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明細書 :刺激提供装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6215030号 (P6215030)
公開番号 特開2015-112183 (P2015-112183A)
登録日 平成29年9月29日(2017.9.29)
発行日 平成29年10月18日(2017.10.18)
公開日 平成27年6月22日(2015.6.22)
発明の名称または考案の名称 刺激提供装置
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 10/00 V
A61B 10/00 H
請求項の数または発明の数 9
全頁数 23
出願番号 特願2013-254715 (P2013-254715)
出願日 平成25年12月10日(2013.12.10)
審査請求日 平成28年12月12日(2016.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】000180069
【氏名又は名称】山陽電子工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】呉 景龍
【氏名】阿部 康二
【氏名】楊 家家
【氏名】渡辺 伸
【氏名】森山 賢治郎
【氏名】藤川 和彦
【氏名】森安 忍
個別代理人の代理人 【識別番号】100067828、【弁理士】、【氏名又は名称】小谷 悦司
【識別番号】100115381、【弁理士】、【氏名又は名称】小谷 昌崇
【識別番号】100168321、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 敦
審査官 【審査官】湯本 照基
参考文献・文献 国際公開第2013/136800(WO,A1)
特開2013-215366(JP,A)
特開2004-135824(JP,A)
調査した分野 A61B 10/00
特許請求の範囲 【請求項1】
認知症の有無を確認するための刺激を被検者に提供するための刺激提供装置であって、
基準面から突出する第1辺及び第2辺を有するとともに前記基準面と直交する視点において前記第1辺と前記第2辺とがV字型に配置されることにより構成された触覚刺激と、
前記触覚刺激を当該触覚刺激が突出する側から被覆する被覆部材と、
前記被覆部材に形成された開口部を通じて被検者が前記触覚刺激を指先で触れることができるように前記触覚刺激を前記被覆部材に対して駆動する刺激駆動機構と、
前記第1辺及び前記第2辺の少なくとも一方を回転駆動することにより前記第1辺と前記第2辺との間の角度を連続的に調整可能な角度調整機構とを備えている、刺激提供装置。
【請求項2】
前記角度調整機構は、前記第1辺と前記第2辺とが互いに逆向きに回転するように前記第1辺及び前記第2辺を同期して回転駆動可能である、請求項1に記載の刺激提供装置。
【請求項3】
前記角度調整機構は、円形の嵌合穴を有する第1回転部材と、前記嵌合穴内に回転可能に嵌合することにより前記第1回転部材の第1表面と同一平面上に配置される第2表面を有する第2回転部材と、前記第1回転部材及び前記第2回転部材を互いに逆向きに回転させるための動力を前記第1回転部材及び前記第2回転部材に与える動力源とを有し、
前記第1辺の先端部は、前記第1表面に固定されているとともに、前記第1辺の基端部は、前記第2表面上に摺動可能に配置され、
前記第2辺の基端部は、前記第2表面に固定されているとともに、前記第2辺の先端部は、前記第1表面上に摺動可能に配置されている、請求項2に記載の刺激提供装置。
【請求項4】
前記刺激駆動機構は、前記第1辺の先端部と前記第2辺の先端部とを結ぶ直線が先行する方向に前記触覚刺激及び前記角度調整機構を駆動可能であり、
前記第2回転部材は、前記第1辺及び前記第2辺同士の間の角度が予め設定された最大角度とされた状態で前記直線の前記触覚刺激側に配置されている、請求項3に記載の刺激提供装置。
【請求項5】
前記刺激駆動機構は、前記開口部を挟んで設定された初期位置と折り返し位置との間で前記触覚刺激が往復移動するように前記触覚刺激を駆動可能であり、
前記刺激提供装置は、
前記被覆部材の開口部を閉鎖可能な閉鎖部材と、
前記触覚刺激が前記初期位置から移動して前記開口部を通過する際に前記開口部が開放されるとともに、前記触覚刺激が前記折り返し位置から移動して前記開口部を通過する際に前記開口部が前記閉鎖部材により閉鎖されるように、前記刺激駆動機構による動力を前記開閉部材に伝達する動力伝達機構とをさらに備えている、請求項1~4の何れか1項に記載の刺激提供装置。
【請求項6】
前記触覚刺激及び前記角度調整機構は、それぞれ2つずつ設けられ、
前記刺激提供装置は、一方の前記触覚刺激の前記第1辺と前記第2辺との間の角度が予め設定された基準角度に調整されるとともに、他方の前記触覚刺激の前記第1辺と前記第2辺との間の角度が前記基準角度と異なる比較角度に調整されるように前記角度調整機構の動作を制御するとともに、前記2つの触覚刺激を順次前記開口部に臨ませるように前記刺激駆動機構の動作を制御する制御器をさらに備えている、請求項1~5の何れか1項に記載の刺激提供装置。
【請求項7】
前記刺激提供装置は、前記2つの触覚刺激のうち被検者が前記比較角度に調整された触覚刺激であると感じたものを示す回答を入力するための入力部をさらに備え、
前記制御器は、前記入力部により入力された回答が正解である場合に今回提供された前記触覚刺激同士の角度差よりも次回提供される前記触覚刺激同士の角度差を小さくする一方、前記入力部により入力された回答が不正解である場合に今回提供された前記触覚刺激同士の角度差よりも次回提供される前記触覚刺激同士の角度差を大きくする、請求項6に記載の刺激提供装置。
【請求項8】
前記制御器は、今回提供された前記触覚刺激同士の角度差が小さいほど次回提供される触覚刺激同士の角度差を大小する幅を小さくする、請求項7に記載の刺激提供装置。
【請求項9】
前記制御器は、予め設定された終了条件が成立したときに前記刺激駆動機構及び前記角度調整機構の動作の制御を終了し、
前記終了条件は、過去4回の回答の正否の順が、不正解、正解、不正解、正解である場合を含む、請求項7又は8に記載の刺激提供装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症の発症の有無を確認するための刺激を提供するための刺激提供装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載の刺激提供装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の刺激提供装置は、基準面と直交する視点においてV字型の形状を有するとともに基準面から突出する触覚刺激と、触覚刺激を当該触覚刺激が突出する側から被覆する被覆部材と、前記被覆部材に形成された開口部に前記触覚刺激を臨ませるように触覚刺激を被覆部材に対して駆動する刺激駆動機構とを備えている。
【0004】
この刺激提供装置では、触覚刺激の一対の辺間の角度が予め設定された基準角度に設定された基準刺激と一対の辺間の角度が基準角度と異なる比較角度に設定された比較刺激とを連続して開口部に臨ませる。
【0005】
被検者は、開口部を通じて基準刺激及び比較刺激を指先で順次触れるとともに、一対の辺間の角度が大きい触覚刺激を先に触れたか、後に触れたかについて回答する。
【0006】
ここで、比較角度と基準角度との違いを識別することができる比較角度と基準角度との角度差(以下、識別可能角度差という)には、認知症患者(Alzheimer‘s Disease:以下、ADという)と、軽度認知機能障害患者(Mild Cognitive Impairment:以下、MCIという)と、健常高齢者(Normal Control:以下、NCという)との間で有意差が存在する。
【0007】
したがって、被検者の回答により得られる識別可能角度差と、予め準備された識別可能角度差とを比較することにより、被験者がAD、MCI、及びNCの何れに属するのかを確認することができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開第2013/136800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の刺激提供装置は、予め設定された複数の比較角度をそれぞれ有する複数の比較刺激と、これと同数の基準刺激とを有し、1つの比較刺激と1つの基準刺激とにより構成される複数対の触覚刺激を順次開口部に臨ませるものである。
【0010】
そのため、多数の触覚刺激及びこれを被覆する被覆部材により装置が大型化するという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、コンパクトな刺激提供装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、認知症の有無を確認するための刺激を被検者に提供するための刺激提供装置であって、基準面から突出する第1辺及び第2辺を有するとともに前記基準面と直交する視点において前記第1辺と前記第2辺とがV字型に配置されることにより構成された触覚刺激と、前記触覚刺激を当該触覚刺激が突出する側から被覆する被覆部材と、前記被覆部材に形成された開口部を通じて被検者が前記触覚刺激を指先で触れることができるように前記触覚刺激を前記被覆部材に対して駆動する刺激駆動機構と、前記第1辺及び前記第2辺の少なくとも一方を回転駆動することにより前記第1辺と前記第2辺との間の角度を連続的に調整可能な角度調整機構とを備えている、刺激提供装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、触覚刺激の第1辺と第2辺との間の角度を連続的に調整可能であるため、予め想定される複数の角度にそれぞれ設定された複数個の触覚刺激を準備することが不要となる。そのため、触覚刺激の数量を減少することができる。
【0014】
また、触覚刺激の数量の減少に伴い、当該触覚刺激を被覆する被覆部材の大きさも小さくすることができる。
【0015】
したがって、本発明によれば、コンパクトな刺激提供装置を提供することができる。
【0016】
なお、本発明において、『第1辺と第2辺とがV字型に配置される』には、角度調整機構により第1辺と第2辺とが相対的に回転可能となるように、第1辺の基端部と第2辺の基端部とが互いに離間している状態も含まれる。
【0017】
ここで、角度調整機構は、第1辺又は第2辺を回転駆動するものでもよいが、角度調整機構が第1辺又は第2辺を回転駆動する場合、触覚刺激の向き(第1辺の先端部と第2辺の先端部とを結ぶ直線[弦]の向き)が角度の調整のたびに変化する。そのため、開口部に対する触覚刺激の向きを一定に保つ必要がある場合には、角度の調整のたびに触覚刺激の向きを調整する必要がある。
【0018】
そこで、前記刺激提供装置において、前記角度調整機構は、前記第1辺と前記第2辺とが互いに逆向きに回転するように前記第1辺及び前記第2辺を同期して回転駆動可能であることが好ましい。
【0019】
この態様によれば、触覚刺激の向きを固定したまま触覚刺激の角度を調整することができるので、開口部に対する触覚刺激の向きを一定に保つための触覚刺激の向きの調整が不要となる。
【0020】
したがって、開口部に対する触覚刺激の向きを一定に保った状態で触覚刺激を開口部に提供するための刺激駆動機構として、例えば、触覚刺激を往復動作させる単純な機構を採用することができる。
【0021】
ここで、第1辺及び第2辺は、基準面を構成する表面を有する保持部材上で、当該保持部材を貫通する軸回りに回転可能な状態で保持されていてもよい。しかし、このように保持部材と第1辺と第2辺とが相対変位可能な構成を採用した場合、保持部材の表面と第1辺及び第2辺との間に間隙が生じて、基準面(保持部材の表面)に対する触覚刺激の突出寸法が変動するおそれがある。
【0022】
そこで、前記刺激提供装置において、前記角度調整機構は、円形の嵌合穴を有する第1回転部材と、前記嵌合穴内に回転可能に嵌合することにより前記第1回転部材の第1表面と同一平面上に配置される第2表面を有する第2回転部材と、前記第1回転部材及び前記第2回転部材を互いに逆向きに回転させるための動力を前記第1回転部材及び前記第2回転部材に与える動力源とを有し、前記第1辺の先端部は、前記第1表面に固定されているとともに、前記第1辺の基端部は、前記第2表面上に摺動可能に配置され、前記第2辺の基端部は、前記第2表面に固定されているとともに、前記第2辺の先端部は、前記第1表面上に摺動可能に配置されていることが好ましい。
【0023】
この態様によれば、第1回転部材と第1辺とを固定し、第2回転部材と第2辺とを固定し、さらに、第1表面と第2表面とが同一平面上に配置されるように第1回転部材に対して第2回転部材が嵌合している。
【0024】
これにより、第1表面及び第2表面によって基準面を構成しながら、この基準面に第1辺と第2辺とを固定することができる。そのため、第1辺(第1回転部材)及び第2辺(第2回転部材)の回転駆動を許容しながら基準面に対する触覚刺激の突出寸法を一定に保持することができる。
【0025】
ここで、第1辺と第2辺との間の角度を被検者に認識させるためには、第1辺の先端部と第2辺の先端部とを結ぶ直線(弦)が先行するように触覚刺激を駆動し、被検者に対し第1辺及び第2辺の先端部から触覚刺激に触れさせることが有効である。この場合、前記第2回転部材が直線(弦)を超えて存在すると、被検者は、触覚刺激よりも先に第2回転部材と第1回転部材との境界線に触れてしまい、角度認識の結果に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0026】
そこで、前記刺激駆動機構は、前記第1辺の先端部と前記第2辺の先端部とを結ぶ直線が先行する方向に前記触覚刺激及び前記角度調整機構を駆動可能である場合に、前記第2回転部材は、前記第1辺及び前記第2辺同士の間の角度が予め設定された最大角度とされた状態で前記直線の前記触覚刺激側に配置されていることが好ましい。
【0027】
前記態様によれば、刺激駆動機構による駆動時に第2回転部材が前記直線よりも先行するのを防止することができるので、被検者が第1辺及び第2辺の先端部よりも先に第2回転部材と第1回転部材との境界部分に触れるのを防止することができる。
【0028】
したがって、第2回転部材が角度認識の結果に悪影響を与えるのを抑制できる。
【0029】
前記刺激提供装置において、前記刺激駆動機構は、前記開口部を挟んで設定された初期位置と折り返し位置との間で前記触覚刺激が往復移動するように前記触覚刺激を駆動可能であり、前記刺激提供装置は、前記被覆部材の開口部を閉鎖可能な閉鎖部材と、前記触覚刺激が前記初期位置から移動して前記開口部を通過する際に前記開口部が開放されるとともに、前記触覚刺激が前記折り返し位置から移動して前記開口部を通過する際に前記開口部が前記閉鎖部材により閉鎖されるように、前記刺激駆動機構による動力を前記開閉部材に伝達する動力伝達機構とをさらに備えていることが好ましい。
【0030】
この態様によれば、刺激駆動機構として触覚刺激を往復移動させる簡易的な機構を採用しながら、折り返し位置から初期位置への復帰の際に開口部を閉鎖することにより被検者が触覚刺激に触れるのを防止することができる。
【0031】
また、前記態様では、閉鎖部材を駆動するための動力源を別途設けることなく、動力伝達機構を介して伝達される刺激駆動機構の動力を利用して閉鎖部材を駆動することができる。
【0032】
前記刺激提供装置において、前記触覚刺激及び前記角度調整機構は、それぞれ2つずつ設けられ、前記刺激提供装置は、一方の前記触覚刺激の前記第1辺と前記第2辺との間の角度が予め設定された基準角度に調整されるとともに、他方の前記触覚刺激の前記第1辺と前記第2辺との間の角度が前記基準角度と異なる比較角度に調整されるように前記角度調整機構の動作を制御するとともに、前記2つの触覚刺激を順次前記開口部に臨ませるように前記刺激駆動機構の動作を制御する制御器をさらに備えていることが好ましい。
【0033】
この態様によれば、被検者の識別することができる比較角度と基準角度との間の角度差(以下、識別可能角度差という)を求めるために、基準刺激(基準角度に調整された触覚刺激)及び比較刺激(比較角度に調整された触覚刺激)の対を順次提供することができる。
【0034】
ここで、比較角度が異なる複数の試験条件が設定されている場合であっても、2つの触覚刺激のうちの一方の角度を基準刺激に調整するとともに他方の角度を比較刺激に調整することにより、全ての試験条件を2つの触覚刺激を用いて実現することができる。
【0035】
前記刺激提供装置において、前記刺激提供装置は、前記2つの触覚刺激のうち被検者が前記比較角度に調整された触覚刺激であると感じたものを示す回答を入力するための入力部をさらに備え、前記制御器は、前記入力部により入力された回答が正解である場合に今回提供された前記触覚刺激同士の角度差よりも次回提供される前記触覚刺激同士の角度差を小さくする一方、前記入力部により入力された回答が不正解である場合に今回提供された前記触覚刺激同士の角度差よりも次回提供される前記触覚刺激同士の角度差を大きくすることが好ましい。
【0036】
この態様によれば、被検者からの回答に応じて当該被検者の識別可能角度差に見合った角度差を持つ触覚刺激を提供することができる。
【0037】
前記刺激提供装置において、前記制御器は、今回提供された前記触覚刺激同士の角度差が小さいほど次回提供される触覚刺激同士の角度差を大小する幅を小さくすることが好ましい。
【0038】
この態様によれば、識別が困難となる角度差に近づくほど角度差の大小の幅を小さくすることができるので、被検者の識別可能角度差をより精緻に求めることができる。
【0039】
前記刺激提供装置において、前記制御器は、予め設定された終了条件が成立したときに前記刺激駆動機構及び前記角度調整機構の動作の制御を終了し、前記終了条件は、過去4回の回答の正否の順が、不正解、正解、不正解、正解である場合を含むことが好ましい。
【0040】
この態様によれば、過去4回の角度差を用いて被検者がAD、MCI、又はNCの何れに属するのかを確認するための情報を得ることができる。
【0041】
具体的に、識別可能角度差には、例えば、特許文献1に記載のように、ADとMCIとNCとの間で有意差が存在する。
【0042】
そのため、過去4回の角度差の平均値と予め準備された識別可能角度差とを比較することにより、被検者がAD、MCI、又はNCの何れに属するのかを確認することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、コンパクトな刺激提供装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る刺激提供装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の刺激提供装置の蓋部材10を省略して示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】図2の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】図2のVII-VII線断面図である。
【図8】刺激提供装置の動作を説明するための断面図であり、触覚刺激が初期位置にある状態を示す。
【図9】刺激提供装置の動作を説明するための断面図であり、シャッターとシャッター当接部とが当接した状態を示す。
【図10】刺激提供装置の動作を説明するための断面図であり、触覚刺激が折り返し位置にある状態を示す。
【図11】刺激提供装置の動作を説明するための断面図であり、シャッターとシャッター当接部とが当接した状態を示す。
【図12】図1に示す制御機により実行される処理を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す制御機により実行される処理を示すフローチャートである。
【図14】図13の角度決定処理を示すフローチャートである。
【図15】図14の予備試験処理を示すフローチャートである。
【図16】図14の本試験処理を示すフローチャートである。
【図17】図1に示す制御機により実行される処理を示すフローチャートである。
【図18】図1に示すタッチパネルに表示される試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。

【0046】
図1及び図2を参照して、刺激提供装置1は、平面視で略長方形のケース2と、一対の触覚刺激3と、触覚刺激3を保持する刺激保持部4と、刺激保持部4を駆動する刺激駆動機構5と、刺激保持部4及び刺激駆動機構5の動作を制御する制御器6と、制御器6による処理を非常停止するための非常停止ボタン7と、タッチパネル(入力部)8とを備えている。

【0047】
なお、図1においてケース2の長手方向をX方向、ケース2の幅方向をY方向、及びX-Y平面と直交する方向をZ方向として、以下説明する。

【0048】
2つの触覚刺激3は、X方向に一列に並んで配置されている。

【0049】
また、触覚刺激3は、図5及び図6に示すように、X-Y平面と平行する基準面(ベース表面21b、第1表面23b、第2表面24a)から突出する第1辺3a及び第2辺3bを有する。また、触覚刺激3は、第1辺3aと第2辺3bとがV字型に配置されることにより構成されている。

【0050】
図1~図3を参照して、ケース2は、Z方向の一方(図3の上方)に開口する有底のケース本体9と、ケース本体9の開口が開閉可能となるようにケース本体9に対してヒンジ(図3参照)を介して連結された蓋部材10とを備えている。なお、図2では、蓋部材10が省略されている。

【0051】
触覚刺激3、刺激保持部4、刺激駆動機構5、及び制御器6は、ケース本体9と蓋部材10との間に収納されている。一方、非常停止ボタン7及びタッチパネル8は、ケース2の外側から操作可能となるように蓋部材10に取り付けられている。

【0052】
蓋部材10は、触覚刺激3を当該触覚刺激3が突出する側(図3の上側)から被覆する天板(被覆部材)17と、天板17に形成された開口部17aを閉鎖可能なシャッター(閉鎖部材)18と、シャッター18を天板17に取り付けるためのシャッター取付部19、20とを備えている。

【0053】
開口部17aは、天板17をZ方向に貫通する。また、開口部17aは、当該開口部17aを通じて被検者が触覚刺激3を指先F1(図3参照)で触れることができる開口面積を有する。

【0054】
図1及び図9を参照して、シャッター18は、シャッター本体18aと、シャッター本体18aのX方向の端部からZ方向(図9の下向き)に延びる被当接部(動力伝達機構)18bと、被当接部18bの端部からX方向(図1の左向き)に突出する突出部18cとを備えている。

【0055】
なお、図1では、開口部17aを閉じた位置に移動したシャッター18及び開口部17aを開放した位置に移動したシャッター18の双方を示しているが、実際のシャッター18は1つである。

【0056】
シャッター本体18aは、開口部17aをZ方向に被覆可能な大きさを有する。具体的に、シャッター本体18aのX方向及びY方向の大きさは、開口部17aのX方向及びY方向の大きさよりも大きい。

【0057】
突出部18cは、シャッター18が開口部17aを閉鎖するためにX方向(図1の左向き)に移動する際に被検者の指先F1(図3参照)の下に潜り込み易い形状を有する。具体的に、突出部18cは、図1に示すようにY方向に対して傾斜する平面形状を有するとともに、突出部18cの先端部は、図9に示すようにZ方向(下向き)に屈曲している。

【0058】
また、突出部18cは、Y方向における被当接部18bの中央位置からX方向に延びる。

【0059】
被当接部18bは、突出部18cのY方向の外側位置で後述する刺激保持部4のシャッター当接部16A、16Bと当接可能である。

【0060】
被当接部18bは、シャッター本体18aのY方向の両縁部以外の範囲に設けられている。シャッター本体18aの両縁部は、図3に示すように、シャッター取付部19、20に支持されている。

【0061】
シャッター取付部19、20は、シャッター18がX方向にスライド可能となるように当該シャッター18を天板17に取り付けるためのものである。

【0062】
具体的に、シャッター取付部19、20は、開口部17aを挟んで互いにY方向に対向した状態で天板17に固定されている。シャッター取付部19には、シャッター取付部20に向けて開口するとともにX方向に延びるスライド溝19aが形成されている。同様に、シャッター取付部20には、シャッター取付部19に向けて開口するとともにX方向に延びるスライド溝20aが設けられている。シャッター本体18aのY方向の両縁部は、スライド溝19a、20a内に挿入されている。

【0063】
なお、シャッター取付部20は、天板17に形成された貫通穴の一部に重なるように配置されている。本実施形態では、シャッター取付部20と天板17の貫通穴との間に画定される開口部が被検者の指先F1が触覚刺激3に触れるのを許容する開口部17aとして機能する。

【0064】
図2、図3、図5及び図7を参照して、刺激保持部4は、触覚刺激3の第1辺3aと第2辺3bとの角度を連続的に調整可能な一対の角度調整機構12と、角度調整機構12により調整される角度を検出するための一対の角度センサ14と、角度センサ14がそれぞれ取り付けられた一対のセンサ取付部15と、シャッター18に係合するシャッター当接部(動力伝達機構)16A、16Bと、角度調整機構12、センサ取付部15及びシャッター当接部16A、16Bが固定されたベース11とを備えている。

【0065】
ベース11は、天板17と平行に配置されたベース本体21と、ベース本体21のY方向の両端部から互いに離れる方向に突出する一対のスライダ22とを備えている。ベース本体21は、当該ベース方向21をZ方向に貫通するとともに円形の平面形状を有する嵌合穴21aを有する。

【0066】
角度調整機構12は、触覚刺激3の第1辺3aと第2辺3bとの間の角度を連続的に調整可能である。また、角度調整機構12は、第1辺3a及び第2辺3bを同期して逆向きに回転駆動可能である。以下、図2、図5及び図6を参照して、角度調整機構12の構成を説明する。

【0067】
角度調整機構12は、ベース本体21の嵌合穴21a内に回転可能に嵌合する第1回転板(第1回転部材)23と、第1回転板23に形成された円形の嵌合穴23a内に回転可能に嵌合する第2回転板(第2回転部材)24と、モータ25と、モータ25からの動力を両回転板23、24に分配する動力分配機構26とを備えている。

【0068】
第1回転板23は、ベース本体21の嵌合穴21aに嵌合した状態でベース本体21のベース表面21bと同一平面上(同一のX-Y平面上)に配置される第1表面23bを有する。

【0069】
第2回転板24は、第1回転板23の嵌合穴23aに嵌合した状態で第1回転板23の第1表面23bと同一平面上(同一のX-Y平面上)に配置される第2表面24aを有する。つまり、本実施形態では、ベース表面21b、第1表面23b及び第2表面24aにより基準面が構成されている。

【0070】
ここで、触覚刺激3の第1辺3aの先端部は、第1表面23bに固定されているとともに、第1辺3aの基端部は、第2表面24a上に摺動可能に配置されている。

【0071】
また、触覚刺激3の第2辺3bの基端部は、第2表面24aに固定されているとともに、第2辺3bの先端部は、第1表面23b上に摺動可能に配置されている。

【0072】
そのため、第1辺3a及び第2辺3bを回転させる際に、基準面と第1辺3a及び第2辺3bとの間に間隙が形成されるのを抑制することができる。

【0073】
本実施形態において、第1辺3aと第2辺3bとの間の角度θ(図5参照)の最大値は、120度に設定されている。また、第1回転板23及び第2回転板24は、第1辺3aの先端部と第2辺3bの先端部とを結ぶ直線L1(図5参照)がY方向と平行し、かつ、触覚刺激3の図5の左側に位置するように触覚刺激3を保持する。

【0074】
ここで、第2回転板24は、角度θが最大値とされた状態(図5に示す状態)で前記直線L1の触覚刺激3側(図5の右側)に配置されている。したがって、後述する刺激駆動機構5により触覚刺激3が図5の右から左に移動する際に、被検者に対して第1回転板23と第2回転板24との境界部分よりも先に第1辺3a及び第2辺3bの先端部を触れさせることができる。

【0075】
動力分配機構26は、モータ25の出力軸25aに固定された第1ギヤ27と、第1ギヤ27と噛合する第2ギヤ28と、第2ギヤ28と噛合する第3ギヤ29と、第2ギヤ28と中継軸34を介して連結された第4ギヤ30と、第4ギヤ30と噛合する第5ギヤ31と、第5ギヤ31と噛合する第6ギヤ32と、第6ギヤ32に固定された駆動軸35とを備えている。

【0076】
第3ギヤ29は、第1回転板23に固定されている。

【0077】
また、駆動軸35は、第3ギヤ29に対して相対的に回転可能となるように第3ギヤ29を貫通するとともに、駆動軸35の一端(図6の上端)には、第2回転板24が固定されている。

【0078】
そのため、モータ25の駆動により第1ギヤ27が回転方向R1に回転すると、第2ギヤ28が回転方向R1と逆向きの回転方向R2に回転し、これに伴い第3ギヤ28が回転方向R2と逆向きの回転方向R3に回転する。これにより、第3ギヤと連結された第1回転板23に固定された第1辺3aは、回転方向R4に回転する。

【0079】
一方、第2ギヤ28の回転方向R2の回転により、当該第2ギヤ28と中継軸34を介して連結された第4ギヤ30は、回転方向R2と同方向である回転方向R5に回転し、これに伴い第5ギヤ31が回転方向R5と逆向きの回転方向R6に回転し、これに伴い第6ギヤ32が回転方向R6と逆向きの回転方向R7に回転する。これにより、第6ギヤ32と駆動軸35を介して連結された第2回転板24に固定された第2辺3bは、回転方向R8に回転する。

【0080】
したがって、モータ25が回転方向R1に回転すると、第1辺3aと第2辺3bとの間の角度が小さくなる方向に触覚刺激3の角度が調整される。

【0081】
モータ25が回転方向R1と逆向きに回転すると、第1辺3aと第2辺3bとの間の角度が大きくなる方向に触覚刺激3の角度が調整される。

【0082】
また、動力分配機構26は、上述した駆動軸35の他端(図6の下端)に固定された検出板36をさらに有している。検出板36は、第1辺3aと第2辺3bとの間の角度が予め設定された角度(本実施形態では後述する基準角度:60度)とされた状態で、後述する角度センサ14の検出範囲内に侵入可能な形状を有する。

【0083】
図7を参照して、角度センサ14は、互いに対向する発光部と受光部とを有するフォトセンサである。角度センサ14は、発光部と受光部との間に検出板36が位置するか否かを検出可能である。

【0084】
図2、図3及び図9を参照して、シャッター当接部16A、16Bは、ベース11のベース本体21上に立設されたブロック体である。シャッター当接部16A、16Bは、シャッター18の被当接部18bに対してY方向に当接可能である。

【0085】
具体的に、シャッター当接部16A、16Bは、シャッター本体18aのY方向の両縁部の下に配置されている。また、シャッター当接部16A、16Bは、Y方向において、シャッター取付部19、20同士の内側で、かつ、開口部17a及び第1回転板23の外側に配置されている。

【0086】
2つのシャッター当接部16A同士は、Y方向に対向するとともに、2つのシャッター当接部16B同士は、Y方向に対向する。シャッター当接部16A及びシャッター当接部16Bは、X方向におけるシャッター18の両側に配置されているとともに互いにX方向に対向する。

【0087】
このように配置されたシャッター当接部16A、16Bは、後述する刺激駆動機構5からの動力をシャッター18に伝達することによりシャッター18を駆動し、これにより、ケース2の開口部17aは開閉される。

【0088】
図2を参照して、刺激駆動機構5は、ケース2の開口部17aを通じて被検者が触覚刺激3を指先F1で触れることができるように触覚刺激3をケース2に対して駆動する。具体的に、刺激駆動機構5は、開口部17aを挟んで設定された初期位置P1と折り返し位置P2との間で触覚刺激3が往復移動するように刺激保持部4をX方向に往復移動させる。

【0089】
以下、図2~図4を参照して、刺激駆動機構5の構成を説明する。

【0090】
刺激駆動機構5は、ケース本体9の底板9a上に設けられた台座37と、台座37上に立設された一対のレール保持部38と、レール保持部38に保持された一対のレール39と、台座37上に立設された一対の対向板40と、対向板40同士の間に架け渡されたボールねじ41と、ボールねじ41に螺合するナット42と、ナット42と刺激保持部4とを連結するブラケット43と、ギヤ45、46を介してボールねじ41を回転駆動するモータ44と、刺激保持部4の位置を検出する一対のリミットスイッチ47、48とを備えている。

【0091】
レール保持部38は、Y方向に互いに対向するように配置されている。レール39の各々は、両レール保持部38の互いに対向する面にそれぞれ取り付けられている。レール39には、刺激保持部4のスライダ22がX方向にスライド可能な状態で係合している。

【0092】
対向板40は、X方向に互いに対向するように配置されている。ボールねじ41は、X方向に延びるとともに、ボールねじ41の両端部は、両対向板40により回転可能に支持されている。また、ボールねじ41の一方の端部(図4の右端部)は、対向板40を貫通してギヤ46に連結されている。ギヤ46は、モータ44の出力軸に固定されたギヤ45に噛合している。したがって、モータ44からの動力は、ボールねじ41に伝達される。

【0093】
ナット42は、ブラケット43を介して刺激保持部4に固定されている。ここで、刺激保持部4は、スライダ22とレール39との係合によって、X軸回りの回転が規制されている。したがって、ボールねじ41が回転することにより、ナット42及びこれに固定された刺激保持部4は、X方向に移動する。

【0094】
リミットスイッチ47は、図2に示すように、触覚刺激3が初期位置P1に移動した状態で刺激保持部4の右側のセンサ取付部15に接触し、これにより、触覚刺激3が初期位置P1に移動したことが検知される。

【0095】
一方、リミットスイッチ48は、触覚刺激3が折り返し位置P2に移動した状態で刺激保持部4の左側のセンサ取付部15に接触し、これにより、触覚刺激3が折り返し位置P2に移動したことが検知される。

【0096】
以下、図8~図11を参照して、刺激駆動機構5による刺激保持部4の移動に連動するシャッター18の動作について説明する。

【0097】
図8に示すように、触覚刺激3が初期位置P1に移動した状態において、シャッター当接部16Aの右側面がシャッター18の被当接部18bの左側面に当接している。この状態では、シャッター18は、開口部17aの右側に移動しており、開口部17aは、開放されている。

【0098】
触覚刺激3が図8に示す初期位置P1から折り返し位置P2に向けた移動を開始すると、シャッター当接部16Aの右側面は、被当接部18bの左側面から左に離れる。

【0099】
さらに、触覚刺激3の折り返し位置P2に向けた移動が進行すると、図9に示すように、シャッター当接部16Bの左側面が被当接部18bの右側面に当接する。この状態において、両触覚刺激3が開口部17aの左側に位置している。

【0100】
触覚刺激3が図9に示す位置から折り返し位置P2に向けて移動すると、シャッター当接部16Bによってシャッター18が左向きに押される。そして、触覚刺激3が図10に示す折り返し位置P2に移動すると、シャッター18により開口部17aが閉じられる。

【0101】
触覚刺激3が図10に示す折り返し位置P2から初期位置に向けて移動すると、シャッター当接部16Bの左側面は、被当接部18bの右側面から右に離れる。

【0102】
さらに、触覚刺激3の初期位置に向けた移動が進行すると、図11に示すように、シャッター当接部16Aの右側面が被当接部18bの左側面に当接する。

【0103】
この状態からさらに触覚刺激3が初期位置に向けて移動することにより、シャッター当接部16Aによりシャッター18が右向きに押され、シャッター18は、図8に示す位置に移動する。これにより、開口部17aが開放される。

【0104】
図1に示す制御器6は、一方の触覚刺激3の第1辺3aと第2辺3bとの間の角度が予め設定された基準角度(本実施形態では60度)に調整されるとともに、他方の触覚刺激3の第1辺3aと第2辺3bとの間の角度が基準角度よりも大きな比較角度に調整されるように角度調整機構12の動作を制御する。

【0105】
また、制御器6は、2つの触覚刺激3を順次連続して開口部に臨ませるように刺激駆動機構5の動作を制御する。

【0106】
具体的に、制御器6は、上述した角度センサ14、リミットスイッチ47、48、及びタッチパネル8から出力される信号に基づいて、角度調整機構12及び刺激駆動機構5の動作を制御するとともに、必要事項をタッチパネル8に表示させる。

【0107】
以下、図12~図17を参照して、制御器6により実行される処理を説明する。

【0108】
図12を参照して、制御器6による処理が開始されると、タッチパネル8を用いて被検者情報が入力されたか否かが判定される(ステップS1)。ここで、被検者情報は、被検者に予め設定されたID、被検者の年齢、被検者の性別を含む。

【0109】
被検者情報が入力されると(ステップS1でYES)、タッチパネル8を用いて検査の開始指示が入力されたか否かが判定される(ステップS2)。

【0110】
開始指示が入力されると(ステップS2でYES)、触覚刺激3の第1辺3aと第2辺との間の角度(以下、刺激角度という)を初回角度に調整する(ステップS3)。本実施形態では、一方の触覚刺激3の初回角度が60度であり、他方の触覚刺激3の初回角度が120度である。60度に調整される触覚刺激3及び120度に調整される触覚刺激3は、ランダムに設定される。

【0111】
次いで、刺激角度が調整された2つの触覚刺激3を開口部17aに順次望ませることにより、触覚刺激3を提供する(ステップS4)。つまり、ステップS4では、触覚刺激3を図8に示す初期位置から図9に示す位置まで移動させ、この位置で停止させる。触覚刺激3が図9の位置に到達したか否かは、モータ44に対するパルス信号に基づいて判断される。

【0112】
また、ステップS4では、連続して提供された2つの触覚刺激3のうちの刺激角度が大きいものを先に触れたか、後に触れたか、を示す回答を被検者が入力可能な画面をタッチパネル8に表示させる。

【0113】
タッチパネル8を通じて被検者から回答が入力されたか否かが判定され(ステップS5)、回答が入力されるとシャッター18により開口部17aを閉じる(ステップS6)。

【0114】
具体的に、ステップS6では、触覚刺激3を図9に示す位置から図10に示す折り返し位置まで移動させる。これにより、シャッター18がシャッター当接部16Bに押されて、開口部17aを閉じる位置までシャッター18が移動する。

【0115】
具体的に、ステップS6は、リミットスイッチ48(図2参照)により触覚刺激3(刺激保持部4)が折り返し位置P2に到達したことが検出されるまで(ステップS7でYESとなるまで)実行される。

【0116】
次いで、終了条件が成立したか否かが判定される(ステップS8)。

【0117】
ここで、本実施形態における終了条件は、最大の比較角度(120度)を用いた試験に対する回答が3回連続で不正解の場合、予め設定された最小の比較角度(本実施形態では61度)を用いた試験に対する回答が4回連続で正解の場合、及び、過去4回の回答の正否の順が不正解、正解、不正解、正解である場合である。

【0118】
終了条件が成立していないと判定されると(ステップS8でNO)、図13に示すように、ステップS9及びS10と、ステップS11、S12、T、S13とが並行して実行される。

【0119】
具体的に、ステップS9では、触覚刺激3を初期位置P1に向けて移動する。このステップS9は、リミットスイッチ47(図2参照)により触覚刺激3が初期位置P1に到達したことが検出されるまで(ステップS10でYESとなるまで)実行される。

【0120】
一方、ステップS11では、刺激角度を基準角度に向けて調整する。このステップS11は、角度センサ14(図7参照)により検出板36が検出されるまで実行される。

【0121】
ステップS11で刺激角度が基準角度に調整されると、後述する角度決定処理Tにおいて次の比較角度を決定し、刺激角度を決定された角度に調整する(ステップS13)。ここで、刺激角度の調整は、前記ステップS12において検出された基準角度からの回転角度を管理することにより実現される。具体的に、制御器6は、モータ25(ステッピングモータ)に供給されるパルス信号に基づいて基準角度からの回転角度を判断する。この点は、上述したステップS3においても同様である。

【0122】
ステップS10及びステップS13が実行された後、試験の続行を指示するための『次へ』のボタンをタッチパネル8に表示する(ステップS14)。

【0123】
被検者が『次へ』のボタンを操作すると(ステップS14でYES)、上述したステップS4~S8を実行して、新たに設定された比較刺激及び基準刺激を被検者に提供するとともに、被検者からの回答に基づいて当該処理を終了するか否かが判定される。

【0124】
図14を参照して、角度決定処理Tが実行されると、まず、予備試験がすでに行われたか否かが判定される(ステップT1)。予備試験が行われたか否かは、後述する予備試験完了フラグが設定されているか否かによって判定される。

【0125】
ここで、予備試験は、基準刺激との角度差を識別することが容易である比較角度として予め設定されたものを用いて予備的に行う試験である。具体的に、本実施形態の予備試験では、80度~120度の比較角度が用いられる。

【0126】
予備試験が行われていないと判定されると(ステップT1でNO)、予備試験処理Uが実行される。

【0127】
図15を参照して、予備試験処理Uが実行されると、前回の比較角度が120度であるか否かが判定され(ステップU1)、前回の比較角度が120度であると判定されると、前回の回答が正解であるか否かが判定される(ステップU2)。

【0128】
ここで、前回の回答が正解であると判定されると(ステップU2でYES)、比較角度が90度に設定される(ステップU3)一方、前回の回答が不正解であると判定されると(ステップU2でNO)、比較角度が120度で維持される(ステップU4)。

【0129】
そして、ステップU3又はU4が実行されると、当該処理は、角度決定処理Tにリターンする。

【0130】
一方、前回の比較角度が120度ではないと判定されると(ステップU1でNO)、前回の回答が正解であるか否かが判定される(ステップU5)。

【0131】
ここで、前回の回答が不正解であると判定されると(ステップU5でNO)、比較角度が100度に設定される(ステップU6)一方、前回の回答が正解であると判定されると(ステップU5でYES)、比較角度が80度に設定される(ステップU7)。

【0132】
そして、ステップU6又はU7が実行されると、予備試験完了フラグを設定して(ステップU8)、当該処理は、角度決定処理Tにリターンする。

【0133】
なお、ステップU6又はU7が実行された場合のみ予備試験完了フラグが設定される一方、ステップU3又はU4が実行された場合には予備試験完了フラグが設定されない。そのため、予備試験処理Uが実行されるのは、前回の比較角度が120度又は90度である場合に限られる。

【0134】
図14を参照して、ステップT1において予備試験が実行済み、つまり、予備試験完了フラグが設定されていると判定されると、本試験処理Vが実行される。

【0135】
図16を参照して、本試験処理Vが実行されると、前回の回答が正解であるか否かが判定される(ステップV1)。

【0136】
ここで、前回の回答が不正解であると判定されると(ステップV1でNO)、現在の比較角度の大きさに応じて次の3つのステップV21~V23の角度設定が行われる。

【0137】
現在の比較角度θが120度である場合、比較角度は120度に維持される(ステップV21)。現在の比較角度θが65度以上115度以下である場合、比較角度は(θ+5)度に設定される(ステップV22)。現在の比較角度θが61度以上63度以下である場合、比較角度は(θ+2)度に設定される(ステップV23)。

【0138】
一方、前回の回答が正解であると判定されると(ステップV1でYES)、現在の比較角度の大きさに応じて次の3つのステップV31~V33の角度設定が行われる。

【0139】
現在の比較角度θが70度以下である場合、比較角度は(θ-5)度に設定される(ステップV31)。現在の比較角度θが63度以上65度以下である場合、比較角度は(θ-2)度に設定される(ステップV32)。現在の比較角度θが61度である場合、比較角度は61度に維持される(ステップV33)。

【0140】
ステップV21~V23及びステップV31~V33のうちの1つのステップが実行されると、当該処理は、図14の角度決定処理Tにリターンする。

【0141】
角度決定処理Tでは、予備試験処理U又は本試験処理Vにおいて決定された比較刺激及び基準刺激の被検者に提供される順序がランダムに決定され(ステップT2)、当該処理は、メインルーチン(図12及び図13)にリターンする。

【0142】
図12を参照して、メインルーチンのステップS8において終了条件が成立したと判定されると(ステップS8でYES)、図17に示す処理に移行する。

【0143】
具体的に、ステップS9及びS10と、ステップS11及びS12と、ステップS16及びS17とが並行して実行される。なお、ステップS9~S12は、図13と同様の処理であるため、これらの説明を省略する。

【0144】
ステップS16では、予備設定フラグがリセットされ、ステップS17では、試験結果がタッチパネル8に表示される。

【0145】
ステップS17では、例えば、図18に示すようなグラフを試験結果として表示することができる。このグラフは、過去4回の回答の正否の順が不正解、正解、不正解、正解であることにより試験を終了した例を示すものである。

【0146】
この場合には、過去4回の比較角度の平均値(72.5度)を算出し、この平均値を用いて、被検者が認知症患者(AD)、軽度認知機能障害患者(MCI)、又は健常高齢者(NC)の何れに属するのかを確認することができる。

【0147】
具体的に、比較角度と基準角度との違いを識別することができる比較角度と基準角度との角度差(識別可能角度差)には、例えば、国際公開第2013/136800号に記載のように、ADとMCIとNCとの間で有意差が存在する。

【0148】
そのため、上述した平均値と予め準備された識別可能角度差とを比較することにより、被検者がAD、MCI、又はNCの何れに属するのかを確認することができる。

【0149】
なお、ステップS17では、前記平均値を表示することもできる。

【0150】
そして、図17に示すステップS10、S12、及びS17が完了すると、制御器6による処理は終了する。

【0151】
以上説明したように、刺激提供装置1によれば、触覚刺激3の第1辺3aと第2辺3bとの間の角度を連続的に調整可能であるため、予め想定される複数の角度にそれぞれ設定された複数個の触覚刺激3を準備することが不要となる。そのため、触覚刺激3の数量を減少することができる。

【0152】
また、触覚刺激3の数量の減少に伴い、当該触覚刺激を被覆する天板17(被覆部材)の大きさも小さくすることができる。

【0153】
したがって、コンパクトな刺激提供装置1を提供することができる。

【0154】
また、前記実施形態によれば、以下の効果を奏する。

【0155】
前記実施形態によれば、角度調整機構12が第1辺3a及び第2辺3bを同期して回転駆動することにより、触覚刺激3の向きを固定したまま触覚刺激3の角度を調整することができる。そのため、開口部17aに対する触覚刺激3の向きを一定に保つための触覚刺激3の向きの調整が不要となる。

【0156】
したがって、開口部17aに対する触覚刺激3の向きを一定に保った状態で触覚刺激3を開口部17aに提供するための機構として、触覚刺激3を往復動作させる単純な機構(刺激駆動機構5)を採用することができる。

【0157】
前記実施形態によれば、第1回転板23と第1辺3aとを固定し、第2回転板24と第2辺3bとを固定し、さらに、第1表面23bと第2表面24aとが同一平面上に配置されるように第1回転板23に対して第2回転板24が嵌合している。

【0158】
これにより、第1表面23b及び第2表面24aによって基準面を構成しながら、この基準面に第1辺3aと第2辺3bとを固定することができるため、第1辺3a(第1回転板23)及び第2辺3b(第2回転板24)の回転駆動を許容しながら基準面に対する触覚刺激3の突出寸法を一定に保持することができる。

【0159】
前記実施形態によれば、刺激駆動機構5は、直線L1が先行する方向に触覚刺激3及び角度調整機構12を駆動するとともに、第2回転板24は、第1辺3a及び第2辺3b同士の間の角度が予め設定された最大角度(120度)とされた状態で直線L1の触覚刺激3側に配置されている。

【0160】
そのため、刺激駆動機構5による駆動時に第2回転板24が直線L1よりも先行するのを防止することができるので、被検者が第1辺3a及び第2辺3bの先端部よりも先に第2回転板24と第1回転板23との境界部分に触れるのを防止することができる。

【0161】
したがって、第2回転板24が角度認識の結果に悪影響を与えるのを抑制できる。

【0162】
前記実施形態によれば、刺激駆動機構5として触覚刺激3を往復移動させる簡易的な機構を採用しながら、折り返し位置P2から初期位置P1への復帰の際に開口部17aを閉鎖することにより被検者が触覚刺激3に触れるのを防止することができる。

【0163】
また、前記実施形態では、シャッター18を駆動するための動力源を別途設けることなく、動力伝達機構(被当接部18b及びシャッター当接部16A、16B)を介して伝達される刺激駆動機構5の動力を利用してシャッター18を駆動することができる。

【0164】
前記実施形態によれば、2つの触覚刺激3及び2つの刺激駆動機構5を有するため、被検者の識別することができる比較角度と基準角度との間の角度差を求めるために、基準刺激及び比較刺激の対を順次提供することができる。

【0165】
ここで、比較角度が異なる複数の試験条件が設定されている場合であっても、2つの触覚刺激3のうちの一方の角度を基準刺激に調整するとともに他方の角度を比較刺激に調整することにより、全ての試験条件を2つの触覚刺激3を用いて実現することができる。

【0166】
前記実施形態によれば、図15及び図16に示すように、被検者からの回答が正解である場合に今回提供された触覚刺激3同士の角度差よりも次回提供される触覚刺激3同士の角度差を小さくする一方、回答が不正解である場合に今回提供された触覚刺激3同士の角度差よりも次回提供される触覚刺激3同士の角度差を大きくする。

【0167】
そのため、被検者からの回答に応じて当該被検者の識別可能角度差に見合った角度差を持つ触覚刺激3を提供することができる。

【0168】
前記実施形態によれば、図16に示すように、今回提供された触覚刺激3同士の角度差が小さいほど次回提供される触覚刺激3同士の角度差を大小する幅が小さくなる。

【0169】
そのため、識別が困難となる角度差に近づくほど角度差の大小の幅を小さくすることができるので、被検者の識別可能角度差をより精緻に求めることができる。

【0170】
前記実施形態によれば、触覚刺激3の過去4回の回答の正否の順が、不正解、正解、不正解、正解である場合が試験の終了条件に含まれる。

【0171】
そのため、過去4回の角度差を用いて被検者がAD、MCI、又はNCの何れに属するのかを確認するための情報を得ることができる。

【0172】
なお、前記実施形態では、第1辺3a及び第2辺3bを回転する角度調整機構12について説明したが、第1辺3a及び第2辺3bの少なくとも一方を回転駆動する角度調整機構を採用することもできる。

【0173】
また、前記実施形態では、第1辺3aが第1回転板23に固定されているとともに第2辺3bが第2回転板24に固定されている構成について説明したが、第1辺3a及び第2辺3bの双方が1つの保持部材上に回転可能に保持されている構成を採用することもできる。

【0174】
さらに、前記実施形態では、2つの触覚刺激3を有する刺激提供装置1について説明したが、触覚刺激3の数量は、1つでも3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0175】
F1 被検者の指先
P1 初期位置
P2 折り返し位置
1 刺激提供装置
3 触覚刺激
3a 第1辺
3b 第2辺
5 刺激駆動機構
6 制御器
8 タッチパネル(入力部)
12 角度調整機構
16A、16B シャッター当接部(動力伝達機構)
17 天板(被覆部材)
17a 開口部
18 シャッター(閉鎖部材)
18b 被当接部(動力伝達機構)
21b ベース表面(基準面の一部)
23 第1回転板(第1回転部材)
23a 嵌合穴
23b 第1表面(基準面の一部)
24 第2回転板(第2回転部材)
24a 第2表面(基準面の一部)
25 モータ(動力源)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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