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明細書 :多剤排出ポンプ阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-105714 (P2017-105714A)
公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
発明の名称または考案の名称 多剤排出ポンプ阻害剤
国際特許分類 C07C 237/40        (2006.01)
C07D 277/44        (2006.01)
A61K  31/426       (2006.01)
C07D 417/12        (2006.01)
A61K  31/427       (2006.01)
A61K  31/167       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  31/496       (2006.01)
A61K  31/407       (2006.01)
A61K  31/702       (2006.01)
FI C07C 237/40 CSP
C07D 277/44
A61K 31/426
C07D 417/12
A61K 31/427
A61K 31/167
A61P 43/00 111
A61P 31/04
A61K 45/00
A61K 31/496
A61K 31/407
A61K 31/702
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 31
出願番号 特願2015-238703 (P2015-238703)
出願日 平成27年12月7日(2015.12.7)
発明者または考案者 【氏名】山口 明人
【氏名】加藤 修雄
【氏名】井上 雄太
【氏名】山崎 聖司
【氏名】樋口 雄介
【氏名】櫻井 啓介
【氏名】中島 良介
【氏名】西野 邦彦
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4C033
4C063
4C084
4C086
4C206
4H006
Fターム 4C033AD15
4C033AD17
4C033AD20
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC62
4C063DD25
4C063EE01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC82
4C086GA01
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB35
4H006AA01
4H006AB29
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BU32
4H006BU46
4H006BV25
4H006BV72
4H006BV73
要約 【課題】多剤排出ポンプの排出能を阻害する活性を有する化合物、及び当該化合物を有効成分とする医薬用組成物の提供。
【解決手段】一般式(I)[式中、Rは、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、アミノ基又は水素原子を表し、nは1~4の整数を表し、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。]で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[化1]
JP2017105714A_000015t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】
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[式(I)中、Rは、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、アミノ基又は水素原子を表し、nは1~4の整数を表し、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。]
で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
前記Rが1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基である、請求項1に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
が、無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基であり、nが3又は4である、請求項1又は2に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(H-31)、(H-32)、(H-34)~(H-37)、(H-39)、(H-46)、(H-47)、(H-50)、又は(H-51)
【化2】
JP2017105714A_000013t.gif
【化3】
JP2017105714A_000014t.gif
で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とし、多剤排出ポンプの薬剤排出能を阻害する活性を有する、多剤排出ポンプ阻害剤。
【請求項6】
MexBの薬剤排出能とMexYの薬剤排出能の両方を阻害する活性を有する、請求項5に記載の多剤排出ポンプ阻害剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とする、医薬用組成物。
【請求項8】
細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられる、請求項7に記載の医薬用組成物。
【請求項9】
さらに、1種又は2種以上の抗細菌剤を含有する、請求項8に記載の医薬用組成物。
【請求項10】
前記細菌感染症の病原細菌が、グラム陰性菌である、請求項8又は9に記載の医薬用組成物。
【請求項11】
前記細菌感染症の病原細菌が、緑膿菌である、請求項8又は9に記載の医薬用組成物。
【請求項12】
前記細菌感染症の病原細菌が、抗細菌剤に対する耐性を獲得した細菌である、請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌感染症、特に多剤耐性細菌感染症の予防又は治療に有用な化合物、より詳細には、多剤耐性細菌に高発現している多剤排出ポンプの排出能に対する阻害能を有する化合物、及び当該化合物を有効成分とする医薬用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌による感染症の予防や治療のために、現在までに多くの抗細菌剤が開発され、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、キノロン系、マクロリド系、テトラサイクリン系等の化合物が医薬として実用化されて来た。しかし、近年では、これらの抗細菌剤に対する耐性細菌の出現が、臨床現場で重大な問題になっている。薬剤耐性細菌による感染症の中でも、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)、カルバペネム耐性腸球菌(CRE)等のグラム陰性多剤耐性菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等のグラム陽性多剤耐性菌とは異なり、対処できる治療薬がほとんど無い。このため、グラム陰性多剤耐性菌による院内感染が大きな問題となっている。グラム陰性多剤耐性菌の感染症に対し、新たな抗細菌剤により対処する方法では、新たな耐性細菌の出現を招くおそれがあり、根本的な解決方法とはなりにくい。多剤耐性グラム陰性細菌感染症克服のためには、新規な概念に基づく予防/治療戦略の創出が喫緊の課題として、社会的に要請されている状況がある。
【0003】
細菌の多剤耐性化は、複数の耐性因子の獲得によって生じる。耐性因子の獲得の態様としては、例えば、カルバペネマーゼの産生やDNAジャイレース変異の蓄積等がある。これらの耐性因子の個々の耐性スペクトルははっきりしているのに対して、近年の多剤耐性細菌は、非常に広範な、ほとんど全ての抗生物質に耐性を示す点に特徴がある。グラム陰性細菌におけるこのような広範囲な多剤耐性の基礎になっているのは、多剤排出システムの高発現である。グラム陰性細菌の多剤排出システムは、マルチコンポーネント型排出タンパク質複合体であり、大腸菌におけるAcrAB-TolCや緑膿菌におけるMexAB-OprM及びMexXY-OprM等が知られている。これらのうち、AcrB、MexB、及びMexYが、グラム陰性細菌内膜上に存在するRND(resistance/nodulation/division)型多剤排出ポンプであり、プロトン駆動力を利用して多様な薬剤を排出する(非特許文献1)。これらの多剤排出ポンプによる薬剤の排出は、細菌体中の薬剤濃度を低下させて薬剤への感受性を著しく減ずるという直接的効果に加えて、低濃度の薬剤環境下に他の耐性因子を獲得する機会を与えるという間接的効果をもたらし、細菌の多剤耐性化の要因となっている。
【0004】
以上の背景から、多剤耐性化の要因となっている多剤排出ポンプの排出能を阻害することによって既存の抗細菌剤を有効にする併用剤なる概念が提出され、その開発がなされて来た。例えば、ピリドピリミジンを母核とするABI-PP(D13-9001)が、大腸菌のAcrB及び緑膿菌のMexBの排出能を阻害し、既知抗細菌剤に対する細菌の感受性を高めることが報告されている(特許文献1)。また、フェニルアラニン、アルギニン、及び3-アミノキノリンがアミド結合によって連結したオリゴペプチド型化合物(PAβN)並びにその関連化合物(特許文献2~5)や、分子両端にアミジン基を有する化合物群(ペンタアミジン類)(特許文献6及び7)が、多剤排出ポンプが高発現している緑膿菌株に対する既知抗細菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を低下させることが報告されている。しかしながら、これらの化合物はいずれも医薬応用には至っておらず、現在までに、多剤排出能阻害剤の医薬としての応用例は皆無である。
【0005】
近年、合理的医薬分子設計(ラショナルドラッグデザイン)が創薬における重要なアプローチとして認識されるに至っている。特に、薬剤標的となるタンパク質の3次元構造情報を結晶構造解析によって明らかにし、その立体構造情報に基づく医薬設計(SBDD)が確度の高い手法として盛んに試みられている。SBDDのためには、薬剤と標的タンパク質の共結晶構造を取得する必要があるが、膜タンパク質である多剤排出ポンプの結晶構造の取得は困難である。本発明者らは世界に先駆けてAcrBの結晶構造解析に成功し(非特許文献2)、また、AcrBの基質となり排出される数種の既知抗細菌剤とAcrBの共結晶構造解析も達成し、多剤排出ポンプの薬剤排出機構を分子レベルで解明することに世界で初めて成功した(非特許文献3及び4)。更に、排出阻害剤ABI-PP(D13-9001)とMexBとの共結晶構造解析を行い、阻害剤の結合ポケットの存在を明らかにし、ABI-PPが緑膿菌のもう一つの多剤排出ポンプであるMexYの排出能を阻害できない構造的要因も明らかにした(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-322054号公報
【特許文献2】国際公開第2005/113579号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0076741号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/141010号
【特許文献5】国際公開第2008/141012号
【特許文献6】国際公開第2005/089738号
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0132457号明細書
【0007】

【非特許文献1】Yamaguchi et al.,Frontiers in Microbiology,2015,vol.6,Article 327.
【非特許文献2】Murakami et al.,Nature,2002,vol.419,p.587-593.
【非特許文献3】Murakami et al.,Nature,2006,vol.443,p.173-179.
【非特許文献4】Nakashima et al.,Nature,2011,vol.480,p.565-569.
【非特許文献5】Nakashima et al.,Nature,2013,vol.500,p.102-106.
【非特許文献6】Nishino et al.,Journal of Infection and Chemotherapy,2008,vol.14,p.23-29.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多剤排出ポンプの排出能を阻害する活性を有する化合物、特に、緑膿菌が有する2種類の多剤排出ポンプMexB及びMexYの両方に対する排出能阻害活性を有する化合物、及び当該化合物を有効成分とする医薬用組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る化合物、多剤排出ポンプ阻害剤、及び医薬用組成物は、下記[1]~[12]である。
[1] 下記一般式(I)
【0010】
【化1】
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【0011】
[式(I)中、Rは、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、アミノ基又は水素原子を表し、nは1~4の整数を表し、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。]
で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[2] 前記Rが1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基である、前記[1]の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[3] Rが、無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基であり、nが3又は4である、前記[1]又は[2]の化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[4] 前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(H-31)、(H-32)、(H-34)~(H-37)、(H-39)、(H-46)、(H-47)、(H-50)、又は(H-51)
【0012】
【化2】
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【0013】
【化3】
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【0014】
で表される化合物である、前記[1]~[3]のいずれかの化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかの化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とし、多剤排出ポンプの薬剤排出能を阻害する活性を有する、多剤排出ポンプ阻害剤。
[6] MexBの薬剤排出能とMexYの薬剤排出能の両方を阻害する活性を有する、前記[5]の多剤排出ポンプ阻害剤。
[7] 前記[1]~[4]のいずれかの化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち1種又は2種以上を有効成分とする、医薬用組成物。
[8] 細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられる、前記[7]の医薬用組成物。
[9] さらに、1種又は2種以上の抗細菌剤を含有する、前記[8]の医薬用組成物。
[10] 前記細菌感染症の病原細菌が、グラム陰性菌である、前記[8]又は[9]の医薬用組成物。
[11] 前記細菌感染症の病原細菌が、緑膿菌である、前記[8]又は[9]の医薬用組成物。
[12] 前記細菌感染症の病原細菌が、抗細菌剤に対する耐性を獲得した細菌である、前記[8]~[11]のいずれかの医薬用組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化合物は、MexB及びMexYに代表されるグラム陰性菌が有するRND型多剤排出ポンプに対する阻害能を有する。このため、当該化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬用組成物は、多剤耐性緑膿菌に代表される多剤耐性グラム陰性細菌感染症の予防又は治療に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、試験例1において、H-31化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図2】図2は、試験例1において、H-32化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図3】図3は、試験例1において、H-34化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図4】図4は、試験例1において、H-36化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図5】図5は、試験例1において、H-37化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図6】図6は、試験例1において、H-31化合物を各濃度で添加した培地で各大腸菌株を培養した培地のOD600を経時的に測定した結果を示す。
【図7】図7は、試験例2において、臨床分離MDRP55株に対する、シプロフロキサシン(CPFX)とH-31化合物の併用時における最小発育阻止濃度(MIC)累積分布を示したグラフである。
【図8】図8は、試験例2において、臨床分離MDRP55株に対する、イミペネム(IPM)とH-31化合物の併用時におけるMIC累積分布を示したグラフである。
【図9】図9は、試験例2において、臨床分離MDRP55株に対する、アミカシン(AMK)とH-31化合物の併用時におけるMIC累積分布を示したグラフである。
【図10】図10は、試験例2において、臨床分離MDRP55株に対する、アズトレオナム(AZT)とH-31化合物の併用時におけるMIC累積分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
既知排出阻害剤ABI-PP(D13-9001)は、緑膿菌の2種の主要な多剤排出ポンプのうち、MexBに対して阻害能を有するのに対して、MexYの排出能を阻害できない(非特許文献5)。本発明者らは、ABI-PPがMexYの排出能を阻害できない理由は、ABI-PPとMexBとの共結晶構造解析の結果から、ABI-PPの分子中央にあるピリドピリミジン骨格が、MexYの阻害剤結合ポケット中に存在するトリプトファン残基と立体的に干渉せざるを得ないため、と推定した。そこで、本発明者らは、ABI-PPの分子中央にある双環性のピリドピリミジン骨格を単環性骨格に置き換えることが、MexBとMexYの排出能を同時に阻害するためには必須であると推察し、当該推察に基づき、MexBとMexYの両方の排出能に対する阻害能を有する化合物を開発した。

【0018】
本発明に係る化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。当該化合物は、MexBとMexYの両方のRND型多剤排出ポンプの薬剤排出能を同時に阻害するデュアル阻害能を有する。このため、一般式(I)で表される化合物は、多剤排出ポンプ阻害剤の有効成分とし得る。

【0019】
【化4】
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【0020】
一般式(I)中、Rは、チアゾール基、アダマンチル基、又は炭素原子数3~6のアルキル基を表す。Rが炭素原子数3~6のアルキル基の場合、当該アルキル基としては、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基(tert-ブチル基)、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、テキシル基等が挙げられる。

【0021】
がチアゾール基の場合、無置換のチアゾール基であってもよく、チアゾール基中の1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換された基であってもよい。チアゾール基中の1個の水素原子がアルキル基で置換されている場合、当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基(tert-ブチル基)が挙げられる。

【0022】
一般式(I)で表される化合物としては、多剤排出ポンプに対する排出能阻害活性がより高いことから、Rがチアゾール基であることが好ましく、1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されたチアゾール基であることがより好ましく、1個の水素原子が炭素原子数3~4のアルキル基で置換されたチアゾール基であることがさらに好ましく、1個の水素原子がt-ブチル基で置換されたチアゾール基であることがよりさらに好ましい。

【0023】
一般式(I)中、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。一般式(I)で表される化合物としては、Xが水素原子、塩素原子又は臭素原子であるものが好ましく、多剤排出ポンプに対する排出能阻害活性がより高いことから、Xが塩素原子又は臭素原子であるものがより好ましく、塩素原子であるものがさらに好ましい。

【0024】
一般式(I)中、Rは、アミノ基又は水素原子を表す。Rがアミノ基の場合、一般式(I)で表される化合物としては、Rのアミノ基の立体配置は、(R)体であってもよく、(S)体であってもよく、ラセミ体であってもよい。一般式(I)で表される化合物としては、多剤排出ポンプに対する排出能阻害活性がより高いことから、Rがアミノ基であるものが好ましい。

【0025】
一般式(I)中、nは1~4の整数を表す。

【0026】
一般式(I)中、Rは、1個の水素原子がアミジノ基で置換されていてもよいアミノ基又はイミダゾール基を表す。Rが無置換のアミノ基の場合、nは2、3、又は4が好ましく、3又は4がより好ましい。Rが、1個の水素原子がアミジノ基で置換されているアミノ基の場合、nは2、3、又は4が好ましく、3又は4がより好ましい。Rがイミダゾール基の場合、nは1又は2が好ましく、1がより好ましい。

【0027】
一般式(I)で表される化合物としては、多剤排出ポンプに対する排出能阻害活性がより高いことから、Rが無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基であり、かつnが3又は4である化合物が好ましく、Rが無置換のアミノ基であり、かつnが3若しくは4である化合物、又はRが1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基であり、かつnが3である化合物がより好ましく、Rが無置換のアミノ基であり、かつnが4である化合物がさらに好ましい。

【0028】
一般式(I)で表される化合物としては、Rが無置換のチアゾール基又は1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されたチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基であり、nが1~4の整数であり、Rが無置換のアミノ基、1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基又はイミダゾール基である化合物が好ましく、Rが1個の水素原子が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されたチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基であり、nが2、3、又は4の整数であり、Rが無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基である化合物がより好ましく、Rが1個の水素原子がt-ブチル基で置換されたチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、Rがアミノ基であり、nが3又は4であり、Rが無置換のアミノ基又は1個の水素原子がアミジノ基で置換されたアミノ基である化合物がさらに好ましい。

【0029】
一般式(I)で表される化合物としては、より具体的には、下記式(H-31)、(H-32)、(H-34)~(H-37)、(H-39)、(H-46)、(H-47)、(H-50)、又は(H-51)で表される化合物が挙げられる。

【0030】
【化5】
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【0031】
【化6】
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【0032】
一般式(I)で表される化合物は、例えば、下記反応式(A)に示す反応により、ベンズアミド誘導体のアミノ基とカルボン酸とを縮合剤存在下に縮合させることによって得られる。反応式(A)中、R、R、R、X及びnは、一般式(I)と同じである。当該反応において、カルボン酸中の反応性基は、予め保護基によって保護しておき、縮合反応後に脱保護することが好ましい。

【0033】
【化7】
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【0034】
例えば、一般式(I)で表される化合物のうち、Rが1個の水素原子がt-ブチル基で置換されたチアゾール基であり、Xが水素原子、塩素原子又は臭素原子であり、Rがアミノ基である化合物は、下記反応式(A-1)に示す反応のように、3-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)ベンズアミド(CAS Registry Number:1281772-26-6)、5-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミド(CAS Registry Number:1308582-83-3)、又は5-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)-2-ブロモベンズアミド(CAS Registry Number:1306544-17-1)に、カルボキシル基以外の反応性基が適切な保護基によって保護されたカルボン酸を、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)等の縮合剤存在下に縮合させた後、得られた縮合物中の保護基を脱保護することによって合成できる。側鎖のアミノ基の保護基としては、t-ブトキシカルボニル(Boc)基や9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基等の汎用されている物を用いることができ、これらの保護基の脱保護反応を常法により行うことができる。より詳細には、下記反応式(A-1)のうち、カルボン酸として、側鎖のアミノ基を保護したD-リシンを用いることにより式(H-31)の化合物が合成でき、側鎖のアミノ基を保護したL-リシンを用いることにより式(H-36)の化合物が合成でき、側鎖のアミノ基を保護したL-アルギニンを用いることにより式(H-32)の化合物が合成でき、側鎖のアミノ基を保護したL-オルニチンを用いることにより式(H-37)の化合物が合成できる。

【0035】
【化8】
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【0036】
また、例えば、一般式(I)で表される化合物のうち、Xが水素原子であり、R及びRを含む側鎖がD-リシンであることを共通構造とする化合物は、(R)-3-(2,6-ビス((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサンアミド)安息香酸を共通原料とすることで合成でき、1-アダマンチルアミンと縮合後、保護基を脱保護することにより式(H-47)の化合物が合成でき、ヘキシルアミンと縮合後、保護基を脱保護することにより式(H-50)が合成できる。なお、(R)-3-(2,6-ビス((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサンアミド)安息香酸は、3-アミノ安息香酸エチルと側鎖のアミノ基を保護したD-リシンとを2-クロロ-1-メチルピリジニウム ヨージドを用いて縮合した後、得られた縮合化合物のエチルエステルを水酸化リチウムで加水分解することによって合成できる。

【0037】
一般式(I)で表される化合物は、生理学的に許容される塩であっても、遊離形態の化合物と同様に多剤排出ポンプ阻害剤の有効成分とし得る。一般式(I)で表される化合物は、塩基性アミノ基を有しているため、当該化合物の生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸塩、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩が挙げられる。

【0038】
一般式(I)で表される化合物は、当該化合物又はその生理学的に許容される塩の溶媒和物であっても、遊離形態の化合物と同様に多剤排出ポンプ阻害剤の有効成分とし得る。当該溶媒和物を形成する溶媒としては、水、エタノール等が挙げられる。

【0039】
本発明に係る多剤排出ポンプ阻害剤は、一般式(I)で表される化合物を1種類のみ含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。また、本発明に係る多剤排出ポンプ阻害剤が含有する一般式(I)で表される化合物は、遊離形態のみであってもよく、遊離形態の化合物とその生理学的に許容される塩との両方であってもよく、遊離形態の化合物とその溶媒和物の両方であってもよく、生理学的に許容される塩とその溶媒和物の両方であってもよく、遊離形態の化合物とその生理学的に許容される塩とそれらの溶媒和物を全てであってもよい。

【0040】
本発明に係る多剤排出ポンプ阻害剤は、有効成分である一般式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物(以下、「本発明に係る化合物等」ということがある。)のみからなるものであってもよく、本発明に係る化合物等による多剤排出ポンプ阻害活性を損なわない限度において、各種添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、賦形剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、溶剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤としては、薬学上許容される物質であって、医薬の製剤化に使用されているものの中から適宜選択して使用することができる。

【0041】
本発明に係る化合物等は、医薬用組成物の有効成分としても好適である。本発明に係る医薬用組成物は、本発明に係る化合物等を1種類のみ含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。

【0042】
本発明に係る化合物等は、グラム陰性細菌の有するRND型多剤排出ポンプの薬剤排出能に対する阻害能を有するため、1種又は2種以上の抗細菌剤と併用した場合に、病原細菌の当該抗細菌剤に対する感受性を増大させ、得られる治療効果を増強することができる。すなわち、本発明に係る化合物等と併用投与することにより、必要な治療効果を得るために必要な抗細菌剤の投与量を、単独投与した場合よりも減少させることができる。抗細菌剤の服用量の低用量化により、本発明に係る化合物等は、細菌の抗細菌剤に対する耐性化を抑制することもできる。さらに、本発明に係る化合物等は、抗細菌剤に対して耐性を獲得した細菌に作用して、多剤排出ポンプの排出能を阻害し、脱耐性化させることもできる。

【0043】
したがって、本発明に係る化合物等を有効成分とする医薬用組成物は、細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられるものが好ましく、少なくとも1種類の抗細菌剤に対する耐性を獲得した細菌が病原細菌である細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられるものがより好ましく、多剤耐性細菌が病原細菌である細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられるものがさらに好ましい。

【0044】
本発明に係る医薬用組成物の適用対象となる細菌感染症の種類は特に限定されるものではない。本発明に係る医薬用組成物の適用対象としては、グラム陰性細菌感染症(病原細菌がグラム陰性菌である細菌感染症)が好ましく、緑膿菌、アシネトバクター、又は腸球菌が病原細菌である細菌感染症がより好ましく、緑膿菌が病原細菌である細菌感染症がさらに好ましく、多剤耐性緑膿菌が特に好ましい。

【0045】
本発明に係る医薬用組成物は、ヒトやヒト以外の動物に投与されることが好ましい。ヒト以外の動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。

【0046】
抗細菌剤としては、現在までに多様な構造の化合物が知られており、多数の化合物が医薬品として臨床に供されている。本発明に係る医薬用組成物とともに投与可能な抗細菌剤の種類としては特に限定されるものではない。当該抗細菌剤としては、例えば、ペニシリン(ペナム)系、セファロスポリン(セフェム)系、オキサセフェム系、ペネム系、カルバペネム系等の双環性β-ラクタム系抗細菌剤、モノバクタム系等の単環性β-ラクタム系抗細菌剤、アミノグリコシド系抗細菌剤、マクロライド系抗細菌剤、クロラムフェニコール系抗細菌剤、テトラサイクリン系抗細菌剤、グリコペプチド系抗細菌剤、ホスホマイシン系抗細菌剤、リンコマイシン系抗細菌剤、さらには、サルファ剤、パラアミノサリチル酸製剤、イソニコチン酸ヒドラジド製剤、及びキノロン系等の合成抗細菌剤等を挙げることができる。

【0047】
本発明に係る医薬用組成物は、本発明に係る化合物等に加えて、その他の有効成分を含有していてもよい。本発明に係る医薬用組成物が、細菌感染症の予防及び/又は治療に用いられる組成物である場合、本発明に係る医薬用組成物が含有することが好ましい有効成分としては、例えば、抗細菌剤、βラクタマーゼ阻害剤等の抗細菌剤への耐性化を抑制する機能を有する薬剤等が挙げられる。本発明に係る医薬用組成物がさらに1種又は2種以上の抗細菌剤を含有する場合、当該抗細菌剤としては、本発明に係る医薬用組成物とともに投与可能な抗細菌剤として列挙されたものを挙げることができる。本発明に係る化合物等と抗細菌剤を組み合わせて投与することにより、細菌感染症に対して極めて高い治療効果を達成することができる。

【0048】
本発明に係る医薬用組成物は、有効成分である本発明に係る化合物等を、製剤学的に許容される製剤用添加物の1種又は2種以上と混合し、製剤学の分野において公知の製剤方法に従って、動物への投与に適した剤型に製剤化することができる。製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、溶剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤(界面活性剤)、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、可塑剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0049】
本発明に係る医薬用組成物の動物への投与方法は、特に限定されるものではなく、その剤型も特に限定されるものではない。経口投与に適する剤型としては、例えば、カプセル剤、散剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、乳剤、シロップ剤、溶液剤、懸濁剤等を挙げることができ、非経口投与に適する剤型としては、例えば、吸入剤、噴霧剤、直腸内投与剤、注射剤、点滴剤、軟膏、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、テープ剤、貼付剤等を挙げることができる。

【0050】
経口投与に適する医薬組成物のうち、例えば乳剤及びシロップ剤等の液体製剤は、水;蔗糖、ソルビット、果糖等の糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類;p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤;ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等の製剤用添加物を用いて製造することができる。カプセル剤、錠剤、散剤、及び顆粒剤等の固形製剤は、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニット等の賦形剤;澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤等を用いて製造することができる。

【0051】
非経口投与に適する医薬組成物のうち、注射剤、点滴剤、点眼剤等の液体製剤は、好ましくは滅菌された等張の液体製剤として調製することができる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、又は塩水とブドウ糖溶液との混合物からなる水性媒体を用いて調製することができる。直腸内投与剤は、例えばカカオ脂、水素化脂肪又は水素化カルボン酸等の担体を用いて、通常は座剤の形態として調製することができる。また、噴霧剤の調製には、有効成分である上記の物質を微細な粒子として分散させて吸収を容易にする非刺激性の担体を用いることができる。このような担体として、例えば、乳糖、グリセリン等を挙げることができ、製剤の形態としてはエアロゾルやドライパウダー等の形態を選択することが可能である。

【0052】
本発明に係る医薬用組成物の投与量及び投与回数は特に限定されず、本発明に係る化合物の作用効果が充分に発揮されるように、細菌感染症の種類や重篤度、投与対象の生物種、性別、年齢、体重、基礎疾患の有無、投与の形態等に応じて、適宜設定することができる。
【実施例】
【0053】
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
(R)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロ-5-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)ベンズアミド(式(H-31)で表される化合物、以下「H-31化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0055】
(1) 30mLナスフラスコにNα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシン(215mg、0.62mmol、1.3eq)をジクロロメタンに溶解し、ジクロロメタンに溶解した1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI;151mg、0.79mmol、1.6eq)を滴下した。次に、ジクロロメタンに溶解した市販の5-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミド(152mg、0.49mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液を1M塩酸水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、酢酸エチルとジエチルエーテルの混合溶媒で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の抽出溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)を2回行い、縮合物(200mg,0.31mmol)を得た。収率は64%であった。得られた縮合物に対して、NMR解析と質量分析を行った。
【実施例】
【0056】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ11.29(br,1H),9.39(brs,1H),7.67(d,J=8.7Hz,1H),7.18(brm,1H),7.12(d,J=8.7Hz,1H),6.94(brs,1H),6.61(s,1H),4.55(brm,1H),4.47(q,J=7.8Hz,1H),3.11(brm,2H),2.00-1.80(m,2H),1.62-1.46(m,4H),1.40(s,9H),1.37(s,9H),1.25(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+Na):C3044ClNSNaに対する計算値660.2593、実測値660.2596。
【実施例】
【0057】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物(63mg,0.10mmol)を、20mLナスフラスコ中でジエチルエーテル(3mL)に溶かした後、1M 塩酸水溶液/酢酸エチル(3mL)を滴下し、室温で1時間撹拌した。析出した固体を吸引ろ過し、回収した固体をジエチルエーテルで洗浄した後、さらに真空乾燥し、目的の化合物(H-31化合物)を2塩酸塩として得た。収量は51mg(0.10mmol)であり、収率は100%であった。得られた目的の化合物に対して、NMR解析と質量分析を行った。
【実施例】
【0058】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.17(d,J=2.7Hz,1H),7.88(dd,J=8.7,2.7Hz,1H),7.57(d,J=8.7Hz,1H),7.11(s,1H),4.16(brt,J=6.6Hz,1H),2.97(brt,J=7.8Hz,2H),2.08(m,1H),2.01(m,1H),1.75(m,2H),1.60(m,2H),1.41(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C2029ClNSに対する計算値438.1725、実測値438.1717。
【実施例】
【0059】
[実施例2]
(S)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロ-5-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)ベンズアミド(式(H-36)で表される化合物、以下「H-36化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0060】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えてNα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-L-リシンを用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により、縮合物を得、NMR解析と質量分析を行った。収率は92%であった。
【実施例】
【0061】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ11.38(br,1H),9.41(br,1H),7.66(d,J=8.7Hz,1H),7.26(br,1H),7.11(d,J=8.7Hz,1H),6.91(s,1H),6.61(s,1H),4.57(m,1H),4.49(q,J=7.8Hz,1H),3.17-3.05(br,2H),2.00-1.80(m,2H),1.62-1.46(m,4H),1.40(s,9H),1.36(s,9H),1.24(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+Na):C3044ClNSNaに対する計算値660.2593、実測値660.2592。
【実施例】
【0062】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-36化合物)を2塩酸塩として得、NMR解析と質量分析を行った。収率は100%であった。
【実施例】
【0063】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.12(brm,1H),7.86(brd,J=8.7Hz,1H),7.56(d,J=8.7Hz,1H),7.02(brs,1H),4.15(m,1H),2.97(brt,J=7.8Hz,2H),2.08(m,1H),2.01(m,1H),1.75(m,2H),1.60(m,2H),1.39(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C2029ClNSに対する計算値438.1725、実測値438.1726。
【実施例】
【0064】
[実施例3]
(R)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-ブロモ-5-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)ベンズアミド(式(H-34)で表される化合物、以下「H-34化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0065】
(1) 市販の5-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)-2-ブロモベンズアミドとNα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンから、実施例1の工程(1)と同様の工程により縮合物を得、NMR解析と質量分析を行った。収率は81%であった。
【実施例】
【0066】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ11.27(br,1H),9.39(brs,1H),7.57(d,J=8.7Hz,1H),7.29(d,J=8.7Hz,1H),7.25(brm,1H),6.89(brs,1H),6.61(s,1H),4.55(brm,1H),4.47(q,J=7.8Hz,1H),3.12(brm,2H),1.98-1.78(m,2H),1.67-1.42(m,4H),1.40(s,9H),1.36(s,9H),1.24(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+Na):C3044BrNSNaに対する計算値704.2088、実測値704.2095。
【実施例】
【0067】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-34化合物)を2塩酸塩として得、NMR解析と質量分析を行った。収率は100%であった。
【実施例】
【0068】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.04(d,J=2.2Hz,1H),7.76(dd,J=8.6,2.2Hz,1H),7.71(d,J=8.7Hz,1H),6.95(s,1H),4.15(brt,J=6.2Hz,1H)2.97(brt,J=7.5Hz,2H),2.06(m,1H),1.98(m,1H),1.75(m,2H),1.57(m,2H),1.37(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C2029BrNSに対する計算値482.1220、実測値482.1219。
【実施例】
【0069】
[実施例4]
(S)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロ-5-(2,5-ジアミノペンタンアミド)ベンズアミド(式(H-37)で表される化合物、以下「H-37化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0070】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えてNα,Nδ-ビス(t-ブトキシカルボニル)-L-オルニチンを用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により、縮合物を得、NMR解析と質量分析を行った。収率は29%であった。
【実施例】
【0071】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ11.15(br,1H),9.39(brs,1H),7.65(brd,J=8.7Hz,1H),7.13(d,J=8.7Hz,1H),7.03(brm,2H),6.61(s,1H),4.69(brm,1H),4.53(brq,J=7.3Hz,1H),3.28(m,1H),3.18(m,1H),1.93(m,1H),1.84(m,1H),1.73-1.60(m,2H),1.40(s,9H),1.36(s,9H),1.26(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+Na):C2942ClNSNaに対する計算値646.2437、実測値646.2436。
【実施例】
【0072】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-37化合物)を2塩酸塩として得、NMR解析と質量分析を行った。収率は70%であった。
【実施例】
【0073】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.12(d,J=2.3Hz,1H),7.86(dd,J=8.7,2.3Hz,1H),7.56(d,J=8.7Hz,1H),7.01(s,1H),4.20(brt,J=6.6Hz,1H),3.11-2.93(m,2H),2.19-1.95(m,2H),1.95-1.78(m,2H),1.38(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C1927ClNSに対する計算値424.1568、実測値424.1569。
【実施例】
【0074】
[実施例5]
(S)-5-(2-アミノ-5-グアニジノペンタンアミド)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミド(式(H-32)で表される化合物、以下「H-32化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0075】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えてN-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-N-ω-(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)-L-アルギニンを用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により、縮合物を得、NMR解析と質量分析を行った。収率は58%であった。
【実施例】
【0076】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ7.78(d,J=2.3Hz,1H),7.68(d,J=7.8Hz,2H),7.60(dd,J=8.7,2.3Hz,1H),7.56(dd in appearance,J=6.8,5.5Hz,2H),7.37(d,J=8.7Hz,1H),7.26(dd,J=7.8,7.3Hz,2H),7.19(dd,J=7.8,7.3Hz,2H),6.66(s,1H),4.53(brs,1H),4.31(d,J=6.9Hz,2H),4.12(m,2H),3.15(m,1H),2.85(s,2H),2.46(s,3H),2.39(s,3H),1.94(s,3H),1.72(m,1H),1.60(m,1H),1.54-1.1.43(m,2H),1.31(s,6H),1.22(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+Na):C4854ClNNaに対する計算値962.3107、実測値962.3287。
【実施例】
【0077】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物(127mg,0.135mmol)のジクロロメタン溶液(2mL)にピペリジン0.5mLを加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機相を1M塩酸水溶液で3回抽出し、中性/酸性不純物を除去した後、水相を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。中和した溶液を、酢酸エチルとジエチルエーテルの混合溶媒で抽出し、得られた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水した。次いで、有機相を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=9:1で精製し、Fmoc脱保護体83mg(0.12mmol)を得、NMR解析と質量分析を行った。収率は86%であった。
【実施例】
【0078】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ7.82(d,J=2.8Hz,1H),7.60(dd,J=8.7,2.8Hz,1H),7.36(d,8.7Hz,1H),6.65(s,1H)3.36(dd,J=6.4,5.5Hz,1H),3.28-3.02(m,2H),2.87(s,2H),2.45(s,3H),2.38(s,3H),1.95(s,3H),1.71-1.42(m,4H),1.33(s,6H),1.22(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C3345ClNに対する計算値718.2607、実測値718.2607。
【実施例】
【0079】
(3) 次いで、上記工程(2)で得られたFmoc脱保護体(53mg,0.074mmol)をトリフルオロ酢酸2mLに溶解し、水0.3mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、水で希釈した後、ジエチルエーテルで抽出した。詳細には、水相を蒸発乾固させた後、得られた固体にジエチルエーテルを加え、不溶物をろ過によって除去することにより、目的の化合物(H-32化合物)のジエチルエーテル溶液を得た。一方、ジエチルエーテル相から1M塩酸で塩基性化合物を再抽出し、得られた抽出物を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した後、最初に得られたジエチルエーテル溶液とともに濃縮した、さらに一晩真空乾燥することにより、白色粉末状固体として目的の化合物(H-32化合物)(23mg,0.049mmol)が得られた。収率は66%であった。
【実施例】
【0080】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ7.91(d,J=2.8Hz,1H),7.74(dd,J=9.2,2.8Hz,1H),7.42(d,J=9.2Hz,1H),6.79(s,1H),4.02(brdd,J=6.0,5.5Hz,1H),3.17(brdd,J=6.9,6.4Hz,2H),1.98(m,1H),1.91(m,1H),1.67(m,2H),1.26(s,9H)。
HRMS(ESI,m/z,M+H):C2029ClNSに対する計算値466.1786、実測値466.1777。
【実施例】
【0081】
[実施例6]
5-(2-アミノヘキサンアミド)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミド(式(H-35)で表される化合物、以下「H-35化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0082】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えて、6-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸を用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により縮合物を得、NMR解析を行った。収率は89%であった。
【実施例】
【0083】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.91(br,1H),8.26(br,1H),7.91(s,1H),7.83(d,J=8.7Hz,1H),7.38(d,J=8.7Hz,1H),6.60(s,1H),4.68(brm,1H),3.10(m,2H),2.38(m,2H),1.71(m,2H),1.48(m,2H),1.43(s,9H),1.35(m,2H),1.30(s,9H)。
【実施例】
【0084】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-35化合物)を塩酸塩として得、NMR解析を行った。収率は85%であった。
【実施例】
【0085】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ7.96(d,J=2.6Hz,1H),7.70(dd,J=8.6,2.6Hz,1H),7.49(d,J=8.6Hz,1H),6.88(s,1H),2.93(brdd,J=7.7,7.3Hz,2H),2.45(t,J=7.3Hz,2H),1.75(ttm,J=7.7,7.3Hz,2H),1.70(ttm,J=7.7,7.3Hz,2H),1.47(m,2H),1.35(s,9H)。
【実施例】
【0086】
[実施例7]
N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロ-5-(2,3-ジアミノプロパンアミド)ベンズアミド(式(H-39)で表される化合物、以下「H-39化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0087】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えて、2,3-ビス((t-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパン酸を用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により縮合物を得、NMR解析を行った。収率は87%であった。
【実施例】
【0088】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ10.46(br,1H),9.43(brs,1H),7.69(s,1H),7.66(d,J=8.4Hz,1H),7.31(d,J=8.4Hz,1H),6.61(d,J=4.9Hz,1H),6.35(brs,1H),5.38(brm,1H),4.42(brm,1H),3.63(m,1H),3.56(m,1H),1.41(s,9H),1.40(s,9H),1.33(s,9H)。
【実施例】
【0089】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-39化合物)を2塩酸塩として得、NMR解析を行った。収率は100%であった。
【実施例】
【0090】
H-NMR(700MHz,CDOD):δ8.10(d,J=2.6Hz,1H),7.86(dd,J=8.8,2.6Hz,1H),7.56(d,J=8.8Hz,1H),6.90(s,1H),4.56(dd,J=5.8,5.6Hz,1H),3.62(dd,J=14.1,5.8Hz,1H),3.54(dd,J=14.1,5.6Hz,1H),1.35(s,9H)。
【実施例】
【0091】
[実施例8]
(S)-5-(2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミド-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミド(式(H-46)で表される化合物、以下「H-46化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0092】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えて、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)アミノ)-N-τ-トリチル-L-ヒスチジンを用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により縮合物を得、NMR解析を行った。収率は37%であった。
【実施例】
【0093】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ11.01(br,1H),10.01(brs,1H),7.66-7.61(m,3H),7.45-7.10(m,19H),6.97(d-like,J=7.8Hz,6H),6.63(s,1H),6.58(s,1H),4.84(dm,J=6.4Hz,1H),4.33(dd,J=11.3,7.1Hz,1H),4.16(m,1H),3.99(brt,J=6.9Hz,1H),3.37(br,1H),3.15-3.04(m,2H),1.29(s,9H)。
【実施例】
【0094】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例5の工程(2)と同様の工程により、Fmoc脱保護体を得、NMR解析を行った。収率は42%であった。
【実施例】
【0095】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ10.06(br,1H),7.83(s,1H),7.63(d,J=8.2Hz,1H),7.30-7.20(m,11H),7.03(brd,J=6.9Hz,6H),6.61(s,1H),6.57(s,1H),3.77(brm,1H),3.02(m,1H),2.91(m,1H),1.26(s,9H)。
【実施例】
【0096】
(3) 次いで、前記工程(2)で得られたFmoc脱保護体から、実施例5の工程(3)と同様の工程により、目的の化合物(H-46化合物)を得、NMR解析を行った。収率は52%であった。
【実施例】
【0097】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.94(br,1H),7.95(d,J=2.3Hz,1H),7.74(d,J=8.7,2.3Hz,1H),7.54(s,1H),7.38(d,J=8.7Hz,1H),6.85(s,1H),6.61(s,1H),3.77(t,J=5.5Hz,1H),3.11(dd,J=14.7,5.5Hz,1H),3.06(dd,J=14.7,5.5Hz,1H),1.30(s,9H)。
【実施例】
【0098】
[製造例1]
(R)-3-(2,6-ビス((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサンアミド)安息香酸を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0099】
(1) 3-アミノ安息香酸エチル(366mg、2.22mmol)とNα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシン(969mg、2.93mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶解し、2-クロロ-1-メチルピリジニウム ヨージド(879mg、3.44mmol)及びトリエチルアミン(1.5mL、10mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、水、次いで硫酸水素ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した。その際の水相は酢酸エチルで2回再抽出し、有機相は炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の抽出溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、縮合物(456mg,0.924mmol)を得た。収率は42%であった。得られた縮合物に対して、NMR解析を行った。
【実施例】
【0100】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.16(br,1H),8.10(s,1H),7.80-7.68(m,2H),7.30(brm,1H),5.61(brs,1H),4.80(brs,1H),4.38-4.32(m,3H),3.18-3.06(m,2H),1.91(m,1H),1.74(m,1H),1.58-1.40(m,4H),1.44(s,9H),1.43(s,9H),1.37(t,J=7.0Hz,3H)。
【実施例】
【0101】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物(972mg,1.97mmol)を、テトラヒドロフラン(20mL)に溶解した後、水、メタノールそれぞれ10mLを加え、さらに、水酸化リチウム1水和物(234mg、5.58mmol)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、炭酸カリウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで洗浄することで中性及び塩基性物質を除去した後、水相に1M塩酸を滴下して酸性にし、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の抽出溶液を減圧濃縮して、目的の安息香酸誘導体(864mg、1.86mmol)を得た。収率は96%であった。得られた目的の化合物に対して、NMR解析を行った。
【実施例】
【0102】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.50(s,1H),8.23(brs,1H),8.14(s,1H),7.79(d,J=6.9Hz,1H),7.38(dd,J=7.6,6.9Hz,1H),5.81(brs,1H),4.81(brs,1H),4.46(brs,1H),3.10(brm,2H),1.87(m,1H),1.75(m,1H),1.55-1.50(m,2H),1.46(s,9H),1.41(s,9H)。
【実施例】
【0103】
[実施例9]
(R)-N-アダマンタン-1-イル-3-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)ベンズアミド(式(H-47)で表される化合物、以下「H-47化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0104】
(1) 1-アダマンチルアミン(55mg、0.36mmol)と製造例1で得られた安息香酸誘導体(147mg、0.316mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶解し、EDCI塩酸塩(64mg、0.335mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(610μL、3.59mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt:45mg、0.33mmol)を順次加え、室温で4時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、水、次いで硫酸水素ナトリウム水溶液で有機相を洗浄した。さらに有機相は炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の抽出溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、縮合物(115mg,0.192mmol)を得た。収率は60%であった。得られた縮合物に対して、NMR解析を行った。
【実施例】
【0105】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.18(brs,1H),7.64(d,J=7.8Hz,1H),7.40(brs,1H),7.36(d,J=7.3Hz,1H),7.15(dd,J=7.8,7.3Hz,1H),6.31(s,1H),5.44(brm,1H),4.70(brm,1H),4.31(brm,1H),3.11(brm,2H),2.16(brs,4H),2.14(brm,4H),1.99(m,2H),1.95-1.81(m,2H),1.80-1.48(m,9H),1.47(s,9H),1.44(s,9H)。
【実施例】
【0106】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物(109mg,0.182mmol)を、ジクロロメタン(2mL)に溶かした後、トリフルオロ酢酸(1mL)を滴下し、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後反応液を濃縮し、ジエチルエーテルを加えることで析出した固体を吸引ろ過し、回収した固体をジエチルエーテルで洗浄した後、さらに真空乾燥し、目的の化合物(H-47化合物)を2トリフルオロ酢酸塩として得た。収量は85mg(0.213mmol)であり、収率は75%であった。得られた目的の化合物に対して、NMR解析を行った。
【実施例】
【0107】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ7.98(s,1H),7.72(dm,J=8.2Hz,1H),7.49(d,J=7.8Hz,1H),7.40(dd,J=8.2,7.8Hz,1H),4.06(brt,J=6.4Hz,1H),2.94(dd,J=7.8,7.3Hz,2H),2.15(m,6H),2.10(brm,3H),2.06-1.92(m,2H),1.80-1.68(m,8H),1.60-1.49(m,2H)。
【実施例】
【0108】
[実施例10]
(R)-3-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)-N-ヘキシルベンズアミド(式(H-50)で表される化合物、以下「H-50化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0109】
(1) 1-アダマンチルアミンに代えてヘキシルアミンを用い、実施例9の工程(1)と同様の工程により、縮合物を得、NMR解析を行った。収率は45%であった。
【実施例】
【0110】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ9.53(brs,1H),7.68(d,J=7.8Hz,1H),7.33(d,J=6.9Hz,1H),7.14-7.05(m,2H),5.58(brm,1H),4.74(brs,1H),4.37(brm,1H),3.50-3.36(m,2H),3.11(brm,2H),1.86-1.28(m,15H),1.44(s,9H),1.43(s,9H),0.91(m,3H)。
【実施例】
【0111】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例9の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-50化合物)を2トリフルオロ酢酸塩として得、NMR解析を行った。収率は72%であった。
【実施例】
【0112】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.09(s,1H),7.76(d,J=7.8Hz,1H),7.56(d,J=7.8Hz,1H),7.43(t,J=7.8Hz,1H),4.03(t,J=6.4Hz,1H),3.37(dd,J=7.3,6.9Hz,2H),2.94(brt,J=7.8Hz,2H),2.08-1.94(m,2H),1.77-1.69(m,2H),1.64-1.51(m,4H),1.42-1.30(m,6H),0.91(t-like,J~6.8Hz,3H)。
【実施例】
【0113】
[実施例11]
(S)-N-(4-(t-ブチル)チアゾール-2-イル)-3-(2,6-ジアミノヘキサンアミド)ベンズアミド(式(H-51)で表される化合物、以下「H-51化合物」ということがある。)を、以下の通りに合成した。
【実施例】
【0114】
(1) Nα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-D-リシンに代えてNα,Nε-ビス(t-ブトキシカルボニル)-L-リシンを、又、5-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)-2-クロロベンズアミドに代えて3-アミノ-N-(4-t-ブチル-1,3-チアゾール-2-イル)ベンズアミドを用い、実施例1の工程(1)と同様の工程により、縮合物を得、NMR解析を行った。収率は90%であった。
【実施例】
【0115】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ10.84(br,1H),9.35(brs,1H),7.70(d,J=7.8Hz,1H),7.54(d,J=7.3Hz,1H),7.27(brs,1H),7.11(dd,J=7.8,7.3Hz,1H),6.79(d,J=8.2Hz,1H),6.58(s,1H),4.68(brm,1H),4.51(dtm,J=7.3,6.9Hz,1H),3.13(brm,2H),1.95(m,1H),1.88(m,1H),1.60-1.44(m,4H),1.41(s,9H),1.36(s,9H),1.31(s,9H)。
【実施例】
【0116】
(2) 次いで、前記工程(1)で得られた縮合物から、実施例1の工程(2)と同様の工程により、目的の化合物(H-51化合物)を2塩酸塩として得、NMR解析を行った。収率は100%であった。
【実施例】
【0117】
H-NMR(400MHz,CDOD):δ8.39(dd,J=2.3,1.8Hz,1H),7.92(ddm,J=8.2,2.3Hz,1H),7.86(ddm,J=8.2,1.8Hz,1H),7.58(t,J=8.2Hz,1H),6.94(s,1H),4.16(t,J=6.4Hz,1H),2.98(brdd,J=7.8,7.3Hz,2H),2.14-1.97(m,2H),1.81-1.73(m,2H),1.68-1.53(m,2H),1.39(s,9H)。
【実施例】
【0118】
[試験例1]RND型多剤排出ポンプに対する排出能阻害効果の評価
マクロライド系抗細菌剤であり、MexB及びMexYの排出基質であるエリスロマイシン(以降及び図中、「EM」と表記する。)の存在下における細菌の増殖能を指標として、一般式(I)で表される化合物のRND型多剤排出ポンプに対する排出能阻害効果を調べた。被検化合物がRND型多剤排出ポンプに対する排出能阻害能を有する場合には、EMと被検化合物の併用により、EMの単独使用時よりも、細菌の増殖が抑制される。
【実施例】
【0119】
非特許文献6記載の大腸菌が持つ多剤排出システムAcrAB-TolCのうち、acrB及びtolC遺伝子を欠損させた大腸菌(Escherichia coli)株に、非特許文献5記載の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の主たる多剤排出システムMexAB-OprMの遺伝子をプラスミドとして形質移入した変異株(以降及び図中、「pmexB株」と表記する。)、緑膿菌のもう一つの主たる多剤排出システムMexXY-OprMの遺伝子移入株(以降及び図中、「pmexY」と表記する。)、及び空ベクター移入株(以降及び図中、「vector株」と表記する。)を、一般式(I)で表される化合物の多剤排出ポンプに対する阻害能の評価に使用した。各大腸菌株の培養には、培地としてLB(Luria-Bertani)brothを使用し、96穴プレート(一穴当たりの培地量は200μL)を用い、接種菌量を2×10CFU/μLとした。
【実施例】
【0120】
具体的には、各大腸菌株を、EMと各種濃度(0~128μg/mL)の被検化合物を添加した培地中で培養し、菌株の増殖を600nmにおける光学的濁度(OD600)の経時的測定によって評価した。培地のEM濃度は、pmexB株の培養では8μg/mLとし、pmexY株の培養では64μg/mLとした。
【実施例】
【0121】
菌株の増殖に対する各被検化合物自身が持つ抗細菌活性の寄与は、EM非添加培地に接種したvector株に同じ濃度の被検化合物を添加した場合の菌株の増殖を同様の手法で測定することによって評価した。
【実施例】
【0122】
H-31化合物、H-32化合物、H-34化合物、H-36化合物、及びH-37化合物を被検化合物とし、各被検化合物を添加した場合の各大腸菌株を培養した培地のOD600の測定結果を図1~5に示す。図1~5中、(A)はvector株の結果であり、(B)はpmexB株の結果であり、(C)はpmexY株の結果である。vector株の培養実験では、いずれの被検化合物でも、EM非存在下において、培地への添加量依存的にOD600が低下し、菌株の増殖が抑制されていた(各図(A))。この結果から、これらの被検化合物は、単独で弱い抗細菌活性を有することがわかった。また、いずれの被検化合物も、EM併用時に、pmexB株とpmexY株の両方において、8μg/mLという低い添加濃度でOD600を急激に低下させ、各菌株の増殖が抑制された(各図(B)及び(C))。培地への添加濃度が8μg/mLにおける各被検化合物の抗細菌活性は弱かったことから、EM併用時のpmexB株とpmexY株における菌株増殖能の低下は、各被検化合物の抗細菌活性によるものではなく、各被検化合物がRND型多剤排出ポンプを阻害することにより菌株内に蓄積されたEMの抗細菌活性によるものであることがわかった。
【実施例】
【0123】
図6に、H-31化合物を被検化合物とし、培地への添加濃度をより低濃度(0~8μg/mL)とし、同様に各菌株の増殖を調べた結果を示す。H-31化合物は、4μg/mLという低い添加濃度ではほとんど抗細菌活性を示さなかったが(図6(A))、pmexB株とpmexY株の両方において、EM併用時には、4μg/mLという低い添加濃度でOD600をほぼ0にまで低下させた(図6(B)及び(C))。H-31化合物の添加濃度が2μg/mLの場合と無添加(0μg/mL)の場合で培地のOD600にほとんど差がなく、添加濃度が4μg/mLではほぼ完全に増殖能が阻害されていることから、本発明に係る化合物のRND型多剤排出ポンプに対する阻害能には、明確な閾値が存在することが示唆された。
【実施例】
【0124】
また、実施例6~11で合成したH-35化合物、H-39化合物、H-46化合物、H-47化合物、H-50化合物、及びH-51化合物に加えて、下記式(H-8)、(H-27)~(H-30)、(H-33)、(H-38)、(H-41)、(H-42)、(H-45)、(H-48)、及び(H-49)で表される化合物についても、同様にしてRND型多剤排出ポンプに対する排出能阻害効果を調べた。各被検化合物を添加した場合の各大腸菌株を培養した培地のOD600の測定結果から、各被検化合物による増殖抑制効果を評価した。vector株に対する被験化合物単独での増殖抑制効果は、vector株を用いた実験において、EC50(50%効果濃度)が、32μg/mL以上である場合に「-」と評価し、8μg/mL以上32μg/mL未満である場合に「+」と評価し、8μg/mL未満である場合に「++」と評価した。pmexB株に対するEM(8μg/mL)併用下での各被験化合物の増殖抑制効果は、pmexB株を用いた実験において、EC50が、128μg/mL以上である場合に「-」と評価し、8μg/mL以上128μg/mL未満である場合に「+」と評価し、8μg/mL未満である場合に「++」と評価した。pmexY株に対するEM(64μg/mL)併用下での各被験化合物の増殖抑制効果は、pmexY株を用いた実験において、EC50が、128μg/mL以上である場合に「-」と評価し、8μg/mL以上128μg/mL未満である場合に「+」と評価し、8μg/mL未満である場合に「++」と評価した。
【実施例】
【0125】
各被検化合物による増殖抑制効果の評価結果を表1に示す。表1中、「vector株増殖抑制」欄にはvector株に対する被験化合物単独での増殖抑制効果の評価結果を、「pmexB株増殖抑制」欄にはpmexB株に対するEM(8μg/mL)併用下での増殖抑制効果の評価結果を、「pmexY株増殖抑制」欄にはpmexY株に対するEM(64μg/mL)併用下での増殖抑制効果の評価結果を、それぞれ示す。
【実施例】
【0126】
【表1】
JP2017105714A_000010t.gif
【実施例】
【0127】
この結果、前記一般式(I)で表される化合物であるH-35、H-39、H-46、H-47、H-50、及びH-51の化合物も、H-31、H-32、H-34、H-35、及びH-37の化合物と同様に、pmexX株とpmexY株の両方に対して、EM併用投与下で高い増殖抑制効果を有していた。これらの結果から、本発明に係る化合物は、pmexB株とpmexY株の多剤排出ポンプであるMexB及びMexYの排出能を阻害することにより、両菌株のEMに対する感受性を著しく高めていることは明らかである。すなわち、本発明に係る化合物が、RND型多剤排出ポンプに対する阻害剤として有用であることが示された。
【実施例】
【0128】
一方で、前記一般式(I)で表される化合物ではないH-8、H-27~H-30、H-33、H-38、H-41、H-42、H-45、H-48、及びH-49の化合物は、pmexB株とpmexY株のいずれも又はいずれかの増殖を阻害できなかった。つまり、これらの化合物は、MexB及びMexYの薬剤排出能を同時には阻害できないことがわかった。
【実施例】
【0129】
【化9】
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【実施例】
【0130】
[試験例2]多剤耐性緑膿菌に対する抗細菌剤との併用効果の評価
実施例1で製造したH-31化合物を用いて、多剤耐性緑膿菌に対する抗細菌剤との併用効果を調べた。多剤耐性緑膿菌としては、国内医療機関から収集した臨床分離株55株を使用した。併用抗細菌剤として、キノロン系であるシプロフロキサシン(CPFX)、カルバペネム系であるイミペネム(IPM)、アミノグリコシド系であるアミカシン(AMK)、又はモノバクタム系であるアズトレオナム(AZT)を供試した。比較対照として、既知のMexB阻害剤であるABI-PP(D13-9001)を使用した。
【実施例】
【0131】
具体的には、H-31化合物存在下における、臨床分離株55株に対する併用抗細菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を求めた。
まず、寒天平板培地希釈法によって、いずれかの抗細菌剤を様々な濃度で含有するMH(Mueller-Hinton)寒天培地に、DMSOに溶解させたH-31化合物を、寒天培地中の濃度が32μg/mLとなるように添加した平板培地を調製した。同様に、いずれかの抗細菌剤を様々な濃度で含有するMH寒天培地に、DMSOに溶解させたABI-PPを、寒天培地中の濃度が32μg/mLとなるように添加した平板培地と、いずれかの抗細菌剤を様々な濃度で含有するMH寒天培地に、溶媒であるDMSOのみを同量添加した平板培地と、を調製した。
次いで、各平板培地に、37℃のMH brothで一晩培養した後、同液体培地で10CFU/μLの濃度に希釈した各臨床分離株を1μLずつ接種し、37℃で20時間培養した後、細菌の増殖が阻害されてコロニーが観察されなかった最小の併用抗細菌剤濃度をMICとした。
【実施例】
【0132】
図7~10に、各平板培地における、併用抗細菌剤の臨床分離多剤耐性緑膿菌55株に対するMICの累積分布のグラフを示す。図7はシプロフロキサシンを併用した場合の結果であり、図8はイミペネムを併用した場合の結果であり、図9はアミカシンを併用した場合の結果であり、図10はアズトレオナムを併用した場合の結果である。この結果、併用抗細菌剤がアミノグリコシド系抗細菌剤であるアミカシン(AMK)である場合(図9)には、有効性が認められないものの、併用抗細菌剤がキノロン系であるシプロフロキサシン(CPFX:図7)、カルバペネム系であるイミペネム(IPM:図8)、又はモノバクタム系であるアズトレオナム(AZT:図10)の場合には、H-31化合物による多剤耐性緑膿菌の脱薬剤耐性化が認められた。特にAZTの場合のH-31化合物の効果は、ABI-PPのそれと同程度に極めて顕著であった。CPFXの場合のH-31化合物の効果は、ABI-PPのそれよりはるかに大きかった。IPMに対する効果は、前2者に比して小さかったが、これは、双環性β-ラクタム系抗細菌剤に対する薬剤排出ポンプ以外の耐性因子の寄与が大きいためと考えられた。例えば、β-ラクタマーゼの寄与が強く示唆されるため、双環性β-ラクタム系抗細菌剤とβ-ラクタマーゼ阻害剤の合剤を併用剤とすることが好ましいことが容易に推定できる。上記のように、本発明に係る化合物は、多剤耐性緑膿菌の臨床分離株に対しても、その主たる多剤排出ポンプであるMexB及びMexYの排出能を同時に阻害するデュアル阻害剤として機能し、脱薬剤耐性化させることによって抗細菌剤との併用効果をもたらすことが立証された。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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