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明細書 :横転危険警告装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-169453 (P2015-169453A)
公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
発明の名称または考案の名称 横転危険警告装置
国際特許分類 G01M   1/12        (2006.01)
FI G01M 1/12
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2014-042314 (P2014-042314)
出願日 平成26年3月5日(2014.3.5)
発明者または考案者 【氏名】渡邉 豊
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査請求 未請求
テーマコード 2G021
Fターム 2G021AA03
2G021AB10
2G021AC01
2G021AC10
2G021AC11
要約 【課題】曲路半径の事前入力を必要とすることなく、走行中にリアルタイムに車両が横転の危険性を報知することができる横転危険警告装置を提供する。
【解決手段】車体の上下方向に加わる外力を検出する第1の加速度センサ11と、車体の車軸6を中心とした回転を検出する角速度センサ12と、車体の左右方向に加わる外力を検出する左右方向物理量検出手段である第2の加速度センサ13とを備え、演算部21は、第1の加速度センサ11及び角速度センサ12の検出結果を用いて、車両1が横転に至ってしまう限界指標を算出すると共に、第2の加速度センサ13の検出結果を用いて、限界指標と対比する対比指標をリアルタイムに算出し、限界指標と対比指標とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知部24から出力させる。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
車体の車軸を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体によって支持されている車両に設置され、前記車両が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、
前記車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段と、
前記車体の前記車軸を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段と、
前記上下方向物理量検出手段及び前記回転方向物理量検出手段の検出結果を用いて、
前記車両が横転に至ってしまう限界指標を算出する限界指標演算手段と、
前記車体の左右方向に加わる外力を検出する左右方向物理量検出手段と、
前記左右方向物理量検出手段の検出結果を用いて、前記限界指標と対比する対比指標をリアルタイムに算出するリアルタイム指標演算手段と、
前記限界指標と前記対比指標とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知手段とを具備することを特徴とする横転危険警告装置。
【請求項2】
前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体の復原力を超える前記車体の左右方向に加わる外力を示す復原力喪失横転限界外力を前記限界指標として算出することを特徴とする請求項1記載の横転危険警告装置。
【請求項3】
前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体の復原力を超える外力が左右方向に働き、前記車両が左右方向に横転に至ってしまう際の前記車体の角度を示す復原力喪失横転限界角度を前記限界指標として算出することを特徴とする請求項1記載の横転危険警告装置。
【請求項4】
前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体による復原力が十分であっても、前記車両が幾何学構造上横転に至ってしまう左右方向に加わる外力を示す幾何学構造上横転限界外力を前記限界指標として算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の横転危険警告装置。
【請求項5】
車体の車軸を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体によって支持されている車両に設置され、前記車両が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、
前記車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段と、
前記車体の前記車軸を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段と、
前記上下方向物理量検出手段及び前記回転方向物理量検出手段の検出結果を用いて、
前記車両が横転に至ってしまう走行速度とステアリング角度との組み合わせを限界条件として算出する限界条件演算手段と、
前記車両から前記走行速度と前記ステアリング角度とのいずれかもしくは両方を走行情報としてリアルタイムで受信する走行情報受信手段と、
前記限界条件と前記走行情報とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知手段とを具備することを特徴とする横転危険警告装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が横転する危険性を報知する横転危険警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1によって、三次元重心検知理論によって構造体が横転してしまう限界の重心高さを横転限界高さとして算出することで、算出した横転限界高さに基づいて、重量や重量分布が事前に明らかになっていない構造体の横転の危険性を判断する技術を提案している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】WO2008/062867号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体である各種列車、各種貨物自動車、各種バス、各種乗用車等の車両の横転防止に三次元重心検知理論を用いた特許文献1の技術を役立てる場合に、最大の課題であったのが、道路や鉄路の曲路半径が事前に分かっていなければならない点である。特許文献1に限らず従来の横転限界速度式には曲路半径の事前入力が不可欠である。特に、一般の自動車走行の場合は、運転者が自身の走行する曲路の半径を事前に知ることは困難であると共に、交差点の右左折や車線変更時のハンドルさばきは任意となるので、それによって生じる曲路走行とその半径は、もはや事前に調べようがない。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来技術の問題を解決し、曲路半径の事前入力を必要とすることなく、走行中にリアルタイムに車両が横転の危険性を報知することができる横転危険警告装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の横転危険警告装置は、車体の車軸を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体によって支持されている車両に設置され、前記車両が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、前記車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段と、前記車体の前記車軸を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段と、前記上下方向物理量検出手段及び前記回転方向物理量検出手段の検出結果を用いて、前記車両が横転に至ってしまう限界指標を算出する限界指標演算手段と、前記車体の左右方向に加わる外力を検出する左右方向物理量検出手段と、前記左右方向物理量検出手段の検出結果を用いて、前記限界指標と対比する対比指標をリアルタイムに算出するリアルタイム指標演算手段と、前記限界指標と前記対比指標とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知手段とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の横転危険警告装置において、前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体の復原力を超える前記車体の左右方向に加わる外力を示す復原力喪失横転限界外力を前記限界指標として算出しても良い。
さらに、本発明の横転危険警告装置において、前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体の復原力を超える外力が左右方向に働き、前記車両が左右方向に横転に至ってしまう際の前記車体の角度を示す復原力喪失横転限界角度を前記限界指標として算出しても良い。
さらに、本発明の横転危険警告装置において、前記限界指標演算手段は、前記ばね構造体による復原力が十分であっても、前記車両が幾何学構造上横転に至ってしまう左右方向に加わる外力を示す幾何学構造上横転限界外力を前記限界指標として算出しても良い。
また、本発明の横転危険警告装置において、車体の車軸を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体によって支持されている車両に設置され、前記車両が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、前記車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段と、前記車体の前記車軸を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段と、前記上下方向物理量検出手段及び前記回転方向物理量検出手段の検出結果を用いて、前記車両が横転に至ってしまう走行速度とステアリング角度との組み合わせを限界条件として算出する限界条件演算手段と、前記車両から前記走行速度と前記ステアリング角度とのいずれかもしくは両方を走行情報としてリアルタイムで受信する走行情報受信手段と、前記限界条件と前記走行情報とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、曲路半径の事前入力を必要とすることなく、車両に設けた検出手段の検出結果に基づいてリアルタイムに車両が横転の危険性を報知することができ、横転を未然に防止することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る横転危険警告装置の第1の実施の形態が搭載された車両の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る横転危険警告装置の第1の実施の形態が搭載された車両の構成を示す背面図である。
【図3】本発明に係る横転危険警告装置の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図4】復原力喪失による横転限界を説明するための説明図である。
【図5】本発明に係る横転危険警告装置の第1の実施の形態における横転危険警告情報の出力例を示す図である。
【図6】幾何学構造上の横転限界を説明するための説明図である。
【図7】本発明に係る横転危険警告装置の第2の実施の形態における横転危険警告情報の出力例を示す図である。
【図8】本発明に係る横転危険警告装置の第2の実施の形態における幾何学構造上横転限界外力の算出方法を説明するためのグラフである。
【図9】本発明に係る横転危険警告装置の第3の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図10】車両が曲路走行時の回頭運動を説明する説明図である。
【図11】本発明に係る横転危険警告装置の第3の実施の形態における横転危険警告情報の出力例を示す図である。
【図12】本発明に係る横転危険警告装置の第4の実施の形態における外力検出器の船舶への搭載例を示す図である。
【図13】本発明に係る横転危険警告装置の第4の実施の形態が搭載された浮体構造物である船舶が大傾斜に至る場合でのメタセンタM、重心G、浮心B、動揺中心軸O及びGZの関係を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。

【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の横転危険警告装置は、図1を参照すると、移動体である各種列車、各種貨物自動車、各種バス、各種乗用車等の車両1に搭載され、車両1に加わる外力を検出する外力検出器10と、外力検出器10によって検出された外力に基づいて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を生成するデータ処理装置20とを備えている。

【0011】
車両1は、図1及び図2を参照すると、荷物が積載される荷台2を備えたトラックであり、車両1の質量(荷物の荷重の含む)とがタイヤ3とサスペンション4とからなる緩衝用弾性力に支えられ、路面30から一定の高さで中立する。そして、車両1が走行すると、タイヤ3が路面30の凹凸を踏み続けることにより、ランダムな外乱がタイヤ3及びサスペンション4を通して車両1の荷台2に伝わる。なお、図1及び図2に示すように、荷台2の載置平面に対して垂直な方向を上下方向、車両1の縦幅方向を前後方向、車両1の横幅方向を左右方向とする。また、重力が作用する自重方向をZ軸方向、Z軸方向及び前後方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及び左右方向と直交する方向をY軸方向とし、荷台2が水平な状態では、上下方向とZ軸方向とが、前後方向とY軸方向とが、左右方向とX軸方向とがそれぞれ一致する。

【0012】
タイヤ3とサスペンション4とからなる左右の緩衝用弾性力は、荷台2の左右中央に位置し、前後方向に延びる車軸6に対して線対称に配置されている。従って、荷台2は車軸6を挟んだ両側をほぼ同じ弾性力で支持され、外乱がタイヤ3及びサスペンション4を通して車両1の荷台2に伝わると、車軸6を揺動中心軸とした回転方向の横揺れ(揺動)と、上下方向の縦揺れ(揺動)とが可能な状態となる。

【0013】
外力検出器10は荷台2の左右方向の中央に設置され、データ処理装置20は運転席5に設置されている。なお、外力検出器10の設置個所は、弾性力によって支持された車両1の車体であれば荷台2に限定されることない。また、また、コンテナシャーシとトラクタとが切り離し可能に構成されているトレーラトラックの場合には、トラクタに外力検出器10を設置するように構成しても良い。

【0014】
外力検出器10は、図3を参照すると、第1加速度センサ11と、角速度センサ12と、第2の加速度センサ13と、A/D変換器14とを備えている。第1の加速度センサ11は、上下(自重)方向(図1及び図2に示すZ軸方向)の加速度、すなわち荷台2の上下方向の縦揺れ(揺動)を検出するように感度軸が調整されている。角速度センサ12は、車軸6を中心とした回転方向の角速度を検出するように感度軸が調整されている。以下、車軸6を中心とした回転方向をロール方向と称す。第2の加速度センサ13は、左右方向(図2に示すX軸方向)の加速度、すなわち荷台2に加わる左右方向の外力を検出するように感度軸が調整されている。また、第1加速度センサ11、角速度センサ12及び第2の加速度センサ13には、特に限定はなく、例えば水晶音叉式のセンサや振動式のセンサを用いることができ、第1加速度センサ11、角速度センサ12及び第2の加速度センサ13として3軸(3次元)の加速度/角速度センサを用いても良い。A/D変換器14は、第1加速度センサ11、角速度センサ12及び第2の加速度センサ13から出力されるアナログ信号(検出結果)をデジタル信号に変換してデータ処理装置20に出力する。さらに、第2の加速度センサ13の代わりに、ヨー(yaw)角速度を検出する角速度センサを水平に設置し、その検出結果に三角関数を用いて左右方向の加速度を求めるように構成しても良い。

【0015】
データ処理装置20は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、外力検出装置10によって検出された検出結果に基づいて、横転危険警告情報を生成する。

【0016】
データ処理装置20は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、図3を参照すると、マイクロプロセッサ等からなる演算部21と、ROM(リードオンリーメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)等からなる記憶部22と、キーボード等の操作部23と、液晶ディスプレイやスピーカ等の報知部24と、受信部25とを備え、各部はバス26によって接続されている。

【0017】
記憶部22には、横転危険警告情報を生成するための演算プログラムや、当該演算に必要な各種の入力用の定数が記憶されている。演算部21は、一定期間、外力検出器10から出力を記憶部22に記憶させ、記憶部22に記憶されている演算プログラムに従って横転危険警告情報を生成し、生成した横転危険警告情報を報知部24から出力する。

【0018】
次に、横転危険警告情報の生成方法について詳細に説明する。
車両1を走行させると、車両1の車体は、図4(a)に示すように、タイヤ3とサスペンション4とからなる緩衝用弾性力、車両1の緩衝用弾性力(タイヤ3、サスペンション4)によって支えられて揺動する車体の重量(荷物等を含む)及びその重心位置Wに依存する固有の周期(周波数)を持つ運動に基づいて揺動(固有振動)する。この運動は、車軸6によって左右方向(X軸方向)の動きが規制された状態で行われる。従って、第1の加速度センサ11によって、車体の重心Wの上下方向の往復運動が上下方向の縦揺れ(揺動)として検出されると共に、角速度センサ12によって、車体の重心Wの車軸6を中心とした単振子運動が回転方向の横揺れ(揺動)として検出される。

【0019】
第1の加速度センサ11の検出結果(上下方向の加速度)と、角速度センサ12の検出結果(ロール方向の角速度)とは、データ処理装置20に入力され、一定期間の検出結果を記憶部22に記憶させる。そして、データ処理装置20の演算部21は、記憶部22に記憶した第1の加速度センサ11の検出結果(上下方向の加速度)から上下方向の縦揺れ(揺動)の縦揺れ周波数「v’」を求めると共に、記憶部22に記憶した角速度センサ12の検出結果(ロール方向の角速度)からロール方向の横揺れ(揺動)の横揺れ周波数「V’」をそれぞれ求める。また、演算部21は、角速度センサ12の検出結果(ロール方向の角速度)から車軸6を通る垂直中心ラインと、横揺れの中心を示す横揺れ中心ラインとの間の角度を揺動の中心角度「α」として求める。

【0020】
なお、揺動の中心角度「α」は、静止状態における水平面に対する車体(荷台2)のロール方向の傾斜角「α」(以下、静止状態の傾斜角「α」と称す)である。従って、傾斜角センサ等の静止状態での車体(荷台2)の角度を測定するセンサを車体(荷台2)に取り付け、静止状態の傾斜角「α」を測定するようにしても良い。また、手間が必要になるが、水準器等を用いて静止状態の傾斜角「α」を目視し、操作部23から入力設定することも可能である。さらに、車体(荷台2)の角度を測定できるジャイロ等の測定手段を設け、静止状態の傾斜角「α」を測定したり、測定結果から揺動の中心角度「α」を求めるようにしたりしても良い。さらに、本出願人がPCT/JP2010/007060号によって提案して傾斜角演算装置によって傾斜角「α」を求めるようにしても良い。さらにまた、車両1が各種列車、各種バス、各種乗用車等であり、積載状態による車体の傾きが少ない想定される場合には、静止状態の傾斜角「α」=0として定数化しても良い。

【0021】
次に、演算部21は、求めた縦揺れ周波数「v’」に基づいて、車両1が左右方向に横転に至る重心高さの限界を示す横転限界高さ「Lmax」を算出すると共に、求めた縦揺れ周波数「v’」、横揺れ周波数「V’」及び中心角度「α」に基づいて、車体の重心Wは車軸6上にあるものとし、車軸6から車体の重心Wまでの上下方向の重心高さ「L」を算出する。なお、横転限界高さ「Lmax」は、車両1の重心が横転限界高さ「Lmax」以上に位置する場合には、車両1が横転してしまう高さである。また、横転、転倒、転覆等の表現は、物体の重心が安定を保てず回転運動を進行させて、重力方向に抗すすべなく落下や崩落してゆく同義語とみなす。以下、本実施の形態では、この現象の総称として、横転をその代表語として用いる。

【0022】
横転限界高さ「Lmax」及び重心高さ「l(スモールL)」は、本出願人がPCT/JP2012/081322号で提案した次式(〔数01〕及び〔数02〕)によって求めることができる。なお、重心高さ「l」と、重心Wの左右方向へのずれ「s」と、揺動中心軸である車軸6と重心Wを結んだ直線の長さ「L’」との関係は、L’=l+sとなる。

【0023】
【数01】
JP2015169453A_000003t.gif

【0024】
【数02】
JP2015169453A_000004t.gif

【0025】
なお、〔数01〕において、「π」は円周率、「g」は重力加速度、「b」は車軸6を挟んだ左右の弾性力(ダイヤ3及びサスペンション4)の間隔である。また、〔数02〕において、二次係数、一次係数及び定数項は、求めた縦揺れ周波数「v’」、横揺れ周波数「V’」及び中心角度「α」を用いて特定することができる。従って、演算部21では、求めた縦揺れ周波数「v’」、横揺れ周波数「V’」及び中心角度αを用いて〔数02〕を演算することで重心高さ「l」が算出される。

【0026】
なお、本出願人が特願2013-220098号で示したように、左右方向に重心位置がずれている状態に対して、復原力が同じ状態となる重心が左右中心にある重心高さが存在する。従って、横転に対する危険度も両者は同値となる。

【0027】
〔数02〕と復原力が等しい(v’とV’の両者が〔数02〕と同値)、重心が左右方向にずれていない図4(b)に示すような状態(s=0)を考え、その時の重心高さを「L」と置くと、〔数02〕は次式のように書き換えられる。

【0028】
【数03】
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【0029】
〔数03〕は復原力が〔数02〕と同値であるから、横転限界も等しい。したがって、v’とV’が得られたら、〔数03〕を用いることで横転限界を導き出す労力が軽減され、装置の低コスト化が図れる。具体的には静止状態の傾斜角「α」を求める必要がなくなるので、段落「0020」に示した各種構成を除外することができる。

【0030】
次に、演算部21は、求めた横転限界高さ「Lmax」と、求めた重心高さ「L」とに基づいて、左右の弾性力(ダイヤ3及びサスペンション4)による復原力を喪失して車両1が左右方向に横転に至るロール方向の限界の角度(以下、復原力喪失横転限界角度「θmax」と称す)を限界指標として算出する。以下、復原力喪失横転限界角度「θmax」の算出方法について説明する。

【0031】
車両1が直進中に横転しない状態では、横転限界高さ「Lmax」は重心高さ「L」より必ず高い位置にある。つまり、この移動体を横転させるためには、重心高さ「L」を横転限界高さ「Lmax」まで持ち上げるに等しい位置エネルギーが必要である。また、車両1を何らかの力により横方向(ロール方向)に傾斜(回転)させてゆくと、ロール方向のある限界の角度(復原力喪失横転限界角度「θmax」)に達したところで、復原力を喪失して横転する。これは、車両1を左右から支える弾性エネルギーである。従って、車両1が転倒に至る位置エネルギーと弾性エネルギーとの関係は次式で表すことができる。

【0032】
【数04】
JP2015169453A_000006t.gif

【0033】
なお、〔数04〕において、「m」は車両1の緩衝用弾性力(タイヤ3、サスペンション4)によって支えられて揺動する車体の重量(荷物等を含む)、「k」は左右の弾性力(ダイヤ3及びサスペンション4)のそれぞれのバネ定数である。

【0034】
ここで、k/m=2πv’で表すことができるため、〔数04〕は次式に変形することができる。

【0035】
【数05】
JP2015169453A_000007t.gif

【0036】
さらに、〔数01〕を用いて〔数05〕を変形すると、次式を得ることができる。

【0037】
【数06】
JP2015169453A_000008t.gif

【0038】
〔数06〕によると、復原力喪失横転限界角度「θmax」が横転限界高さ「Lmax」と重心高さ「L」とを用いて算出可能であることが分かる。なお、横転限界高さ「Lmax」及び重心高さ「L」、そして復原力喪失横転限界角度「θmax」は、車体の状況に変化がない場合には、理論的に不変である。従って、第1の加速度センサ11及び角速度センサ12による検出、揺れ周波数「v’」及び横揺れ周波数「V’」の演算、横転限界高さ「Lmax」及び重心高さ「L」の演算、そして復原力喪失横転限界角度「θmax」の演算は、リアルタイムで行う必要はなく、車両1の走行開始時や所定間隔毎に行えば良い。

【0039】
次に、演算部21は、リアルタイムで検出される第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)に基づいて車両1のロール方向の傾斜角(以下、ロール傾斜角「θ」と称す)を、限界指標である復原力喪失横転限界角度「θmax」と対比する対比指標として算出し、求めた復原力喪失横転限界角度「θmax」と共に横転危険警告情報として報知部24から出力する。以下、ロール傾斜角を「θ」算出方法について説明する。

【0040】
力が横方向から車両1に加わると、車両1は傾斜(ロール方向に回転)を生じ、ロール回転モーメントと左右のばねによる復原力モーメントが対峙する。従って、図4(b)に示すように、車両1の重心Wの接戦方向に加わる力を「f」、車両1のロール傾斜角を「θ」とそれぞれして、定式化すると次式が得られる。

【0041】
【数07】
JP2015169453A_000009t.gif

【0042】
ここで、後述の式の展開をスムースにするため、外力の接線方向の成分「f」を重力「g」に対する比「q」用いて表すと、f=mqgcosθとなり、〔数07〕から外力「q」(単位:重力比)は、次式によって表すことができる。

【0043】
【数08】
JP2015169453A_000010t.gif

【0044】
ここで、k/m=2πv’で表すと共に、〔数01〕を用いて〔数08〕を変形すると、
次式が得られる。

【0045】
【数09】
JP2015169453A_000011t.gif

【0046】
〔数09〕によると、三次元重心検知理論によって横転限界高さ「Lmax」と重心高さ「L」とを求めることで、その後は横Gを計測するだけで、走行中の移動体である車両1のロール傾斜角「θ」をリアルタイムに求めることができる。演算部21は、リアルタイムで検出される第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)と、横転限界高さ「Lmax」と、重心高さ「L」とを用いて〔数09〕を演算することで、車両1のロール傾斜角「θ」をリアルタイムに算出する。

【0047】
次に、演算部21は、限界指標として〔数06〕を用いて演算した復原力喪失横転限界角度「θmax」と、対比指標として〔数09〕を用いて演算した車両1のロール傾斜角「θ」とを横転危険警告情報として報知部24から出力させ、運転手に通知する。図5には、復原力喪失横転限界角度「θmax」と、ロール傾斜角「θ」とメーター表示の出力例が示されている。第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)は、ステアリング角度及び車速によって変化し、車両1のロール傾斜角「θ」も、第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)に応じてリアルタイムに変化する。そして、ロール傾斜角「θ」の矢印が復原力喪失横転限界角度「θmax」の矢印に到達してしまうと、車両1を支えるばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)の復原力を超える外力が左右方向に働き、車両1が左右方向に横転に至ってしまうことを意味する。

【0048】
図5(a)には、ほぼ直線走行時の状態が示されており、ロール傾斜角「θ」の矢印はほぼゼロを示している。そして、図5(b)には、曲路走行時に車両1が横Gを受けている状態が示されており、ロール傾斜角「θ」の矢印が復原力喪失横転限界角度「θmax」の矢印に近づいていることが分かる。図5(a)、(b)のいずれの場合でもロール傾斜角「θ」の矢印は復原力喪失横転限界角度「θmax」の矢印に対して十分に離れた位置にあり、横転危険が無いことを、走行中にリアルタイムに確認できる。これにより、運転手は、リアルタイムで変化するロール傾斜角「θ」が復原力喪失横転限界角度「θmax」に到達しないように注意して運転することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0049】
なお、〔数09〕において、ロール傾斜角「θ」=復原力喪失横転限界角度「θmax」とし、〔数06〕を代入すると、左右の弾性力(ダイヤ3及びサスペンション4)による復原力を喪失して車両1が左右方向に横転に至る限界の外力(以下、復原力喪失横転限界外力「qmax」と称す)を限界指標として、次式によって求めることができる。

【0050】
【数10】
JP2015169453A_000012t.gif

【0051】
従って、第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)から重力「g」に対する比である外力「q」を対比指標として求め、限界指標である〔数10〕によって求めた復原力喪失横転限界外力「qmax」と、対比指標である外力「q」とを横転危険警告情報として報知部24から出力させ、運転手に通知するようにしても良い。この場合でも、走行中に外力「q」の変化をリアルタイムに確認でき、運転手は、リアルタイムで変化する外力「q」が復原力喪失横転限界外力「qmax」に到達しないように注意して運転することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0052】
なお、〔数09〕、〔数10〕におけるマイナスの符号は、外力の方向に対して、ばねによる復原力の方向は常に反対方向に働くという意味である。したがって、外力の大きさ自体を必要とする場合は、〔数09〕、〔数10〕の当該値は、その絶対値を用いれば良い。従って、図5は、この考え方に基づいて角度を絶対値で示してある。

【0053】
また、第1の実施の形態では、限界指標と対比指標とを横転危険警告情報として報知部24から出力させるように構成したが、限界指標と対比指標との比較結果を横転危険警告情報として報知部24から出力させたり、対比指標が限界指標に近づきすぎたことを知らせる警報を横転危険警告情報として報知部24から出力させたりしても良い。

【0054】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、車両1を支えるばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)の復原力を超える外力「f」が働いたときに横転が生じる横転現象を前提としている。第2の実施の形態の横転危険警告装置では、もう一つ別の横転現象を前提として横転危険警告情報を生成する。つまり、ばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)による復原力が十分であっても、図6に示すように、重心Wの位置と車両1の横転する側の縁(路面接点)とを結んだ直線を横転半径「r」として、重心Wは横転する。この横転現象を幾何学構造上の横転と称す。ここで、重心Wから下した垂線と当該横転半径「r」とがなす角「φ」は、次式で表される。なお、「h」は路面30から車軸6までの高さである。

【0055】
【数11】
JP2015169453A_000013t.gif

【0056】
このとき、外力が重心Wの軌跡の接線方向に、重心Wを横転させようとするモーメントが、横転と反対の方向へ重力「mg」が重心Wを絶えず抑えつけようとするモーメント以上になると幾何学構造上の横転が生じる。従って、幾何学構造上の横転限界の条件は次式で表すことができる。以下、幾何学構造上、車両1が左右方向に横転に至る限界の外力を幾何学構造上横転限界外力「qφmax」と称す。

【0057】
【数12】
JP2015169453A_000014t.gif

【0058】
よって、〔数12〕を成立させる「q」を見つけることによって、車両1の幾何学構造上の幾何学構造上横転限界外力「qφmax」は、次式で表すことができる。なお、「φmin」は、幾何学構造上横転限界外力「qφmax」となる「φ」の最小値である。

【0059】
【数13】
JP2015169453A_000015t.gif

【0060】
図6から明らかなように、「φmin」、「qφmax」の「θ」の関数である。つまり、「φ」は重心Wが左右中心にあるときに最大となり、車両1が幾何学構造上の横転限界に達した時に最小になる。それとは逆に、「θ」は車両1が幾何学構造上の横転限界に達した時に最大になる。そこで、〔数13〕に〔数11〕を代入し、さらに〔数09〕を代入すると、車両1の幾何学構造上横転限界外力「qφmax」は、次式で表される。

【0061】
【数14】
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【0062】
〔数14〕を成立させる「q」の値が「qφmax」となる。〔数14〕は、解析的に解きがたいが、公知の数値解析による方程式の解法を適用すれば、「qφmax」を得ることができる。つまり、演算部21によって、横転限界高さ「Lmax」と重心高さ「L」とを〔数14〕に代入して解き、車両1の幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を限界指標として算出する。第2の実施の形態では、演算部21は、第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)から重力「g」に対する比である外力「q」を対比指標として求め、限界指標である幾何学構造上横転限界外力「qφmax」と、対比指標である外力「q」とを横転危険警告情報として報知部24から出力させ、運転手に通知するように構成されている。これにより、走行中に外力「q」の変化をリアルタイムに確認でき、運転手は、リアルタイムで変化する外力「q」が車両1の幾何学構造上横転限界外力「qφmax」に到達しないように注意して運転することで、幾何学構造上の横転に対する危険性の度合いをリアルタイムに判断することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0063】
なお、第2の実施の形態では、限界指標と対比指標とを横転危険警告情報として報知部24から出力させるように構成したが、限界指標と対比指標との比較結果を横転危険警告情報として報知部24から出力させたり、対比指標が限界指標に近づきすぎたことを知らせる警報を横転危険警告情報として報知部24から出力させたりしても良い。

【0064】
第1及び第2の実施の形態の効果を実証するために、大型観光バスを車両1として用いて実証実験を行った。外力検出器10を車内床にセンサを設置して、データ処理装置20として機能するパソコンによって、外力「q」と、第1の実施の形態に示す復原力喪失横転限界外力「qmax」と、第2の実施形態に示す幾何学構造上横転限界外力「qφmax」とを横転危険警告情報として生成して表示させた。

【0065】
図7(a)は、実証実験を開始してほどなく直線走行時に三次元重心検知を完了(横転限界高さ「Lmax」及び重心高さ「L」の算出)させ、データ処理装置20として機能するパソコンによって、外力「q」、復原力喪失横転限界外力「qmax」及び幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を算出した出力例である。また、図7(b)は、曲路を進行して車両1が横Gを受けている最中に外力「q」を計測して、事前に直線走行中に3次元重心検知を完了させて得た「L」と「Lmax」を用いて、データ処理装置20として機能するパソコンによって、外力「q」、復原力喪失横転限界外力「qmax」及び幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を算出した出力列が示されている。

【0066】
図7(a)では、直線走行時であるので、外力「q」を示す矢印はほぼゼロを示している。また、復原力喪失横転限界外力「qmax」の矢印及び幾何学構造上横転限界外力「qφmax」の矢印に対して外力「q」を示す矢印は、十分に離れた位置にあり、横転危険がないことを、走行中にリアルタイムに確認できる。

【0067】
図7(b)では、曲路を進行して車両1が横Gを受けているため、外力「q」を示す矢印が明らかに上昇している。またこの場合でも、復原力喪失横転限界外力「qmax」の矢印及び幾何学構造上横転限界外力「qφmax」の矢印に対して外力「q」を示す矢印は、まだ十分に離れた位置にあり、横転危険がないことを、走行中にリアルタイムに確認できる。このように、本発明の横転危険警告情報を運転者がリアルタイムに知り得ることにより、例えば、積載状態不明の貨物輸送においても、適宜な安全運転が可能になる。

【0068】
図7(a)と図7(b)とを比較すると、復原力喪失横転限界外力「qmax」の矢印がほぼ不変であることが分かる。これは、復原力喪失横転限界外力「qmax」が〔数10〕に示した復原力エネルギーに基づく横転限界であることに起因する。車両1において、車体に異常なく積載量にも変化がなければ、復原力は走行中一定である。従って、復原力喪失横転限界外力「qmax」の算出はリアルタイムで行う必要はなく、車両1の走行開始時や所定間隔毎に行えば良い。

【0069】
図8に示すグラフは、実証実験の結果を用いて、〔数14〕に解が存在することを示したものである。図8では、横軸に「q」を取り、縦軸に〔数14〕の右辺に「q」を代入した結果を示したものである。図8の曲線が横軸(縦軸=0)と交わる位置の横軸の値、つまり、0.255付近が幾何学構造上横転限界外力「qφmax」の値である。

【0070】
以上説明したように、第1及び第2の実施の形態は、車体の車軸6を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体(タイヤ3、サスペンション4)によって支持されている車両1に設置され、前記車両1が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段である第1の加速度センサ11と、車体の車軸6を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段である角速度センサ12と、第1の加速度センサ11及び角速度センサ12の検出結果を用いて、車両1が横転に至ってしまう限界指標を算出する限界指標演算手段(演算部21)と、車体の左右方向に加わる外力を検出する左右方向物理量検出手段である第2の加速度センサ13と、第2の加速度センサ13の検出結果を用いて、限界指標と対比する対比指標をリアルタイムに算出するリアルタイム指標演算手段(演算部21)と、限界指標と対比指標とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知部24とを備えている。
この構成により、曲路半径の事前入力を必要とすることなく、車体に設けた第1の加速度センサ11、角速度センサ12及び第2の加速度センサ13の検出結果に基づいて走行中にリアルタイムに車両1が横転の危険性を報知することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0071】
また、第1の実施の形態では、限界指標演算手段(演算部21)は、ばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)の復原力を超える外力が左右方向に働き、車両1が左右方向に横転に至ってしまう際の車体の角度「θ」を示す復原力喪失横転限界角度「θmax」を限界指標として算出するように構成されている。
この構成により、運転手は、リアルタイムで変化するロール傾斜角「θ」が復原力喪失横転限界角度「θmax」に到達しないように注意して運転することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0072】
また、第1の実施の形態では、限界指標演算手段(演算部21)は、ばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)の復原力を超える車体の左右方向に加わる外力「q」を示す復原力喪失横転限界外力「qmax」を限界指標として算出するように構成されている。
この構成により、運転手は、リアルタイムで変化する外力「q」が復原力喪失横転限界外力「qmax」に到達しないように注意して運転することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0073】
また、第2の実施の形態では、限界指標演算手段(演算部21)は、ばね構造体(タイヤ3、サスペンション4)による復原力が十分であっても、車両1が幾何学構造上横転に至ってしまう左右方向に加わる外力を示す幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を限界指標として算出するように構成されている。
この構成により、運転手は、リアルタイムで変化する外力「q」が車両1の幾何学構造上横転限界外力「qφmax」に到達しないように注意して運転することで、幾何学構造上の横転に対する危険性の度合いをリアルタイムに判断することができ、横転を未然に防止することが可能になる。さらに、〔数14〕から幾何学構造上横転限界外力「qφmax」が求まれば、〔数13〕により「φmin」が求まる。これも横転限界指標として用いることができる。第2の加速度センサ13から外力「q」を得れば〔数09〕からロール傾斜角「θ」が得られ、そして、それを〔数11〕に代入すれば重心Wから下した垂線と横転半径「r」とがなす角「φ」を導ける。「φmin」に対して「φ」をリアルタイムに監視することによって、運転手は積荷の積載状態に応じた横転限界と横転危険性を確認できる。

【0074】
(第3の実施の形態)
第1及び第2の実施の形態では、第2の加速度センサ13の検出結果(左右方向の加速度)に基づいて車両1のロール傾斜角「θ」や外力「q」をリアルタイムに算出することで、運転手に横転危険度を認識させるように構成した。これに対し、第3の実施の形態では、図9に示すように、データ処理装置20aの受信部25aによって、車両1から走行速度「V」と水平方向偏向角「β」(ステアリング角度)のいずれかもしくは両方の値を走行情報としてリアルタイムに受信する。そしてデータ処理装置20aの演算部21aは、車両1が横転に至ってしまう走行速度「V」と水平方向偏向角「β」(ステアリング角度)との組み合わせを限界条件として算出し、当該限界条件と受信した走行情報とを横転危険警告情報として報知部24から出力する。

【0075】
限界条件の算出方法について説明する。
図10に示すように、車両1が曲路走行時のコーナリング中に水平方向に一定角度で回頭運動をしているとする。車両1が鉄道や自動車であれば、水平方向偏向角「β」は、車両1が横滑りを生じない限りステアリング角度(自動車の場合では、直進方向に対しタイヤ3が向く角度)と等しい。ここで、車両1に対して水平方向(横方向)に働く遠心力を「fβ」、車両1の前後車軸間のホイルベースを「H」、車両1の走行円の半径を「R」とそれぞれすると、図4と等速円運動の公式とから、走行速度「V」と、外力「q」との関係は、次式によって表される。

【0076】
【数15】
JP2015169453A_000017t.gif

【0077】
ここで、図10からR=H/2sinβであるため、水平方向偏向角「β」と、走行速度「V」と、外力「q」との関係は、次式によって表される。

【0078】
【数16】
JP2015169453A_000018t.gif

【0079】
重力加速度「g」とホイルベース「H」とは定数であるため、〔数16〕に復原力喪失横転限界外力「qmax」を代入することで、横転に至る水平方向偏向角「β」と走行速度「V」との関係が次式で表される。

【0080】
【数17】
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【0081】
すなわち、〔数17〕は走行速度「V」と水平方向偏向角「β」との横転限界の関係式であり、車両1が横転に至ってしまう走行速度「V」と水平方向偏向角「β」(ステアリング角度)との組み合わせを示す限界条件である。〔数17〕において走行速度「V」が決まると、横転に至る限界の水平方向偏向角「βmax」が、水平方向偏向角「β」が決まると、横転に至る限界の走行速度「Vmax」がそれぞれ決定されることになる。

【0082】
演算部21aは、図11に示すように、限界条件である〔数17〕と車両1から受信した走行情報とをプロットしたグラフを横転危険警告情報として生成し、報知部24から出力する。図11において、横軸は水平方向偏向角「β」であり、縦軸は走行速度「V」である。図11に示されるとおり、〔数17〕は走行速度「V」の上昇とともに、水平方向偏向角「β」の範囲(安全なハンドルさばき範囲)が急速に減少する。そして、走行速度「V」が速くなると、わずかなハンドルさばきでも、すぐに横転につながることが分かる。これは、横転事故を起こしたドライバーの証言とも一致する。

【0083】
図11(a)は、車両1から走行速度「V」を走行情報として受信した場合の出力例である。受信した走行速度「V」を示す横ラインXがグラフに表示され、横ラインXと〔数17〕との交点によって横転に至る限界の水平方向偏向角「βmax」が運転者に通知される。また、図11(b)は、車両1から水平方向偏向角「β」を走行情報として受信した場合の出力例である。受信した水平方向偏向角「β」を示す縦ラインYがグラフに表示され、縦ラインYと〔数17〕との交点によって横転に至る限界の走行速度「Vmax」が運転者に通知される。

【0084】
さらに、図11(c)は、車両1から走行速度「V」及び水平方向偏向角「β」を走行情報として受信した場合の出力例である。受信した走行速度「V」を示す横ラインXと受信した水平方向偏向角「β」を示す縦ラインYとがグラフに表示され、横ラインXと〔数17〕との交点によって横転に至る限界の水平方向偏向角「βmax」が運転者に通知されると共に、縦ラインYと〔数17〕との交点によって横転に至る限界の走行速度「Vmax」が運転者に通知される。従って、運転手は、現在の走行速度「V」と限界の走行速度「Vmax」とを比較することができると共に、水平方向偏向角「β」と限界の水平方向偏向角「βmax」とを比較することができ、横転危険度を確実に判断することができる。例えば、図11(c)に示す状態では、アクセルを踏み込んで走行速度「V」を上昇させたり、よりハンドルを回して水平方向偏向角「β」を大きくしたりすると、横転してしまうことを理解され、横転を未然に防止することが可能になる。

【0085】
なお、第3の実施形態では、〔数16〕に復原力喪失横転限界外力「qmax」を代入することで、横転に至る水平方向偏向角「β」と走行速度「V」との関係式を求めるように構成したが、〔数16〕に幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を代入して横転に至る水平方向偏向角「β」と走行速度「V」との関係式を求めても良い。また、〔数16〕に復原力喪失横転限界外力「qmax」を代入した関係式と、〔数16〕に幾何学構造上横転限界外力「qφmax」を代入した関係式とを共に求めても良い。

【0086】
また、第3の実施の形態では、限界条件と走行情報とを横転危険警告情報として報知部24から出力させるように構成したが、限界条件と走行情報との比較結果を横転危険警告情報として報知部24から出力させたり、走行情報が限界条件に近づきすぎたことを知らせる警報を横転危険警告情報として報知部24から出力させたりしても良い。

【0087】
以上説明したように、第3の実施の形態は、車体の車軸6を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体(タイヤ3、サスペンション4)によって支持されている車両1に設置され、前記車両1が横転する危険性を報知する横転危険警告装置であって、車体の上下方向に加わる外力を検出する上下方向物理量検出手段である第1の加速度センサ11と、車体の車軸6を中心とした回転を検出する回転方向物理量検出手段である角速度センサ12と、第1の加速度センサ11及び角速度センサ12の検出結果を用いて、車両1が横転に至ってしまう走行速度「V」と水平方向偏向角「β」(ステアリング角度)との組み合わせを限界条件として算出する限界条件演算手段(演算部21)と、車両1から走行速度「V」と水平方向偏向角「β」(ステアリング角度)とのいずれかもしくは両方を走行情報としてリアルタイムで受信する走行情報受信手段(受信部25)と、限界条件と走行情報とを用いて横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を報知する報知部24とを備えている。
この構成により、運転手は、リアルタイムで変化する走行情報が限界条件に到達しないように注意して運転することで、横転に対する危険性の度合いをリアルタイムに判断することができ、横転を未然に防止することが可能になる。

【0088】
(第4の実施の形態)
第1乃至第3の実施の形態の横転危険警告装置は、車体の車軸6を挟んだ左右方向両側がそれぞればね構造体によって支持されている車両1の横転の危険性を知らせる横転危険警告情報を生成するような構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明が対象とする構造体は、左右方向から復原力を受ける構造の物体であれ良い。

【0089】
第4の実施の形態の横転危険警告装置は、第1の実施の形態と同様の外力検出器10と、データ処理装置20とを備えて、船等の浮体構造物に搭載され、船泊等の浮体構造物の転覆(横転)の危険性を知らせる横転危険警告情報を生成する。

【0090】
図12を参照すると、外力検出器10の船舶7に取り付けは、船舶7の中心線を基準にして行われる。なお、船舶7の中心線は、船舶7の重心Gが位置する前後方向の仮想軸である。第1の加速度センサ11は、船舶7の上下方向の縦揺れ(揺動)を検出するように感度軸が調整され、船舶7の上下方向の往復運動を検出する上下方向物理量検出手段として機能する。また、角速度センサ12は、船舶7の中心軸を中心としたロール方向の横揺れ(揺動)を検出するように感度軸が調整され、船舶の中心軸を中心としたロール方向の単振子運動を検出する回転方向物理量検出手段として機能する。第2の加速度センサ13は、左右方向(図12に示すX軸方向)の加速度、すなわち船舶7の中心軸に対して直交する左右方向の外力を検出するように感度軸が調整され、船舶7の左右方向に加わる外力を検出する左右方向物理量検出手段として機能する。

【0091】
本出願人がPCT/JP2013/063647号によって提案した転覆危険度算出システムによると、浮体構造物である船舶7が大傾斜に至る場合でのメタセンタM、重心G、浮心B、動揺中心軸O及びGZの関係は、図13に示すようになる。なお、図13において、(a)の船舶7は横揺れ傾斜角がゼロの状態を、(b)の船舶7は横揺れ傾斜角θで傾斜した状態を、(c)の船舶7は横揺れ傾斜角θmaxでさらに傾斜した状態をそれぞれ示している。

【0092】
図13によると、水面上に浮かぶ船舶7等の浮体構造物は、左右の揺動の中央に位置するときに復原力が最も高くなり、横方向にずれてゆくほど復原力を失い、横揺れ傾斜角θmaxになった時にすべての復原力が失われる。換言すると、左右の揺動の中央から船体が横揺れ傾斜角θmaxになるまで水平移動するエネルギーは、船舶7の重心を動揺半径「L」から転覆限界動揺半径「Lmax」までまで持ち上げる位置エネルギーに等しいことになる。ここで、「x」を左右の揺動の中央から船舶7が移動した水平距離とする。船舶7が横風や横波を受けたり、舵を切り回頭運動に入ったりすると、船舶7には横加速度(横G)がかかる。これを図12に示す「q」(重力比)で表すと、船体の水平方向の移動エネルギー「mqgx」となる。また、船舶7が動揺半径「L」に対して角度を「θ」だけ変化させる回転運動エネルギーは、例えば浮力から受ける水平方向への復原モーメントを角度で積分することによって得られる次式となる。ここで、「V’」は、重心の左右の揺動の固有周波数(ロール周波数)である。

【0093】
【数18】
JP2015169453A_000020t.gif

【0094】
この回転運動エネルギーと水平方向の移動エネルギーとは等しいため、次式が得られる。

【0095】
【数19】
JP2015169453A_000021t.gif

【0096】
ここで、図13からtanθ=x/Lであるため、〔数18〕から次式が得られ、第2の加速度センサ13により左右方向の外力である「q」が得られれば、「θ」も得られることになる。

【0097】
【数20】
JP2015169453A_000022t.gif

【0098】
ここで、「θ」=「θmax」のとき、「q」=「qmax」(転覆に至る左右方向の外力)であるため、〔数20〕から次式が得られる。

【0099】
【数21】
JP2015169453A_000023t.gif

【0100】
さらに、図13から「tanθmax」=「b/2L」であるため、〔数21〕から次式が得られる。

【0101】
【数22】
JP2015169453A_000024t.gif

【0102】
以上から、〔数22〕から「qmax」を求め、第2の加速度センサ13により左右方向の外力である「q」が得て常時両者を比較することで、船舶7への横風や横波あるいは操舵による回頭時の転覆危険性をリアルタイムに評価できる。また、〔数21〕から「θmax」を求めると共に、〔数21〕からリアルタイムに「θ」を得て、「θmax」と「θ」をかくして同様の評価を行っても良い。

【0103】
なお、PCT/JP2013/063647号でも、転覆危険性を論じているが、その方法は、波長=「2b」となるときの波高から想定される船体傾斜角について評価である。これに対して第4の実施の形態に示す本願発明では、横風による転覆や操舵回頭時の転覆危険性や、波長=「2b」とならない波長や波高の横波での転覆危険性をリアルタイムで判断することができる。

【0104】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0105】
1 車両
2 荷台
3 タイヤ
4 サスペンション
5 運転席
6 車軸
7 船舶
10 外力検出器
11 第1の加速度センサ
12 角速度センサ
13 第2の加速度センサ
14 A/D変換器
20、20a データ処理装置
21、21a 演算部
22 記憶部
23 操作部
24 報知部
25、25a 受信部
26 バス
30 路面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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