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明細書 :吸収冷凍装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-145740 (P2015-145740A)
公開日 平成27年8月13日(2015.8.13)
発明の名称または考案の名称 吸収冷凍装置
国際特許分類 F25B  15/04        (2006.01)
FI F25B 15/04
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-017917 (P2014-017917)
出願日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発明者または考案者 【氏名】秋澤 淳
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000877、【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 3L093
Fターム 3L093AA01
3L093AA02
3L093BB26
3L093DD01
3L093JJ02
3L093LL05
要約 【課題】吸収冷凍装置の立ち上げ時において、発生器を温めて吸収溶液に吸収された冷媒を蒸発させる。このため、発生器を温めるのに時間が掛かり、蒸発器への液体冷媒の供給が滞り、被冷却媒体を十分に冷却できない、という課題があった。
【解決手段】吸収冷凍装置であって、吸収溶液に吸収された冷媒を加熱して、冷媒蒸気と冷媒濃度の低い吸収溶液とを発生させる発生器と、発生器に接続され冷媒蒸気を凝縮して液体冷媒とする凝縮器と、凝縮器で生成された液体冷媒を蒸発させて対象物を冷却する蒸発器と、凝縮器と蒸発器に接続され、冷媒が流れる経路をなす冷媒搬送管と、蒸発器に接続され、冷媒蒸気を冷媒濃度の低い吸収溶液に吸収させて冷媒濃度の高い吸収溶液とする吸収器と、発生器と吸収器に接続される第一吸収溶液搬送管および第二吸収溶液搬送管と、冷媒搬送管に設けられ液体冷媒を貯留する冷媒用バッファタンクと、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
冷媒濃度の高い吸収溶液を収容し、前記吸収溶液に吸収された前記冷媒を加熱して、冷媒蒸気と冷媒濃度の低い吸収溶液とを発生させる発生器と、
前記発生器に接続され、前記冷媒蒸気を凝縮して液体冷媒とする凝縮器と、
前記凝縮器で生成された液体冷媒を蒸発させて対象物を冷却する蒸発器と、
前記凝縮器と前記蒸発器に接続され、冷媒が流れる経路をなす冷媒搬送管と、
前記蒸発器に接続され、冷媒蒸気を前記冷媒濃度の低い吸収溶液に吸収させて前記冷媒濃度の高い吸収溶液とする吸収器と、
前記発生器と前記吸収器に接続され、前記冷媒濃度の高い吸収溶液が流れる経路をなす第一吸収溶液搬送管と、
前記発生器と前記吸収器に接続され、前記冷媒濃度の低い吸収溶液が流れる経路をなす第二吸収溶液搬送管と、
前記冷媒搬送管に設けられ、前記液体冷媒を貯留する冷媒用バッファタンクと、
を備える吸収冷凍装置。
【請求項2】
前記吸収溶液搬送管に設けられ、前記吸収溶液を搬送する溶液ポンプを更に備え、
前記対象物の冷却を停止した後において、予め定められた量の前記液体冷媒が前記冷媒用バッファタンクに貯留されるまで、前記溶液ポンプが駆動される請求項1に記載の吸収冷凍装置。
【請求項3】
前記第二吸収溶液搬送管に設けられ、前記冷媒濃度の低い吸収溶液を貯留する吸収溶液用バッファタンクを更に備える請求項2に記載の吸収冷凍装置。
【請求項4】
前記対象物の冷却を停止した後において、予め定められた量の前記冷媒濃度の低い吸収溶液が前記吸収溶液用バッファタンクに貯留されるまで、前記溶液ポンプが駆動される請求項3に記載の吸収冷凍装置。
【請求項5】
前記凝縮器と前記発生器は、前記発生器に供給される排熱の供給側に設けられ、
前記蒸発器と前記吸収器は、冷却された前記対象物の出力側に設けられ、
前記凝縮器と前記発生器は、前記蒸発器と前記吸収器から離間されて設けられる請求項1から4の何れか1項に記載の吸収冷凍装置。
【請求項6】
前記液体冷媒は、前記冷媒搬送管を通じて前記凝縮器から前記蒸発器へ、前記凝縮器と前記冷媒用バッファタンクとの内圧の差によって搬送される請求項5に記載の吸収冷凍装置。
【請求項7】
互いに異なる内圧を有する複数の前記蒸発器を備え、前記複数の蒸発器は、複数の前記対象物を異なる温度に冷却する請求項6に記載の吸収冷凍装置。
【請求項8】
前記吸収器は、前記蒸発器の内圧に対応して複数設けられる請求項7に記載の吸収冷凍装置。
【請求項9】
複数の前記吸収器の排出口を連結する連結部を有し、前記連結部の前記吸収器側には、逆止弁がそれぞれ設けられる請求項8に記載の吸収冷凍装置。
【請求項10】
前記発生器は、前記発生器に前記排熱を供給する側の数に対応してそれぞれ設けられる請求項5から9の何れか1項に記載の吸収冷凍装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収冷凍装置は、発生器で蒸発させた冷媒蒸気を凝縮器で液化させた液体冷媒を蒸発器まで搬送して、当該蒸発器で液体冷媒を蒸発させて被冷却媒体を冷却していた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2000-337732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
吸収冷凍装置の立ち上げ時において、発生器を温めて吸収溶液に吸収された冷媒を蒸発させる。このため、発生器を温めるのに時間が掛かり、蒸発器への液体冷媒の供給が滞り、被冷却媒体を十分に冷却できない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様における吸収冷凍装置は、冷媒濃度の高い吸収溶液を収容し、前記吸収溶液に吸収された前記冷媒を加熱して、冷媒蒸気と冷媒濃度の低い吸収溶液とを発生させる発生器と、前記発生器に接続され、前記冷媒蒸気を凝縮して液体冷媒とする凝縮器と、前記凝縮器で生成された液体冷媒を蒸発させて対象物を冷却する蒸発器と、前記凝縮器と前記蒸発器に接続され、冷媒が流れる経路をなす冷媒搬送管と、前記蒸発器に接続され、冷媒蒸気を前記冷媒濃度の低い吸収溶液に吸収させて前記冷媒濃度の高い吸収溶液とする吸収器と、前記発生器と前記吸収器に接続され、前記冷媒濃度の高い吸収溶液が流れる経路をなす第一吸収溶液搬送管と、前記発生器と前記吸収器に接続され、前記冷媒濃度の低い吸収溶液が流れる経路をなす第二吸収溶液搬送管と、前記冷媒搬送管に設けられ、前記液体冷媒を貯留する冷媒用バッファタンクと、を備える。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る吸収冷凍装置の模式図を示す。
【図2】冷媒用バッファタンクの断面模式図を示す。
【図3】立ち上げ時における吸収冷凍装置の模式図を示す。
【図4】(a)立ち上げ時における冷媒用バッファタンクの状態を示す断面模式図である。(b)動作時における冷媒用バッファタンクの状態を示す断面模式図である。
【図5】対象物の冷却を停止した場合における吸収冷凍装置の模式図を示す。
【図6】(a)冷却を停止した場合における冷媒用バッファタンクの状態を示す断面模式図である。(b)吸収冷凍装置を停止した場合における冷媒用バッファタンクの状態を示す断面模式図である。
【図7】本実施形態に係る他の吸収冷凍装置の部分模式図を示す。
【図8】本実施形態に係る他の冷媒用バッファタンクの断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0008】
図1は、本実施形態に係る吸収冷凍装置10の模式図を示す。図1において、白抜きバルブおよび弁は、開いたバルブおよび弁を示す。

【0009】
吸収冷凍装置10は、供給側装置12と出力側装置14を含む。本実施形態において、供給側装置12と出力側装置14は離間して設けられており、供給側装置12と出力側装置14は、冷媒搬送管100と、第一吸収溶液搬送管102と、第二吸収溶液搬送管104により接続されている。

【0010】
吸収冷凍装置10に用いる冷媒としては、アンモニア液を用いることができ、その場合、吸収剤としてアンモニア水溶液が用いられる。なお、冷媒として水を用いることもでき、その場合、吸収剤として臭化リチウムが用いられる。本実施形態においては、低温時においても結晶化しないことから、冷媒としてアンモニア液、吸収剤としてアンモニア水溶液を用いた例を示すが、これに限られず、冷媒として水、吸収剤として臭化リチウムを用いてもよい。

【0011】
供給側装置12は、発生器50および52と、精留器54および56と、凝縮器60と、熱交換器70と、リフラックスポンプ94と、冷却装置120とを含む。発生器50は、精留器54に接続されて設けられ、発生器52は、精留器56に接続されて設けられる。発生器52と精留器56は、発生器50および精留器54と同じ構成であるので、発生器52と精留器56の説明は、発生器50および精留器54の説明で代用する。なお、発生器52は、再生器と呼ぶこともある。

【0012】
発生器50は、アンモニアを多く含む高濃度のアンモニア水溶液を収容する。発生器50は、収容した高濃度のアンモニア水溶液を、排熱116を用いて加熱して、アンモニアガスを発生させる。アンモニアと水との沸点差は小さいので、発生器50から生じるアンモニアガスには、水蒸気が多く含まれ、アンモニアと水の混合蒸気となる。なお、アンモニアガスが発生された残りのアンモニア水溶液は、アンモニア濃度の低いアンモニア水溶液となる。

【0013】
アンモニアと水の混合蒸気は、発生器50に接続された精留器54の下部に搬送される。精留器54は、発生器50から搬送されるアンモニアと水との混合蒸気を高純度のアンモニアガスに濃縮する。精留器54は、例えば、バブルキャップ式のトレイを有する。精留器54には、当該トレイが多段に設置されている。各トレイでは、高純度のアンモニア濃溶液とアンモニアおよび水の混合蒸気とが気液接触して、混合蒸気中の水蒸気は、アンモニア濃溶液に吸収される。そして、吸収時に発生する凝縮熱で、濃溶液中のアンモニアがガス化する。このような過程が各段のトレイで繰り返されることによって、混合蒸気が高純度のアンモニアガスに濃縮される。

【0014】
精留器54は、精留により高純度のアンモニアガスを抽出した残りの低濃度のアンモニア水溶液を発生器50に戻す。発生器50に戻された低濃度のアンモニア水溶液は、発生器50および精留器54によって加熱されるので、高温となっている。高温となった低能度のアンモニア水溶液は、熱交換器70を経て、低濃度のアンモニア水溶液が流れる経路をなす第二吸収溶液搬送管104を通じて出力側装置14へと搬送される。熱交換器70は、発生器50から出力側装置14へ搬送される高温となった低濃度のアンモニア水溶液の熱を、出力側装置14から発生器50へ搬送される高濃度のアンモニア水溶液に与える。そして、温められた高濃度のアンモニア水溶液は、発生器50にて加熱されるので、発生器50での加熱量を少なくすることができる。このように熱交換器70を設けることによって、発生器50における、排熱116の利用効率を向上できる。

【0015】
本実施形態において、発生器50は、排熱116を用いて高濃度のアンモニア水溶液を加熱する例を示したが、高濃度のアンモニア水溶液の加熱は、排熱116を用いる場合に限られない。発生器50は、排熱116に代えて、加熱装置を備え、当該加熱装置の熱を用いて高濃度のアンモニア水溶液を加熱してもよい。また、排熱116と加熱装置の熱を併用して、高濃度のアンモニア水溶液を加熱してもよい。

【0016】
また、本実施形態において、精留器54および56を備えた例を示した。しかしながら、冷媒として水、吸収剤として臭化リチウムを用いた場合においては、臭化リチウムの沸点と水の沸点との差は大きいので、精留器54および56を設けなくてもよい。

【0017】
また、発生器50および精留器54には排熱116が、発生器52および精留器56には排熱118がそれぞれ供給されるので、発生器50および精留器54は排熱116の供給される工場等に近接して設けられ、発生器52および精留器56は排熱118が供給される工場等に近接して設けられてよい。これにより、排熱116および118を有効に利用できるとともに、排熱116および118を搬送する管の断熱設備を少なくすることができる。また、その発生器と精留器の組み合わせの数は、吸収冷凍装置10の必要排熱量の合計と、排熱供給側の排熱供給量に対応して定められてよい。なお、「排熱」という用語は、工場等から排出され、利用される熱という意味で用いているが、同じ意味で「廃熱」という用語を用いてもよい。

【0018】
凝縮器60は、高純度のアンモニアガスを、冷却装置120で冷却された冷却水114を用いて冷却することによって凝縮させてアンモニア液とする。凝縮されたアンモニア液は、冷媒搬送管100を用いて、出力側装置14に搬送される。また、凝縮されたアンモニア液の一部は、リフラックスポンプ94を用いて精留器54に搬送されて、アンモニアガスの精留に使用される。

【0019】
供給側装置12を構成する発生器50および52、精留器54および56、凝縮器60の内圧は、おおよそ同じ内圧となっている。なお、本実施形態において、内圧は15気圧としている。発生器50および52、精留器54および56、凝縮器60の内圧は、出力側装置14から発生器50および52へ搬送される高濃度のアンモニア水溶液の搬送圧により調整される。

【0020】
出力側装置14は、冷媒用バッファタンク20と、互いに内圧が異なり高圧蒸発器30および低圧蒸発器32と、吸収器40および42と、溶液ポンプ92と、冷却装置120とを含む。冷媒用バッファタンク20は、冷媒搬送管100の出力側装置14側に設けられ、冷媒であるアンモニア液を貯留する。冷媒用バッファタンク20は、冷媒搬送管100を通じて、供給側装置12と接続されているので、冷媒搬送管100による圧力損失はあるものの、冷媒用バッファタンク20の内圧は、供給側装置12の内圧とおおよそ同じとなる。したがって、供給側装置12の内圧が15気圧である場合においては、冷媒用バッファタンク20の内圧もおおよそ15気圧となる。冷媒用バッファタンク20よりも上流側の冷媒搬送管100には、バルブ80が設けられ、バルブ80のON、OFFが制御されることによって、供給側装置12から冷媒用バッファタンク20へのアンモニア液の供給が制御される。

【0021】
高圧蒸発器30は、低圧蒸発器32と比較して、高い内圧を有する。なお、本実施形態において、高圧蒸発器30の内圧は、4気圧であり、低圧蒸発器32の内圧は、3気圧である。高圧蒸発器30の入り口には、膨張弁82が設けられており、膨張弁82によって、高圧蒸発器30内の圧力が維持される。また、高圧蒸発器30へのアンモニア液の供給量は、膨張弁82の開口径を調整することによって制御される。

【0022】
膨張弁82が開いて、アンモニア液は、15気圧の冷媒用バッファタンク20から4気圧の高圧蒸発器30に搬送される。アンモニア液は、対象物110に向けて噴出され、対象物110から熱を奪い、蒸発してガス化する。対象物110は、温度計34により入力温度が検知され、温度計36により出力温度が検知される。そして、検知された入力温度および出力温度に基づいて、アンモニア液の供給量が制御される。

【0023】
対象物110が冷却される場合において、対象物110の入力温度が予め想定された温度より高い場合に、アンモニア液の供給量は増加され、対象物110の入力温度が予め想定された温度より低い場合に、アンモニア液の供給量は減少される。また、同じく対象物110が冷却される場合において、求められる温度より対象物110の出力温度が高い場合に、アンモニア液の供給量は増加され、求められる温度より対象物110の出力温度が低い場合に、アンモニア液の供給量は減少される。対象物110は、搬送されて、居住空間における空調または冷凍庫等の冷却に用いられる。なお、対象物110としては、空気、水、アンモニア液等を用いてよい。

【0024】
膨張弁84が開いて、アンモニア液は、15気圧の冷媒用バッファタンク20から3気圧の低圧蒸発器32に搬送される。アンモニア液は、対象物112に向けて噴出され、対象物112から熱を奪い、蒸発してガス化する。低圧蒸発器32は、高圧蒸発器30よりも内圧が低いので、蒸発して生成したアンモニアガスの断熱膨張により、対象物112は、対象物110よりも低温に冷却される。このように、高圧蒸発器30と低圧蒸発器32は、対象物110および112を互いに異なる温度に冷却する。

【0025】
低圧蒸発器32の入り口には、膨張弁84が設けられており、当該膨張弁84により低圧蒸発器32内の圧力が維持される。また、低圧蒸発器32へのアンモニア液の供給量は、膨張弁84の開口径を調整することによって制御される。なお、対象物112としては、対象物110同様に、空気、水、アンモニア液等が用いられる。

【0026】
吸収器40は、高圧蒸発器30に接続されて設けられ、吸収器42は、低圧蒸発器32に接続されて設けられる。このように、吸収器40および42は、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32の内圧に対応して複数設けられる。内圧が異なる複数の蒸発器を有する場合においては、蒸発器の内圧に対応して吸収器を複数設けることにより、高圧蒸発器30で発生したアンモニアガスを吸収器40へ、低圧蒸発器32で発生したアンモニアガスを吸収器42へ滞ることなく搬送できる。なお、高圧蒸発器30と低圧蒸発器32との内圧が同じである場合においては、共通の容量の大きい吸収器を、高圧蒸発器30と低圧蒸発器32に接続して設けてもよい。

【0027】
高圧蒸発器30で発生したアンモニアガスは、吸収器40へ搬送される。吸収器40は、アンモニアガスを発生器50から搬送された低濃度のアンモニア水溶液に吸収させて高濃度のアンモニア水溶液とする。高圧蒸発器30と吸収器40は接続されているので、高圧蒸発器30と吸収器40の内圧は等しいが、アンモニアガスが吸収されると、その分の体積が減少することにより、吸収器40内の内圧が減少する。アンモニアガスの吸収によって発生した内圧差により、高圧蒸発器30から吸収器40へアンモニアガスが搬送される。

【0028】
また、低濃度のアンモニア水溶液は、アンモニアガスを吸収するとアンモニアの凝縮熱により温度が上がる。吸収器40は、冷却装置120で冷却された冷却水114を用いて低濃度のアンモニア水溶液を冷却する。これにより、低濃度のアンモニア水溶液は冷却され、アンモニアガスの吸収が促進される。溶液ポンプ92は、吸収器40に貯留されたアンモニアガスを吸収した高濃度のアンモニア水溶液を、高濃度のアンモニア水溶液が流れる経路をなす第一吸収溶液搬送管102を通じて、供給側装置12へ搬送する。

【0029】
低圧蒸発器32で発生したアンモニアガスも同様の圧力差によって、吸収器42へ搬送される。吸収器42においても、低圧蒸発器32で発生したアンモニアガスを、発生器50から搬送された低濃度のアンモニア水溶液に吸収させて、高濃度のアンモニア水溶液とする。なお、吸収器42においても、冷却装置120で冷却された冷却水114を用いて、低濃度のアンモニア水溶液は冷却される。

【0030】
溶液ポンプ92は、第一吸収溶液搬送管102に設けられ、吸収器42に貯留された高濃度のアンモニア水溶液を、第一吸収溶液搬送管102を通じて、供給側装置12へ搬送する。吸収器40および42から送り出された高濃度のアンモニア水溶液は、連結部106で合流して、供給側装置12の発生器50および52へ搬送される。発生器50および52、精留器54および56、凝縮器60の内圧は、溶液ポンプ92の高濃度のアンモニア水溶液の搬送圧によって制御される。また、発生器50および52で発生した低濃度のアンモニア水溶液は、第二吸収溶液搬送管104を通じて吸収器40および42へ搬送される。低濃度のアンモニア水溶液は、溶液ポンプ92により生じた発生器50と吸収器40との圧力差、または発生器52と吸収器42との圧力差により搬送されてもよく、供給側装置12側の第二吸収溶液搬送管104に別途溶液ポンプを設け、当該溶液ポンプを用いて低濃度のアンモニア水溶液を吸収器40および42へ搬送させてもよい。

【0031】
本実施形態に示した吸収冷凍装置10のように、内圧の異なる吸収器40および42が設けられる場合において、第一吸収溶液搬送管102の吸収器40および42と連結部106との間には、逆止弁88がそれぞれ設けられる。これにより、吸収器42より内圧の高い吸収器40から、吸収器40より内圧の低い吸収器42へ、排出されたアンモニア水溶液が逆流することを防止できる。また、第二吸収溶液搬送管104の吸収器40および42側の端部には、減圧弁86がそれぞれ設けられている。これにより、吸収器40および吸収器42の内圧が維持される。なお、出力側装置14側であって、溶液ポンプ92の下流側に、第二吸収溶液搬送管104に接続する分岐管を設けてもよい。当該分岐管には、流量調整バルブが設けられ、当該流量調整バルブにより、高圧蒸発器30における対象物110の出力および低圧蒸発器32における対象物112の出力に応じて、第一吸収溶液搬送管102に流れる高濃度のアンモニア水溶液の量が制御されてもよい。

【0032】
本実施形態において、出力側装置14は、冷却された対象物の出力側であって、当該出力が利用される都市部等に設けられる。これにより、出力される冷却された対象物を有効に利用できるとともに、対象物を搬送する搬送管の断熱設備を少なくできる。

【0033】
また、本実施形態において、出力側装置14は、蒸発器と吸収器の組み合わせを二つ含む例を示したがこれに限られない。出力側装置14は、対象物の出力温度に応じて、蒸発器と吸収器の組み合わせを三つ以上含んでもよく、また、一つであってもよい。さらに、出力側装置14が複数の蒸発器と吸収器の組み合わせを含む場合において、同じ内圧の蒸発器と吸収器の組み合わせを複数含んでもよい。

【0034】
図2は、冷媒用バッファタンク20の断面模式図を示す。なお、図2において、膨張弁84を有する冷媒搬送管への分岐部109は、図の簡略化のため省略してある。冷媒用バッファタンク20は、アンモニア液を貯留するバッファ容器24と、バッファ容器24内のアンモニア液の液面を検知する液面センサ26とを有する。

【0035】
アンモニア液は、膨張弁82を閉じた状態でバルブ80を開けることで、冷媒用バッファタンク20に貯留される。そして、膨張弁82を開けることで、冷媒用バッファタンク20に貯留されたアンモニア液が使用される。

【0036】
図3は、立ち上げ時における吸収冷凍装置10の模式図を示す。図3において、図1と同じ要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。また、図3において、黒塗りバルブおよび弁は、閉じたバルブおよび弁を示す。図3に示すように、吸収冷凍装置10の立ち上げ時においてバルブ80は閉じられている。したがって、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32で使用されるアンモニア液は、冷媒用バッファタンク20に貯留されたアンモニア液が使用される。これにより、吸収冷凍装置10の立ち上げ時においても、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32へアンモニア液が十分に供給され、対象物110および112を十分に冷却できる。そして、冷媒用バッファタンク20に貯留されたアンモニア液は、吸収冷凍装置10内に拡散された状態となる。

【0037】
図4(a)は、立ち上げ時における冷媒用バッファタンク20の状態を示す断面模式図であり、図4(b)は、動作時における冷媒用バッファタンク20の状態を示す断面模式図である。立ち上げ時において、冷媒用バッファタンク20は、図4(a)に示したように、冷媒であるアンモニア液が貯留されている。なお、アンモニア液の液面は、液面センサ26により検知される予め定められた位置となっている。なお、予め定められた位置は、供給側装置12の立ち上げ準備にかかる時間と、立ち上げ準備にかかる時間の間、出力側装置14を最大出力で動作させた場合におけるアンモニア液の使用量に安全率を乗じたアンモニア液の量に対応する容積を確保できる位置としてよい。

【0038】
立ち上げ時において、冷媒用バッファタンク20に貯留されたアンモニア液は、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32へ搬送される。一方、供給側装置12の立ち上げ準備が完了するまでバルブ80は閉じられている。バルブ80が閉じられている場合においては、凝縮器60で凝縮されたアンモニア液を、リフラックスポンプ94で精留器54および56に戻すとしてもよい。なお、供給側装置12の立ち上げ準備とは、例えば、発生器50および52、54および56が過熱されてアンモニアガスが発生し、当該アンモニアガスが凝縮器60にて凝縮されてアンモニア液となり、凝縮器60内で予め定められた量のアンモニア液が貯留されるまでの工程をいう。

【0039】
動作時において、図4(b)に示したように、バルブ80が開かれ、供給側装置12から冷媒用バッファタンク20にアンモニア液が供給される。バルブ80は、例えば、吸収冷凍装置10に備えられた制御部により、予め定められた時間プロファイルに従って自動的に開かれる。なお、バルブ80は、凝縮器60内のアンモニア液の凝縮量を計測して、予め定められた閾値を越えることを条件として開かれるとしてもよく、作業員によって手動で開かれるとしてもよい。

【0040】
アンモニア液は、冷媒用バッファタンク20内に貯留されたアンモニア液が排出されることによる冷媒用バッファタンク20内の圧力の減少により生じた圧力差によって、供給側装置12から冷媒用バッファタンク20へ搬送される。なお、供給側装置12の凝縮器60内の温度を冷媒用バッファタンク20内の温度より高くして、当該温度の差により、凝縮器60と冷媒用バッファタンクとに圧力差を生じさせてもよい。そして、生じた圧力差により、供給側装置12から冷媒用バッファタンク20にアンモニア液を供給させてもよい。また、供給側装置12側の冷媒搬送管100に別途溶液ポンプを設け、当該溶液ポンプを用いて、アンモニア液を冷媒用バッファタンク20へ搬送させてもよい。

【0041】
アンモニア液は、冷媒用バッファタンク20内に一旦貯留された後、膨張弁82から、高圧蒸発器30に供給される。なお、供給側装置12からのアンモニア液の供給速度は、出力側装置14を最大出力で動作させた場合におけるアンモニア液の使用速度に対応した量のアンモニア液を供給できるようにしてよい。なお、動作時における吸収冷凍装置10の模式図は、図1と同じであり、バルブ80および膨張弁82および膨張弁84が開いた状態となる。

【0042】
図5は、対象物110および112の冷却を停止した場合における吸収冷凍装置の模式図を示す。対象物110および112の冷却を停止した後においては、バルブ80が開いた状態で、膨張弁82および膨張弁84が閉じられる。その状態で、溶液ポンプ92が駆動され、予め定められた量のアンモニア液が冷媒用バッファタンク20に貯留される。

【0043】
図6(a)は、対象物110および112の冷却を停止した場合における冷媒用バッファタンク20の状態を示す断面模式図であり、図6(b)は、吸収冷凍装置10を停止した場合における冷媒用バッファタンク20の状態を示す断面模式図である。対象物110および112の冷却を停止した場合において、図6(a)に示すように、バルブ80を開き、膨張弁82を閉じた状態で溶液ポンプ92を駆動する。これにより、吸収冷凍装置10内に拡散したアンモニア液は、再び冷媒用バッファタンク20内に貯留され、冷媒用バッファタンク20内のアンモニア液の液面は上昇する。

【0044】
図6(b)に示したように、冷媒用バッファタンク20内のアンモニア液の液面が、液面センサ26に接する位置に到達すると、バルブ80が閉じられ、溶液ポンプ92が停止される。そして、溶液ポンプ92が停止された後に、吸収冷凍装置10が停止される。このように、吸収冷凍装置10において、吸収冷凍装置10が停止する前に、冷媒用バッファタンク20に予め定められた量のアンモニア液が貯留される。これにより、立ち上げ時において、アンモニア液が一定時間供給されない場合においても、アンモニア液の供給を滞らせることなく、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32にアンモニア液を供給できる。

【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る吸収冷凍装置10は、吸収冷凍装置10の立ち上げ時に高圧蒸発器30および低圧蒸発器32で使用されるアンモニア液を貯留する冷媒用バッファタンク20を含む。これにより、吸収冷凍装置10の立ち上げ時においても、アンモニア液を滞ることなく高圧蒸発器30および低圧蒸発器32に供給でき、対象物110および112を十分に冷却できる。

【0046】
また、吸収冷凍装置10は、供給側装置12と出力側装置14とを離間して設けられ、供給側装置12と出力側装置14の間を、冷媒であるアンモニア液と、高濃度のアンモニア水溶液と、低濃度のアンモニア水溶液とがそれぞれ搬送される。搬送される冷媒であるアンモニア液、高濃度のアンモニア水溶液および低濃度のアンモニア水溶液の温度は任意の温度でよいので、長距離搬送しても熱エネルギーの損失はなく、冷媒搬送管100、第一吸収溶液搬送管102および第二吸収溶液搬送管104の断熱設備を設けなくてもよい。さらに、吸収冷凍装置10は、潜熱変化を含む熱エネルギー変換を利用しているので、顕熱変化に比べて、熱媒体の輸送量が少なくできる。これにより、同じ冷却出力を出力する場合における冷水輸送に比べて、冷媒搬送管100、第一吸収溶液搬送管102および第二吸収溶液搬送管104をコンパクトにできる。さらに、熱媒体の輸送量が少なくできるので、同じ冷却出力を出力する場合における冷水輸送に比べて、輸送するための溶液ポンプ動力を小さくできる。

【0047】
また、供給側装置12の過剰能力による過剰設備を抑制することを目的として、供給側装置12の供給能力を出力側装置14の出力実績に合わせて調整する場合においては、冷媒用バッファタンク20がバッファの役割を果たす。例えば、高圧蒸発器30における冷却された対象物の出力が、供給側装置12の供給能力を超え、一時的に多くなった場合でも、冷媒用バッファタンク20に貯留されたアンモニア液を高圧蒸発器30に供給して対応できる。このように、供給側装置12の供給能力を出力側装置14の出力実績に合わせて調整する場合においては、冷媒用バッファタンク20を設けることによって、供給側装置12の過剰能力による過剰設備を抑制しながら、冷媒であるアンモニア液が足りなくなるリスクを低減できる。

【0048】
図7は、本実施形態に係る他の吸収冷凍装置16の部分模式図を示す。図7において、図1と同じ要素には共通の参照番号を付して重複する説明を省略する。図7に示した吸収冷凍装置16は、第二吸収溶液搬送管104に設けられ、アンモニア濃度の低いアンモニア水溶液を貯留する二つの吸収溶液用バッファタンク22と、二つのバルブ80をさらに含む。

【0049】
二つの吸収溶液用バッファタンク22は、第二吸収溶液搬送管104における減圧弁86と吸収器40との間と、減圧弁86と吸収器42との間にそれぞれ設けられる。さらに、二つのバルブ80は、吸収溶液用バッファタンク22と吸収器40との間と、吸収溶液用バッファタンク22と吸収器42との間にそれぞれ設けられる。吸収溶液用バッファタンク22の構成は、冷媒用バッファタンク20と同じ構成となっており、図2に示したバッファ容器24と、液面センサ26とを有する。

【0050】
吸収溶液用バッファタンク22においても、立ち上げ時においては、減圧弁86を閉じた状態で、バルブ80を開き、吸収溶液用バッファタンク22内に貯留されている低濃度のアンモニア水溶液をそれぞれの吸収器40および42に供給する。これにより、吸収溶液用バッファタンク22内に貯留されている低濃度のアンモニア水溶液は、吸収冷凍装置16内に拡散する。そして、空気の冷却を停止した後においては、減圧弁86を開きバルブ80を閉じた状態で、溶液ポンプ92を駆動させて、供給側装置12を動作させることによって、吸収冷凍装置16内に拡散していた予め定められた量の低濃度のアンモニア水溶液は、再び、吸収溶液用バッファタンク22内に貯留される。

【0051】
高圧蒸発器30、低圧蒸発器32、吸収器40および吸収器42内でアンモニアガスが滞留すると、高圧蒸発器30または低圧蒸発器32内のアンモニアガスによって内圧が高くなり、アンモニア液のガス化が抑制される。これにより、対象物110および112の冷却が阻害される恐れがある。

【0052】
本実施形態に係る吸収冷凍装置16は、吸収冷凍装置16の立ち上げ時に高圧蒸発器30および低圧蒸発器32で発生したアンモニアガスを吸収する低濃度のアンモニア水溶液を貯留する吸収溶液用バッファタンク22を含む。それぞれの吸収溶液用バッファタンク22は、吸収冷凍装置16の立ち上げ時において、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32で発生したアンモニアガスを吸収する低濃度のアンモニア水溶液を吸収器40および吸収器42に供給する。これにより、高圧蒸発器30、低圧蒸発器32、吸収器40および吸収器42内でアンモニアガスが滞留することを防ぐことができ、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32は、対象物110および112を十分に冷却することができる。

【0053】
図8は、本実施形態に係る他の冷媒用バッファタンク28の断面模式図を示す。図8において、図2と同じ要素には共通の参照番号を付して重複する説明を省略する。図8に示した冷媒用バッファタンク28は、溶液ポンプ96と、バッファ容器24内に入り込む冷媒搬送管108をさらに含む。

【0054】
冷媒搬送管108は、一端がバッファ容器24内に入り込み、他端が高圧蒸発器30および低圧蒸発器32に接続される。溶液ポンプ96は、冷媒搬送管108であって、冷媒用バッファタンク28と高圧蒸発器30および低圧蒸発器32との分岐部109との間に設けられる。溶液ポンプ96は、バッファ容器24内に貯留したアンモニア液を高圧蒸発器30および低圧蒸発器32へ搬送する。このように溶液ポンプ96を設けて、冷媒用バッファタンク28内に貯留したアンモニア液を高圧蒸発器30および低圧蒸発器32へ搬送する。これにより、高圧蒸発器30および低圧蒸発器32へのアンモニア液を安定して供給できる。

【0055】
本実施形態において、供給側装置12と出力側装置14とは離間して設けられる例を示した。しかし、供給側装置12と出力側装置14とは離間していなくてもよく、例えば、供給側装置12と出力側装置14とが同じ部屋に設けられる場合にも適用できる。

【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
10、16 吸収冷凍装置、12 供給側装置、14 出力側装置、20、28 冷媒用バッファタンク、22 吸収溶液用バッファタンク、24 バッファ容器、26 液面センサ、30 高圧蒸発器、32 低圧蒸発器、34、36 温度計、40、42 吸収器、50、52 発生器、54、56 精留器、60 凝縮器、70 熱交換器、80 バルブ、82、84 膨張弁、86 減圧弁、88 逆止弁、92、96 溶液ポンプ、94 リフラックスポンプ、100、108 冷媒搬送管、102 第一吸収溶液搬送管、104 第二吸収溶液搬送管、106 連結部、109 分岐部、110、112 対象物、114 冷却水、116、118 排熱、120 冷却装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7