TOP > 国内特許検索 > 導電性ポリマー被覆フラーレン粒子及びその製造方法、並びに、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いた有機薄膜太陽電池 > 明細書

明細書 :導電性ポリマー被覆フラーレン粒子及びその製造方法、並びに、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いた有機薄膜太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-160792 (P2015-160792A)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 導電性ポリマー被覆フラーレン粒子及びその製造方法、並びに、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いた有機薄膜太陽電池
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
H01L  51/46        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01B 31/02 101F
H01L 31/04 154F
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 27
出願番号 特願2014-038820 (P2014-038820)
出願日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発明者または考案者 【氏名】有田 稔彦
【氏名】増原 陽人
【氏名】渡部 大輝
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001047、【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
5F151
Fターム 4G146AA08
4G146AA09
4G146AB04
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AD15
4G146AD24
4G146CB10
4G146CB23
4G146CB35
5F151AA11
5F151CB24
5F151DA07
要約 【課題】 1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれており、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少なく、有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する材料として好適に用いることができる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を提供すること。
【解決手段】 フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備えることを特徴とする、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備えることを特徴とする、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項3】
前記導電性ポリマー層の厚さが1~1,000nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項4】
粒子径が2~10,000nmであることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項5】
分解開始温度が結晶構造を形成していないフラーレンの分解開始温度±10℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項6】
前記導電性ポリマーの良溶媒中、20℃において24時間放置した後の前記導電性ポリマー層の平均厚さが、放置前の前記導電性ポリマー層の平均厚さの90%以上であることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて形成される有機薄膜を含むことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項8】
フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備える導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法であり、
フラーレンの結晶粒子、導電性モノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記導電性モノマーを逐次重合せしめると共に得られた導電性ポリマーを前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着させて、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層を形成せしめる工程を含み、
前記溶媒が前記導電性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒であることを特徴とする、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項8に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記フラーレンの結晶粒子のアセトニトリル中で測定される平均粒子径が1~200nmであることを特徴とする請求項8又は9に記載の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子及びその製造方法、並びに、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いた有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料や原子力発電に頼らない次世代の発電手法のひとつとして、近年、太陽電池を用いた太陽光発電が注目されている。前記太陽電池のうち、現在実用化されているシリコン系の無機太陽電池は、光電変換効率は高いものの、製造コストが高く、設置場所の選択性にも限りがあるといった問題を有していた。他方、有機系の太陽電池は、前記無機太陽電池に比べて軽量で安価であるという利点を有しており、特にフレキシブル性を備える有機薄膜太陽電池は注目を集めている。しかしながら、有機薄膜太陽電池の光電変換効率は未だ十分ではなく、これを向上させるために多くの研究がなされている。
【0003】
前記有機薄膜太陽電池の種類としては、p型半導体からなるp型半導体層とn型半導体からなるn型半導体層とが積層されてp-n接合を形成するヘテロ接合型、p型半導体とn型半導体とがその混合層内でp-n接合を無秩序に形成するバルクヘテロ接合型、及び、p型半導体とn型半導体とが櫛形のp-n接合面を形成する相互貫入型が挙げられる。また、前記有機薄膜太陽電池としては、p型半導体材料として導電性ポリマーを用い、n型半導体材料としてフラーレンを用いたものが知られている。
【0004】
このような有機薄膜太陽電池としては、例えば、特開2008-34764号公報(特許文献1)において、アセン系又はアセン系置換化合物とC60フラーレンとのPN接合を備えた有機薄膜太陽電池が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されている有機薄膜太陽電池はヘテロ接合型であり、前記ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池は、製造が容易であるものの、バルクヘテロ接合型や相互貫入型に比べてp型半導体とn型半導体との接触界面の面積が少なく、光電変換効率が未だ十分ではないという問題を有していた。
【0005】
また、特開2012-79832号公報(特許文献2)には、導電性高分子鎖及び液晶性高分子鎖からなるブロック共重合体とフラーレン誘導体とを溶媒に溶解したものを基板に塗布して得られた有機薄膜を備える有機薄膜太陽電池が記載されており、特開2007-258079号公報(特許文献3)には、導電性高分子モノマーと、色素と、前記導電性高分子モノマーと電解重合可能な基を含むフラーレン化合物とを電解重合して形成された複合高分子膜を備える有機太陽電池が記載されている。しかしながら、特許文献2~3に記載されている有機薄膜太陽電池はバルクヘテロ接合型となり、このような方法で得られる有機薄膜又は複合高分子膜では、フラーレンの分散性が不十分であり、内部構造を十分に制御することが困難であるという問題や、光電変換効率が未だ十分ではないという問題を有していた。
【0006】
さらに、特許文献2に記載されているように導電性ポリマー成分及びフラーレン成分の混合物を単に塗布して製膜する方法では、得られる有機薄膜の安定性や強度が十分ではないという問題を有していた。また、特許文献3に記載されているように導電性ポリマー成分とフラーレン成分とを化学結合せしめる方法では、フラーレン化合物に重合可能な基を導入する必要があるため、製造プロセスが多段階である、量産が困難であるといった問題を有していた。さらに、相互貫入型の有機薄膜太陽電池は、制御された内部構造を有し、かつ、より高い光変換効率を達成できることが期待されるものの、このような内部構造を形成するためには、製造工程が非常に煩雑になるという問題を有していた。しかしながら、これらの課題を解決することが可能な太陽電池の有機薄膜を形成するための半導体材料は、これまで開示されていない。
【0007】
また、炭素材料の調製方法としては、例えば、特表2000-511212号公報(特許文献4)において、炭素質材料と、エステルポリマーの処理剤とを物理的配合、溶融混合、又はペレット化混合することにより処理された炭素質組成物を得る方法が記載されている。さらに、特開昭63-17917号公報(特許文献5)には、炭素質材料に対し、吸油量未満のビニルモノマー及び重合開始剤を吸着させた状態で重合を行わせる方法が記載されている。また、特開2007-238415号公報(特許文献6)には、炭素質材料に重合開始剤及びモノマーを配合し、前記モノマーを重合させて前記炭素質材料の表面に前記モノマーの重合体からなる被覆を設けることが記載されている。
【0008】
さらに、炭素質材料と、各種ポリマー又はモノマーとを混合して加熱し、前記炭素質材料とポリマーとの間にグラフト重合を形成させる方法が特開2012-250892号公報(特許文献7)及び特開2013-129596号公報(特許文献8)に記載されており、炭素質物質の芳香族環又は含酸素官能基を付加反応開始点として有機重合性単量体を付加する方法が特開平3-174422号公報(特許文献9)に記載されている。しかしながら、これらの文献には、太陽電池の有機薄膜を形成するための半導体材料に関する記載は何らなされていない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2008-34764号公報
【特許文献2】特開2012-79832号公報
【特許文献3】特開2007-258079号公報
【特許文献4】特表2000-511212号公報
【特許文献5】特開昭63-17917号公報
【特許文献6】特開2007-238415号公報
【特許文献7】特開2012-250892号公報
【特許文献8】特開2013-129596号公報
【特許文献9】特開平3-174422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、特許文献2に記載されているように導電性ポリマー成分及びフラーレン成分の混合物を単に塗布して製膜する方法では、導電性ポリマー成分とフラーレン成分との間の相互作用が十分ではないため、得られる有機薄膜の安定性や強度が十分ではないことを見出した。また、特許文献2~3に記載されているように導電性ポリマー成分及びフラーレン成分の塗布により膜を製膜した場合には、フラーレンの純度が十分ではなく、光電変換効率が十分に向上しないことを見出した。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれており、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少なく、有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する材料として好適に用いることができる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子、それを用いた有機薄膜太陽電池、及び、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を容易に得ることが可能な導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれている粒子を先ず調製し、これを有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する半導体材料として用いることで、有機薄膜太陽電池の内部構造を高度に制御することが可能となることを見出した。さらに、このような粒子は、先ず、フラーレンを結晶粒子とし、このフラーレンの結晶粒子、導電性モノマー、及び溶媒を特定の関係を満たすように含有する反応溶液中において前記導電性モノマーを重合せしめて導電性ポリマーとすることによって、前記導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層が前記フラーレンの結晶粒子の表面に形成され、容易に得ることができることを見出した。また、このような製造方法で得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子においては、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層が吸着されており、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、
フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法は、フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備える導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法であり、
フラーレンの結晶粒子、導電性モノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記導電性モノマーを逐次重合せしめると共に得られた導電性ポリマーを前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着させて、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層を形成せしめる工程を含み、
前記溶媒が前記導電性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒であることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明の有機薄膜太陽電池は、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて形成される有機薄膜を含むことを特徴とするものである。
【0016】
前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子及び前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法においては、前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリアニリン及びポリピロールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子としては、前記導電性ポリマー層の厚さが1~1,000nmであることが好ましく、粒子径が2~10,000nmであることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子としては、分解開始温度が結晶構造を形成していないフラーレンの分解開始温度±10℃の範囲内にあることが好ましく、前記導電性ポリマーの良溶媒中、20℃において24時間放置した後の前記導電性ポリマー層の平均厚さが、放置前の前記導電性ポリマー層の平均厚さの90%以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法においては、前記フラーレンの結晶粒子のアセトニトリル中で測定される平均粒子径が1~200nmであることが好ましい。
【0020】
なお、本発明によって上記目的が達成されるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法においては、先ず、導電性ポリマーを得ることができる導電性モノマーを、前記導電性モノマーに対しては良溶媒であるが前記導電性ポリマーに対しては貧溶媒である溶媒中において、フラーレンの結晶粒子の存在下で重合せしめる。これにより、重合が進むにつれて得られる導電性ポリマーがフラーレンの結晶粒子の表面を覆いつつ析出し、前記表面に吸着され、同時に、溶媒がフラーレンの結晶粒子外に排出されて、導電性ポリマー層が形成される。このとき、重合過程にある導電性ポリマー(オリゴマー)は、分子量が大きくなる前に結晶粒子の表面に順次吸着されていき、その結果、ポリマー同士の重なり点は顕著に少なくなり、結晶粒子との間の接点が多くなるため、結晶粒子とポリマーとの吸着力が大きくなる。したがって、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少ない導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。
【0021】
さらに、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれているため、これを用いることでフラーレンが均一に分散された有機薄膜太陽電池の有機薄膜を容易に形成することが可能となる。さらに、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子内の融点の差(例えば、C60の融点:1180℃、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の融点:238℃)を利用して、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を配列させた薄膜を熱アニーリングすることにより、擬似櫛形構造を形成することが可能となり、これまで製造が困難であった相互貫入型の有機薄膜太陽電池を容易に製造することも可能となると本発明者らは推察する。
【0022】
これに対して、特許文献4に記載されているように予め作製したポリマーを炭素質材料に処理する方法では、ポリマーが溶媒中で膨潤した状態から収縮しつつ炭素質材料に吸着される。また、特許文献5に記載されているように炭素質材料の吸油性を利用した方法では、得られるポリマーが炭素質材料に均一に吸着されない。したがって、これらの方法によると、ポリマー同士が重なり合って炭素質材料との間の接点が少なくなるため、炭素質材料とポリマーとの吸着力が十分ではなく、生成物の安定性は低くなる。さらに、特許文献7~9に記載されているように炭素質材料とポリマーとの間に化学結合を形成させる方法では、製造プロセスが多段階であり、量産が困難である。また、このような方法の生成物中には溶媒等の不純物が多く残留する傾向にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれており、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少ない導電性ポリマー被覆フラーレン粒子、それを用いた有機薄膜太陽電池、及び、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を容易に得ることが可能な導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法を提供することが可能となる。
【0024】
また、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれているため、有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する半導体材料として好適に用いることができる。さらに、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて有機薄膜を形成することにより、内部構造を高度に制御することが可能となり、前記相互貫入型の有機薄膜を形成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】調製例1で得られた分散液の再沈直後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図1B】調製例1で得られた分散液の24時間後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】調製例1~2で得られた各分散液の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3A】調製例2で得られた分散液の再沈直後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3B】調製例2で得られた分散液の24時間後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で得られた分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で得られた分散液の透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例2で得られた分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例2で得られた分散液の透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例3で得られた分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例3で得られた分散液の透過型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例4で得られた分散液の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例4で得られた分散液の透過型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例1で得られた粒子、調製例1で得られた結晶粒子及び比較例1で得られたポリマーのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
【図13A】実施例1で得られた粒子のFT-IRスペクトルを示すグラフである。
【図13B】実施例1で得られた粒子のFT-IRスペクトルを示すグラフである。
【図14】実施例1で得られた粒子、調製例1で得られた結晶粒子及び比較例1で得られたポリマーのTG曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。

【0027】
<導電性ポリマー被覆フラーレン粒子>
先ず、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子について説明する。本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、
フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備えることを特徴とするものである。

【0028】
本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の形状には、繊維状、星状や四面体等の多角形状が含まれ、フラーレンの結晶粒子の形状により調整することができる。このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径としては、2~10,000nmの範囲内にあることが好ましく、5~500nmの範囲内にあることがより好ましい。前記粒子径が前記下限未満であると、太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際に構造制御が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際に光電変換効率が低下する傾向にある。

【0029】
本発明において、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって測定することができ、粒子が球形ではない場合には外接円の直径のことをいう。また、本発明においては、任意の200個の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径の平均(平均粒子径)が上記範囲内となることが好ましい。

【0030】
〔フラーレンの結晶粒子〕
本発明に係るフラーレンの結晶粒子は、フラーレン分子が規則的に配列した結晶構造を有する粒子である。前記フラーレン分子としては、C60、C70、C76、C78及びC84等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、原料の入手が容易であるという観点から、C60であることが好ましい。このようなフラーレンの結晶粒子の形状としては、特に制限されず、粒状、繊維状、星状や四面体等の多角形状が含まれる。本発明において、フラーレンが結晶構造を有することは、X線回折により確認することができる。

【0031】
このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中のフラーレンの結晶粒子の粒子径としては、1~9,999nmであることが好ましく、4~500nmであることがより好ましい。前記粒子径が前記下限未満であると、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際に構造制御が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際にフラーレンの含有量が多くなり過ぎる傾向にある。

【0032】
本発明において、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中のフラーレンの結晶粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって測定することができ、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の重心を通り、最大直径を有する断面において測定したフラーレンの結晶粒子の最大直径のことをいう。なお、前記断面が円形ではない場合、前記最大直径とは、その断面の外接円の直径のことをいう。また、本発明においては、任意の200個の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における前記フラーレンの結晶粒子の粒子径の平均(平均粒子径)が上記範囲内となることが好ましい。

【0033】
〔導電性ポリマー〕
本発明に係る導電性ポリマーとしては、上記式(1)で表される条件を満たし、導電性を有するものであればよい。中でも、より粒子の安定性が優れる傾向にあり、導電性に優れる傾向にあるという観点から、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)等のポリチオフェン;ポリアントラセン、ポリテトラセン、ポリペンタセン等のポリアセン;ポリ(ο-アニシジン)、ポリ(ο-トルイジン)、ポリアセトアニリド等のポリアニリン及び;ポリ(4-(3-ピロリル)ブチル酸)、N-(m-ニトロフェニル)ポリピロール等のポリピロールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ポリチオフェンであることがより好ましい。

【0034】
前記導電性ポリマーの重量平均分子量としては、500~200,000g/molであることが好ましく、1,000~100,000g/molであることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満では、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分散安定性が低下して凝集しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、導電性ポリマー同士が重なり合って凝集しやすくなる傾向にある。

【0035】
また、前記導電性ポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。分子量分布が前記上限を超えると導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分散安定性が低下して凝集しやすくなる傾向にある。

【0036】
〔導電性ポリマー層〕
本発明に係る導電性ポリマー層は、前記導電性ポリマーからなる層であり、前記導電性ポリマー1種からなるものであっても2種以上からなるものであってもよい。本発明において、前記導電性ポリマーは前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着されており、そのため、本発明に係る導電性ポリマー層も前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着されている。本発明において、吸着とは、分子間力により物理吸着していることをいい、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子において前記導電性ポリマーが前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着されていることは熱重量分析で得られるTG曲線によって確認することができる。すなわち、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子について熱重量分析を行った際に、フラーレンの分解開始温度(500℃以上)よりも低い、導電性ポリマーの分解開始温度付近(200℃前後)から重量減少が観察される場合には、前記導電性ポリマーが前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着されていると判断できる。なお、熱重量分析で求められる導電性ポリマーとフラーレンとの重量比から、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中の導電性ポリマー量を求めることができる。

【0037】
本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子においては、より優れた安定性及び分散性が発揮され、より高い純度が達成される傾向にあるという観点から、前記フラーレンの結晶粒子の表面の前記導電性ポリマー層による被覆率が、50面積%以上であることが好ましく、80面積%以上であることがより好ましい。

【0038】
このような導電性ポリマー層の厚さとしては、1~1,000nmであることが好ましく、2~200nmであることがより好ましい。前記厚さが前記下限未満であると、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分散安定性が低下して凝集しやすくなったり、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際にフラーレンの含有量が多くなり過ぎる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際に構造制御が困難になる傾向にある。

【0039】
本発明において、前記導電性ポリマー層の厚さ及び被覆率は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって測定することができ、前記導電性ポリマー層の厚さとは、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の重心を通り、最大直径を有する断面において測定したポリマー層の厚さの最大値のことをいう。なお、前記断面が円形ではない場合、前記最大直径とは、その断面の外接円の直径のことをいう。また、本発明においては、任意の200個の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における前記導電性ポリマー層の厚さの平均(平均厚さ)が上記範囲内となることが好ましい。

【0040】
本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層が吸着されており、前記フラーレンの結晶粒子と前記導電性ポリマー層との間の吸着力が十分に大きく、非常に安定であり、分散媒から分離しても固体の状態が維持される。また、このような吸着の強度としては、例えば、20℃において24時間以上、前記導電性ポリマーの良溶媒中に導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を分散させて放置しても前記導電性ポリマー層の平均厚さが維持され、24時間放置した後の前記導電性ポリマー層の平均厚さが、放置前の前記導電性ポリマー層の平均厚さの90%以上であることが好ましい。これに対して、予め作製したポリマーを溶媒に溶解又は分散させた状態で炭素材料に付着させた場合には、より多くのポリマーが脱離し、同条件で放置後のポリマー層の平均厚さは、放置前のポリマー層の平均厚さの80%未満となる傾向にある。

【0041】
本発明において、前記良溶媒とは、溶解させるポリマーのシータ温度(Flory温度、第2ビリアル係数A2=0となる温度で、ポリマー鎖同士の重なり合いが見かけ上無視できる、すなわち、ポリマー鎖が理想的なガウス鎖としてふるまう温度)が室温(20℃)未満の溶媒を指す。前記導電性ポリマーの良溶媒としては、前記導電性ポリマーの種類にも依存するものであるため一概にはいえないが、例えば、クロロホルム、トルエンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明において、貧溶媒とは、前記シータ温度が室温(20℃)以上の溶媒を指す。

【0042】
また、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、溶媒等の不純物の含有量が十分に少なく、非常に純度が高いものである。本発明において、前記純度は、結晶構造を形成していないフラーレンの分解開始温度と比較することで評価することができる。すなわち、フラーレンの結晶粒子は、内部に溶媒等の不純物を内包してしまうため、結晶化前の結晶構造を形成していないフラーレン分子の分解開始温度(例えば、C60では550℃)よりも分解開始温度が50℃程度低くなる。これに対して、前記フラーレン結晶粒子を前記導電性ポリマーで被覆した本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子においては、フラーレンの結晶粒子内部に溶媒等の不純物を殆ど内包しないため、導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分解開始温度(導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中のフラーレンの結晶粒子の分解開始温度)は結晶構造を形成していないフラーレンの分解開始温度±10℃の範囲内、好ましくは±5℃の範囲内となる。そのため、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する半導体材料として用いることにより、十分に高い光電変換効率が達成されることが示唆される。他方、表面に官能基を導入したフラーレンとポリマーとを化学結合せしめた場合や、ポリマー成分及びフラーレン成分を塗布することによって膜を製膜した場合には、フラーレン中に不純物を内包するため、純度が十分ではなく、十分な光電変換効率が達成されない傾向にある。本発明において、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分解開始温度は、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子からなる粉体の熱重量分析で得られるTG曲線から求めることができる。

【0043】
<有機薄膜太陽電池>
次いで、本発明の有機薄膜太陽電池について説明する。本発明の有機薄膜太陽電池は、前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて形成される有機薄膜を含むことを特徴とする。このような有機薄膜太陽電池の構成としては、特に制限されないが、例えば、正極層、機能層及び負極層を備え、前記機能層に本発明に係る有機薄膜を備える構成が挙げられる。なお、本発明の有機薄膜太陽電池の構成としては、これに制限されず、本発明に係る有機薄膜としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、酢酸パラジウム、メタンスルホン酸、モノマー等を更に含有していてもよい。

【0044】
前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて前記有機薄膜を形成することにより、前記有機薄膜内におけるフラーレンの分布を容易に制御することが可能となる。本発明者らは、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を導電性ポリマー中に分散させ、これを基板上に塗布してアニールすることにより、バルクヘテロ接合型の内部構造を形成することができ、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径や前記導電性ポリマー層の厚さ、すなわち前記導電性ポリマーの含有量を制御することによって容易に前記バルクヘテロ接合型の内部構造を制御することが可能であることを見出した。さらに、本発明者らは、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を基板上に塗布等して配列せしめた後にアニールすることにより、フラーレンの結晶粒子が配列されてなる凹凸面上に沿って導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層が積層された疑似櫛形構造を形成することができることを見出した。

【0045】
前記アニールの温度としては、フラーレンと導電性ポリマーとの融点の差(例えば、C60の融点:1180℃、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の融点:238℃)を利用して、前記導電性ポリマーのみを選択的に熔融させることができる温度であることが好ましい。このような温度としては、フラーレン及び導電性ポリマーの種類にもよるため一概にはいえないが、例えば、フラーレンがC60であり、導電性ポリマーがポリ(3-ヘキシルチオフェン)である場合には、107~238℃であることが好ましい。

【0046】
<導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法>
次いで、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法について説明する。本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法は、
フラーレンの結晶粒子と、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層とを備える導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法であり、
フラーレンの結晶粒子、導電性モノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記導電性モノマーを逐次重合せしめると共に得られた導電性ポリマーを前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着させて、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層を形成せしめる工程を含み、
前記溶媒が前記導電性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒であることを特徴とするものである。前記本発明の導電性ポリマーは、この導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法によって得ることができる。

【0047】
〔フラーレンの結晶粒子〕
本発明に係るフラーレンの結晶粒子としては、前述のとおりである。このようなフラーレンの結晶粒子を作製する方法としては、特に制限されないが、形状やサイズの制御が容易であり、また、分散液の状態で得られるために各種測定が容易であるという観点から、再沈法が挙げられる。前記再沈法は、激しく攪拌しているフラーレンの貧溶媒の中に、フラーレンの良溶媒にフラーレンを溶解せしめた希薄溶液を、シリンジ等の細孔を用いて一気に注入することでフラーレンの結晶粒子を含有する分散液を得ることができる手法である。前記再沈法において、前記貧溶媒としては、前記良溶媒と無限希釈可能であることが好ましい。具体的には、前記フラーレンがC60である場合、その良溶媒としてはフェニルエチルアミン等が挙げられ、貧溶媒としてはアセトニトリルやエタノール等が挙げられる。なお、本発明に係るフラーレンの結晶粒子としては、適宜市販されているものを用いてもよい。

【0048】
本発明においては、前記フラーレンの結晶粒子の表面に反応基を導入する処理が施されていないものであっても好適に用いることができるため、本発明の製造方法としては、前記フラーレンの結晶粒子の表面に反応基を導入する工程が含まれないことが好ましい。前記反応基としては、重合性反応基(例えば、メタクリル基、アクリル基、ビニル基等)や、導電性ポリマーとの結合のための前記重合性反応基以外の反応基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、酸無水基等)が挙げられる。本発明においては、このような工程を必要としないため、前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を容易に大量に得ることが可能となる。さらに、本発明において、前記フラーレンの結晶粒子は、アルキレングリコール重合体や他の界面活性剤等による表面処理も必要としないため、純度がより高い前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。

【0049】
本発明の製造方法に用いるフラーレンの結晶粒子の粒子径としては、アセトニトリル中で測定される平均粒子径で、1~200nmであることが好ましく、5~200nmであることがより好ましく、10~50nmであることがさらに好ましい。前記粒子径が前記下限未満であると、得られた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際に構造制御が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を太陽電池の有機薄膜の形成に用いた際にフラーレンの含有量が多くなり過ぎる傾向にある。なお、本発明の製造方法に用いるフラーレンの結晶粒子の粒子径は、フラーレンの結晶粒子がフラーレンの貧溶媒であるアセトニトリル中にある場合、フラーレンの結晶粒子が導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中にある場合に比べて小さくなる。

【0050】
本発明において、前記製造方法に用いるフラーレンの結晶粒子の粒子径は、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径と同様にして測定することができ、平均粒子径は、任意の200個のフラーレンの結晶粒子の粒子径を計測してその平均値を算出することで求めることができる。

【0051】
〔導電性モノマー、導電性ポリマー、導電性ポリマー層〕
本発明に係る導電性ポリマー及び導電性ポリマー層としては、前述のとおりである。本発明に係る導電性モノマーとしては、重合せしめて得られるポリマーが前記導電性ポリマーとなるものであり、後述の溶媒が前記導電性モノマーに対する良溶媒となり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒となる関係を満たすものであればよく、特に制限されないが、得られる導電性ポリマーを前記フラーレンの結晶粒子の表面により安定に吸着せしめることができ、より安定性及び導電性に優れた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる傾向にあるという観点から、3-ヘキシルチオフェン、3-オクチルチオフェン等のチオフェン;アントラセン、テトラセン、ペンタセン等のアセン;ο-アニシジン、ο-トルイジン、アセトアニリド等のアニリン及び4-(3-ピロリル)ブチル酸、N-(m-ニトロフェニル)ピロール等のピロールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、チオフェンであることがより好ましい。

【0052】
〔溶媒〕
本発明に係る溶媒としては、前記導電性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒であることが必要である。このような溶媒としては、前記導電性モノマー及び前記導電性ポリマーの種類にも依るものであるため一該にはいえないが、例えば、アセトニトリル、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-プロパノール、2-プロパノールが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記溶媒には、後述の逐次重合のための開始剤、触媒等が含まれていてもよい。

【0053】
本発明においては、このような溶媒の種類により、得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における前記導電性ポリマー層の厚さを制御することができ、目的に応じて所望の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。例えば、前記フラーレンの結晶粒子がC60結晶粒子であり、前記導電性モノマーが3-ヘキシルチオフェンであり、前記導電性ポリマーがポリ(3-ヘキシルチオフェン)である場合、溶媒としてアセトニトリル溶媒を用いたほうが、同条件でエタノール溶媒を用いるよりも前記導電性ポリマー層の厚さを厚くすることができる。

【0054】
前記良溶媒及び前記貧溶媒とは、前述のとおりである。なお、本発明において、良溶媒又は貧溶媒であることは、以下の方法によっても確認することができる。すなわち、導電性モノマー及び溶媒を含有する溶液(本発明に係る反応溶液からフラーレンの結晶粒子を除いた溶液)中において、溶解している導電性モノマーを重合せしめることにより、20℃において、得られた導電性ポリマーが析出するとき、前記溶媒が前記導電性モノマーに対する良溶媒であり、かつ、前記導電性ポリマーに対する貧溶媒であると判断できる。前記溶解及び析出の確認は、例えば、吸光光度によって確認することができ、溶媒(本発明に係る反応溶液からフラーレンの結晶粒子、導電性モノマー及び導電性ポリマーを除いた溶液)、並びに、導電性モノマー又は導電性ポリマーが吸収を持たない波長において、前記溶媒のみで測定した吸光度と比較して、前記溶媒に導電性モノマー又は導電性ポリマーを含有する溶液で測定した吸光度が10%(好ましくは5%)以上増大する場合には析出、該吸光度の増大が10%(好ましくは5%)未満の場合には溶解と判断できる。また、前記溶解及び析出の確認は、導電性モノマーの重合反応後の溶液を20℃において15分間静置せしめた際に沈殿(析出物)が生じるか否かによっても判断することができる。

【0055】
〔製造方法〕
本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法においては、前記フラーレンの結晶粒子、前記導電性モノマー、及び前記溶媒を含有する反応溶液中において、前記導電性モノマーを逐次重合せしめると共に得られた前記導電性ポリマーを前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着させて、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着された前記導電性ポリマーからなる前記導電性ポリマー層を形成せしめる(重合工程)。

【0056】
本発明の製造方法に係る重合工程においては、前記フラーレンの結晶粒子、前記導電性モノマー、及び前記溶媒を含有する反応溶液中において前記導電性モノマーを逐次重合せしめる。このような逐次重合の方法としては、適宜公知の方法を採用することができ、例えば、ニトロキシドを介したラジカル重合(NMP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合;酸化重合が挙げられる。

【0057】
前記リビングラジカル重合に用いる開始剤としては、特に制限されないが、例えば、azobisisobutyronitrile(AIBN)、Benzoyl Peroxide(BPO)、Di-tert-Butyl Peroxide(DBPO)、2,2’-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile)(V-65)、2,2’-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile)(V-70)、2-bromoisobutyrate(EBIB)、methyl 2-chloropropionate(MCP)が挙げられる。また、前記リビングラジカル重合に用いる触媒としても、特に制限されないが、例えば、2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl (TEMPO);Cu(I)Cl(配位子によって安定化されたもの);Cu(I)Br(配位子によって安定化されたもの);cumyl dithiobenzoate(CDB)等のdithiobenzoates;benzylpropyl trithiocarbonate等のtrithiocarbonates;Benzyl octadecyl trithiocarbonateが挙げられる。前記開始剤及び触媒の濃度としては、該開始剤及び触媒の種類にも依存するが、例えば、前記反応溶液中においてそれぞれ0.001~100mMであることが好ましい。

【0058】
また、前記酸化重合に用いる触媒としても、特に制限されないが、例えば、酢酸パラジウム(II)等のパラジウム触媒、白金触媒が挙げられる。前記触媒の濃度としては、該触媒の種類にも依存するが、例えば、前記反応溶液中において0.02~10mMであることが好ましい。

【0059】
本発明においては、このような開始剤及び触媒の種類や濃度により、得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における前記導電性ポリマーの分子量及び導電性ポリマー層の厚さを制御することができ、目的に応じて所望の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。

【0060】
本発明の製造方法に係る重合工程において、前記逐次重合の条件としては、採用する反応方法、前記フラーレンの結晶粒子及び前記導電性モノマーの種類にも依るものであるため一概にはいえないが、前記導電性モノマーの重合が完全に終了する条件であることが好ましく、前記リビングラジカル重合の場合、反応温度としては、20~150℃であることが好ましく、反応時間としては、2~72時間であることが好ましい。また、酸化重合の場合、酸素存在下で実施することが好ましく、反応温度としては、25~100℃であることが好ましく、反応時間としては、12~48時間であることが好ましい。本発明の製造方法においては、このような逐次重合の条件を適宜調整することにより、得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における前記導電性ポリマーの分子量及び導電性ポリマー層の厚さを制御することができ、目的に応じて所望の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。

【0061】
前記反応溶液中における前記フラーレンの結晶粒子と前記導電性モノマーとの質量比(フラーレンの結晶粒子質量:導電性モノマー質量)としては、1:100~100:1であることが好ましく、1:10~10:1であることがより好ましい。前記導電性モノマーの割合が前記下限未満である場合には、フラーレンの結晶粒子表面における導電性ポリマー層の被覆率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子における導電性ポリマーの含有量が多くなり過ぎる傾向にある。

【0062】
本発明の製造方法に係る重合工程においては、前記反応溶液中において前記導電性モノマーを逐次重合せしめることにより、得られる前記導電性ポリマーが前記溶媒に対して不溶、或いは混和することが困難となって析出し、前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着、集積される。その結果、前記フラーレンの結晶粒子の表面に前記導電性ポリマー層が形成され、配置される。また、本発明の製造方法はフラーレンの結晶粒子表面と導電性ポリマーとの間に化学結合を導入する方法ではないため、得られる前記導電性ポリマー層は前記フラーレンの結晶粒子の表面に吸着される。

【0063】
本発明の製造方法においては、前記重合工程の後に、前記導電性ポリマーが付着したフラーレンの結晶粒子と、重合していない前記導電性モノマー及び前記フラーレンの結晶粒子に付着していない前記導電性ポリマーとをろ過、遠心分離等によって分離する工程を更に含んでいてもよい。

【0064】
本発明の製造方法に係る重合工程においては、前記本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子が前記溶媒中に分散された分散液を得ることができる。本発明においては、前記分散液からろ過、遠心分離等の方法で回収することによって本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。また、得られた分散液をそのまま導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分散液としてもよく、回収した導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を適宜溶媒及び/又は樹脂中に再分散させて導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の分散液又は樹脂組成物としてもよい。

【0065】
本発明の製造方法によれば、前記フラーレンの結晶粒子内の不純物を外側に排出しつつ、前記フラーレンの結晶粒子に対して前記導電性ポリマーを十分に安定に多く吸着させることができる。また、前記各条件を調整することにより、得られる導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の粒子径や前記導電性ポリマー層の厚さ(前記導電性ポリマーの含有量)を容易に制御することも可能である。さらに、本発明の製造方法によれば、本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を量産(グラムオーダー以上、更にはメートルトンオーダー以上)することが可能である。

【0066】
なお、本発明の製造方法によれば、前述のように前記フラーレンの結晶粒子に対して前記導電性ポリマーを十分に安定に多く吸着させることができるため、上記のように前記フラーレンの結晶粒子と前記導電性ポリマー層との間の吸着力が十分に大きく、非常に安定な本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を得ることができる。さらに、前記導電性ポリマー層の平均厚さを50nm以上にもすることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例における各測定及び評価はそれぞれ以下の方法により実施した。
【実施例】
【0068】
<走査型顕微鏡(SEM)による観察>
各実施例及び調製例で得られた粒子の分散液をマイカ上にキャストしてPtコーティングした後、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:S-4800、製造社:日立ハイテクノロジーズ)を用いて各粒子表面の状態を観察した。また、各粒子径を測定し、平均粒子径は任意の200個の粒子の粒子径の平均とした。なお、各粒子が球形ではない場合にはその外接円の直径を粒子径とした。
【実施例】
【0069】
<透過型顕微鏡(TEM)による観察>
各実施例で得られた粒子の分散液にグリッドを浸漬した後、透過型電子顕微鏡(TEM、商品名:H-7650、製造社:日立ハイテクノロジーズ)を用いて各粒子の状態を観察した。また、各粒子について、コアとなるフラーレン結晶粒子の粒子径及びシェルとなるポリマー層の厚さを測定し、平均粒子径は任意の200個の粒子の粒子径の平均とし、平均厚さは任意の200個の厚さの平均とした。
【実施例】
【0070】
<GPC測定>
各比較例で回収された結晶粒子に付着していないポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC、商品名:Alliance2695システム、製造社:WATERS)を用い、カラム:Shodex製、ガードカラムKF-G、KF-803L;排除限界:7×10D、KF-805L;排除限界:4×10D(D:ダルトン(g mol-1と同じ次元を持つ単位));検出器:示差屈折率計(RI);移動層:テトラヒドロフラン(THF);溶出速度:1mL/min;カラム温度:35℃の条件で溶出を行なった。また、PS標準試料(Polymer Standard Service、PSS-Kit(PS)、M.(ピークトップ分子量):682-1.67×10D)、及び、PMMA標準試料(PSS-Kit(PMMA)、M.:102-9.81×10D)を用いてキャリブレーションを行い、各ポリマーの数平均分子量(Mn[g/mol])、重量平均分子量(Mw[g/mol])、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。なお、得られたMn、Mw、及びMw/Mnは、それぞれ、フラーレンの結晶粒子を用いたこと以外は各比較例と同条件で製造したフラーレンの結晶粒子に付着しているポリマーのMn、Mw、及びMw/Mnに相当するものと認められる。
【実施例】
【0071】
<FT-IR測定>
各実施例及び比較例で得られた各粒子について、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)による測定をKBr錠剤法で行った。先ず、よく乾燥させた各粒子10mgに対し、1gのKBr粉末を添加して乳鉢を用いて混ぜ、これよりKBrディスク状試料を成形した。次いで、フーリエ変換赤外分光光度計(「FTS-7000」、Digilab社製)を用いて、分解能2cm-1、32回積算の条件で測定を行い、FT-IRスペクトルを得た。
【実施例】
【0072】
<熱重量分析>
各実施例及び比較例で得られた各粒子について、熱重量(TG)測定装置(商品名:TG8120、製造社:リガク)を用い、アルゴンガスを30mL/minで供給しながら100~750℃における粒子の質量(重量)変化を測定し、分解開始温度を測定した。
【実施例】
【0073】
(調製例1)
先ず、S-(-)-1-フェニルエチルアミンにC60を添加してC60溶液(3mM、5mL)を調整し、内径が0.3mmのシリンジに入れた。次に、酸素存在下、温度25℃において、アセトニトリル10mLを激しく攪拌(攪拌速度:1,500rpm)しながら、これに前記C60溶液200μLを一気に注入し、C60結晶粒子が分散されたアセトニトリル分散液を得た。前記注入直後(再沈直後)及び、注入から24時間撹拌し続けながら保持した後(24時間後)の分散液について、走査型顕微鏡(SEM)による観察を行った。得られたSEM写真を図1A(再沈直後)及び図1B(24時間後)にそれぞれ示す。図1A~1Bより、得られたC60結晶粒子の再沈直後の平均粒子径は57.7nmであり、24時間後の平均粒子径は74.1nmであった。また、再沈直後及び24時間経過後の分散液について、吸収スペクトル測定を行った。結果を図2に示す。図2に示した結果から、24時間保持した場合には吸光度が高くなり、分散安定性が向上したことが確認された。以下の実施例においては、24時間経過後の分散液を用いた。
【実施例】
【0074】
(調製例2)
アセトニトリルに代えてエタノール(99.8%)を用いたこと以外は調製例1と同様にしてC60結晶粒子が分散されたエタノール分散液を得た。再沈直後及び24時間後の分散液について、走査型顕微鏡(SEM)による観察を行った。得られたSEM写真を図3A(再沈直後)及び図3B(24時間後)にそれぞれ示す。図3A~3Bより、得られたC60結晶粒子の再沈直後の平均粒子径は49.2nmであり、24時間後の平均粒子径は63.7nmであった。また、再沈直後及び24時間経過後の分散液について、吸収スペクトル測定を行った。結果を図2に示す。図2に示した結果から、24時間保持した場合には吸光度が高くなり、分散安定性が向上したことが確認された。以下の実施例においては、24時間経過後の分散液を用いた。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
先ず、調製例1で得られたC60結晶粒子のアセトニトリル分散液5.00mLに、酢酸パラジウム(II)11.2mg、メタンスルホン酸3.33mL及び、3-ヘキシルチオフェン0.899mLを加えて反応溶液を作製し、Vortex攪拌機を用いて70℃で24時間激しく撹絆を行った。24時間後、室温になるまで静置してからフィルターを用いて吸引濾過を行い、メタノール30.0mL、クロロホルム50.0mL、及びアセトン30.0mLを加えて洗浄して、パラジウム触媒を除いた。次いで、超純水30.0mLを加えて洗浄した後、フィルターを用いて吸引濾過を行い、前記フィルターをエタノール40.0mLに浸漬してC60結晶粒子にポリ(3-ヘキシルチオフェン)が付着した粒子(導電性ポリマー被覆フラーレン粒子)のエタノール分散液を得た。なお、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)の重合工程(酸化重合)を下記に示す。
【実施例】
【0076】
【化1】
JP2015160792A_000002t.gif
【実施例】
【0077】
(実施例2)
調製例1で得られたC60結晶粒子のアセトニトリル分散液に代えて調製例2で得られたC60結晶粒子のエタノール分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてC60結晶粒子にポリ(3-ヘキシルチオフェン)が付着した粒子(導電性ポリマー被覆フラーレン粒子)のエタノール分散液を得た。
【実施例】
【0078】
(実施例3)
酢酸パラジウム(II)を112mg、メタンスルホン酸を0.130mLとしたこと以外は実施例1と同様にしてC60結晶粒子にポリ(3-ヘキシルチオフェン)が付着した粒子(導電性ポリマー被覆フラーレン粒子)のエタノール分散液を得た。
【実施例】
【0079】
(実施例4)
調製例1で得られたC60結晶粒子のアセトニトリル分散液に代えて調製例2で得られたC60結晶粒子のエタノール分散液を用いたこと以外は実施例3と同様にしてC60結晶粒子にポリ(3-ヘキシルチオフェン)が付着した粒子(導電性ポリマー被覆フラーレン粒子)のエタノール分散液を得た。
【実施例】
【0080】
(比較例1)
先ず、酸素存在下、アセトニトリル5.00mLに酢酸パラジウム(II)11.2mg、メタンスルホン酸3.33mL及び、3-ヘキシルチオフェン0.899mLを加えた反応溶液を作製し、Vortex攪拌機を用いて70℃で24時間激しく撹絆を行った。24時間後、室温になるまで静置し、得られたポリ(3-ヘキシルチオフェン)をクロロホルムに溶解させ、炭酸水素ナトリウムを添加して中和した後、超純水を加え、水層と有機層とに分液した。次いで、フィルターを用いて有機層の吸引濾過を行い、溶媒を留去させた後、メタノールを添加し、吸引濾過してメタノール洗浄を行った。フィルターを乾燥させた後、前記フィルターをエタノール40.0mLに浸漬してポリ(3-ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリマー(P3HT)についてGPC測定を実施したところ、重量平均分子量(Mw)は7006であった。なお、比較例1において、反応溶液中では3-ヘキシルチオフェンが溶解していたが、反応後、室温に静置後はポリマーが析出することが確認され、アセトニトリル溶媒(酢酸パラジウム(II)及びメタンスルホン酸を含む)が3-ヘキシルチオフェンに対する良溶媒であり、かつ、P3HTに対する貧溶媒であることが確認された。
【実施例】
【0081】
(比較例2)
アセトニトリルに代えてエタノール(99.8%)を用いたこと以外は比較例1と同様にしてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリマー(P3HT)についてGPC測定を実施したところ、重量平均分子量(Mw)は1935であった。なお、比較例2において、反応溶液中では3-ヘキシルチオフェンが溶解していたが、反応後、室温に静置後はポリマーが析出することが確認され、エタノール溶媒(酢酸パラジウム(II)及びメタンスルホン酸を含む)が3-ヘキシルチオフェンに対する良溶媒であり、かつ、P3HTに対する貧溶媒であることが確認された。
【実施例】
【0082】
(比較例3)
酢酸パラジウム(II)を112mg、メタンスルホン酸を0.130mLとしたこと以外は比較例1と同様にしてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリマー(P3HT)についてGPC測定を実施したところ、重量平均分子量(Mw)は5634であった。
【実施例】
【0083】
(比較例4)
アセトニトリルに代えてエタノール(99.8%)を用いたこと以外は比較例3と同様にしてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリマー(P3HT)についてGPC測定を実施したところ、重量平均分子量(Mw)は1076であった。
【実施例】
【0084】
各実施例で得られた粒子の分散液について、走査型顕微鏡(SEM)による観察及び透過型顕微鏡(TEM)による観察を行った。得られたSEM写真及びTEM写真をそれぞれ図4~5(実施例1)、図6~7(実施例2)、図8~9(実施例3)、及び図10~11(実施例4)にそれぞれ示す。図4、6、8、10より、得られた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の平均粒子径は実施例1から順に、112nm、191nm、212nm、164nmであり、図5、7、9、11より、得られた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子中のフラーレン結晶粒子の平均粒子径は実施例1から順に、86nm、74nm、92nm、69nmであり、ポリマー層の平均厚さは実施例1から順に、13nm、58.5nm、59.8nm、47.4nmであった。
【実施例】
【0085】
さらに、各実施例で得られた粒子の20質量%クロロホルム(P3HTの良溶媒)分散液を調製し、これを20℃において24時間放置した後の分散液についても透過型顕微鏡(TEM)による観察を行い、ポリマー層の平均厚さを測定した。その結果、測定された平均厚さはいずれも、放置前のポリマー層の平均厚さの90%以上であった。
【実施例】
【0086】
実施例1で得られた粒子、調製例1で得られた結晶粒子、比較例1で得られたポリマーについてFT-IR測定を行った。得られたFT-IRスペクトルを図12に示す。また、図13Aに実施例1で得られた粒子のFT-IRスペクトルを抜き出して示し、図13Bにその部分拡大図を示す。図12及び図13A~13Bに示した結果から、本発明の製造方法で得られた粒子においては、C60結晶粒子由来のピーク(ピークB)及びP3HT由来のピーク(ピークF~L)が確認できた。図4~12及び図13A~13Bに示した結果から、実施例では、フラーレンの結晶粒子の表面に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層を備え、コア(フラーレンの結晶粒子)-シェル(導電性ポリマー層)構造を有する本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子が得られたことが確認された。また、得られた導電性ポリマー被覆フラーレン粒子はいずれも優れた分散性及び安定性を有しており、ポリマーの重量平均分子量が大きい実施例1では、特に凝集が抑制されていることが確認された。
【実施例】
【0087】
実施例1で得られた粒子、調製例1で得られた結晶粒子、比較例1で得られたポリマーについて熱重量分析を行った。得られたTG曲線を図14に併せて示す。図14に示した結果からも、本発明の製造方法で得られた粒子ではフラーレンの結晶粒子の表面に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層を備えた本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子が得られたことが確認された。また、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、フラーレンの結晶粒子(C60結晶粒子、分解開始温度500度前後)と比較して分解開始温度が高く、結晶化以前のフラーレン(C60)そのものの分解開始温度(550℃)と同等(±5℃以内)になっていることが確認された。したがって本発明の導電性ポリマー被覆フラーレン粒子においては、フラーレンの結晶粒子(C60結晶粒子)内の溶媒等の不純物が結晶外に排出され、結晶粒子の純度が高くなっていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれており、安定性に優れ、かつ、不純物の含有量が十分に少ない導電性ポリマー被覆フラーレン粒子、それを用いた有機薄膜太陽電池、及び、前記導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を容易に得ることが可能な導電性ポリマー被覆フラーレン粒子の製造方法を提供することが可能となる。
また、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子は、1つの粒子中にp型半導体材料及びn型半導体材料が含まれているため、有機薄膜太陽電池の有機薄膜を形成する半導体材料として好適に用いることができ、有機薄膜太陽電池の有機薄膜形成用の材料として有用である。また、このような導電性ポリマー被覆フラーレン粒子を用いて有機薄膜を形成することにより、有機薄膜の内部構造を高度に制御することが可能となり、前記相互貫入型の有機薄膜を形成することも可能となる。
図面
【図13A】
0
【図13B】
1
【図1A】
2
【図1B】
3
【図2】
4
【図3A】
5
【図3B】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11
【図9】
12
【図10】
13
【図11】
14
【図12】
15
【図14】
16