lは、半導体層11中において吸収されて電子・正孔対を生成する。そして、生成され分離された電子と正孔の量に対応する光電流がカソードからアノードへ流れるため半導体層12から出力信号が取り出される。

【0026】
この半導体層11における導波路モードの伝搬波長λgは、式(1)により示される。ここで、λは測定光Lの波長であり、nsは半導体層11の屈折率であり、tsは半導体層11の厚さであり、niは埋め込み絶縁層8及びゲート絶縁層13の屈折率である。
【数1】
JP2015055495A_000003t.gif

【0027】
位相整合条件について説明する。図3に示されるように、回折格子部6に対して測定光Lが入射角度θで斜めに入射したとき、回折格子部6における1ピッチあたりに生じる光路長(P×sinθ)と屈折率nと波長λとに起因して、位相差Δ(=P(2πn/λ)sinθ)が生じる。そして、位相整合条件は、位相差Δを波数kg(=2π/λg)で除した値(Δ/kg)を半導体層11の伝搬波長λgに対して加算又は減算した値(=λg±Δ/kg)が、格子ピッチPと等しいとして示される。従って、式(2-1)及び式(2-2)が得られる。ここで、λは測定光Lの波長であり、nは被測定物Mの屈折率であり、Pは格子ピッチであり、θは測定光Lの入射角度である。また、λgfは半導体層11における前進波の伝搬波長であり、λgbは半導体層11における後進波の伝搬波長である。位相整合条件が満たされる場合とは、式(2-1)及び式(2-2)を満足する場合である。式(2-1)及び式(2-2)によれば、位相整合条件を満たす場合とは、格子ピッチP、屈折率n、測定光Lの波長λ、入射角度θにより規定される値が、導波路モードの伝搬波長λgf,λgbと一致する場合であるともいえる。
【数2】
JP2015055495A_000004t.gif

【0028】
式(2-1)及び式(2-2)によれば、測定光Lの入射角度θが0度以外、換言すると測定光Lが回折格子部6に対して斜めに照射された状態で、屈折率nの変化が生じると位相整合条件を満たすために測定光Lの波長λのシフトが必要になることがわかる。

【0029】
分光感度特性について説明する。図4に示されるように、分光感度特性は、測定光Lの波長λと、その測定光Lを照射したときに光電変換部3から出力される出力信号の大きさとの関係であり、波長ごとの出力信号の大きさを示すものである。図4は、分光感度特性の一例を示し、横軸は測定光Lの波長λであり、縦軸は出力信号の大きさを示す光電流である。式(2-1)及び式(2-2)の右辺の値が左辺の伝搬波長λgf,λgbに近づくほど、出力信号の値が大きくなり、右辺の値と左辺の値が一致したとき(位相整合条件を満たすとき)に出力信号は最大値(ピーク)になる。

【0030】
屈折率nの変化に伴うピーク波長λpのシフトについてさらに説明する。図4(a)は、回折格子部6に対する測定光Lの入射角度θが10度であるときの分光感度特性を示す。図4(b)は、回折格子部6に対する測定光Lの入射角度θが20度であるときの分光感度特性を示す。さらに、図4(a)のグラフG1及び図4(b)のグラフG3は、被測定物Mの屈折率がn=1である場合の分光感度特性を示している。グラフG1は2個のピークpk1,pk2を有し、グラフG3はピークpk5,pk6を有している。図4(a)のグラフG2及び図4(b)のグラフG4は、被測定物Mの屈折率がn=1.4933である場合の分光感度特性を示している。グラフG2は2個のピークpk3,pk4を有し、グラフG4はピークpk7,pk8を有している。

【0031】
ここで図4(a)のピークpk1,pk3を比較すると、グラフG1(n=1)のピークpk1に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk3は、ピーク波長λpが長波長側へシフトしていることがわかる。また、グラフG1(n=1)のピークpk2に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk4は、ピーク波長λpが短波長側へシフトしていることがわかる。また、図4(a)のピークpk1,pk3を比較すると、グラフG1(n=1)のピークpk1に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk3は、ピーク値が減少していることがわかる。また、グラフG1(n=1)のピークpk2に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk4も、ピーク値が減少していることがわかる。

【0032】
このように、ピーク波長λpのシフト量と屈折率nとの間には所定の関係があり、ピーク値の減少量と屈折率nとの間にも所定の関係があることがわかる。従って、ピーク波長λpのシフト量又はピーク値の減少量を利用して屈折率nを得ることができる。

【0033】
次に、第1実施形態に係る屈折率測定方法を説明する。まず、図5に示されるように、リファレンスとなる基準分光感度特性を得る(工程S1)。基準分光感度特性とは、基準測定光の波長と、基準出力信号とが関連付けられた特性である。基準分光感度特性は、互いに異なる特性を有する光電変換部3や被測定物Mにおいて得られた分光感度特性の一つを選択することができる。また、時系列で被測定物Mを変更する場合には、最初に得られた分光感度特性を基準分光感度特性とすることができる。本実施形態の基準分光感度特性は、被測定物Mを回折格子部6に配置しないときの分光感度特性である。従って、回折格子部6に被測定物Mを配置しない状態で、基準測定光を回折格子部6に対して斜めに照射することにより、基準分光感度特性を得る。通常、この基準分光感度特性は代表例を得ておけばよく、個別の光電変換部3の特性を毎回測る必要は無い。

【0034】
分光感度特性を得る工程(工程S5)について説明する。分光感度特性は位相整合条件の影響を受けるため、式(2-1)及び式(2-2)の屈折率nが変化すると、図6に示されるように、分光感度特性も変化する。例えば、屈折率nの変化は、回折格子部6における被測定物Mの有無による。図6のグラフG5は、回折格子部6に被測定物Mを配置していない状態の基準分光感度特性であり、グラフG6は、回折格子部6に第1の被測定物を配置したときの分光感度特性であり、グラフG7は、回折格子部6上により屈折率の大きい第2の被測定物を配置したときの分光感度特性である。

【0035】
そして、回折格子部6に被測定物Mが配置されていない状態(グラフG5)と、配置された状態(グラフG6,G7)とで、共通のピーク波長λpと等しい波長λを有する測定光Lを照射した場合には、被測定物Mの有無により分光感度特性が変化しているため光電変換部3の出力信号の大きさが異なることになる。従って、回折格子部6に被測定物Mを配置せずに測定光Lを照射した基準ピーク信号値Cpと、回折格子部6に第1及び第2の被測定物Mを配置して測定光Lを照射した比較出力信号値C1,C2とを比較することにより、回折格子部6に第1及び第2の被測定物Mを配置したときの分光感度特性(グラフG6,G7)が得られる。

【0036】
具体的には、この際、測定光Lの光強度は基準分光感度特性を測った時(工程S1)の光強度と厳密に一致している必要は無い。続いて、回折格子部6に被測定物Mを配置し(工程S2)、工程S5aで決定した基準ピーク波長λpを有する測定光Lを被測定物Mに照射して、出力信号値C1を得る(工程S5b)。ここで、基準ピーク波長λpを有する測定光Lを被測定物Mに照射する状態では、被測定物Mを配置したことにより位相整合条件が変化しているため、基準ピーク波長λpを有する測定光Lは位相整合条件を満たすものではなくなっている。従って、基準ピーク信号値Cpよりも出力信号値C1は小さい値になる。続いて、基準ピーク信号値Cpと出力信号値C1とを利用して、公知の数学的手法により第1の被測定物Mを配置した状態における分光感度特性(グラフG6)を得る(工程S5c)。

【0037】
また、基準ピーク波長λpを有する測定光Lをより屈折率の大きい第2の被測定物Mに照射した場合には、出力信号値C2が得られる。そして、基準ピーク信号値Cpと出力信号値C2とを利用して、公知の数学的手法により第2の被測定物Mを配置した状態における分光感度特性を示すグラフG7を得る。

【0038】
分光感度特性を利用して被測定物Mの屈折率nを得る(工程S6)。位相整合条件を定める式(式(2-1)及び式(2-2))には、屈折率nと測定光Lの波長λが含まれている。従って、式(2-1)及び式(2-2)において、導波モードの伝搬波長λgf,λgb、格子ピッチP、測定光Lのピーク波長λp及び測定光Lの入射角度θが既知の場合に、屈折率nが算出可能であることがわかる。

【0039】
本実施形態では、導波モードの伝搬波長λgf,λgb、格子ピッチP及び測定光Lの入射角度θが屈折率測定装置1の構成から決定できる値であるため、ピーク波長λpを得る工程(工程S6a)を実施した後に、屈折率nを算出する(工程S6b)。より詳細には、工程S6bでは、式(2-1)及び式(2-2)に伝搬波長λgf,λgb、格子ピッチP、測定光Lのピーク波長λp及び測定光Lの入射角度θを代入し、式(2-1)及び式(2-2)を満たす屈折率nを算出する。

【0040】
このような屈折率測定方法によれば、被測定物Mを透過した測定光Lが回折格子部6に入射し、回折格子部6において特定波長の測定光Lが捉えられる。光電変換部3は、捉えられた測定光Lに対応する出力信号を出力するため、測定光Lの波長λと出力信号の大きさを示す電流値とが関連付けられた分光感度特性が得られる。ここで、分光感度特性は回折格子部6における位相整合条件に関連し、さらに、位相整合条件は回折格子部6上に配置された被測定物Mの屈折率nに対応しているため、分光感度特性を利用して被測定物Mの屈折率nを得ることができる。従って、この屈折率測定方法では、外部の光検出器を不要として屈折率測定装置1の構成を簡素化すると共に、回折格子部6で捉えた測定光Lを回折格子部6と一体化された光電変換部3で光電流に変換することにより測定光Lの利用効率を向上させることができる。

【0041】
また、分光感度特性におけるピーク波長λpと屈折率nとの間には、式(2-1)及び式(2-2)に示されるような対応関係がある。従って、これらの対応関係を利用することにより、被測定物Mの屈折率nを容易に得ることができる。

【0042】
また、この屈折率測定方法では、出力信号値C1もしくは出力信号値C2を測定する直前に測定した基準ピーク信号値Cpを基準として屈折率nを得ているため、測定光Lの光強度の変化等の影響を抑制することが可能となり、屈折率nの測定精度を向上させることができる。

【0043】
また、この屈折率測定方法によれば、単一の格子ピッチPを有する回折格子部6により分光感度特性を得ることができる。従って、屈折率測定装置1の構成を簡易にすることができる。更に、本実施形態に係る屈折率測定方法によれば、単一のピーク波長λpの測定光Lにより屈折率nを測定することが可能である。従って、光源装置2の構成が簡易になるため、屈折率測定装置1の全体構成を更に簡易にすることができる。

【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る屈折率測定方法を説明する。第2実施形態に係る屈折率測定方法では、第1実施形態に係る屈折率測定方法とは異なる測定装置を用いる点で第1実施形態に係る屈折率測定方法と相違する。より詳細には、図7に示されるように、屈折率測定装置1Bは、同一の埋め込み絶縁層8上に形成された第1の半導体層11Aとゲート絶縁層13A及び第2の半導体層11Bとゲート絶縁層13Bを有している。第1の半導体層11A上には、ゲート絶縁層13Aを介して格子ピッチP1の回折格子部6Aが形成されている。また、第2の半導体層11B上には、ゲート絶縁層13Bを介して格子ピッチP2の回折格子部6Bが形成されている。

【0045】
まず、回折格子部6の格子ピッチPとピーク波長λpとの関係について説明する。図8は、互いに異なる格子ピッチPを有する回折格子部6を備えた光電変換部3の波長特性を示している。なお、測定光Lの偏光状態は、TM偏光(測定光Lの電界ベクトルが回折格子の方向に対して垂直)である。図8の横軸は測定光Lの波長λを示し、縦軸は外部量子効率を示す。グラフG8は、格子ピッチPが260nmである場合の分光感度特性であり、グラフG9は、格子ピッチPが280nmである場合の分光感度特性であり、グラフG10は、格子ピッチPが300nmである場合の分光感度特性であり、グラフG11は、格子ピッチPが320nmである場合の分光感度特性であり、グラフG12は、格子ピッチPが340nmである場合の分光感度特性である。なお、グラフG13は、回折格子部6を有しない場合の分光感度特性である。

【0046】
図8に示されるように、回折格子部6の格子ピッチPを大きくするに従って、量子効率のピーク波長λpも大きくなるとことがわかる。従って、単一波長の測定光Lを照射した場合であっても、回折格子部6の格子ピッチPが異なる場合には、分光感度特性が変化する。

【0047】
続いて、第2実施形態に係る屈折率測定方法を説明する。まず、図9に示されるように、第1の光電変換部3Aにおける第1の基準分光感度特性(グラフG14に相当)と、第2の光電変換部3Bにおける第2の基準分光感度特性(グラフG16に相当)とを得る(図5の工程S1)。

【0048】
続いて、分光感度特性を得る工程(工程S5)を実施する。より詳細には、まず、第1の基準分光感度特性を利用して、被測定物Mを配置していない状態における第1の基準ピーク波長λpを決定し、この波長において第1の基準ピーク信号値Cb1と第2の基準信号値Cb2を測る(図5の工程S5a)。次に、回折格子部6A,6B上に被測定物Mを配置する(図5の工程S2)。さらに、基準ピーク波長λpを有する測定光Lを、第1の格子ピッチP上に配置された被測定物Mに照射して第1の出力信号値C1を得ると共に、第2の格子ピッチP上に配置された被測定物Mに照射して第2の出力信号値C2を得る(図5の工程S5b)。

【0049】
ここで、基準ピーク波長λpを有する測定光Lを、第1の格子ピッチP上に配置された被測定物Mに照射した状態では、被測定物Mを配置したことにより位相整合条件が変化しているため(グラフG14,G15参照)、基準ピーク波長λpを有する測定光Lは位相整合条件を満たすものではなくなっている。従って、第1の基準ピーク信号値Cb1よりも第1の出力信号値C1は小さい値になる。一方、基準ピーク波長λpを有する測定光Lを、第2の格子ピッチP上に配置された被測定物Mに照射した状態では、被測定物Mを配置したことにより位相整合条件に近づくように分光感度特性が変化している(グラフG16,G17)。従って、第2の基準ピーク信号値Cb2よりも第2の出力信号値C2は大きい値になる。

【0050】
続いて、第1の基準ピーク信号値Cb1に対する第1の出力信号値C1の減少量と、第2の基準ピーク信号値Cb2に対する第2の出力信号値C2の増加量と、を利用して被測定物Mを第1の格子ピッチP上に配置した状態における分光感度特性(グラフG15)を得る(工程S5c)。そして、この分光感度特性を利用して被測定物Mの屈折率nを得る(図5の工程S6)。

【0051】
この屈折率測定方法によれば、1個の被測定物Mを異なる格子ピッチP上に配置し、それぞれの分光感度特性を利用して屈折率nを得ている。従って、1個の分光感度特性を利用した場合に比べて屈折率nの測定精度を高めることができる。なお、図5の工程S5aは必要に応じて実施すればよく、省いて簡略化することも可能である。

【0052】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る屈折率測定方法を説明する。第3実施形態に係る屈折率測定方法は、屈折率nの変化に伴うピーク値を利用して屈折率nを得る点で、第1実施形態および第2実施形態に係る屈折率測定方法と相違している。

【0053】
まず、図10に示されるように、リファレンスとなる基準分光感度特性を得る(工程S1)。この実施形態ではピーク値の変化を捉えやすくするため、被測定物Mの屈折率が変化してもピーク波長が変化しないように、測定光Lを垂直(θ=0)に入射する。

【0054】
次に、分光感度特性を得る工程(工程S5)について説明する。より詳細には、この工程S5では、分光感度特性におけるピーク値の変化を得る。まず、基準分光感度特性(図11のグラフG18に相当)を利用して、被測定物Mを配置していない状態における基準ピーク波長λpを決定し、この波長において基準ピーク信号値Cpを測る(工程S5a)。続いて、回折格子部6に被測定物Mを配置し(工程S2)、基準ピーク波長λpを有する測定光Lを被測定物Mに照射して、出力信号値C1を得る(工程S5b)。図11には、被測定物Mの屈折率が異なる(より大きい)場合の分光感度特性G20ならびに、出力信号値C2も示している。図11によれば、測定光Lを垂直(θ=0)に入射させた場合には、ピーク波長は変わらず、ピーク値が被測定物Mの屈折率に対応して変化することがわかる。

【0055】
次に、屈折率nを得る(工程S6)。ここで、ピーク値と屈折率nとの関係について説明する。図12は、屈折率nとピーク値との関係を示すグラフであり、横軸が屈折率nを示し、縦軸がピーク値を示す。このグラフでは、ピーク値として、屈折率nが1であるときの光電流値を基準とした正規化された光電流値を用いている。また、図12のグラフG21は、格子ピッチPが300nmであり、金からなる格子の幅が150nmであり、酸化シリコンからなるゲート絶縁層13の厚さt1が100nmであり、SOIフォトダイオードをなす半導体層11の厚さが100nmであるとし、垂直に入射される測定光Lの波長λを703nmとした計算モデルを用いたシミュレーション結果である。なお、この計算モデルには、ゲート絶縁層13に溝13aは形成されていない。グラフG21に示されるように、屈折率nが1~1.9の範囲において、屈折率が増加すると正規化光電流はほぼ線形的に減少することがわかる。従って、このグラフG21の傾きをシミュレーションや実験により得ておくことにより、傾きと正規化光電流から屈折率nを算出することができることがわかる。

【0056】
なお、回折格子部6に測定光Lが垂直に照射された場合に、ピーク値の変化が生じる理由は次のとおりである。すなわち、回折格子部6に測定光Lを垂直(θ=0)に入射した場合における、測定光Lの波長λと導波路モードの伝搬波長λgf,λgbとの関係は、式(1)及び図13に示される。図13において、グラフG22はTM偏光の測定光L(電界ベクトルが回折格子の方向に対して垂直)であって式(1)におけるmが0の場合の関係であり、グラフG23はTE偏光の測定光L(電界ベクトルが回折格子の方向に対して平行)であって式(1)におけるmが0の場合の関係である。また、グラフG24はTM偏光の測定光Lであって式(1)におけるmが1の場合の関係であり、グラフG25はTE偏光の測定光Lであって式(1)におけるmが1の場合の関係である。

【0057】
そして、式(2-1)及び式(2-2)によると、回折格子部6に測定光Lが垂直に入射された場合(θ=0)、導波路モードの伝搬波長λgf,λgbと格子ピッチPが等しいとき(λgf,λgb=P)に、位相整合条件を満たす。そして、例えば、伝搬波長λgf,λgbと格子ピッチPが300nmであって、TM偏光の測定光Lを照射する場合には、被測定物Mの屈折率に関わり無く測定光Lの波長λが700nmである場合に出力電流はピーク値を取る、すなわちピーク波長は変わらない。

【0058】
屈折率nを得る工程S6では、工程S5aで得たピーク値Cbと、工程S5bで得たピーク値(C1もしくはC2)を用いて、事前に算出した屈折率nとピーク値(即ち光電流値)との関係を利用して、ピーク値を屈折率nに換算する(工程S6b)。

【0059】
この方法によれば、屈折率nの変化に伴うピーク波長λpの変化を生じさせるために測定光Lを斜めに照射する必要がなく、回折格子部6に対して垂直に測定光Lを照射することができる。回折格子部6に対して垂直に測定光Lを照射する構成によれば、回折格子部6に対して斜めに測定光Lを照射する構成に対して装置構成を簡易にすることができる。

【0060】
[変形例]
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。屈折率測定方法は、農業、化学、生物学及び医学等の分野において実施される屈折率の測定に利用することができる。例えば、屈折率測定方法は、医学分野において所定のウイルスを検出する方法に利用することができる。

【0061】
この場合には、回折格子部6に検出したいウイルスに対応する抗体を予め配置しておき、ウイルスを含む可能性のある被測定物Mを回折格子部6に配置する。そして、屈折率nを測定すると、被測定物Mがウイルスを含む場合には屈折率nの変化が生じるため、被測定物Mに所定のウイルスが含まれていることがわかる。また、屈折率nの変化量は、回折格子部6の抗体に捉えられたウイルスの量と関係がある。従って、屈折率nの変化量を利用して、被測定物Mに含まれているウイルスの量を推定することも可能である。

【0062】
また、分光感度特性を得る工程S5では、測定光Lの波長λを連続的に変化させつつ、それぞれの測定光Lに対応する出力信号と測定光Lの波長λとの組み合わせを複数取得することにより、分光感度特性を示すグラフを得てもよい。この方法によれば、精度のよい分光感度特性が得られるため、屈折率nの測定精度を高めることができる。

【0063】
また、図14に示されるように、屈折率測定装置1は、回折格子部6の貫通溝6aがゲート絶縁層13にまで延在していてもよい。前述した実施形態では、光吸収層である半導体層11が埋め込み絶縁層8とゲート絶縁層13とに挟まれ、ゲート絶縁層13の厚さt1が例えば100nmであった(図2参照)。この場合には、ゲート絶縁層13の厚さt1は、半導体層11の導波路モードの算定において略無限大と同等に扱うことができる。一方、本変形例に係る屈折率測定装置1では、回折格子部6の貫通溝6aと連通する溝13aがゲート絶縁層13に形成され、溝13aが形成された領域では、半導体層11上のゲート絶縁層13の厚さt2が薄くなる。この場合には、ゲート絶縁層13の厚さt2は、半導体層11の導波路モードの算定において厚さが無限大の場合と同等に扱うことができなくなり、導波モード自体が被測定物Mの屈折率に応じて変化することになる。

【0064】
図15は、ピーク波長λpと屈折率nとの関係を示す計算結果であり、ゲート絶縁層13に溝13aが形成された場合(グラフG27,G29)と、ゲート絶縁層13に溝13aが形成されていない場合(グラフG26,G28)とを比較するものである。なお、グラフG28,G29は前進波におけるピーク波長λpと屈折率nとの関係であり、グラフG26,G27は後進波におけるピーク波長λpと屈折率nとの関係である。なお、この計算において、格子ピッチPは320nmであり、ゲート絶縁層13の厚さt2は20nmである。

【0065】
グラフG26,G27を確認すると、ゲート絶縁層13に溝13aが形成された場合には、傾きが大きくなっていることがわかる。より詳細には、ゲート絶縁層13に溝13aが形成された場合の傾きは、41.8nm/RIUであり、ゲート絶縁層13に溝13aが形成されていない場合の傾きは、26.4nm/RIUであった。従って、ゲート絶縁層13に溝13aが形成された場合には、屈折率nの変化に対するピーク波長λpの変化が大きくなるため、屈折率感度を向上させ得ることがわかった。

【0066】
なお、グラフG28,G29を確認すると、ゲート絶縁層13に溝13aが形成された場合(グラフG29)は、ゲート絶縁層13に溝13aが形成されていない場合(グラフG28)よりも傾きが小さくなっている。すなわち、屈折率感度が低下している。しかし、ピーク波長λpから屈折率nを算出する場合には、後進波の特性(グラフG27)のみを用いて算出できるため問題にならない。

【0067】
また、前述した実施形態では、式(2-1)及び式(2-2)を利用して屈折率nを算出したが、この方法に限定されない。図16は、屈折率nとピーク波長λpとの関係を示すグラフであり、横軸が屈折率nを示し、縦軸がピーク波長λpを示す。グラフG30は測定光Lの入射角度θが0度の場合の屈折率nとピーク波長λpの関係である。グラフG31は測定光Lの入射角度θが10度の場合の後進波における屈折率nとピーク波長λpの関係であり、グラフG32は測定光Lの入射角度θが10度の場合の前進波における屈折率nとピーク波長λpの関係である。また、グラフG33は測定光Lの入射角度θが20度の場合の後進波における屈折率nとピーク波長λpの関係であり、グラフG34は測定光Lの入射角度θが20度の場合の前進波における屈折率nとピーク波長λpの関係である。グラフG31~G34に示されるように、屈折率nとピーク波長λpとの間には、比例関係があることがわかる。グラフG31の傾きは32.0nm/RIUであり、グラフG32の傾きは-23.2nm/RIUであり、グラフG33の傾きは52.8nm/RIUであり、グラフG34の傾きは-30.6nm/RIUである。これら傾きとピーク波長λpから屈折率nを算出することができる。この方法によれば、ピーク波長λpの屈折率nへの変換を容易にし、屈折率nの測定におけるスループットを向上させることができる。

【0068】
また、屈折率測定装置1は、アレイ状に配置された複数の光電変換部3を有していてもよい。複数の光電変換部3を有することにより、屈折率nの測定におけるスループットを向上させることができる。前述のウイルスを検出する方法においては、異なった種類の抗体をそれぞれの光電変換部3に配置することによって、異なった種類のウイルスを同時に検出することができる。

【0069】
また、屈折率測定装置1の光電変換部3は、シリコン基板7の代わりにGe、GaAs、InP等の半導体、ガラスや合成樹脂等の絶縁体、ステンレスやアルミニウム等の金属から成る基板を用いていてもよい。また、半導体層11は、不純物を添加していない半導体を用いてもよい。

【0070】
また、回折格子部6の材料としては、金に限らず、銀、銅、アルミニウム等の金属や、その他の導電性材料、例えばリン、ボロン、砒素等の不純物を添加した多結晶シリコンなどを用いてもよい。それらの金属や導電性材料の下に付着力強化層として、チタン、クロム、パラジウム、酸化タンタル、窒化シリコンなどの薄い層を挿入してもよい。また、回折格子部6の貫通溝6aが延在する向きは、検出したい偏光の向きに応じて、図1のXY平面内で任意の向きに回転させてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…屈折率測定装置、4…半導体受光素子部、6…回折格子部、6a…貫通溝、M…被測定物、L…測定光、n…屈折率、λ…波長。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15