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明細書 :環状エステルの開環付加触媒及び直鎖状エステルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-171676 (P2015-171676A)
公開日 平成27年10月1日(2015.10.1)
発明の名称または考案の名称 環状エステルの開環付加触媒及び直鎖状エステルの製造方法
国際特許分類 B01J  31/24        (2006.01)
C07D 319/12        (2006.01)
C07C  69/68        (2006.01)
C07C  67/03        (2006.01)
B01J  31/14        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F   9/50        (2006.01)
FI B01J 31/24 Z
C07D 319/12
C07C 69/68
C07C 67/03
B01J 31/14 Z
C07B 61/00 300
C07F 9/50
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-048029 (P2014-048029)
出願日 平成26年3月11日(2014.3.11)
発明者または考案者 【氏名】中山 祐正
【氏名】塩野 毅
【氏名】田中 亮
【氏名】山口 賢太郎
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査請求 未請求
テーマコード 4C022
4G169
4H006
4H039
4H050
Fターム 4C022JA04
4G169AA06
4G169AA15
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA44A
4G169BA47A
4G169BD03A
4G169BD03B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169BE35A
4G169BE35B
4G169CB25
4G169CB38
4G169CB75
4G169FB04
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC48
4H006BA53
4H006BN10
4H006KA03
4H039CA66
4H039CH70
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
要約 【課題】アルコールを過剰に用いなくても環状エステルを開環させて選択的に直鎖状エステルを合成可能な環状エステルの開環付加触媒及び直鎖状エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】環状エステルの開環付加触媒は、式1で表されるルイス塩基を含有している。
PX・・・(式1)
(式1中、Xは、アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、一部の水素がアルキル基で置換されたフェニル基、又は、一部の水素がアルキル基で置換されたシクロヘキシル基を表す。)
開環付加触媒は、環状エステルとアルコールとの開環付加反応を促進させるとともに重合を抑制する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式1で表されるルイス塩基を含有し、
PX・・・(式1)
(式1中、Xは、アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、一部の水素がアルキル基で置換されたフェニル基、又は、一部の水素がアルキル基で置換されたシクロヘキシル基を表す。)
環状エステルとアルコールとの開環付加反応を促進させるとともに重合を抑制する、
ことを特徴とする環状エステルの開環付加触媒。
【請求項2】
前記ルイス塩基がトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はトリメシチルホスフィンである、
ことを特徴とする請求項1に記載の環状エステルの開環付加触媒。
【請求項3】
更に、下式2で表されるルイス酸を含有する、
BY・・・(式2)
(式2中、Yはフェニル基又は一部の水素がハロゲンで置換されたフェニル基を表す。)
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環状エステルの開環付加触媒。
【請求項4】
前記ルイス酸がB(Cである、
ことを特徴とする請求項3に記載の環状エステルの開環付加触媒。
【請求項5】
環状エステル、第1アルコール及び請求項1乃至4のいずれか一項に記載の環状エステルの開環付加触媒を混合し、開環付加反応により直鎖状エステルを合成する、
ことを特徴とする直鎖状エステルの製造方法。
【請求項6】
前記環状エステルとしてL-ラクチドを用い、直鎖状の乳酸二量体エステルを生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の直鎖状エステルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状エステルの開環付加触媒及び直鎖状エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクチドは、二分子の乳酸が脱水縮合した環状ジエステルであり、ポリ乳酸の製造原料などに利用されている(特許文献1)。また、ラクチドを開環させて得られる直鎖状乳酸エステルは、香料や食品添加物、可塑剤として広く用いられる。
【0003】
ラクチド等の環状エステルを開環させて直鎖状エステルの合成を試みようとすると、重合反応が進みやすく、乳酸二量体エステル等の直鎖状エステルを選択的に合成することは難しい(例えば、特許文献1)。また、特許文献2では、過剰のアルコールを用いて直鎖状乳酸エステルを合成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2013-227457号公報
【特許文献2】米国特許第2371281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の方法では、アルコールを過剰に添加しなければならず、製造コストも高くなってしまう。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アルコールを過剰に用いなくても環状エステルを開環させて選択的に直鎖状エステルを合成可能な環状エステルの開環付加触媒及び直鎖状エステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る環状エステルの開環付加触媒は、
式1で表されるルイス塩基を含有し、
PX・・・(式1)
(式1中、Xは、アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、一部の水素がアルキル基で置換されたフェニル基、又は、一部の水素がアルキル基で置換されたシクロヘキシル基を表す。)
環状エステルとアルコールとの開環付加反応を促進させるとともに重合を抑制する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記ルイス塩基がトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はトリメシチルホスフィンであることが好ましい。
【0009】
更に、下式2で表されるルイス酸を含有することが好ましい。
BY・・・(式2)
(式2中、Yはフェニル基又は一部の水素がハロゲンで置換されたフェニル基を表す。)
【0010】
また、前記ルイス酸がB(Cであることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様に係る直鎖状エステルの製造方法は、
環状エステル、第1級アルコール及び本発明の第1の態様に係る環状エステルの開環付加触媒を混合し、開環付加反応により直鎖状エステルを合成する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、前記環状エステルとしてL-ラクチドを用い、直鎖状の乳酸二量体エステルを生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る開環付加触媒は環状エステルとアルコールとの開環付加反応を促進し、選択的に直鎖状エステルを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実験No.12におけるH NMRスペクトルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態に係る開環付加触媒は、環状エステルとアルコールとの開環付加反応を促進させるとともに重合を抑制し、直鎖状エステルの合成触媒として機能する。開環付加触媒は、式1で表されるルイス塩基を含有する。
PX・・・(式1)

【0016】
式1中、Xは、アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、一部の水素がアルキル基で置換されたフェニル基、又は、一部の水素がアルキル基で置換されたシクロヘキシル基を表す。アルキル基は、炭素数が1~6であることが好ましく、炭素数が4~6で分岐状であることがより好ましい。好適なアルキル基として、例えば、tert-ブチル基が挙げられる。アルキル基で置換されたフェニル基、シクロヘキシル基は、一部の水素がアルキル基に置換されていても、全てが置換されていてもよい。また、フェニル基、シクロヘキシル基上のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数が1~6であることが好ましく、炭素数が1~3であることがより好ましい。好適なアルキル基として、例えば、メチル基が挙げられる。

【0017】
式1で表されるルイス塩基として、かさ高いものであることが好ましく、例えば、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメシチルホスフィンなどが挙げられる。

【0018】
続いて、上記のルイス塩基を含有する開環付加触媒を用いた環状エステルの開環付加反応について説明する。ここでは、環状エステルとしてL-ラクチド(以下、L-LA)、アルコールとしてベンジルアルコール(以下、R-OH)を用い、乳酸二量体エステルを合成する例について説明する。

【0019】
トルエン等の溶媒にL-LA、ルイス塩基を含有する開環付加触媒を加える。更に、この混合物にR-OHを加える。そして、所定温度(例えば、100℃程度)で所定時間(例えば、24時間)撹拌する。これにより、L-LAが開環し、直鎖状の乳酸二量体エステルが生成する。

【0020】
L-LAの開環付加反応について、スキーム1に示す反応メカニズムを参照し詳細に説明する。

【0021】
【化1】
JP2015171676A_000002t.gif

【0022】
ルイス塩基(以下、LBとも記す)が、R-OHの水酸基に配位する。ルイス塩基が非共有電子対を水酸基のプロトンに供与するので、R-OHの水酸基の負電荷が強まる。

【0023】
そして、負電荷が強まった水酸基の酸素が、L-LAのカルボニル基の炭素に作用する。これにより、L-LAのカルボニル基の炭素とこの炭素の隣の酸素との結合が切れやすくなり、開環する。そして、開環して直鎖状になった一方の末端の酸素にR-OHの-Hが結合し、他方の末端の炭素には、R-OHの-ORが結合する。このようにして、直鎖状の乳酸二量体エステルが生成される。

【0024】
そして、生成された直鎖状の乳酸二量体エステルは第2級アルコールであり、第2級アルコールに対しては、ルイス塩基のかさ高さからルイス塩基が配位し難く、反応し難い。これにより、生成された直鎖状の乳酸二量体エステルからのL-LAの重合が抑制される。このため、開環付加触媒を用いたL-LAとROHとの開環付加反応において、選択的に直鎖状の乳酸二量体エステルを合成することができる。

【0025】
開環付加触媒は、更に、式2で表されるルイス酸を含有していることが好ましい。ルイス酸を含有していることにより、環状エステルとアルコールとの開環付加反応をより促進させることができる。
BY・・・(式2)

【0026】
式2中、Yはフェニル基又は一部の水素がハロゲンで置換されたフェニル基を表す。式2で表されるルイス酸は、かさ高いものであることが好ましく、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C)が挙げられる。

【0027】
続いて、上記のルイス酸及びルイス塩基を含有する開環付加触媒を用いた環状エステルの開環付加反応について説明する。上記と同様に、環状エステルとしてL-ラクチド(以下、L-LA)、アルコールとしてベンジルアルコール(以下、R-OH)を用い、乳酸二量体エステルを合成する例について説明する。

【0028】
まず、トルエン等の溶媒にL-LA、ルイス酸及びルイス塩基を含有する開環付加触媒を加える。更に、この混合物にR-OHを加える。そして、所定温度(例えば、100℃程度)で所定時間(例えば、24時間)撹拌する。これにより、L-LAが開環し、直鎖状の乳酸二量体エステルが生成する。

【0029】
L-LAの開環付加反応について、スキーム2に示す反応メカニズムを参照し詳細に説明する。

【0030】
【化2】
JP2015171676A_000003t.gif

【0031】
まず、ルイス酸(以下、LAとも記す)にL-LAのカルボニル基が配位する。L-LAのカルボニル基は正電荷を帯びているが、ルイス酸に配位することによって、ルイス酸がカルボニル基の電子対を引き付けるので、カルボニル基の正電荷がより強まる。

【0032】
一方、ルイス塩基(以下、LBとも記す)は、R-OHの水酸基に配位する。ルイス塩基が非共有電子対を水酸基のプロトンに供与するので、R-OHの水酸基の負電荷が強まる。

【0033】
そして、負電荷が強まった水酸基の酸素が、正電荷が強まったL-LAのカルボニル基の炭素に作用する。これにより、L-LAのカルボニル基の炭素とこの炭素の隣の酸素との結合が切れやすくなり、開環する。そして、開環して直鎖状になった一方の末端の酸素にR-OHの-Hが結合し、他方の末端の炭素には、R-OHの-ORが結合する。このようにして、直鎖状の乳酸二量体エステルが生成される。

【0034】
上述したように、生成された直鎖状の乳酸二量体エステルは第2級アルコールであるので、ルイス塩基が配位し難く、直鎖状の乳酸二量体エステルとL-LAとが反応せず、重合が抑制される。これにより、生成された直鎖状の乳酸二量体エステルが単量体になり難い。このため、開環付加触媒を用いたL-LAとROHとの開環付加反応において、選択的に直鎖状の乳酸二量体エステルを合成することができる。

【0035】
なお、化学反応の原則としては、LA及びLBが混在した場合、LAとLBによる複合体が形成されてしまい、LA及びLBはともに活性点を失い、それぞれ触媒としての機能を果たさなくなると考えられている。しかし、本実施の形態に係るLAとLBを組み合わせて用いる場合、上述のようにそれぞれの協奏的作用が発揮される。本実施の形態に係るLAとLBの組み合わせにおいては、いずれも置換基が大きくかさ高いことから、立体障害により複合体が形成されないか形成されても容易に解離するものと考えられる。

【0036】
上記の例では、環状エステルとして、L-ラクチドを例にとり説明したが、下式3に示すように、-COO-のO(カルボニル基が結合する炭素に結合した酸素)に結合する炭素に置換基が一つ結合した結合を有しており、開環付加反応後に第2級以上のアルコールになる環状エステルであればよい。

【0037】
【化3】
JP2015171676A_000004t.gif

【0038】
また、用いるアルコールとして、第2級アルコール、第3級アルコールの場合では反応性が乏しいため、ベンジルアルコール等の第1級アルコールであることが好ましい。

【0039】
また、ルイス酸とルイス塩基との配合比に制限はなく、例えば1:1程度でよい。また、ルイス酸、ルイス塩基がそれぞれ環状エステルに対して1/100~1当量程度添加すればよい。

【0040】
また、環状エステルとアルコールとの配合割合についても制限はなく、例えば、環状エステルに対しアルコールを1/100~4当量とすればよく、アルコールを過剰に加えなくてもよい。

【0041】
また、開環付加反応は、用いるアルコールの沸点以下の高温条件下(例えば、100℃程度)で行うことが好ましい。

【0042】
また、生成された直鎖状エステルは、蒸留やカラム分離等、公知の手法にて分離し利用することができる。
【実施例】
【0043】
種々のルイス酸、ルイス塩基の組み合わせ、種々の合成条件により、L-ラクチドとアルコールとの開環付加反応を試み評価した。
【実施例】
【0044】
以下の合成例で使用した試薬並びに得られたポリマー等の測定機器等について記す。H NMRスペクトルの測定には、JNM-LA400スペクトロメーター(日本電子株式会社製)を用いた。
【実施例】
【0045】
トルエンはNa/ベンゾフェノンから蒸留により精製して用いた。L-ラクチド(以下、L-LA)はシグマアルドリッチ ジャパン株式会社製、Tris(pentafluorophenyl)borane/toluene 13.6wt%(以下、B(C)は東ソー株式会社製、benzyl alcohol(以下、BnOH)、tert-butyl alcohol(以下、tBuOH)、trimesitylphosphine(以下、MesP)、tricyclohexylphosphine(以下、CyP)及びtriphenylphosphine(以下、PhP)は、和光純薬株式会社製、2-propanol(以下、iPrOH)は東京化成工業株式会社製のものを用いた。
【実施例】
【0046】
(実験No.1-9)
まず、ルイス酸(LA)としてB(C、ルイス塩基(LB)としてMesPを用い、種々の配合比にて、L-LAとBnOHの開環付加反応により乳酸二量体ベンジルエステルを生成し、配合比の影響について検証した。
【実施例】
【0047】
以下に記すようにL-LAとBnOHの開環付加反応を行った。まず、トルエンにL-LAを加えた溶液に、B(Cのトルエン溶液を加えた。続いて、この混合物に、PhPのトルエン溶液を加えた。最後に、BnOHを加え、100℃で所定時間攪拌して、開環付加反応させた。攪拌後、反応溶液から溶媒を減圧留去し、生成物を得た(実験No.1~4)。
【実施例】
【0048】
得られた生成物について、H NMRスペクトルを測定し、後述する手法にてL-LA及びBnOHの転化率(Conversion[%])、平均重合度(n)を求めた。
【実施例】
【0049】
また、ルイス塩基としてCyPを用い、上記と同様の手法でL-LAとBnOHの開環付加反応を行い、転化率、平均重合度を求めた(実験No.5~7)。
【実施例】
【0050】
また、ルイス塩基としてMesPを用い、上記と同様の手法でL-LAとBnOHの開環付加反応を行い、転化率、平均重合度を求めた(実験No.8~9)。
【実施例】
【0051】
実験No.1~9の実験条件、転化率、平均重合度を表1に示す。
【実施例】
【0052】
【表1】
JP2015171676A_000005t.gif
【実施例】
【0053】
実験No.1~9のいずれにおいても平均重合度が1.1~1.8であり、ベンジル乳酸は検出されず、選択的に乳酸二量体エステルが生成されていることがわかる。
【実施例】
【0054】
なお、室温で行った実験No.4では、72時間反応させてもL-LAの転化率が44.0%と100℃で24時間反応させた実験No.2に比べて劣っていることから、高温で行うことにより反応速度が高まることがわかる。
【実施例】
【0055】
また、転化率としては、ルイス塩基としてCyPを用いた場合が良好であったため、以下の実験については、ルイス塩基としてCyPを用いて行った。
【実施例】
【0056】
(実験No.10~15)
L-LAとBnOHの配合割合を異ならせ、上記と同様の手法でL-LAとBnOHの開環付加反応を行い、転化率、平均重合度を求めた。
【実施例】
【0057】
ここで、図1に示す実験No.12のH NMRスペクトルを例にして、L-LA及びBnOHの転化率の求め方について説明する。図1のH NMRスペクトルは、実験No.2の反応後の試料について測定したものである。このH NMRスペクトルからは、反応後は原料であるL-LA、BnOH及び生成物である乳酸二量体エステルが混合している状態であり、重合体や乳酸ベンジル等の副成物が生成していないこともわかる。
【実施例】
【0058】
L-LAの転化率(ConversionL-LA)は、生成物のメチン基のシグナル強度(Intmethine,product)と生成物のメチン基のシグナル強度及び未反応のL-LAのメチン基のシグナル強度(Intmethine,L-LA)との割合から求めた。即ち、図1に示すH NMRスペクトルにおける(シグナルc+シグナルg)/{(シグナルc+シグナルg)+(シグナルe)}×100により求めた。
【実施例】
【0059】
また、BnOHの転化率(ConversionBnOH)は、生成物のメチレン基のシグナル強度(Intmethylene,product)と生成物のメチレン基のシグナル強度及び未反応のBnOHのメチレン基のシグナル強度(Intmethylene,BnOH)との割合から求めた。即ち、図1に示すH NMRスペクトルにおける(シグナルd)/{(シグナルd)+(シグナルf)}×100により求めた。
【実施例】
【0060】
また、平均重合度(n)は、生成物の内部メチン基のシグナル強度と生成物のOH基に隣接するメチン基のシグナル強度との割合から求めた。即ち、図1に示すH NMRスペクトルにおける(シグナルe)/(シグナルg)×100により求めた。
【実施例】
【0061】
下表2に実験No.10~15の実験条件、転化率、平均重合度を示す。
【実施例】
【0062】
【表2】
JP2015171676A_000006t.gif
【実施例】
【0063】
いずれの割合でも、平均重合度は1.1~1.7であり、乳酸ベンジルは検出されず、アルコールを過剰に用いなくても選択的に乳酸二量体エステルを生成できることがわかる。なお、反応速度の観点からは、BnOHがL-LAに対して当量であるよりも、L-LA、BnOHのいずれかの配合比率が高い方がよいと考えられる。
【実施例】
【0064】
(実験No.16~18)
BnOHの他、tBuOH、iPrOHを用い、上記と同様の手法でL-LAとアルコールの開環付加反応を行い、転化率、重合度を求めた。実験No.16~18の実験条件、転化率、重合度を表3に示す。
【実施例】
【0065】
【表3】
JP2015171676A_000007t.gif
【実施例】
【0066】
第2級アルコール、第3級アルコールを用いた場合、選択的に乳酸二量体エステルが生成されるものの、転化率が非常に低い結果となった。第2級アルコール、第3級アルコールでは、ルイス酸、ルイス塩基のかさ高さから反応が進行しにくく、アルコールとして第1級アルコールを用いることが好ましいことがわかる。
【実施例】
【0067】
(実験No.19~22)
続いて、ルイス酸のみ、或いは、ルイス塩基のみを用い、上記と同様の手法でL-LAとBnOHの開環付加反応を行い、転化率、重合度を求めた。実験No.19~22の実験条件、転化率、平均重合度を表4に示す。
【実施例】
【0068】
【表4】
JP2015171676A_000008t.gif
【実施例】
【0069】
ルイス酸のみを用いた場合、転化率は低いものの、ルイス塩基のみを用いた場合、転化率は50%程度であり、ルイス塩基のみでも、L-LAとBnOHとの開環付加反応を促進させ、乳酸二量体エステルを生成する触媒機能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、開環付加触媒では、環状エステルから香料や食品添加物、可塑剤に利用可能な直鎖状エステルの製造に利用可能である。
図面
【図1】
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