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明細書 :研削砥粒の付着装置及び総形砥石

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-164749 (P2015-164749A)
公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
発明の名称または考案の名称 研削砥粒の付着装置及び総形砥石
国際特許分類 B24D   3/00        (2006.01)
B24D   5/00        (2006.01)
FI B24D 3/00 340
B24D 5/00 Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-039923 (P2014-039923)
出願日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発明者または考案者 【氏名】大橋 一仁
【氏名】藤村 涼太
【氏名】塚本 眞也
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
審査請求 未請求
テーマコード 3C063
Fターム 3C063AA02
3C063AB03
3C063BA24
3C063CC16
要約 【課題】総形砥石の高研削負荷領域において砥粒の密度を高めることで総形砥石の長寿命化を図るとともに、低研削負荷領域においては必要最小限の砥粒の密度として、研削能力の劣化が全体的にできるだけ一様となる総形砥石における研削砥粒の付着装置を提供する。
【解決手段】断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の総形砥石の台金に、研削砥粒を付着させる研削砥粒の付着装置であって、総形砥石の台金を中心軸周りに所定速度で回転させる回転駆動部と、総形砥石の台金の円周面に向けて研削砥粒を送給するトラフと、このトラフを振動させることによりトラフ内の研削砥粒を移動させる振動駆動部と、総形砥石の台金とトラフとの間に所定の静電場を生じさせる電圧印加部とを備えるものとする。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の総形砥石の台金に、研削砥粒を付着させる研削砥粒の付着装置であって、
前記総形砥石の台金を中心軸周りに所定速度で回転させる回転駆動部と、
前記総形砥石の台金の前記円周面に向けて研削砥粒を送給するトラフと、
前記トラフを振動させることにより前記トラフ内の前記研削砥粒を移動させる振動駆動部と、
前記総形砥石の台金と前記トラフとの間に所定の静電場を生じさせる電圧印加部と
を備えた研削砥粒の付着装置。
【請求項2】
前記トラフの先端部には、前記研削砥粒を送給する送給路を先細り状とするとともに、細幅の開口を形成したスリットを設け、
このスリットの開口の幅寸法を、前記総形砥石の台金の円周面に設けた隣り合った突出部の間隔寸法よりも小さくした
請求項1に記載の研削砥粒の付着装置。
【請求項3】
断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の台金に、研削砥粒を付着させて成る総形砥石であって、
前記突条部の頂部部分には、隣り合った前記突条部の間の溝部部分に付着させた前記研削砥粒の付着密度よりも高密度で前記研削砥粒を付着させて、前記突条部の頂部部分から前記溝部にかけて前記研削砥粒の密度勾配を形成している総形砥石。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥粒の付着装置及び総形砥石に関し、特に総形砥石の表面にいわゆる超砥粒(ダイヤモンド砥粒やcBN砥粒等)を不均一に付着させた研削砥粒の付着装置、及びこの研削砥粒の付着装置で研削砥粒が付着された総形砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、研削加工に用いられる砥石または砥粒工具では、砥石または砥粒工具の表面に付着されている砥粒の密度を均一にすることが求められている。
【0003】
砥粒を砥石または砥粒工具の表面に均一に付着させるために、砥粒が付着される支持体と砥粒との間に静電場を生じさせて、電気的な作用により砥粒を支持体に付着させる方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、使用用途あるいは使用条件によっては、砥粒が砥石または砥粒工具の表面に均一に付着しているよりも、不均一に付着していることが求められる場合がある。
【0005】
例えば、目的とする被削材の形状に合わせた研削面を有する砥石である総形砥石等では、研削面の場所によって研削量が異なる場合があり、研削量の多い領域では砥粒の密度が高い方が望ましく、研削量の少ない領域では砥粒の密度が低い方が望ましい。
【0006】
しかし、砥粒密度の調整は、大量生産による低コスト化を図りながら安定的に行うことが困難であり、一般的には、総形砥石においても均一な砥粒密度となっており、研削量の多い領域において研削能力が早く低下することで砥石の交換が必要となり、砥石の交換頻度が高くなることで極めて不経済となっていた。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2003-340730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に、被削材の表面に断面V字状の溝を複数形成する総形砥石の場合には、V字状の溝の谷部分に対応する頂部部分において研削量が最も多く、高研削負荷となっており、このような総形砥石において砥粒を均一に塗布した場合には、頂部部分の研削能力の劣化が激しく、いわゆる切れ味の低下を生じさせることとなっていた。
【0009】
また、切れ味の低下にともなって研削速度が低下するだけでなく研削精度も低下するため、総形砥石を交換しなければならないが、この場合には、総形砥石の交換頻度が高まることで製造コストの高騰を招くこととなるため、より交換頻度の少ない総形砥石が求められていた。
【0010】
本発明者らは、このような現状を鑑み、総形砥石の高研削負荷領域において砥粒の密度を高めることで総形砥石の長寿命化を図るとともに、低研削負荷領域においては必要最小限の砥粒の密度として、研削能力の劣化が全体的にできるだけ一様となるようにすることで、ムダの少ない総形砥石を提供するべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の研削砥粒の付着装置は、断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の総形砥石の台金に、研削砥粒を付着させる研削砥粒の付着装置であって、総形砥石の台金を中心軸周りに所定速度で回転させる回転駆動部と、総形砥石の台金の円周面に向けて研削砥粒を送給するトラフと、このトラフを振動させることによりトラフ内の研削砥粒を移動させる振動駆動部と、総形砥石の台金とトラフとの間に所定の静電場を生じさせる電圧印加部とを備えるものである。
【0012】
さらに、本発明の研削砥粒の付着装置では、研削砥粒を送給する送給路を先細り状とするとともに、細幅の開口を形成したスリットをトラフの先端部に設け、スリットの開口の幅寸法を、総形砥石の台金の円周面に設けた隣り合った突出部の間隔寸法よりも小さくしたことにも特徴を有するものである。
【0013】
また、本発明の総形砥石は、断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の台金に、研削砥粒を付着させて成る総形砥石であって、突条部の頂部部分には、隣り合った突条部の間の溝部部分に付着させた研削砥粒の付着密度よりも高密度で研削砥粒を付着させて、突条部の頂部部分から溝部にかけて研削砥粒の密度勾配を形成しているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の研削砥粒の付着装置では、トラフから送給した研削砥粒に、電圧印加部で生じさせた静電場を作用させて総形砥石の台金の表面に研削砥粒を付着させることで、総形砥石の台金の表面に設けた突条部であって、断面が三角形状となった突条部の頂部部分に密にかつ確実に研削砥粒を付着させることができ、総形砥石の台金の表面に安定的に不均一に研削砥粒を付着させることができる。したがって、研削性能が劣化しにくく、長寿命な総形砥石を提供でき、この総形砥石を用いた工程における製造コストを大きく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る研削砥粒の付着装置の概略説明用の正面図である。
【図2】本発明に係る研削砥粒の付着装置の概略説明用の平面図である。
【図3】本発明に係る研削砥粒の付着装置の概略説明用の斜視図である。
【図4】本発明に係る研削砥粒の付着装置で研削砥粒を付着させた状態の総形砥石の台金の表面の写真である。
【図5】突条部の頂部部分から溝部にかけての研削砥粒の分布の測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の研削砥粒の付着装置は、断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状の総形砥石の台金に、研削砥粒を付着させる研削砥粒の付着装置である。

【0017】
特に、本発明の研削砥粒の付着装置は、総形砥石の台金を中心軸周りに所定速度で回転させる回転駆動部と、総形砥石の台金の円周面に向けて研削砥粒を送給するトラフと、このトラフを振動させることによりトラフ内の研削砥粒を移動させる振動駆動部と、総形砥石の台金とトラフとの間に所定の静電場を生じさせる電圧印加部とを備えるものである。

【0018】
また、本発明の総形砥石は、上記の研削砥粒の付着装置で研削砥粒を付着させることで形成される総形砥石であって、総形砥石の台金は、断面が三角形状となった突条部を円周面に複数併設した円柱状として、突条部の頂部部分には、隣り合った突条部の間の溝部部分に付着させた研削砥粒の付着密度よりも高密度で研削砥粒を付着させて、突条部の頂部部分から溝部にかけて研削砥粒の密度勾配を形成しているものである。

【0019】
以下において図面を用いながら本発明の実施形態を説明する。

【0020】
図1~3に示すように、本発明の研削砥粒の付着装置で研削砥粒が付着される総形砥石の台金10は、円柱状となっている。なお、図1~3では、総形砥石の台金10の中心軸方向の寸法が、総形砥石の台金10の半径寸法と比較して極めて小さいため、円柱状というよりも円盤状となっているが、試験用の総形砥石の台金10であるためである。実際の総形砥石は、中心軸方向の寸法が、半径寸法と比較して大きく、円柱状となっている。

【0021】
総形砥石の台金10の周面には、総形砥石の台金10の中心軸を含む平面による断面が三角形状となった突条部11を設けている。突条部11は総形砥石の台金10の周面を1回転しており、本実施形態では、3本の突条部11を併設して、隣り合った突条部11の間に断面がV字状となった溝部12(図2参照)を形成している。本実施形態において、隣り合った突条部11の間隔寸法は4mmとしている。

【0022】
この総形砥石を用いて被削材を加工することで、被削材には断面V字状の溝を形成することとしている。

【0023】
なお、総形砥石は、総形砥石の台金10の周面にメタルボンドを塗布し、このメタルボンドを介して総形砥石の台金10の周面に研削砥粒を付着させて、加熱処理することで研削砥粒を総形砥石の台金10に強固に付着させて形成している。

【0024】
本実施形態で使用した研削砥粒は、ダイヤモンド砥粒である。本発明においてダイヤモンド砥粒は、後述するように電気的な作用を利用して総形砥石の台金10の周面に付着させることにより小径であることが望ましく、研削砥粒の平均粒径が300μm以下、好適には150μm以下であることが望ましいこのように、本発明においては、比較的小径のダイヤモンド砥粒を利用することで、コスト削減にも寄与することができる。なお、使用する研削砥粒はダイヤモンド砥粒に限定するものではなく、いわゆる超砥粒であればよく、例えばcBN砥粒等であってもよい。また、砥粒の表面に導電性の薄膜を付着させたものであるとなおよい。

【0025】
本発明の研削砥粒の付着装置は、図1~3に示すように、総形砥石の台金10を中心軸周りに所定速度で回転させる回転駆動部20と、総形砥石の台金10の円周面に向けて研削砥粒を送給するトラフ30と、このトラフ30を振動させることによりトラフ30内の研削砥粒を移動させる振動駆動部40と、総形砥石の台金10とトラフ30との間に所定の静電場を生じさせる電圧印加部50とを備えている。図中、符号60は支持台である。

【0026】
回転駆動部20は、支持体21(図2参照)を介して総形砥石の台金10を支持して、この支持体21をモータ(図示せず)で回転駆動させることで、総形砥石の台金10を回転駆動させている。

【0027】
また、回転駆動部20には、トラフ30に対して総形砥石の台金10を近接及び離反させる進退機構を設けるとともに、総形砥石の台金10の回転回数をカウントするカウント機構を設けてもよい。すなわち、回転駆動部20では、総形砥石の台金10をトラフ30に所定距離まで近接させて、総形砥石の台金10を所定回数だけ回転させた後、トラフ30から総形砥石の台金10を離反させ動作を1セットとして作動せることで、研削砥粒の付着量を製造ロットごとに均一化してもよい。

【0028】
トラフ30は、直線状の送給路31(図2及び図3参照)を有しており、投入口32から送給された研削砥粒を送給路31に沿って送給可能としている。

【0029】
特に、トラフ30の先端部には、送給路31を先細り状とするとともに、細幅の開口h(図2及び図3参照)を形成したスリット33を設けている。

【0030】
すなわち、スリット33は、研削砥粒の送給方向に向かって漸次細幅となる先細り状としており、その先端に開口hを設けて送給されてきた研削砥粒を送出可能としている。本実施形態では、スリット33はトラフ30の先端部にネジによって固定しているが、スリット33とトラフ30と一体的に形成してもよい。

【0031】
スリット33の開口hの幅寸法は、総形砥石の台金10の円周面に設けた隣り合った突条部11の間隔寸法よりも小さくした。

【0032】
スリット33の開口hの幅寸法は、できるだけ小さい方が望ましく、可能であれば研削砥粒の粒径の数倍程度が望ましい。スリット33の開口hの幅寸法を小さくすることで、スリット33の開口hから一度に送出される研削砥粒の数を1個から数個程度に制御でき、スリット33の開口hから送出された研削砥粒が、他の研削砥粒の影響を受けることなく落下しながら後述するように静電場の作用を受けることで、研削砥粒を総形砥石の台金10に効果的に付着させることができる。

【0033】
なお、総形砥石の台金10は、スリット33の開口hから送出された研削砥粒が自由落下する落下軌跡と、総形砥石の台金10の円周面とが交差することなく、所定間隔だけ離れた状態となる位置に配置することが望ましい。この落下軌跡と総形砥石の台金10の円周面との間の間隔を離間距離と呼ぶこととする。ここでの総形砥石の台金10の円周面とは、突条部11の頂部を指すこととする。

【0034】
離間距離を設けておくことにより、スリット33の開口hから送出された研削砥粒は、最初は自由落下状態となるが、後述するように静電場の作用を受けることで研削砥粒は総形砥石の台金10の方向に移動して、総形砥石の台金10に付着することとなる。すなわち、静電場によって選択された研削砥粒のみを総形砥石の台金10に付着させることで、製造ロットごとの総形砥石のバラツキを抑制しやすくすることができる。

【0035】
振動駆動部40は、トラフ30に超音波振動を印加する振動装置であって、トラフ30に超音波振動を印加することでトラフ30内の研削砥粒を振動させ、送給路31に沿って研削砥粒を移動可能としている。

【0036】
電圧印加部50は、適宜の配線51a,51b(図2参照)を介して、第1の電位と、第2の電位をそれぞれ出力可能としている電源装置であって、総形砥石の台金10に第1の電位を供給し、トラフ30に第2の電位を供給することで、総形砥石の台金10とトラフ30の間に所定の静電場を生じさせている。なお、総形砥石の台金10は回転駆動部20によって回転するため、総形砥石の台金10にはブラシを介して第1の電位を供給することとしている。

【0037】
なお、本実施形態では、第2の電位は接地電位とし、第1の電位は第2の電位よりも高電位とすることで、スリット33の開口hから送出された研削砥粒は、静電場の作用によって総形砥石の台金10に誘引されることとなる。

【0038】
特に、総形砥石の台金10では、周面に断面が三角形状となった突条部11を設けていることで、この突条部11の頂部部分において電界強度が高まることにより、突条部11の頂部により多くの研削砥粒を誘引して、研削砥粒の密度を向上させることができる。

【0039】
電圧印加部50によって印加される第1の電位と第2の電位の電位差は大きければ大きいほどよいが、大きすぎた場合には静電気力が総形砥石の台金10全体に影響することで、突条部11の頂部部分における電界強度の向上効果が相対的に低下して、突条部11の頂部において研削砥粒が密とはなりにくいことが判明した。そのため、第1の電位と第2の電位の電位差は、1.0~4.0kV程度が望ましく、好適には、1.5~2.8kVである。

【0040】
また、上述した離間距離も、総形砥石の台金10とトラフ30の間の静電場の大きさに大きな影響を与えており、離間距離は5~15mm程度であることが望ましい。

【0041】
このような研削砥粒の付着装置を用いて研削砥粒を付着させた状態の総形砥石を図4に示す。図4は総形砥石の表面写真である。ここで、研削砥粒の付着装置では、総形砥石の台金10の直径を150mm、高さを10.68mmとした円盤状としており、この総形砥石の台金10を13.3rad/sの速度で回転させた。また、研削砥粒の付着装置では、トラフ30を振動駆動部40で93.5Hzの周波数で振動させ、離間距離は10mmとし、第1の電位と第2の電位の電位差は2kVとした。研削砥粒は、ダイヤモンド砥粒であって、SDC60を用いた。

【0042】
図4の写真から明らかなように、仕事量の大きい突条部11の頂部部分には多くの研削砥粒が付着して高密度となっており、仕事量の少ない溝部12部分には研削砥粒の付着が少ないことがわかる。これにより、この総形砥石を用いた研削加工中の各研削砥粒に加わる負担の差が小さくなり、安定して研削を行うことができる.

【0043】
図4の突条部11の頂部部分から溝部12にかけての研削砥粒の密度分布を測定した結果を図5に示す。突条部11の頂部部分から溝部12に向かって研削砥粒に密度勾配が生じていることが明らかである。
【符号の説明】
【0044】
h 開口
10 台金
11 突条部
12 溝部
20 回転駆動部
21 支持体
30 トラフ
31 送給路
32 投入口
33 スリット
40 振動駆動部
50 電圧印加部
51a 配線
51b 配線
60 支持台
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4