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明細書 :新規有機電荷移動錯体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-198716 (P2014-198716A)
公開日 平成26年10月23日(2014.10.23)
発明の名称または考案の名称 新規有機電荷移動錯体及びその製造方法
国際特許分類 C07D 309/38        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
C07D 339/06        (2006.01)
C07C 211/61        (2006.01)
C07C 211/53        (2006.01)
H01L  21/28        (2006.01)
FI C07D 309/38
H01L 29/28 220B
C07D 339/06
C07C 211/61
C07C 211/53
H01L 21/28 301Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 27
出願番号 特願2014-052727 (P2014-052727)
出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
優先権出願番号 2013051277
優先日 平成25年3月14日(2013.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】緒方 啓典
【氏名】ジーン フレデリック デラ クエバ ガガベ
【氏名】大塚 祐一郎
【氏名】中村 雅哉
【氏名】大原 誠資
出願人 【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】独立行政法人森林総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 4C023
4C062
4H006
4M104
Fターム 4C023NA07
4C062DD28
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB78
4H006AB91
4M104AA10
4M104BB02
4M104BB05
4M104BB06
4M104BB08
4M104BB09
4M104BB36
4M104DD52
要約 【課題】有効活用されてこなかった木質バイオマス由来物質を電子受容性分子として活用することで、化石資源由来の導電性高分子材料と代替可能な新規の有機電荷移動錯体とその製造方法を提供する。
【解決手段】電子受容性分子と電子供与性分子とからなる有機電荷移動錯体であって、電子受容性分子をPDCまたはPDC誘導体とする。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
電子受容性分子と電子供与性分子とからなる有機電荷移動錯体であって、
電子受容性分子が、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyrone-4,6-dicarboxylic acid;PDC)またはPDC誘導体であり、
電子供与性分子が、下記一般式(1)で表される化合物、
【化1】
JP2014198716A_000020t.gif
(式中、Aは、硫黄(S)又はセレン(Se)、テルル(Te)原子のうちのいずれかを示し、B、C、D、Eは、水素原子、炭化水素基、もしくはBとC、DとEは、炭素鎖が結合して環を形成していてもよく、この炭素鎖による環には、異種原子を介して結合しているものが含まれることを示す。)
または、下記一般式(2)で表されるアミノピレン、
【化2】
JP2014198716A_000021t.gif
(アミノ基(NRnは、ピレン環の任意の位置に結合してよく、(NRnの式中、nは2~4の整数を示し、RおよびR は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示す。)
または、下記一般式(3)で表される化合物、
【化3】
JP2014198716A_000022t.gif
(アミノ基(NR34および(NR56は、ベンゼン環の任意の位置に結合してよく、(NR34および(NR56の式中、n、mは1~3の整数を示し、R3~R10 は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示す。)
であることを特徴とする有機電荷移動錯体。
【請求項2】
有機電荷移動錯体は繊維状結晶であり、繊維の直径が10nm~50μmであることを特徴とする請求項1の有機電荷移動錯体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機電荷移動錯体結晶を含むことを特徴とする薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の有機電荷移動錯体結晶を含む薄膜を用いた電極。
【請求項5】
PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを結晶成長容器中に滴下し、静置することを特徴とする拡散法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法。
【請求項6】
PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを混合し、貧溶媒の入った容器中に滴下し、静置することを特徴とする液-液界面結晶析出法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法。
【請求項7】
PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを混合し、貧溶媒の入った容器中に注入することを特徴とする再沈法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法。
【請求項8】
PDCまたはPDC誘導体を含む支持電解質と電子供与性分子とを有機溶媒に溶解して得られる溶液を電解セル中に添加し、電解することを特徴とする電解法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法。
【請求項9】
前記電解セルを窒素ガス雰囲気中で封止した後、電極に0.5~1.0μAの定電流を1~60日間流すことを特徴とする請求項8に記載の電解法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法。
【請求項10】
PDCまたはPDC誘導体を含む支持電解質と電子供与性分子とを有機溶媒に溶解して得られる溶液を電解セル中に添加し、前記電解セルを窒素ガス雰囲気中で封止した後、電極に100~200μAの定電流を2~10時間流すことを特徴とする請求項8に記載の電解法による有機電荷移動錯体結晶薄膜の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規有機電荷移動錯体及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、従来、有効活用されてこなかった木質バイオマス由来の物質を電子受容性分子として活用することで、化石資源由来の導電性高分子材料と代替可能な新規の有機電荷移動錯体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹木構成成分のリグニンは、地球上で最も多量に存在する芳香族系バイオマスであるが、一部が熱生産のための燃料や香料等として利用されるに留まっており、その大部分が廃棄されているのが現状である。このため、リグニンを付加価値の高い有機材料等に変換することで有用な用途を確立することができれば、循環型社会の形成に大きく貢献し得るものと期待される。
【0003】
近年、細菌を用いたリグニンの中間代謝物である次式で表わされる2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyrone-4,6-dicarboxylic acid;PDC)の生産技術が開発された(非特許文献1、2)。
【0004】
【化1】
JP2014198716A_000003t.gif

【0005】
PDCは、分極性の強い3つのカルボニル基、環内エーテル酸素を有し、擬芳香族二塩基酸の構造を有している。このことから、新しい物理化学的特性を備えた機能性有機材料への応用が期待されており、現在PDCの利用技術の研究開発が行われている。
【0006】
これまでにPDCについては、Naと錯体を形成すること(特許文献1)や、PDCを基本骨格としたポリアミド(特許文献2、3)、ポリウレタン(特許文献4)、ポリエステル(特許文献5)等の合成が報告されている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】大塚祐一郎、中村雅哉、大原誠資、片山義博、重原淳孝、政井英司、福田雅夫、環境バイオテクノロジー学会誌 Vol.6、No.2、93-103(2006) .
【非特許文献2】Y. Otsuka, M. Nakamura, K. Shigehara, Sugimura, E. Masai, S. Ohara, Y. Katayama, Appl. Microbiol. Biotechnol. 71(2006 ), 608.
【0008】

【特許文献1】特開2008-79603号公報
【特許文献2】特開2011-241158号公報
【特許文献3】特開2011-241168号公報
【特許文献4】特許WO2009/038007
【特許文献5】特開2010-254932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、PDCの利用についての技術的進展はあまり進んでいない。
【0010】
本発明は、以上のとおりの背景から、従来、有効活用されてこなかった木質バイオマス由来物質のPDCを電子受容性分子として活用するとの観点から、化石資源由来の導電性高分子材料と代替可能な新規の有機電荷移動錯体とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、木質バイオマス由来物質を電子受容性分子とした新しい有機電荷移動錯体素材とその製造方法を開発するために鋭意検討を進めた。その過程において、リグニンの中間代謝産物であるPDCが、優れた電子受容性分子であるとともに優れた錯体形成能を有することを見出した。
【0012】
本発明は、このような新しい知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明の有機電荷移動錯体は、電子受容性分子と電子供与性分子とからなる有機電荷移動錯体であって、電子受容性分子が、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyrone-4,6-dicarboxylic acid;PDC)またはPDC誘導体であり、 電子供与性分子が、下記一般式(1)で表される化合物、
【0014】
【化2】
JP2014198716A_000004t.gif

【0015】
(式中、Aは、硫黄(S)又はセレン(Se)、テルル(Te)原子のうちのいずれかを示し、B、C、D、Eは、水素原子、炭化水素基、もしくはBとC、DとEは、炭素鎖が結合して環を形成していてもよく、この炭素鎖による環には、異種原子を介して結合しているものが含まれることを示す。)
または、下記一般式(2)で表されるアミノピレン、
【0016】
【化3】
JP2014198716A_000005t.gif

【0017】
(アミノ基(NRnは、ピレン環の任意の位置に結合してよく、(NRnの式中、nは2~4の整数を示し、RおよびR は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示す。)
または、下記一般式(3)で表される化合物、
【0018】
【化4】
JP2014198716A_000006t.gif

【0019】
(アミノ基(NR34および(NR56は、ベンゼン環の任意の位置に
結合してよく、(NR34および(NR56の式中、n、mは1~3の整数を示し、R3~R10 は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示す。)であることを特徴としている。
【0020】
この有機電荷移動錯体は繊維状結晶であり、繊維の直径が10nm~50μmであることが好ましい。
【0021】
本発明の薄膜は、前記有機電荷移動錯体結晶を含むことを特徴としている。
【0022】
本発明の電極は、前記有機電荷移動錯体結晶を含む薄膜を用いることを特徴としている。
【0023】
本発明の拡散法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法は、PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを結晶成長容器中に滴下し、静置することを特徴としている。
【0024】
本発明の液-液界面結晶析出法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法は、PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを混合し、貧溶媒の入った容器中に滴下し、静置することを特徴としている。
【0025】
本発明の再沈法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法は、PDCまたはPDC誘導体を有機溶媒に溶解したPDC溶液と、電子供与性分子を有機溶媒に溶解した電子供与性分子溶液とを混合し、貧溶媒の入った容器中に注入することを特徴としている。
【0026】
本発明の電解法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法は、PDCまたはPDC誘導体を含む支持電解質と電子供与性分子とを有機溶媒に溶解して得られる溶液を電解セル中に添加し、電解することを特徴としている。
【0027】
この電解法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法では、前記電解セルを窒素ガス雰囲気中で封止した後、電極に0.5~1.0μAの定電流を1~60日間流すことが好ましい。
【0028】
この電解法による有機電荷移動錯体結晶の製造方法では、PDCまたはPDC誘導体を含む支持電解質と電子供与性分子とを有機溶媒に溶解して得られる溶液を電解セル中に添加し、前記電解セルを窒素ガス雰囲気中で封止した後、電極に100~200μAの定電流を2~10時間流すことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
前記のとおりの本発明によれば、従来、有効活用されてこなかった木質バイオマス由来物質のPDCを電子受容性分子として活用することで、化石資源由来の導電性高分子材料と代替可能な新規の有機電荷移動錯体を製造することが可能となる。これにより、現在利活用が進んでいない再生可能資源であるリグニンに高い付加価値を与えることが可能となる。
本発明の有機電荷移動錯体は、電極材料、電磁遮蔽材料、帯電防止材料等の機能性材料として極めて有用である高分子半導体結晶を形成することが可能となる。
【0030】
この高分子半導体結晶は、極めて安定で、液相中で簡単に作成することが可能であり、この結晶をフィルム状にした際の光透過性も高いことから、フレキシブルな透明電極材料としての応用が期待できる。
【0031】
また、この高分子半導体結晶は、透明性の導電フィルム材料として、フレキシブル透明電極等の各種用途に活用することが可能である。
【0032】
さらに、本発明では、酸化インジウムスズ(ITO)を電極として用いた電解法により、BEDT-TTF-PDC錯体薄膜をITO基板上に直接成長させることが可能である。このため、無機系透明電極の特性改善、表面改質技術等への応用の可能性が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】PDCのサイクリックボルタモグラム(還元波)溶媒:HO,Ag/AgCl、支持電解質:NaCl、スキャン速度:20mV/s
【図2】PDCのHOMOおよびLUMOのエネルギー準位図である。
【図3】拡散法によるTTF-PDC錯体繊維状結晶の写真及びSEM像を示す図である。
【図4】液‐液界面結晶析出法によるTMTTF-PDC錯体繊維状結晶の写真及びSEM像である。
【図5】電解法によるPDC電荷移動錯体(塩)合成法を示す図である。
【図6】電解法により作製したDAP-PDC錯体繊維状結晶のSEM像を示す図である。
【図7】電解法によるITO基板上へのPDC電荷移動錯体薄膜形成を示す図である。
【図8】拡散法により作製したTTF-PDC電荷移動錯体の結晶構造及びPDCによる水素結合ネットワーク構造を示す図である。
【図9】電解法により作製したBEDT-TTF-PDC電荷移動錯体の結晶構造及びPDCによる水素結合ネットワーク構造を示す図である。
【図10】1,3-DAP‐PDC、1,6-DAP‐PDC、1,8-DAP‐PDCおよびTAP‐PDCについてのSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明についてさらに詳しく説明する。

【0035】
本発明の有機電荷移動錯体は、電子受容性分子と電子供与性分子とからなる。電子受容性分子は、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(2-pyrone-4,6-dicarboxylic acid;PDC)またはPDC誘導体である。

【0036】
本発明の有機電荷移動錯体の第1実施形態では、電子供与性分子が、一般式(1)で表わされる化合物である。

【0037】
【化5】
JP2014198716A_000007t.gif

【0038】
前記一般式(1)において、Aは、硫黄(S)又はセレン(Se)、テルル(Te)原子を示し、B、C、D、Eは、水素原子、炭化水素基、もしくはBとC、DとEは、炭素鎖が結合して環を形成していてもよいことを示している。また、発明の作用効果を考慮して、BとC、DとEにおける炭素鎖の環には、異種原子、例えば硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、酸素(O)原子等を介して環を形成してもよいし、あるいは各種の官能基、例えば、水酸基、メトキシ基、その他アルコキシ基、アミノ基、メチルアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、メチル基、その他アルキル基等を適宜に結合していてもよい。

【0039】
前記一般式(1)で表わされる電子供与性分子は、例えば、以下のものが例示される。

【0040】
【化6】
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【0041】
さらに、前記一般式(1)で表わされる電子供与性分子には、例えば、BPDT-TTF、TET-TTF、炭素鎖の環に酸素原子を含むBEDO-TTF、TTF骨格の二重結合が還元されたDHTTFやMDHT、TTF骨格の硫黄(S)原子をテルル(Te)に置換したHMTTeF、その他BEDT-TSF(BETS)などが含まれる。

【0042】
これら電子供与性分子については、公知の方法をはじめとして各種の方法による合成等により提供可能とされる。例えば、前記TMTTFの場合として例示すると次の反応式に従って合成される。

【0043】
【化7】
JP2014198716A_000009t.gif

【0044】
本発明の有機電荷移動錯体の第2実施形態では、電子供与性分子が、一般式(2)で表わされる化合物である。

【0045】
【化8】
JP2014198716A_000010t.gif

【0046】
一般式(2)において、アミノ基(NRnは、ピレン環の任意の位置に結合してよく、(NRnの式中、nは2~4の整数を示し、RおよびR は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示している。

【0047】
具体的には、一般式(2)表される化合物としては、例えば、1,3,6,8‐テトラアミノピレン(TAP)、1,3-ジアミノピレン(1,3-DAP)、1,6-ジアミノピレン(1,6-DAP)、1,8-ジアミノピレン(1,8-DAP)などを例示することができる。

【0048】
この一般式(2)で表わされる電子供与性分子については、公知の合成法で合成されたものを利用することができる。

【0049】
本発明の有機電荷移動錯体の第3実施形態では、電子供与性分子が、一般式(3)で表わされる化合物である。

【0050】
【化9】
JP2014198716A_000011t.gif

【0051】
一般式(3)において、アミノ基(NR34および(NR56は、ベンゼン環の任意の位置に結合してよく、(NR34および(NR56の式中、n、mは1~3の整数を示し、R3~R10 は、同一または別異の水素原子またはアルキル基もしくは相互に結合した炭素鎖を示している。

【0052】
具体的には、一般式(2)表される化合物としては、例えば、3,3,’5,5’-テトラメチルベンジジン(3,3,’5,5’-TMB)や3,3’-ジメチルベンジジン(3,3,’-DMB)などを例示することができる。この一般式(3)で表わされる電子供与性分子についても、公知の合成法で合成されたものを利用することができる。

【0053】
PDCまたはPDC誘導体を電子受容性分子とする本発明の有機電荷移動錯体では、電子供与性分子は、高電導性の観点から、TTF系の拡張共役型電子供与性分子であるBEDT-TTFとの錯体が特に優れている。

【0054】
本発明の有機電荷移動錯体は、リグニンより細菌を用いた中間代謝産物としてのPDCまたはPDC誘導体と前記のような電子供与性分子との錯体形成によって製造される。

【0055】
もちろんPDCについては合成法によって得られたものであってもよい。また、PDC誘導体は、公知の方法で合成されたものであってよく、PDCのカルボキシル基をモノエステル、ジエステル、モノアミド、ジアミド、モノニトリル、ジニトリル、モノアミン、ジアミン、モノケトン、ジケトン、モノ酸塩化物、ジ酸塩化物などの置換体が含まれる。

【0056】
錯体形成のための方法としては様々であってよいが、本発明においては、拡散法、液-液界面結晶析出法、電解法が好適なものとして提供される。

【0057】
いずれの方法においても、PDC(またはPDC誘導体)及び電子供与性分子を溶解する有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、アニソール等を例示することができる。

【0058】
PDC(またはPDC誘導体)及び電子供与性分子の飽和溶液を用いて拡散法によって結晶形成を行う場合には、長さ0.2~2mm、断面0.04mm×0.01mm~0.0025mm×0.001mmの黒色針状結晶や、直径数μmの繊維状結晶を得ることができる。なお、ここで言う平均長さ及び平均直径は、得られた結晶の撮影画像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウェアによって算出した値である。

【0059】
電子供与性分子とPDC(またはPDC誘導体)のモル比を1:50とし、アセトニトリルを有機溶媒として用いた場合、PDC溶液の濃度を50~83.3mmol/L、電子供与性分子の溶液の濃度を1.5~2.5mmol/Lの範囲とすることによって、繊維状結晶のみの選択的成長及び結晶形態制御が可能となり、平均直径10nm~50μm程度の範囲で繊維状結晶の直径制御が可能である。

【0060】
PDC(またはPDC誘導体)と電子供与性分子からなる有機電荷移動錯体の結晶形成を行う際の容器としては、例えば、蓋付のサンプル管、H型結晶成長管等を例示することができる。

【0061】
PDC(またはPDC誘導体)と電子供与性分子からなる有機電荷移動錯体の結晶形成を、液-液界面結晶析出法で行う場合には、PDC溶液と電子供与性分子の溶液との混合溶液を滴下する貧溶媒は、例えば、トルエン等が例示される。

【0062】
PDC(またはPDC誘導体)及び電子供与性分子の飽和溶液を用いて液-液界面結晶析出法による結晶形成を行うと、平均直径20~40nmの繊維状結晶を得ることができる。

【0063】
なお、ここで言う平均直径は、得られた結晶のSEM写真から画像解析ソフトウェアによって算出した値である。

【0064】
このように、本発明の有機電荷移動錯体の製造方法によれば、結晶形成条件を最適化することにより直径20nm~8.5μm程度の高いアスペクト比を有する電気伝導性電荷移動錯体繊維状結晶を生成することができる。

【0065】
PDC(またはPDC誘導体)及び電子供与性分子を用いて電解法による結晶形成を行う場合、電子供与性分子の支持電解質として、PDC塩を合成する。PDC塩としては、例えば、モノプロトン化PDC-テトラブチルアンモニア塩(BuN(PDC))を例示することができる。

【0066】
これら支持電解質については、公知の方法をはじめとして各種の方法により提供可能とされる。例えば、前記Bu4N(PDC)の場合として例示すると
電子供与性分子+Bu4N(PDC)→(電子供与性分子)PDC
の電解反応を生じ、電解セルの陽極に有機電荷移動錯体の結晶が形成される。

【0067】
また、PDC塩と電子供与性分子とを溶解する有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、アニソール、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、エタノール等を例示することができる。また、上記有機溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒を用いてもよい。

【0068】
上記の有機溶媒を用いて調製したPDC塩溶液の濃度は、CHCl/CHCHOH(97.5:2.5%V/V)の混合溶媒を用いた場合、BEDT-TTF0.0035mmolおよびBuN(PDC)0.350mmolで良質の単結晶試料を得ることが出来る。

【0069】
電解法に用いる電極としては、例えば、陽極にアルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、酸化インジウムスズ等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等を例示することができる。

【0070】
また、陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等の場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。

【0071】
基板は、電極の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやソート等が用いられる。特に、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。
または、Pt等の棒状の電極を用いることもできる。

【0072】
本発明では、0.1~5.0μA、好ましくは0.5~1.0μAの範囲内の定電流を電解セルに流すことによって、電解法による結晶形成を行うことができる。

【0073】
また、通電時間は数日から2ヵ月間程度である。

【0074】
PDC塩及び電子供与性分子の溶液を用いて電解法による結晶形成を行うと、平均直径20~40nmの繊維状結晶を得ることができる。

【0075】
なお、ここで言う平均直径は、得られた結晶のSEM写真から画像解析ソフトウェアによって算出した値である。

【0076】
本発明の有機電荷移動錯体の結晶によれば、電極材料、電磁遮蔽材料、帯電防止材料等の機能性材料として極めて有用である高分子半導体結晶を形成することが可能となる。この高分子半導体結晶は、極めて安定で、液相中で簡単に作成することが可能であり、この結晶をフィルム状にした薄膜も光透過性も高いことから、フレキシブルな透明電極材料としての応用が期待できる。

【0077】
また、この高分子半導体結晶は、透明性の導電フィルム材料として、フレキシブル透明電極等の各種用途に活用することが可能である。

【0078】
さらに、本発明では、酸化インジウムスズ(ITO)を電極として用いた電解法により、BEDT-TTF-PDC錯体薄膜をITO基板上に直接成長させることが可能である。このため、無機系透明電極の特性改善、表面改質技術等への応用の可能性が考えられる。

【0079】
また、例えば、本発明の有機電荷移動錯体の結晶と、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)などの帯電(静電気)防止材料と組み合わせて使用することができる。これにより、PEDOT-PSSの導電性や溶解性などを改良することができ、タッチパネルや有機薄膜太陽電池用の透明電極材料などの性能をより高めることができる。

【0080】
さらに、例えば、ゴムに本発明の有機電荷移動錯体の結晶を配合して、帯電防止材料を形成することもできる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
<実施例1>PDCの電子受容性分子としての評価
植物由来のリグニンを組換え微生物発酵によって分解し、リグニンの中間代謝産物であるPDCを得た。得られたPDCを用いて、サイクリックボルタモグラフ測定を行った。
【実施例】
【0083】
図1は、PDCのサイクリックボルタモグラムを、図2は、PDCのHOMOおよびLUMOのエネルギー準位図を示している。PDCが電子受容性分子であることが確認される。
【実施例】
【0084】
<実施例2>拡散法によるTTF誘導体-PDC繊維状結晶の作製
PDC、TTFおよびSDM-TTFを、それぞれアセトニトリル(和光純薬工業、純度99.5%v/v)に溶かし、飽和溶液(PDC:0.069mol/L、TTF:0.011mol/L、SDM-TTF:0.0086mol/L)を調整した。次に、H型結晶成長管の片側からPDC/アセトニトリル飽和溶液を、もう一方の側からTTFまたはSDM-TTF/アセトニトリル飽和溶液を滴下し、H型結晶成長管内を窒素ガスで置換し、摺合平栓で封止した。その後、H型結晶成長管を室温、暗所で約1ヶ月間静置することにより結晶成長を行った。その結果、黒色針状結晶および繊維状結晶(直径数μm程度)が析出した。図3に拡散法によるTTF-PDC結晶のSEM像を示した(撮影機種HITACHI S-4500、撮影条件加速電圧20kV)。
【実施例】
【0085】
<実施例3>溶液からの結晶析出法によるTTF誘導体-PDC繊維状結晶の作製
PDC/アセトニトリル溶液およびTTF、SDM-TTF、TMTTF/アセトニトリル溶液の濃度調整により、繊維状結晶のみの選択的成長および結晶形態制御を行った。TMTTF-PDC結晶に関しては、液-液界面結晶析出法により、繊維状結晶の作成を行った。TMTTF/アセトニトリル溶液およびPDC/アセトニトリル溶液の混合溶液を、混合してから約24時間後に、貧溶媒であるトルエンの入った容器中に静かに滴下し、室温、暗所で数日間静置を行うことで、直径20~40nm程度の繊維状ナノ結晶が析出した。図4に液-液界面結晶析出法の模式図とTMTTF-PDC結晶のSEM像を示した。
【実施例】
【0086】
<実施例4>電解法による電子供与性分子-PDC電荷移動錯体結晶の作製
モノプロトン化PDC-テトラブチルアンモニウム塩(Bu4N(PDC))を合成し、電子供与性分子の電解酸化用支持電解質として使用することにより、電解法による電荷移動錯体(塩)の合成を行った。電子供与性分子TTF、BEDT-TTF、BMDT-TTF、TET-TTF、TMTSFを支持電解質であるBu4N(PDC)と有機溶媒に溶かし、電解セル中に入れ、セルを窒素ガス雰囲気中で封止した。図5に電解法の装置を示した。電極に0.5~1.0μA程度の一定電流を数日から2か月間程度流すことにより、陽極の白金電極上に、上記ドナー-PDC電荷移動錯体結晶が析出した。特に、BEDT-TTF-PDC錯体においては、ジクロロメタン/エタノール (97.5:2.5%v/v)を溶媒として用いた時に、良質の結晶を得ることができた。1,2-ジアミノピレン(DAP)-PDC錯体については、アセトニトリルを溶媒として同様の電解法により、直径数10nmの繊維状結晶の高密度の束状の結晶を作製することができた。得られた高密度の束状の繊維状結晶のSEM像を図6に示した。
【実施例】
【0087】
<実施例5>電解法によるドナー-PDC電荷移動錯体薄膜の作製
市販のITO基板(Sigma-Aldrich社製)に界面活性剤による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄および流水洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った後、例示化合物(5)を含有する有機電荷移動錯体結晶からなる薄膜を電解法により形成した。例示化合物(5)BEDT-TTFを支持電解質であるBu4N(PDC)とともにジクロロメタン/エタノール(97.5:2.5%v/v)に溶かし、陽極にITO基板をもちいた電解セル中に添加した。電解セルを窒素ガス雰囲気中で封止した後、電極に100μA~200μA程度の一定電流を4時間程度流すことにより、ITO基板表面上に板状およびリボン状のBEDT-TTF-PDC薄膜が形成された。この時、得られた薄膜の厚さは、数nmであった。薄膜形成の装置図(a)、及び得られた薄膜の光学顕微鏡像(b)、SEM像(c)を図7に示す。図中のサンプルAは、電極に100μAの一定電流を流した際に形成された薄膜を示す。また、サンプルBは、電極に200μAの一定電流を流した際に形成された薄膜を示す。
<実施例6>
<有機電荷移動錯体結晶の構造及び機能性評価>
拡散法及び電解法により作製した単結晶試料について、X線回折法による結晶構造解析を行った(Rigaku社製 RAXIS-RAPIDおよび4176F07CCD-3)。
【実施例】
【0088】
また、得られた有機電荷移動錯体の粉末試料について磁化率パラメータを算出した。結果を表1に示した。ここで、χは温度に依存しないパウリ磁化率の成分、Cはキュリー定数、θはワイス温度である。
【実施例】
【0089】
【表1】
JP2014198716A_000012t.gif
【実施例】
【0090】
その結果、χの値がTTF-PDC、SDM-TTF-PDC、TMTTF-PDCの順に大きくなっており、TTF誘導体の電気伝導率は上記の順に高いことが明らかになった。
【実施例】
【0091】
また、ワイス温度θは負の値となっていることから、TMTTF-PDCにおいては、低温で反強磁性的相互作用が存在していることが明らかになった。
【実施例】
【0092】
その結果、拡散法及び電解法により作製したTTF-PDC錯体結晶は、いずれも、PDC分子間で形成される3次元的な水素結合ネットワークにより、高電導性が期待される分離積層型の安定した結晶構造を持ち、TTFおよびPDCの1次元的カラム構造を有する。上記1次元的カラム構造を図8に示した。
【実施例】
【0093】
さらに電解法により作製したBEDT-TTF-PDC錯体結晶においても、結晶中でBEDT-TTF分子は水素結合ネットワークにより形成されたPDCシートによって分離された1次元的な積層構造をとることを明らかにした。上記1次元的カラム構造を図9に示した。
【実施例】
【0094】
<実施例7>PDC誘導体の作製
PDCの4,6位の-COOH基を、-COOCH基、-COOC基に置換した2種の置換体を作製した。
【実施例】
【0095】
(1)COOCH基置換体の合成
以下の材料を使用した。
【実施例】
【0096】
PDC(23mg、0.13mmol)
DMT-MM:4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium Chloride n-Hydrate(95mg 0.34mmol)
CHOH(20mL)
(26mL)
具体的には、200 mL ナスフラスコにPDC を 23.3 mg (0.13 mmol) 入れ, メタノール20 mL を加えて溶解させた後, ピリジンを 26.3 mL (0.33 mmol) 加えた。10 min. 攪拌後, DMT-MM を94.5 mg (0.34 mmol) 加え, 室温で18 hrs 反応を行い、2-ピロンの4,6位COOCH基置換体を得た。また、このCOOCH基置換体については、1H-NMRでそのピークを確認した。
【実施例】
【0097】
(2)COOC基置換体の合成
以下の材料を使用した。
【実施例】
【0098】
PDC(26mg、0.14mmol)
DMT-MM(90mg 0.33mmol)
OH(20mL)
(26mL)
具体的には、200 mL ナスフラスコにPDC を 26.0 mg (0.14 mmol) 入れ, エタノール20 mL を加えて溶解させた後, ピリジンを 26.0 mL (0.32 mmol) 加えた。10 min. 攪拌後、DMT-MM を90.4 mg (0.33 mmol) 加え, 室温で 18 hrs 反応を行い、2-ピロンの4,6位COOC基置換体を得た。また、このCOOC基置換体については、1H-NMRでそのピークを確認した。
【実施例】
【0099】
<実施例8>PDC誘導体のエネルギー準位の計算
PDCと実施例7で合成した2種の置換体(COOCH基置換体、COOC基置換体)およびCN基置換体(PDCの4,6位の-COOH基をCN基に置換したもの)について、分子軌道法でエネルギー準位を計算した。計算には Gaussian 09W ver. 0.9 を使用した。モデル分子をGaussView ver. 5.0 で設計し、DFT計算を用いて構造最適化および振動数計算を行った。汎関数はB3LYP, 基底関数には 6-311G(d)を用いた。
【実施例】
【0100】
その結果、PDCの最低非占有分子軌道 ( LUMO ) のエネルギーは -3.26 eV, COOCH基置換体の LUMO エネルギーは -3.04 eV, COOC基置換体の LUMO エネルギーは -2.98 eV, CN基置換体の LUMO エネルギーは -3.90 eVとなり、CN基置換体が最も電子親和力が大きくなり、高いアクセプター性を有していることが確認された。
【実施例】
【0101】
<実施例9>電子供与性分子としてのピレン誘導体
(1)ピレン誘導体
1,3-DAP、1,6-DAP、1,8-DAPは、市販のものを使用した(東京化成工業株式会社製)。また、以下の条件で、1,3,6,8-テトラアミノピレン(TAP)を合成した。1,3,6,8-テトラアミノピレン(TAP)は、1H-NMRでそのピークを確認した。
【実施例】
【0102】
【化10】
JP2014198716A_000013t.gif
【実施例】
【0103】
(2)電子供与性
1,3-DAP、1,6-DAP、1,8-DAPおよびTAPについて、酸化電位をサイクリックボルタンメトリー測定を行い、電子供与性の評価を行った。(ALS/「H」CH Instruments社製, Electrochemical Analyser Model600C、支持電解質としてテトラフルオロ硼酸テトラブシルアンモニウムを使用した。)その結果、1,3-DAPの第一酸化電位は0.3875 V(vs.Ag/AgCl)、1,6-DAPの第一酸化電位は0.3753 V(vs.Ag/AgCl), 1,8-DAPの第一酸化電位は0.3790V(vs.Ag/AgCl)であり、1,6-DAPが最も強い電子供与性を有していることが確認された。
【実施例】
【0104】
(3)SEM観察
PDC とピレン誘導体との電荷移動錯体の合成は H 管を用いた拡散法により行った。溶媒としてCH3OC6H5 とCH3CNを9:1(重量比)で混合したものを用いた。具体的な合成条件を表2に示す。
【実施例】
【0105】
【表2】
JP2014198716A_000014t.gif
【実施例】
【0106】
この1,3-DAP‐PDC、1,6-DAP‐PDC、1,8-DAP‐PDCおよびTAP‐PDCについてSEMで観察した結果を図10に示す。TAP-PDC錯体および1,3-DAP-PDC錯体のSEM像には粒子状の錯体結晶が、1,6-DAP-PDC錯体のSEM像には繊維状の錯体結晶が確認された。
【実施例】
【0107】
(4)磁化率(ESR測定)
1,3-DAP‐PDC、1,6-DAP‐PDC、1,8-DAP‐PDCおよびTAP‐PDCについて、ESR((Bruker社製 E-500) 9.4GHz帯(X-band))を用いてスピン常磁性磁化率を検討した。
【実施例】
【0108】
結果を表3に示す。X0は、パウリ常磁性磁化率(emu/mol)、Cはキュリー定数(emu/mol・K)、θは、常磁性キュリー温度(K)を示している。
【実施例】
【0109】
【表3】
JP2014198716A_000015t.gif
【実施例】
【0110】
表3に示したように、いずれの試料においてもX0の値は10-6 emu/molかそれ以下であった。
【実施例】
【0111】
<実施例10>電子供与性分子としてのベンジジン誘導体
(1)ベンジジン誘導体
3,3,’5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)および3,3’-ジメチルベンジジン(DMB)は、電解法で得たものを使用した。
【実施例】
【0112】
具体的には、TMBもしくはDMBおよびPDCのTBA塩(TBA(PDC))を表4に示す条件でAnisoleとCH3CN混合溶媒に溶かし、窒素雰囲気下で、白金電極を入れた状態で封管し、暗所にて1.0 μAの電流を3日間流すことにより錯体の作成を行った。
【実施例】
【0113】
【表4】
JP2014198716A_000016t.gif
【実施例】
【0114】
(2)電子供与性(CV測定)
TMBおよびDMBについて、酸化電位をサイクリックボルタンメトリー測定を行い、電子供与性を検討した。(ALS/「H」CH Instruments社製, Electrochemical Analyser Model600C)、支持電解質としてテトラフルオロ硼酸テトラブシルアンモニウムを使用した。)
その結果、TMBの第一酸化電位は、0.547 V(vs.Ag/AgCl)であり、DMBの第一酸化電位は、0.604 V(vs.Ag/AgCl)であり、TMBの方が強い電子供与性を有していることが確認された。
【実施例】
【0115】
(3)磁化率(ESR測定)
電解法によって作成したTMB-PDCおよびDMB-PDCをSEM観察したところ、板状の結晶が確認された。
【実施例】
【0116】
このTMB-PDCおよびDMB-PDCについて、ESR((Bruker社製 E-500) 9.4GHz帯(X-band))を用いてスピン常磁性磁化率を検討した。
【実施例】
【0117】
結果を表5に示す。X0は、パウリ常磁性磁化率(emu/mol)、Cはキュリー定数(emu/mol・K)、θは、常磁性キュリー温度(K)を示している。
【実施例】
【0118】
【表5】
JP2014198716A_000017t.gif
【実施例】
【0119】
表5に示したように、TMB-PDCはDMB-PDCよりもパウリ常磁性磁化率が高く、いずれの試料においても10-6 emu/molのオーダーであることが確認された。
【実施例】
【0120】
(4)電解法と拡散法の比較
電解法で作製したTMBと拡散法で作製したTMBについて、PDCとの錯体を作成し、磁化率(ESR測定)を比較した。
【実施例】
【0121】
拡散法においては、AnisoleとCH3CNの混合溶媒(体積比3:1)にTMBおよびPDCを溶かし、H管に窒素雰囲気下で封管後、暗所にて静置することにより錯体の作成を行った。電解法においては、TMBおよびPDCのTBA塩(TBA(PDC))を表6に示す条件でAnisoleとCH3CN混合溶媒に溶かし、窒素雰囲気下で、白金電極を入れた状態で封管し、暗所にて1.0 μAの電流を3日間流すことにより錯体の作成を行った。
【実施例】
【0122】
【表6】
JP2014198716A_000018t.gif
【実施例】
【0123】
得られた錯体の磁化率の測定は上記(3)に準じて行った。
【実施例】
【0124】
結果を表7に示す。
【実施例】
【0125】
【表7】
JP2014198716A_000019t.gif
【実施例】
【0126】
表7に示したように、電解法TMB-PDCは、拡散法TMB-PDCよりもパウリ常磁性磁化率が高く、有機電荷移動錯体としての有用性により優れていることが確認された。
【実施例】
【0127】
<実施例11>電気抵抗の評価
実施例9と同様の方法によって作製した1,3-DAP‐PDC、1,6-DAP‐PDC、1,8-DAP‐PDCと、実施例10と同様の方法によって作製したTMB-PDC、DMB-PDCについて、めのう乳鉢による粉砕により粉末状にし、この粉末をプレス加工することによりペレット状に成形した。
【実施例】
【0128】
この1,3-DAP‐PDC、1,6-DAP‐PDC、1,8-DAP‐PDC、TMB-PDCおよびDMB-PDCのペレット状試料について、2端子法により電気抵抗率(室温)を測定した(使用機器:Keithley社製2001 MultimeterおよびAdvantest社製R8340A Ultra High resistance Meter)。
【実施例】
【0129】
その結果、1,3-DAP‐PDCは3.8×105Ωmであり、1,6-DAP‐PDCは1.9×103Ωmであり、1,8-DAP‐PDCは3.4×105Ωmであり、TMB-PDCは400Ωmであり、DMB-PDCは19.5Ωmであった。
【実施例】
【0130】
以上の結果から、これらの錯体は電気伝導性を有することが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9