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明細書 :水素精製昇圧システム及びその運転方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-117139 (P2015-117139A)
公開日 平成27年6月25日(2015.6.25)
発明の名称または考案の名称 水素精製昇圧システム及びその運転方法
国際特許分類 C01B   3/56        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01M   8/04        (2006.01)
C01B   3/00        (2006.01)
FI C01B 3/56 Z
H01M 8/06 G
H01M 8/10
H01M 8/04 J
C01B 3/00 Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2013-259655 (P2013-259655)
出願日 平成25年12月16日(2013.12.16)
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査請求 未請求
テーマコード 4G140
5H026
5H027
Fターム 4G140AB01
4G140FA02
4G140FB04
4G140FC01
4G140FE01
5H026AA06
5H027AA06
5H027BA01
5H027BA13
5H027BA16
5H027BA17
5H027KK01
5H027KK10
5H027MM12
要約 【課題】水素ステーションを安全かつ効率的に運用することを可能にする水素精製昇圧システム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】 本発明によれば、燃料を供給する燃料供給配管と、前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスからなる又は前記改質ガスから得られる水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、を備える、水素精製昇圧システムが提供される。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
燃料を供給する燃料供給配管と、
前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガスからなる又は前記改質ガスから得られる水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、
電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、
前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、
前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、
前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、
前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、
を備える、水素精製昇圧システム。
【請求項2】
燃料を供給する燃料供給配管と、
前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガス中の一酸化炭素濃度を低減して水素含有ガスを生成する一酸化炭素除去器と、
前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、
電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、
前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、
前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、
前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、
前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、
を備える、水素精製昇圧システム。
【請求項3】
燃料を供給する燃料供給配管と、
前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガス中の一酸化炭素濃度を低減して水素含有ガスを生成する一酸化炭素除去器と、
前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、
前記水素含有ガスに酸素ガスを混合する酸素ガス供給配管と、
電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、
前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、
前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、
前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、
前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、
を備える、水素精製昇圧システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、
前記改質器を予熱し、前記燃料を供給する工程と、
前記ガス検知器が検出した一酸化炭素濃度が閾値を超えると前記水素含有ガスに酸素ガスを混合する工程と、
前記水素精製昇圧装置の前記アノードと前記カソードの間に電圧を印加する工程と、
前記精製水素ガスの流量及び圧力を測定して前記燃料の供給量を制御する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、
前記水素精製昇圧システムの停止時には、
前記燃料の供給を停止する工程と、
前記水素精製昇圧装置への通電を停止する工程と、
前記水素精製昇圧装置への前記水素含有ガスの供給を停止し且つ前記パージ用窒素ガスを導入させて前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、
前記水素精製昇圧装置は、複数のユニットセルが積層された積層セル構造を備え、
前記ユニットセルは、
固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の一方に積層されるアノード触媒層と、
前記固体高分子電解質膜の他方に積層されるカソード触媒層と、
前記アノード触媒層に対向して前記アノード触媒層の外側に設けられるアノード側給電体と、
前記カソード触媒層に対向して前記カソード触媒層の外側に設けられるカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して前記アノード側給電体の外側に設けられ且つ前記水素含有ガスが供給されるアノード側流路を備えたアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して前記カソード側給電体の外側に設けられ且つ前記精製水素ガスが排出されるカソード側流路を備えたカソード側セパレータを備え、
前記カソード側流路中の前記精製水素ガスの圧力を測定する圧力測定部を備え、
前記圧力測定部による測定結果に基づいて、前記燃料の供給量を調節する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法。
【請求項7】
請求項6に記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、
前記圧力測定部は、前記積層セル構造の最後段のユニットセルの前記カソード側流路での前記精製水素ガスの圧力を測定するように配置され、
前記圧力測定部の測定値が所定の基準値未満である場合に前記改質器への前記燃料の供給量を増加させる工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の水素精製昇圧システムとして、改質ガスに含まれる水素を精製すると同時に昇圧させる水素精製昇圧装置を用いた水素精製昇圧システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(以下、PEFCという。)の開発が進められ、自動車や家庭用自家発電向けに広く開発が進んでいる。家庭用自家発電向けの燃料電池システムはすでに実用化されており、また、燃料電池を搭載した燃料電池自動車も、近い将来に実用化されることが期待されている。家庭用自家発電向けの燃料電池システムと異なり、燃料電池自動車の普及のためには燃料供給インフラを整備する必要がある。すなわち燃料電池自動車の普及に合わせて、各地に水素ステーションを建設していくことが必要である。
【0003】
水素ステーションにおいては、高純度で高圧な水素を貯蔵し、燃料電池自動車に供給する。そして、水素ステーションに燃料を供給する方法として、他の場所で製造した水素をタンクローリーで輸送する方法と、水素ステーションで水素を製造する方法がある。しかし、水素はエネルギー密度が低いため、ガソリンのようにタンクローリーで輸送することには向かない。このため、水素ステーションにおいて水素を製造して、精製・昇圧を行うことが好ましい。
【0004】
特許文献1には、水素を含む改質ガスを精製・昇圧する水素昇圧プロセスが記載されている。このプロセスは、PEFCのセルに外部電力を加える事により、アノード側に供給する改質ガスから、カソード側に精製・昇圧された水素を作るものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3358820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、具体的なシステム構成や運転方法は開示されておらず、特許文献1に記載の技術のみでは水素ステーションを安全かつ効率的に運用することは困難である。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、水素ステーションを安全かつ効率的に運用することを可能にする水素精製昇圧システム及びその運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、燃料を供給する燃料供給配管と、前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガスからなる又は前記改質ガスから得られる水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、を備える、水素精製昇圧システムが提供される。
【0009】
本発明の別の観点によれば、燃料を供給する燃料供給配管と、前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガス中の一酸化炭素濃度を低減して水素含有ガスを生成する一酸化炭素除去器と、前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、を備える、水素精製昇圧システムが提供される。
【0010】
本発明のさらに別の観点によれば、燃料を供給する燃料供給配管と、前記燃料を改質して水素と一酸化炭素を含有する改質ガスを生成する改質器と、前記改質ガス中の一酸化炭素濃度を低減して水素含有ガスを生成する一酸化炭素除去器と、前記水素含有ガス中の一酸化炭素濃度と水素濃度を測定するガス検知器と、前記水素含有ガスに酸素ガスを混合する酸素ガス供給配管と、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって前記水素含有ガス中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスを生成する水素精製昇圧装置と、前記水素精製昇圧装置の外殻内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管と、前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出するパージ用窒素ガス供給配管と、前記精製水素ガスに含まれる水分を排出する排水口と、前記精製水素ガスを貯留する水素タンクと、を備える、水素精製昇圧システムが提供される。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、上記記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、前記改質器を予熱し、前記燃料を供給する工程と、前記ガス検知器が検出した一酸化炭素濃度が閾値を超えると前記水素含有ガスに酸素ガスを混合する工程と、前記水素精製昇圧装置の前記アノードと前記カソードの間に電圧を印加する工程と、前記精製水素ガスの流量及び圧力を測定して前記燃料の供給量を制御する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の観点によれば、上記記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、前記水素精製昇圧システムの停止時には、前記燃料の供給を停止する工程と、前記水素精製昇圧装置への通電を停止する工程と、前記水素精製昇圧装置への前記水素含有ガスの供給を停止し且つ前記パージ用窒素ガスを導入させて前記水素精製昇圧装置内の残ガスを排出する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の観点によれば、上記記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、前記水素精製昇圧装置は、複数のユニットセルが積層された積層セル構造を備え、前記ユニットセルは、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方に積層されるアノード触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方に積層されるカソード触媒層と、前記アノード触媒層に対向して前記アノード触媒層の外側に設けられるアノード側給電体と、前記カソード触媒層に対向して前記カソード触媒層の外側に設けられるカソード側給電体と、前記アノード側給電体に対向して前記アノード側給電体の外側に設けられ且つ前記水素含有ガスが供給されるアノード側流路を備えたアノード側セパレータと、前記カソード側給電体に対向して前記カソード側給電体の外側に設けられ且つ前記精製水素ガスが排出されるカソード側流路を備えたカソード側セパレータを備え、前記カソード側流路中の前記精製水素ガスの圧力を測定する圧力測定部を備え、前記圧力測定部による測定結果に基づいて、前記燃料の供給量を調節する工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の観点によれば、上記記載の水素精製昇圧システムの運転方法であって、前記圧力測定部は、前記積層セル構造の最後段のユニットセルの前記カソード側流路での前記精製水素ガスの圧力を測定するように配置され、前記圧力測定部の測定値が所定の基準値未満である場合に前記改質器への前記燃料の供給量を増加させる工程を備える、水素精製昇圧システムの運転方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
このような水素精製昇圧システム及びその運転方法によれば、水素ステーションを安全かつ効率的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧システムのブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置の概略図である。
【図3】(a)は、本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置のユニットセルの断面図であり、(b)は、(a)中の領域Cの拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置のカソード側セパレータ内に設置される弾力性を有する導電性部材である。
【図5】(a)は、本発明の第1実施形態にかかるアノード側セパレータのアノード側側面図であり、(b)は、本発明の第1実施形態にかかる、カソード側流路を(a)のアノード側側面図に重ねた状態を示す。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる水素精製昇圧装置の回路図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる水素精製昇圧装置の回路図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる水素精製昇圧装置のカソード側セパレータ内に設置される弾力性を有する導電性部材である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる水素精製昇圧装置のアノード側セパレータのアノード側側面図である。
【図10】(a)~(d)は、他の実施形態にかかる水素精製昇圧装置のアノード側セパレータのアノード側側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。

【0018】
1.第1実施形態
<水素精製昇圧システムの全体構成>
図1に、本発明の第1実施形態の水素精製昇圧システム1を示す。水素精製昇圧システム1は、燃料Fとなる純水素ガス、水電解ガス、都市ガス、コークス炉ガスなどの燃料ガスまたはナフサ、灯油、ガソリンなどの燃料液体等の燃料Fから取り出した水素を精製及び昇圧して、高純度高圧の精製水素ガスPを生成し、水素タンク4内に貯留する。水素タンク4内に貯蔵された精製水素ガスPは、水素ステーションに設置される貯留タンクや燃料電池自動車に充填される。

【0019】
図1に示すように、水素精製昇圧システム1は、改質器2aと、一酸化炭素除去器2bと、水素精製昇圧装置3と、水素タンク4とを備える。改質器2aには、燃料Fを供給する燃料供給配管41が接続されており、この配管41を通じて燃料Fが改質器2aに供給される。配管41には、配管41内を流れる燃料Fの流量を制御するバルブ41bと、燃料Fの流量を計測する流量計41fと、燃料Fの圧力を計測する圧力計41pが設けられている。燃料Fの一例は、ガスであれば、主成分がメタンであって圧力が1~10気圧である都市ガスであるが、改質によって水素を取り出すことができるガスであれば別の種類・圧力のガスを用いることも可能である。改質器2aは、燃料Fに水蒸気を混合して、高温環境下で触媒にさらすことにより燃料Fを分解して水素を生成する。燃料Fが改質されると、水素と一酸化炭素を含有する改質ガスMが生成される。改質器2aには、温度計2tが設けられており、改質器2a内の温度が計測可能になっている。

【0020】
改質器2aで生成された改質ガスMは、配管42を通じて一酸化炭素除去器2bに送られる。一酸化炭素除去器2bは、改質ガスM中の一酸化炭素濃度を低減することによって水素精製昇圧装置3中の触媒の劣化を抑制する。一酸化炭素除去器2bは、改質ガスM中の一酸化炭素濃度を低減する機能を有するものであればその構成は限定されず、改質ガスM中の一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化反応器(PROX)であっても、改質ガスM中の一酸化炭素を選択的にメタン化する一酸化炭素選択メタン化反応器であってもよい。一酸化炭素除去器2bが一酸化炭素選択酸化反応器である場合、一酸化炭素除去器2bには、改質ガスMとともに空気が供給され、改質ガスM中の一酸化炭素が酸化されて二酸化炭素になる。このような一酸化炭素選択酸化反応器の内部は、メタルハニカムにPtFe/モルデナイト触媒を担持したものを使用することが好適である。また、一酸化炭素除去器2bが一酸化炭素選択メタン化反応器である場合、メタルハニカムにRuまたはV-Ni/アルミナ触媒を担持したものを使用することができる。なお、図1では、一酸化炭素除去器2bは、改質器2aとは別体にしているが、改質器2aの容器内に一酸化炭素除去器2bを配置してもよい。

【0021】
一酸化炭素除去器2bから排出される水素含有ガスH(改質ガスM中の一酸化炭素濃度を低減することによって得られるガス)は、配管43を通じて水素精製昇圧装置3に供給される。水素含有ガスHは、例えば、水素、二酸化炭素、及び水蒸気を含む。配管43には、配管43内を流れる水素含有ガスHの流量を制御するバルブ43bと、水素含有ガスHの流量を計測する流量計43fと、水素含有ガスHの圧力を計測する圧力計43pと、水素含有ガスH中の一酸化炭素濃度を計測する一酸化炭素濃度検知器43cと、水素含有ガスH中の水素濃度を計測する水素濃度検知器43hが設けられている。

【0022】
また、配管43には、水素含有ガスHに酸素ガスを混合する酸素ガス供給配管44が連結され、配管44を通じて水素含有ガスHに酸素ガスが混合される。配管44には、配管44内を流れる酸素ガスの流量を制御するバルブ44bが設けられている。一酸化炭素除去器2bの設置にも関わらず、下記の生成装置3のアノードに一酸化炭素が蓄積した場合に,導入酸素によりアノード表面に吸着した一酸化
炭素を酸化除去して性能復活を図られる。

【0023】
水素精製昇圧装置3は、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードの間に電圧を印加することによって水素含有ガスH中の水素を精製及び昇圧して精製水素ガスPを生成する精製昇圧部5と、精製昇圧部5を取り囲む密閉容器である外殻3aとを備える。精製昇圧部5には、配管43,46,47,51が接続されており、配管43を通じて水素含有ガスHが精製昇圧部5に供給され、配管46を通じて精製水素ガスPが排出される。配管51は、窒素ガスを供給するための配管であり、所望のタイミングで配管51を通じて精製昇圧部5のカソード側に窒素ガスを供給することによって、精製昇圧部5のカソード側の流路をパージすることができる。配管51には、配管51内を流れる窒素ガスの流量を制御するバルブ51bが設けられている。また、使用後の水素含有ガスHは、配管47を通じて排ガスEとして排出される。配管47には、排ガスE中の水素濃度を計測する水素濃度検知器47hが設けられている。精製昇圧部5には、アノードとカソードの間に印加される電圧を計測する電圧計5vと、アノードとカソードの間を流れる電流を計測する電流計5aが設けられている。また、外殻3aには、外殻3a内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給配管45が連結されている。配管45には、配管45内を流れる加圧ガスの流量を制御するバルブ45bが設けられている。また、外殻3aには、外殻3a内の水素濃度を計測する水素濃度検知器3hと、外殻3a内の圧力を計測する圧力計3pが設けられている。加圧ガスの種類は特に限定されないが、例えば、空気又は窒素ガスである。外殻3a内の圧力は、水素含有ガスHの圧力より高く、精製水素ガスPの圧力よりも低いことが好ましい。この場合、水素ガス排出経路の配管46内の圧力と外殻3a内の圧力の差が小さくなり、高圧水素がリークすることが抑制される。また、水素濃度検知器3hによって水素リークが速やかに探知される。

【0024】
水素含有ガスHは、1~10気圧であることが想定されるが、この範囲外の圧力であっても良い。精製昇圧部5において、理論的にはアノード、カソード間にかける電圧が60mV、120mV、180mVと増加するごとに水素が10倍、100倍、1000倍と精製昇圧される。電解質膜は、原理的には水素イオンのみを透過させ得るため、カソードにはほとんど水素のみが生じる。しかし、アノードガスに含まれる水素以外のガスが膜中をごく僅か透過し、カソード側に不純物として移動する。生成された水素に含まれる不純物は、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下の濃度である。燃料電池自動車用とする場合は、水素燃料規格を満足するため、水素純度≧99.97、全炭化水素≦2ppm、HO≦5ppm、O≦5ppm、He≦300ppm、Ar,N≦100ppm、CO≦2ppm、CO≦0.2ppm、S≦0.004ppm、HCHO≦0.01ppm、HCOOH≦0.2ppm、NH≦0.1ppm、ハロゲン化物≦0.05ppm、粒子≦1mg/kgであればよい。昇圧された水素は、750気圧以上、好ましくは850気圧以上、さらに好ましくは1000気圧以上の圧力である。なお、本昇圧装置は、高純度の低圧水素を上記のように昇圧する目的で用いることも出来る。

【0025】
精製水素ガスPは、配管46を通じて、精製水素ガスPを貯留する水素タンク4に送られる。配管46には、配管46内を流れる精製水素ガスPの流量を制御するバルブ46a,46bと、精製水素ガスPの流量を計測する流量計46fと、精製水素ガスPの圧力を計測する圧力計46pが設けられている。水素精製昇圧装置3とバルブ46aの間には排気用配管49が連結されており、配管49には、配管49内を流れるガスの流量を制御するバルブ49bと、水素精製昇圧装置3内の残ガスを排出する排気ポンプ49pが設けられている。また、バルブ46aとバルブ46bの間には排水用配管50が連結されており、配管50には、水トラップ・ドレイン器4aと、その上流側及び下流側にバルブ50a、50bが設けられている。精製昇圧部5に電流が流れる時、アノードからカソードに移動するプロトンが水分子を同伴して電解質膜を移動し、カソード側に浸透水として水が生じる。この水を水素中から効率よく除去するために、水素ガス流路中に水トラップ・ドレイン器4aが設けられる。水トラップ・ドレイン器4aは、ドレインバルブ付きの一対の水トラップを有し、交互に切り替え排水除去することで、水素精製昇圧装置3の連続運転時にも水素経路中の水を除去し、水素純度を高めることを可能とする。
また図示しないが、燃料電池自動車用とする場合は、水素燃料規格を満足するため、例えば水分を除去するための露点冷却型、吸着型等の除湿装置や、無機、有機の不純物を除去するための吸着装置や膜分離装置等の除去装置を備えてもよい。

【0026】
水素タンク4には、水素タンク4内の圧力を計測する圧力計4pが設けられている。また、水素タンク4には、水素タンク4内の精製水素ガスPを排出するための配管48が連結されており、配管48には、配管48内を流れる精製水素ガスPの流量を制御するバルブ48bが設けられている。配管48は、水素ステーションに設置される貯留タンクや燃料電池自動車に連結されて、圧力差によって精製水素ガスPが貯留タンク又は燃料電池自動車に充填される。

【0027】
<水素精製昇圧システムの運転方法>
次に、本実施形態の水素精製昇圧システム1の運転方法について説明する。以下の説明中の各判断及び処理は、水素精製昇圧システム1の動作を制御する制御部によって行われることが好ましいが、判断及び処理の一部又は全部を管理者が手動で行ってもよい。

【0028】
まず、バルブ41bを閉じた状態で改質器2aを予熱し、改質器2a内の温度が規定値に到達したことを温度計2tが検知すると、バルブ41bを開いて配管41を通じて燃料Fを改質器2aに供給する。この際、配管41内を流れる燃料Fの流量及び圧力は、流量計41f及び圧力計41pによって監視され、流量計41f及び圧力計41pによる流量及び圧力の計測結果に基づいて燃料Fの流量及び圧力が制御される。改質器2aの予熱温度は、特に限定されないが、例えば、650~700℃である。

【0029】
改質器2a内での改質反応によって燃料Fから、水素と一酸化炭素を含有する改質ガスMが生成され、配管42を通じて一酸化炭素除去器2bに供給される。一酸化炭素除去器2bでは改質ガスM中の一酸化炭素が少なくとも部分的に除去されて水素含有ガスHが生成され、配管43を通じて水素精製昇圧装置3に送られる。一酸化炭素除去器2bの予熱温度は、特に限定されないが、例えば、100~180℃である。

【0030】
水素含有ガスH中の一酸化炭素濃度は、一酸化炭素濃度検知器43cによって監視され、水素含有ガスH中の一酸化炭素濃度が閾値を超えると酸素ガス供給配管44のバルブ44bを開いて水素含有ガスHに一酸化炭素の酸化に必要最小量の酸素ガスを混合する。水素含有ガスHに酸素ガスを混合させると水素精製昇圧装置3中のアノードの触媒層中で水素含有ガスH中の一酸化炭素が酸化され、その結果、水素含有ガスH中の一酸化炭素濃度を低下させることができる。そして、水素含有ガスH中の一酸化炭素濃度が閾値以下になるとバルブ44bを閉じて、酸素ガスの供給を停止する。また、水素含有ガスH中の水素濃度は、水素濃度検知器43hによって監視され、水素濃度が所定の閾値以下、または一酸化炭素濃度が閾値(例:1%)以上になった場合は、バルブ41bの開度を調節して燃料Fの流量を減少させたり、改質器2aでの改質条件を調整したりすることによって水素濃度を上昇させることを試みるが、それでも水素濃度が十分に高くならない場合は、バルブ41bを閉じる等の方法によって水素精製昇圧システム1の運転を停止して、改質器2a及び/又は一酸化炭素除去器2bのメンテナンスを行う。

【0031】
また、水素精製昇圧装置3に供給される水素含有ガスHの流量及び圧力は、流量計43f及び圧力計43pによって監視される。そして、水素精製昇圧装置3に供給される水素含有ガスHが過剰又は過小である場合には、バルブ43bの開度を調節して水素含有ガスHの供給量が制御される。

【0032】
水素精製昇圧装置3では、精製昇圧部5のアノードとカソードの間に印加される電圧によって水素含有ガスH中の水素が精製及び昇圧されて精製水素ガスPが生成される。精製水素ガスPは、配管46を通じて水素精製昇圧装置3から排出されて水素タンク4に送られ、その流量及び圧力は、流量計46f及び圧力計46pによって監視される。水素タンクの圧力計4pの圧力に比べ,圧力計46pの値が設定以上に高くなったとき,バルブ46a,バルブ46bを開けて水素貯蔵を開始する。また、アノードとカソードの間の電圧及び電流は、電圧計5vと電流計5aによって監視され、精製水素ガスPが所望の流量及び圧力になるように適宜調節される。さらに、燃料Fの供給量は、精製水素ガスPが所望の流量及び圧力になるように適宜調節される。

【0033】
水素精製昇圧装置3の外殻3a内の圧力及び水素濃度は、圧力計3pと水素濃度検知器3hによって監視され、外殻3a内の水素濃度が所定の閾値を超えると、バルブ41bを閉じる等の方法によって水素精製昇圧システム1の運転を停止する。また、外殻3a内の圧力が所定の閾値を下回ると、バルブ45bを開いて外殻3a内に加圧ガスを供給する。

【0034】
通常運転時には、バルブ46a,46bは開いていて、バルブ49b,50aは閉じているので、水素精製昇圧装置3からの精製水素ガスPは、水素タンク4内に充填される。水素タンク4内の圧力は圧力計4pによって監視され、計測した圧力が所定の閾値を超えると、バルブ41bを閉じる等の方法によって水素精製昇圧システム1の運転を停止させる。

【0035】
また、配管内の水は、水トラップ・ドレイン器4aに貯まり、バルブ46a,46bを閉じてバルブ50aを開いて中の水を排出する。一対の水トラップ・ドレイン器を備え、それぞれの水トラップ・ドレイン器の上流側と下流側に独立して開閉可能なバルブを設ければ、上記の操作を行うことで連続運転による精製水素ガスPの製造・昇圧・貯蔵が可能となる。

【0036】
水素精製昇圧システム1の運転を停止させる際には、バルブ41bを閉じて燃料Fの供給を停止し、水素精製昇圧装置3への通電を停止し、バルブ43bを閉じて水素精製昇圧装置3への水素含有ガスHの供給を停止し、バルブ46a及び46bを閉じて停止状態とする。メンテナンスまたは長期運転停止する場合は,バルブ49bを開いた状態でバルブ51bを開け、窒素ガスをパージし、水素精製昇圧装置3内の残ガスを排出する。強制的に排気する場合は、バルブ46aを閉じ、バルブ49bを開け、排気ポンプ49pを起動させてもよい。このような方法で水素精製昇圧システム1の運転を停止させることができる。

【0037】
<水素精製昇圧装置の詳細な構成>
次に、図2~図8を用いて、水素精製昇圧装置3の詳細な構成を説明する。図2に示すように、水素精製昇圧装置3は、精製昇圧部5と、精製昇圧部5を取り囲む密閉容器である外殻(高圧タンク)3aとを備える。精製昇圧部5は、複数のユニットセル8が積層された積層セル構造18を備える。図2では、5つのユニットセル8が積層されている。

【0038】
積層セル構造18を構成する各種部材は、は、ベースプレート6と締付プレート7によって積層方向に締付応力を加える押圧構造によって固定されている。締付プレート7と積層セル構造18の間には、押え治具9が設けられる。

【0039】
ベースプレート6は、積層セル構造18の一端に設けられ、締付プレート7は、積層セル構造18の他端に設けらる。締付プレート7は、ボルト10及び押圧ばね10bを介在したナット10aにて、積層セル構造18を挟んでベースプレート6に締付けられており、押え治具9に対向する面の中央に球面状凹部(不図示)を有する。押え治具9は、扁平な錐体形状をしており、締付プレート7に対向する面の中心部に球面状凹部(不図示)と嵌合可能な球状突起9aを有する。また、押え治具9は、積層セル構造18側の底面が積層セル構造18の端面と同一形状である。すなわち、押え治具9は、締付プレート7と1点で接し、積層セル構造18と全面で接する構造となっている。

【0040】
このように構成された本実施形態のセル構造では、締付プレート7を締め付けるボルト10、ナット10aによる締付トルクに多少ばらつきがあっても、押え治具9には上面中心の球状突起9aから締付プレート7全体の締付力が集中して作用する。従って、積層セル構造18の全面は押え治具9により均一な面圧で押さえられ、面圧の偏りが無くなる。また温度上昇や振動によりナット10aが緩んだ場合においても、押え治具9が押圧ばね10bにより押さえられるので、積層セル構造18の締付圧力が緩むことがない。従って、積層セル構造18の気密性が損なわれることが無く、また接触抵抗も増大しないため、接触抵抗増大による損失が発生することがない。

【0041】
本実施形態の水素精製昇圧装置3は、液体を用いないため、外殻3aを任意の方向を上にして設置することができる。水を用いる水電解の水素昇圧装置は、水の供給経路を鉛直方向下方にする必要から、設置方向が決まってしまうことと異なる。ただし、水素の精製昇圧プロセスにより凝縮水が生じる場合があるため、図2のように、精製水素ガスPを排出するための配管46が外殻3aの下側になる向きに設置することが好ましい。

【0042】
積層セル構造18内には、複数のユニットセル8を貫くように管路53,55が設けられており、配管43は、積層セル構造18内の管路53を通じて、配管47に連結されている。水素含有ガスHは、配管43を通じて管路53内に供給され、管路53内で拡散してアノード側流路20aを通じて各ユニットセル8の変換部57に供給される。変換部57は、電解質膜を挟んで配置されるアノードとカソードを備え、アノードとカソードの間に電圧を印加することによってアノード側で水素含有ガスH中の水素分子が水素イオンに変換し、電解質膜を通過した水素イオンをカソード側で水素分子に変換することによって精製水素ガスPを生成する機能を有する。カソード側で生成された精製水素ガスPは、カソード側流路30aを通じて管路55に送られ、管路55に連結された配管46を通じて水素精製昇圧装置3外に排出される。また、変換部57において水素含有ガスHから水素が取り除かれた後の排ガスEは、図示しない流路を経由し、管路53に送られ、さらに、配管47を通じて水素精製昇圧装置3外に排出される。

【0043】
また、排ガス流路47中には、水素ガスセンサー47hを設けて水素精製率をモニターする。この流路中での水素ガスを測定することによって水素精製昇圧システム1に適切な負荷電流を選ぶことが出来る。また,システムが正常に動作しているかどうかを確認することができ、測定結果に基づいて、燃料Fの供給量を調節することによって、水素精製率を所望の範囲に制御することができる。図2に示すように、アノード側流路20aに供給される水素含有ガスH中の水素濃度は、下流側にあるユニットセル8ほど低くなるので、積層セル構造18の最後段のユニットセル8における精製への寄与が最も低くなる。このため、積層セル構造18の最後段のユニットセル8のアノード側流路20aでの水素ガス濃度を測定することによって、水素ガスの供給が十分であるかどうかを確認することができ、水素濃度の測定値が所定の基準値未満である場合(つまり、水素ガスの供給が不十分である場合)には、負荷電流を低減させるか,又は改質器2aへの燃料Fの供給量を増加させる等の方法によって、精製水素ガスPを効率的に製造することが可能になる。

【0044】
また圧力による制御を行う場合は、カソード側流路30a中には、精製水素ガスPの圧力を測定する圧力測定部59を設けることが好ましい。この流路中での精製水素ガスPを測定することによって水素精製昇圧システム1が正常に動作しているかどうかを確認することができ、圧力測定部での測定結果に基づいて、燃料Fの供給量を調節することによって、精製水素ガスPの圧力を所望の範囲に制御することができる。また、圧力測定部59を設置する位置は、精製水素ガスPの圧力が測定可能な位置であれば特に限定されないが、図2に示すように、積層セル構造18の最後段のユニットセル8のカソード側流路30aでの精製水素ガスPの圧力を測定するように圧力測定部を配置することが好ましい。アノード側流路20aに供給される水素含有ガスH中の水素濃度は、下流側にあるユニットセル8ほど低くなるので、積層セル構造18の最後段のユニットセル8において最も低くなり、従って、積層セル構造18に含まれる複数のユニットセル8のうち、最後段のユニットセル8で生成される精製水素ガスPの圧力が最も低くなる。このため、積層セル構造18の最後段のユニットセル8のカソード側流路30aでの精製水素ガスPの圧力を測定することによって、水素ガスの供給が十分であるかどうかを確認することができ、圧力測定部の測定値が所定の基準値未満である場合(つまり、水素ガスの供給が不十分である場合)には、改質器2aへの燃料Fの供給量を増加させる等の方法によって、精製水素ガスPを効率的に製造することが可能になる。

【0045】
また、測定する圧力は、単一のユニットセル8のカソード側流路30aでの精製水素ガスPの圧力であってもよく、2つのユニットセル8のカソード側流路30aでの精製水素ガスPの間の圧力差であってもよい。圧力差が所定の閾値を超える場合は、水素ガスの供給が不十分であるか又はユニットセル8に何らかの不具合が生じていると判断して、改質器2aへの燃料Fの供給量を増加させるか、水素精製昇圧システム1の運転を停止してユニットセル8のメンテナンスを行う等の処置を行うことができる。なお、カソード側流路30aでの精製水素ガスPの圧力を制御に利用する場合、管路55からカソード側流路30aへの精製水素ガスPの逆流を防止する弁を適宜設ける。

【0046】
圧力測定部を構成するための圧力計の種類は、特に限定されないが、精製水素ガスPが非常に高圧であるので、このような高圧に耐える圧力計を用いることが必要であり、そのような圧力計としては、歪み計、ブルドン管ゲージ、ダイヤフラムゲージ、ベローゲージ、カプセルゲージ等の機械式圧力計が好ましい。

【0047】
ブルドン管ゲージは断面が扁平のC形、スパイラルの金属パイプの開口された固定端から導入された測定すべき圧力により、左記のパイプの曲率が変形することを利用したゲージであり、超高圧での計測もでき、かつ警報信号を必要とするマイクロスイッチが内臓された(例えば、上下限の2接点を有する)ゲージ等、種々のブルドン管ゲージがある。このゲージは、水素精製昇圧装置における高濃度高圧の精製水素ガス生成プロセスで何らかの原因で水素昇圧が発生しなくなった時に、装置の緊急停止等に使用できる。また、水素昇圧時での脈動圧の変動にも対応できる耐震性(耐激震性)形ゲージや蒸気・耐熱性形ゲージ等、用途に応じたゲージもある。このゲージは、旭計器工業、第一計器製作所、木幡計器製作所等々のメーカーによって市販されている。

【0048】
ダイヤフラムゲージは、弾性ある平面が垂直方向に変形しやすい円板状圧電素子である。一般的にダイヤフラムの変位量が少ないため、該変位量を電気信号に変換する方式である。種類として、ダイヤフラムの歪を利用する半導体歪方式とダイヤフラムの変位を利用する静電容量方式がある。このゲージは第一計器製作所等のメーカーによって市販されている。

【0049】
本実施形態の水素精製昇圧装置に適用可能な半導体歪方式は、金属ダイヤフラム上に直接的に薄膜形成できる「蒸着型半導体歪ゲージ」である。また、ダイヤフラムの変位を利用する静電容量方式は、受圧素子であるダイヤフラムと対応する平板に電極を設け、ダイヤフラムの変位を静電容量(電気的な対抗電極のコンデンサー容量)の変化として計測する。このダイヤフラムの材質は金属・セラミック等が使用される。このゲージはセラミック製圧力センサー(セラファイヤー:高圧プロセス用で70MPaまでの測定が可能)を制作するエンドレスハウザー等のメーカーがある。

【0050】
また、上記圧力計からの出力電圧は、種々の要因によって変動することがあるので、誤動作を防ぐために、フリップフロップなどの論理回路を用いて、異常発生を示す信号が複数回検出されたときに、異常が発生したと判断するように制御を行うことが好ましい。

【0051】
図2においては、5つのユニットセル8が積層されているが、ユニットセル8の積層数は、ユニットセル8の面積と、必要な供給電力量によって任意に決定することができる。

【0052】
一般の水素ステーション向けにおいては、100Nm/hの水素を生成する必要がある場合が多い。このためには、1.33A/cmの電流密度のセルを使用する場合、30×30cm電極断面積のセル100セルをスタック化したものを2スタック又は15×15cm電極断面積のセル100セルをスタック化したものを8スタック用いることが好適である。

【0053】
また、一般の家庭向け水素貯蔵においては、0.5Nm/hの水素を生成する必要がある場合が多い。このためには、1.33A/cmの電流密度のセルを使用する場合、15×15cm電極断面積のセル4セルをスタック化したものを1スタック用いることが好適である。

【0054】
また、積層枚数を大きくすることで、ユニットセル8当たりのセパレータの流路面積が小さくなる。流路面積と圧力の積が必要な締付圧力に比例するため、積層枚数を増やしてセパレータの流路面積を小さくすることで、積層セル構造18を締め付けるために必要な締付圧力を低減することが可能となる。

【0055】
(ユニットセルの構造の詳細説明)
ここで、図3~図6を用いて、ユニットセル8の構造について詳細に説明する。
積層セル構造18に含まれる複数のユニットセル8は、セパレータ8aによって区切られている。隣接する2つのセパレータ8a間には、固体高分子電解質膜40が挟まれる。隣接するセパレータ8aの一方は、アノード側流路20aを備えるアノード側セパレータ20として機能し、他方は、カソード側流路30aを備えるカソード側セパレータ30として機能する。積層セル構造8は、隣接する2つのセパレータ8a間のシール部分が、ガスケット12が押圧されることでシールされる。また、図3(b)に示すように、アノード側セパレータ20及びカソード側セパレータ30には、それぞれ、互いに対向する面に平坦部が形成されており、平坦部の両方又は一方に環状突部20d、30dが形成されている。そして、環状突部20d、30dをガスケット12に押し当てることによってシール性を向上させている。具体的には、環状突部20d、30dの断面は三角形状をしており、好ましくは正三角形又は頂角が30~150度の二等辺三角形で頂点を丸めた構造を有している。頂点が丸められていることにより、ガスケット12を傷つけることを防止する。環状突部20d、30dはアノード側セパレータ20、カソード側セパレータ30の平坦部から削り出しにより形成される。このようなシール構造は、シール面が多少傾いたとしても良好なシール性を保ち、またシール面にOリングを設ける必要がないためコスト低減が可能である。

【0056】
本実施形態において、セパレータ8aの断面は矩形状に形成される。矩形状にすることによって、セパレータ製造時にセパレータの材料を効率よく利用することができるという利点がある。また、矩形状の中でも正方形、長方形などの種々の形状があるが、正方形が特に耐圧性を向上させる面からは好ましい。この場合、セパレータ8aの断面のみならず、アノード側流路20a、カソード側流路30aなども同様に図5に示すように矩形状にすることがセパレータ材料を効率よく利用する面からは好ましい。また、この場合、押え治具9は、底面がセパレータと同一の形状の四角錐形状にすれば、積層セル構造18と全面で接して略均一な圧力を加える事ができる。

【0057】
固体高分子電解質膜40の一方にアノード触媒層23が積層され、固体高分子電解質膜40の他方にカソード触媒層33が積層される。

【0058】
アノード触媒層23の外側に、導電性撥水層22が積層される。さらに、導電性撥水層22の外側にアノード側給電体21がアノード触媒層23に対向して設けられる。さらに、アノード側給電体21の外側に、アノード側流路20aを備えたアノード側セパレータ20が設けられる。

【0059】
カソード触媒層33の外側に、導電性撥水層32が積層される。さらに、導電性撥水層32の外側にカソード側給電体31がカソード触媒層33に対向して設けられる。さらに、カソード側給電体31の外側に、精製水素ガスPが管路55へ排出されるためのカソード側流路30aを備えたカソード側セパレータ30が設けられる。さらに、カソード側流路30aには少なくとも一部が導電性を有し、積層セル構造18の積層方向にカソード側給電体31を付勢するための、弾力性を有する導電性部材34が配置される。

【0060】
カソード側セパレータ30に形成されるカソード側流路30aは、固体高分子電解質膜40と平行な面方向において、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20aに対して内側に収まる大きさに形成される。

【0061】
このような構成により、固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側は、固体高分子電解質膜40によって物理的に分離され、シールされる。このため、気体は、固体高分子電解質膜40を介して固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側を行き来することができない。固体高分子電解質膜40はイオン伝導体であり、本実施形態の場合、水素イオンは固体高分子電解質膜40を介して固体高分子電解質膜40のアノード側とカソード側を行き来することができる。

【0062】
以下、このセル構造を構成する各要素について詳細に説明する。
(i)固体高分子電解質膜
本実施形態では、固体高分子電解質膜40は、プロトン(水素イオン)を伝導可能な固体材料を用いることができる。このようにプロトン(水素イオン)を伝導可能な固体材料を用いると固体高分子電解質膜40に電流を加える事により、カソード側流路に水素を生成するという利点があるからである。具体的には、固体高分子電解質膜40は、ポリマーの不織布やフィブリル、ガラス繊維で補強したフッ化炭素系電解質(PFSA(パーフルオロスルホン酸)膜、Nafion(R)(デュポン社製)など)、又は炭化水素系電解質膜(SPEKP(スルフォン酸化ポリエーテルケトンフォスフィンオキシド)、SPK-bl-1(スルフォン酸化ポリエーテルケトンブロック共重合体)、SPEEK(スルホン化ポリエーテルエーテルケトン)など)を用いる。膜中のガス透過が低いため、炭化水素系電解質膜を使用することが最も好ましい。

【0063】
(ii)触媒層
上述したように、固体高分子電解質膜40の一方にはアノード触媒層23が積層され、固体高分子電解質膜40の他方にはカソード触媒層33が積層されている。このアノード触媒層23は、水素をプロトン(水素イオン)と電子に分解可能な多孔質材料を用いることができる。このように水素をプロトン(水素イオン)と電子に分解可能な多孔質材料を用いるとアノード触媒層で水素が効率よく分解されるからである。具体的には、このアノード触媒層23は、カーボンブラックに担持されたPt単味またはPtRu合金の微粒子触媒(Pt/CBまたはPtRu/CB)を、固体高分子電解質膜40に薄層コーティングすることにより、形成される。特に、PtRu/CB触媒は、COの酸化活性、被毒耐性に優れるため、一酸化炭素選択酸化反応器で完全にCO除去がされていない恐れがある場合に有用である。一方、カソード触媒層33は、カーボンブラックに担持されたPt単味の微粒子触媒(Pt/CB)を、固体高分子電解質膜40に薄層コーティングすることにより、形成される。さらに、これらの触媒層23、33において、カーボンブラックに担持された微粒子触媒にPFSAが薄層にコーティングされる。

【0064】
このような構成により、アノード触媒層23、カソード触媒層33において、触媒層内に触媒粒子面と、気体の水素通路と、固体高分子電解質膜40の電解質面とが接触する三相帯界面を形成される。そして、アノード触媒層23における水素酸化反応、カソード触媒層における水素発生反応が円滑に進む。この結果、このような構成は、アノード触媒層23、カソード触媒層33それぞれの反応活性を高めるという利点がある。反応の活性が高まる結果、触媒層に使用される貴金属(Pt、Ru)の使用量を低減することで、触媒層の低コスト化を図ることが可能となる。

【0065】
これらの触媒層23、33は、以下のように、触媒金属と、導電性材料と、電解質材料との混合物を固体高分子膜40のそれぞれの面に塗装するという手順にて作成する。このような手順で作成すると、触媒金属の使用量を抑えつつ、高い反応性をえるという利点があるからである。

【0066】
具体的には、まず、Pt/CBまたはPtRu/CB、純水、及びエタノールの混合物をボールミルで粉砕、混合する。その後、5w%Nafion溶液(たとえばNafion/CB=0.7~1.0)を追加し、さらにボールミルで粉砕、混合する。これにより、触媒層用インクが形成される。

【0067】
次いで、この触媒層用インクを、スワールスプレー装置によって、固体高分子電解質膜40のそれぞれの面に塗装する。これより、固体高分子電解質膜40の一方の面にアノード触媒層23を形成し、他方の面にカソード触媒層33を形成する。アノード触媒層23及びカソード触媒層33が形成された固体高分子電解質膜40を、100℃にて真空乾燥後、130℃、50MPaの条件でホットプレスすることにより、燃料電池用電極膜(CCM:Catalyst Coated Membrane)が形成される。

【0068】
この時、触媒金属担持量としては、0.02~0.5mg/cm2、好ましくは0.05~0.2mg/cm2、さらに好ましくは0.08~0.12mg/cm2がよい。特に、コスト/性能のバランスの観点から触媒金属担持量として0.1mg/cm2を採用する。

【0069】
(iii)導電性撥水層
上述したように、アノード触媒層23とアノード側給電体21との間には、導電性多孔質の導電性撥水層22が設けられている。また、カソード触媒層33とカソード側給電体31との間には、導電性多孔質の導電性撥水層32が設けられている、これらの導電性撥水層22、32は、良導電性を有し、多孔質であり、平滑な面を有し、耐腐食性を有する。また、アノード側導電性撥水層22においては、水素含有ガスHが拡散され、アノード側触媒層23に均一に水素含有ガスHを供給することを補助する。このような構成の導電性撥水層22、32によれば、アノード触媒層で起こる電気化学反応によって給電体の金属が腐食することを防止でき、且つ、給電体から供給される電流の抵抗を増加することなく、水素含有ガスHを良好かつ均一にアノード側触媒層23まで輸送および生成水素をカソード側触媒層33から排出することができるという利点がある。

【0070】
このような導電性撥水層22、32は、具体的には、以下の手順のように炭素材料と、界面活性剤と、フッ素樹脂の重合体ディスパージョン希釈体との混合物を、粉砕・混合したものをアノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31に塗装し、乾燥し、プレスすることにより一体形成して作成する。

【0071】
具体的には、まず、炭素材料としてカーボンブラックと、界面活性剤としてTriton 10~20%と、フッ素樹脂としてPTFEまたはFEP(フッ化エチレン/プロピレン共重合体)のディスパージョン希釈体との混合物を、ボールミルで粉砕、混合する。このとき、カーボンブラックとフッ素樹脂に対する比率は、1/4~2/3が好ましい。

【0072】
次いで、これより形成される導電性撥水層用インクを、スワールスプレー装置にて、アノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31の片面に塗装する。これを窒素雰囲気下、280℃の条件で界面活性剤を除去した後、300℃、50MPaの条件にてホットプレスすることにより、アノード側給電体21及び/又はカソード側給電体31と導電性撥水層22、32が一体形成される。導電性撥水層22、32の厚さは、20~100μmがよく、好ましくは40~80μmがよく、さらに好ましくは55~65μmがよい。導電性撥水層22、32の気孔率は、30~80%がよく、さらに好ましくは40~70%がよく、さらに好ましくは50~60%がよい。このような導電性撥水層22、32の製造方法によれば、低コストで高品質な導電性撥水層を製造できるという利点がある。

【0073】
(iv)給電体
上述のように、アノード触媒層23の外側に、アノード側給電体21がアノード触媒層23に(導電性撥水層22を介して)対向して設けられる。また、カソード触媒層33の外側に、カソード側給電体31がカソード触媒層33に(導電性撥水層32を介して)対向して設けられる。アノード側給電体21、カソード側給電体31は、所定の空孔率を有する導電性材料を用いることができる。このような材料であれば良好な導電性とガス拡散特性を両方兼ね備えるという利点があるからである。このような材料の中でも、良導電性を有し、多孔質であり、平滑な面を有し、耐腐食性を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、アノード側給電体21、カソード側給電体31には、金属焼結体多孔質シート(PMS)が用いられる。さらに好ましくは、高圧縮環境にさらされる事による材料のクリープ変形を抑止するため、金属焼結体多孔質シートに焼き入れ処理を施し、給電接触面にメッキ等により抵抗低減処理を施したPMSを用いる。

【0074】
さらに、アノード側給電体21、カソード側給電体31に上述の導電性撥水層22、32が形成される場合、金属焼結体多孔質シート自体は必ずしも耐食性金属である必要はない。このとき、金属焼結体多孔質シートとしてはCu等の安価な金属が使用可能である。

【0075】
(v)弾力性を有する導電性部材
図4を用いて、弾力性を有する導電性部材34の具体的形状について説明する。上述したように、カソード側給電体31とカソード側セパレータ30の間には、少なくとも一部が導電性を有し、積層セル構造18の積層方向に荷重を付与する導電性部材34が配置される。この導電性部材34は、カソード側流路30a内に収納される形状をしており、矩形状のプレートを、波状に折り曲げることにより波状形状34aが形成されている。波状形状34aは、積層セル構造18に組み込まれた場合、弾性変形することによりセル構造の積層方向に荷重を付与する。

【0076】
このような構成により、導電性部材34がカソード側セパレータ30及びカソード側給電体31に荷重を付与するため、カソード側給電体31が、カソード側セパレータ30又はカソード側触媒層33から浮き上がり電気的接触が悪化する問題を防止することができる。

【0077】
(vi)アノード側流路
図5(a)を用いて、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20aについて説明する。アノード側流路20aは、水素含有ガス入口8cと水素含有ガス出口8dを有する。水素含有ガス入口8cと水素含有ガス出口8dは、どちらも管路53に連通されている。水素含有ガスHのアノード側流路20a内の拡散を補助するために、溝部分8fと壁部分8eが形成される。溝部分8fと壁部分8eが存在することによって、アノード側流路20a内に大きな濃度分布が発生して未反応の水素含有ガスHが水素含有ガス出口8dに排出されることを防止する。水素含有ガスHは、アノード側流路20aと同一形状の導電性撥水層付き多孔質金属シート(アノード側給電体21)を介してアノード触媒層23に供給される。

【0078】
(vii)カソード側流路
図5(b)は、固体高分子電解質膜40に対して垂直な方向から見たアノード側セパレータ20に、カソード側流路30aを重ねた状態を示す。図5(b)に示すように、カソード側流路30aは、固体高分子電解質膜40に対して垂直な方向から見た場合に、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20aに対して内側に収まる大きさに形成される。具体的には、図5(b)に示すように、カソード側流路30a(点線)は、アノード側流路20aに対して、流路の中心を同じくして、アノード側流路20aを均等に縮小した構成をとっている。このような構成をとることによって、カソード側流路30aに高圧の水素が生成されても電解質膜が破れにくいという利点がある。カソード触媒層33で生成した精製水素ガスPは、カソード側流路30aと同一形状の導電性撥水層付き多孔質金属シート(カソード側給電体31)を介して管路55に排出される。

【0079】
(viii)直列式の電気的接続
図6を用いて、積層セル構造18の電気的接続について説明する。図6に示すように、本実施形態では、積層セル構造18を構成する複数のユニットセル8が、電気的に直列に接続されている。すなわち、この積層セル構造18では、アノード側セパレータ20、アノード側給電体21、アノード側導電性撥水層22、アノード側触媒層23は電気的に接続されている。また、カソード側セパレータ30、弾力性を有する導電性部材34、カソード側給電体31、カソード側導電性撥水層32、カソード側触媒層33は電気的に接続されている。
また、固体高分子電解質膜40およびガスケット12は非導電性であり、電気的に絶縁されている。しかし、固体高分子電解質膜40はイオン伝導体であるため、水素イオンが固体高分子電解質膜40内を伝導するため、アノード側からカソード側に電荷が運ばれる。

【0080】
よって、図6に示すように、積層セル構造18の一方の端部のアノード側セパレータ20に、外部電源15の正極13を接続し、積層セル構造18の他方の端部のカソード側セパレータ30に、外部電源15の負極14を接続し、アノード側セパレータ20に水素含有ガスHを供給することで、複数のユニットセル8に直列に通電することが可能である。すなわち、外部電源15と複数のユニットセル8は、電気的に直列に接続される。このように複数のユニットセル8が、電気的に直列に接続されていることによって、積層しない場合と比較して各セル間の給電端子の電源との接続が省略でき、比較的高い電圧で作動するという利点がある。

【0081】
外部電源15により印加される電圧に応じて、所定の圧力まで昇圧された水素がカソード側流路30aに生成される。外部電源15で印加する電圧を大きくするほど、カソード側流路30aに生成される水素の圧力を高くすることができる。

【0082】
<作用効果>
本実施形態の水素精製昇圧装置3は、上述のような構成を有するため、下記に記載する有利な効果を奏する。
(1)特許文献2に示すような水電解から高圧水素を製造する従来技術と比較して、本実施形態の場合は水を用いないため、積層セル構造18を構成する各部品が腐食しにくい。このため、耐腐食性のセル材料を使用する必要がなく、低コスト化を図ることが可能である。
(2)ユニットセル8を積層するため、ユニットセル8の流路(アノード側流路20aおよびカソード側流路30a)の面積が小さくなり、複数のユニットセル8の積層方向の締付応力が小さくなる。すなわち、本実施形態の水素精製昇圧装置3は、水素ステーション向けの用途で必要とされることが多い750気圧以上、好ましくは850気圧以上、さらに好ましくは1000気圧以上まで水素を昇圧することが可能である。
(3)特許文献2に示すような水電解から高圧水素を製造する従来技術と比較して発熱量が少なく、且つ、アノード側流路20aに流れる精製水素ガスPが固体高分子電解質膜40を冷却するため、積層セル構造18に冷却機構を設ける必要がない。
(4)カソード側流路30aは、アノード側流路20aに対して内側に収まる大きさに形成されるため、カソード側流路30aに高圧の水素が生成されても、アノード側流路20aとカソード側流路30aの圧力差によって固体高分子電解質膜40が破れることが防止される。
(5)導電性部材34がカソード側セパレータ30及びカソード側給電体31に荷重を付与するため、カソード側給電体31が、カソード側セパレータ30又はカソード側触媒層33から浮き上がり電気的接触が悪化する問題を防止する。
(6)給電体21(31)と触媒層23(33)の間に、導電性撥水層22(32)が設けられるため、給電体21(31)が触媒層23(33)の影響で腐食することを防止することが可能である。
(7)環状突部20d、30dがガスケット12を押し当てる構造を有するため、平坦部でガスケット12を押圧する場合と比較して、シール性が向上し、Oリングを用いてシールすることが不要となる。さらに、カソード側流路30aに生成される水素の圧力によってガスケット12が外側に押し出されることを防止することが可能である。
(8)押え治具9は、締付プレート7と1点で接するため、締付プレート7を締め付ける締付トルクに多少ばらつきがあったり、生成水素圧の低下、温度上昇や振動により締付けトルクが緩んだ場合においても、押圧バネ10bとの協働により押え治具9を介して積層セル構造18の全面を均一な面圧で抑えることが可能となる。

【0083】
2.第2実施形態(並列接続の場合)
本実施形態の水素精製昇圧システム1は、水素精製昇圧装置3の積層セル構造18を構成する複数のユニットセル8が電気的に並列に接続されている点を除いては、第1実施形態と基本的に同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。そのため、同様の構成および作用効果については説明を省略する。

【0084】
図7を用いて、本実施形態の水素精製昇圧装置3の積層セル構造18の電気的接続について説明する。第1実施形態のセパレータ8aは、セパレータ8aの一方をアノード側セパレータ20として機能させれ、他方をカソード側セパレータ30として機能させている。本実施形態のセパレータ8aは、あるセパレータ8aの両面をアノード側セパレータ20として機能させ、隣り合う他のセパレータ8aの両面をカソード側セパレータ30として機能させる。

【0085】
このため、積層セル構造18の各アノード側セパレータ20に、外部電源15の正極13を接続し、積層セル構造18の各カソード側セパレータ30に、外部電源15の負極14を接続し、アノード側セパレータ20に水素含有ガスHを供給することで、積層構造18を構成する複数のユニットセル8に並列に通電することが可能である。

【0086】
このような水素精製昇圧装置3は、下記に記載する有利な効果を奏する。
(1)積層セル構造18を構成する複数のユニットセル8が電気的に並列に接続されるため、いずれかのセルが故障した場合に、他のユニットセル8を使用して発電を継続することが可能になり、連続運転性の向上が期待される。
(2)複数のユニットセル8が電気的に並列に接続されるため、いずれかのセルが故障した場合に、どのセルが故障したかを電気的に特定することが容易になり、メンテナンス性がよくなる。

【0087】
3.第3実施形態(セル構造の断面形状が円形の場合)
本実施形態の水素精製昇圧システム1は、水素精製昇圧装置3の積層セル構造18の断面形状が円形である点を除いては、第1実施形態と基本的に同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。そのため、同様の構成および作用効果については説明を省略する。

【0088】
図8~図9を用いて、本実施形態の水素精製昇圧装置3について説明する。本実施形態においては、積層セル構造18の断面形状が円形となる。この場合、弾力性を有する導電性部材34は、図8のように同心円上の波状形状34aを有する。また、アノード側セパレータ20に形成されるアノード側流路20aは、図9のように渦巻き状の流路を有する。水素含有ガスHは、アノード側流路20aの端部に形成される水素含有ガス入口8cから供給され、アノード側流路20aの中央に形成される水素含有ガス出口8dから排出される。

【0089】
このような断面形状が円形の積層セル構造18は、シール性や耐圧性が良好である。また、円筒形の外殻3a内に設置した場合に、無駄な空間が少ないために水素精製昇圧装置3の体格を小さくすることができ、また円筒のセパレータは旋盤による加工で容易に加工できるため、加工性がよいという利点もある。

【0090】
4.その他の変形例
次に、図10(a)~(b)を用いて、セパレータの流路形状のバリエーションについて説明する。図10(a)、(b)に示すように、セパレータの流路は、水素含有ガス入口8cから水素含有ガス出口8dへ流れる水素含有ガス経路8fが蛇行していてもよい。このように、水素含有ガス流路8fが蛇行すると、アノード側流路20a内に水素含有ガスHが滞在する滞在時間が長くなるため、水素含有ガスH中の水素のうち、アノード側触媒層23で反応する水素の割合が高まる。

【0091】
図10(c)~(d)に示すように、セパレータの流路は、水素含有ガス入口8cからる水素含有ガス出口8dへ流れる経路が連通していなくてもよい。この場合、水素含有ガス入口8cから流入した水素含有ガスHは、一旦、アノード側給電体21、アノード側導電性撥水層22、又はアノード側触媒層23の中を拡散した後、水素含有ガス出口8d側のアノード側流路20aに流れる。このような流路形状においても、アノード側流路20a内に水素含有ガスHが均等に配給され、また水素含有ガスH中の水素が消費されるにのに対応し、本来必要な流路長を短縮することによって流速を均等に保てるため、水素含有ガスH中の水素のうち、アノード側触媒層23で反応する水素の割合が高まる。

【0092】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。

【0093】
例えば、上記実施の形態では都市ガスなどの燃料Fから、水素を精製・昇圧する方式としたが、純水素を昇圧する場合にも用いることができる。このようにすれば、上記実施の形態の水素精製昇圧装置をコンプレッサの代替として使用することで、低コストで水素を昇圧できるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0094】
1:水素精製昇圧システム
2a:改質器
2b:一酸化炭素選択酸化反応器(PROX: Preferencial Oxidation)
3:水素精製昇圧装置
3a:外殻
3b:外殻内部
4:水素タンク
4a:水トラップ・ドレイン器
5:精製昇圧部
6:ベースプレート
7:締付プレート
8:ユニットセル
8a:セパレータ
8b:ボルト挿通孔
8c:水素含有ガス入口
8d:水素含有ガス出口
8e:壁部分
8f:溝部分(水素含有ガス経路)
18:積層セル構造
20a:アノード側流路
30a:カソード側流路
9:押え治具
10:ボルト
10a:ナット
10b:押圧ばね
12:ガスケット
13:外部電源の正極
14:外部電源の負極
15:外部電源
20:アノード側セパレータ
21:アノード側焼結多孔質金属シート(アノード側給電体)
22:アノード側導電性撥水層
23:アノード側触媒層(アノード側電極)
30:カソード側セパレータ
20d、30d:環状突部
31:カソード側焼結多孔質金属シート(カソード側給電体)
32:カソード側導電性撥水層
33:カソード側触媒層(カソード側電極)
34:弾力性を有する導電性部材(集電部材)
34a:波状形状
40:固体高分子電解質膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9