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明細書 :試料台及び走査型プローブ顕微鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-169549 (P2015-169549A)
公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
発明の名称または考案の名称 試料台及び走査型プローブ顕微鏡
国際特許分類 G01Q  30/14        (2010.01)
G01Q  60/24        (2010.01)
FI G01Q 30/14
G01Q 60/24
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2014-044827 (P2014-044827)
出願日 平成26年3月7日(2014.3.7)
発明者または考案者 【氏名】西田 周平
【氏名】藤井 輝夫
出願人 【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116207、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 俊明
【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査請求 未請求
要約 【課題】フィルタを保持するフィルタ保持部を試料台の流体セルに取り付けることによって、走査型プローブ顕微鏡と別個の濾(ろ)過装置を使用することなく、流体に含有された試料を容易に、かつ、効率よく観察することができるようにする。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡の観察対象となる試料を保持する試料台10であって、前記試料を含有する流体が導入される流体セル11と、前記流体の通過を許容するとともに前記試料の少なくとも一部が付着するフィルタ15を含むフィルタユニットとを備え、前記流体セル11は流体導入口を含み、前記フィルタユニットは、流体排出口を含み、前記流体セル11の一面に取り付けられる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡の観察対象となる試料を保持する試料台であって、
前記試料を含有する流体が導入される流体セルと、
前記流体の通過を許容するとともに前記試料の少なくとも一部が付着するフィルタを含むフィルタユニットとを備え、
前記流体セルは流体導入口を含み、
前記フィルタユニットは、流体排出口を含み、前記流体セルの一面に取り付けられることを特徴とする試料台。
【請求項2】
前記流体は、前記流体導入口から前記流体セル内に導入され、前記フィルタを通過した後、前記流体排出口から排出される請求項1に記載の試料台。
【請求項3】
前記流体導入口から前記流体セル内に導入されて前記流体排出口から排出される前記流体の総流量に応じて、前記フィルタに付着する試料の量が変化する請求項2に記載の試料台。
【請求項4】
前記流体セルは、前記フィルタに付着した試料を観察するプローブユニットを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の試料台。
【請求項5】
前記フィルタに付着した試料は、前記流体中で前記プローブユニットによって観察される請求項4に記載の試料台。
【請求項6】
前記フィルタユニットは、スキャナに取り付けられるとともに、前記プローブユニットに対して変位可能となるように前記流体セルに流体密に取り付けられる請求項4又は5に記載の試料台。
【請求項7】
前記プローブユニットは、スキャナを介して前記流体セルに取り付けられる請求項4又は5に記載の試料台。
【請求項8】
前記流体排出口から洗浄用流体が導入されると、前記フィルタに付着した試料は、前記フィルタから除去される請求項1~7のいずれか1項に記載の試料台。
【請求項9】
前記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡である請求項1~8のいずれか1項に記載の試料台。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の試料台を含む走査型プローブ顕微鏡。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料台及び走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微小な試料を観察するために、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)等の走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)が使用されている。
【0003】
該走査型プローブ顕微鏡は、観察対象となる試料と先端を尖(とが)らせた探針との間に働く多様な物理量を検出することによって、前記試料の表面形状や物性を測定する顕微鏡の総称である。また、前記原子間力顕微鏡は、観察対象となる試料の近傍に保持された探針と前記試料との間に働く相互作用を、前記探針が先端に取り付けられたカンチレバーやチューニングフォークの変位又は振動特性の変化として検出し、前記相互作用の値を一定に保ちながら前記試料の表面を走査することによって、前記試料の凹凸形状を画像化する装置である。
【0004】
そして、前記走査型プローブ顕微鏡の観察対象となる試料を保持するための試料台は、一般的には、樹脂、金属等を削り出すことによって作製される。また、一般的に、前記試料台は、試料表面を2次元方向に走査し、かつ、探針と試料との間の距離を制御するためのスキャナに取り付けられて使用される。また、前記試料は、接着剤等によって試料台に固定される。なお、前記試料が微小で試料台に直接固定することができない場合には、前記試料をマイカ、グラファイト等から成る平坦(たん)な基板の表面に固定した後、該基板を試料台に固定する。また、前記試料が液体中に懸濁された物質(例えば、細胞)の場合には、前記液体をメンブランフィルタ等のフィルタを通して吸引濾(ろ)過することによって試料をフィルタの表面に吸着させた後、該フィルタを試料台に固定する(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【0005】
<nplcit num="1"> <text>木暮一啓、「AFMの海洋細菌への応用」、電子顕微鏡、 Vol.38, No.2(2003),pp.83-85.</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>T. Nishino, E. Ikemoto, and K. Kogure,“Application of Atomic Force Microscopy to Observation of Marine Bacteria”, Journal of Oceanography vol. 60, 2004, pp.219-225.</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の試料台では、フィルタによる吸引濾過は、走査型プローブ顕微鏡とは別個の濾過装置で行う必要があった。また、フィルタを試料台に固定するためには、手動で濾過装置から取り外し、試料台に固定する必要がある。このため、作業者は走査型プローブ顕微鏡の近くに居らねばならず、作業の効率化に限界がある。また、遠隔操作で試料を採取し、試料台に固定することには制限がある。
【0007】
さらに、液体中に懸濁された試料をフィルタを通して吸引濾過してフィルタの表面に吸着させた後、該フィルタを試料台に固定するためには、一度液体を除去した後、フィルタを試料台に固定する必要がある。しかし、液体を除去することによって、試料が変性する可能性があるので、観察可能な試料には制限がある。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、フィルタユニットを試料台の流体セルに取り付けることによって、走査型プローブ顕微鏡と別個の濾過装置を使用することなく、流体に含有された試料を容易に、かつ、効率よく観察することができる試料台及び走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の試料台においては、走査型プローブ顕微鏡の観察対象となる試料を保持する試料台であって、前記試料を含有する流体が導入される流体セルと、前記流体の通過を許容するとともに前記試料の少なくとも一部が付着するフィルタを含むフィルタユニットとを備え、前記流体セルは流体導入口を含み、前記フィルタユニットは、流体排出口を含み、前記流体セルの一面に取り付けられる。
【0010】
本発明の他の試料台においては、さらに、前記流体は、前記流体導入口から前記流体セル内に導入され、前記フィルタを通過した後、前記流体排出口から排出される。
【0011】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記流体導入口から前記流体セル内に導入されて前記流体排出口から排出される前記流体の総流量に応じて、前記フィルタに付着する試料の量が変化する。
【0012】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記流体セルは、前記フィルタに付着した試料を観察するプローブユニットを含む。
【0013】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記フィルタに付着した試料は、前記流体中で前記プローブユニットによって観察される。
【0014】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記フィルタユニットは、スキャナに取り付けられるとともに、前記プローブユニットに対して変位可能となるように前記流体セルに流体密に取り付けられる。
【0015】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記プローブユニットは、スキャナを介して前記流体セルに取り付けられる。
【0016】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記流体排出口から洗浄用流体が導入されると、前記フィルタに付着した試料は、前記フィルタから除去される。
【0017】
本発明の更に他の試料台においては、さらに、前記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡である。
【0018】
本発明の走査型プローブ顕微鏡においては、試料台を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流体に含有された試料を容易に、かつ、効率よく観察することができる試料台及び走査型プローブ顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における試料台の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるフィルタ部の実物の写真である。
【図3】本発明の実施の形態における試料台に試料を導入する方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における試料台に導入された試料を原子間力顕微鏡で観察した結果を示す写真である。
【図5】本発明の実施の形態における試料台から試料を排出する方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。

【0022】
図1は本発明の実施の形態における試料台の構成を示す断面図である。

【0023】
図において、10は、本実施の形態における走査型プローブ顕微鏡の試料台であり、前記走査型プローブ顕微鏡の観察対象となる試料を保持する装置である。なお、前記走査型プローブ顕微鏡の構成については、前記試料台10を除いて、図示が省略されている。

【0024】
前記走査型プローブ顕微鏡は、「背景技術」の項で説明したような観察対象となる試料と先端を尖らせた探針との間に働く多様な物理量を検出することによって、前記試料の表面形状や物性を測定する顕微鏡であれば、いかなる種類の顕微鏡であってもよく、例えば、走査型トンネル顕微鏡、走査型磁気力顕微鏡、走査型SQUID顕微鏡、走査型ホール素子顕微鏡、走査型ケルビンプローブフォース顕微鏡、走査型マクスウェル応力顕微鏡、静電気力顕微鏡、走査型圧電応答顕微鏡、走査型非線形誘電率顕微鏡、走査型近接場光顕微鏡、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡等であってもよいが、原子間力顕微鏡であることが最も望ましい。

【0025】
該原子間力顕微鏡は、「背景技術」の項で説明したように、観察対象となる試料の近傍に保持された探針と前記試料との間に働く相互作用を、前記探針が先端に取り付けられたカンチレバーやチューニングフォークの変位又は振動特性の変化として検出し、前記相互作用の値を一定に保ちながら前記試料の表面を走査することによって、前記試料の凹凸形状を画像化する装置である。

【0026】
ところで、原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡は、外部からの音響雑音等を除去するために重い除振台の上に取り付けられることが多く、そのため、装置全体の移動に労力がかかることから、実験室内に据え付けて使用されるのが一般的であった。

【0027】
しかし、近年では、小型で持ち運び可能な原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡は、既に実用化されている(例えば、非特許文献3参照。)。
<nplcit num="3"> <text>T. Mutsuo, T. Nakazawa, T. Niino, A. Yamamoto, B. Kim, Y. Hoshi, K. Ikeda, M. Michihata, and H. Kawakatsu, “Fabricating Five Atomic Force Microscopes with an Extremely Low Budget -A Student Project-”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 43, No. 7B, 2004, pp.4615-4618。</text></nplcit>

【0028】
また、小型で持ち運び可能な原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡として、ブルカー社が製造する製品名「Innova」、株式会社日立ハイテクサイエンスが製造する製品名「小型汎(はん)用ユニットAFM5100N」、ナノサーフ社が製造するモジュラーAFMシステムである製品名「Easyscan2AFM」、ソフトワークス社が輸入する製品名「ハンディAFM」等が市販されている。

【0029】
そこで、本実施の形態では、前記走査型プローブ顕微鏡がこれらのような小型で持ち運び可能な原子間力顕微鏡であるものとして説明する。なお、本実施の形態において、走査型プローブ顕微鏡又は原子間力顕微鏡は、制御用のコンピュータ等をも含むものとする。また、原子間力顕微鏡の全体的な構成及び動作については、非特許文献3にも示されているように、既知であるので、その説明を省略する。

【0030】
図に示されるように、本実施の形態における試料台10は、流体セル11と、フィルタユニットとしてのフィルタ保持部14とを備える。前記流体セル11は、上板部11a、下板部11b及び側板部11cを備えるとともに、前記上板部11a、下板部11b及び側板部11cによって周囲を画定された内部空間としての空洞部11eを備えている。なお、前記流体セル11は、いかなる形状のものであってもよいが、図に示されるように、上板部11aと下板部11bとが互いに平行であり、上板部11aの側端と下板部11bの側端とが側板部11cによって連結された扁(へん)平な中空円筒状又は中空角筒状の形状の部材であることが望ましい。

【0031】
そして、前記流体セル11の空洞部11e内には、走査型プローブ顕微鏡である原子間力顕微鏡のプローブとして機能するプローブユニット21が配設されている。該プローブユニット21は、カンチレバー21aと該カンチレバー21aの先端に取り付けられた尖った探針21bとを備え、前記カンチレバー21aの基端がプローブ固定部22を介して流体セル11に取り付けられている。なお、図に示される例において、前記プローブユニット21は、上板部11aによって構成される流体セル11の上面に取り付けられているが、他の面に取り付けられていてもよい。さらに、前記プローブユニット21の構成及び動作については、通常の原子間力顕微鏡のプローブと同様であるので、その説明を省略する。

【0032】
前記プローブユニット21は、前記探針21bの先端が試料と接触する接触法(コンタクトモード)によって試料を観察するものであってもよいし、前記探針21bの先端を強制振動させるタッピング法(タッピングモード)によって試料を観察するものであってもよいし、前記探針21bの先端が試料と接触しない非接触法(ノンコンタクトモード)によって試料を観察するものであってもよい。

【0033】
また、前記フィルタ保持部14は、フィルタ15を保持する部材であって、前記流体セル11の一面に取り付けられる。なお、前記フィルタ保持部14は、必ずしもフィルタ15と別個の部材である必要はなく、フィルタ15と一体的に製造された部材であってもよい。また、図に示される例において、前記フィルタ保持部14は、下板部11bによって構成される流体セル11の下面に取り付けられているが、他の面に取り付けられていてもよい。さらに、前記フィルタ15は、単一のフィルタ部材であってもよいが、本実施の形態においては、上部フィルタ部材15aと下部フィルタ部材15bとを積層したものとして説明する。

【0034】
前記上部フィルタ部材15aは、いかなる種類のフィルタであってもよいが、表面に試料が付着する部材であるので、試料に化学的又は物理的な影響を与えない部材であることが望ましく、例えば、フッ素樹脂、セルロースアセテート等から成る孔(こう)径が揃(そろ)った多孔性の膜であるメンブランフィルタと称されるフィルタであることが最も望ましい。なお、メンブランフィルタは各種のものが市販されているので、観察対象である試料の種類に適合した孔径等の性質を備えるものを適宜選択することができる。

【0035】
また、前記下部フィルタ部材15bは、いかなる種類のフィルタであってもよいが、上部フィルタ部材15aを支持する部材であるので、比較的高い強度を備えた部材であることが望ましく、例えば、ステンレス鋼等の金属粉を焼結した多孔体である焼結フィルタであることが最も望ましい。なお、前記下部フィルタ部材15bは、不要であれば、省略することもできる。

【0036】
そして、前記フィルタ保持部14は、前記流体セル11の下板部11bに形成された下面開口11dを塞(ふさ)ぐようにして、前記下板部11bに取り付けられる。なお、前記フィルタ保持部14の周縁と下面開口11dの周縁との間は、柔軟性を備えるシール部材13によって塞がれる。該シール部材13は、柔軟に変形可能であって、かつ、空洞部11e内に導入された流体の漏出を防止可能な部材であればいかなる種類の部材であってもよいが、例えば、シリコーン樹脂等の柔軟性を備える樹脂から成るメンブレン(皮膜)、O-リング等であることが望ましい。これにより、前記フィルタ保持部14は、流体セル11及び該流体セル11に取り付けられたプローブユニット21に対して変位可能となるように流体セル11に取り付けられ、かつ、前記フィルタ保持部14は流体セル11に流体密に、すなわち、フィルタ保持部14の周縁と下面開口11dの周縁との間を流体である気体又は液体が通過不能なように、取り付けられる。なお、前記流体セル11は、図示されない支持部材に変位不能に固定されている。

【0037】
また、前記フィルタ保持部14内におけるフィルタ15より外側(図における下側)には、フィルタ外側空間としてのフィルタ外空洞部14aが形成されている。さらに、前記フィルタ保持部14の下面には、流体排出口としての流体排出管16が接続されている。該流体排出管16の内部に形成された連通孔16aは、前記フィルタ外空洞部14aに連通しているので、前記流体セル11の空洞部11eからフィルタ保持部14を通過してフィルタ外空洞部14aに流入した流体は、前記流体排出管16の連通孔16aを通って試料台10の外部に排出される。

【0038】
さらに、前記フィルタ保持部14の下部は、フィルタ支持台18に取り付けられる。該フィルタ支持台18は、フィルタ保持部14を走査するための装置であり、例えば、原子間力顕微鏡において一般的に使用されているX-Y-Zピエゾステージ等から成るスキャナである。これにより、フィルタ保持部14を流体セル11に対してX-Y-Z方向、すなわち、3次元方向に変位させることができ、したがって、上部フィルタ部材15aの表面に付着した試料をプローブユニット21の探針21bに対して走査させることができる。なお、図に示される例において、前記流体排出管16は、フィルタ支持台18の中を通過し、その下端がフィルタ支持台18の下面より下方に突出するように配設されている。

【0039】
また、前記流体セル11の側板部11cの一部には流体導入口としての流体導入管12aが接続され、前記側板部11cの他部には流体補助排出口としての流体補助排出管12bが接続されている。そして、試料を含有した流体は、前記流体導入管12aから流体セル11の空洞部11e内に導入され、フィルタ保持部14を通過した後、流体排出管16から排出される。なお、前記流体補助排出管12bは、通常は閉止されて使用されず、例えば、空洞部11e内を洗浄するために導入された洗浄用流体を排出する場合等に開放されるものであり、不要であれば、省略することもできる。

【0040】
次に、前記フィルタ保持部14及びフィルタ支持台18の構成について詳細に説明する。

【0041】
図2は本発明の実施の形態におけるフィルタ部の実物の写真である。なお、図において、(a)はフィルタ支持台を取り外した状態を示す写真、(b)はフィルタを取り外した状態を示す写真、(c)はフィルタ支持台を取り付けた状態を示す写真である。

【0042】
本発明の発明者は、図2に示されるようなフィルタ保持部14及びフィルタ支持台18を実際に製造した。図2(a)に示されるように、フィルタ保持部14と流体排出管16とは、ともに一体的に形成され、概略漏斗状の部材を構成している。また、図2(b)に示されるように、フィルタ保持部14は、円筒形の本体と、該本体に螺(ら)合されるフランジ部材を含み、フィルタ15は、フランジ部材と本体の上端との間に挟み込まれることによって保持される。さらに、図2(c)に示されるように、スキャナとして機能するフィルタ支持台18は、ピエゾ素子から成る概略円筒形のX-Y-Zステージであり、フィルタ保持部14がフィルタ支持台18に取り付けられると、流体排出管16が概略円筒形のフィルタ支持台18の中心に形成された貫通孔に挿入された状態となる。

【0043】
なお、図2に示されるようなフィルタ保持部14及びフィルタ支持台18の形状並びに構造は、一例に過ぎないものであって、これに限定されるものでなく、適宜変更することができる。例えば、フィルタ保持部14は、必ずしも円筒形である必要はなく、角筒形その他の形状であってもよい。また、例えば、流体排出管16は、必ずしもフィルタ保持部14の下面に接続されて下方に延在するものである必要はなく、フィルタ保持部14の側面に接続されて側方に延在するものであってもよい。さらに、例えば、フィルタ支持台18は、必ずしも円筒形である必要はなく、直方体その他の形状であってもよい。

【0044】
次に、前記試料台10に観察対象となる試料を導入する方法について説明する。

【0045】
図3は本発明の実施の形態における試料台に試料を導入する方法を説明する断面図、図4は本発明の実施の形態における試料台に導入された試料を原子間力顕微鏡で観察した結果を示す写真である。なお、図4において、(a)は低倍率の撮像写真、(b)は高倍率の撮像写真であって(a)の要部を拡大した写真である。

【0046】
本実施の形態においては、観察対象となる試料を含有する流体を流体導入管12aから流体セル11内に導入し、前記流体をフィルタ15を通過させた後、流体排出管16から排出することによって、前記フィルタ15の表面に前記試料を付着させ、該試料を観察するようになっている。なお、図3において、25は、フィルタ15の表面、より具体的には、上部フィルタ部材15aの表面に付着した試料としての観察試料である。

【0047】
この場合、図示されない流体供給源に他端が接続された管路の一端を前記流体導入管12aに接続し、図示されない排出流体収容部に他端が接続された管路の一端を前記流体排出管16に接続するとともに、前記管路の少なくとも一方に流体ポンプを配設して、前記流体の流体セル11内への導入及び流体セル11からの排出を行うことが望ましい。

【0048】
なお、前記流体は、空気、蒸気等の気体であっても、水等の液体であっても、気体と液体とが混合した気液二相流であってもよい。また、前記試料は、空気中又は水中の微生物、生体分子、粉塵(じん)、金属粒子、鉱物粒子、有機物粒子、無機物粒子等であるが、走査型プローブ顕微鏡の観察対象となり得るものであれば、いかなる種類のものであってもよい。

【0049】
ここでは、説明の都合上、前記流体が海水であり、前記試料が海水中の微生物である場合について説明する。なお、プローブユニット21を水中乃至液中で使用可能にすることは、周知の技術である(例えば、特許文献1~3参照。)。
<patcit num="1"> <text>特開平7-174767号公報</text></patcit><patcit num="2"> <text>特開平10-170527号公報</text></patcit><patcit num="3"> <text>特開2000-65711号公報</text></patcit>

【0050】
この場合、海水を図示されないポンプによって送出し、図3における矢印Aで示されるように、海水を流体導入管12aから流体セル11の空洞部11e内へ導入する。該空洞部11e内へ導入された海水は、上部フィルタ部材15a及び下部フィルタ部材15bを通過してフィルタ外空洞部14a内に流入した後、図3における矢印Bで示されるように、該フィルタ外空洞部14aから流体排出管16の連通孔16aを通って試料台10の外部に排出される。なお、流体補助排出管12bは閉止されているものとする。

【0051】
また、例えば、原子間力顕微鏡が小型で持ち運び可能なものであれば、原子間力顕微鏡を船舶に積み込んで所望の海域に赴き、該海域における海水を採取し、採取した海水を流体セル11の空洞部11e内へ導入することができる。

【0052】
前記海水に含有されている微生物のような試料は、多孔性の上部フィルタ部材15aの孔(あな)を通過することができないので、少なくともその一部が上部フィルタ部材15aの表面に付着し、観察試料25となる。なお、前記上部フィルタ部材15aの孔径は、前記試料の少なくとも一部の大きさよりも小さくなるように、前記試料の種類に応じて選択される。さらに、観察に適したサイズの試料を採取するために、プレフィルタを採用することもできる。例えば、前記上部フィルタ部材15aの孔径よりも大きな孔径の孔が形成された多孔性のフィルタ部材をプレフィルタとして採用し、流体導入管12a等に設けることにより、所定のサイズ以下の試料のみが上部フィルタ部材15aの表面に付着するようにすることができる。

【0053】
また、上部フィルタ部材15aの表面に付着する観察試料25の量、個数、又は、単位面積当たりの密度は、ポンプによって、流体導入管12aから流体セル11の空洞部11e内へ導入されて流体排出管16から排出される海水の流量と時間との積、すなわち、総流量が増加すればするほど増加し、総流量が減少すればするほど減少する。つまり、流体導入管12aから流体セル11内に導入されて流体排出管16から排出される海水の総流量に応じて、上部フィルタ部材15aに付着する観察試料25の量が変化する。したがって、前記ポンプの動作速度及び/又は動作時間を調整することによって、上部フィルタ部材15aに付着する観察試料25の量を調整することができる。

【0054】
そして、上部フィルタ部材15aの表面に付着した観察試料25が所定の量となると、流体セル11の空洞部11e内に配設されているプローブユニット21によって前記観察試料25を観察することができる。この場合、前記ポンプの作動を停止させ、スキャナであるフィルタ支持台18を作動させてフィルタ保持部14を流体セル11に対して3次元方向に変位させることによって、海水が充填(てん)された状態の空洞部11e内において、上部フィルタ部材15aの表面に付着した観察試料25をプローブユニット21の探針21bに対して走査させ、前記観察試料25を観察する。これにより、海水中に保持されたままの状態の観察試料25、すなわち、自然のままの状態の観察試料25を観察することができる。なお、前記探針21bが取り付けられているカンチレバー21aの先端の変位は、特許文献1~3等にも記載されているように、プローブユニット21が海水中にあっても、検出することが可能である。

【0055】
本発明の発明者は、実際に作成した試料台10を備える原子間力顕微鏡を使用して、採取した海水に含有される試料を実際に観察した。図4には、前記原子間力顕微鏡による撮像写真が示されている。なお、前記海水は、沖縄トラフ・伊良部海丘海域の熱水域(水深2000〔m〕)で採取された海水である。また、上部フィルタ部材15aは、孔径が約0.2〔μm〕の孔を多数備えるメンブランフィルタである。

【0056】
図4(a)を観ると、上部フィルタ部材15aの備える複数の孔を観察することができる。また、図4(a)の要部を拡大した図4(b)を観ると、上部フィルタ部材15aの備える孔と孔との間の平滑な部分に試料が固定されていることが分かる。

【0057】
次に、前記試料台10から観察済みの試料を排出する方法について説明する。

【0058】
図5は本発明の実施の形態における試料台から試料を排出する方法を説明する断面図である。

【0059】
本実施の形態においては、試料の観察が終了すると、洗浄用流体を流体排出管16からフィルタ外空洞部14a内へ導入し、前記洗浄用流体をフィルタ15を通過させた後、流体補助排出管12bから排出することによって、前記フィルタ15の表面に付着していた観察済みの観察試料25を前記フィルタ15の表面から除去し、前記洗浄用流体とともに流体セル11から排出するようになっている。

【0060】
この場合、図示されない洗浄用流体供給源に他端が接続された管路の一端を前記流体排出管16に接続し、図示されない排出洗浄用流体収容部に他端が接続された管路の一端を前記流体補助排出管12bに接続するとともに、前記管路の少なくとも一方に流体ポンプを配設して、前記洗浄用流体の流体セル11内への導入及び流体セル11からの排出を行うことが望ましい。

【0061】
なお、前記洗浄用流体は、気体であっても、液体であっても、気液二相流であってもよいが、前述のように試料を含有する流体が海水である場合には、純水、洗浄剤成分を含有する水等の洗浄液であることが望ましい。ここでは、前記洗浄用流体が洗浄液であるものとして説明する。

【0062】
この場合、洗浄液を図示されないポンプによって送出し、図5における矢印Cで示されるように、流体排出管16の連通孔16aからフィルタ外空洞部14a内へ導入する。該フィルタ外空洞部14a内へ導入された洗浄液は、下部フィルタ部材15b及び上部フィルタ部材15aを通過して流体セル11の空洞部11e内へ流入する。これにより、観察試料25は、上部フィルタ部材15aの表面から除去される。そして、前記洗浄液は、空洞部11e内へ流入した後、図5における矢印Dで示されるように、観察試料25とともに、流体補助排出管12bから試料台10の外部に排出される。

【0063】
なお、流体導入管12aは閉止されているものとする。また、流体補助排出管12bが省略されている場合には、流体導入管12aを開放し、空洞部11e内へ流入した洗浄液を流体導入管12aから試料台10の外部に排出するようにする。

【0064】
このようにして、試料台10から観察済みの試料を排出した後、必要があれば、再度、図3に示されるように、試料を含有した海水を導入して観察を行うことができる。

【0065】
なお、本実施の形態においては、フィルタ支持台18がフィルタ保持部14を走査するためのスキャナであって、上部フィルタ部材15aの表面に付着した試料をプローブユニット21の探針21bに対して走査させる、いわゆるサンプルスキャン型である場合について説明したが、プローブユニット21の探針21bを上部フィルタ部材15aの表面に付着した試料に対して走査させる、いわゆるティップスキャン型を採用することもできる。例えば、カンチレバー21aの基端を流体セル11に取り付けるプローブ固定部22を、X-Y-Zピエゾステージ等から成るスキャナとすることによって、カンチレバー21aの先端に取り付けられた探針21bを上部フィルタ部材15aの表面に付着した試料に対して走査させることができる。この場合、フィルタ保持部14は、流体セル11に対して変位可能である必要はない。

【0066】
また、本実施の形態においては、試料台10の姿勢が、図1に示されるように、下板部11bによって構成される流体セル11の下面に取り付けられたフィルタ15の表面が水平であって、かつ、上を向くような姿勢である場合について説明したが、前記試料台10の姿勢はいかなる姿勢であってもよい。例えば、前記試料台10の姿勢は、フィルタ15の表面が水平であって、かつ、下を向くような姿勢、すなわち、上下が反転した姿勢であってもよいし、フィルタ15の表面が鉛直又は傾斜するような姿勢、すなわち、横向き又は斜めの姿勢であってもよい。

【0067】
さらに、本実施の形態においては、原子間力顕微鏡によって試料の形態を観察する場合について説明したが、フォースカーブを測定して試料の力学的特性を解析することもできる。

【0068】
このように、本実施の形態においては、流体に含有された試料の少なくとも一部が付着するフィルタ15を保持するフィルタ保持部14が試料台10の流体セル11に取り付けられている。したがって、「発明が解決しようとする課題」の項で説明した従来の試料台のように、走査型プローブ顕微鏡とは別個の濾過装置を使用して、試料をフィルタ15の表面に吸着させる必要がない。また、手動でフィルタ15を濾過装置から取り外して試料台10の流体セル11に取り付ける必要もない。これにより、効率よく試料を観察することができる。

【0069】
また、作業者は、走査型プローブ顕微鏡の近くに居る必要がないため、遠隔操作で試料をフィルタ15の表面に付着させて観察することができる。

【0070】
さらに、試料台10は、流体セル11と、流体セル11に取り付けられたフィルタ保持部14とを備え、流体セル11は流体導入管12aを含み、フィルタ保持部14は流体排出管16を含んでいる。これにより、試料を含有する流体は、流体導入管12aから流体セル11内に導入され、フィルタ15を通過した後、流体排出管16から排出され、試料の少なくとも一部はフィルタ15に付着する。

【0071】
さらに、試料を含有する流体の総流量を調節することによって、フィルタ15に付着する試料の量を調節することができ、所望の量の試料をフィルタ15に付着させることができる。

【0072】
さらに、試料を含有する流体を密閉空間である流体セル11の空洞部11e内に保持することができる。これにより、試料を流体中に保持したまま観察することができるので、試料の種類に対する制約が低減される。例えば、試料が生細胞、ウイルス等であっても、生理的条件下で観察することができる。

【0073】
なお、本発明は、走査型プローブ顕微鏡を遠隔的に操作し、流体に含有された微小な試料を、簡便な動作で、採取し、固定し、観察することを可能とする。したがって、作業者が立ち入ることが困難な環境においても、走査型プローブ顕微鏡による観察を行うことができる。例えば、海洋資源調査において走査型プローブ顕微鏡を海中に設置することによって、現場環境で採取した海水に含有される微小試料を観察することができる。したがって、本発明は、海洋調査産業における資源探査装置として利用価値がある。

【0074】
また、走査型プローブ顕微鏡を液体流路の一部として組み込むことができるため、他の液体流路を用いた分析装置と組み合わせて使用することができる。例えば、フローサイトメータと組み合わせて使用することによって、細胞の性状をより精密に解析することができる。したがって、本発明は、生物・医学分野の機器産業における生体試料の分析装置として利用価値がある。

【0075】
さらに、例えば、河川、湖沼等で採取した水、生活用又は産業用の上下水等の各種の液体に含有される微生物、生体分子、粉塵、金属粒子、鉱物粒子、有機物粒子、無機物粒子等を検出乃至観察することができる。さらに、例えば、屋内及び屋外の空気中を浮遊する微生物、生体分子、粉塵、金属粒子、鉱物粒子、有機物粒子、無機物粒子等を検出乃至観察することができる。したがって、本発明は、各種の産業分野又は保健衛生分野における各種の検査装置、探査装置、分析装置等として利用価値がある。

【0076】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、試料台及び走査型プローブ顕微鏡に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 試料台
11 流体セル
12a 流体導入管
14 フィルタ保持部
15 フィルタ
16 流体排出管
18 フィルタ支持台
21 プローブユニット
25 観察試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4