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明細書 :歩行促進装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-177927 (P2015-177927A)
公開日 平成27年10月8日(2015.10.8)
発明の名称または考案の名称 歩行促進装置
国際特許分類 A61N   1/36        (2006.01)
A61N   1/04        (2006.01)
FI A61N 1/36
A61N 1/04
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2014-057183 (P2014-057183)
出願日 平成26年3月19日(2014.3.19)
発明者または考案者 【氏名】半田 康延
【氏名】関 和則
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】514069528
【氏名又は名称】医療法人和康会
個別代理人の代理人 【識別番号】100160071、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 隆志
審査請求 未請求
テーマコード 4C053
Fターム 4C053BB02
4C053BB36
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ24
要約 【課題】本発明の歩行促進装置は、仙骨直上皮膚を連続通電で刺激して、歩行速度、歩容(歩行の仕方)、歩幅、下肢関節角度および歩行周期(一定時間での歩数)を適切に調節して歩行を効率よく促進させることにより、歩行障害者などの歩行機能を改善する歩行機能促進及び改善装置を提供するものである。
【解決手段】仙骨中央両側の直上皮膚部に貼着する一対の電極を有すると共に、所望の電気刺激波を電極に出力する歩行促進装置本体を有し、電気刺激波としてパルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、パーキンソン病や多系統萎縮症によりパーキンソニズムを有する患者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者又は歩行困難者には20Hz~5kHzの刺激周波数を用いて電気刺激波を出力する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
仙骨中央両側の直上皮膚部に貼着する一対の電極を有すると共に、所望の電気刺激波を電極に出力する歩行促進装置本体を有し、電気刺激波としてパルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、パーキンソン病や多系統萎縮症によりパーキンソニズムを有する患者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者又は歩行困難者には20Hz~5kHzの刺激周波数を用いて電気刺激波を出力して、歩行を促進することを特徴とする歩行促進装置。
【請求項2】
上記電極面には、導電性の粘着部材が施されていることを特徴とする、請求項1に記載される歩行促進装置。
【請求項3】
上記電極と上記歩行促進装置本体とは一体として皮膚部に貼着し得る構造を持っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載される歩行促進装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脳卒中、脊髄損傷不全麻痺、脳性麻痺、脳脊髄炎、その他の疾患で歩行が困難な患者の方々や、健常者や健常者であっても歩行機能が低下してきた方々の歩行機能の増進や改善に寄与する電気刺激を利用した歩行促進装置の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載される発明は、「下腹前部皮膚上に貼付する不関電極と、仙骨部正中両側の第2~第4後仙骨孔直上皮膚に貼付する2枚の関電極(刺激電極)を対向させ、所望の電気刺激波を関電極に出力することにより、骨盤内臓の機能不全及び疼痛性疾患を治療する装置」である。このものは、所望の電気刺激波を用いていることで本願発明と類似するものではあるが、あくまで「骨盤内臓機能不全・疼痛治療装置」、即ち、人体の骨盤内に納まっている器官の機能不全の治療や疼痛の緩和のために発明された装置であって、関電極と不関電極との双方を備えるものである上に、電気刺激を歩行の促進に利用する装置を教える所が全くない。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第4839457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行例を見てみても、本発明と同一の発明を見いだすことはできない。また、部分手段において類似するものはあっても、歩行促進装置に着目した視点から類似するものを見いだすことができない。本発明が解決しようとする課題は、「歩行促進装置」を提供するに当たり、「電気刺激を有効に利用して、歩行が困難な患者の方々や、健常者や健常者であっても歩行機能が低下してきた方々の歩行機能の改善に寄与する」ことを第1の課題とする。そして、「かかる装置が歩行中に用いられることから、軽量小型のコンパクトなポータブル装置とすること」を第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の歩行促進装置は、仙骨直上皮膚を連続通電で刺激して、歩行速度、歩容(歩行の仕方)、歩幅、下肢関節角度および歩行周期(一定時間での歩数)を適切に調節して歩行を効率よく促進させることにより、歩行障害者などの歩行機能を改善する歩行機能促進及び改善装置を提供するものである。電気刺激波としては、パルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、歩行中連続刺激あるいは連続性間歇刺激を与えることにより、健常者に対しては歩行推進、歩行障害を有する者には歩行機能改善をもたらす刺激出力を仙骨直上皮膚に与える。なお、刺激周波数としては、パーキンソン病や多系統萎縮症でパーキンソニズムを有する者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者あるいは歩行困難者には20Hzから5kHzの刺激周波数を用いて、通常は20~80ボルトで最大100ボルトの刺激出力を与える。電気刺激装置としては、充電可能なバッテリー式の低周波刺激装置を用いるが、各種電池様の電池やバッテリーの使用を排除するものでは決してない。そして、本発明に係る歩行促進装置は、電気刺激波として単極性負性矩形波又は双極性矩形波のようなデジタル波のみならず、正弦波や余弦波のようなアナログ波の使用を排除するものでは決してない。
【0006】
また、本発明に係る歩行促進装置は、仙骨中央両側の直上皮膚部に貼着する一対の電極を有すると共に、所望の電気刺激波を電極に出力する歩行促進装置本体を有し、電気刺激波としてパルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、パーキンソン病や多系統萎縮症によりパーキンソニズムを有する患者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者又は歩行困難者には20Hz~5kHzの刺激周波数を用いて電気刺激波を出力して、歩行を促進するように構成されてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る歩行促進装置は、電極面には、導電性粘着パッドが施されているように構成されてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る歩行促進装置は、上記電極と上記歩行促進装置本体とが一体として皮膚部に貼着し得る構造を持っているように構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歩行促進装置に関しては、本発明者が、すでに仙骨部表面刺激によって健常者の歩行がより速い速度でかつ効率よく推進されることを健常者16名で確認しているとともに、脳卒中片麻痺およびその他の疾患による歩行障害者(計18名)で歩幅の拡大、歩行周期および歩行速度のアップが認められ、被験患者自身からも歩行がしやすくなったとのコメントを得ている所である。
ちなみに、歩行障害者の10m最大歩行速度を刺激前後で比較すると、10mを50.2秒かかっていた脳梗塞による重度歩行障害者では刺激中46.8秒と3.4秒早くなり、脳梗塞による中等度歩行障害者では、平均2秒早くなっていることを確認している。さらに、歩数も1~2歩減少していることが判明している。
健常者においても歩行障害者においても、刺激中の歩行時、腰が伸びるとともに後ろから腰を押されているような感じがあって、かつ軽く下肢を前に振り出せると全員がコメントしている。中には小走りに走り出す健常者や軽度の歩行障害者もいる。
一方、後退するように歩こうとする時にこの歩行促進装置を用いると、その抵抗が大きいことを確認しており、本装置の作用・効果は前進歩行に対してのみ推進効果があることが判明している。
【0010】
また、本発明の歩行促進装置は、電極面に導電性の粘着部材が施されているので、電極を患者の仙骨直上の皮膚に貼着することが簡便になし得ると共に、電極で発生する刺激波を患者の皮膚にそのまま伝えることができる。
【0011】
また、本発明の歩行促進装置は、電極と歩行促進装置本体とが一体として皮膚部に貼着し得る構造を持っているので、患者は歩行促進装置の装着事実をあまり意識することなくリハビリテーションに集中することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の歩行促進装置本体の一例を示す回路図である。
【図2】図2は本発明の歩行促進装置の電極を仙骨直上の皮膚に貼着した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態としては、仙骨中央両側の直上皮膚部に貼着する一対の電極を有すると共に、所望の電気刺激波を電極に出力する歩行促進装置本体を有し、電気刺激波としてパルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、パーキンソン病や多系統萎縮症によりパーキンソニズムを有する患者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者又は歩行困難者には20Hz~5kHzの刺激周波数を用いて電気刺激波を出力して、歩行を促進することを特徴とする歩行促進装置、とすることが出来る。

【0014】
本発明を実施するための形態としては、上記電極面には、導電性の粘着部材が施されていることを特徴とする、請求項1に記載される歩行促進装置、とすることが出来る。

【0015】
本発明を実施するための形態としては、上記電極と上記歩行促進装置本体とが一体として皮膚部に貼着し得る構造を持っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載される歩行促進装置、とすることが出来る。
【実施例】
【0016】
図1は、本願発明の歩行促進装置1の一例を示す図である。電源スイッチ3を接にすることにより外部電力又は内部電力が歩行促進装置本体9に供給されるようになっている。手動式刺激値設定スイッチ4により電気刺激の強弱の調整を行い、刺激周波数切替スイッチ5により0.5~3Hzあるいは20Hz~5kHzの周波数切換を中央制御装置2に指令することにより、D/A変換器を有する出力部6から電極8に電気刺激信号が配線7を介して送られるよう構成されている。電極8は、図示のように歩行促進装置本体9と配線7により接続されていてもいいし、雌雄の導電性接続具により嵌め合わされて実質的に密着状態で一体化されていても良い。
【実施例】
【0017】
図2は、歩行促進装置1の電極8を仙骨の中心線を挟む両側の皮膚に貼り付けた状態を示している。人間の骨盤は男女を問わず左右一対の腸骨(腸骨と恥骨と座骨を含めて寛骨と称する。)に挟まれた略逆三角形状の仙骨10とからなるのが通例である。
電極8に与える電気刺激波としては、パルス幅1~500μ秒の単極性負性矩形波又は双極性矩形波を用い、歩行中連続刺激あるいは連続性間歇刺激を与えることにより、健常者に対しては歩行増進を、歩行障害を有する者には歩行機能改善をもたらす刺激出力を仙骨直上皮膚に与えるように構成されている。また、刺激周波数は、パーキンソン病や多系統萎縮症でパーキンソニズムを有する者には0.5~3Hzの範囲内の刺激周波数を用い、健常者や他の疾患による歩行障害者あるいは歩行困難者には20Hz~5kHzの刺激周波数を用いて、通常は20~80ボルトで最大100ボルトの刺激出力を与える。電気刺激装置としては、充電可能なバッテリー式の低周波刺激装置を用いるが、各種電池形状の電池あるいはバッテリーの使用を排除するものでは全くない。
仙骨10の中央線を隔てて対称に配置される一対の電極81、82は別体でも良いが1つの電極パッドに組み込まれた形式でも良い。電極8の表面には導電性の粘着部材を貼り付けるよう構成されており、粘着部材の他方の面は皮膚に貼り付く構成となっている。導電性の粘着部材は皮膚の分泌物等の付着により性能が低下するので、適宜新品と交換できるようになっている。
【実施例】
【0018】
このような歩行促進装置を用いた18人の被験者の電気刺激なしと電気刺激中での10m最大歩行速度の比較データを以下表1に示す。
【表1】
JP2015177927A_000003t.gif
この表からも明らかなように、10mの走行に50.2秒を要していたナンバー16の脳出血を患った被験者の場合、本願の歩行促進装置を用いた結果、10mの走行が46.8秒で達成され、3.4秒、即ち6%の時間短縮が達成された。ナンバー18の被験者の場合は、脳梗塞を患い、10mの走行に55.6秒を要していたが、本願の歩行促進装置を用いた結果、10mの走行が45.5秒で達成され、10.1秒、即ち18%の時間短縮が達成された。ナンバー15の被験者の場合は、急性散在性脳脊髄膜炎を患い、10mの走行に47.8秒を要していたが、本願の歩行促進装置を用いた結果、10mの走行が40.8秒で達成され、7.0秒、即ち14%の時間短縮が達成された。
一方、10mの走行時間が比較的短いナンバー2の被験者においても、10mの走行に6.3秒を要していたが、本願の歩行促進装置を用いた結果、10mの走行が4.9秒で達成され、1.4秒、即ち22%の時間短縮が達成された。
これらの結果から、比較的歩行困難の度合いが大きい被験者の方が歩行促進装置を用いた場合の短縮時間の値は大きいことが伺える一方で、短縮時間を歩行促進装置を装着しない時の所要時間で除した短縮割合を見ると、10m歩行時間が比較的健常者に近いような被験者で大きな短縮割合を示す例が多く見られる傾向にあることが分かる。
【実施例】
【0019】
各被験者における電気刺激なしと電気刺激中での歩行時間の比較表を表2に示す。
【表2】
JP2015177927A_000004t.gif
これらの表から、10m歩行にかかる時間の長い被験者が本願の歩行促進装置を用いた場合の歩行短縮時間が大きい傾向にあることを見て取ることができる。いずれにしても、歩行障害者あるいは歩行困難者の例で見ると、本願発明の歩行促進装置を装着することにより歩行速度の改善傾向を見て取ることができると共に、これらの平均値をグラフ化することにより改善効果が定量的に視認できることが分かる。
【実施例】
【0020】
次に、健常者における電気刺激なしと電気刺激中での平均歩行時間の比較表を以下、表3に示す。
【表3】
JP2015177927A_000005t.gif
この表から、本発明の歩行促進装置を用いることにより、歩行障害を有する患者のみならず、健常者においても平均して歩行時間の短縮が図られる効果を見て取ることができる。確かに、16人の被験者の中で、ナンバー1から4の被験者では、歩行促進装置を用いることにより、むしろ歩行速度が低下していることが認められる。しかし、他の12名の被験者では改善効果が認められており、統計学的に処理すると1%の危険率で歩行時間の短縮が認められることが判明している。
【実施例】
【0021】
健常者の各被験者における電気刺激なしと電気刺激中での歩行時間の比較表を以下、表4に示す。
【表4】
JP2015177927A_000006t.gif
この比較表を見ると、確かに歩行速度がむしろ低下している被験者の存在が明らかである。しかし、16人の被験者の平均値を見ると歩行速度が1%の危険率で有意に増加しているので一定の増加効果が期待できることが明らかであるものと認識している。健常者には各人の永年に亘る歩行リズムが備わっているので、電気刺激の周波数と歩行リズムの整合を図ることも今後の研究課題であると考えている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、二足歩行が宿命づけられている人間にとって、加齢による歩行困難や疾病に伴う歩行困難といった迷惑極まりない事態の発生に臨むに際し、人間が本来的に有している能力や本能に働きかけてその事態の改善あるいは改良を図ろうとするものであるから、自然の摂理に逆らうところが全くなく、人間の能力や本能を自然に引き出しながらリハビリテーションに励む為のお膳立てを提供するに留まらず、その能力あるいは本能を引き出す訓練がひいては疾患部の自然治癒を促す作用を発現させ得る、21世紀の高齢化社会を見据えた人間の自力歩行を有力にサポートするのに有用な医療機器を提供するものである。この発明はまた、健常者に適用した場合にも歩行促進効果が期待できるので、健常者であって歩行能力が低下してきた方々の歩行改善に用いることはもとより、スポーツ選手の走行スピードの向上に寄与することも期待できるので、運動能力向上訓練器としての用途に用いることもできるのである。
【符号の説明】
【0023】
1 歩行促進装置本体
2 中央演算装置
3 電源スイッチ
4 手動式刺激値設定ダイアル
5 刺激周波数切替スイッチ
6 出力部
7 配線
8 電極
81 第1電極
82 第2電極
10 仙骨
図面
【図1】
0
【図2】
1