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明細書 :球状ポリマー粒子及び光学素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-137312 (P2015-137312A)
公開日 平成27年7月30日(2015.7.30)
発明の名称または考案の名称 球状ポリマー粒子及び光学素子
国際特許分類 C08G  61/12        (2006.01)
H01S   3/17        (2006.01)
FI C08G 61/12
H01S 3/17
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-009724 (P2014-009724)
出願日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明者または考案者 【氏名】山本 洋平
【氏名】田畑 顕一
【氏名】アクセル ロルケ
【氏名】ダニエル ブラーム
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100112874、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 薫
審査請求 未請求
テーマコード 4J032
5F172
Fターム 4J032BA03
4J032BA12
5F172AE28
要約 【課題】色素などの発光材料を使用しなくても、ウィスパリング・ギャレリー・モード発振を実現することが可能な球状ポリマー粒子及び光学素子を提供する。
【解決手段】π共役系高分子などの発光性高分子を用いて、球状又は略球状のマイクロ粒子を形成する。この球状マイクロ粒子は、レーザ光などの励起光を照射すると、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード発振が生じる。また、この球状マイクロ粒子は、光共振器や光増幅器などの光学素子に用いることができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
発光性高分子からなる球状又は略球状の粒子であり、
励起光の照射により内部でウィスパリング・ギャレリー・モード発振が生じる球状ポリマー粒子。
【請求項2】
前記発光性高分子は、π共役系交互共重合体である請求項1に記載の球状ポリマー粒子。
【請求項3】
電子顕微鏡により測定した粒子径が2μm以上である請求項1又は2に記載の球状ポリマー粒子。
【請求項4】
蒸気拡散法により形成されたものである請求項1~3のいずれか1項に記載の球状ポリマー粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の球状ポリマー粒子を用いた光学素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、球状ポリマー粒子及びこれを用いた光学素子に関する。より詳しくは、発光性高分子を用いて形成されたマイクロ球状粒子及びその発光特性を利用した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズやマイクロサイズの微粒子を集積して作製するコロイド結晶は、新たな光機能を示す三次元フォトニック結晶の観点から、注目されている。例えば、従来、単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に発光性の有機色素、有機金属配位化合物、高分子発光材料又は半導体ナノ粒子などを導入したコロイド結晶が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ポリスチレンなどのポリマービーズに色素を添加したり、発光性有機分子や発光性高分子を塗布したりすることによって、ウィスパリング・ギャレリー・モード(Whispering Gallery Mode:WGM)発振を発現させる研究も行われている(例えば、非特許文献1~3参照。)。そして、このような発光特性を有する球状粒子は、光共振器、光増幅器及びセンサーなど種々の光学デバイスへの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-87489号公報
【0005】

【非特許文献1】Makoto Kuwata-Gonokami,外1名、“Polymer whispering gallery mode lasers”、Optical Materials、1998年、第9巻、p.12-17
【非特許文献2】M. Humar,外3名、“Electrically tunable liquid crystal optical microresonators”、NATURE PHOTONICS、2009年10月、第3巻、p.595-600
【非特許文献3】Van Duong Ta,外1名、“Tuning Whispering Gallery Mode Lasing from Self-Assembled Polymer Droplets”、SCIENTIFIC REPORTS、2013年、3:1362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WGM発振が確認されている従来の球状粒子は、色素などの発光材料を併用する必要があり、製造工程が煩雑であるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、色素などの発光材料を併用しなくても、ウィスパリング・ギャレリー・モード発振を発現可能な球状ポリマー粒子及び光学素子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述した課題を解決するために、鋭意実験検討を行った結果、発光性高分子によりマイクロ球状粒子を形成することができれば、単一材料で、WGM発振を行う球状ポリマー粒子を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明に係る球状ポリマー粒子は、発光性高分子からなる球状又は略球状の粒子であり、励起光の照射により内部でウィスパリング・ギャレリー・モード発振が生じるものである。
前記発光性高分子には、例えばπ共役系交互共重合体を用いることができる。
本発明の球状ポリマー粒子は、例えば電子顕微鏡により測定した粒子径を2μm以上である。
また、本発明の球状ポリマー粒子は、例えば蒸気拡散法により形成することができる。
【0010】
本発明に係る光学素子は、前述した球状ポリマー粒子を用いたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、色素などの発光材料を使用しなくても、単一材料で、ウィスパリング・ギャレリー・モード発振を発現する球状ポリマー粒子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】π共役交互共重合体F8TMT2からなる球状ポリマー粒子(直径2.3μm)の発光スペクトルを示す図である。
【図2】球状ポリマー粒子からの発振を示す模式図である。
【図3】π共役交互共重合体F8TMT2からなる球状ポリマー粒子を示すSEM写真(図面代用写真)である。
【図4】π共役交互共重合体2,7-CTMT2からなる球状ポリマー粒子を示すSEM写真(図面代用写真)である。
【図5】π共役交互共重合体PTTMT2からなる球状ポリマー粒子を示すSEM写真(図面代用写真)である。
【図6】π共役交互共重合体AZOANIからなる球状ポリマー粒子を示すSEM写真(図面代用写真)である。
【図7】π共役交互共重合体F8TMT2からなる球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図である。
【図8】π共役交互共重合体2,7-CTMT2からなる球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図である。
【図9】π共役交互共重合体PTTMT2からなる球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図である。
【図10】π共役交互共重合体AZOANIからなる球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。

【0014】
[全体構成]
本発明の実施形態に係る球状ポリマー粒子は、発光性高分子からなる球状又は略球状の粒子である。そして、本実施形態の球状ポリマー粒子は、特定波長の光(励起光)を照射すると、内部でWGM発振が生じる。

【0015】
[発光性高分子]
本実施形態の球状ポリマー粒子を形成する発光性高分子は、励起光により発光が生じるものであれば、特に限定されるものではないが、発光性及び導電性の両方を備えるπ共役系高分子が好適である。また、種々のπ共役系高分子の中でも、主鎖に立体障害を導入したπ共役交互共重合体は、球状粒子を形成しやすく、球状ポリマー粒子用材料として、特に好適である。

【0016】
π共役交互共重合体の具体例としては、下記化学式1に示す構造の2,7-CTMT2、下記化学式2に示す構造のF8TMT2、下記化学式3に示す構造のPTTMT2、下記化学式4に示す構造のAZOANI、下記化学式5に示す構造の3,6-CTMT2、下記化学式6に示す構造のF8EDOT、下記化学式7に示す構造のDOPTMT2などが挙げられる。これらπ共役交互共重合体の中でも、2,7-CTMT2(化学式1)、F8TMT2(化学式2)、PTTMT2(化学式3)及びAZOANI(化学式4)は、真球に近く、均一な内部構造を有し、形状安定性に優れた球状ポリマー粒子が得られるため、特に好適である。

【0017】
【化1】
JP2015137312A_000003t.gif

【0018】
【化2】
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【0019】
【化3】
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【0020】
【化4】
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【0021】
【化5】
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【0022】
【化6】
JP2015137312A_000008t.gif

【0023】
【化7】
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【0024】
[粒子径]
本実施形態の球状ポリマー粒子の大きさは、発光波長やポリマー材料の物性などに応じて適宜選択することができるが、粒子径(直径)が2μmよりも小さい場合、WGM発振が発現しにくくなる傾向がみられる。そこで、球状ポリマー粒子の大きさは、直径で2μm以上とすることが好ましい。なお、ここでいう粒子径は、顕微鏡観察により撮影した画像から算出した値である。

【0025】
[製造方法]
本実施形態の球状ポリマー粒子は、例えば、蒸気拡散法により形成することができる。蒸気拡散法は、貧溶媒蒸気中に整置することにより、良溶媒に溶解しているポリマーを結晶化させる方法である。その際、貧溶媒にはトリクロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、クロロベンゼン(PhCl)、テトラヒドロフラン(THF)及びトルエンなどを用いることができ、良溶媒にはメタノール、アセトン及びヘキサンなどを用いることができる。

【0026】
なお、蒸気拡散法で用いる溶媒は、前述したものに限定されるものではなく、ポリマーの種類に応じて、適宜選択し、組み合わせて使用することができる。また、本実施形態の球状ポリマー粒子の製造方法も、蒸気拡散法に限定されるものではなく、球状又は略球状のマイクロ粒子を作製可能な各種方法を適用することができる。ただし、球状ポリマー粒子の製造しやすさの観点から、蒸気拡散法が好適である。

【0027】
[動作]
図1はF8TMT2からなる球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図であり、図2は球状ポリマー粒子からの発振を示す模式図である。本実施形態の球状ポリマー粒子は、例えばレーザ光を照射すると、図1に示すような複数のスパイク状のピークが発光スペクトルに重なる波形が観察される。これは、球状とせず、バルク状態で測定した場合には観察されない現象である。

【0028】
この特異な波形は、WGM発振によるものであり、図2に示すように、レーザ励起により球状ポリマー粒子内部で発生した光が、外部(空気)との屈折率の違いによって界面近傍で全反射し、球状ポリマー粒子内に閉じこめられるために生じる。そして、球状ポリマー粒子内に閉じこめられた光の波長の整数倍が光路長に一致するとき、発光強度が増大し、ピークとなって現れる。特に、球状ポリマー粒子の側面部分を光励起すると、基板との接触面を通らずに光が球状粒子内部で旋回することができるため、光の漏れによる発光効率の低下を軽減し、発光を増強することができる。

【0029】
ここで、図1に示す各ピークの指数nは、球状ポリマー粒子の直径をd、球状ポリマー粒子の屈折率をη、ピーク波長λとしたとき、下記数式1から算出した値である。

【0030】
【数1】
JP2015137312A_000010t.gif

【0031】
この発光スペクトル中に現れるスパイクの数や位置は、球状ポリマー粒子の直径dや屈折率ηに依存して変調する。従って、これらの値を変えることにより、任意の発光特性を有する球状ポリマー粒子を設計することが可能となる。

【0032】
例えば、球状ポリマー粒子の直径dが大きくなると、光路長も長くなるため、発光スペクトルにより多くのスパイクが観察される。また、直径dが小さい球状ポリマー粒子に比べて、直径dが大きなものの方が、Q値が大きくなる。これは、直径dが大きくなるに従い、球状ポリマー粒子の曲率半径が大きくなるため、光の全反射がより起こりやすくなるためと考えられる。

【0033】
[光学素子]
本実施形態の球状ポリマー粒子は、光共振器、光増幅器、発光型コロイドフォトニック結晶、光センサー、レーザ発振素子及び電界発光素子など種々の光学素子への応用が考えられる。

【0034】
本実施形態の球状ポリマー粒子は、発光体としての機能と、光共振器としての機能を併せ持つため、従来の球状粒子のように複数の材料を組み合わせる必要がなく、単一の材料でWGM発振を実現することができる。その結果、簡易な工程で、球状ポリマー粒子や光学素子を製造することが可能となる。

【0035】
特に、π共役系高分子により形成された球状ポリマー粒子は、発光特性だけでなく、導電特性も有しているため、電荷注入による発光が可能となるため、新たな発光デバイスの実現が期待できる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例により、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、上記化学式1~4に示すπ共役交互高重合体を用いて、球状ポリマー粒子を作製し、その発光特性を調べた。
【実施例】
【0037】
具体的には、F8TMT2(化学式2)、2,7-CTMT2(化学式1)、PTTMT2(化学式3)及びAZOANI(化学式4)を、それぞれ室温下で、蒸気拡散法により、特定の溶媒の組み合わせで3日間静置し、ポリマー粒子を析出させた。
【実施例】
【0038】
得られたポリマー粒子について、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)及び断面走査型透過電子顕微鏡(Cross‐Sectional Transmission Electron Microscope;XSTEM)により観察を行い、内部構造などを確認した。図3~6は各π共役交互共重合体を用いて形成した球状ポリマー粒子の顕微鏡写真である。図3~6に示すように、本実施例で形成したポリマー粒子は、いずれも均一な内部構造をもった球状粒子であることが確認された。
【実施例】
【0039】
次に、シリコン基板上に、球状ポリマー粒子を含む溶液を滴下し、スピンコーターにより、1000rpmの速度で、1分間回転させて、各球状ポリマー粒子を分散させ、各球状ポリマー粒子が単体で存在するようにした。その後、大気下で溶媒を蒸発させて、発光特性を測定用試料とした。
【実施例】
【0040】
各粒子の発光特性は、励起波長407nmをレーザ光を、球状ポリマー粒子の端の部分に照射して顕微フォトルミネッセンス(μ-PL)測定を行い、その結果により評価した。ここで、レーザ光を、球状ポリマー粒子の端に照射する理由は、球状ポリマー粒子の中心部を励起してしまうと、励起光の光路がシリコン基板との接触点からリークしてしまうためである。
【実施例】
【0041】
μ-PLの測定は、室温及び低温(10K)において、光学顕微鏡を用いて、直径dが1μm~10μmの球状ポリマー粒子の中から1つを選択し、レーザ光を照射することにより行った。このμ-PL測定の結果に基づいて、測定温度及びサイズによるWGM発振の違いを比較した。
【実施例】
【0042】
図7~10は各π共役交互共重合体を用いて形成した球状ポリマー粒子の発光スペクトルを示す図である。図7~10に示すように、いずれの球状ポリマー粒子もWGM発振が確認された。特に、直径dが2μm以上の球状ポリマー粒子では、明確なスパイクが確認された。そして、球状ポリマー粒子の直径dが大きくなるに従い、スパイクの数が増加した。
【実施例】
【0043】
更に、よりシャープなWGM発振を得るため、球状ポリマー粒子の周囲に、真空蒸着法により高屈折率の材料(C60、Au、Cu、Ti、Al)を蒸着した。その際、蒸着層の厚さは5nm及び20nmとした。そして、高屈折率の材料で被覆された球状ポリマー粒子と、被覆されていない球状ポリマー粒子について、μ-PL測定を行い、発光特性の違いを比較した。
【実施例】
【0044】
その結果、高屈折率材料で被覆された球状ポリマー粒子は、被覆されていないものに比べてQ値が上昇しており、この傾向は、屈折率がより高い金属材料を蒸着したものが特に顕著であった。これは、球状ポリマー粒子の内部と外部(空気)との比屈折率が大きくなったことで、球状ポリマー粒子内部における光の全反射の効率が高まり、光の閉じこめ効率が向上したためと考えられる。
【実施例】
【0045】
以上の結果から、本発明によれば、色素などの発光材料を併用しなくても、WGM発振を発現可能な球状ポリマー粒子を実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1 球状ポリマー粒子
2 光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図7】
2
【図8】
3
【図9】
4
【図10】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9