TOP > 国内特許検索 > 核酸中の塩基を変換する方法、及び核酸塩基変換剤 > 明細書

明細書 :核酸中の塩基を変換する方法、及び核酸塩基変換剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-195736 (P2015-195736A)
公開日 平成27年11月9日(2015.11.9)
発明の名称または考案の名称 核酸中の塩基を変換する方法、及び核酸塩基変換剤
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07H  21/04        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07H 21/04
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2014-073943 (P2014-073943)
出願日 平成26年3月31日(2014.3.31)
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】坂本 隆
【氏名】大江 美成子
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C057
Fターム 4B024AA11
4B024AA20
4B024CA01
4B024HA20
4C057BB10
4C057MM10
要約 【課題】核酸において一塩基置換する方法を提供する。
【解決手段】イノシンと、光応答性修飾ヌクレオシドが導入された光応答性修飾核酸と、光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有しイノシンに対応する相補的な位置にシトシン(C)を有する標的核酸とを、ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程を含む方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式I:
【化1】
JP2015195736A_000010t.gif
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化2】
JP2015195736A_000011t.gif
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、水素を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、
を含む、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する方法。
【請求項2】
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、の後に、さらに、
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、20℃~40℃の範囲の温度でインキュベーションして行われる、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、1時間~10日間の範囲でインキュベーションして行われる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、pH6.2~7.8の範囲のpHでインキュベーションして行われる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、340nm~380nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒~30秒の範囲で光照射して行われる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、300nm~330nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、請求項2~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒~30秒の範囲で光照射して行われる、請求項2~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程の後に、さらに、
光架橋が開裂した二重鎖を解離して、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸の鎖を得る工程、
を含む、請求項2~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法によって、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸を製造する方法。
【請求項12】
次の式I:
【化3】
JP2015195736A_000012t.gif
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化4】
JP2015195736A_000013t.gif
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、水素を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸塩基変換剤。
【請求項14】
請求項12に記載の光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
を含む、光架橋を形成する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって、光架橋が形成された核酸を製造する方法。
【請求項16】
請求項12に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸光架橋剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸中の塩基を変換する方法、及び核酸塩基変換剤に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学的の分野において、人為的な遺伝子の点突然変異(一塩基置換)、すなわち、意図した遺伝子の意図した位置で意図した一塩基置換を人為的に生じさせる技術は、長年の夢であり、永らく求められてきていた。
【0003】
一方、核酸の光反応技術として、5-シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号、特許文献2:特許第3753942号)、3-ビニルカルバゾール構造を塩基部位に持つ修飾ヌクレオシドを使用した光架橋技術(特許文献3:特許第4814904号、特許文献4:特許第4940311号)がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3753938号公報
【特許文献2】特許第3753942号公報
【特許文献3】特許第4814904号公報
【特許文献4】特許第4940311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、核酸において一塩基置換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、核酸の光反応技術を鋭意研究してきたところ、光応答性修飾核酸と標的となる核酸をハイブリダイゼーションして二重鎖を形成させた後に、光照射によって光架橋を形成させて、インキュベーションを行うことによって、標的核酸中に一塩基置換を高い効率で実現できること、この光架橋性修飾核酸の塩基配列中に導入した光応答性塩基の5’側に隣接させてイノシン(I)を導入すると、イノシン(I)に相補的な位置のシトシン(C)がウラシル(U)へと塩基変換できること、これが室温や37℃の中性溶液という穏和な条件下で実現できること、を見いだして、本発明に到達した。
【0007】
したがって、本発明は次の(1)以下にもある。
(1)
次の式I:
【化1】
JP2015195736A_000002t.gif
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化2】
JP2015195736A_000003t.gif
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、水素を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、
を含む、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する方法。
(2)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、の後に、さらに、
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程、
を含む、(1)に記載の方法。
(3)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、20℃~40℃の範囲の温度でインキュベーションして行われる、(1)~(2)のいずれかに記載の方法。
(4)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、1時間~10日間の範囲でインキュベーションして行われる、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、pH6.2~7.8の範囲のpHでインキュベーションして行われる、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、340nm~380nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒~30秒の範囲で光照射して行われる、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、300nm~330nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(2)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒~30秒の範囲で光照射して行われる、(2)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程の後に、さらに、
光架橋が開裂した二重鎖を解離して、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸の鎖を得る工程、
を含む、(2)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11)
(1)~(10)のいずれかに記載の方法によって、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸を製造する方法。
【0008】
さらに、本発明は、次の(21)以下にもある。
(21)
次の式I:
【化3】
JP2015195736A_000004t.gif
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化4】
JP2015195736A_000005t.gif
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸。
(22)
(21)に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸塩基変換剤。
(23)
(21)に記載の光応答性修飾核酸の、核酸塩基変換のための使用。
(24)
(21)に記載の光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
を含む、光架橋を形成する方法。
(25)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、340nm~380nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(24)に記載の方法。
(26)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒~30秒の範囲で光照射して行われる、(24)~(25)のいずれかに記載の方法。
(27)
(24)~(26)のいずれかに記載の方法によって、光架橋が形成された核酸を製造する方法。
(28)
(21)に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸光架橋剤。
(29)
(21)に記載の光応答性修飾核酸の、核酸光架橋のための使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、核酸において、シトシン(C)からウラシル(U)への一塩基置換を、高い効率で実現できる。この一塩基置換は、光反応を利用した特異的な置換であり、室温や37℃の中性溶液という穏和な条件下でも実現できるので、核酸を損傷することなく、生理的な条件下で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は塩基変換方法のスキームを示す説明図である。
【図2】図2は塩基対形成の説明図である。
【図3】図3は光架橋反応の結果を示すチャート及びグラフである。
【図4】図4は塩基変換反応の結果を示すチャート及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施他の形態に限定されるものではない。

【0012】
[塩基置換の方法]
本発明によれば、
式Iで表されるイノシンが、リン酸ジエステル結合して導入され、式IIで表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、リン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、
を含む方法によって、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換することができる。

【0013】
好適な実施の態様において、光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、の後に、さらに、光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程、を行うことができる。

【0014】
[標的核酸]
標的核酸は、一塩基変換の標的となる塩基を有する核酸である。標的となる塩基は、シトシン(C)であり、これがウラシル(U)へと一塩基変換される。すなわち、本発明の一塩基変換によれば、標的核酸の塩基配列中にリン酸ジエステル結合されたシチジンがウリジンへと変換され、あるいは、リン酸ジエステル結合されたデオキシシチジンがデオキシウリジンへと変換され、結果として特異的な一塩基置換が実現される。標的核酸の塩基長に特に制約はないが、例えば、6塩基長以上、7塩基長以上、8塩基長以上、9塩基長以上、とすることができ、例えば、1000塩基長以下、100塩基長以下、50塩基長以下、20塩基長以下、16塩基長以下、12塩基長以下、とすることができる。標的核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよい。

【0015】
[光応答性修飾核酸]
光応答性修飾核酸は、一塩基置換の標的となる塩基を有する標的核酸と相補的な塩基配列を有し、ただし、標的核酸の塩基配列中で標的となるシトシンに対して相補的な位置には、式Iのイノシン(すなわち、イノシン又はデオキシイノシン)が導入されて位置しており、イノシンの3’側に隣接して、式IIの光応答性修飾ヌクレオシドが導入されて位置している。なお、標的核酸の塩基配列中において、光応答性修飾ヌクレオシドに対して相補的な位置には、任意の塩基(ヌクレオシド)が位置することができ、例えば、グアニンが位置することができる。光応答性修飾核酸の塩基長に特に制約はないが、例えば、6塩基長以上、7塩基長以上、8塩基長以上、9塩基長以上、とすることができ、例えば、1000塩基長以下、100塩基長以下、50塩基長以下、20塩基長以下、16塩基長以下、12塩基長以下、とすることができる。光応答性修飾核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよい。

【0016】
[イノシン]
光応答性修飾核酸の塩基配列中に導入されたイノシンは、次の式Iで表されるイノシンである:
【化5】
JP2015195736A_000006t.gif

【0017】
式Iにおいて、R1は、水素を表し、R2は、水酸基を表し、R3は、水素又は水酸基を表す。

【0018】
[光応答性修飾ヌクレオシド]
光応答性修飾核酸の塩基配列中に導入された光応答性修飾ヌクレオシドは、次の式IIで表される光応答性修飾ヌクレオシドである:
【化6】
JP2015195736A_000007t.gif

【0019】
式IIにおいて、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素を表し、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素を表し、
R4は、水素を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基を表す。

【0020】
好適な実施の態様において、式IIのR11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0021】
好適な実施の態様において、式IIのR12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0022】
[二重鎖の形成]
光応答性修飾核酸と標的核酸は、上述のように、相補的な塩基配列を有しているので、公知の条件下で、ハイブリダイズさせて二重鎖を形成することができる。

【0023】
[光架橋の形成]
光応答性修飾ヌクレオシドは、二重鎖を形成した後に、光照射によって光反応して、イノシンに対して相補的な位置に位置するシトシン(すなわち、塩基変換の標的となるシトシン)と、光架橋を形成する。光照射は、例えば、340nm~380nmの範囲、360nm~370nmの範囲の波長を含む光、例えば、366nmの波長を含む光の照射によって行うことができる。好適な実施の態様において、単波長光、例えば366nmの波長の単波長光を、使用することができる。光照射は、例えば、0.1秒~30秒、1秒~20秒、5秒~15秒の範囲の照射時間によって行うことができる。光照射は、例えば、0℃~40℃、0℃~30℃、0℃~20℃、0℃~10℃の範囲の温度で、例えば、氷冷下で、行うことができる。

【0024】
本発明の光応答性修飾核酸は、イノシンを導入したことによって、必要となる光照射時間が短縮されている。したがって、本発明の光応答性修飾核酸は、光架橋剤としても、優れたものとなっており、本発明は、光架橋剤、光架橋を形成する方法、光架橋が形成された核酸を製造する方法にもある。

【0025】
[二重鎖のインキュベーションによる塩基変換]
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションすると、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換される。このインキュベーションは、90℃といった高温に加熱する必要はなく、高濃度の化合物を投入する必要もなく、常温常圧で生理的な塩濃度とpHで、行うことができる。このために、操作は簡易であり、また核酸あるいは共存する生体分子を損傷する可能性は最小であり、インビトロ及びインビボの広い応用が期待される。

【0026】
インキュベーションは、例えば、4℃~40℃、10℃~40℃、20℃~40℃、30℃~38℃の範囲の温度で、行うことができる。インキュベーションは、例えば、中性条件下、例えば、pH6.2~7.8の範囲のpHで、行うことができる。所望により、公知の緩衝液、例えば、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、カコジル酸緩衝液、を使用してもよい。インキュベーションは、例えば、生理食塩水の塩濃度、例えば、50~150mM、80~120mMの塩濃度としてもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、などの塩を使用して、行うことができる。インキュベーションは、例えば、1時間~10日間、6時間~7日間、12時間~4日間、24時間~3日間の範囲で、行うことができる。好適な実施の態様において、シトシンからウラシルへの塩基変換の効率(変換率)は、例えば、10%以上、15%以上、25%以上、30%以上、40%以上、とすることができ、例えば、90%以下、70%以下、50%以下とすることができる。塩基変換率は、インキュベーション時間とともに増大する傾向にあり、所望の変換率に応じて、インキュベーション時間を選択することができる。本発明によれば、このような穏和な条件下で、このような短時間のインキュベーション時間で、塩基変換できる。

【0027】
[光架橋の開裂]
塩基変換された後の二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させることができる。開裂に使用される光照射は、例えば、300nm~330nm、310nm~320nmmの範囲の波長を含む光、例えば312nmの波長を含む光の照射によって行うことができる。好適な実施の態様において、単波長光、例えば312nmの波長の単波長光を、使用することができる。開裂に使用される光照射は、例えば、1分~60分、5分~30分、10分~20分の範囲の照射時間によって行うことができる。開裂の光照射は、例えば、0℃~40℃、10℃~40℃、15℃~35℃、20℃~30℃の範囲の温度で、例えば、室温下で、行うことができる。

【0028】
[二重鎖の解離]
光架橋が開裂した後の二重鎖は、核酸のアニーリングの条件として、公知の条件下とすることによって、単鎖へと解離することができる。すなわち、塩基変換された標的核酸は、光応答性修飾核酸と分離して、回収することができる。二重鎖の解離の条件下で、光架橋の開裂を行ってもよい。

【0029】
[塩基変換された標的核酸]
本発明によれば標的核酸は、温度やpHなどを含めて、生理的な条件に近い穏和な条件下で、塩基変換される。そのために、核酸分子、あるいは他の生体分子に、与える損傷は最小のものとなるために、インビトロにとどまらず、インビボでの広い応用が期待されるものである。
【実施例】
【0030】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[塩基変換方法のスキーム]
図1に、塩基変換方法のスキームをまとめて示す。図1の右側は、実施例による塩基変換方法の実験操作を示す流れ図である。イノシン(I)と隣接するCNVKを有する光応答性修飾核酸とイノシンと相補的な位置にあるシトシン(C)を有する標的核酸とで、二重鎖を形成させた(図1の右側の上から一段目)。これに対して366nmの光照射をすると、わずか10秒の照射で、CとCNVKの間に光架橋が形成され(図1の右側の上から二段目)、これを37℃でインキュベーションするとCがUへと塩基変換した(図1の右側の上から三段目)。これに対して312nmの光照射をすると、UとCNVKの間の光架橋が開裂して、塩基変換された標的核酸が得られた。
【実施例】
【0032】
図1の左側は、比較例による実験操作を示す流れ図である。イノシン(I)の代わりにグアノシン(G)を有する光応答性修飾核酸と標的核酸とで、二重鎖を形成させた(図1の左側の上から一段目)。これに対して366nmの光照射をすると、CとCNVKの間に光架橋が形成されたが(図1の左側の上から二段目)、実施例と同程度に光架橋が形成されるためには、少なくとも30秒の光照射を要した。これを37℃でインキュベーションしても、観察された時間内(3日間)では塩基変換は生じなかった。
【実施例】
【0033】
なお、あえて、これを90℃に加熱して、2日間インキュベーションすると部分的に塩基変換が生じた(図1の左側の上から三段目)。これに対して312nmの光照射をすると、UとCNVKの間の光架橋が開裂して、塩基変換された標的核酸が得られた。
【実施例】
【0034】
イノシン(I)とグアノシン(G)が、それぞれシトシン(C)とどのように塩基対を形成すると考えられているかを、図2に示す。
【実施例】
【0035】
[光反応性修飾ヌクレオシドを含むオリゴDNAの合成]
核酸塩基の塩基部分に代えてビニルカルバゾール骨格構造を備えて、デオキシリボース部分にはデオキシリボースを備えた、光反応性修飾ヌクレオシドとして、次式:
【化7】
JP2015195736A_000008t.gif
の3-シアノビニルカルバゾール-1’-β-デオキシリボシド (CNVK)を合成した。この化合物から、次式:
【化8】
JP2015195736A_000009t.gif
の核酸合成試薬を合成した。これらの合成は、特許文献4(特許第4940311号)の実施例のスキーム1の手順に沿って行った。その後、一般的なシアノエチルホスホロアミダイト法に従い、DNA自動合成機により、光反応性修飾ヌクレオシド(CNVK)を含むオリゴDNAを合成した。オリゴDNAの同定はMALDI-TOF-MS解析により行った。
【実施例】
【0036】
[光架橋反応]
2重鎖DNA(15μM)及びdU(75μM)を緩衝液(50mMカコジル酸ナトリウム、100mMNaCl、pH7.4)に溶解して、氷浴下、LED光源(366nm、1600mW/cm2)を用いて光照射を行った。光照射後のサンプルをUPLC(50mMギ酸アンモニウム/アセトニトリル、(アセトニトリル1%から15%/10分))により分析し、各ピークの比から光架橋効率を算出した。得られた結果を、図3に示す。
【実施例】
【0037】
[塩基変換反応]
HPLCにより生成した光架橋後2重鎖DNA(5μM)を緩衝液(50mMカコジル酸ナトリウム、100mMNaCl、pH7.4)に溶解し、37℃でインキュベートした。312nm光照射(トランスイルミネータ)による開裂(25℃、15分)を行った後、UPLC(50mMギ酸アンモニウム/アセトニトリル、(アセトニトリル1%から10%/15分)による分析を行い、各ピークの比から塩基変換効率を算出した。得られた結果を、図4に示す。
【実施例】
【0038】
図3は、本発明による光架橋反応の加速実験を示すチャート及びグラフである。次の配列のオリゴDNA(ODN)を使用して、実験を行った。
ODN(IK): 5’-TGCI CNVKACG-3’
ODN(C): 5’-ACGTGCGCA-3’
ODN(GK): 5’-TGCG CNVKACG-3’
図3の5’-TGCXCNVKACG-3’のうち、XがIとなったODNが上記ODN(IK),XがGとなったODNが上記ODN(GK)である。ODN(C)は、これらと二重らせんを形成可能な相補性のODNである。図3の左側のチャートは、ODN(IK)、ODN(GK)が、それぞれODN(C)と光架橋された二重らせん(★印のピーク)を形成していくことを示している。図3の右側のグラフは、このチャートを、横軸を光照射時間(秒)、縦軸光架橋反応率(%)としてまとめたグラフである。ODN(IK)とODN(C)の光架橋形成は、ODN(GK)とODN(C)の光架橋形成と比較して、速やかに進行し、例えば、ODN(GK)では光照射後約30秒間を要した光架橋率(約95%)に、ODN(IK)では光照射後10秒間で到達した。(すなわち、GをIに変更することで光架橋反応が3倍に加速された。)
【実施例】
【0039】
図4は、本発明による塩基変換反応の実験を示すチャート及びグラフである。使用したオリゴDNA(ODN)の配列は、図3と同じである。ODN(IK)を使用した場合には、37℃で3日間までインキュベートしたところ、ODN(C)は、CがUに変換されてODN(U)となっていった。図4の左側のチャートはこのODN(U)の形成を示している。図4の右側のグラフは、このチャートを、横軸を反応時間(日)、縦軸をCがUに変換されてODN(U)となった割合(C→U変換率%)としてまとめたグラフである。ODN(IK)では、Uへの塩基変換が37℃において時間とともに速やかに進行して3日後には約40%に達しているが、ODN(GK)では、この条件下(37℃、3日間)ではUへの塩基変換が観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、穏和な条件下で、人為的な遺伝子の点突然変異(一塩基置換)、すなわち、遺伝子において意図した一塩基置換を生じさせる技術を提供する。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3