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明細書 :加工方法及び加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-127078 (P2015-127078A)
公開日 平成27年7月9日(2015.7.9)
発明の名称または考案の名称 加工方法及び加工装置
国際特許分類 B24B   1/00        (2006.01)
B01J  19/08        (2006.01)
H01L  21/304       (2006.01)
B01J  23/755       (2006.01)
C03C  19/00        (2006.01)
FI B24B 1/00 B
B01J 19/08 E
H01L 21/304 621B
H01L 21/304 622W
B01J 23/74 321M
C03C 19/00 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-273289 (P2013-273289)
出願日 平成25年12月27日(2013.12.27)
発明者または考案者 【氏名】久保田 章亀
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114627、【弁理士】、【氏名又は名称】有吉 修一朗
【識別番号】100182501、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 靖之
【識別番号】100190975、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 聡子
審査請求 未請求
テーマコード 3C049
4G059
4G075
4G169
5F057
Fターム 3C049AA09
3C049CA04
3C049CA05
3C049CB03
4G059AA08
4G059AC03
4G075AA30
4G075BA05
4G075BC10
4G075CA33
4G075CA47
4G075CA54
4G075CA57
4G075DA02
4G075EB41
4G075EB50
4G075ED08
4G169AA02
4G169BB04A
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC50A
4G169BC58A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CD10
5F057AA11
5F057BA30
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA11
5F057DA40
5F057EA02
5F057EB21
5F057FA50
要約 【課題】難加工材料を高精度かつ高能率に加工する方法を提供する。
【解決手段】水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒に紫外光等を照射することにより生成される活性種によって、被加工物表面との化学反応を促進し、被加工面を高精度に加工する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
加工基準面に遷移金属または金属酸化物からなる触媒を用い、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒の中に被加工物の少なくとも一部を配し、前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射すると共に、前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対運動する工程を備える
加工方法。
【請求項2】
前記遷移金属は、Fe、Ni、Co、Cu、Cr、Tiから選択した1種又は2種以上の組み合わせからなる
請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記金属酸化物は、遷移金属の酸化物である
請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記溶媒は水、過酸化水素水、超純水、オゾン水から選択した1種又は2種以上の組み合わせからなる
請求項1、請求項2または請求項3に記載の加工方法。
【請求項5】
前記被加工物は、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、GaN、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、AINのうちいずれか一つからなる
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の加工方法。
【請求項6】
前記溶媒は、前記加工基準面となる平坦な回転定盤と、該回転定盤の回転軸に対して偏心した回転軸を有するホルダーに保持した被加工物の被加工面との間に供給され、
前記相対運動は、前記ホルダーに保持した被加工物を前記回転定盤に所定の押圧力で押圧しながら回転させる運動である
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の加工方法。
【請求項7】
前記遷移金属がFeであり、フェントン反応を利用して加工する
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記載の加工方法。
【請求項8】
前記溶媒に酸素若しくはオゾンの少なくとも一方が供給された状態で、紫外光またはプラズマを照射する
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4、請求項5、請求項6または請求項7に記載の加工方法。
【請求項9】
加工基準面に遷移金属または金属酸化物からなる触媒を用い、活性種を生成可能な溶媒の中に被加工物の少なくとも一部を配し、前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射すると共に、前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対運動する工程を備える
加工方法。
【請求項10】
遷移金属または金属酸化物からなる触媒を表面に含む加工基準面を有し、回転可能である加工部材と、
該加工部材の回転軸に対して偏心した回転軸を有し回転可能であると共に、所定の被加工物を保持する保持機構と、
前記加工部材及び前記保持機構を内側に配置可能であり、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒を充填させる加工槽と、
前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射する処理部と、
前記加工槽中で前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対的に変位させる駆動部とを備える
加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は加工方法及び加工装置に関する。詳しくは、SiCやGaN、ダイヤモンド等の難加工物を高効率かつ高精度で加工可能な加工方法及びこうした加工方法を実現可能とする加工装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
古くから様々な場面で、機械的な加工が用いられてきた。例えば、機械研磨の加工では、工具を被加工表面に押し付け、機械的作用により表面の一部をはぎ取って加工するものである。
【0003】
しかし、こうした機械研磨の加工では、対象物の結晶格子に欠陥が生じてしまい、また、高精度な面を得ることが非常に困難であった。そこで、高精度な加工を行うために、化学的な加工方法が用いられる。
【0004】
例えば、超微粉体を分散した懸濁液を被加工面に沿って流動させることにより、略無荷重の状態で超微粉体が被加工面に接触し、その際の相互作用により被加工面を加工する、いわゆるEEM(Elastic Emission Machining)による加工は既に知られている(特許文献1~4)。
【0005】
また、反応ガスに基づく中性ラジカルと、被加工面の原子又は分子とのラジカル反応を利用して加工するプラズマCVM(Chemical Vaporization Machining)も提案されている(特許文献5)。
【0006】
さらに、回転電極を高速に回転させることで、回転電極表面でガスを巻き込むことによって加工ギャップを横切るガス流を形成して加工する回転電極を用いた高密度ラジカル反応による高能率加工方法も提案されている(特許文献6)。
【0007】
前述のEEMやプラズマCVMは、化学的な加工として非常に優れている。EEMは、原子スケールで平滑な面を得ることが可能であり、プラズマCVMでは機械的な加工に匹敵する高能率な加工が高精度で可能である。
【0008】
EEMは、高周波の空間波長に対して非常に平滑な面を得ることが可能である。EEMは、超純水によりSiО等の微粒子を表面に供給し、微粒子の表面の原子と加工物表面の原子が化学的に結合することで加工が進むことが特徴である。しかしEEMは、その加工原理のゆえ数十μm以上の空間波長域を平坦化しにくいものとなっている。
【0009】
また、プラズマCVMの加工は、プラズマ中の中性ラジカルと加工物表面の化学反応を利用している。1気圧という高圧力雰囲気下において高密度のプラズマを発生させ、プラズマ中で生成した中性ラジカルを加工物表面の原子に作用させ、揮発性の物質に変えることで加工している。
【0010】
ゆえに、プラズマCVMの加工では、被加工面の原子配列を乱すことなく、従来の機械加工に匹敵する加工能率を持っている。しかし、基準面を持たない加工法であるため、指数面による影響を受けやすい。
【0011】
こうしたなか、難加工物の高精度かつ高効率な加工を試みた加工方法が存在し、例えば、特許文献7に記載の触媒支援型化学加工方法が提案されている。
【0012】
ここで、特許文献7は、酸化剤の溶液中に被加工物を配し、遷移金属からなる触媒を被加工面に接触、もしくは極近接させ、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種と被加工物の表面原子との化学反応で生成した化合物を除去、あるいは溶出させることによって被加工物を加工する方法が記載されている。
【0013】
また、特許文献7では、実施形態として、触媒にFe、酸化剤に過酸化水素水(H)を使用する点が開示されている。
【0014】
この場合、Fe表面では、下記の[化1]及び[化2]で表されるフェントン(Fenton)反応により活性種としてОHラジカル(ヒドロキシラジカル)が発生する。ОHラジカル(ОHの右側にドットを付して表示)は、寿命は短いが、酸化力が非常に強い性質を有する。
【0015】
(化1)
Fe2++H→Fe3++ОH+ОH・
(化2)
Fe3++H→Fe2++2ООH
【0016】
一般的に、ハーバー—ワイス(Harber-Waiss)機構によるHの分解でОHラジカルが生成されることは知られている。この反応では、低原子価の遷移金属(Fe2+、Ti3+、Cr2+、Cu+等)による一電子還元によりОHラジカルが生成する。
【0017】
特に、Fe2+による反応は、フェントン反応としてよく知られている。Hはレドックス反応を行いうる低原子価金属イオンと反応し、ОHラジカルを生成する。ここで、Fe2+は触媒的な作用をする。
【0018】
ここで、被加工物がSiCの場合には、以下の[化3]に示すように、ОHラジカルと過酸化水素水中の溶存酸素によってSiC表面が酸化され、その部分が優先的に加工されるものと推測されている。
【0019】
(化3)
SiC+4ОH・+О→SiО+2HO+CО
【先行技術文献】
【0020】

【特許文献1】特公平2-25745号公報
【特許文献2】特公平7-16870号公報
【特許文献3】特公平6-44989号公報
【特許文献4】特開2000-167770号公報
【特許文献5】特許第2962583号公報
【特許文献6】特許第3069271号公報
【特許文献7】特許第4873694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ここで、特許文献7に記載された加工方法でもSiC等の難加工物の加工は可能であるが、難加工物に対する加工精度及び加工効率の更なる向上が求められている。例えば、難加工物を利用した半導体基板の分野では、基板サイズの微細化、品質向上等の観点から、より精度の高い加工方法が要求されるようになっている。
【0022】
本発明は以上の点に鑑みて発明されたものであり、SiCやGaN、ダイヤモンド等の難加工物を高効率かつ高精度で加工可能な加工方法及びこうした加工方法を実現可能とする加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
[加工方法について]
上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、加工基準面に遷移金属または金属酸化物からなる触媒を用い、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒に被加工物の少なくとも一部を配し、前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射すると共に、前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対運動する工程を備える。
【0024】
ここで、紫外光またはプラズマの照射によって、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒が分解され、活性種が生成する。また、溶媒の分解が続くと溶媒中の活性種が過剰となり、活性種が再結合し過酸化水素が生じる。そして、加工基準面に遷移金属または金属酸化物からなる触媒を用いることによって、過酸化水素と触媒が反応し、再び、触媒表面上に活性種が発生する。なお、ここでいう水とは、超純水や電解水が含まれるものを意味する。
【0025】
また、溶媒中に被加工物の少なくとも一部を配し、加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で被加工面と加工基準面を相対運動することによって、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種と被加工物の表面原子との化学反応により化合物が生成する。この生成した化合物を相対運動で除去することで被加工物を加工することができる。
【0026】
本発明では、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒に紫外光またはプラズマを照射することで、活性種を過剰に生じさせることができるため、活性種の反応と触媒を利用した加工の効率を高めることができる。また、加工開始時の溶媒に、触媒と直接的に化学反応を生じる化合物、例えば、過酸化水素が含まれていない場合にも、紫外光またはプラズマを照射して活性種及び過酸化水素を生成することができるため、加工が可能となる。
【0027】
また、加工部材が加工基準面を有することによって、加工が進むにしたがって加工表面が変化してしまうことがなく、均一な加工を行うことができる。
【0028】
また、加工基準面に用いる遷移金属としては、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Cr、Tiが挙げられる。また、加工基準面に用いる金属酸化物としては、例えば、遷移金属の酸化物が挙げられる。
【0029】
また、溶媒としては、例えば、水、過酸化水素水、超純水、オゾン水が挙げられる。また、被加工物としては、例えば、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、GaN、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、AINが挙げられる。
【0030】
上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、加工基準面に遷移金属または金属酸化物からなる触媒を用い、活性種を生成可能な溶媒の中に被加工物の少なくとも一部を配し、前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射すると共に、前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対運動する工程を備える。
【0031】
ここで、紫外光またはプラズマの照射によって、活性種を生成可能な溶媒が分解され、活性種が生成する。そして、生成した活性種に起因して遷移金属または金属酸化物からなる触媒を介した化学反応がおこり、被加工物の加工が可能になる。
【0032】
本発明では、活性種を生成可能な溶媒に紫外光またはプラズマを照射することで、活性種を過剰に生じさせることができるため、活性種の反応と触媒を利用した加工の効率を高めることができる。また、加工開始時の溶媒に、触媒と直接的に化学反応を生じる化合物、例えば、過酸化水素が含まれていない場合にも、紫外光またはプラズマを照射して活性種を生成することができるため、加工が可能となる。
【0033】
また、加工部材が加工基準面を有することによって、加工が進むにしたがって加工表面が変化してしまうことがなく、均一な加工を行うことができる。
【0034】
また、溶媒としては、例えば、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらを含む溶液が挙げられる。
【0035】
[加工装置について]
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、遷移金属または金属酸化物からなる触媒を表面に含む加工基準面を有し、回転可能である加工部材と、該加工部材の回転軸に対して偏心した回転軸を有し回転可能であると共に、所定の被加工物を保持する保持機構と、前記加工部材及び前記保持機構を内側に配置可能であり、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒を充填させる加工槽と、前記溶媒に紫外光またはプラズマを照射する処理部と、前記加工槽中で前記加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で前記被加工面と前記加工基準面を相対的に変位させる駆動部とを備える。
【0036】
ここで、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒を充填させる加工槽と、溶媒に紫外光またはプラズマを照射する処理部によって、加工槽中の溶媒を分解することができる。即ち、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒が分解され、活性種が生成する。また、溶媒の分解が続くと溶媒中の活性種が過剰となり、活性種が再結合し過酸化水素が生じる。なお、ここでいう水とは、超純水や電解水が含まれるものを意味する。
【0037】
また、遷移金属または金属酸化物からなる触媒を表面に含む加工基準面を有する加工部材と、加工部材及び保持機構を内側に配置可能であり、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒を充填させる加工槽によって、溶媒中に生じた過酸化水素と触媒を反応させることができる。即ち、過酸化水素と触媒が反応し、再び、触媒表面上に活性種が発生する。
【0038】
また、加工部材及び保持機構を内側に配置可能であり、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒を充填させる加工槽と、加工槽中で加工基準面を被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させた状態で被加工面と加工基準面を相対的に変位させる駆動部によって、被加工面に化学反応による加工を行うことができる。即ち、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種と被加工物の表面原子との化学反応により化合物が生成する。この生成した化合物を相対運動で除去することで被加工物を加工することができる。
【0039】
本発明では、水、過酸化水素水、オゾン水、あるいはこれらのいずれかを含む溶媒に紫外光またはプラズマを照射することで、溶媒中に活性種を過剰に生じさせることができるため、活性種の反応と触媒を利用した加工の効率を高めることができる。また、加工開始時の溶媒に、触媒と直接的に化学反応を生じる化合物、例えば、過酸化水素が含まれていない場合にも、紫外光またはプラズマを照射して活性種を生成することができるため、加工が可能となる。
【0040】
また、加工部材が加工基準面を有することによって、加工が進むにしたがって加工表面が変化してしまうことがなく、均一な加工を行うことができる。
【0041】
また、加工基準面に用いる遷移金属としては、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Cr、Tiが挙げられる。また、加工基準面に用いる金属酸化物としては、例えば、遷移金属の酸化物が挙げられる。
【0042】
また、溶媒としては、例えば、水、過酸化水素水、オゾン水、水酸化カリウム水溶液が挙げられる。また、被加工物としては、例えば、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、GaN、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、AINが挙げられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る加工方法及び加工装置は、SiCやGaN、ダイヤモンド等の難加工物を高効率かつ高精度で加工可能な加工方法及びこうした加工方法を実現可能とする加工装置となっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を適用した加工装置の概念図である。
【図2(a)】本発明の実施例の加工前の表面粗さを非接触形状測定機で測定した結果である。
【図2(b)】本発明の実施例の加工後の表面粗さを非接触形状測定機で測定した結果である。
【図3】本発明の実施例及び比較例の加工能率の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図1ないし図3を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。

【0046】
〔実施の形態〕
図1は本発明を適用した加工装置の概念図であり、ここで示す加工装置1は、純鉄定盤2と、紫外光光源3と、ダイヤモンド基板8を保持する試料ホルダー4と、純鉄定盤2及び試料ホルダー4を内側に配置した加工槽9を有している。また、加工槽9の内側は、過酸化水素水7で満たされている。

【0047】
また、加工槽9の中心部に設けられた回転軸6はモータ(図示せず)と連結されており、純鉄定盤2は、加工槽9と一体となって、図1の符号Aで示す方向に回転可能に構成されている。

【0048】
また、試料ホルダー4は、純鉄定盤2の回転軸6に対して偏心した回転軸5を有し、回転軸5を中心として図1の符号Bで示す方向に回転可能に構成されている。また、試料ホルダー4はダイヤモンド基板8を保持した状態で上方からダイヤモンド基板8と純鉄定盤2が接触または極近接する位置まで下降する。

【0049】
ここで、純鉄定盤2は加工部材の一例であり、紫外光光源3は処理部の一例であり、ダイヤモンド基板8は被加工物の一例であり、試料ホルダー4は保持機構の一例であり、モータは駆動部の一部であり、紫外光光源3から照射される189nm以下の波長は、紫外光の一例である。

【0050】
また、本実施の形態では、加工部材が純鉄で形成されている場合を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも、純鉄で形成される必要はない。過酸化水素水と反応して活性種であるOHラジカルを生成できれば充分であり、例えば、Ni、Co、Cu、Cr、Ti等で形成されていても構わない。また、遷移金属の酸化物であってもよい。

【0051】
また、本実施の形態では、試料ホルダー4に保持される被加工物としてダイヤモンド基板8を例に挙げて説明を行っているが、被加工物はダイヤモンド基板8に限定されるものではない。例えば、ダイヤモンドの関連材料(多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜)やSiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Siセラミックス、AIN、ガラスなどの硬脆材料も被加工物として採用し得る。

【0052】
また、本実施の形態では、溶媒として過酸化水素水7を例に挙げて説明を行っているが、溶媒は過酸化水素水7に限定されるものではなく、紫外光またはプラズマを照射することでOHラジカルを生成するものであれば充分である。例えば、超純水、オゾン水等も採用しうる。

【0053】
また、紫外光光源3による溶媒への紫外光照射の位置は、溶媒中にOHラジカルが生成する構成であれば充分である。

【0054】
以下、上記の様に構成された加工装置1による加工方法について説明する。即ち、本発明を適用した加工方法の一例について説明する。

【0055】
まず、純鉄定盤2を内側に配置した加工槽9内を過酸化水素水7で満たす。そして、紫外光光源3を過酸化水素水7に照射しながら、純鉄定盤2の加工基準面に対して、試料ホルダー4に保持させたダイヤモンド基板8を接触させる。

【0056】
また、紫外光光源3から過酸化水素水7に紫外光が照射されると、[化4]で示すように、水分子の分解でOHラジカルが発生する。また、紫外光の照射に伴い、溶媒中に過剰のOHラジカルが発生すると、[化5]で示すように、OHラジカルが再結合し、過酸化水素(H)が生成される。即ち、加工開始時過酸化水素水7に加えて、水分子からも過酸化水素が生成されることになる。

【0057】
(化4)
О+hν→ОH・+H・(h:プランク定数、ν:光の振動数)
(化5)
2ОH・→H

【0058】
生成された過酸化水素を含む溶媒中で、Feを触媒とする純鉄定盤2を、ダイヤモンド基板8に接触、もしくは極近接させると、前述した[化1]に記載するようにOHラジカルが発生する。このOHラジカルと、ダイヤモンド基板8の表面原子とが反応してダイヤモンド表面が改質される。

【0059】
ここで、純鉄定盤2及び試料ホルダー4を回転させながら、所定の押圧力で試料ホルダー4に保持されたダイヤモンド基板8を純鉄定盤2に押圧する。これにより、加工基準面と被加工面との相互間で相対運動が生じる。

【0060】
また、純鉄定盤2及び試料ホルダー4が相対運動していることから、ダイヤモンド基板8の表面から触媒が離れ、改質層はダイヤモンド基板8の被加工表面から除去される。ここまでの流れによってダイヤモンド基板8の被加工面は加工されることとなる。

【0061】
〔変形例〕
本実施の形態の変形例として、溶媒として超純水を用いることもできる。即ち、溶媒だけを超純水に置き換え、他の条件は実施の形態と同一のものとして加工を行うことが可能である。

【0062】
変形例においては、超純水に対して紫外光を照射して、過剰なOHラジカルを生成させ、過酸化水素を生じさせることができる。よって、溶媒にあらかじめ過酸化水素が含まれていなくても、触媒反応による被加工物の加工が可能となる。

【0063】
また、変形例の方法では、加工に用いる化学物質の使用量を減らすことができるため、環境への負担が抑えられる点で利点を有している。

【0064】
〔効果〕
本発明を適用した加工装置1は、純鉄定盤2と試料ホルダー4が相互に相対運動するため、発生したОHラジカルが被加工物の表面原子と化学反応することで生成した化合物を除去することができる。

【0065】
また、発生したОHラジカルが被加工物の表面原子と化学反応することで生成した化合物を、純鉄定盤2と試料ホルダー4の相互の相対運動により除去することができるので、随時新しい被加工面が出現することとなり、加工が進みやすくなる。

【0066】
また、本発明を適用した加工装置1では、溶媒中にOHラジカルを過剰に生成し、過酸化水素を生じさせることができるため、OHラジカルの反応と触媒を利用した加工の効率を高めることができる。

【0067】
また、触媒表面で生成されたOHラジカルは、触媒表面から離れると急激に不活性化するので、OHラジカルは基準面となる触媒表面上若しくは極近接した位置にしか存在せず、それにより空間的に制御された状態で加工することができる。

【0068】
また、過酸化水素水7に紫外光を照射して生じるOHラジカルにより、過酸化水素水7や純鉄定盤2表面上のケミカルコンタミネーション(有機汚染物質)を除去し、ダイヤモンド基板8表面との化学反応を安定化させることができる。この結果、ダイヤモンド基板8の表面を高精度に加工することができる。

【0069】
また、本発明を適用した加工方法では研磨剤は不要であるので、コストを大幅に抑制することができる。

【0070】
以下、図1ないし図3を用いて、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、ここで示す実施例及び比較例は一例であり、本発明を限定するものではない。
図2は、本発明の実施例の加工前、及び加工後の表面粗さを非接触形状測定機で測定した結果である。

【0071】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1の加工方法について説明する。
遷移金属であるニッケル製定盤に、被加工物として単結晶ダイヤモンドを3.3Mpaの荷重で押圧し、ニッケル定盤を40rpmで回転させると共に、試料ホルダーを40rpmで回転させた。また、溶媒には過酸化水素水を用い、図1に示すように溶媒に対して紫外光を照射した。

【0072】
このような状況で14時間の加工を行い、実施例1について、表面粗さについて確認した。加工前後の表面粗さのデータを図2に示す。

【0073】
この結果、図2に示すように被加工面の加工後の表面粗さは、良好な状態(PV:1.713nm、rms:0.162nm、Ra:0.129nm)となっている。

【0074】
次に、実施例と比較例の加工方法を行い、被加工物の加工効率について確認した。なお、以下で記す実施例2については、前述の実施例1と同じ方法である。
図3は、本発明の実施例及び比較例の加工能率の結果を示すグラフである。

【0075】
[実施例2]
まず、本発明の実施例2の加工方法について説明する。
遷移金属であるニッケル製定盤に、被加工物として単結晶ダイヤモンドを3.3Mpaの荷重で押圧し、ニッケル定盤を40rpmで回転させると共に、試料ホルダーを40rpmで回転させた。また、溶媒には超純水を用い、図1に示すように溶媒に対して紫外光を照射した。このような状況で14時間の加工を行った。

【0076】
[比較例1]
比較例1では、ニッケル定盤に、被加工物として単結晶ダイヤモンドを3.3Mpaの荷重で押圧し、ニッケル定盤を40rpmで回転させると共に、試料ホルダーを40rpmで回転させた。また、溶媒は過酸化水素水を用いた。なお、実施例1及び実施例2とは違い、溶媒に対して紫外光照射は行わなかった。

【0077】
[比較例2]
比較例2では、ニッケル定盤に、被加工物として単結晶ダイヤモンドを3.3Mpaの荷重で押圧し、ニッケル定盤を40rpmで回転させると共に、試料ホルダーを40rpmで回転させた。また、溶媒には超純水を用いた。なお、実施例1及び実施例2とは違い、溶媒に対して紫外光照射は行わなかった。

【0078】
以下、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の加工条件を表1に示す。

【0079】
【表1】
JP2015127078A_000003t.gif

【0080】
上記の様に構成された実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の加工方法における加工能率の結果を図3に示す。

【0081】
図3に示すとおり、符号10で示す実施例1では、41.0nm/hの加工能率であった。また、符号11で示す比較例1では、31.0nm/hの加工能率であった。この結果、溶媒に過酸化水素水を用いた方法では、紫外光を照射する実施例1で加工能率が向上していた。

【0082】
また、符号12で示す実施例2では、17.6nm/hの加工能率であった。また、符号13で示す比較例2では、11.8nm/hの加工能率であった。この結果、溶媒に超純水を用いた方法では、紫外光を照射する実施例2で加工能率が向上していた。

【0083】
図3の結果から、過酸化水素水と超純水のいずれを溶媒として用いても、紫外光を照射しながら加工を行った場合のほうが、紫外光を照射せずに加工を行った場合よりも加工能率が向上していた。

【0084】
以上までで、本発明を適用した加工装置及び加工方法について説明を行ったが、本発明の加工方法では、溶媒中にオゾン(О)、酸素(О)をマイクロバブル状にして添加する方法も採用しうる。

【0085】
この場合、[化6]ないし[化8]で示すように、溶媒中で、さらにОHラジカルの生成反応が促進され、ОHラジカルが再結合した過酸化水素水を生成することができる。即ち、触媒による加工の効率を更に高めることができる。

【0086】
(化6)
О+hν→О(D,P)+О(O(D):第1励起状態の酸素原子、O(P):基底状態の酸素原子)
(化7)
О+hν→О(D)+О(P)
(化8)
О(D)+HО→2ОH・

【0087】
以上のとおり、本発明により、SiCやGaN、ダイヤモンド等の難加工物を高効率かつ高精度で加工可能な加工方法及びこうした加工方法を実現可能とする加工装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 加工装置
2 純鉄定盤
3 紫外光光源
4 試料ホルダー
5 回転軸
6 回転軸
7 過酸化水素水
8 ダイヤモンド基板
9 加工槽
図面
【図1】
0
【図2(a)】
1
【図2(b)】
2
【図3】
3