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明細書 :経営支援システム及び経営支援方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-207229 (P2015-207229A)
公開日 平成27年11月19日(2015.11.19)
発明の名称または考案の名称 経営支援システム及び経営支援方法
国際特許分類 G06Q  10/00        (2012.01)
FI G06Q 10/00 110
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-088746 (P2014-088746)
出願日 平成26年4月23日(2014.4.23)
発明者または考案者 【氏名】松井 正之
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091904、【弁理士】、【氏名又は名称】成瀬 重雄
審査請求 未請求
テーマコード 5L049
Fターム 5L049AA01
要約 【課題】ユーザにおいて、経済性指標及び信頼性指標(いわば経営的データ)と、流入スピード及び流出スピード(いわば現場的データ)との関係を直感的にわかりやすく把握することができる経営支援システムを提供する。
【解決手段】データ受付部1と、復元行列推定部2とを備えている。データ受付部1は、流入スピードm及び流出スピードdと、経済性指標ER及び信頼性指標LTとの関係を示す観測データを受け付ける。復元行列推定部2は、流入スピードm及び流出スピードdに対応する座標軸と、経済性指標ER及び信頼性指標LTに対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定する。この経営支援システムは、経営的データと現場的データとの関係をユーザがリアルタイムで把握することにも役立つ。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
データ受付部と、復元行列推定部とを備えており、
前記データ受付部は、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを受け付ける構成となっており、
前記復元行列推定部は、前記流入スピード及び流出スピードに対応する座標軸と、前記経済性指標及び信頼性指標に対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定する構成となっている
経営支援システム。
【請求項2】
さらに逆推定部を備えており、
前記逆推定部は、前記復元行列と、前記経済性指標及び信頼性指標についての指定とに基づいて、前記流入スピード及び流出スピードの両方又は一方を算出する構成となっている
請求項1に記載の経営支援システム。
【請求項3】
前記復元行列は、少なくとも白色化行列と、戦略行列と、ユニタリ行列とに分解されるものであり、
前記戦略行列は、ユーザの希望に応じた内容に設定可能とされている
請求項1又は2に記載の経営支援システム。
【請求項4】
さらに出力部を備えており、
前記出力部は、前記流入スピード及び流出スピードと、前記経済性指標及び信頼性指標とを、それぞれに対応する座標軸が一致した状態で表示する構成となっている
請求項1~3のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【請求項5】
前記経済性指標は、収益に関するデータである、請求項1~4のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【請求項6】
前記信頼性指標は、リードタイムに関するデータである、請求項1~5のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【請求項7】
前記流出スピードは、POSデータを用いて算出されたものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【請求項8】
前記流入スピードは、POPデータを用いて算出されたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【請求項9】
装置を用いて実行される経営支援方法であって、
流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを受け付けるステップと、
前記流入スピード及び流出スピードに対応する座標軸と、前記経済性指標及び信頼性指標に対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定するステップと
を備える経営支援方法。
【請求項10】
請求項9に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、経営を支援するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマネジメントシステムにおいては、JIT、TQC、TPMなどの改善アプローチが多くの場合において取られている。改善アプローチでは、改善目標や問題点を見つけ、これに対応するシステムや方法を改善することで、費用の減少に伴う利益の拡大を指向している。しかしながら、この改善アプローチで得られる手法は、部分的に(例えば費用等が)最善であっても、企業経営全体として(例えば利益等が)最善のものとは限らない。
【0003】
この問題に鑑みて提案された手法として、サプライチェーンマネジメント(SCM)がある。これは、制約条件の理論(TOC)と組み合わされて全体最適化を指向するが、改善アプローチの一種であり、戦略的・理論的に弱いという問題がある。
【0004】
そこで、本発明者は、下記特許文献1に記載の技術を提案している。この技術では、ゲーム的に(すなわちせめぎ合いで)、利益(スループット)等の経済性の最大化と、リードタイム等の信頼性の向上とを図ることができる。
【0005】
下記特許文献1の概要は次の通りである。需要戦略としての平均到着間隔時間(流出スピード)dと、生産戦略としての平均処理時間(流出スピード)mとを、それぞれ縦軸と横軸とに取る。単位時間当たりの平均収益利得(経済性指標)ER、単位時間当たりの平均運用費用EC、平均正味利得(限界利益)EN(=ER-EC)、経済的リードタイム(信頼性指標)LTなどのマネジメントデータを、前記したd,mの値に対応して表示する。
【0006】
下記特許文献1の技術によれば、現状の入出力位置(d,mによって定まる位置)から理想あるいは目標の戦略位置へ近づけるために、そのプロセス(移行過程)を見つけることもできる。
【0007】
ところで、利得ERや費用ECのデータを取得するための基礎となる、前記した平均到着間隔時間dや平均処理時間mを取得するためには、常識的には、次のような方法となる。すなわち、ある具体例(例えば工場)における到着分布と処理分布とを予め取得しておき、これらの統計的データに基づいてdやmを推測することになる。
【0008】
しかしながら、予め統計的に分布データを取得しておき、これに基づいて計算する方法は、統計的に有意となるためのデータ数を予め確保しなければならず準備が大変である。また、この方法は、処理が複雑で計算量が増えるので、コンピュータの処理時間が長くなるという問題も生じる。
【0009】
そこで、本発明者は、下記特許文献2において、マネジメントのためのデータを簡便に取得することができる、マネジメントデータの管理方法を提案した。
【0010】
下記特許文献2に記載の手法では、利得ERや費用ECのデータと、平均到着間隔時間dや平均処理時間mとの関係を、図形的に算出することができ、算出が容易となるという利点がある。
【0011】
しかしながら、下記特許文献2の手法でも、利得ERや費用ECのデータと、平均到着間隔時間dや平均処理時間mとの関係を、リアルタイムで、ユーザにわかりやすく表示することは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2002-49449号公報
【特許文献2】特開2002-197261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、ユーザにおいて、経済性指標及び信頼性指標(いわば経営的データ)と、流入スピード及び流出スピード(いわば現場的データ)との関係を直感的にわかりやすく把握することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0015】
(項目1)
データ受付部と、復元行列推定部とを備えており、
前記データ受付部は、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを受け付ける構成となっており、
前記復元行列推定部は、前記流入スピード及び流出スピードに対応する座標軸と、前記経済性指標及び信頼性指標に対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定する構成となっている
経営支援システム。
【0016】
ここで、本発明における「経営」は、いわゆる企業体の運営に限られるものではなく、工場、事業所あるいは売り場などの各種の管理体の運営や管理を含む概念として用いる。
【0017】
(項目2)
さらに逆推定部を備えており、
前記逆推定部は、前記復元行列と、前記経済性指標及び信頼性指標についての指定とに基づいて、前記流入スピード及び流出スピードの両方又は一方を算出する構成となっている
項目1に記載の経営支援システム。
【0018】
(項目3)
前記復元行列は、少なくとも白色化行列と、戦略行列と、ユニタリ行列とに分解されるものであり、
前記戦略行列は、ユーザの希望に応じた内容に設定可能とされている
項目1又は2に記載の経営支援システム。
【0019】
(項目4)
さらに出力部を備えており、
前記出力部は、前記流入スピード及び流出スピードと、前記経済性指標及び信頼性指標とを、それぞれに対応する座標軸が一致した状態で表示する構成となっている
項目1~3のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【0020】
(項目5)
前記経済性指標は、収益に関するデータである、項目1~4のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【0021】
(項目6)
前記信頼性指標は、リードタイムに関するデータである、項目1~5のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【0022】
(項目7)
前記流出スピードは、POSデータを用いて算出されたものである、項目1~6のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【0023】
(項目8)
前記流入スピードは、POPデータを用いて算出されたものである、項目1~7のいずれか1項に記載の経営支援システム。
【0024】
(項目9)
装置を用いて実行される経営支援方法であって、
流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを受け付けるステップと、
前記流入スピード及び流出スピードに対応する座標軸と、前記経済性指標及び信頼性指標に対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定するステップと
を備える経営支援方法。
【0025】
(項目10)
項目9に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【0026】
このコンピュータプログラムは、適宜な記録媒体(例えばCD-ROMやDVDディスクのような光学的な記録媒体、ハードディスクやフレキシブルディスクのような磁気的記録媒体、あるいはMOディスクのような光磁気記録媒体)に格納することができる。このコンピュータプログラムは、インターネットなどの通信回線を介して伝送されることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ユーザにおいて、経済性指標及び信頼性指標(いわば経営的データ)と、流入スピード及び流出スピード(いわば現場的データ)との関係を直感的にわかりやすく把握することが可能となる。したがって、本発明によれば、経営的データを満足させる現場的データ、あるいは、現場的データを規定したときの経営的データを表示することにより、両者間のせめぎあいをユーザにわかりやすく呈示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態における経営支援システムの概略を説明するためのブロック図である。
【図2】図1の装置を用いた経営支援方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】経済性指標及び信頼性指標と、流入スピード及び流出スピードとに関する観測データ(いわゆるペアマップ)の一例を示す説明図である。
【図4】図3に示したペアマップの別の例(他の生産タイプの例)を示す説明図である。
【図5】ペアマップにおいて、経済性指標及び信頼性指標を示すZ軸と、流入スピード及び流出スピードを示すL軸を例示的に示す説明図である。
【図6】復元行列を推定する手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】白色化信号の一例を概念的に示す説明図である。
【図8】戦略行列の一例を示す説明図である。
【図9】分離信号の一例を概念的に示す説明図である。
【図10】源信号の一例を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る経営支援システム(以下単に「システム」と略称することがある)の構成を、図1を参照しながら説明する。

【0030】
(本実施形態の構成)
本実施形態のシステムは、データ受付部1と、復元行列推定部2とを備えている。さらに、このシステムは、逆推定部3と、出力部4とを追加的要素として備えている。

【0031】
(データ受付部)
データ受付部1は、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを受け付ける構成となっている。

【0032】
本実施形態における経済性指標は、収益(ER)に関するデータである。また、本実施形態における信頼性指標は、リードタイム(LT)に関するデータである。なお、経済性指標としては、何らかのサイクル性を有する、経済性を示す値であればよい。信頼性指標としては、何らかのスパン(サイクル数)を示す、信頼性に関する値であればよい。収益は売上高又は利得と呼ばれることもある。一般に、
EN=ER-EC
として表される。

【0033】
ここで、
EN:利益
EC:コスト
である。

【0034】
収益及びリードタイムという用語の意味は、この分野ではよく知られているので、これについての詳しい説明は省略する(参考文献1:M. Matsui, "An enterprise-aided theory and logic for real-time management", International Journal of Production Research, Volume 51, Issue 23-24, 2013)。

【0035】
プルタイプ(見込生産のタイプ)であることを仮定すると、本実施形態における流出スピード(d)は、POS(Point of Sale)データを用いて算出されたものである。また、本実施形態における流入スピード(m)は、POP(Point of Production)データを用いて算出されたものである。流出スピードdは、需要スピードと呼ばれることもある。また、流入スピードmは、生産スピードと呼ばれることもある。ただし、プッシュタイプ(受注生産のタイプ)では、対応関係が逆になる。これらの用語の意味も、この分野ではよく知られているので、これについての詳しい説明は省略する(前記した参考文献1参照)。

【0036】
データ受付部1の動作の詳細は後述する。

【0037】
(復元行列推定部)
復元行列推定部2は、流入スピード及び流出スピードに対応する座標軸と、経済性指標及び信頼性指標に対応する座標軸とを一致させるための復元行列を推定する構成となっている。

【0038】
本実施形態の復元行列は、少なくとも白色化行列と、戦略行列と、ユニタリ行列とに分解されるものである。戦略行列は、ユーザの希望に応じた内容に設定可能とされている。

【0039】
なお、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係が既知のときは、復元行列の推定は同定と呼ばれるが、この明細書では同定は推定の一種であるとして扱う。

【0040】
本実施形態における復元行列推定部2の動作の詳細も後述する。

【0041】
(逆推定部)
逆推定部3は、復元行列と、経済性指標及び信頼性指標についての指定とに基づいて、流入スピード及び流出スピードの両方又は一方を算出する構成となっている。

【0042】
本実施形態における逆推定部3の動作の詳細も後述する。

【0043】
(出力部)
出力部4は、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標とを、それぞれに対応する座標軸が一致した状態で表示する構成となっている。

【0044】
出力部4としては、例えば、ユーザに画像を呈示できるディスプレイであるが、これに限らず、例えばプリンタのような出力装置であってもよい。要するに、出力部4としては、ユーザに必要な情報を伝達できる機能を備えていればよい。

【0045】
(本実施形態の動作)
次に、前記した本実施形態の装置を用いて実行される経営支援方法を、図2をさらに参照しながら説明する。

【0046】
(図2のステップSA-1)
まず、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データを、データ受付部1が受け付ける。そのようなデータの一例を、基準例として図3に示す。この図の横軸は流入(供給)スピードm、縦軸は流出(需要)スピードdを表している。図4は、図3とは異なる生産タイプにおける観測データの例である。図3及び図4における具体的データを捨象して抽象化した図を図5に示す。

【0047】
図3では、特定のd、mに対応するER(収益),EC(コスト),EN(利益),LT(リードタイム)の値が示されている。さらに図3では、MI(情報量)及びPS(設定価格)の値も示されている。図4におけるパラメータc2は、需要スピードに関係しており、パラメータi2は、生産スピードに関係している。

【0048】
前記特許文献1及び参考文献1において発明者が示したように、ERを基準とすると、ERが最大となるER極大値11と、ER極小値12とが存在する(図5参照)。そして、経営戦略は、これら二つの極値11及び12を含む楕円10の中から通常は選ばれる。つまり、経営戦略は、概ね、極値11と12とを結ぶ軸Z(図5参照)に沿って動くと想定できる。なお、図5の極値12は、コスト最少の点であるが、通常はコスト最少点≒収益最少点であることが知られている。

【0049】
同様に、前記特許文献1及び参考文献1において発明者が示したように、LTを基準とすると、LTが最大となるLT極大値21と、LT極小値22とが存在する(図5参照)。そして、生産戦略は、これら二つの極値21及び22を含む楕円20の中から通常は選ばれる。つまり、生産戦略は、概ね、極値21と22とを結ぶ軸L(図5参照)に沿って動くと想定できる。

【0050】
そして、本発明者の知見によれば、利益が最大となる点13は、概略的な傾向として、軸Zと軸Lとの交点近傍にある(前記参考文献1参照)。

【0051】
(図2のステップSA-2)
次に、流入スピードm及び流出スピードdに対応する座標軸と、経済性指標ER及び信頼性指標LTに対応する座標軸とを一致させるための復元行列を、復元行列推定部2が推定する。復元行列推定の具体例を、図6をさらに参照しながら説明する。

【0052】
(図6のステップSB-1)
まず前提として、図5に示される観測データを観測信号とみなすことができる。そこで、この観測信号に相関行列(白色化行列)Vを乗じることで、白色化を行う。白色化された信号をTとし、観測信号をXとすると、
T=VX
と表せる。ここでXは、d,mを要素とするベクトルとみることもできる。白色化された状態を模式的に図7に示す。なお、この白色化という数学的操作自体は、既存の独立成分分析の場合と同様の概念なので、この操作自体についての詳しい説明は省略する。なお、本明細書に示されるベクトル演算式は、あくまで例示であり、例えば乗算順序を制約する目的のものではない。これらのベクトル演算式は、あくまで、概念理解のための例示に過ぎない。

【0053】
(図6のステップSB-2)
ついで、白色化信号Tに分離行列Uを乗じることで、分離信号Yを得る。これにより、図5に示すZ軸をd軸に平行とし、L軸をm軸に平行にすることができる。

【0054】
すなわち、分離信号Yは、
Y=VUX=PX
と表せる。前記した行列P(=VU)は、本発明における復元行列の一例である。ただし、後述するように、本実施形態では、さらに戦略行列を加味したものを復元行列として扱う。

【0055】
前記した分離行列Uはユニタリ行列として知られている。また、このような軸の回転も、既存の独立成分分析と同様の概念なので、この回転操作についての詳しい説明は省略する。

【0056】
(図6のステップSB-3)
ついで、本実施形態では、戦略行列Sを設定する。なお、図6では、ステップSB-2の後に戦略行列を設定しているが、この設定のタイミングは任意である。ユーザは、あらかじめ戦略行列を設定しておいてシステムに登録しておいてもよいし、戦略行列を必要に応じて変更して使用してもよい。あるいはシステムの設定により、戦略行列を動的にシステム側で生成して適用することも可能である。後述する逆推定の際に戦略行列を設定することも可能である。

【0057】
戦略行列の一例を図8に示す。これはあくまで一例であり、戦略目的に応じて様々な形態をとりうる。

【0058】
(図6のステップSB-4)
ついで、本実施形態では、行列Pに戦略行列Sを乗じて得られる行列Qを復元行列として扱う。前記したように、乗算順序は制約されず、例えば、
Q=VSU
のように設定可能である。

【0059】
(図2のステップSA-3)
ついで、出力部4は、分離信号として表現される空間(図9参照)を、解空間(以下これを「松井コンパス」と呼ぶ)として出力する。この出力は、通常、ユーザに知覚できる形態で行われるが、何らかのシステムへの入力として扱われるようなものであってもよい。

【0060】
(図2のステップSA-4)
ついで、ユーザは、図9に示されるような状況を見ながら、適切と思われる指標データをシステム側の逆推定部3に入力する。指標データとは、経営目標となるようなERやLTの値である。すると、逆推定部は、前記のようにして推定された復元行列Qを用いて(つまり逆行列を用いて)、目標値を達成するようなd、mの値を推定することができる。これにより、経営戦略に応じて、生産現場への、ほぼリアルタイムでの制御が可能になる。なお、前記したように、通常、経営目標は利益の最大化であり、その点は図5のZ軸とL軸との交点近傍にある。したがって、本実施形態では、指標データとして、そのような条件を図形的に満たしそうなERやLTの値を用いることが可能になる。

【0061】
一方、本実施形態では、仮想的な(または予測の)観測データd、mを入力して、前記した復元行列Qを用いてERやLTの値を動的に推定し、図9のように表示することもできる。これにより、生産現場の状況を優先させたときのERやLTの値(あるいはそれと利益最大点との関係)を、経営者にとって判断しやすい形態で、図形的に表示することができる。したがって、本実施形態では、企業全体としての経営目標に当該d、mが整合するかどうかをリアルタイムで判断することも可能となるという利点がある。

【0062】
さらに、本発明者が明らかにしたように(前記参考文献1)、企業の資産Wは、以下の式(松井の式)であらわされる。
W=ZL
ここで
Z(ER)=EC+EN
L:リードタイム
である。

【0063】
この式で得られるWを考慮してER,LTあるいはd、mの目標値を設定することも可能である。ここで、サイクル値であるERは、dの一サイクルあたりの値であることに注意する。

【0064】
したがって、本実施形態では、経営側の経営目標と、生産現場の状況とのせめぎあいを調整するいわば羅針盤(松井コンパス)を、図9のようにして表示し、d、mやER,LTのような指標を適宜両側から(経営側及び生産側)入力して、企業の状態を経営目標に近づけることができる。

【0065】
図10に、未知の源信号の一例を示す。この図では、信号S1及びS2はいずれもd,mの関数である。そして、ある特定のS1の値の上にLTの軸があり、その軸を中心としてLTの値が時間的に変動する。同様に、ある特定のS2の値の上にERの軸があり、その軸を中心としてERの値が時間的に変動する。このような関係を直接に測定することは一般的には難しい。これに対して本実施形態によれば、前記した通り、観測信号を用いて、図9のような分離信号(解空間)をユーザに提示することができる。ユーザは、源信号が未知であったとしても、この解空間(松井コンパス)を見ながら、前記したような経営判断が可能となる。ここで、図10では、2種類の源信号S1,S2を仮定しているが、信号の数は3以上であってもよい。同様に、流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データの種類の数も、特に制約されない。

【0066】
前記した実施形態の動作は、コンピュータに適宜のコンピュータソフトウエアを組み込むことにより実施することができる。

【0067】
なお、本発明の内容は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、具体的な構成に対して種々の変更を加えうるものである。

【0068】
例えば、本発明の適用対象は、経営体のみではなく、その一部である管理体であってもよい。この場合、前記した流入スピード及び流出スピードと、経済性指標及び信頼性指標との関係を示す観測データは、対象である管理体の性質に応じて決定できる。要するに、本発明は、入出力関係を持つ各種の管理対象への適用可能性を持っている。

【0069】
前記した実施形態における各構成要素は、機能ブロックとして存在していればよく、独立したハードウエアとして存在しなくても良い。また、実装方法としては、ハードウエアを用いてもコンピュータソフトウエアを用いても良い。さらに、本発明における一つの機能要素が複数の機能要素の集合によって実現されても良く、本発明における複数の機能要素が一つの機能要素により実現されても良い。

【0070】
また、機能要素は、物理的に離間した位置に配置されていてもよい。この場合、機能要素どうしがネットワークにより接続されていても良い。グリッドコンピューティング又はクラウドコンピューティングにより機能を実現し、あるいは機能要素を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 データ受付部
2 復元行列推定部
3 逆推定部
4 出力部
10 ERについての楕円
11 ER極大値
12 ER極小値
13 利益が最大となる点
20 LTについての楕円
21 LT極大値
22 LT極小値
d 流出(需要)スピード
m 流入(生産)スピード
EC 費用
ER 利得(経済性指標)
LT リードタイム(信頼性指標)
Q 復元行列
S 戦略行列
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9