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明細書 :複合アルカリ金属水素化物、複合アルカリ金属水素化物の製造方法、複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法及びアンモニア-水素変換方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-160770 (P2015-160770A)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 複合アルカリ金属水素化物、複合アルカリ金属水素化物の製造方法、複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法及びアンモニア-水素変換方法
国際特許分類 C01B   3/06        (2006.01)
C01B   6/00        (2006.01)
C01B   6/04        (2006.01)
C01B  21/087       (2006.01)
FI C01B 3/06
C01B 6/00 A
C01B 6/04
C01B 21/087
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-036356 (P2014-036356)
出願日 平成26年2月27日(2014.2.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年 8月27日、http://home.hiroshima-u.ac.jp/h2wakate/
発明者または考案者 【氏名】小島 由継
【氏名】市川 貴之
【氏名】宮岡 裕樹
【氏名】五舛目 清剛
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査請求 未請求
要約 【課題】アンモニアとの反応で良好な反応率及び質量水素発生密度を両立可能な複合アルカリ金属水素化物、複合アルカリ金属水素化物の製造方法、複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法及びアンモニア-水素変換方法を提供する。
【解決手段】複合アルカリ金属水素化物は、二種以上のアルカリ金属水素化物が複合された複合アルカリ金属水素化物であり、二種以上のアルカリ金属水素化物が混合された混合アルカリ金属水素化物と比べ、Cu-Kα波長のX線回折測定における回折ピークの半値幅が1.5倍以上である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
二種以上のアルカリ金属水素化物が複合された複合アルカリ金属水素化物であり、
前記二種以上のアルカリ金属水素化物が混合された混合アルカリ金属水素化物と比べ、Cu-Kα波長のX線回折測定における回折ピークの半値幅が1.5倍以上である、
ことを特徴とする複合アルカリ金属水素化物。
【請求項2】
前記二種以上のアルカリ金属水素化物がLiH、KH及びNaHから選択される二種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合アルカリ金属水素化物。
【請求項3】
前記二種以上のアルカリ金属水素化物がLiH及びKHである、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合アルカリ金属水素化物。
【請求項4】
前記複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとの反応により、Cu-Kα波長のX線回折測定における回折角2θ=22.5±1°、32.5±1°及び39.5±1°のそれぞれの範囲にピークが現れる複合アルカリ金属アミド化合物が生成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の複合アルカリ金属水素化物。
【請求項5】
二種以上のアルカリ金属水素化物を混合してメカノケミカル処理を行って複合アルカリ金属水素化物を得る、
ことを特徴とする複合アルカリ金属水素化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させて複合アルカリ金属アミド化合物を得る、
ことを特徴とする複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させて水素を発生させる、
ことを特徴とする水素の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させ、水素及び複合アルカリ金属アミド化合物を生じさせて水素を取り出す水素発生工程と、
前記複合アルカリ金属アミド化合物と水素とを反応させ、複合アルカリ金属水素化物及びアンモニアに再生させる還元工程と、を備える、
ことを特徴とするアンモニア-水素変換方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複合アルカリ金属水素化物、複合アルカリ金属水素化物の製造方法、複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法及びアンモニア-水素変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来的な化石燃料の枯渇によりエネルギーが不足するというリスクの観点から、枯渇するリスクのない再生可能エネルギーが注目されている。また、化石燃料を燃焼させエネルギーとして利用した場合に発生する二酸化酸素による地球温暖化という観点からも、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーが注目されている。
【0003】
しかしながら、再生可能エネルギーの問題点として、再生可能エネルギーは地球環境によって生み出されるエネルギーが変動することが指摘されており、再生可能エネルギーのみでは安定したエネルギーを供給することが出来ず、再生可能エネルギーの普及を妨げる一因ともなっている。
【0004】
そこで、地球環境による再生可能エネルギーの変動を抑制するために、様々な再生可能エネルギーの貯蔵方法が検討されており、中でも、再生可能エネルギーによって水素を発生させ、発生させた水素を、水素を含む化合物に変換して貯蔵し、必要な時にエネルギーとして水素を取り出す手法が注目されている。
【0005】
例えば、アンモニアは17.8mass%もの水素量を有し、水素貯蔵材量の中では大きな値を示す。アンモニアは室温、1MPa以下で容易に液化でき、液体アンモニアのエネルギー密度は液体水素の1.5~2.2倍であり、高密度に水素エネルギーを輸送することができる。このように、アンモニアは水素キャリアとして優れている一方で、燃料電池等に利用する場合、低温で水素に変換しなければならない。
【0006】
そして、アルカリ金属水素化物とアンモニアを反応させ、水素を取り出す手法が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0007】
また、添加剤を利用し、アンモニアとアルカリ金属水素化物の化学反応を促進させることで、アルカリ金属水素化物とアンモニアの反応率を向上させる方法が開示されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-203129号公報
【0009】

【非特許文献1】Y. Kojima, K. Tange, S. Hino, S. Isobe, M. Tsubota, K. Nakamura, M. Nakatake, H. Miyaoka, H. Yamamoto and T. Ichikawa; Molecular Hydrogen Carrier with Activated Nano-Hydride and Ammonia; Journal of Materials Research 24 2185-2190 (2009)
【非特許文献2】H. Yamamoto, H. Miyaoka, S. Hino, H. Nakanishi, T. Ichikawa and Y. Kojima; Recyclable Hydrogen Storage System Composed of Ammonia and Alkali Metal Hydride; International Journal of Hydrogen Energy 34 9760-9764 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の非特許文献1に記載されているように、アルカリ金属水素化物としてリチウム水素化物(以下、LiHともいう。)やナトリウム水素化物(以下、NaHともいう。)を用いた場合は、アンモニアとアルカリ金属水素化物の反応率が50%程度である。反応率が50%程度なので、未反応のアンモニアも50%程度、気体として反応容器に残存することになる。すなわち、反応終了後に取り出す水素が未反応のアンモニアと混合されるので、反応終了後に取り出せる水素の純度が低いという問題もあり、アンモニアとアルカリ金属水素化物の反応率を改善する必要があった。
【0011】
また、上記の非特許文献2に記載されているように、アルカリ金属水素化物としてカリウム水素化物(以下、KHともいう。)を用いた場合には、アンモニアとKHの反応率を約100%とすることができる。一方で、KH及びアンモニアの質量に対して生成する水素量は3.5mass%程度であり、KH及びアンモニアの質量に対して取り出すことが可能な水素の総量が少ないという問題もあった。
【0012】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アンモニアとの反応で良好な反応率及び質量水素発生密度を両立可能な複合アルカリ金属水素化物、複合アルカリ金属水素化物の製造方法、複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法及びアンモニア-水素変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係る複合アルカリ金属水素化物は、
二種以上のアルカリ金属水素化物が複合された複合アルカリ金属水素化物であり、
前記二種以上のアルカリ金属水素化物が混合された混合アルカリ金属水素化物と比べ、Cu-Kα波長のX線回折測定における回折ピークの半値幅が1.5倍以上である、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記二種以上のアルカリ金属水素化物がLiH、KH及びNaHから選択される二種であることが好ましい。
【0015】
また、前記二種以上のアルカリ金属水素化物がLiH及びKHであることが好ましい。
【0016】
また、前記複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとの反応により、Cu-Kα波長のX線回折測定における回折角2θ=22.5±1°、32.5±1°及び39.5±1°のそれぞれの範囲にピークが現れる複合アルカリ金属アミド化合物が生成されることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る複合アルカリ金属水素化物の製造方法は、
二種以上のアルカリ金属水素化物を混合してメカノケミカル処理を行って複合アルカリ金属水素化物を得る、
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様に係る複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法は、
本発明の第1の態様に係る複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させて複合アルカリ金属アミド化合物を得る、
ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様に係る複合アルカリ金属水素化物の製造方法は、
本発明の第1の態様に係る複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させて水素を発生させる、
ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第5の態様に係るアンモニア-水素変換方法は、
本発明の第1の態様に係る複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとを反応させ、水素及び複合アルカリ金属アミド化合物を生じさせて水素を取り出す水素発生工程と、
前記複合アルカリ金属アミド化合物と水素とを反応させ、複合アルカリ金属水素化物及びアンモニアに再生させる還元工程と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る複合アルカリ金属水素化物は、アンモニアとの反応で良好な反応率及び質量水素発生密度を両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1、比較例1の試料のX線回折スペクトルである。
【図2】実施例で使用したガス循環装置の構成図(図2(A))及び反応セルの構成図(図2(B))である。
【図3】実施例1、比較例1の試料とアンモニアとの反応により生成した副成物のX線回折スペクトルである。
【図4】実施例1の試料とアンモニアとの反応により生成した副成物のFTIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(複合アルカリ金属水素化物)
複合アルカリ金属水素化物は、二種以上のアルカリ金属水素化物がメカノケミカル処理により複合化されている。ここでいう複合化とは、ハンドミル等による単なる混合とは異なり、二種以上のアルカリ金属水素化物がナノレベルで複合され、アルカリ金属水素化物の結晶構造に変化が生じている状態である。

【0024】
二種以上のアルカリ金属水素化物が複合されているか否かについては、CuKα波長のX線回折測定により特定することができる。後述の実施例にて示すように、2種以上のアルカリ金属水素化物を混合した混合アルカリ金属水素化物のX線回折スペクトルにおけるピークの半値幅に比べ、複合アルカリ金属水素化物のX線回折スペクトルにおけるピークの半値幅が1.5倍以上を示している。

【0025】
そして、この複合アルカリ金属水素化物は、混合アルカリ金属水素化物に比べて、アンモニアとの反応における反応率が高く、高純度の水素を発生させ得るという特性を有する。

【0026】
アルカリ金属水素化物として、LiH、KH及びNaHからなる群から2種以上が選択される。複合アルカリ金属水素化物のアルカリ金属水素化物の組み合わせについて、アルカリ金属水素化物とアンモニアとの反応による水素を発生させる反応において、特に、KHはアンモニアとの反応速度が速いので、KHが含まれていることが好ましい。そして、複合アルカリ金属水素化物の質量当たりの水素の総量を多くするという観点から、原子量が小さいアルカリ金属の水素化物を含んでいることが好ましいので、LiHとKHの2種の組み合わせであることが好ましい。なお、「複合アルカリ金属水素化物の質量当たりの水素の総量」とは、複合アルカリ金属水素化物と反応に供与したアンモニアの重量の合計に対して、発生した水素の重量の割合を示す。

【0027】
複合アルカリ金属水素化物に含まれるアルカリ金属水素化物の組成比は特に限定されないが、複合アルカリ金属水素化物の質量当たりの水素の総量を多くするという観点から、原子番号が小さいアルカリ金属の水素化物の組成比を大きくすることが好ましい。例えば、LiHとKHを複合させた複合アルカリ金属水素化物であれば、LiH:KH=50:50~90:10であることが好ましい。

【0028】
また、複合アルカリ金属水素化物が、単なる混合ではなく、複合されていることが必要であり、複合されているか否かについては、複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとの反応で副生される複合アルカリ金属アミド化合物のX線回折測定を行うことでも確認することができる。後述の実施例に示すように、例えば、LiHとKHの複合アルカリ金属水素化物をアンモニアと反応させて副生される複合アルカリ金属アミド化合物の場合、LiNH及びKNHに由来しないピーク(回折角2θ=22.5±1°、32.5±1°及び39.5±1°)が観察される。一方、LiHとKHを単に混合した混合アルカリ金属水素化物をアンモニアと反応させて副生される副成物では、LiNH及びKNHに由来するピークのみが現れる。これにより、アンモニアとの反応前における複合アルカリ金属水素化物では、アルカリ金属水素化物の単なる混合ではなく、複合されていることを確認できる。

【0029】
また、複合アルカリ金属水素化物とアンモニアとの反応で副生された複合アルカリ金属アミド化合物のFTIR測定においても、後述の実施例に示すように、例えば、LiHとKHの複合アルカリ金属水素化物をアンモニアと反応させて得られる副成物の場合、アミド由来のピーク(3200~3300cm-1の範囲)が観察されるが、このピークはLiNH及びKNHに由来しないピークであることから、アンモニアとの反応前における複合アルカリ金属水素化物では、アルカリ金属水素化物の単なる混合ではなく、複合されていることを確認できる。

【0030】
(複合アルカリ金属水素化物の製造方法)
複合アルカリ金属水素化物は、原料となる二種以上のアルカリ金属水素化物についてメカノケミカル処理を行うことで製造される。メカノケミカル処理とは、混合対象である粉体にせん断力、衝突力又は遠心力のような機械的エネルギーを加えつつ混合する混合方法であり、原料の二種以上のアルカリ金属水素化物が微細化され、それぞれのアルカリ金属水素化物が均一に分散されるとともに、原料粒子表面からの非晶質化(無定形化)や原料粒子同士の強固な接合、複合化が付加される。メカノケミカル処理では、遊星型ボールミル装置、振動ミル、ローラーミル、内外筒回転型ミル、アトライター、インナーピース型ミル、気流粉砕型ミル等のミリング装置が用いられる。好ましくは、遊星型ボールミル装置等を用いた高エネルギーミリングを行うとよい。

【0031】
複合アルカリ金属水素化物の原料となるアルカリ金属水素化物の洗浄、定量、ボールミリング装置への仕込みなど、すべての操作を不活性ガス雰囲気下で行うとよい。これは、空気中の酸素ガス(O)や水蒸気(HO)による被処理物の特性劣化を防止するためである。

【0032】
ここで、アルカリ金属水素化物の洗浄とは、原料となるアルカリ金属水素化物に付着した有機物を洗浄することである。有機物を溶解させることが可能な有機溶媒であれば、特に制限されず、ペンタン、オクタン、無水ヘキサン等、常温で液状の飽和炭化水素が例示される。

【0033】
また、不活性ガスについては、アルカリ金属、アルカリ金属水素化物に対して、不活性であれば、特に限定されず、アルゴン、窒素、水素を例示することができる。なお、アルカリ金属水素化物として、LiHを選択した場合は、窒素と反応し、LiHが窒化され水素化物の純度が低下するので、不活性ガスとしてアルゴン、または、水素を用いることが好ましい。また、ミリング装置等に不活性ガスを充填する圧力について、特に制限されないが、装置の安全性の観点から、0.5~1.5MPaが好ましく、より好ましくは、0.7~1.2MPaである。

【0034】
また、メカノケミカル処理を間歇的に行ってもよい。例えば、1時間のメカノケミカル処理に対して、30分間の休止時間を導入してもよい。このように、間歇的に、具体的には、0.5~3時間のメカノケミカル処理に対して、10~50分の休止時間を導入することで、メカノケミカル処理中の温度上昇を防ぐことが可能であり、得られる複合アルカリ金属水素化物の純度を高めることが可能である。

【0035】
(複合アルカリ金属アミド化合物の製造方法、水素の製造方法)
上述した複合アルカリ金属水素化物をアンモニアと反応させることにより、複合アルカリ金属アミド化合物及び水素を発生させることができる。この反応は、室温で、0.5~0.6MPaの反応条件で化学反応が進行するので、例えば、複合アルカリ金属水素化物を容器に充填し、片方からアンモニアを流通させると、もう一方から水素を取り出すことが可能である。また、反応終了後の副生物である複合アルカリ金属アミド化合物は固体として容器に存在するので、発生させた水素との分離も容易である。

【0036】
また、例えば、複合アルカリ金属水素化物を充填した容器とアンモニアを充填した容器を準備し、複合アルカリ金属水素化物を充填した容器にアンモニアを導入して反応させることで、水素が必要な場合に、必要な水素の量のみを発生させることが可能となるので、水素の貯蔵方法としても有効に利用することが出来る。また、アンモニアとして液体アンモニアを用いてもよい。

【0037】
(アンモニア-水素変換方法)
アンモニア-水素変換方法は、水素発生工程と還元工程とを備える。水素発生工程は、上述した水素製造方法と同様の手法にて水素を発生させて取り出す。取り出された水素は燃料電池等に利用される。

【0038】
水素発生工程では、水素のほか、複合アルカリ金属アミド化合物が副生される。還元工程では、この副生した複合アルカリ金属アミド化合物を水素で還元することで、複合アルカリ金属水素化物及びアンモニアに再生させる。還元工程は、複合アルカリ金属アミド化合物が充填される容器に水素を導入する等により行い得る。還元工程における温度条件は50~400℃、好ましくは200~350℃であり、反応水素圧は1MPa以下であることが好ましい。また、複合アルカリ金属アミド化合物をミリング処理してから行ってもよい。また、複合アルカリ金属アミド化合物は水や酸素と反応しやすいため、水分濃度及び酸素濃度が1ppm以下の条件で行うことが好ましい。

【0039】
すなわち、複合アルカリ金属水素化物を充填した容器とアンモニアを充填した容器を準備し、これらの反応により水素を発生させた後、副生した複合アルカリ金属アミド化合物が充填された容器に対して、再び、水素を流通させて還元することで、複合アルカリ金属水素化物及びアンモニアとして再利用することができる。したがって、水素が供給される場所で、複合アルカリ金属アミド化合物と水素を反応させ、複合アルカリ金属水素化物及びアンモニアに再生させ、水素が必要とされる場所で、アンモニアと複合アルカリ金属水素化物を反応させて水素を取り出すという、水素貯蔵と水素発生を組み合わせたシステムを構築することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。まず、以下の各試料を作製した。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
複合アルカリ金属水素化物の原料として、リチウム水素化物(LiH,99.4%,Alfa Aesar;ジョンソン・マッセイ・ジャパン)、カリウム水素化物(KH,99.5%,Alfa Aesar;ジョンソン・マッセイ・ジャパン)を使用した。また、カリウム水素化物は、原料として使用する前にグローブボックス内で、無水ヘキサンで洗浄し、付着している有機物を除去した。
次いで、LiH及びKH(LiH(50mg):KH(250mg)=1:1のモル比、合計約300mg)、20個の鉄製ボール(直径7mm)をミリング容器(クロム鋼製、Umetoku)に入れ、遊星型ボールミリング装置(P-7,Fritsch CO,LTD)を用い、水素雰囲気下(1.0MPa)、10時間のボールミリング処理を行い、薄灰色で粉末状の複合アルカリ金属水素化物を得た。
なお、ボールミリング処理を連続で行うと装置の温度が上昇するので、1時間のミリング処理に対して30分間の休止時間を導入しつつ、計10時間のボールミリング処理を行った。
【実施例】
【0042】
(比較例1)
遊星ボールミリング装置を使用せずに、LiH及びKHを乳鉢で混合した以外は、実施例1と同様の操作を行い、混合アルカリ金属水素化物を得た。
【実施例】
【0043】
(比較例2)
ボールミリング装置に投入する原料をLiH(約300mg)のみにした以外は、実施例1と同様の操作を行い、単体アルカリ金属水素化物(LiH)を得た。
【実施例】
【0044】
(比較例3)
ボールミリング装置に投入する原料をKH(約300mg)のみにした以外は、実施例1と同様の操作を行い、単体アルカリ金属水素化物(KH)を得た。
【実施例】
【0045】
(複合アルカリ金属水素化物の結晶性の評価)
得られた実施例1及び比較例1の試料について、結晶性を評価した。結晶性の評価は、粉末X線回折測定により測定した。1.541858オングストロームの波長を有するCuKα放射線を使用した。X線粉末回折測定に使用した装置、測定の条件は、以下のとおりである。
装置:Rigaku社製RINT2100X線粉末回折計
電圧:40kV
電流:30mA
サンプリング幅:0.050°
スキャンスピード:2.0°/min
スキャン範囲:始角は5°、終了角は35°
【実施例】
【0046】
また、大気非接触環境で測定するために、グローブボックス内でガラス製のプレートの上に試料を一旦載せた後、アピエゾングリス(Apiezon, M&I Material Ltd.)、ポリイミドシート(Kapton,Du pont-Toray Co.Ltd.)を用いて測定試料を密封し、密封した測定試料についてX線粉末回折測定を行った。
【実施例】
【0047】
実施例1、比較例1のX線回折スペクトルを図1に示す。図1を見ると、実施例1では、比較例1に比べて、それぞれのピーク(回折角2θ=27±0.5°、31.5±0.5°、45±0.5°、53±0.5°、56±0.5°)の半値幅がおよそ1.5倍以上になっており、アルカリ金属水素化物(LiH、KH)をメカノケミカル処理することによって、単純に混合した場合に比べて結晶性に変化が生じていることがわかる。
【実施例】
【0048】
(アンモニアとの反応における反応率、水素発生量の評価)
上記で作製した各試料(実施例1、比較例1~3)とアンモニアとをそれぞれ反応させ、各試料の反応率(%)、水素発生量(mass%)を評価した。
【実施例】
【0049】
各試料とアンモニアとの反応は、図2(A)に示すように、ガス密度計(GD400型、河電機株式会社)、反応セル、流量計、ポンプを備える閉鎖系のガス循環装置を構築して行った。図2(B)に示すように、ガス循環装置の反応セルに試料をセットした。そして、試料に対して5.8倍のモル比で0.58MPaのアンモニアをガス循環装置に導入し、20℃、50sccmの流量でガスを循環させ、アンモニアとそれぞれの試料とを反応させた。
【実施例】
【0050】
各試料の反応率は、反応10時間後、24時間後の系内におけるアンモニアガス中の水素ガスの濃度を測定することで評価した。二成分系混合ガスの測定において、測定ガス密度と成分分率の関係は、二つの成分ガスそれぞれのガス密度を用い、式1で表わされる。即ち、ガス密度の測定値から水素ガスの容積比、水素ガス濃度が求められるので、水素ガス濃度から試料の反応率が求められる。なお、ガス密度は温度と圧力に依存するので、温度と圧力を同時に測定することによって補正し、基準として標準状態(0℃,1atm)でのガス密度(アンモニアのガス密度値:0.7715kg/Nm、水素のガス密度値:0.0899kg/Nm)を使用した。
D=(a-b)×(X/100)+b ・・・(式1)
D:測定ガスの密度値(kg/Nm
X:成分ガスA(水素)の容積比(VOL%)
a:成分ガスA(水素)の密度(kg/Nm
b:成分ガスB(アンモニア)の密度(kg/Nm
【実施例】
【0051】
また、水素発生量は、発生した水素の重量/(試料の重量及び反応に供与されたアンモニアの重量)×反応率により求めた。
【実施例】
【0052】
表1に各試料(実施例1、比較例1~3)とアンモニアとの反応24時間後の水素発生率、反応10時間後及び24時間後の反応率を示す。
【実施例】
【0053】
【表1】
JP2015160770A_000003t.gif
【実施例】
【0054】
実施例1では、24時間後の反応率が100%、水素発生量は4.9mass%であり、反応率及び水素発生量のいずれも良好であった。
【実施例】
【0055】
なお、反応率が100%を維持されるとし、複合アルカリ金属水素化物中の質量の小さいLiHの割合を高め、LiH:KHを6:4、7:3、8:2、9:1にすると、水素発生量はそれぞれ5.29mass%、5.78mass%、6.37mass%、7.09mass%となるものと予測され、反応率及び水素発生量のいずれをも高く両立されるものと考えられる。
【実施例】
【0056】
また、実施例1と比較例1の副成物について、X線粉末回折測定とフーリエ変換型分光光度計による測定を行った。X線粉末回折測定は上記と同じ条件で行った。フーリエ変換型分光光度計は以下の条件で行った。
装置:フーリエ変換赤外分光分析装置(Perkin-Elmer製、Spectrum One)
測定範囲:3400cm-1~3000cm-1
【実施例】
【0057】
実施例1、比較例1の試料を用いて水素を発生させた後に生成した副成物のX線回折スペクトルを図3に、FTIRスペクトルを図4に示す。
【実施例】
【0058】
図3のX線回折スペクトルを見ると、比較例1では、LiNH、KNHに起因するピークが観察され、生成した副生物はLiNH及びKNHと同定された。この結果は、反応前のアルカリ金属水素化物(LiH、KH)が複合せずに、LiHとKHが単に混合された状態で存在していたことを示している。
【実施例】
【0059】
一方、実施例1では、図3のX線回折スペクトルを見ると、LiNH及びKNHに帰属しない回折角2θ=約22.5°、約32.5°、約39.5°の位置にピークが観察され、未知の回折パターンが観測された。また、図4のFTIRスペクトルを見ると、アミド由来と考えられるピーク(3200~3300cm-1)が観測されたものの、LiNH、KNH由来のピークのいずれとも一致していないことがわかる。実施例1の試料とアンモニアとの反応により、新規な複合アルカリ金属アミド化合物が生成しており、反応前の試料では、アルカリ金属水素化物(LiH、KH)が複合し、LiH、KHが複合された状態で存在していたことを示している。
【実施例】
【0060】
また、実施例1の試料を用いて水素発生後に副生した複合アルカリ金属アミド化合物について、ミリング処理した後、300℃、水素フロー下(0.5MPa)で4時間処理し、複合アルカリ金属水素化物を再生した。反応率は100%であり、副生した複合アルカリ金属アミド化合物を水素で還元することにより、複合アルカリ金属水素化物とアンモニアに再生可能であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
複合アルカリ金属水素化物は、アンモニアとの反応で良好な反応率及び質量水素発生密度を両立可能であることから、燃料電池等、水素エネルギーが要求される分野での利用が期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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