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明細書 :分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-029112 (P2017-029112A)
公開日 平成29年2月9日(2017.2.9)
発明の名称または考案の名称 分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 5/071
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2015-155312 (P2015-155312)
出願日 平成27年8月5日(2015.8.5)
発明者または考案者 【氏名】本多 裕之
【氏名】清水 一憲
【氏名】松本 凌
【氏名】堀 勝
【氏名】水野 正明
【氏名】吉川 史隆
【氏名】田中 宏昌
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
【識別番号】100165962、【弁理士】、【氏名又は名称】一色 昭則
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
Fターム 4B024AA01
4B024AA20
4B024GA11
4B024HA03
4B065AA93X
4B065BD04
4B065BD14
4B065CA44
要約 【課題】 簡易かつ低コストに未分化iPS細胞を除去することを図った分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法を提供することである。
【解決手段】 この分化細胞の生産方法は、緩衝液または培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前から分化細胞への分化後までの間の期間に実施される。
【選択図】図15
特許請求の範囲 【請求項1】
緩衝液または培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、
大気圧プラズマを前記第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、
iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、
前記iPS細胞または前記分化細胞を前記処理液に浸漬する処理工程と、
を有し、
前記処理工程は、
前記分化工程における前記iPS細胞の分化の開始前から前記分化細胞への分化後までの間の期間に実施されること
を特徴とする分化細胞の生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分化細胞の生産方法において、
前記プラズマ照射工程では、
単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下であり、
前記単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、
X = P1 × T1 / V1
X :単位体積当たりのプラズマ密度時間積
P1:プラズマ発生領域でのプラズマ密度
T1:照射時間
V1:第1の水溶液の体積
を満たすこと
を特徴とする分化細胞の生産方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分化細胞の生産方法において、
前記処理工程は、
前記分化工程における前記iPS細胞の分化の開始前に実施されること
を特徴とする分化細胞の生産方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の分化細胞の生産方法において、
前記処理工程は、
前記分化工程における前記iPS細胞の分化の途中に実施されること
を特徴とする分化細胞の生産方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の分化細胞の生産方法において、
前記処理工程は、
前記分化工程における前記分化細胞への分化後に実施されること
を特徴とする分化細胞の生産方法。
【請求項6】
緩衝液または培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、
大気圧プラズマを前記第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、
iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、
前記iPS細胞または前記分化細胞を前記処理液に浸漬する処理工程と、
を有し、
前記処理工程は、
前記分化工程における前記iPS細胞の分化の開始前から前記分化細胞への分化後までの間の期間に実施されること
を特徴とするiPS細胞の未分化細胞の除去方法。
【請求項7】
請求項6に記載のiPS細胞の未分化細胞の除去方法において、
前記プラズマ照射工程では、
単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下であり、
前記単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、
X = P1 × T1 / V1
X :単位体積当たりのプラズマ密度時間積
P1:プラズマ発生領域でのプラズマ密度
T1:照射時間
V1:第1の水溶液の体積
を満たすこと
を特徴とするiPS細胞の未分化細胞の除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法に関する。さらに詳細には、iPS細胞から未分化細胞を好適に除去することを図った分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は、人工多能性幹細胞または誘導多能性幹細胞と呼ばれる。iPS細胞は、線維芽細胞などの体細胞へ数種類の転写因子遺伝子を導入することにより、分化多能性を獲得した細胞である。iPS細胞の分化多能性は、ES細胞の分化多能性と同等である。つまり、iPS細胞は、生体を構成する全ての臓器や組織へ分化する能力を有している。よって、臓器等を再生する再生医療において極めて有効な技術として期待されている。
【0003】
従来から、臓器や組織へ分化する分化多能性細胞としてES細胞が存在する。ES細胞は、生命の起源となる胚から得られる。そのため、その取扱いには倫理上の問題がある。また、ES細胞から分化させた組織は、患者に移植する段階で拒絶反応を引き起こすおそれがある。つまり、免疫学上の問題がある。iPS細胞は、これらの倫理上の問題および免疫学上の問題を解決することが期待されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2014/126146号
【0005】

【非特許文献1】Cell Stem Cell,12(1)pp127-137,2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、iPS細胞から臓器を生産しようとする場合には、多数のiPS細胞を含む未分化iPS細胞群を特定の臓器や組織の機能を発揮する細胞群に分化させる。未分化iPS細胞群を分化させると、一般に、分化細胞群と、残留未分化iPS細胞群と、が生じる。つまり、未分化iPS細胞群のそれぞれの未分化iPS細胞を分化させようとすると、分化しない残留未分化iPS細胞群が残留してしまうのである。そして、この残留未分化iPS細胞群は、腫瘍化するおそれがある。
【0007】
そのため、未分化iPS細胞群を分化させる際に、残留する未分化iPS細胞を除去する技術が研究開発されてきている。例えば、抗体やレクチンなどの標的認識分子を利用して標的分子を蛍光ラベルし、蛍光強度差を指標にしてセルソーターを用いて残留未分化iPS細胞を分離する方法がある。または、磁気ビーズで標的分子をラベルし、磁力によって残留未分化iPS細胞を分離する方法がある。または、標的認識分子に薬剤などを結合して、細胞選択的に細胞死を誘導する方法がある(特許文献1参照)。しかし、これらの方法では、特異的分子を予め調製する必要がある。そのため、これらの方法は、高価で煩雑である。また、セルソーターを用いるため、処理時間がかかりすぎる。また、3次元細胞塊の状態で分化させた細胞への適用が困難である。磁気分離についても同様の問題がある。
【0008】
また、未分化iPS細胞と分化iPS細胞との栄養要求性の違いを利用して分離する方法がある(非特許文献1参照)。しかし、栄養要求性を利用する方法では、特定の細胞に限定される。また、分化誘導培地として選択培地を用いる。したがって、分化効率を最大限に高めることが出来ず、十分な数の分化細胞が得られない可能性がある。
【0009】
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、簡易かつ低コストに未分化iPS細胞を除去することを図った分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様における分化細胞の生産方法は、緩衝液または培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前から分化細胞への分化後までの間の期間に実施される。
【0011】
この分化細胞の生産方法は、未分化iPS細胞群を死滅させるとともに分化細胞を死滅させない。つまり、未分化iPS細胞を選択的に死滅させることができる。また、この分化細胞の生産方法は、第1の水溶液にプラズマを照射した処理液に未分化iPS細胞を浸漬するという簡単な手順により、分化細胞を死滅させることなく未分化iPS細胞を死滅させることができる。また、大量の細胞に対して一度に処理することができる。したがって、この分化細胞の生産方法では、簡易に腫瘍化を防止しつつiPS細胞を分化させることができる。
【0012】
第2の態様における分化細胞の生産方法においては、プラズマ照射工程では、単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下である。単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、
X = P1 × T1 / V1
X :単位体積当たりのプラズマ密度時間積
P1:プラズマ発生領域でのプラズマ密度
T1:照射時間
V1:第1の水溶液の体積
を満たす。
【0013】
第3の態様における分化細胞の生産方法においては、処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前に実施される。
【0014】
第4の態様における分化細胞の生産方法においては、処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の途中に実施される。
【0015】
第5の態様における分化細胞の生産方法においては、処理工程は、分化工程における分化細胞への分化後に実施される。
【0016】
第6の態様におけるiPS細胞の未分化細胞の除去方法は、緩衝液または培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前から分化細胞への分化後までの間の期間に実施される。
【0017】
第7の態様におけるiPS細胞の未分化細胞の除去方法においては、プラズマ照射工程では、単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下である。単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、
X = P1 × T1 / V1
X :単位体積当たりのプラズマ密度時間積
P1:プラズマ発生領域でのプラズマ密度
T1:照射時間
V1:第1の水溶液の体積
を満たす。
【発明の効果】
【0018】
本明細書では、簡易かつ低コストに未分化iPS細胞を除去することを図った分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プラズマ照射装置のガス噴出口を走査するロボットアームの構成を説明するための概念図である。
【図2】図2.Aは第1のプラズマ照射装置の構成を示す断面図であり、図2.Bは電極の形状を示す図である。
【図3】図3.Aは第2のプラズマ照射装置の構成を示す断面図であり、図3.Bはプラズマ領域の長手方向に垂直な断面における部分断面図である。
【図4】実験Aにおける処理液(AK03)の希釈倍率とiPS細胞の生存率との関係を示すグラフである。
【図5】実験Aにおける処理液(AK03)の希釈倍率とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図6】実験Aにおける処理液(AK03)の処理時間を変えた場合における処理液(AK03)の希釈倍率とiPS細胞の生存率との関係を示すグラフである。
【図7】実験Bにおける実験方法を示す概念図である。
【図8】実験Bにおける処理液(AK03)で6時間処理した後の細胞を示す顕微鏡写真である。
【図9】実験Bにおける処理液(AK03)で6時間処理した後の染色した細胞を示す顕微鏡写真である。
【図10】実験Bにおける処理液(AK03)で6時間処理した後のPI染色した細胞を示す顕微鏡写真である。
【図11】実験Cにおける実験方法を示す概念図である。
【図12】実験Cにおける実験結果を示す顕微鏡写真である。
【図13】実験Cにおける処理液による処理から24時間経過後の細胞を示す顕微鏡写真である。
【図14】実験Dにおける処理液(DMEM)の希釈倍率とiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図15】実験Eにおける処理液(PBS)の希釈倍率とiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図16】実験Fにおける5000細胞に対する処理液(AK03)の希釈倍率とiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図17】実験Fにおける20000細胞に対する処理液(AK03)の希釈倍率とiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図18】実験Fにおける50000細胞に対する処理液(AK03)の希釈倍率とiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。
【図19】実験Gにおいて細胞を処理液に浸漬する処理時間を1分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。
【図20】実験Gにおいて細胞を処理液に浸漬する処理時間を3分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。
【図21】実験Gにおいて細胞を処理液に浸漬する処理時間を5分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態について、分化細胞の生産方法およびiPS細胞の未分化細胞の除去方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。

【0021】
(第1の実施形態)
本実施形態では、プラズマ処理された水溶液中に未分化iPS細胞群を浸漬する。これにより、未分化iPS細胞群における残留未分化iPS細胞を選択的に死滅させる。そのため、まずは、プラズマ装置について説明する。

【0022】
1.処理液製造装置
1-1.処理液製造装置の構成
本実施形態の処理液製造装置PMは、図1に示すように、プラズマ照射部P1と、アームロボットM1とを有している。プラズマ照射装置P1は、プラズマを発生させるとともに、そのプラズマを水溶液に向けて照射するためのものである。プラズマ照射装置P1には、後述するように、2種類の方式(第1のプラズマ照射装置100および第2のプラズマ照射装置110)がある。そして、いずれの方式を用いてもよい。

【0023】
アームロボットM1は、図1に示すように、プラズマ照射装置P1の位置をx軸、y軸、z軸方向のそれぞれの方向に移動させることができるようになっている。なお、説明の便宜上、プラズマを照射する向きを-z軸方向としている。これにより、溶液の液面と、プラズマ照射部P1との間の距離を調整することができる。また、この処理液製造装置PMは、予めプラズマ照射時間を設定することにより、その時間だけプラズマを照射することができる。

【0024】
1-2.第1のプラズマ照射装置
図2.Aはプラズマ照射装置100の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ照射装置100は、プラズマを点状に噴出する第1のプラズマ照射装置である。図2.Bは、図2.Aのプラズマ照射装置100の電極2a、2bの形状の詳細を示す図である。

【0025】
プラズマ照射装置100は、筐体部10と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部10は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。そして、筐体部10の形状は、筒形状である。筐体部10の内径は2~3mmである。筐体部10の厚みは0.2~0.3mmである。筐体部10の長さは、例えば25cmである。筐体部10の両端には、ガス導入口10iと、ガス噴出口10oとが形成されている。ガス導入口10iは、プラズマを発生させるためのガスを導入するためのものである。ガス噴出口10oは、プラズマを筐体部10の外部に照射するための照射部である。なお、ガスの移動する向きは、図中の矢印の向きである。

【0026】
電極2a、2bは、対向して配置されている対向電極対である。電極2a、2bの対向面方向の長さは、筐体部10の内径より小さい。例えば1mm程度である。電極2a、2bには、図2.Bに示すように、対向面のそれぞれに凹部(ホロー)Hが多数形成されている。そのため、電極2a、2bの対向面は、微細な凹凸形状となっている。なお、この凹部Hの深さは、0.5mm程度である。

【0027】
電極2aは、筐体部10の内部であってガス導入口10iの近傍に配置されている。電極2bは、筐体部10の内部であってガス噴出口10oの近傍に配置されている。そのため、プラズマ照射装置100では、電極2aの対向面の反対側からガスを導入するとともに、電極2bの対向面の反対側にガスを噴出するようになっている。そして、電極2a、2b間の距離は、24cmである。電極2a、2b間の距離は、これより小さい距離であってもよい。

【0028】
電圧印加部3は、電極2a、2b間に交流電圧を印加するためのものである。電圧印加部3は、商用交流電圧である、60Hz、100Vを用いて9kVに昇圧するとともに、電極2a、2b間に電圧を印加する。

【0029】
ガス導入口10iからアルゴンを導入するとともに、電圧印加部3により、電極2a、2b間に電圧を印加すると、筐体部10の内部にプラズマが発生する。図2.Aの斜線で示すように、プラズマが発生する領域をプラズマ発生領域Pとする。プラズマ発生領域Pは、筐体部10に覆われている。

【0030】
1-3.第2のプラズマ照射装置
図3.Aはプラズマ照射装置110の概略構成を示す断面図である。ここで、プラズマ照射装置110は、プラズマを線状に噴出する第2のプラズマ照射装置である。図3.Bは、図3.Aのプラズマ照射装置110のプラズマ領域Pの長手方向に垂直な断面における部分断面図である。

【0031】
プラズマ照射装置110は、筐体部11と、電極2a、2bと、電圧印加部3と、を有している。筐体部11は、アルミナ(Al2 3 )を原料とする焼結体から成るものである。筐体部11の両端には、ガス導入口11iと、多数のガス噴出口11oとが形成されている。ガス導入口11iは、図3.Aの左右方向を長手方向とするスリット形状をしている。ガス導入口11iからプラズマ領域Pの直上までのスリット幅(図3.Bの左右方向の幅)は1mmである。

【0032】
ガス噴出口11oは、プラズマを筐体部11の外部に照射するための照射部である。ガス噴出口11oは、円筒形状もしくはスリット形状である。円筒形状の場合のガス噴出口11oは、プラズマ領域の長手方向に沿って一直線状に形成されている。ガス噴出口11oの内径は1~2mmの範囲内である。また、スリット形状の場合には、ガス噴出口11oのスリット幅を1mm以下とすることが好ましい。これにより、安定したプラズマが形成される。ガス導入口11iは、電極2aと電極2bとを結ぶ線と交差する向きにガスを導入するようになっている。

【0033】
電極2a、2bおよび電圧印加部3については、図1に示したプラズマ照射装置100と同じものである。そして、同様に、商用交流電圧を用いて、電極2a、2b間に電圧を印加する。これにより、プラズマを一直線状に噴出することができる。

【0034】
また、この一直線状にプラズマを噴出するプラズマ照射装置110を図3.Bの左右方向に列状に並べて配置すれば、プラズマをある長方形の領域にわたって平面的に噴出することができる。

【0035】
2.プラズマ照射装置により発生されるプラズマ
プラズマ照射装置100、110により発生されるプラズマは、非平衡大気圧プラズマである。ここで、大気圧プラズマとは、0.5気圧以上2.0気圧以下の範囲内の圧力であるプラズマをいう。

【0036】
本実施形態では、プラズマ発生ガスとして、主にArガスを用いる。プラズマ照射装置100、110により発生されるプラズマの内部では、もちろん、電子と、Arイオンとが生成されている。そして、Arイオンは、紫外線を発生する。また、このプラズマは大気中に放出されているため、酸素ラジカルや窒素ラジカル等を発生させる。

【0037】
このプラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。なお、誘電体バリア放電により発生されるプラズマにおけるプラズマ密度は、1×1011cm-3~1×1013cm-3程度である。したがって、プラズマ照射装置100、110により発生されるプラズマのプラズマ密度は、誘電体バリア放電により発生されるプラズマのプラズマ密度に比べて、3桁程度大きい。したがって、このプラズマの内部では、より多くのArイオンが生成する。そのため、ラジカルや、紫外線の発生量も多い。なお、このプラズマ密度は、プラズマ内部の電子密度にほぼ等しい。

【0038】
そして、このプラズマ発生時におけるプラズマ温度は、およそ1000K~2500Kの範囲内である。また、このプラズマにおける電子温度は、ガスの温度に比べて大きい。しかも、電子の密度が1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内の程度であるにもかかわらず、ガスの温度はおよそ1000K~2500Kである。このプラズマの温度は、プラズマの発生しているプラズマ領域Pでの温度である。したがって、プラズマの条件や、ガス噴出口から水面までの距離を異なる条件とすることにより、水溶液の位置でのプラズマ温度を室温程度とすることができる。

【0039】
3.処理液
本実施形態の処理液は、原材料である第1の水溶液に非平衡大気圧プラズマを照射した第2の水溶液である。第1の水溶液の溶媒は、水系溶媒である。第1の水溶液として、培養液を用いることができる。培養液として、例えば、StemFit(登録商標:味の素社製)、DMEM、RPMIが挙げられる。もちろん、それ以外の培養液を用いてもよい。そして、表1に示すように、DMEMには、グルコース等の糖が含まれている。ここで、培養成分とは、細胞等を培養するための培養液に含まれる成分である。例えば、表1(DMEM成分)に記載されているものである。

【0040】
[表1]
塩化カルシウム
硝酸第二鉄・9H2
硫酸マグネシウム(無水)
塩化カリウム
炭酸水素ナトリウム
塩化ナトリウム
リン酸一ナトリウム(無水)(リン酸二水素ナトリウム)
L-アルギニン・HCl
L-シスチン・2HCl
L-グルタミン
グリシン
L-ヒスチジン・HCl・H2
L-イソロイシン
L-ロイシン
L-リジン・HCl
L-メチオニン
L-フェニルアラニン
L-セリン
L-スレオニン
L-トリプトファン
L-チロシン・2Na・2H2
L-バリン
塩化コリン
葉酸
myo-イノシトール
ナイアシンアミド
D-パントテン酸
ピリドキシン・HCl
リボフラビン
チアミン・HCl
D-グルコース
フェノールレッド・Na
ピルビン酸ナトリウム

【0041】
4.処理液の製造方法
4-1.水溶液準備工程
まず、第1の水溶液を準備する。第1の水溶液とは、プラズマを照射する前の水溶液のことをいう。第1の水溶液は、培養液である。つまり、水に培養成分を添加した培養液を準備する。この段階における培養液のpHは、ほぼ7である。例えば、5.5以上8.5以下の範囲内である。

【0042】
4-2.プラズマ照射工程
次に、処理液製造装置PMによりプラズマ発生領域に発生させた大気圧プラズマを第1の水溶液(培養液)に照射する。プラズマを照射する際における液面とプラズマ噴出口との間の距離は、例えば、1cmである。また、この距離は、0.1cm以上3cm以下の範囲内で変えてもよい。このプラズマのプラズマ密度は、1×1014cm-3以上1×1017cm-3以下の範囲内である。そして、このプラズマにおけるプラズマ温度は、およそ1000K~2500Kの範囲内である。ただし、このプラズマ温度は、液面では、室温程度(300K程度)まで下げることもできる。これらのプラズマ条件を表2に示す。これらの条件は、あくまで一例である。

【0043】
[表2]
条件 数値範囲
液面-噴出口距離 0.1cm以上 3cm以下
プラズマ密度 1×1014cm-3以上 1×1017cm-3以下
プラズマ温度 1000K以上 2500K以下

【0044】
単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下であるとよい。単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、次式で表される。
X = P1 × T1 / V1
X :単位体積当たりのプラズマ密度時間積
P1:プラズマ発生領域でのプラズマ密度
T1:照射時間
V1:第1の水溶液(培養液)の体積
ここで、単位体積当たりのプラズマ密度時間積とは、水溶液の単位体積当たりに、プラズマ生成物を照射した量である。プラズマ密度時間積は、プラズマ発生領域におけるプラズマ密度とプラズマを照射する時間(照射時間)との積である。

【0045】
このように、第1の水溶液(培養液)にプラズマを照射することにより、第1の水溶液(培養液)を第2の水溶液(処理液)にする。プラズマ照射前の第1の水溶液(培養液)のpHは、7に近い。例えば、5.5以上8.5以下の範囲内である。一般に、培養液は、pHを7付近に保持しようとする物質を含んでいる。例えば、炭酸水素イオンである。そのため、プラズマを照射する前後で、この水溶液のpHはほとんど変化しない。プラズマ照射後の第2の水溶液(処理液)のpHは、7に近い。例えば、5.5以上8.5以下の範囲内である。

【0046】
5.未分化iPS細胞の除去方法
本実施形態の未分化iPS細胞の除去方法は、培養液を第1の水溶液として準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。

【0047】
5-1.水溶液準備工程
まず、第1の水溶液(培養液)を準備する。

【0048】
5-2.プラズマ照射工程
次に、第1の水溶液(培養液)に非平衡大気圧プラズマを照射する。そのプラズマの条件は、表2に示したとおりである。これにより、第1の水溶液(培養液)は、第2の水溶液(処理液)となる。

【0049】
5-3.第1の処理工程
次に、第2の水溶液(処理液)に未分化iPS細胞を浸漬する。第2の水溶液(処理液)は、分化しない未分化iPS細胞のみを死滅させ、分化した分化細胞についてはほとんど死滅させない。つまり、分化しない未分化iPS細胞のみが選択的に死滅する。

【0050】
この方法により、既に分化した分化細胞については死滅させずに、未だ分化していない未分化iPS細胞を選択的に死滅させることができる。このように、残留する未分化iPS細胞群を死滅させることにより、残留する未分化iPS細胞群の腫瘍化を防止することができる。

【0051】
このように、処理工程は、iPS細胞を分化細胞に分化させる分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前に実施される。

【0052】
6.変形例
6-1.第2の処理工程(分化させる途中で処理)
本実施形態の第1の処理工程に加えて、第2の処理工程を実施してもよい。つまり、この分化細胞の生産方法は、処理工程の後に、iPS細胞の未分化細胞を培養して分化細胞に分化させる分化工程を有する。分化工程は、プラズマ照射後の培養液に分化させる途中のiPS細胞を浸漬する第2の処理工程を有する。これにより、分化の途中で残留しているiPS細胞の未分化細胞を好適に死滅させることができる。

【0053】
6-2.冷凍工程
処理液については、冷蔵庫で冷凍してもよい。その場合には、本実施形態の未分化iPS細胞の処理方法は、処理液を冷凍する冷凍工程を有する。具体的には、冷凍庫に保存する。冷凍庫として、生物実験用冷蔵庫(例えば、日本フリーザー株式会社製のバイオフリーザーGS-5203KHC)を用いることができる。冷凍温度は、-196℃以上0℃以下である。冷凍温度は、好ましくは、-196℃以上-10°以下である。より好ましくは、-150℃以上-20℃以下である。さらに好ましくは、-80℃以上—30℃以下である。

【0054】
6-3.培養成分添加工程
プラズマ照射工程の後に、第2の水溶液に培養成分を添加して第3の水溶液としてもよい。この第3の水溶液も処理液である。例えば、プラズマ照射工程では、StemFit(登録商標)のA液にプラズマを照射する。次に、培養成分添加工程において、プラズマ照射後のA液にプラズマを照射していないStemFit(登録商標)のB液およびC液を混合してもよい。

【0055】
7.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る処理液は、培養液にプラズマを照射したものである。もしくは、特定の培養成分を溶質とする水溶液にプラズマを照射し、その後に培養成分を添加したものである。この処理液は、iPS細胞群のうち未分化iPS細胞のみを選択的に死滅させることができる。ただし、処理液の濃度については、好適に調整することが好ましい。

【0056】
(第2の実施形態)
1.処理工程
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、処理液による処理工程を未分化iPS細胞群を分化させている途中または後に実施する。つまり、この分化細胞の生産方法は、培養液を準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを培養液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、分化工程の途中または後に、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。これにより、未分化iPS細胞群のうち、既に分化している細胞を死滅させることなく、残留している未分化iPS細胞を死滅させることができる。

【0057】
つまり、本実施形態の分化細胞の生産方法は、第1の水溶液を準備する水溶液準備工程と、大気圧プラズマを第1の水溶液に照射して処理液とするプラズマ照射工程と、iPS細胞を分化させて分化細胞とする分化工程と、iPS細胞または分化細胞を処理液に浸漬する処理工程と、を有する。

【0058】
第1の実施形態から第2の実施形態までに説明したように、処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の途中に実施されてもよい。処理工程は、分化工程における分化細胞への分化後に実施されてもよい。つまり、処理工程は、分化工程におけるiPS細胞の分化の開始前から分化細胞への分化後までの間の期間に実施されればよい。

【0059】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。第1の実施形態および第2の実施形態では水溶液として培養液を用いた。しかし、第3の実施形態では、緩衝液を用いる。

【0060】
1.緩衝液
第3の実施形態では、プラズマを照射させる水溶液として緩衝液を用いる。緩衝液とは、水素イオン濃度に対する緩衝作用のある水溶液のことをいう。例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。

【0061】
2.処理液の製造方法
2-1.水溶液準備工程
まず、第1の水溶液を準備する。本実施形態の第1の水溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。この段階における培養液のpHは、ほぼ7である。

【0062】
2-2.プラズマ照射工程
次に、処理液製造装置PMによりプラズマ発生領域に発生させた大気圧プラズマを第1の水溶液(リン酸緩衝生理食塩水)に照射する。プラズマ条件は、例えば、表2に示したとおりである。

【0063】
これまで説明した第1の実施形態から第3の実施形態までに説明したように、第1の水溶液は、緩衝液または培養液である。また、第1の水溶液として、塩化ナトリウム(NaCl)と、塩化カリウム(KCl)と、リン酸二水素カリウム(KH2 PO4 )と、リン酸水素二ナトリウム(Na2 HPO4 )と、リン酸二水素ナトリウム(NaH2 PO4 )と、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )と、のうちの少なくとも1種類を含む溶質を水に添加したものを用いればよい。また、PBS以外の緩衝液について用いてもよい。例えば、リン酸緩衝液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
1.実験A
1-1.実験方法
1-1-1.処理液の作製
まず、処理液を作製した。本実験では、直径60mmのディッシュを用いた。この穴は、非貫通孔である。そのため、穴の内部に溶液を入れることができるようになっている。まず、プレートの穴に8mLの培養液を入れる。ここで用いた培養液は、StemFit(登録商標)のAK03である。ここでは、AK03のA液をプレートに入れる。
【実施例】
【0065】
次に、処理液製造装置PMを用いて、大気圧プラズマを培養液(AK03のA液)に照射する。その際、プラズマ発生領域を培養液に接触させない位置に培養液の液面を配置した。そして、処理液製造装置PMの対向電極を培養液の外部であって培養液の液面を挟まない位置に対向して配置した。その状態で、大気圧プラズマを培養液に照射した。このように、プラズマ発生領域は、培養液に接触していないが、プラズマ中で生成される種々のラジカルが培養液に照射される。プラズマがプレートにおける培養液の上方の大気を押し出すようにする。そのため、プラズマ照射時間中には、培養液は大気に触れることがほとんどない。これにより、第2の水溶液(処理液)が作製された。
【実施例】
【0066】
そのプラズマの条件を、表3に示す。プラズマを発生させるためのガスとしてアルゴンガスのみを用いた。ガスの流量は、2.0slmであった。また、プラズマ噴出口と液面との間の距離は、3mmであった。そして、プラズマ照射時間は、5分であった。また、プラズマ発生領域におけるプラズマ密度は、2×1016cm-3であった。第1の水溶液の量は8mLであった。単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、7.5×1017sec・cm-3・ml-1であった。
【実施例】
【0067】
[表3]
ガスの流量 2.0slm
プラズマ噴出口と液面との間の距離 3mm
プラズマ照射時間 5分
プラズマ密度(発生時) 2×1016cm-3
水溶液の量 8mL
【実施例】
【0068】
次に、プラズマ照射後のAK03のA液に、プラズマを照射していないAK03のB液およびC液を混合する。これにより、第3の水溶液(処理液)が作製された。
【実施例】
【0069】
1-1-2.未分化iPS細胞の培養
ここで、96ウェルプレートのそれぞれのウェルにiPS細胞とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)とのいずれか一方を播種する。iPS細胞については24時間培養した。ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)については24時間培養した。これにより、それぞれの細胞の数を1.0×104 cells/wellとした。
【実施例】
【0070】
1-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞の培地またはヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。供給量は、1ウェル当たり150μLである。ここで、処理液については、1倍、2倍、4倍等に薄めたものを用いる。そして、処理液による処理時間は、24時間であった。
【実施例】
【0071】
1-2.実験結果
図4は、処理液の希釈倍率とiPS細胞の生存率との関係を示すグラフである。図4の横軸は、処理液の希釈倍率である。図4の縦軸は、iPS細胞の生存率である。処理液の処理時間は24時間である。図4に示すように、希釈倍率が16倍以下では、iPS細胞は死滅する。希釈倍率が32倍以上では、iPS細胞は死滅しない。
【実施例】
【0072】
図5は、処理液の希釈倍率とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率との関係を示すグラフである。図5の横軸は、処理液の希釈倍率である。図5の縦軸は、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の生存率である。処理液の処理時間は24時間である。図5に示すように、希釈倍率が4倍以下では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は死滅する。希釈倍率が8倍以上では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は死滅しない。
【実施例】
【0073】
図4および図5に示すように、処理液の希釈倍率を6倍以上30倍以下とすれば、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は死滅せず、iPS細胞は死滅する。つまり、分化細胞は死滅せず、iPS細胞のうちの未分化細胞のみを死滅させることができる。
【実施例】
【0074】
なお、図6に示すように、処理液の処理時間を1時間から6時間の間で変化させても、iPS細胞の生存率はそれほど変わらない。
【実施例】
【0075】
1倍希釈の処理液における単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、7.5×1017sec・cm-3・ml-1である。そのため、iPS細胞の未分化細胞を選択的に死滅させるには、6倍希釈から30倍希釈のものを用いればよい。このときの処理液における単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下である。
【実施例】
【0076】
2.実験B(2領域への2種類の細胞の播種)
2-1.実験方法
2-1-1.処理液の作製
処理液の作製方法は、実験Aと同様である。
【実施例】
【0077】
2-1-2.未分化iPS細胞の培養
ここで、図7に示すように、未分化iPS細胞とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)とを仕切る仕切りを用意する。この仕切りは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に2つの貫通孔を形成したものである。貫通孔の直径は6mm程度である。これらの仕切りをラミニン511-E8コートした12ウェルプレートの非貫通孔の底面の上に配置する。
【実施例】
【0078】
そして、2つの貫通孔にそれぞれiPS細胞とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)とを播種する。ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は、分化していないiPS細胞に対して、分化した正常な細胞である。iPS細胞は、5.45×104 cells/wellとなるように播種する。ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は、10.9×104 cells/wellとなるように播種する。なお、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)については、Cell Tracker Greenで染めた。そして、iPS細胞については72時間培養した。ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)については24時間培養した。次に、PDMSの仕切りを取り外す。この段階で、iPS細胞と、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)とが、12ウェルプレートの底部に接着している。
【実施例】
【0079】
2-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。供給量は、1ウェル当たり1630μLである。ここで、処理液については、1倍、16倍、128倍等に薄めたものを用いる。そして、処理液による処理時間は、特に記載がない限り6時間である。そして、その後、PI染色等を実施し、各細胞について観察した。
【実施例】
【0080】
2-2.実験結果
図8は、処理液で6時間処理した後の細胞を示す顕微鏡写真である。図8(a)は、1倍希釈の処理液で処理したiPS細胞の顕微鏡写真である。図8(b)は、1倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図8(c)は、16倍希釈の処理液で処理したiPS細胞の顕微鏡写真である。図8(d)は、16倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図8(e)は、処理液で処理しなかったiPS細胞の顕微鏡写真である。図8(f)は、処理液で処理しなかったヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。
【実施例】
【0081】
図9は、処理液で6時間処理した後の蛍光染色した細胞を示す顕微鏡写真である。図9(a)は、1倍希釈の処理液で処理したiPS細胞(染色無し)の顕微鏡写真である。図9(b)は、1倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)(染色有り)の顕微鏡写真である。図9(c)は、16倍希釈の処理液で処理したiPS細胞(染色無し)の顕微鏡写真である。図9(d)は、16倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)(染色有り)の顕微鏡写真である。図9(e)は、処理液で処理しなかったiPS細胞(染色無し)の顕微鏡写真である。図9(f)は、処理液で処理しなかったヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)(染色有り)の顕微鏡写真である。
【実施例】
【0082】
図10は、処理液で6時間処理した後にPI染色した細胞を示す顕微鏡写真である。図10(a)は、1倍希釈の処理液で処理したiPS細胞をPI染色した顕微鏡写真である。図10(b)は、1倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をPI染色した顕微鏡写真である。図10(c)は、16倍希釈の処理液で処理したiPS細胞をPI染色した顕微鏡写真である。図10(d)は、16倍希釈の処理液で処理したヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をPI染色した顕微鏡写真である。図10(e)は、処理液で処理しなかったiPS細胞をPI染色した顕微鏡写真である。図10(f)は、処理液で処理しなかったヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をPI染色した顕微鏡写真である。
【実施例】
【0083】
図10(a)および図10(b)に示すように、1倍希釈、すなわち原液の処理液を用いて処理した場合には、iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)のいずれも、細胞死を迎えている。また、図10(c)では、iPS細胞は細胞死しているが、図10(d)では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は細胞死していない。
【実施例】
【0084】
このことから、適切な濃度の処理液を用いることにより、未分化iPS細胞を死滅させるとともに分化後の細胞を死滅させないことができる。
【実施例】
【0085】
3.実験C(同一領域への2種類の細胞の播種)
3-1.実験方法
3-1-1.処理液の作製
処理液の作製方法は、実験Aと同様である。
【実施例】
【0086】
3-1-2.未分化iPS細胞の培養
図11に示すように、ラミニン511-E8コートした12ウェルプレートの非貫通孔の中にiPS細胞を播種する。iPS細胞の数は、5.45×104 cells/wellである。そして、そのまま48時間培養する。その後、Cell Tracker Greenで染めたヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を12ウェルプレートに播種する。ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の数は、10.9×104 cells/wellである。そして、その後24時間培養した。そのため、iPS細胞は、合計72時間培養したことになる。この段階で、iPS細胞とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)とが、混合した状態で12ウェルプレートの底部に接着している。
【実施例】
【0087】
3-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に供給する。供給量は、1ウェル当たり1630μLである。ここで、処理液については、1倍、4倍、8倍等に薄めたものを用いる。そして、処理液による処理時間は、特に記載がない限り6時間である。そして、その後、PI染色等を実施し、各細胞について観察した。
【実施例】
【0088】
3-2.実験結果
図12は、実験結果を示す顕微鏡写真である。図12(a)は、1倍希釈の処理液で処理したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(b)は、4倍希釈の処理液で処理したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(c)は、処理液で処理しなかったiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(d)は、1倍希釈の処理液で処理したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真(染色有り)である。図12(e)は、4倍希釈の処理液で処理したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真(染色有り)である。図12(f)は、処理液で処理しなかったiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真(染色有り)である。図12(g)は、1倍希釈の処理液で処理した後にPI染色したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(h)は、4倍希釈の処理液で処理した後にPI染色したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(i)は、処理液で処理せずにPI染色したiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の顕微鏡写真である。図12(j)は、図12(d)と図12(g)とを重ね合わせたものである。図12(k)は、図12(e)と図12(h)とを重ね合わせたものである。図12(l)は、図12(f)と図12(i)とを重ね合わせたものである。
【実施例】
【0089】
図12(a)から図12(c)までに示すように、iPS細胞は、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に囲まれて島状に配置されている。つまり、iPS細胞の領域とヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の領域とがある程度分離している。図12(d)から図12(f)まででは、Cell Tracker Greenで染色されたヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)が示されている。図12(g)から図12(i)まででは、死滅した細胞が染色されている。図12(g)に示すように、1倍希釈の処理液を用いることにより、比較的多くの細胞が死滅している。図12(h)に示すように、4倍希釈の処理液を用いることにより、ある程度の細胞が死滅している。図12(i)に示すように、処理液を用いない場合にはほとんどの細胞が死滅しない。
【実施例】
【0090】
図12(j)に示すように、1倍希釈の処理液を用いることにより、iPS細胞もヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)も死滅している。図12(k)に示すように、図12(e)で示されるヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の領域以外の領域で細胞が死滅している。つまり、iPS細胞の未分化細胞が選択的に死滅している。
【実施例】
【0091】
図13(a)および図13(b)に示すように、4倍希釈の処理液によりiPS細胞が死滅した後には、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)がiPSコロニーを埋めるように増殖する。
【実施例】
【0092】
3-3.処理する細胞数との関係
上記の実験結果においては、4倍希釈から30倍希釈の処理液を用いると、iPS細胞の未分化細胞を選択的に死滅させることができる。この場合の処理液における単位体積当たりのプラズマ密度時間積は、2.5×1015sec・cm-3・ml-1以上1.25×1017sec・cm-3・ml-1以下である。
【実施例】
【0093】
しかし、これらの数値範囲に関しては、処理する細胞数によって変わる可能性がある。そうであっても、処理する細胞数に対して好適な濃度の処理液を用いれば、iPS細胞の未分化細胞を選択的に死滅させることができると考えられる。
【実施例】
【0094】
4.実験D(DMEM)
4-1.実験方法
4-1-1.処理液の作製
まず、処理液を作製した。第1の水溶液として、培養液を用いた。ここで用いた培養液はDMEMと血清(FBS)と抗生物質(ペニシリン・ストレプトマイシン)とを混合した溶液である。DMEMとして、nacalai社製08458-16を用いた。DMEMの成分は、表1のとおりである。
【実施例】
【0095】
次に、処理液製造装置PMを用いて、大気圧プラズマを培養液に照射した。プラズマの条件を表3に示す。このプラズマの照射により、第2の水溶液(処理液)が作製された。
【実施例】
【0096】
4-1-2.未分化iPS細胞の培養
未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養方法については、実験Aと同様である。
【実施例】
【0097】
4-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。供給量は、1ウェル当たり150μLである。ここで、処理液については、1倍、2倍、4倍等に薄めたものを用いる。そして、処理液による処理時間は、1時間である。
【実施例】
【0098】
4-2.実験結果
図14に結果を示す。図14に示すように、1倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して60%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対してほぼ全ての細胞が死滅している。2倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して95%程度の細胞が死滅している。4倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して35%程度の細胞が生存している。8倍以上に薄めた処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞に対してほぼ全ての細胞が生存している。
【実施例】
【0099】
このように、DMEMを材料とする処理液は、濃度を選択すれば、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)にはほとんどダメージを与えずにiPS細胞のみを死滅させることができる。この傾向は、AK03を用いた場合と同じである。この実験系においては、1倍以上4倍以下(図14のK1参照)に希釈した処理液を用いるとよい。
【実施例】
【0100】
5.実験E(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))
5-1.実験方法
5-1-1.処理液の作製
まず、処理液を作製した。第1の水溶液として、緩衝液を用いた。ここで用いた緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))である。このリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))は、塩化ナトリウム(NaCl)と、塩化カリウム(KCl)と、リン酸二水素カリウム(KH2 PO4 )と、リン酸水素二ナトリウム(Na2 HPO4 )と、を含有する。
【実施例】
【0101】
次に、処理液製造装置PMを用いて、大気圧プラズマをリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))に照射した。プラズマの条件を表3に示す。このプラズマの照射により、第2の水溶液(処理液)が作製された。
【実施例】
【0102】
5-1-2.未分化iPS細胞の培養
未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養方法については、実験Aと同様である。
【実施例】
【0103】
5-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。供給量は、1ウェル当たり150μLである。ここで、処理液については、1倍、2倍、4倍等に希釈したものを用いる。そして、処理液による処理時間は、15分である。
【実施例】
【0104】
5-2.実験結果
図15に結果を示す。図15に示すように、1倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対してほぼ全ての細胞が死滅している。2倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して95%程度の細胞が死滅している。4倍以上16倍以下に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)に対して100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して95%程度の細胞が死滅している。32倍に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して70%程度の細胞が死滅している。64倍に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度の細胞が生存しているとともに、iPS細胞に対して30%程度の細胞が死滅している。
【実施例】
【0105】
このように、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を材料とする処理液は、濃度を選択すれば、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)にはほとんどダメージを与えずにiPS細胞のみを死滅させることができる。この傾向は、AK03を用いた場合と同じである。この実験系においては、1倍以上30倍以下(図15のK2参照)に希釈した処理液を用いるとよい。
【実施例】
【0106】
このように、第1の水溶液としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を用いた場合に、非常に強い選択性が出た。つまり、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を材料とする処理液は、通常の細胞にはダメージをほとんど与えずに、未分化のiPS細胞のみを死滅させた。
【実施例】
【0107】
6.実験F(細胞数依存性)
6-1.実験方法
6-1-1.処理液の作製
処理液の作製方法は、実験Aと同様である。つまり、第1の水溶液としてAK03を用いた。
【実施例】
【0108】
6-1-2.未分化iPS細胞の培養
未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養方法については、実験Aと同様である。ただし、ここでは96ウェルプレートを用いて、それぞれのウェルに異なる細胞数のiPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を培養した。
【実施例】
【0109】
6-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。ここで、処理液については、1倍、2倍、4倍等に希釈したものを用いる。そして、処理液による処理時間は、24時間である。
【実施例】
【0110】
6-2.実験結果
図16は、細胞数5000に対する処理液の効果を示すグラフである。図16に示すように、1倍から4倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞はいずれもほとんど死滅している。8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は60%程度生存しているのに対し、iPS細胞はほぼ完全に死滅している。16倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は80%程度が死滅している。32倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は40%程度が死滅している。64倍以上に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞のいずれもが100%程度生存している。
【実施例】
【0111】
細胞数が5000個の場合には、8倍希釈から16倍希釈程度の処理液(図16のK3参照)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0112】
図17は、細胞数20000に対する処理液の効果を示すグラフである。図17に示すように、1倍および2倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞はいずれもほとんど死滅している。4倍および8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞はほぼ完全に死滅している。16倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は70%程度が死滅している。32倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は20%程度が死滅している。64倍以上に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞のいずれもが100%程度生存している。
【実施例】
【0113】
細胞数が20000個の場合には、4倍希釈から8倍希釈程度の処理液(図17のK4参照)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0114】
図18は、細胞数50000に対する処理液の効果を示すグラフである。1倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞はいずれもほとんど死滅している。2倍および4倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞はほぼ完全に死滅している。8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は90%程度が死滅している。16倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は40%程度が死滅している。32倍以上に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞のいずれもが100%程度生存している。
【実施例】
【0115】
細胞数が50000個の場合には、2倍希釈から4倍希釈程度の処理液(図18のK5参照)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0116】
このように、処理する細胞数が多いほど、最適な希釈倍率は低い。つまり、処理する細胞数が多いほど、処理液の濃度を濃くすることが必要である。
【実施例】
【0117】
7.実験G(処理液への細胞の浸漬時間)
7-1.実験方法
7-1-1.処理液の作製
処理液の作製方法は、実験Aと同様である。
【実施例】
【0118】
7-1-2.未分化iPS細胞の培養
未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培養方法については、実験Aと同様である。
【実施例】
【0119】
7-1-3.未分化iPS細胞への処理
次に、処理液を未分化iPS細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の培地に供給する。ここで、処理液については、8倍、16倍、32倍等に希釈したものを用いる。そして、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞を処理液に浸漬する処理時間を変えて、それぞれの細胞の生存数を数えた。
【実施例】
【0120】
7-2.実験結果
図19は、細胞を処理液に浸漬する処理時間を1分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。図19に示すように、8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は100%程度生存しているのに対し、iPS細胞は40%程度死滅している。16倍以上に希釈した処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞のいずれも100%程度生存している。
【実施例】
【0121】
図20は、細胞を処理液に浸漬する処理時間を3分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。図20に示すように、8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は30%程度死滅しているのに対し、iPS細胞は70%程度死滅している。16倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は20%程度死滅しているのに対し、iPS細胞は60%程度死滅している。32倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)およびiPS細胞のいずれもそれほど死滅していない。
【実施例】
【0122】
図21は、細胞を処理液に浸漬する処理時間を5分とした場合の細胞の生存率を示すグラフである。図21に示すように、8倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は80%程度生存しているのに対し、iPS細胞は90%程度死滅している。16倍の処理液では、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)は90%程度生存しているのに対し、iPS細胞は80%程度死滅している。
【実施例】
【0123】
このように、細胞を処理液に浸漬する処理時間を5分以上とすれば、iPS細胞を選択的に死滅させることができる。また、本技術は、非常に短い処理時間で未分化iPS細胞を選択的に死滅させる処理を実行することができる。また、一度に大量の細胞を処理することができる。
【符号の説明】
【0124】
100、110…プラズマ照射装置
10、11…筐体部
10i、11i…ガス導入口
10o、11o…ガス噴出口
2a、2b…電極
P…プラズマ領域
H…凹部(ホロー)
P1…プラズマ照射装置
M1…ロボットアーム
PM…処理液製造装置
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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