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明細書 :飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-156835 (P2015-156835A)
公開日 平成27年9月3日(2015.9.3)
発明の名称または考案の名称 飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料
国際特許分類 A23K   1/18        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
FI A23K 1/18 102A
A23K 1/16 301F
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-033630 (P2014-033630)
出願日 平成26年2月25日(2014.2.25)
発明者または考案者 【氏名】吉永 葉月
【氏名】大場 萌未
【氏名】潮 秀樹
【氏名】金子 元
【氏名】高橋 伸一郎
【氏名】佐藤 秀一
【氏名】芳賀 穣
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 2B005
2B150
Fターム 2B005GA01
2B005GA02
2B005GA03
2B005HA00
2B150AA08
2B150AB05
2B150DA48
要約 【課題】養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下させ、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供すること。
【解決手段】養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、飼育魚類の脂質含量を低減する。本発明の飼育魚類の脂質含量を低減する方法は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法に適用して、出荷前の飼育期間の短期間、該魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて、魚類を飼育することを特徴とする飼育魚類の脂質含量の低減方法。
【請求項2】
魚類脂質低減化用飼料が、魚種によって生育に必要とされるリジンの必須アミノ酸としての要求量に対して、650%以上を過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料であることを特徴とする請求項1に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。
【請求項3】
魚類脂質低減化用飼料を用いて飼育する養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間が、出荷前の2~6日の飼育期間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。
【請求項4】
飼育魚類の脂質含量の低減が、魚類の筋肉内の脂質含量を、20%以上低下するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法。
【請求項5】
養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより飼育魚類の脂質含量を低減させることを特徴とする、過剰な脂質含量を低減させた魚類の飼育方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法、或いは、請求項5に記載の魚類の飼育方法において用いるための、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、飼育魚類の脂質含量の低減方法及びそのための飼料に関し、特に、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の短期期間飼育することにより、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年わが国においては魚類の養殖が盛んに行われ、その飼料の研究も数多くなされている。魚類の養殖用飼料の配合に際しては、各種飼料成分において、魚類における必須アミノ酸の供給が重要となる。必須アミノ酸は、魚体内で生合成により供給することができないため、魚の生育には、飼料として外部から供給することが必要となる。魚類の必須アミノ酸としては、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)が挙げられる。
【0003】
魚類の養殖において、各種海産重要魚類の生育に必要な必須アミノ酸要求量については、飼育試験により調査され報告がなされている(Robert P. Wilson PROTEIN AND AMINO ACID REQUIRMENTS OF FISHES:Ann. Rev. Nutr. 6:225-244, 1986)。また、「魚類飼料中の必須アミノ酸のバランスが魚類の成長や、生化学的指標に対する影響」についても報告されている(Mar. Biotechnol., Vol. 14, No.5 p643-654, 2012; Fisheries Sci. JST Vol. 68 ,No.3, p509-516, 2002)。該報告では、例えば、試料中のアルギニン(Arg)やリジン(Lys)の欠乏は、魚の生残率、日間成長率、飼料効率及びタンパク蓄積に悪影響を与えることが報告されている。また、飼料中の必須アミノ酸の量が魚の成長に及ぼす影響についても報告されている。例えば、飼料中のリジン量を、7段階にかえてマスに与え、12週間の成長を観察したところ、19g/kgでマスの成長増はプラトーに達したことが報告されている。
【0004】
更に、「飼料中のアルギニン(Arg)とリジン(Lys)の不均衡がヒラメ稚魚の成長と生化学的指標に及ぼす影響」についての研究報告もある(Fisheries Sci. JST, Vol.68, No.3, Page. 509-516, 2002)。該報告には、飼料中のArg又はLysの欠乏が、生残率、日間成長率、飼料効率、及び、蛋白蓄積に悪影響を与えること等が報告されている。なお、高リジンであるコーン(46~51%)、コーングルテンミール(20%)を加えたフィッシュミール添加、無添加の試験飼料を用いた飼育試験において、体重増加、飼料要求率、蛋白効率については、対照群との間で有意差が無かったことの報告もなされている(J. Aquat. Food Prod. Technol., Vol.9, No.2, Page 19-27, 2000)。以上のとおり、リジンをはじめとして、必須アミノ酸の魚類の養殖における役割の研究については各種報告がなされており、魚類の養殖用飼料の配合に際しては、各種養殖魚類に対して、これら必須アミノ酸要求量の充足についての配慮がなされている。
【0005】
魚類の養殖において、飼料中に必須アミノ酸を添加、補強して、養殖魚の成長等を促進する方法も開示されている。例えば、特開平7-31380号公報には、フェザーミールと魚粉をタンパク質源とした魚類用配合飼料において、メチオニンや、リジン、及び、ヒスチジンのような必須アミノ酸を添加、補強して、魚の成長度の良好な配合飼料を調製する方法が開示されている。また、特開平6-70694号公報には、大豆タンパク質を主タンパク質源とした植物タンパク質配合ヒラメ用飼料において、不足する必須アミノ酸成分であるメチオニン及びリジンを添加して、飼料効率の良い、ヒラメ養殖用飼料を製造することについて開示されている。これらはいずれも、魚類の養殖用飼料の配合に際して、魚類の成長に必要な必須アミノ酸の量を補完或いは強化して、養殖魚類の成長の促進を図ったものである。
【0006】
一方で、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、各種飼料の研究がなされ、養殖魚類の成長を促進するための飼料の開発も行われている。魚類の養殖において、養殖魚の成長を早めるために、従来より、養魚飼料へ脂質の添加が行われており、また、そのような飼料として、高脂肪含量の魚類の飼料の開示も種々なされている(特開平8-38066号公報、特開2005-27613号公報、特開2008-220180号公報、特開2011-200260号公報、特表2003-501106号公報)。しかしながら、養殖魚類の飼育において、飼料として脂質高含量の飼料を与えると、脂質がそのまま魚類体内に取り込まれるため、天然魚に比較して、高品質の油脂を含有する養殖魚とならない問題がある。天然魚のような場合は、ある程度脂質含量が高い方が「脂が乗った」状態になって食味が良くなるという評価になるが、養殖において、脂質含量の高い飼料等により、脂肪分を付与すると、体脂肪が必要以上に高くなり、天然魚に比べ、その食味において著しく劣るようになる。天然魚と養殖魚を比較すると、一般に養殖魚はその生育環境の相違から、脂肪含有率が高く、肉質が軟らか過ぎる傾向があり、これが養殖魚の味が天然魚の味より劣る原因であると考えられている。
【0007】
このような養殖魚の食味を改善するために、従来は、養殖魚の出荷7~10日前から餌止めし、脂肪含有率を低減させる方法が採られている。しかし、この方法では餌止めにより体重が減少し、商品価格が低下する問題がある。そこで、これらの魚類の脂質蓄積等に対する肉質の改善の方法が検討され、開示されている。例えば、特公昭61-22936号公報には、ゼオライトの一種であるモルデナイト及びクリノプチライトを養魚用飼料に添加して、該ゼオライトの吸着力を利用して消化器官内のアンモニアと脂肪を捕捉し、その過剰摂取を防止する方法が、特開平7-87901号公報には、ケイ酸の可溶化率が25%以上であり、かつ吸油量が150ml/100g以上の多孔質ケイ酸カルシウムを主成分とする魚介類の肉質改善剤を養殖魚介類用飼料に添加し、魚介類の成長を抑制せずに筋肉への体脂肪の蓄積を防止する方法が開示されている。
【0008】
また、特開2001-69923号公報には、緑茶、緑茶抽出物、茶殻を養殖魚用飼料に添加して、養殖魚の脂質を改善して、養殖魚特有の脂ぽさを軽減し或いは除去する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、魚の脂肪含有率を脂質の吸収によって、魚類への摂取を制限したりして、低減させるものであるから、天然魚の「脂が乗った」状態とは相違するものであり、また、少なからず養魚飼料からの栄養分の摂取にも影響して、魚体への影響が避けられず、天然魚のような食味の養殖魚を提供するという観点からは、必ずしも満足のいくものとはなっていない。
【0009】
以上のように、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、養殖技術やそのための養殖魚用飼料の改良が種々なされているが、天然魚に匹敵する味覚の養殖魚を提供するという観点からは、その養殖技術及びそのための飼料の更なる改良が望まれるところである。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特公昭61-22936号公報。
【特許文献2】特開平6-70694号公報。
【特許文献3】特開平7-31380号公報。
【特許文献4】特開平7-87901号公報。
【特許文献5】特開平8-38066号公報。
【特許文献6】特開2001-69923号公報。
【特許文献7】特開2005-27613号公報。
【特許文献8】特表2003-501106号公報。
【特許文献9】特開2008-220180号公報。
【特許文献10】特開2011-200260号公報。
【0011】

【非特許文献1】Ann. Rev. Nutr. 6:225-244,1986。
【非特許文献2】Mar. Biotechnol., Vol. 14, No.5 p643-654,2012。
【非特許文献3】Fisheries Sci. JST Vol. 68, No.3, p509-516,2002。
【非特許文献4】J. Aquat. Food Prod. Technol.,Vol.9, No.2, Page19-27, 2000。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下させ、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、魚類養殖において、魚種によって特異的な必須アミノ酸の要求量と、該必須アミノ酸の摂取が魚体に及ぼす影響について鋭意検討する中で、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、リジン(Lys)のみが過剰に配合された飼料を用いて魚類を飼育することにより、魚体、特に筋肉内の脂質含量を低下することができ、しかも、従来の「絶食や運動飼育」の場合のような筋肉総量の減少や、体重低下もなく、魚体重に影響を及ぼすことなく、脂質含量を減少させることができることを見出し、上記課題を解決し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、飼育魚類の脂質含量を低減する方法からなる。本発明の飼育魚類の脂質含量を低減する方法は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法に適用して、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育期間において、出荷前の飼育期間の短期間、該魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することができる。
【0015】
本発明者らは、魚類養殖において、魚種によって特異的な必須アミノ酸の要求量と、該必須アミノ酸の摂取が魚体に及ぼす影響について鋭意検討する中で、先に、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以下に調整することにより、魚類の筋肉内脂質含量を増加することができ、「脂が乗った」状態の養殖魚を提供することができることを見出し、該発明について特許出願をなした(特願2013-57976号)。そこで、更に、検討した結果、必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質飼料を用いて魚類を飼育することにより、魚体、特に筋肉内の脂質含量を低下することができ、しかも、魚体重に影響を及ぼすことなく、脂質含量を減少させることができることを見出したものである。該飼育魚類の脂質含量の低減方法は、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法として適用することができ、該養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育期間において、出荷前の飼育期間の短期間、該方法を用いて魚類を飼育することにより、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することができる。
【0016】
本発明の飼育魚類の脂質含量の低減方法において、脂質低減化に用いられる魚類脂質低減化用飼料は、必須アミノ酸のうち、リジンのみを過剰に含有させることが必要であり、該飼料中の含有量は、魚種によって生育に必要とされるリジンの必須アミノ酸としての要求量に対して、650%以上を過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料であることが好ましく、更に好ましくは、650%以上、1000%以下のリジンを配合した魚類脂質低減化用飼料であることが好ましい。魚類脂質低減化用飼料を用いて飼育する養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間は、養殖魚又は漁獲した天然魚の養殖方法、魚種によって適宜設定することができるが、出荷前の2~6日の飼育期間であることが好ましい。本発明の飼育魚類の脂質含量の低減方法による飼育魚類の脂質含量の低減の度合いは、養殖魚又は漁獲した天然魚の養殖方法、魚種によって適宜、設定することができるが、飼育魚類の脂質含量の低減が、魚類の筋肉内の脂質含量を、20%以上低下するものであることが好ましい。
【0017】
本発明は、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより飼育魚類の脂質含量を低減させることからなる、過剰な脂質含量を低減させた魚類の飼育方法の発明を包含する。
【0018】
また、本発明は、本発明の脂質含量の低減方法、或いは、魚類の飼育方法において用いるための、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料の発明を包含する。
【0019】
すなわち具体的には本発明は、(1)養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて、魚類を飼育することを特徴とする飼育魚類の脂質含量の低減方法や、(2)魚類脂質低減化用飼料が、魚種によって生育に必要とされるリジンの必須アミノ酸としての要求量に対して、650%以上を過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料であることを特徴とする上記(1)に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法や、(3)魚類脂質低減化用飼料を用いて飼育する養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間が、出荷前の2~6日の飼育期間であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法や、(4)飼育魚類の脂質含量の低減が、魚類の筋肉内の脂質含量を、20%以上低下するものであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法からなる。
【0020】
また、本発明は、(5)養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより飼育魚類の脂質含量を低減させることを特徴とする、過剰な脂質含量を低減させた魚類の飼育方法や、(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載の飼育魚類の脂質含量の低減方法、或いは、請求項5に記載の魚類の飼育方法において用いるための、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料の必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料からなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下させ、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、リジン以外の必須アミノ酸は、魚の生育のために必要なアミノ酸の要求量を充足させ、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以上に過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料を用いて魚類を飼育することにより飼育魚類の脂質含量を低減させることからなる。本発明の飼育魚類の脂質含量を低減する方法は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法に適用して、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することからなる。

【0023】
魚類の必須アミノ酸としては、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)が挙げられる。魚種によって生育に必要とされる該必須アミノ酸の要求量は、Ann. Rev. Nutr., 6:225-244に記載された“PROTEIN AND AMINO ACID REQUIRMENTS OF FISHES”の方法によって求めることができる。魚類のリジン要求量は、2.0~5.0重量%/飼料が要求される。例えば、ブリ(スズキ目アジ科)の場合には、5.0重量%/飼料が、マダイ(スズキ目スズキ亜目タイ科)の場合は、4.4重量%/飼料が、ヒラメ(カレイ目カレイ亜目ヒラメ科)の場合は、4.6重量%/飼料が、ニジマス(サケ目サケ科)の場合は、2.1重量%/飼料が、コイ(コイ目・コイ科)の場合は、2.2重量%/飼料が、要求される。

【0024】
本発明の魚類筋肉内脂質含量を減少するための魚類飼育用飼料においては、必須アミノ酸のうち、リジンのみを過剰に含有させることが必要であり、該飼料中の含有量は、魚種によって生育に必要とされるリジンの必須アミノ酸としての要求量に対して、650%以上を過剰に配合した魚類脂質低減化用飼料であることが好ましく、更に好ましくは、650%以上、1000%以下のリジンを配合した魚類脂質低減化用飼料であることが好ましい。飼料中のリジンの含量を調整するには、配合飼料のタンパク質原料の配合割合を調整してリジンの含有量を調整することにより行われるが、通常、魚類用飼料として用いられているものは、魚類の生育に必要な必須アミノ酸の含量は確保されているから、該配合原料において、リジンを多く含む配合原料を用いて配合割合を調整することが可能であり、また、リジン或いはリジンを含む材料を添加して、飼料中の含有量を調整することができる。かかる調整により、他の必須アミノ酸量が不足する場合には、適宜該必須アミノ酸量を添加することによって調整するのが簡便な方法である。本発明の魚類脂質低減化用飼料において、該飼料の調製に用いられる材料及び調整方法は、上記必須アミノ酸の調整の点を除いて、当魚類の飼育に用いられている飼料と特に変わるところはない。

【0025】
本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法においては、本発明の魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~6日の期間を該魚類脂質低減化用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚又は漁獲した天然魚の筋肉内の脂質含量の過剰含量を低下することができる。本発明においては、本発明の飼料を用いて、出荷前の上記短期間での飼育処理により、魚体の体重を減らすことなく、飼育魚類の筋肉内脂質含量を低減することが可能となる。本発明の脂質含量の低減方法は、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下する方法として適用することができ、該養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育期間において、出荷前の飼育期間の短期間、該方法を用いて魚類を飼育することにより、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供することができる。

【0026】
本発明の飼育魚類の脂質含量の低減方法により、出荷前の短期間の飼育処理し、魚類の脂質含量の低減を行うことができるが、該脂質含量の低減度合としては、魚類の筋肉内の脂質含量を、20%以上低下することが可能である。

【0027】
以下に、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
<実験方法>
コイ科魚類(ゼブラフィッシュ)を用いて、飼育魚類の脂質含量の低減についての実験を行った。コイ科魚類のアミノ酸要求量(表1)に基いて、表2に示すように対照飼料及び試験飼料を作製した。対照区(control)は、飼料配合中、コイ科魚類のアミノ酸要求量のリジン(Lys)を、Lys区は、15/100(g/g)(アミノ酸要求量のリジンの682%)のリジンを、Lys++区は、20/100(g/g)(アミノ酸要求量のリジンの909%)のリジンを、配合した。これらの飼料を体長約40mm、体重約0.4gのゼブラフィッシュに3及び6日間投与し、飼育した。飼育後、飼育魚類について、「体重」及び「筋肉の脂質含量」を測定した。
【実施例1】
【0029】
【表1】
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【実施例1】
【0030】
【表2】
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【実施例1】
【0031】
<結果>
結果を、表3及び表4に示す。表3(リジン過剰食を与えたゼブラフィッシュの体重)に示されるように、リジン過剰食を与えたゼブラフィッシュの体重(3及び6日間投与)は、対照群と試験群との間で体重には有意な差が認められなかった。また、筋肉の全脂質を抽出し、トリアシルグリセロールを測定したところ、表4(リジン過剰食を与えたゼブラフィッシュの脂質含量)に示されるように、リジン過剰食を与えた場合に、Dunnett多重検定で有意に脂質含量が低くなった。
【実施例1】
【0032】
【表3】
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【実施例1】
【0033】
【表4】
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【実施例2】
【0034】
<実験方法>
サケ科魚類(ニジマス)を用いて、飼育魚類の脂質含量の低減についての実験を行った。ニジマスのアミノ酸要求量(表5)に基いて、表6に示すように対照飼料及び試験飼料を作製した。対照区(control)は、飼料配合中、ニジマスのアミノ酸要求量のリジン(Lys)を、Lys区は、15/100(g/g)(アミノ酸要求量のリジンの682%)のリジンを、Lys++区は、20/100(g/g)(アミノ酸要求量のリジンの909%)のリジンを、配合した。これらの飼料を、実施例1と同様に、体長約20cm、体重約115gのニジマスに3及び6日間投与し、飼育した。飼育後、飼育魚類について、「体重」及び「筋肉の脂質含量」を測定した。
【実施例2】
【0035】
【表5】
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【実施例2】
【0036】
【表6】
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【実施例2】
【0037】
<結果>
結果を、表7及び表8に示す。表7(リジン過剰食を与えたニジマスの体重)に示されるように、リジン過剰食を与えたニジマスの体重(3及び6日間投与)は、対照群と試験群との間で体重には有意な差が認められなかった。また、筋肉の全脂質を抽出し、トリアシルグリセロールを測定したところ、表8(リジン過剰食を与えたニジマスの脂質含量)に示されるように、リジン過剰食を与えた場合に、Dunnett多重検定で有意に脂質含量が低くなった。
【実施例2】
【0038】
【表7】
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【実施例2】
【0039】
【表8】
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【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、養殖魚又は漁獲した天然魚の飼育において、養殖によって増大した脂肪含有率や、魚種によって増大した脂肪含有率を低下させ、魚体重に影響を及ぼすことなく、過剰な脂質含量を減少させて、食味及び食感の良好な飼育魚類を提供する。