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明細書 :吸着機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-217433 (P2016-217433A)
公開日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発明の名称または考案の名称 吸着機構
国際特許分類 F16B  47/00        (2006.01)
FI F16B 47/00 S
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-101997 (P2015-101997)
出願日 平成27年5月19日(2015.5.19)
発明者または考案者 【氏名】高橋 智一
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
【識別番号】100138416、【弁理士】、【氏名又は名称】北田 明
審査請求 未請求
テーマコード 3J038
Fターム 3J038AA02
3J038CA03
3J038CA09
3J038CB10
要約 【課題】吸着力の向上を図ることができるとともに、対象物に付着している塵や油を吸引して各種トラブルが発生することを回避することができる設備適用性に優れた加圧式吸着機構を提供する。
【解決手段】対象物を吸着するための吸着体3を備え、吸着体3が、対象物1に当接する弾性変形可能な吸着膜と、吸着膜を変形させる加圧流体を供給する加圧流体供給手段4と、加圧流体供給手段4からの加圧流体によって吸着膜を変形させる吸着膜変形手段とを備え、吸着膜は、対象物1との当接状態において加圧流体供給手段4から吸着膜変形手段に加圧流体が供給されることにより対象物から離間する側へ変形され、該吸着膜の変形により対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成されて前記吸着体が対象物を吸着する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物を吸着するための吸着体を備え、
前記吸着体が、対象物に当接する弾性変形可能な吸着膜と、該吸着膜を変形させる加圧流体を供給する加圧流体供給手段と、該加圧流体供給手段から加圧流体が供給されることによって前記吸着膜を変形させる吸着膜変形手段とを備え、
前記吸着膜は、対象物との当接状態において前記加圧流体供給手段から前記吸着膜変形手段に加圧流体が供給されることにより対象物から離間する側へ変形され、該吸着膜の変形により対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成されて前記吸着体が対象物を吸着することを特徴とする吸着機構。
【請求項2】
前記吸着膜変形手段は、前記吸着膜の対象物との当接面とは反対側の面に一端が連結され、該吸着膜の外径よりも小さな外径を有し、かつ、軸方向及び径方向に弾性変形可能な筒状体と、前記加圧流体供給手段から加圧流体が前記筒状体の内部に供給された時、該筒状体を軸方向への伸縮を規制して径方向外側へ変形させることで、該筒状体の軸方向長さを短縮する筒状体変形手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の吸着機構。
【請求項3】
前記筒状体変形手段が、前記筒状体を挟むように対向して設けられ、該筒状体よりも軸方向の伸縮性の乏しい材料から構成された一対の板体を備えることを特徴とする請求項2に記載の吸着機構。
【請求項4】
前記筒状体変形手段が、前記筒状体の外面に周方向に間隔を置いて設けられ、該筒状体の軸方向に沿って延びるとともに該筒状体よりも軸方向の伸縮性の乏しい材料から構成された複数の線材を備えることを特徴とする請求項2に記載の吸着機構。
【請求項5】
前記筒状体変形手段が、前記筒状体に外嵌され、該筒状体よりも軸方向の伸縮性の乏しい繊維状の材料を編み込んで筒状にしたスリーブ部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の吸着機構。
【請求項6】
前記筒状体変形手段が、前記筒状体の外面に該筒状体の軸方向に沿って形成され、かつ、周方向に溝を介して並ぶように形成された複数の厚肉部を備えることを特徴とする請求項2に記載の吸着機構。
【請求項7】
前記吸着膜の外縁には、該吸着膜の当接面とは反対側の側方を覆うための側壁部を備え、該側壁部の内側面と前記筒状体の外側面との間に内部空間を形成し、前記吸着膜を対象物側へ突出変形させるよう、前記内部空間に加圧流体を供給する吸着膜復帰用加圧流体供給手段を備えることを特徴とする請求項2~6のうちのいずれか1項に記載の吸着機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を吸着するための吸着体を備えた吸着機構に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる吸着機構は、対象物を吸着する吸着ヘッドを備え、この吸着ヘッドは、排気ポンプにより減圧される一次減圧室を形成するための吸着ヘッド部と、一次減圧室を外部に連通させる連通孔が形成され吸着ヘッド部と共に一次減圧室を形成する吸着板と、この吸着板の吸着面側の外面に気密状態に固定される薄板状の弾性部材とを備えている。従って、弾性部材を対象物に当てた状態で、一次減圧室を排気ポンプで減圧することによって、弾性部材における吸着板の連通孔に対応する部分が一次減圧室側に変形する。これによって、弾性部材と対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間(二次減圧室)が形成されて吸着ヘッドが対象物を吸着する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平8-112794号公報(図4及び図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、生産現場では、排気ポンプ(真空ポンプ等)ではなく加圧エアを供給するコンプレッサが多く備えられている。
しかしながら、上記特許文献1の構成では、排気ポンプの設備が必要となり、設備適用性が低く、コスト高となる。しかも、上記構成では、一次減圧室の減圧は、絶対真空が限界なので、吸着力には限界がある。また、塵や油が付着している対象物を吸着している最中に、弾性部材が破れてしまうと、対象物に付着の塵や油を排気ポンプによって吸引して、ホースや配管の内部を汚してしまう、あるいは排気ポンプを故障させてしまう等のトラブルを発生してしまい、早期改善が要望されている。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、吸着力の向上を図ることができるとともに、対象物に付着している塵や油を吸引して各種トラブルが発生することを回避することができる設備適用性に優れた加圧式吸着機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸着機構は、前述の課題解決のために、対象物を吸着するための吸着体を備え、前記吸着体が、対象物に当接する弾性変形可能な吸着膜と、該吸着膜を変形させる加圧流体を供給する加圧流体供給手段と、該加圧流体供給手段から加圧流体が供給されることによって前記吸着膜を変形させる吸着膜変形手段とを備え、前記吸着膜は、対象物との当接状態において前記加圧流体供給手段から前記吸着膜変形手段に加圧流体が供給されることにより対象物から離間する側へ変形され、該吸着膜の変形により対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成されて前記吸着体が対象物を吸着することを特徴としている。
【0007】
上記構成のように、吸着体の吸着膜を対象物に当接させた当接状態において加圧流体供給手段から加圧流体を供給することによって、吸着膜が対象物から離間する側(吸着体の内部側)へ変形する。この変形により吸着膜と対象物との間に外部よりも減圧された密閉空間が形成される。この減圧された密閉空間が形成されることにより密閉空間と外部との間に圧力差が発生し、その圧力差で対象物を吸着体に吸着することができる。この場合、加圧流体供給手段から供給する加圧流体の量を多くすればするほど、吸着膜に作用する変形力が大きくなることから、大きな吸着力を得ることができる。また、塵や油が付着している対象物を吸着している最中に、吸着膜が破れても、加圧流体によって塵や油をまき散らすだけで、吸引することがない。
【0008】
また、本発明の吸着機構は、前記吸着膜変形手段が、前記吸着膜の対象物との当接面とは反対側の面に一端が連結され、該吸着膜の外径よりも小さな外径を有し、かつ、軸方向及び径方向に弾性変形可能な筒状体と、前記加圧流体供給手段から加圧流体が前記筒状体の内部に供給された時、該筒状体を軸方向への伸縮を規制して径方向外側へ変形させることで、該筒状体の軸方向長さを短縮する筒状体変形手段とを備えていてもよい。
【0009】
上記のように、加圧流体供給手段から加圧流体が前記筒状体の内部に供給された時、該筒状体を軸方向への伸縮を規制して径方向外側へ変形させることで、該筒状体の軸方向長さを短縮する筒状体変形手段を備えることによって、加圧流体供給手段からの加圧流体により筒状体の軸方向長さを確実に短縮させて、吸着膜を対象物から離間する側(吸着体の内部側)へ変形させることができる。
【0010】
また、本発明の吸着機構は、前記筒状体変形手段が、前記筒状体を挟むように対向して設けられ、該筒状体よりも軸方向での伸縮性の乏しい材料から構成された一対の板体を備えていてもよい。
【0011】
上記構成により、加圧流体供給手段によって筒状体の内部へ加圧流体を供給した際に、筒状体の軸方向への伸びを規制することができ、径方向外側への変形を促進することができるので、筒状体の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。
【0012】
また、本発明の吸着機構は、前記筒状体変形手段が、前記筒状体の外面に周方向に間隔を置いて設けられ、該筒状体の軸方向に沿って延びるとともに該筒状体よりも軸方向での伸縮性の乏しい材料から構成された複数の線材を備えていてもよい。
【0013】
上記構成により、加圧流体供給手段によって筒状体の内部へ加圧流体を供給した際に、筒状体の軸方向への伸びを規制することができ、径方向外側への変形を促進することができるので、筒状体の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。
【0014】
また、本発明の吸着機構は、前記筒状体変形手段が、前記筒状体に外嵌され、該筒状体よりも軸方向での伸縮性の乏しい繊維状の材料を編み込んで筒状にしたスリーブ部材を備えていてもよい。
【0015】
上記構成により、加圧流体供給手段によって筒状体の内部へ加圧流体を供給した際に、筒状体の軸方向への伸びを規制することができ、径方向外側への変形を促進することができるので、筒状体の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。
【0016】
また、本発明の吸着機構は、前記筒状体変形手段が、前記筒状体の外面に該筒状体の軸方向に沿って形成され、かつ、周方向に溝を介して並ぶように形成された複数の厚肉部を備えていてもよい。
【0017】
上記複数の厚肉部によって、筒状体の軸方向への伸びが規制され、径方向外側への変形が促進されるので、筒状体の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。
【0018】
また、本発明の吸着機構は、前記吸着膜の外縁には、該吸着膜の当接面とは反対側の側方を覆うための側壁部を備え、該側壁部の内側面と前記筒状体の外側面との間に内部空間を形成し、前記吸着膜を対象物側へ突出変形させるよう、前記内部空間に加圧流体を供給する吸着膜復帰用加圧流体供給手段を備えていてもよい。
【0019】
上記構成により、対象物との吸着を解除する場合に、側壁部の内側面と筒状体の外側面との間に吸着膜復帰用加圧流体供給手段から加圧流体を供給することによって、吸着膜を対象物側へ突出変形させることができるので、対象物との吸着を確実に解除することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加圧流体供給手段から加圧流体を供給して対象物を吸着する構成にすることによって、吸着力の向上を図ることができるとともに、対象物に付着している塵や油を吸引して各種トラブルが発生することを回避することができる設備適用性に優れた加圧式吸着機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の吸着機構を示す概略図である。
【図2】同吸着機構の要部を示す縦断面図である。
【図3】(a)は吸着体の斜視図、(b)は図3(a)におけるA-A線断面図、(c)は図3(b)の吸着体に加圧流体を供給した状態を示す断面図である。
【図4】(a)は、吸着体を下から見た底面図、(b)は膜の変位を示すグラフである。
【図5】(a)は他の吸着体の斜視図、(b)は図5(a)におけるB-B線断面図、(c)は図5(a)におけるC-C線断面図、(d)は図5(b)に加圧流体を供給した状態を示す断面図、(e)は図5(c)に加圧流体を供給した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は他の吸着体の斜視図、(b)は図6(a)におけるD-D線断面図、(c)は図6(b)に加圧流体を供給した状態を示す断面図である。
【図7】(a)は他の吸着体の斜視図、(b)は図7(a)におけるE-E線断面図、(c)は図7(b)に加圧流体を供給した状態を示す断面図である。
【図8】他の吸着機構を示す概略図である。
【図9】図8の吸着機構の要部を示す縦断面図である。
【図10】他の吸着機構を示す概略図である。
【図11】図10の吸着機構の要部を示す縦断面図である。
【図12】吸着体の寸法を設定するための説明図を示し、(a)は吸着体の横断平面図、(b)は吸着体の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、対象物1を吸着力で吸着するための吸着機構2を示している。この吸着機構2は、対象物を吸着するための複数(図1では4個)の吸着体3と、吸着体3に吸着力を発生させるために後述する吸着膜22(図2参照)を変形させる加圧流体(ここでは加圧エア)を供給する加圧流体供給手段としてのコンプレッサ4とを備えている。

【0023】
4個の吸着体3は、ロボットアーム5の先端に取り付けられた基台6に取り付けられている。基台6は、ロボットアーム5の先端に固定される第1部材6Aと、第1部材6Aに一体化され吸着体3が取り付けられる第2部材6Bとから構成されている。これら第1部材6A、第2部材6B、4個の吸着体3とからロボットハンドを構成している。

【0024】
各吸着体3は、接続部材7を介してフレキシブルな配管8に接続されている。これら4本の配管8は、一本の共通配管9に4つの継手10,11,12,13及び3本の配管14,15,16を介して接続され、共通配管9にコンプレッサ4からの加圧エアが供給される。そして、コンプレッサ4と共通配管9との間には、共通配管側から電磁式の三方向弁17と、圧力計18と、減圧弁19と、フィルタ20とを備えている。

【0025】
三方向弁17は、コンプレッサ4側に接続される第1ポート(図示せず)と、共通配管9に接続される第2ポート(図示せず)と、外部にエアを排出する排出配管21に接続される第3ポート(図示せず)とを備えている。従って、対象物1を吸着する場合に、第1ポートと第2ポートを開放して、コンプレッサ4の加圧エアを吸着体3に供給し、対象物1の吸着を解除する場合には、第2ポートと第3ポートを開放して吸着体3の内部に供給された加圧エアを外部に排出する。

【0026】
吸着体3は、図2及び図3(a),(b),(c)に示すように、対象物1に当接する弾性変形可能な円形の吸着膜22と、吸着膜22の側方を覆うべく、吸着膜22の外周縁から基台6側へ延出された側壁部23と、吸着膜22を変形させる加圧エアを供給する前記コンプレッサ4と、コンプレッサ4から加圧エアが供給されることによって吸着膜22を変形させる吸着膜変形手段25とを備えている。側壁部23の下端部(吸着膜22側端部)には、下端側ほど外側に位置する外拡がりとなる外拡部23Hを備えている。また、吸着膜22と側壁部23とが、可撓性及び弾力性を有するゴムや合成樹脂材料から一体形成されている。可撓性及び弾力性を有する材料としては、例えばシリコーンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、ポリウレタンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム等を用いることができるが、軟質性を有する各種の合成樹脂であってもよい。

【0027】
図2に示すように、側壁部23の上端は、第2部材6Bの下面に下方に突出する円環状の突出部23Tに形成の円環状の溝23Mに圧入されている。また、側壁部23の長手方向(図では上下方向)の中間部には、弾性変形可能なベローズ23Aを備えている。従って、段部1Zのある対象物1であっても、ベローズ23Aによって、側壁部23が対象物1の高さに応じて伸縮することができるので、吸着膜22を対象物1に確実に当接することができる。

【0028】
吸着膜変形手段25は、吸着膜22の対象物1との当接面とは反対側の面に一端が閉じられた(密閉された)状態で連結される吸着膜22の外径よりも小さな外径を有し、かつ、軸方向及び径方向に弾性変形可能な円筒状体24と、コンプレッサ4から加圧エアが円筒状体24の内部に供給された時、円筒状体24を軸方向への伸縮を規制して径方向外側へ変形(膨張)させることで、円筒状体24の軸方向長さを短縮する筒状体変形手段24Aを備えている。従って、この筒状体変形手段24Aにより円筒状体24の軸方向の長さを短縮することによって、吸着膜22を対象物1から離間する側へ変形させることができる。

【0029】
筒状体変形手段24Aは、図2及び図3(a),(b),(c)に示すように、円筒状体24の外面に周方向に間隔を置いて取り付けられ、円筒状体24の軸方向に沿って延びる上下方向に細長い円柱状の複数(図3(a)では4本)の線材から構成されている。従って、複数の線材24Aは、軸方向の伸縮性の乏しい(高いヤング率の)材料から構成されており、これら複数の線材24Aによって円筒状体24の軸方向への伸びを規制することができ、径方向外側への変形(膨張)を促進することができるので、円筒状体24の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。よって、円筒状体24の底部24S全体を対象物1から離間させる側へ良好かつ確実に移動させることができる。これら線材24Aを構成する短縮性の乏しい材料としては、カーボンファイバ、グラスファイバ、芳華族ポリアミド系樹脂等の繊維、もしくはそれらのうちの少なくとも1つを含んで構成されるゴム、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアタイト、酸化亜鉛等のセラミックス粉末のうちの少なくとも1つを含んで構成されるゴム、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属、アクリル、ポリイミド等の樹脂から構成される。

【0030】
対象物1を吸着する基本的な原理を図3(a),(b),(c)に示す1つの吸着体3に基づいて説明する。図3(a),(b)の状態から円筒状体24にコンプレッサ4からの加圧エアが供給されると、円筒状体24が径方向外側へ変形(膨張)する。この変形が4本の線材24Aによって規制され、円筒状体24が確実に短縮する(図3(d)参照)。この円筒状体24の短縮により吸着膜22が対象物1から離間する側(図3(c)では上方)へ変形する。この変形により、吸着膜22の当接面(外面)22Aと対象物1の外面(図3(c)では上面)1Aとの間に、外部よりも減圧された密閉空間Hが形成される。この密閉空間Hで対象物1を吸着することができる。このように吸着膜22を加圧エアで変形させることによって、吸着力の向上を図ることができるとともに、対象物1に付着している塵や油を吸引して各種トラブルが発生することを回避することができる。

【0031】
コンプレッサ4からの加圧エアを吸着体3へ供給すべく三方向弁17を切り替えるタイミングは、吸着膜22が対象物1に当接したことを検出した時の検出信号に基づいて行う場合が考えられるが、三方向弁17を切り替える切替スイッチを人為的に操作して三方向弁17を切り替えてもよい。尚、吸着膜22が対象物1に当接したことを検出する手段としては、磁気センサや光反射型センサ等の各種センサを用いることができる。

【0032】
ここで、吸着体3を設計する際の吸着体3の各部分の寸法を設定する算出方法について説明する。まず、図12(a),(b)に示す符号について説明する。
aは、側壁部23の内径であり、例えば1mm~50mmの範囲の任意の数値を選択できるものとする。bは、円筒状体24の外径であり、b=a/3で求められる。cは、線材24Aの径方向外側への突出量であり、c=a/12で求められる。dは、円筒状体24の厚みであり、d=a/60で求められる。hは、円筒状体24の上下方向の深さであり、h=2a/3で求められる。nは、線材24Aの本数であり、例えば3,4,6,8,12本のうちの任意の本数を選択できる。θは、隣り合う線材24A,24A同士間の角度であり、360/nで求められる。θは、各線材24Aの周方向の幅(角度)であり、360/2nで求められる。
例えば、aを6mmとすると、bは2mm、cは0.5mm、dは0.1mm、hは4mmと算出できる。また、nを3本とすると、θは120度、θは60度と算出できる。

【0033】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

【0034】
例えば、吸着体3は、図1で示したように、4つに限定されるものではなく、1つでもよいし、2つ以上の任意の個数であってもよい。例えば図4(a)に、多数の吸着体3を配置した底面図を示している。図4(a)では、隣り合う吸着体3が互い違いに位置する千鳥状に吸着体3を配置しているが、格子状に配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。また、図3(a)では、円筒状体24に4本の線材24Aを備えた場合を示したが、4本以上の任意の本数の線材24Aを備えることが好ましい。このことは、実験した結果を示す図4(b)のグラフから明らかである。図4(b)のグラフは、縦軸に吸着膜22が対象物1から離間する側(プラス側)もしくは対象物側へ突出する側(マイナス側)へ変位する変位(長さ)を取り、横軸に吸着膜22の端からの距離を取ったグラフを示している。グラフでは、吸着膜22の端からの距離が0から2mmまでは、すべて同じで0mm(変位なし)であり、吸着膜22の端からの距離が2mmを越えると、3本の線材の場合が一点鎖線L3でマイナス側、つまり対象物側へ突出する変位になり、使用できない。4本の線材の場合が破線L4で、6本、8本、12本の場合が実線L6,L8,L12である。これら4本、6本、8本、12本の場合は、端からの距離が4mmから6mmの間で吸着膜22の変位が0.4mmを越える変位になっている。従って、4本、6本、8本、12本が十分使用できる本数であることが明確である。尚、図4(b)のグラフは、図3(a)で示した太さの線材24Aで実験したものであるため、太さを図3(a)のものよりも太くした線材を用いる場合には、図4(b)のグラフとは異なる結果、つまり3本の線材、場合によっては2本の線材でも使用できる結果となることは明らかである。

【0035】
また、図3(a)で示した吸着体3を、図5~図7に示す構成にしてもよい。

【0036】
図5(a)~(e)では、側壁部23の下端部に図3(a)で示した外拡がり部23Hの無い円筒状のものを示している。また、図3(a)で示した円筒状体24が、左右方向に長い長方形状の底壁26Aと、底壁26Aの四辺から上方に立ち上げられた上下方向に長い一対の前後側壁26B,26B及び上下方向に長い一対の左右側壁26C,26Cと、四枚の側壁26B,26B,26C,26Cの上端を塞ぐとともに中心部に加圧エアを供給するための開口26dが形成された上壁26Dとからなる内部に空間を有する直方体からなる筒状体26から構成されている。前後側壁26B,26Bの厚みD1が、左右側壁26C,26Cの厚みD2よりも薄くなっている。また、図3(a)で示した筒状体変形手段24Aが、筒状体26の径方向外側への膨張を規制するべく筒状体26を挟むように対向して設けられた一対の板体(筒状体変形手段)27,27から構成されている。これら板体27,27は、厚みの薄い前後の側壁26B,26Bに設けられ、前後の側壁26B,26Bの略全域を覆う大きさ(外形)に構成されている。従って、図5(b),(c)の状態から加圧エアが開口26dを通して筒状体26に供給されると、図5(d),(e)に示すように、加圧エアにより筒状体26の側壁26B,26Bを径方向外側へ略同じ量だけ変形(膨張)させて筒状体26を軸方向に良好に短縮させることができる。従って、筒状体26を軸方向に短縮させることによって、吸着膜22を対象物から離間する側(図では上方)へ変形させることができる。一対の板体27,27は、前述した伸縮性の乏しい材料から構成される。図5(a)~(e)では、一対の板体27,27を直方体からなる筒状体26の側壁26B,26Bに設けたが、一対の板体27,27を図3で示す円筒状体24に設けてもよい。吸着膜変形手段25は、筒状体26と、一対の板体27,27とから構成されている。

【0037】
図6(a)~(c)では、側壁部23の下端部に図3(a)で示した外拡がり部23Hの無い円筒状のものを示している。また、前記筒状体変形手段を、円筒状体24に外嵌され、繊維状の材料を編み込んで筒状にしたスリーブ部材28から構成されている。従って、図6(a),(b)の状態から加圧エアが円筒状体24に供給されると、図6(c)に示すように、加圧エアにより円筒状体24を周方向に略均一に変形(膨張)させることができるので、円筒状体24を軸方向に良好に短縮させることができる。従って、円筒状体24を軸方向に収縮することによって、吸着膜22を対象物から離間する側(図では上方)へ変形させることができる。吸着膜変形手段25は、円筒状体24と、スリーブ部材28とから構成されている。

【0038】
図7(a)~(c)では、側壁部23の下端部に図3(a)で示した外拡がり部23Hの無い円筒状のものを示している。また、前記筒状体変形手段を、円筒状体24の外面に円筒状体24の軸方向に沿って形成され、かつ、周方向に溝24Mを介して並ぶように形成された複数(図7(a)では8個)の厚肉部24Eから構成されている。従って、図7(a),(b)の状態から加圧エアが円筒状体24に供給されると、複数の厚肉部24Eによって、円筒状体24の軸方向への伸びが規制され、径方向外側への変形が促進されるので、円筒状体24の軸方向の短縮を安定よく行うことができる。よって、図7(c)に示すように、加圧エアにより隣り合う溝24M,24M間の同一幅で同一長さ(しかも厚みも同一)の8つの縦長の厚肉部24Eが周方向に略均一に変形(膨張)することができる。従って、円筒状体24を軸方向に短縮させることによって、吸着膜22を対象物から離間する側(図では上方)へ変形させることができる。吸着膜変形手段25は、円筒状体24と、8つの厚肉部24Eとから構成されている。

【0039】
また、前記実施形態では、ベローズ23Aを設けたが、図9に示すように、コイルスプリング29を設けてもよい。コイルスプリング29を設ける場合には、第2部材6Bの下面から下方に延びる円筒部6bを設け、この円筒部6bにスライド移動自在なスライド部材30を外嵌している。このスライド部材30は、上側に位置する円筒部30Aと、円筒部30Aの下端に一体化され円筒部30Aよりも外径の大きな円板部30Bとを備えている。コイルスプリング29は、第2部材6Bの下面と円板部30Bの外周縁の上面30bとの間に介在される。また、円板部30Bの下面の外周縁に、吸着体3の側壁部23の上端部に係止固定するための円環状の係止溝31Mが形成された第1突出部31を備えている。また、前記第1突出部31よりも内側に位置する円板部30Bの下面の外周縁に、円筒状体24の上端部に係止固定するための円環状の係止溝32Mが形成された第2突出部31を備えている。また、円板部30Bの中心に貫通孔30Kを形成し、この貫通孔30Kに連通するよう配管8を円板部30Bの上面に接続している。従って、高さの異なる対象物1、図9では右側が高くなっている対象物1に対して、コイルスプリング29が短縮することによってスライド部材30が上方へ移動する。これにより吸着膜22が対象物1の上面に確実に当接することができるようになっている。尚、図8に、コイルスプリング29を省略した図9を記載した吸着機構の全体構成を示している。説明しなかった部分は、図1及び図2と同じ構成である。

【0040】
また、図10及び図11に示すように、側壁部23の内側面と円筒状体24の外側面との間に加圧エアを供給可能な環状の内部空間33を形成し、吸着膜22を対象物1側へ突出変形させるよう、内部空間33に加圧エアを供給する吸着膜復帰用加圧流体供給手段を備えている。この吸着膜復帰用加圧流体供給手段は、前記加圧エアを供給するコンプレッサ4で兼用構成されているが、コンプレッサ4とは別のコンプレッサを設けて実施することもできる。詳述すれば、図9で示したスライド部材30の円板部30Bで側壁部23と円筒状体24との上端開口部が閉じられ、その円板部30Bの横側部に加圧エアを供給する配管34を接続するための貫通孔30Cが形成されている。この貫通孔30Cは、円板部30Bの外周に形成された円環状の貫通孔30Dに連通している。この貫通孔30Dは、円板部30Bの中心に形成された前記貫通孔30Kとは連通しておらず、前記内部空間33に連通すべく下端が開放されている。また、コンプレッサ4から吐出される加圧エアの配管36に、二股状の継手35の一方に、図1で示したエア配管系統(第1エア配管系統という)を構成する同一の第1部品10~20が接続され、二股状の継手35の他方にも、図1で示したエア配管系統(第2エア配管系統という)を構成する同一の第2部品10~20が接続されている。この第2エア配管系統の継手10~13に前記4本の配管34がそれぞれ接続されている。尚、三方向弁17には、前述の排出配管21が接続されている。従って、対象物1を吸着体3で吸着する場合には、図10の上側の第1の三方向弁17を介して第1の共通配管9に加圧エアを供給する。そして、前述したように円筒状体24にコンプレッサ4からの加圧エアが供給されると、円筒状体24が径方向外側へ変形(膨張)する。この変形が4本の線材24Aによって規制され、円筒状体24が確実に短縮する。この円筒状体24の短縮により吸着膜22が対象物1から離間する側へ変形する。この変形により、対象物1を吸着することができる。図10の上側の第1の三方向弁17に対して図10の下側の第2の三方向弁17は、下側の第2の共通配管9に加圧エアが供給されないように遮断しておくことになる。対象物1の吸着を解除する場合には、図10の上側の第1の三方向弁17を切り替えて円筒状体24内の加圧エアを第1の排出配管21から外部へ排出する。これと同時に、図10の下側の第2の三方向弁17を開放してコンプレッサ4からの加圧エアを下側の第2の共通配管9を介して吸着体3の内部空間33へ供給することによって、吸着膜22を対象物1側へ強制的に突出変形させることができる。これにより、例えば円筒状体24内の加圧エアを第1の排出配管21から外部へ排出できない場合であっても、吸着膜22が対象物1を吸着した状態を維持することがなく、吸着膜22から対象物1を確実に離脱させることができる。尚、図11において、説明しなかった部分は、図9と同じ構成である。

【0041】
また、前記実施形態では、側壁部23にベローズ23Aを備えることによって、側壁部23を伸縮可能に構成した場合を示したが、対象物の面がフラット面である場合には、側壁部23を伸縮不能な金属や硬質プラスチック等で構成することができる。

【0042】
また、前記実施形態では、吸着膜22を変形させるための加圧流体としてエア(気体)を用いたが、各種の液体(水や油等)を用いてもよい。

【0043】
また、前記実施形態では、加圧流体供給手段から供給される加圧流体により筒状体を径方向外側へ膨張させて軸方向に短縮させることによって対象物を吸着体3で吸着する構成であったが、流体圧シリンダのピストンに連結されるピストンロッドの先端を吸着膜22に連結し、加圧流体供給手段から供給される加圧流体によりピストンロッドを伸縮することにより吸着膜22を対象物に接近又は離間させて対象物を吸着又は吸着解除する構成であってもよい。

【0044】
また、前記実施形態では、筒状体24の吸着膜22側端が閉じられた閉塞端を吸着膜22に連結したが、吸着膜22側端が開放されている筒状体の開放端を吸着膜22に連結することによって、筒状体の開放端(吸着膜22側端)が閉じられる構成であってもよい。

【0045】
本発明の吸着機構は、ロボットハンドに用いて対象物をハンドリングする場合に適用できる他、窓面に吸着させて移動させることによって清掃を行う清掃機械、箱詰めするための商品をピッキングするピッキング装置、対象物を吸着により固定して各種の加工を行う加工装置、対象物を吸着して搬送する搬送装置等においても適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…対象物、1Z…段部、2…吸着機構、3…吸着体、4…コンプレッサ(加圧流体供給手段)、5…ロボットアーム、6…基台、6A…第1部材、6B…第2部材、6b…円筒部、7…接続部材、8…配管、9…共通配管、10,11,12,13…継手(部品)、14,15,16…配管(部品)、17…三方向弁(部品)、18…圧力計(部品)、19…減圧弁(部品)、20…フィルタ(部品)、21…排出配管、22…吸着膜、23…側壁部、23A…ベローズ、23H…外拡部、23M…溝、23T…突出部、24…円筒状体、24…円筒状体、24A…線材(筒状体変形手段)、24E…厚肉部(筒状体変形手段)、24M…溝、24S…底部、25…吸着膜変形手段、26…筒状体、26A…底壁、26B…前後側壁、26C…左右側壁、26D…上壁、26d…開口、27…板体(筒状体変形手段)、28…スリーブ部材(筒状体変形手段)、29…コイルスプリング、30…スライド部材、30A…円筒部、30B…円板部、30C…貫通孔、30D…貫通孔、30K…貫通孔、30b…上面、31…突出部、31M…係止溝、32M…係止溝、33…内部空間、34…配管、35…継手、36…配管、H…密閉空間
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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