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明細書 :Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、該酵素の製造方法、及び、該酵素を用いた不飽和脂肪酸の製造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-181477 (P2015-181477A)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、該酵素の製造方法、及び、該酵素を用いた不飽和脂肪酸の製造
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   9/02        (2006.01)
C12P   7/64        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/00 101
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 9/02
C12P 7/64
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-064168 (P2014-064168)
出願日 平成26年3月26日(2014.3.26)
発明者または考案者 【氏名】吉崎 悟朗
【氏名】矢澤 良輔
【氏名】千葉 瑞萌
【氏名】壁谷 尚樹
【氏名】竹内 裕
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B050
4B064
4B065
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA02
4B024DA01
4B024DA02
4B024DA05
4B024DA11
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA01
4B024HA08
4B050CC01
4B050DD11
4B050EE10
4B050FF01
4B050FF18
4B050LL01
4B050LL02
4B050LL05
4B064AD88
4B064AD90
4B064CA19
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4B064CC24
4B064CD07
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA79X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD29
4B065CA13
4B065CA41
4B065CA43
要約 【課題】魚類から、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を取得し、該遺伝子を改変して、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素を調製すると共に、該脂肪酸不飽和化酵素を用いて、植物由来の脂肪酸からエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する方法の提供。
【解決手段】アイゴのΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を持つアミノ酸配列をコードする遺伝子のΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を特定し、該配列を、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素のアミノ酸配列の特定部位をコードする塩基配列と置換し、導入することで、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つ脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を取得した。該遺伝子を細胞に導入して、該酵素を取得し、該酵素を用いて、植物由来の不飽和脂肪酸を合成する方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列;又は、
(b)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
【請求項2】
配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号5に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの322-325位の配列であるIle-Val-Phe-Thrのペプチド配列を、配列表の配列番号4に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの324-327位の配列であるMet-Met-Phe-Alaのペプチド配列で、置換したキメラ脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項4】
下記(a)又は(b)の塩基配列からなる請求項2に記載のポリヌクレオチド:
(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;又は、
(b)以下の(i)若しくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;若しくは、
(ii)配列表の配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが、配列表の配列番号2に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの964-975位の配列であるatt gta ttt acaの塩基配列を、配列表の配列番号1に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの970-981位の配列であるatg atg ttt gccの塩基配列で、置換したキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードする請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。
【請求項7】
発現ベクターが、酵母発現ベクターであることを特徴とする請求項6に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞。
【請求項9】
微生物細胞が、酵母細胞であることを特徴とする請求項8に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した微生物細胞。
【請求項10】
特許微生物寄託センターに、受託受領番号NITE AP-01837として寄託された、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入したサッカロマイセス・spに属する酵母細胞株。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞を培養し、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドを発現、取得することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、又は、該酵素を生成する請求項8~10のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞、又は、該細胞の培養ブロスを、脂肪酸基質に作用させて、Δ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された脂肪酸を製造することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された不飽和脂肪酸の製造方法。
【請求項13】
脂肪酸基質が、α-リノレン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、又は、エイコサトリエン酸であることを特徴とする請求項12に記載のΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類に由来する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を用いて構築した、キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を組み換えた発現ベクター、該発現ベクターを導入した宿主細胞、該細胞を用いたキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法、及び、該キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用いたΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪は、エネルギー源として重要な栄養成分であるとともに、同時に動物にとって正常な発育と機能維持に欠くことができない成分である。近年、エイコペンタエン酸(EPA、20:5n-3)や、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)のようなn-3系多価不飽和脂肪酸が、乳児における脳の成長及び発達、成人における正常な脳機能の維持に不可欠であること(J. Pediatr. 120:S129-S138, 1992)や、アトピー性皮膚炎、血栓性疾患、癌、冠動脈疾患などに低減効果のあること(Am. J. Clin. Nutr. 71, 171S-175S,2000;77, p. 532-5543, 2003)等が報告され、ヒトが健康を維持するための成分として、注目を浴びている。
【0003】
生体中における脂肪酸の合成では、Δ12脂肪酸不飽和化酵素により、オレイン酸(18:1)からリノール酸(18:2n-6)が合成され、更に、ω3脂肪酸不飽和化酵素により、リノール酸(18:2n-6)からα-リノレン酸(18:3n-3)が合成される。しかし、哺乳動物などの高等動物では、上記酵素を有さないため、食物からこれらの脂肪酸を摂取することが要求される。ヒトにおいては、このような必須脂肪酸として、リノール酸(18:2)、α-リノレン酸(18:3)、及び、アラキドン酸(C20:4)がある。α-リノレン酸(18:3n-3)からは、エイコペンタエン酸(EPA、20:5n-3)が、EPAからは、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)が合成される。これらの合成に関与する酵素として、Δ4不飽和化酵素(Fad4)、Δ5不飽和化酵素(Fad5)、及び、Δ6不飽和化酵素(Fad6)酵素がある。
【0004】
近年、不飽和脂肪酸の合成に関与する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子が取得され、該遺伝子を細胞に導入して、発現させることにより、細胞を改変したり、酵素蛋白質を製造する技術が開示されている。例えば、特表2004-516017号公報、特開2006-314321号公報、特開2009-148297号公報には、多価不飽和脂肪酸を産生するヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、ピティウム・イレギュラレ(Pythium irregulare)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)及びクリテコジニウム(Crythecodinium)から、Δ4不飽和化酵素(Fad4)、Δ5不飽和化酵素(Fad5)、及び、Δ6不飽和化酵素(Fad6)をコードする遺伝子を取得し、該不飽和化酵素遺伝子からなる発現ベクター構築して、該ベクターを、植物細胞、微生物細胞、或いは動物細胞に導入して、該不飽和化酵素ペプチドを取得する方法が開示されている。
【0005】
また、特開2003-245070号公報には、ホウレンソウの根部に由来するΔ12脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を、ブタ等の動物で発現させることにより、不飽和脂肪酸の含量を増加させる方法が、特開2010-279387号公報には、ゼニゴケ由来のΔ5脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、Δ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子及びΔ6脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子を取得し、これを高等植物に導入して発現させることにより、アラキドン酸や、エイコペンタエン酸を生産し得る形質転換植物体を取得する方法が開示されている。
【0006】
魚類においても、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を用いて、魚体の不飽和脂肪酸含量を変える方法が開示されている。例えば、ヤマメ由来の脂肪酸代謝酵素遺伝子をニベに導入することで、ドコサペンタエン酸(DPA)等の割合を増加する方法が(Kabeya, N., Takeuchi, Y., Yamamoto, Y., Yazawa, R., Haga, Y., Satoh, S., Yoshizaki, G. Modification of the n-3 HUFA biosynthetic pathway by transgenesis in a marine teleost, nibe croaker. J. Biotechnol. 172, 46-54(2014).「日本水産学会大会講演要旨集」Vol. 2013 春季 p.133,2013.)、微細藻類由来のΔ4脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(Tonon, T., Harvey, D., Larson, T. R., and Graham, I. A. Identification of a very long chain polyunsaturated fatty acidΔ4-desaturase from the microalga Pavlova lutheri.FEBS Lett.553,440-444(2003).)、大西洋産サケ由来のΔ5脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(ジーンバンク:AF478472)、ヤマメ由来のΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(ジーンバンク:AB074149,AB070444)等の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子魚類に導入して、魚類のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸含量を増加させる方法(特開2005—287424号公報)が開示されている。
【0007】
多くの海産魚は、Δ6脂肪酸不飽和化酵素(Fad6)を保持しているが、Δ5及びΔ4脂肪酸不飽和化酵素(Fad5及びFad4)を保持していない。したがって、該脂肪酸不飽和化酵素を単離して、植物由来の脂肪酸からドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成しようとしても、合成することができない。最近になって、アイゴ(シモフリアイゴ:Siganus canaliculatus)が、Δ5脂肪酸不飽和化酵素活性とΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素とΔ4脂肪酸不飽和化酵素を持っていることが分かったことが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,Vol. 107 No. 39,Page. 16840-16845, 2010.)。しかしながら、該脂肪酸不飽和化酵素を用いて、植物由来の脂肪酸からドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成することについては、今までに報告はない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2003-245070号公報。
【特許文献2】特開2005—287424号公報。
【特許文献3】特開2006-314321号公報。
【特許文献4】特開2009-148297号公報。
【特許文献5】特開2010-279387号公報。
【特許文献6】特表2004-516017号公報。
【0009】

【非特許文献1】J. Pediatr. 120:S129-S138, 1992.
【非特許文献2】Am. J. Clin. Nutr. 71, 171S-175S, 2000;77, p. 532-5543, 2003.
【非特許文献3】「日本水産学会大会講演要旨集」Vol. 2013 春季 p.133,2013.
【非特許文献4】FEBS Lett.553, 440-444(2003).
【非特許文献5】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 107 No. 39, Page. 16840-16845, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、アイゴ(Siganus fuscescens)のような魚類から、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を取得し、該遺伝子を改変して、Δ4脂肪酸不飽和化酵素活性、Δ5脂肪酸不飽和化酵素活性、及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を構築し、該遺伝子を用いて、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素を調製すると共に、該脂肪酸不飽和化酵素を用いて、植物由来の脂肪酸からエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する方法を提供することからなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、アイゴのΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を持つアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び、Δ5脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ、Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つアミノ酸配列をコードする遺伝子の脂肪酸不飽和化酵素活性を示すアミノ酸配列を特定すべく鋭意検討する中で、Δ4脂肪酸不飽和化酵素活性を持つアミノ酸配列をコードする遺伝子のΔ4脂肪酸不飽和化酵素活性を示すアミノ酸配列を特定し、該配列を、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ脂肪酸不飽和化酵素のアミノ酸配列の特定部位と置換し、導入することで、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つ脂肪酸不飽和化酵素を取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、前記するように、多くの海産魚は、Δ6脂肪酸不飽和化酵素(Fad6)を保持しているが、Δ5及びΔ4脂肪酸不飽和化酵素(Fad5及びFad4)を保持していない。したがって、該脂肪酸不飽和化酵素を単離して、植物由来の脂肪酸からドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成しようとしても、合成することができない。しかし、最近になって、アイゴ(Siganus fuscescens)が、Δ5脂肪酸不飽和化酵素活性とΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つΔ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素と、Δ4脂肪酸不飽和化酵素を持っていることが分かったことから、該脂肪酸不飽和化酵素のΔ5/Δ6不飽和化酵素とΔ4不飽和化酵素のアミノ酸配列を元に,Δ6、Δ4活性を示すアミノ酸配列を特定するとともに,各活性を保持できる置換部位を特定し,Δ4活性示すアミノ酸配列で、Δ5/Δ6不飽和化酵素の置換部位を置換することにより、Δ4、Δ5、Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を全て持つ、キメラ脂肪酸不飽和化酵素を作製した。したがって、本発明は、魚類に由来する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を用いて構築した、キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を組み換えた発現ベクター、該発現ベクターを導入した宿主細胞、該細胞を用いたキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法、及び、該キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用いたΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法からなる。なお、本発明で作製したキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素は、アイゴのΔ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素が、α-リノレン酸からのDHAの合成過程に関与する、Δ8脂肪酸不飽和化酵素活性を有していることから、同脂肪酸不飽和化酵素もΔ8脂肪酸不飽和化酵素活性を有している。
【0013】
すなわち、本発明は具体的には以下の発明よりなる。
[1]Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列;又は、
(b)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
[2]配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化活性を有するポリペプチドが、配列表の配列番号5に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの322-325位の配列であるIle-Val-Phe-Thrのペプチド配列を、配列表の配列番号4に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの324-327位の配列であるMet-Met-Phe-Alaのペプチド配列で、置換したキメラ脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドであることを特徴とする上記[1]に記載のポリペプチド。
[3]上記[1]又は[2]に記載のポリペプチドをコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
[4]下記(a)又は(b)の塩基配列からなる上記[2]に記載のポリヌクレオチド:
(a)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;又は、
(b)以下の(i)若しくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;若しくは、
(ii)配列表の配列番号3に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
[5]配列表の配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが、配列表の配列番号2に示されるΔ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの964-975位の配列であるatt gta ttt acaの塩基配列を、配列表の配列番号1に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの970-981位の配列であるatg atg ttt gccの塩基配列で、置換したキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードする上記[4]に記載のポリヌクレオチド。
【0014】
[6]上記[3]~[5]のいずれかに記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。
[7]発現ベクターが、酵母発現ベクターであることを特徴とする上記[6]に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター。
[8]上記[6]又は[7]に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞。
[9]微生物細胞が、酵母細胞であることを特徴とする上記[8]に記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した微生物細胞。
[10]特許微生物寄託センターに、受託受領番号NITE AP-01837として寄託された、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入したサッカロマイセス・spに属する酵母細胞株。
【0015】
[11]上記[8]~[10]のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞を培養し、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドを発現、取得することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法。
[12]上記[11]に記載のΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素、又は、該酵素を生成する上記[8]~[10]のいずれかに記載の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞、又は、該細胞の培養ブロスを、脂肪酸基質に作用させて、Δ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された脂肪酸を製造することを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6部位が不飽和化された不飽和脂肪酸の製造方法。
[13]脂肪酸基質が、α-リノレン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、又は、エイコサトリエン酸であることを特徴とする上記[12]に記載のΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つ脂肪酸不飽和化酵素を取得する方法を提供し、該脂肪酸不飽和化酵素を用いることにより、植物由来の脂肪酸からエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例におけるキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の作製の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、魚類に由来する脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を用いて構築した、キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子、該遺伝子を組み換えた発現ベクター、該発現ベクターを導入した宿主細胞、該細胞を用いたキメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素の製造方法、及び、該キメラΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用いたΔ4、Δ5及びΔ6不飽和脂肪酸の製造方法からなる。

【0019】
本発明において、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を構築するための遺伝子源としては、アイゴ(Siganus fuscescens)を用いることができる。アイゴは、スズキ目・アイゴ科に分類される魚の一種であり、西太平洋の暖海域に生息する沿岸性の海水魚であり、従来、沖縄のものは、シモフリアイゴ(S. canaliculatus)と呼ばれていた。
該遺伝子源から、スクリーニングするには、ライブラリーを作製し、遺伝子に特有の適当なプローブを用いて、クローンを選抜することにより、本発明の遺伝子を取得することができる。cDNAライブラリーから、本発明の遺伝子をスクリーニングする方法は、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 1989.(以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)に記載の方法等、当業者により常用される方法により行うことができる。該クローンから、本発明のΔ4或いはΔ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子を取得するには、表1のようなプライマーを用い、PCR反応を行って、増幅し、アガロースゲルのような分離手段を用いて、常法により、分離・精製する。該増幅断片を、適当なプラスミドベクターにサブクローニングし、塩基配列の決定を行う。

【0020】
【表1】
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【0021】
本発明で、構造決定されたΔ4或いはΔ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の塩基配列は、Δ4脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の塩基配列が、配列表の配列番号1に、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の塩基配列が、配列表の配列番号2に示されている。該遺伝子の塩基配列は、それぞれΔ4脂肪酸不飽和化酵素(配列表の配列番号4)、及び、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素(配列表の配列番号5)のアミノ酸配列をコードする。

【0022】
本発明においては、Δ4脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の塩基配列、及び、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の塩基配列において、「Δ4不飽和化酵素活性領域」、及び、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素における「Δ4不飽和化酵素活性領域との置換領域」を決定するために、領域区分を組合わせた領域活性解析を行った。領域活性解析の結果、Δ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列表の配列番号1に示される塩基配列)の970-981位の配列であるatg atg ttt gccの塩基配列(配列表の配列番号4に示されるΔ4脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの324-327位の配列であるMet-Met-Phe-Ala のペプチド配列をコードする)が、「Δ4不飽和化酵素活性領域」をコードする塩基配列であること、及び、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素をコードするポリヌクレオチド(配列表の配列番号2に示される塩基配列)の964-975位の配列であるatt gta ttt aca の塩基配列(Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素ポリペプチドの322-325位の配列であるIle-Val-Phe-Thr のペプチド配列をコードする)が、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素における「Δ4不飽和化酵素活性領域との置換領域」であることを特定した。そして、該「Δ4不飽和化酵素活性領域」で、Δ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素における「Δ4不飽和化酵素活性領域との置換領域」を置換することにより、Δ4及びΔ5/Δ6脂肪酸不飽和化酵素活性を併せ持つ、脂肪酸不飽和化酵素をコードするキメラ遺伝子を構築した。

【0023】
本発明においては、上記のとおり構築した脂肪酸不飽和化酵素をコードするキメラ遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を特定する。該「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNA又はRNAなどの核酸をプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られる塩基配列を意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラークローニング第2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。

【0024】
本発明において、本発明の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクター及び該発現ベクターを導入した宿主細胞を作製するには、該発現ベクターを導入した植物、動物又は微生物細胞に適合した公知の発現ベクターを用いることができる。好ましい宿主細胞としては酵母を挙げることができ、該発現ベクターとしては、酵母発現ベクターを用いることが望ましく、かかる場合の適当な酵母発現ベクターとしては例えば、pAAH5(Ammerer,1983)など、又は、適当な酵母の調節領域を含有する、酵母発現ベクターから誘導されるベクター(Ruohonen et al.,1991; Ruohonen etal.,manuscript in preparation,a)を用いることができる。

【0025】
本発明においては、本発明の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した宿主細胞を培養することにより、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素をコードする遺伝子の発現により、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を生成し、取得する。該Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素のペプチド配列については、配列表の配列番号6に示されている。

【0026】
本発明は、配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が、欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とするΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を有するポリペプチドを特定する。該「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、更に好ましくは1~5個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を意味する。また、上記「1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列」とは、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、更に好ましくは1~5個の任意の数の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を意味する。

【0027】
例えば、これら1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA(変異DNA)は、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。具体的には、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的な手法等を用いて、これらDNAに変異を導入することにより、変異DNAを取得することができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1~38,John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。この変異DNAを適切な発現系を用いて発現させることにより、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質を得ることができる。

【0028】
本発明においては、本発明により取得したΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用い、該酵素を、植物由来のα-リノレン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、又は、エイコサトリエン酸のような脂肪酸基質に作用させて、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する。該酵素作用に際しては、精製・分離したΔ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素を用いることができるが、本発明の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を導入した植物、動物又は微生物細胞、或いは、該細胞の培養ブロスの形で、脂肪酸基質に作用させ、酵素反応を行うことができる。

【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
[アイゴ不飽和化酵素遺伝子の塩基配列決定]
実験には、千葉県館山市の定置網で採捕されたアイゴ Siganus fuscescensを用いた。2-フェノキシエタノール(和光純薬工業株式会社,大阪)を用いて麻酔した供試魚から脳を摘出した後、これをドライアイス上で瞬間凍結した。凍結した脳はRNA抽出実験まで-80℃にて保管した。凍結したアイゴ脳からISOGEN(株式会社ニッポンジーン,東京)により、添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。続いて、TURBO DNase(Ambion, TX, USA)を用いて添付のプロトコールに従い残存DNAの分解反応を行った後に、フェノール抽出、エタノール沈澱にて精製した。得られた全RNAのうち1μgを鋳型としてSuperScript III RT(Invitrogen, CA, USA)により、添付のプロトコールに従いオリゴ(dT)アダプタープライマー(表1)を用いて第1鎖cDNAを合成した。
【実施例1】
【0031】
RT-PCRは、シモフリアイゴの不飽和化酵素遺伝子の配列(GenBank:EF424276.2)を元に設計した翻訳領域全長を増幅できると考えられるプライマー(表1)を用いて行った。PCR反応は、アイゴ脳cDNA(20倍希釈)を鋳型とし、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社,滋賀)を用いて行った。反応条件は、表2に示した。得られたPCR反応液を0.7%のアガロース電気泳動に供し、予想されるサイズの増幅断片をHigh Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science, Upper Bavaria, Germany)を用いてアガロースゲルより切り出して、精製した。続いて、Mighty TA-Cloning Kit for PrimeSTAR(タカラバイオ株式会社,滋賀)に付属のA-overhang mixtureを用いて末端A付加反応を行った。得られたA付加増幅断片をpGEM-T Easy Vector System I(Promega, WI, USA)を用いてpGEM-T Easyプラスミドベクターにサブクローニングし塩基配列を決定した。なお、全ての行程はキットに付属のプロトコールに従って行った。
【実施例1】
【0032】
【表2】
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【実施例2】
【0033】
[キメラ酵素遺伝子導入酵母の作製]
【実施例2】
【0034】
<キメラ酵素遺伝子の調製>
キメラ酵素遺伝子調製の流れを図1に示した。5‘末端用プライマー(表3)にはHindIIIの認識配列の一部を、3’末端用プライマー(表3)にはXbaIの認識配列の一部を組み、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)用のプライマーを設計した。また、キメラ酵素の切り替え位置に用いるプライマー(表3)にはアイゴΔ4 不飽和化酵素遺伝子配列の一部を組み、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)用のプライマーを設計した。なお、これらのプライマーは、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)のプロトコールに従い設計した。PCR反応は、Δ5/6不飽和化酵素遺伝子のクローンを鋳型としてPrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。反応条件は表4に示した。
【実施例2】
【0035】
なお、酵母発現ベクターであるpYES2(Invitrogen, CA, USA)にはあらかじめHindIIIとXbaIで制限酵素処理を行い、マルチクローニングサイトを切断した。得られたPCR反応液を2%のアガロース電気泳動に供し、予想されるサイズの増幅断片を、アガロースゲルより切り出して、Gel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティックス株式会社,東京)を用いて精製した。精製したDNA断片はIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて、HindIII及びXbaI制限酵素処理済のpYES2(Invitrogen)と接合し、環状にした。
続いて、キメラ酵素遺伝子が導入された酵母発現ベクターをDH5α(ニッポンジーン,東京)にトランスフォーメーションした。大腸菌を12時間培養した後、Fast Gene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティックス株式会社)を用いて酵母発現ベクターを抽出した。
【実施例2】
【0036】
【表3】
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【実施例2】
【0037】
【表4】
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【実施例2】
【0038】
<酵母へのキメラ酵素遺伝子の導入>
キメラ酵素遺伝子を組み込んだ酵母発現ベクターはS.c. EasyComp Transformation Kit(Invitrogen)を用いて添付のプロトコールに従い酵母にトランスフォーメーションした。なお、酵母の系統はウラシル合成酵素を欠損したInvSc1系統(Invitrogen)を用いた。トランスフォーメーション後の酵母を、2%のラフィノースを含むウラシル欠乏complete minimal dropout(CMD)寒天培地に播種し、30℃にて72時間培養した。
【実施例3】
【0039】
[キメラ酵素による脂肪酸の不飽和化酵素処理]
【実施例3】
【0040】
<キメラ酵素の調製と脂肪酸酵素処理>
キメラ酵素液をキメラ酵素遺伝子導入酵母の培養液の形で調製し、脂肪酸の酵素処理を行った:酵母へのキメラ酵素遺伝子導入後、得られたコロニーを3mLの2%のラフィノースを含むウラシル欠乏CMD液体培地で30℃にて48時間振盪培養し、飽和菌液を作製した。続いて、脂肪酸添加による活性測定の実験を行った。まず、導入したキメラ酵素遺伝子を発現させるための発現誘導培地(1%ラフィノース及び2%ガラクトースを含むウラシル欠乏CMD液体)を作製し、それぞれ3mLずつL字型試験管に分注した後、不飽和化酵素の基質として、α-リノレン酸(ALA;18:3n-3)、ドコサペンタエン酸(DPA;22:5n-3)、エイコサテトラエン酸(ETA;20:4n-3)、エイコサトリエン酸ETA;20:3n-3))が0.5mMとなるように加えた。
【実施例3】
【0041】
続いて、上述の飽和菌液をそれぞれ300μLずつ各培地に加え、30 ℃にて48時間振盪培養した。培養後の菌液を15mLの遠沈管に移し、4℃、500×gにて2分間遠心した。培養液を捨て、得られた酵母のペレットに5mLの氷冷したハンクス平衡塩溶液を加え、ボルテックスで再懸濁した後、上述の遠心条件にて2回洗浄した。洗浄後のペレットは分析開始まで-80℃にて保存した。
【実施例3】
【0042】
<ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸分析>
上記酵素処理した脂肪酸について、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸分析を行った:
酵母のペレットを凍結乾燥した後、脂肪酸メチル化キット(ナカライテスク株式会社,京都)を用いて添付のプロトコールに従い全脂肪酸をメチル化した。得られたメチル化脂肪酸を、メチル化脂肪酸精製キット(ナカライテスク株式会社)を用いて精製し、後述の分析に用いた。脂肪酸分析は、汎用シリカキャピラリーカラム(SUPELCOWAX 10TM, 30 m×I.D. 0.32 mm, df 0.25 μm, Supelco Analytical)を装着したガスクロマトグラフィー(GC-2025,株式会社島津製作所,京都)により行った。キャリアガスにはヘリウムを用い、線速度を30 cm/secに設定した。カラムは初期温度を170 ℃とし、分析開始から1分あたり2℃ずつ昇温させ、最終温度を260℃とした。インジェクションポート、検出器の温度は、ともに260℃とした。脂肪酸メチルエステルのピークはQualmix Fish S, Eicosatetraenoic acid methyl ester, Tetracosapentaenoic acid methyl ester, Tetracosahexaenoic acid methyl ester (Larodan Fine Chemicals, Malmo, Sweden)のピークを参考に同定した。基質から不飽和化された代謝産物の割合、転換効率(%)は[産物のピーク面積×100÷(産物のピーク面積+基質のピーク面積)]により計算した。
【実施例3】
【0043】
<結果>
上記キメラ脂肪酸不飽和化酵素で酵素処理した脂肪酸のガスクロマトグラフィーによる脂肪酸分析の結果を表5に示す。なお、本発明の脂肪酸不飽和化酵素はΔ8脂肪酸不飽和化酵素活性も有し、表5には、Δ4、Δ5、Δ6、Δ8脂肪酸不飽和化酵素の転換効率(%)を、表6には、平均転換効率(%)を示す。
【実施例3】
【0044】
【表5】
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【実施例3】
【0045】
【表6】
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【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、Δ4、Δ5及びΔ6脂肪酸不飽和化酵素活性を持つ脂肪酸不飽和化酵素を取得する方法を提供し、該脂肪酸不飽和化酵素を用いることにより、植物由来の脂肪酸からエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)のような不飽和脂肪酸を合成する方法を提供する。
図面
【図1】
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