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明細書 :歯冠の誤飲防止具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-195981 (P2015-195981A)
公開日 平成27年11月9日(2015.11.9)
発明の名称または考案の名称 歯冠の誤飲防止具
国際特許分類 A61C   5/08        (2006.01)
FI A61C 5/08
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2014-075685 (P2014-075685)
出願日 平成26年4月1日(2014.4.1)
発明者または考案者 【氏名】岩▲崎▼ 智憲
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4C059
4C159
Fターム 4C059RR19
4C059RR20
4C159RR19
4C159RR20
要約 【課題】誤飲等の医療事故を防止し、乳歯冠等の装着時の安全性を向上させると共に、製作や使用性等に優れた歯冠の誤飲防止具を提供する。
【解決手段】歯冠の誤飲防止具1は、対象歯に被せられる歯冠10の装着時に歯冠10の誤飲を防止する。リング状の誤飲防止具本体2が基板3に対して直交するように接合されてなり、基板3を介して誤飲防止具本体2が歯冠10の所定位置に所定姿勢で着脱可能に固定され、誤飲防止具本体2のリング内孔2aにフロス4が挿通される。
【選択図】図10
特許請求の範囲 【請求項1】
対象歯に被せられる歯冠の装着時に当該歯冠の誤飲を防止するための誤飲防止具であって、
リング状の誤飲防止具本体が基板に対して直交するように接合されてなり、前記基板を介して前記誤飲防止具本体が前記歯冠の所定位置に所定姿勢で着脱可能に固定され、
前記誤飲防止具本体のリング内孔にフロスが挿通されることを特徴とする歯冠の誤飲防止具。
【請求項2】
前記誤飲防止具本体は線径1mm以下の金属線材を、内径2mm以下のリング状に形成してなり、そのリング面を水平にして頬内側となるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の歯冠の誤飲防止具。
【請求項3】
前記対象歯の咬合面よりも数mm離して、該対象歯の対合歯と咬合しない高さ位置で前記歯冠に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯冠の誤飲防止具。
【請求項4】
前記対象歯における近心寄りの部位に電気蝋着により固定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の歯冠の誤飲防止具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には乳歯既製冠に適用して乳歯冠装着時の誤飲、誤嚥を防止する歯冠の誤飲防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯冠、例えば特に乳歯冠は銀歯を乳歯に被せることで、虫歯の進行を止め、あるいは永久歯の歯並びを守る等の利点があり、我が国では毎年10万歯使用されている。一般に小児(3歳から5歳程度)では歯科恐怖症のため、号泣や体動のために乳歯冠装着時に誤飲あるいは誤嚥のリスクが高い。乳歯冠のうち1%もしくは0.1%(つまり1000から100症例)は、誤飲・誤嚥の事態が生じていると予想される。
【0003】
なお、この種の歯冠に関する技術として例えば特許文献1には、特に小児歯科において大きな虫歯病変を有する乳歯及び永久大臼歯の治療に有益な、大量生産で歯色付きの既製の歯冠が開示される。また、特許文献2には、永久歯や乳歯の臼歯に被せる既製冠及びその歯冠修復処置に関し,修復処置が簡単な歯冠が開示される。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2004-534568号公報
【特許文献2】特開平5-146456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般的に用いられている金属クラウンの例を図16に示す。図16においてクラウン200にはノブ201が付設され、ノブ201はクラウン200の試適時の着脱には有用である。しかしながら、誤飲、誤嚥防止のためにフロス等を結紮できる構造とはなっていない。また、図17はそのノブ201を除去する様子を示しているが、ヤスリ202等により硬い歯科用合金を削るため、かなりの時間や工数がかかり、ノブの除去は容易でない。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、誤飲等の医療事故を防止し、乳歯冠等の装着時の安全性を向上させると共に、製作や使用性等に優れた歯冠の誤飲防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による歯冠の誤飲防止具は、対象歯に被せられる歯冠の装着時に当該歯冠の誤飲を防止するための誤飲防止具であって、リング状の誤飲防止具本体が基板に対して直交するように接合されてなり、前記基板を介して前記誤飲防止具本体が前記歯冠の所定位置に所定姿勢で着脱可能に固定され、前記誤飲防止具本体のリング内孔にフロスが挿通されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の歯冠の誤飲防止具において、前記誤飲防止具本体は線径1mm以下の金属線材を、内径2mm以下のリング状に形成してなり、そのリング面を水平にして頬内側となるように配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の歯冠の誤飲防止具において、前記対象歯の咬合面よりも数mm離して、該対象歯の対合歯と咬合しない高さ位置で前記歯冠に固定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の歯冠の誤飲防止具において、前記対象歯における近心寄りの部位に電気蝋着により固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば特にリスキーな乳歯冠装着時の安全性を飛躍的に向上させると共に、誤飲防止具の除去も既存器具で簡便にできる。簡単に作製可能でありその製作費用もさほどかからない。また、誤飲や誤嚥等の事故率を略0%に近づけるだけでなく、通常の診療でも術者の心的負担の軽減につながり、貢献度は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る乳歯冠の例を示すそれぞれ斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る乳歯冠装着時の様子を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る小児の咽頭の様子を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る局所麻酔の様子を示すそれぞれ斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るラバーダム装着時の様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るバキューム準備の様子を示すそれぞれ斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る乳歯冠の適合状態の確認時の様子を示すそれぞれ斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る試適した乳歯冠の除去時の様子を示すそれぞれ斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る装着された乳歯冠を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態による誤飲防止具及び乳歯冠における取付状態を摸式的に示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態における支台歯の形成後の試適時の様子を示す平面図である。
【図12】本発明の実施形態における支台歯の形成後の試適時の様子を示す側面図である。
【図13】本発明の実施形態における誤飲防止具の脱着操作を示すそれぞれ斜視図である。
【図14】本発明の実施形態における誤飲防止具の他の適用例を示すそれぞれ斜視図である。
【図15】本発明の実施形態における誤飲防止具の他の適用例を示す斜視図である。
【図16】従来用いられている金属クラウンの使用例を示す図である。
【図17】従来用いられている金属クラウンの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明による歯冠の誤飲防止具における好適な実施の形態を説明する。
本実施形態において特に乳歯既製冠(乳歯冠)の誤飲防止具の例とする。ここで先ず、乳歯冠及びその装着手順等に関連して、概略説明する。図1は乳歯冠10の例を示しており、これを装着する対象年齢は3歳から5歳である。重症の乳歯う蝕に適用される。既製のもので、それぞれの歯種に5~6種類のサイズがある。通常、装着される対象歯に数回着脱を行い、サイズを選択する。一般的に乳歯冠10の装着時にはこれを嫌がって、口を開けずあるいは首をふり、更には手足をバタバタつかせることもあり、誤飲や誤嚥のリスクが高い。

【0014】
図2に示すように乳歯冠10を装着する際、対象歯11に対する乳歯冠10の試適、合着時には手から乳歯冠10が滑り落ちる可能性があり、そのまま誤飲、誤嚥させるリスクが非常に高い。
小児の咽頭に関して、図3に示されるように小児期には口蓋扁桃肥大12を認め、号泣時には激しい口呼吸になるため、口腔内に落下したものは咽頭部まで落下もしくは、強い吸気のため、気管まで吸い込まれる可能性がある。また、協力が得られないため一旦、口腔内に落下したものは自力で出すことはせず、飲み込むことも考えられる。

【0015】
乳歯冠装着の流れとして、次の主要な手順に沿って行われる。
1)表面麻酔・局所麻酔
2)ラバーダム装着
3)支台歯形成
4)乳歯冠試適(サイズ選択のため)
5)ラバーダムを外して対合関係確認のために再度乳歯冠試適、乳歯冠を外して、マージン、咬合面を適切な状態になるまで、試適調整を繰り返す。
6)試適が済んだら、合着用セメントにて合着

【0016】
次に、具体的な乳歯冠装着手順について、5歳女児の乳歯冠装着の例で説明する。
図4は、局所麻酔の様子を示している。小児は急に動くことがあり、危険を伴う処置時には頭部と体幹をしっかり保持する必要がある。
図5は、ラバーダム100の装着時の様子を示している。通常、治療時にはラバーダム100を使用し、誤飲、誤嚥のないように配慮している。
この際、咬合関係等を診るための乳歯冠10の試適が行われる。この場合、図2に示したようにラバーダム100は除去された状態で行う。
また、図6のように脱落時の対応としてバキューム101を準備しておく。

【0017】
次に図7は、乳歯冠10の適合状態の確認の様子を示している。
図8は、試適した乳歯冠10の除去の様子を示している。この場合、何度か乳歯冠10の脱着を繰り返し、適合させる。勢い余って手元から滑り落ちることもあり、最も危険な操作とされる。
図9は、装着された乳歯冠10を示している。
上記概略説明したように歯科医は診療を通して誤飲、誤嚥のリスクを感じながら日常臨床を行っている。

【0018】
本発明はかかる背景に鑑みて発案されたものであり、その要旨は対象歯に被せられる歯冠(本例では乳歯冠10)の装着時に当該歯冠の誤飲を防止するための誤飲防止具であって、リング状の誤飲防止具本体が基板に対して直交するように接合されてなり、基板を介して誤飲防止具本体が歯冠の所定位置に所定姿勢で着脱可能に固定され、誤飲防止具本体のリング内孔にフロスが挿通されることを特徴とするものである。なお、この誤飲防止具は、"マルカン"等と称される。

【0019】
図10は、本発明による誤飲防止具1及び乳歯冠10における取付状態を摸式的に示している。誤飲防止具1は、リング状の誤飲防止具本体2と基板3とからなり、誤飲防止具本体2は基板3に対して直交するように接合される。即ち、誤飲防止具本体2のリング状により形成される面(リング面)が基板3と垂直に交差するように両者は結合する。

【0020】
誤飲防止具1の具体的な形状寸法等に関して、誤飲防止具本体2は線径1mm以下、好適には0.6mm前後の金属線材(例えばステンレス鋼等)を、内径2mm以下、好適には2mm前後のリング状に形成してなる。基板3は薄金属板材(例えばステンレス鋼等)を矩形形状に形成してなり、その寸法として例えば縦3~4mm、横4~5mmで、厚さ0.3~0.5mm程度とする。誤飲防止具本体2及び基板3は溶接等により、相互に接合することができる。

【0021】
乳歯冠10における誤飲防止具1の取付位置及び姿勢等に関して、誤飲防止具本体2のリング面を水平にして頬内側となるように配置される。乳歯冠10自体を基準にすれば、その外側(図10、OUT側)に配置される。
更に誤飲防止具1は、対象歯11(乳歯冠10)の咬合面PよりもH=数mm程度離して、対象歯11の対合歯と咬合しない高さ位置で乳歯冠10に固定される。

【0022】
上記に加えて誤飲防止具1は、対象歯11(奥歯)における近心寄り、即ち前歯寄りの部位に電気蝋着により固定される。このような取付位置及び姿勢で誤飲防止具1を取り付けることで、図11及び図12に示すように支台歯12の形成後の試適、対合関係のチェックが可能な位置になる。なお、誤飲防止具本体2のリング内孔2aにはフロス4が挿通される。

【0023】
上述した取付位置及び姿勢等に誤飲防止具1を取り付けるに際して、基板3を乳歯冠10に電気蝋着することで固定することができる。ここで、このように固定される基板3及び乳歯冠10の結合強度は少なくとも、誤飲防止具本体2及び基板3の結合強度よりも弱く設定される。

【0024】
誤飲防止具1の脱着に関して、対象歯11に対して近心に水平に蝋着されているため、その除去は図13に示されるように乳歯冠10の合着後、口腔内でホーのプライヤー102を用いて簡単且つ的確に行うことができる。その際、フロス4があるため除去時にも誤飲防止具1の誤飲は起きない。その後、口腔内で蝋着部分が研磨される。

【0025】
本発明の誤飲防止具1は乳歯冠10の工場出荷時には、初めから取り付けられたものになっている。乳歯冠10を対象歯11に対して試適する際、乳歯冠10の脱着を繰り返して適合させるが、誤飲防止具1にフロス4が掛かっているため乳歯冠10の誤飲の心配が全くない。その場合、対象歯11(乳歯冠10)に対して好適な位置及び姿勢で誤飲防止具1を取り付けることで、乳歯冠10の装着作業に何ら邪魔にならず、これを適正且つ円滑に行うことができる。

【0026】
乳歯冠10の装着後に誤飲防止具1を取り外すが、基板3及び乳歯冠10の結合強度が誤飲防止具本体2及び基板3の結合強度よりも弱く設定されているため、誤飲防止具1のみを的確に取り外すことができる。取り外された誤飲防止具1は、誤飲防止具本体2にフロス4が通っているため取外し後でも誤飲防止具1の誤飲を防ぐことができる。

【0027】
従来のように例えば図16に示したノブ201の除去作業や、ラバーダム100やバキューム101等の使用を省略することができ、乳歯冠10の装着作業における時間や工数を大幅に低減することができる。乳歯冠10及び誤飲防止具1自体の誤飲を完全に防止し、高い安全性を確保保証することができる。このようにリスキーな乳歯冠10装着時の安全性を飛躍的に向上させると共に、誤飲防止具の除去も既存器具で簡便にできる。簡単に作製可能でありその製作コストも安く、誤飲や誤嚥等の事故率を略0%に近づける上に通常の診療でも術者の心的負担の軽減につながる等々の利点を有する。

【0028】
ここで、乳歯冠10及び誤飲防止具1の接合方法として、例えば従来の加工技術を流用し、即ち歯科矯正用のチューブ着きバンド(図14(a))、シームレスバンド(図14(b))の場合と同様に、工場出荷時にオプションで蝋着される。
また、本発明は乳歯冠10以外の他のものへの応用が可能であり、図15のようにFCK(歯科医院、歯科技工所で個別に作られる銀歯)ができあがった後に電気蝋着する等の場合も可能である。即ち、乳歯冠以外に歯科等で用いる誤飲のリスクのあるすべてのもの、例えばFCK等、工場出荷時に接合できないものは、個別に歯科医院、歯科技工所で誤飲防止具1を電気蝋着することでニーズに有効に対応することができる。

【0029】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上記実施形態では主に乳歯冠の例で説明したが、FCK等の場合にも同様に適用可能である。
また、リング状の誤飲防止具本体2の形状として典型的には円形とするが、その他、円を適度に潰して変形したもの、あるいは楕円等の形状とすることも可能である。基板3は矩形以外の形状も可能であり、それらの寸法等についても必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 誤飲防止具、2 誤飲防止具本体、3 基板、4 フロス、10 乳歯冠、11 対象歯、12 支台歯、100 ラバーダム、101 バキューム。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16