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明細書 :ホスホール化合物及びそれを含有する蛍光色素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-052863 (P2017-052863A)
公開日 平成29年3月16日(2017.3.16)
発明の名称または考案の名称 ホスホール化合物及びそれを含有する蛍光色素
国際特許分類 C09B  57/00        (2006.01)
C07F   9/6568      (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C09B 57/00 Z
C07F 9/6568 CSP
C09K 11/06
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2015-177520 (P2015-177520)
出願日 平成27年9月9日(2015.9.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1-1)発行日 2015年3月11日 刊行物 日本化学会 第95春季年会(2015)講演予稿集 (1-2)開催日 2015年3月26日から2015年3月29日 集会名、開催場所 日本化学会 第95春季年会(2015) 日本大学理工学部 船橋キャンパス(千葉県船橋市習志野台7-24-1) (2)ウェブサイトの掲載日 2015年6月17日 ウェブサイトのアドレス http://pubs.rsc.org/en/journals/journalissues/cc?e=1#!recentarticles&all http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2015/cc/c5cc03547c#!divAbstract (3)ウェブサイトの掲載日 2015年6月30日 ウェブサイトのアドレス http://orgreact.chem.nagoya-u.ac.jp/Home.html http://orgreact.chem.nagoya-u.ac.jp/Publications.html http://orgreact.chem.nagoya-u.ac.jp/Recent_Publications/entori/2015/6/30_xi_bao_neinatoriumuion_jian_chunotameno_chi_se_fa_guang_xingreshio_xing_ying_guangpurobu.html
発明者または考案者 【氏名】山口 茂弘
【氏名】多喜 正泰
【氏名】小笠原 宏亮
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H050
Fターム 4H050AA01
4H050AB91
4H050AB92
要約 【課題】今までにない光学的性質を有するホスホール化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるホスホール化合物。
JP2017052863A_000035t.gif
(Rはアルキル基、アリール基等;RはH、アリール基、F等;RはH、アリール基等;Arは置換/非置換の炭化水素芳香環等;nは0又は1;mは1~3の整数;π及びπはπ共役ユニットで、π共役ユニットは2価のアルケニル基、2価の炭化水素芳香環等;右端の環構造はπ又はπのうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合)
【効果】大員環部位がNa結合能力を持ち、Naが大員環部位に結合することにより蛍光極大波長が短波長側にシフトする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1):
【化1】
JP2017052863A_000030t.gif
(式(1)中、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、カルボニル基、イミノ基、シアノ基又はフッ素原子であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arは炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり、nは0又は1であり、mは1~3の整数であり、π及びπは同じであっても異なっていてもよいπ共役ユニットであって、該π共役ユニットは、2価のアルケニル基、2価の置換アルケニル基、2価のアルキニル基、2価の置換アルキニル基、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環であり、
【化2】
JP2017052863A_000031t.gif
はπ又はπのうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合している)
で表されるホスホール化合物。
【請求項2】
はアリール基又は置換アリール基であり、Rは水素原子、アリール基又は置換アリール基であり、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arはベンゼン環又はナフタレン環であり、nはゼロであり、mは2であり、π1はベンゼン環であり、
【化3】
JP2017052863A_000032t.gif
はベンゼン環であるπ1のパラ位に結合している、請求項1に記載のホスホール化合物。
【請求項3】
は、アリール基又は置換アリール基である、請求項2に記載のホスホール化合物。
【請求項4】
下記式(2):
【化4】
JP2017052863A_000033t.gif
(式(2)中、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arは炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり、nは0又は1であり、mは1~3の整数であり、π及びπは同じであっても異なっていてもよいπ共役ユニットであって、該π共役ユニットは、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環であり、
【化5】
JP2017052863A_000034t.gif
はπ又はπのうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合している)
で表されるホスホール化合物。
【請求項5】
はアリール基又は置換アリール基であり、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは同じものであって、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arはベンゼン環又はナフタレン環であり、nはゼロであり、mは2であり、πはベンゼン環である、請求項4に記載のホスホール化合物。
【請求項6】
は、アリール基又は置換アリール基である、請求項5に記載のホスホール化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のホスホール化合物を含有する蛍光色素。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホール化合物及びそれを含有する蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光性有機化合物は、有機EL素子の発光材料又は生体蛍光イメージングのための蛍光色素として重要であり、これまでに報告された例は、基礎研究及び応用の両面で枚挙に暇がない。中でも、周囲の環境によって蛍光色が劇的に変化する色素(例えばアクリロダン)は、蛍光プローブの中でも部位特異的な可視化に実用化されている。このような蛍光特性を実現するためには、電子供与性の高い(ドナー型)π共役ユニットと電子受容性の高い(アクセプター型)π共役ユニットを組み合わせるという分子設計が有効であることが多く示されている。得られる蛍光色素の発光色又は発光効率、および溶媒効果の大きさは、ドナーおよびアクセプターにどのようなπ共役ユニットを用いるかに大きく依存する。一方で、近年、新たな電子受容性π共役ユニットとして、ホスホール化合物が注目されつつある。例えば、非特許文献1には、2-アルケニルベンゾ[b]ホスホールオキシド及び2-アルキニルベンゾ[b]ホスホールオキシドの合成例と共にそれらの光学データが報告されている。また、非特許文献2には、2-アリールベンゾ[b]ホスホールオキシドの合成例と共にこれらの電気化学特性が報告されている。非特許文献1及び2に記載された化合物の一例を以下に示す。
【0003】
【化1】
JP2017052863A_000003t.gif

【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Organic Letters, 2013, vol.15, No.17, p4458-4461
【非特許文献2】Chem. Asian J., 2009, vol.4, p1729-1740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶媒の極性に応じて蛍光色が劇的に変化する従来の化合物は、多くが極性の低い溶媒中では強い蛍光を示すものの、極性の高いアルコールなどのプロトン性溶媒中では蛍光がみられない。このため、今までにない光学的性質を有する環境応答性の蛍光化合物の開発が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、今までにない光学的性質を有するホスホール化合物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明者らは、種々の新規なホスホール化合物を合成し、その光物性を調べたところ、ある種のホスホール化合物が今までにない光学的性質を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記項1~項7に示すホスホール化合物及び蛍光色素に係る。
1.下記式(1):
【0009】
【化2】
JP2017052863A_000004t.gif

【0010】
(式(1)中、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、カルボニル基、イミノ基、シアノ基又はフッ素原子であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arは炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり、nは0又は1であり、mは1~3の整数であり、π及びπは同じであっても異なっていてもよいπ共役ユニットであって、該π共役ユニットは、2価のアルケニル基、2価の置換アルケニル基、2価のアルキニル基、2価の置換アルキニル基、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環であり、
【0011】
【化3】
JP2017052863A_000005t.gif

【0012】
はπ又はπのうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合している)
で表されるホスホール化合物。
2.Rはアリール基又は置換アリール基であり、Rは水素原子、アリール基又は置換アリール基であり、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arはベンゼン環又はナフタレン環であり、nはゼロであり、mは2であり、π1はベンゼン環であり、
【0013】
【化4】
JP2017052863A_000006t.gif

【0014】
はベンゼン環であるπ1のパラ位に結合している、上記項1に記載のホスホール化合物。
3.Rは、アリール基又は置換アリール基である、上記項2に記載のホスホール化合物。
4.下記式(2):
【0015】
【化5】
JP2017052863A_000007t.gif

【0016】
(式(2)中、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基であり、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arは炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環であり、nは0又は1であり、mは1~3の整数であり、π及びπは同じであっても異なっていてもよいπ共役ユニットであって、該π共役ユニットは、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環であり、
【0017】
【化6】
JP2017052863A_000008t.gif

【0018】
はπ又はπのうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合している)
で表されるホスホール化合物。
5.Rはアリール基又は置換アリール基であり、Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは同じものであって、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Arはベンゼン環又はナフタレン環であり、nはゼロであり、mは2であり、πはベンゼン環である、上記項4に記載のホスホール化合物。
6.Rは、アリール基又は置換アリール基である、上記項5に記載のホスホール化合物。
7.上記項1~6のいずれか1項に記載のホスホール化合物を含有する蛍光色素。
【発明の効果】
【0019】
本発明のホスホール化合物は、ナトリウムイオンの結合に伴い、蛍光極大波長が短波長側にシフトするという性質を有する。このような性質を有することから、本発明のホスホール化合物は、例えば、レシオイメージングを行うことにより、細胞内ナトリウムイオンの変化を定量的に解析することができる新たなタイプの蛍光プローブ用色素として利用できることが期待される。本発明のホスホール化合物は、イメージング画像取得時の405nmの可視光レーザー光源を使用できることから、生体へのダメージを大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】1%DMSOを含む50mM HEPESバッファー(pH7.4)中におけるNaの添加の前後でのNaGYの吸収スペクトル(破線)及び発光スペクトル(実線)を示すグラフである。
【図2】(a)は、種々の濃度のNaの存在下でのNaGY(25μM)の発光スペクトルを示すグラフである。(b)は、Na濃度と、575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)との関係を示すグラフである。
【図3】種々の金属イオンの添加に応答したNaGYの金属イオン選択性を示すグラフである。
【図4】NaGY(25μM)における、pHと、575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)との関係を示すグラフである。
【図5】NaGY(10μM)を用いて可視化した細胞質のNaレベルの増加に伴う生きたHeLa細胞の蛍光強度比イメージ(λex=405nm)を示している。(a)は、ベースのDMEM培地を用いてインキュベートした細胞(0分)であり、(b)は、140mM Naを含むKフリーDMEMを用いてインキュベートした後の細胞(35分)である。(c)は、細胞外Kの不在下でインキュベーション中の細胞の平均I565-574/I662-689(N>20)の変化を示すグラフである。エラーバー=S.E.である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のホスホール化合物は、上記式(1)又は上記式(2)で表されるものである。本発明のホスホール化合物は、電位を受け取る能力が高いホスホールP-オキシド部位と、電子を供与する能力が高いπ共役系ユニットを有しており、該π共役系ユニットは、酸素原子及び窒素原子を含有する大員環部位を有している。この大員環部位がナトリウム結合能を有することから、本発明のホスホール化合物の大員環部位にナトリウムイオンが結合することにより、蛍光極大波長が短波長側にシフトする。

【0022】
は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基である。

【0023】
アルキル基としては、例えば、炭素数1~20の分岐を有していてもよいアルキル基及び環状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、sec-アミル基、tert-アミル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。置換アルキル基としては、例えば炭素数1~20の分岐を有していてもよいアルキル基及び環状のアルキル基のいずれか1つ以上の水素原子がハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基などで置換されたものが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。

【0024】
アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などのほか、チエニル基、フリル基、ピリジル基などが挙げられる。置換アリール基としては、例えば、アリール基の1つ以上の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基などで置換されたものが挙げられる。アルキル基の例示については、既に記載したとおりである。アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基などが挙げられる。

【0025】
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などが挙げられる。アルコキシ基は、-ORで表される基であり、ここではRはアルキル基のみならず、アルキル鎖が酸素原子を介してエーテル結合した基、アルキル鎖にカルボキシル基が結合した基、アルキル鎖が-COO-を介してエステル結合した基等も含むものとする。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、-O((CHO)CH(pは1~3の整数、qは1~10の整数)、-O-CH-COOH、-O-CH-COOC、-O((CH-COO)CH (rは1~3の整数、sは1~10の整数)などが挙げられる。

【0026】
カルボニル基は、例えば、フォルミル基、アシル基(メチルカルボニル基、エチルカルボニル基など)などが挙げられる。

【0027】
アミノ基は、-NH2である。置換アミノ基としては、アミノ基の1つ以上の水素原子がアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基で置換されたものなどが挙げられる。アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基の例示については、既に記載したとおりである。

【0028】
は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、カルボニル基、イミノ基、シアノ基又はフッ素原子である。アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、カルボニル基の例示については、既に記載したとおりである。イミノ基としては、例えば、アルキルイミノ基、置換アルキルイミノ基、アリールイミノ基、置換アリールイミノ基、スルホニルイミノ基などが挙げられる。スルホニルイミノ基は、イミノ基の窒素原子に-SORが結合したものであり、Rとしてはアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基などが挙げられる。イミノ基中のアルキル、置換アルキル等の例示は、既に記載したアルキル基、置換アルキル基等と同様である。

【0029】
は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基である。アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基の例示については、既に記載したとおりである。

【0030】
及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基である。アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基の例示については、既に記載したとおりである。

【0031】
Arは炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環又は置換ヘテロ芳香環である。

【0032】
炭化水素芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。置換炭化水素芳香環としては、例えば、炭化水素芳香環の1つ以上の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基などで置換されたものが挙げられる。パーフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。その他の置換基の例示は既に記載したとおりである。

【0033】
ヘテロ芳香環としては、例えば、チオフェン環、チアゾール環、ピロール環、イミダゾール環、フラン環、オキサゾール環、ピリジン環などのほか、ヘテロ芳香環と炭化水素芳香環との縮合環、ヘテロ芳香環同士の縮合環などが挙げられる。置換ヘテロ芳香環としては、例えば、ヘテロ芳香環の1つ以上の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基などで置換されたものが挙げられる。これらの置換基の例示は既に記載したとおりである。

【0034】
π1及びπ2は、同じであっても異なっていてもよいπ共役ユニットであって、該π共役ユニットは、上記式(1)では、2価のアルケニル基、2価の置換アルケニル基、2価のアルキニル基、2価の置換アルキニル基、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環であり、上記式(2)では、2価の炭化水素芳香環、2価の置換炭化水素芳香環、2価のヘテロ芳香環又は2価の置換ヘテロ芳香環である。

【0035】
アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基などが挙げられる。置換アルケニル基としては、アルケニル基のいずれか1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたものなどが挙げられる。

【0036】
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などが挙げられる。置換アルキニル基としては、アルキニル基のいずれか1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたものなどが挙げられる。

【0037】
炭化水素芳香環、置換炭化水素芳香環、ヘテロ芳香環及び置換ヘテロ芳香環の例示については、既に記載したとおりである。

【0038】
【化7】
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【0039】
はπ1又はπ2のうちホスホール骨格側へ電子を供与可能な位置に結合している。例えば、式(1)では、nがゼロでπ1がベンゼン環の場合、

【0040】
【化8】
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【0041】
はベンゼン環のパラ位に結合していることが好ましい。また、nが1でπ1及びπ2がベンゼン環の場合には、π2のベンゼン環はπ1のベンゼン環のパラ位に結合し、

【0042】
【化9】
JP2017052863A_000011t.gif

【0043】
はπ2がベンゼン環のパラ位に結合していることが好ましい。

【0044】
はアリール基又は置換アリール基であることが好ましい。Rは水素原子、アリール基又は置換アリール基であることが好ましい。Rはアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であることが好ましい。R及びRは同じものであって、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であることが好ましい。Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましい。式(1)では、nはゼロであり、mは2であり、π1はベンゼン環であり、

【0045】
【化10】
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【0046】
はベンゼン環であるπ1のパラ位に結合していることが好ましい。式(2)では、nはゼロであり、mは2であり、π1はベンゼン環であり、

【0047】
【化11】
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【0048】
はインデン環の5位又は6位に結合していることが好ましい。これらの場合、R及びRは、アルキル基又は置換アルキル基であり、ベンゼン環であるπ1に結合してアルキレン鎖又は置換アルキレン鎖を形成していてもよい。特に、本発明のホスホール化合物は、下記式(1’)又は(2’)で表されるものが好ましい。式(1’)及び(2’)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、シアノ基、又はニトロ基である。

【0049】
【化12】
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【0050】
本発明のホスホール化合物は、ベンゾホスホールP-オキシド蛍光色素分子に基づくNaのレシオメトリック蛍光プローブとして使用することができる。このプローブは、可視光(λex=405nm)を用いて励起させることができ、Naと錯体形成することで発光スペクトルに短波長側へのシフト(浅色シフト)を示すものである。レシオメトリック分析は、細胞間Na濃度の変化をモニターするのに適するNa解離定数(K=16.0±1.2mM)を示し、このプローブを用いることにより、生きている哺乳動物細胞においてNa/Kポンプをブロックすることにより起きる細胞間Na動力学のレシオメトリック可視化が可能となる。それゆえ、このプローブは、例えば電位に誘発されたNaの流入に関連した、ニューロン細胞におけるNa動力学の観測における診断ツールとして使用されることが期待できる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0052】
1.一般操作
1H、13C{1H}及び31P{1H}NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置A-400 spectrometer(JEOL)を用いて、重クロロホルム(CDCl)、重ジクロロメタン(CDCl)、DMSO-d又はTHF-d中で測定した(共鳴周波数1H:400MHz、13C:100MHz、及び31P:162MHz)。化合物2、3、5及び7を除く化合物の13C{1H}NMRスペクトル(150MHz)は、UltraCOOLプローブを備えた核磁気共鳴装置ECA 600 II spectrometer(JEOL)を用いて測定した。1H NMRのケミカルシフト値は、CHCl(δ7.26ppm)、CHCl(δ5.30ppm)、DMSO(δ2.50ppm)、又はTHF(δ1.72ppm)]のシグナルを内部標準として用いてδppmで記録した。また、13C NMRのケミカルシフト値は、CDCl(δ77.16ppm)、CDCl(δ53.84ppm)、及びDMSO-d(δ39.52ppm)の溶媒シグナルを内部標準として用いて記録した。31P NMRのケミカルシフト値は、H3PO4のシグナル(δ0.00ppm)を外部標準として用いて記録した。質量スペクトルは、micrOTOF Focus spectrometer(Bruker)を用いて、大気圧化学イオン化(APCI)又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)のイオン化法で測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲル60F254(Merck)を0.25mmの厚さで塗布した板を用いて行った。カラムクロマトグラフィーは、PSQ100B又はPSQ60B(富士シリシア化学)を用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲルカラム(ZIP Sphere cartridge)を備えたIsorera(Biotage)を用いて行った。分取リサイクルHPLCには、シリカゲルカラム(YMC-Actus SIL SL12S05-2520WX、YMC TECHNOS)又は逆相シリカゲルカラム(YMC-DispoPack AT ODS、YMC TECHNOS)を備えたLC-Forte/R(YMC TECHNOS)を用いて行った。分取リサイクル型ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、ポリスチレンゲルカラム(JAIGEL 1H及び2H、日本分析化学工業)を備えたLC-918(日本分析化学工業)を使用し、溶離液としてクロロホルムを用いて行った。
【実施例】
【0053】
アセトニトリルは、使用の前には3Åモレキュラーシーブ上で保存した。塩化ジグリコリルは、使用する前に蒸留した。無水DMF、無水THF、及び無水トルエンは、関東化学から購入した溶媒を、有機溶媒精製装置(Glass Contour社製)を用いてさらに精製したものを用いた。tert-ブチル2-メトキシフェニルカルバメートは、公知文献(例えば、I. Nakamura, U. Yamaguchi, D. Song, S. Konta, Y. Yamamoto, Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 2284-2287)に記載の方法に従って調製した。tert-ブチル(2,4-ジメトキシフェニル)カルバメートは、公知文献(例えば、T. Hashimoto, H. Nakatsu, Y. Takiguchi, K. Maruoka, J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 16010-16013)に記載の方法に従って調製した。3-ブロモ-1-フェニル-2-トリメチルシリルベンゾ[b]ホスホール-P-オキシドは、公知文献(例えば、A. Fukazawa, Y. Ichihashi, Y. Kosaka, S. Yamaguchi, Chem. Asian. J., 2009, 4, 1729-1740)に記載の方法に従って調製した。他のすべての化学製品は、民間の供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。すべての実験は、特に記述のない限り、アルゴン雰囲気下で行った。
【実施例】
【0054】
2.合成
本発明のホスホール化合物の具体例である、NaGY-Et、NaGY、及びNaGY-AM(NaGYのアセトキシメチルエステル)を、以下のスキームに従って合成した。
【実施例】
【0055】
【化13】
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【実施例】
【0056】
(a)tert-ブチル(8-クロロ-3,6-ジオキサオクチル)(2-メトキシフェニル)カルバメート(化合物2)の合成
無水DMF(50mL)中の1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(1.38mL、8.80mmol)及びNaH(鉱油中55%、212mg、4.84mmol)の懸濁液に、無水DMF(1.0mL)中のtert-ブチル2-メトキシフェニルカルバメート(439mg、2.20mmol)を5分間かけて滴下した。周囲温度で2日間攪拌した後、混合物を0℃で水でクエンチした。得られた有機層を分離し、水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(PSQ 100B、ヘキサン/酢酸エチル 3:1、Rf=0.33)に付すことにより、化合物2を無色油状物として636mg(1.71mmol、収率77%)得た。
【実施例】
【0057】
【数1】
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【実施例】
【0058】
(b)N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)-N-(2,4-ジメトキシフェニル)-N’-(2-メトキシフェニル)-4,7-ジオキサ-1,10-ジアザデカン(化合物3)の合成
無水DMF(20mL)中の化合物2(15.1g、38.9mmol)、NaH(鉱油中55%、3.01g、69.0mmol)及びKI(1.50g、9.05mmol)の懸濁液に、tert-ブチル(2,4-ジメトキシフェニル)カルバメート(12.8g、50.4mmol)を20分間かけて滴下した。周囲温度で11日間攪拌した後、混合物を水でクエンチした。得られた有機層を分離し、水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルのプラグ(PSQ 100B、ヘキサン/酢酸エチル 2:1)で濾過し、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(PSQ 60B、ヘキサン/酢酸エチル 3:1、Rf=0.14)に付すことにより、化合物3を無色油状物として15.5g(26.2mmol、収率68%)得た。
【実施例】
【0059】
【数2】
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【実施例】
【0060】
(c)1-(2-メトキシフェニル)-10-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,7-ジオキサ-1,10-ジアザデカン(化合物4)の合成
CHCl(85mL)中の化合物3(9.78g、16.5mmol)の懸濁液に、トリフルオロ酢酸(15.0mL)を大気下で添加した。周囲温度で1.5時間攪拌した後、揮発性物質を減圧下で除去した。得られた油状物をNaHCO水溶液で中和した。有機層を分離し、水層をCHClで5回抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ZIP Sphere 45g、ヘキサン/酢酸エチル 1:3、Rf=0.32)に付すことにより、化合物4を無色油状物として5.67g(14.5mmol、収率88%)得た。
【実施例】
【0061】
【数3】
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【実施例】
【0062】
(d)7-(2-メトキシフェニル)-13-(2,4-ジメトキシフェニル)-1,4,7-トリオキサ-7,13-ジアザシクロペンタデカン-8,12-ジオン(化合物5)の合成
無水トルエン(1L)を入れたフラスコに、無水ピリジン(20mL)及び無水トルエン(80mL)の混合物中の化合物4(4.67g、12.0mmol)の溶液、及び無水トルエン(100mL)中の塩化ジグリコリル(2.08g、12.0mmol)の溶液を、100℃で24時間かけて同時に滴下した。溶液をさらに100℃で2日間攪拌し、その後すべての揮発性物質を減圧下で除去した。水及びCHClを添加した後、有機層を分離し、水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせて水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、クロロホルム/メタノール 19:1、Rf=0.34)に付し、その後GPCに付すことにより、化合物5を無色固体として2.04g(4.18mmol、収率35%)得た。
【実施例】
【0063】
【数4】
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【実施例】
【0064】
(e)7-(2-メトキシフェニル)-13-(2,4-ジメトキシフェニル)-1,4,10-トリオキサ-7,13-ジアザシクロペンタデカン(化合物6)の合成
無水THF(18mL)中の化合物5(870mg、1.78mmol)及びNaBH(503mg、13mmol)の懸濁液に、BF・OEt(8.4mL、67mmol)を室温で注意深く添加した。4時間還流しながら攪拌した後、混合物をKCO水溶液で中和し、水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン 5:5:1、Rf=0.49)に付すことにより、化合物6を無色油状物として770mg(1.67mmol、収率94%)得た。
【実施例】
【0065】
【数5】
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【実施例】
【0066】
(f)7-(4-ブロモ-2-メトキシフェニル)-13-(2,4-ジメトキシフェニル)-1,4,10-トリオキサ-7,13-ジアザシクロペンタデカン(化合物7)の合成
無水CHCN(10mL)中の化合物6(800mg、1.74mmol)の溶液に、無水CHCN(10mL)中のN-ブロモスクシンイミド(325mg、1.8mmol)を-30℃で10分間かけて滴下した。室温で16時間攪拌した後、混合物をKCO水溶液でクエンチした。すべての揮発性物質を減圧下で除去し、得られた混合物をCHClで5回抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン 5:5:1、Rf=0.49)に付すことにより、化合物7を無色油状物として784mg(1.45mmol、収率85%)得た。
【実施例】
【0067】
【数6】
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【実施例】
【0068】
(g)2-トリメチルシリル-3-(4-tert-ブチルジメチルシロキシフェニル)-1-フェニルベンゾ[b]ホスホール-P-オキシド(化合物8)の合成
脱気したトルエン(32mL)及び脱気したHO(8mL)の混合物中の3-ブロモ-1-フェニル-2-トリメチルシリルベンゾ[b]ホスホール-P-オキシド(1.48g、3.94mmol)、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)フェニルボロン酸(1.30g、5.16mmol)、Pd(PPh(89mg、77μmol)、及びKPO(3.77g、17.8mmol)の溶液を90℃で12時間攪拌した。次いで、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、CHCl/酢酸エチル 5:1)により、その後GPCにより精製することにより、化合物8を無色油状物として1.78g(3.43mmol、収率85%)得た。
【実施例】
【0069】
【数7】
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【実施例】
【0070】
(h)2-ブロモ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルベンゾ[b]ホスホール-P-オキシド(化合物9)の合成
CHCN(15mL)中のN-ブロモスクシンイミド(854mg、4.80mmol)及び化合物8(1.69g、3.35mmol)の溶液を、大気下で15時間還流しながら攪拌した。NaSO水溶液を添加し、次いで、すべての揮発性物質を減圧下で除去した。得られた混合物をCHClで4回抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。次いで、THF(15mL)中のテトラ(n-ブチル)アンモニウムフルオリド(952mg、3.64mmol)を添加し、混合物を大気下、周囲温度で1.5時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した後、水を添加して混合物をCHClで4回抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ZIP Sphere 30g、CHCl/酢酸エチル 4:1、Rf=0.28)に付すことにより、化合物9を無色固体として917mg(2.31mmol、収率70%)得た。
【実施例】
【0071】
【数8】
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【実施例】
【0072】
(i)2-ブロモ-3-(4-エトキシカルボニルメチルオキシフェニル)-1-フェニルベンゾ[b]ホスホール-P-オキシド(化合物10)の合成
DMF(15mL)中のブロモ酢酸エチル(300μL、2.71mmol)、化合物9(916mg、2.31mmol)、及びKCO(749mg、5.42mmol)の懸濁液を、大気下、50℃で16時間攪拌した。水を添加した後、水層をCHClで抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、CHCl/酢酸エチル 9:1、Rf=0.32)に付し、その後GPCに付すことにより、化合物10を無色油状物として988mg(1.96mmol、収率85%)得た。
【実施例】
【0073】
【数9】
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【実施例】
【0074】
(j)NaGY-Etの合成
1,4-ジオキサン(5.0mL)中の化合物7(539mg、1.00mmol)、ビス(ピナコラト)ジボラン(263mg、1.00mmol)、Pd(dppf)Cl(73.4mg、0.10mmol)、及びKOAc(206mg、2.12mmol)の懸濁液を、100℃で24時間加熱した。化合物7が完全に消失した後、脱気した1,4-ジオキサン(3.0mL)及び水(1.0mL)中の化合物10(520mg、1.1mmol)及びKPO(1.12g、5.35mmol)の混合物を添加した。100℃で17時間攪拌した後、すべての揮発性物質を減圧下で除去した。水及びCHClを添加した後、有機層を分離し、水層をCHClで5回抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PSQ 100B、溶離剤をヘキサン/CHCl/EtN 4:6:1からCHCl/MeOH/EtN 9:1:1へ徐々に変化させた)に付した。粗生成物をさらにGPC及びHPLC(ヘキサン/CHCl/EtN 4:6:1)により精製することにより、NaGY-Etを黄色固体として103mg(0.12mmol、収率12%)得た。
【実施例】
【0075】
【数10】
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【実施例】
【0076】
(k)NaGYの合成
MeOH(1.0mL)及び水(0.5mL)中のNaGY-Et(13mg、15μmol)及びLiOH・HO(1.3mg、30μmol)の溶液を、大気下、周囲温度で90分間攪拌した。次いですべての揮発性物質を減圧下で除去した。水及びCHClを添加した後、有機層を分離し、水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。粗混合物を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び逆相HPLC(溶離剤を、0.1%TFAを含むHO/CHCN 4:1から0.1%TFAを含むHO/CHCN 1:1へ徐々に変化させた)に付した。得られた生成物を凍結乾燥することにより、NaGYを黄色固体として10mg(1.2mmol、収率83%)得た。
【実施例】
【0077】
【数11】
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【実施例】
【0078】
(l)NaGY-AMの合成
CHCl(2.5mL)中のNaGY(49.8mg、0.06mmol)、酢酸ブロモメチル(70μL、0.71mmol)、及びエチルジ(イソプロピル)アミン(30μL、0.18mmol)の溶液を、室温で18時間攪拌した。すべての揮発性物質を減圧下で除去した後、混合物をヘキサンで3回洗浄し、逆相HPLC(溶離剤を、5mMギ酸アンモニウムを含むHO/CHCN 1:1から5mMギ酸アンモニウムを含むCHCNへ徐々に変化させた)により精製した。得られた生成物を凍結乾燥することにより、NaGY-AMを黄色固体として5.1mg(収率9%)得た。しかしながら、量が足りず、13C NMRスペクトルを測定できなかった。
【実施例】
【0079】
【数12】
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【実施例】
【0080】
3.光物理的測定
NaGYのすべての分光計測を、1%DMSOを含む50mM HEPESバッファー(pH7.4)中で行った。NaGYの紫外可視吸収スペクトルの計測は、分光光度計UV-3150(島津製作所)を使用し、1cm角の石英キュベットを用いて、0.2nmの分解能で行った。発光スペクトル(25μM NaGY)は、分光蛍光光度計F-4500(日立)を使用し、10nmのスリット幅で測定した。光電子増倍管の電圧は700Vであった。絶対蛍光量子収率は、較正積分球システムPMA-11(浜松ホトニクス)で決定した。
【実施例】
【0081】
(1)Naの添加の前後でNaGYの吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した。NaGYの分光計測を、共溶媒として1%DMSOを含む50mM HEPES(pH7.4)中で行った。添加するNa濃度は200mMであった。発光スペクトルは励起波長405nmで測定した。その結果を図1に示す。図1において、破線は吸収スペクトルを示し、実線は発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0082】
図1より、NaGYでは、394nmの最大値を中心とした幅広い吸収バンド(ε=5.63×10-1cm-1)が観測された。Naの濃度が増加すると、吸収最大値は浅色的に371nmまでシフトした。その一方で、モル吸収係数は維持された。滴定の間に、2つの異なる等吸収点が337nm及び374nmで観測され、これは溶液中でのNaGYのNaフリー形態とNa結合形態との間の信号平衡を示している。吸収スペクトル中の浅色シフトは、Naイオンがドナー窒素原子へ配位したためであり、これがNaGYの分子内電荷移動(ICT)特性を減少させたと考えられる。
【実施例】
【0083】
(2)種々のNa濃度の存在下でNaGYの発光スペクトルを測定した。具体的には、NaCl(0、5、20、30、40、65、100、又は200mM)を添加して、50mM HEPES(pH7.4)中でNaGY(25μM)の発光スペクトルを測定した。すべてのスペクトルは、405nmの励起波長で記録した。その結果を図2(a)に示す。
【実施例】
【0084】
図2(a)より、Naの不在下では、NaGYは赤領域に幅広い発光バンドを示し(△λem=656nm;図2(a)中の(i))、非常に大きいStokesシフト(10100cm-1)が同時に起こった。このStokesシフトは、おそらく励起状態におけるより明白なICT特性に起因する。これは、水性媒体中でのNaGYの低い蛍光量子収率(Φ=0.016)の部分的な要因であろう。Naの濃度が増加するにつれて、発光スペクトルは浅色シフトを示し、200mMのNa濃度で最大発光波長が620nmに達した(図2(a)中の(ii))。その一方で、量子収率(Φ=0.028)はNaフリーのNaGYのそれに匹敵した。
【実施例】
【0085】
Naの結合が、405nmでの励起で575nm及び700nmで蛍光強度に最も大きい変化をもたらすことがわかったので(図示せず)、Naの濃度に対する575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)をプロットした。その結果を図2(b)に示す。この結果から、以下のようにして解離定数を算出したところ、K=16.0±1.2mMであった。これは吸収滴定から得られた値と良く一致している。この非線形適合解析により、NaGYは5~60mMのNa濃度の検出に適しており、これは細胞間Na濃度変動をモニターするのに最適な範囲であることが明らかとなった。
【実施例】
【0086】
解離定数(K)の決定
NaGYのNaを用いた吸収分光滴定を、1%DMSOを含む50mM HEPESバッファー(pH7.4)中で行った。NaGY(100μM)の最初の吸収スペクトルを測定し、溶液に適量のNaClを直接添加した。410nmでの吸光度(A410)を合計[Na]に対してプロットし、実験データを以下の方程式(eq.1):
【実施例】
【0087】
【数13】
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【実施例】
【0088】
(ここで、Aは410nmでの最初の吸光度値を表し、Aは410nmでの最後の吸光度値を表す。)を用いて、非線形最小二乗法曲線適合法により分析した。
【実施例】
【0089】
Naを用いたNaGYの蛍光でのレシオメトリック滴定は、用いたNaGYの濃度を25μMにしたことを除き、上述の実験手順に従って行った。575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)を合計[Na]に対してプロットした。データを以下の方程式(eq.2):
【実施例】
【0090】
【数14】
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【実施例】
【0091】
(ここで、Rminは最小比値を表し、Rmaxは最大比値を表す。Sf2という表現は、700nmでのNaフリー形態の発光強度であり、Sb2という表現は、700nmでのNa結合形態の発光強度である)を用いて曲線適合法により分析した。
【実施例】
【0092】
(3)生物学系におけるNaGYの性能をテストするために、種々の生物学的に関連する金属イオンの存在下で発光スペクトルを測定した。具体的には、NaGYの蛍光スペクトルを、150mM Na及びK、10mM Ca2+及びMg2+、又は0.1mM Mn2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びZn2+の存在下で測定した。使用したすべての金属源は塩化物塩であった。Na及びKについては、各塩化物塩をキュベット中の25μM NaGY(2.0mL)の溶液に直接添加した。Ca2+及びMg2+については、50mM HEPESバッファー(pH7.4)中の1Mストック溶液を調製した。Mn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びZn2+については、50mM HEPESバッファー(pH7.4)中の金属塩の10mMストック溶液を調製した。Fe3+については、1mM HCl水溶液(pH~3)中の1mMストック溶液を調製した。続いて、20μLのストック溶液を2.0mLの試料に添加した。指示された金属イオンを含む各溶液に、NaCl(17.53mg、0.3mmol)を直接添加した。試料を5分間攪拌し、発光スペクトルを測定した。575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)を計算した。結果を図3に示す。なお、図3において、灰色の棒は、150mM Na又はK、10mM Ca2+又はMg2+、又は0.1mM Mn2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+又はZn2+のいずれかの存在下での575nmと700nmとの間の蛍光強度比(I575/I700)を表す。黒色の棒は、溶液に200mM Naを添加した後の測定結果を表す。
【実施例】
【0093】
図3より、NaGYはNaに対して高い選択性を示すことがわかった。10mM Mg2+又はCa2+を添加しても(これらの金属イオンは、mMの範囲で細胞質中に存在する)蛍光特性における顕著な変化は観測されず、Mn2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu2+及びZn2+を含む0.1mMの生物学的に微量の金属を添加した場合でも顕著な変化は観測されなかった。さらに、これらの金属イオンの存在は、Naの錯体形成を妨げなかった。
【実施例】
【0094】
(4)NaGY(25μM)の発光スペクトルを、種々のpH値において緩衝液中で測定した。各pH緩衝液は、pH5.5~7ではMESを、pH7.5及び8ではHEPESを用いて調製し、pH値は、MeNOH・5HOを用いて調整した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0095】
図4より、NaGYの発光スペクトルは広い範囲のpH値(pH5-8)で一定であり、それゆえその蛍光特性は細胞間のpH変化により影響されないことがわかった。さらに、トリパンブルー分析により、NaGYの細胞毒性が無視できる程度であることが明らかとなった(図示せず)。
【実施例】
【0096】
4.細胞培養実験
HeLa細胞(理化学研究所 細胞材料開発室(Cell Bank)、日本)を、5%CO/95%空気のインキュベーター中で37℃で10%ウシ胎児血清(FBS、ギブコ)及び1%抗生物質-抗真菌溶液(AA、シグマ)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ)中で培養した。イメージングの前に、細胞(5×10)を3日間、ガラス底の8ウェルプレートに播種した。細胞間Naのレシオメトリックイメージングのために、インキュベーション培地を細胞から除去し、次いで細胞を37℃で30分間DMEM中で10μM NaGY-AMをインキュベートし、DMEMで3回洗い流した。プレートを20μLのDMEMで満たした後、GaAsPマルチチャンネルスペクトル検出器を備えた共焦点顕微鏡LSM 780(ツァイス)を用いて、405nmレーザーで蛍光イメージを記録した。細胞間Naのレシオメトリックイメージングのために、それぞれNa結合形態に対応する565-574nmの範囲での積分発光強度(I565-574)、及びNaフリー形態に対応する662-689nmの範囲での積分発光強度(I662-689)を、ImageJソフトウェアを用いて採取し、比イメージ(I565-574及びI662-689)をピクセルベースで得た。
【実施例】
【0097】
生体内でのNa動力学のイメージングを以下のように行った。取得開始前に、細胞を37℃で30分間NaGY(10μM)で染色した。インキュベーション培地を、取得開始後10分で細胞から除去し、次いでPBS(pH7.4)中の140mM Naを含むKフリーの培地を細胞に添加した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0098】
図5(a)及び(b)は、Na/Kポンプの阻害による、すなわちNa/Kポンプ活性は細胞間Na濃度に敏感であることから、インキュベーション培地を140mM Naを含むKフリーDMEMに置き換えることによる、疑似カラー化した比のイメージの変化を示している。図5(c)から、インキュベーション期間の間に、Na/Kポンプをブロックした後、I565-574/I662-689比は直線的に増加したことがわかる。この結果は、Depsaらによる、同じK培地中で40分間のインキュベーション期間にHeLa細胞中のNa濃度が10mMから35mMに直線的に増加したという報告と良く一致しており、NaGYが生体細胞中において生物学的に関連する濃度範囲内でNa濃度の変化を調べることができることを示唆している。
【実施例】
【0099】
以上より、本発明のホスホール化合物は、ベンゾホスホール-P-オキシド蛍光色素分子に基づくNaのレシオメトリック蛍光プローブとして使用することができる。このプローブは、可視光(λex=405nm)を用いて励起させることができ、Naと錯体形成することで発光スペクトルに浅色シフトを示すものである。レシオメトリック分析は、細胞間Na濃度の変化をモニターするのに適するNa解離定数(K=16.0±1.2mM)を示した。このプローブを用いることにより、生きている哺乳動物細胞においてNa/Kポンプをブロックすることにより起きる細胞間Na動力学のレシオメトリック可視化が証明された。それゆえ、このプローブは、例えば電位に誘発されたNaの流入に関連した、ニューロン細胞におけるNa動力学の観測における診断ツールとして使用されることが期待できる。
【実施例】
【0100】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、化学産業に利用可能であり、例えば、生体蛍光イメージングのための蛍光色素などに利用可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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