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明細書 :焼却灰の処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-217314 (P2015-217314A)
公開日 平成27年12月7日(2015.12.7)
発明の名称または考案の名称 焼却灰の処理方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
FI B09B 3/00 304G
B09B 3/00 ZAB
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2014-099996 (P2014-099996)
出願日 平成26年5月13日(2014.5.13)
発明者または考案者 【氏名】山田 一夫
【氏名】市川 恒樹
出願人 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100141966、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 範彦
【識別番号】100103539、【弁理士】、【氏名又は名称】衡田 直行
審査請求 未請求
テーマコード 4D004
Fターム 4D004AA36
4D004AB03
4D004CA15
4D004CA35
4D004CB21
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC13
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
要約 【課題】本発明は、鉛や金属アルミニウムを含む焼却灰からの鉛の溶出や金属アルミニウムの発泡を抑制するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、塩化カルシウム(CaCl)および/または水酸化塩化カルシウム(CaClOH)と、水酸化カルシウム(Ca(OH))とを含み、さらに、鉛および/または金属アルミニウムを含む焼却灰と、水およびセメントとを混合した後、該混合物中の液分を採取し、該液分のpHが12を超える場合は、該混合物にさらに塩化カルシウムを添加して、該pHを12以下にする、焼却灰の処理方法である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
塩化カルシウム(CaCl)および/または水酸化塩化カルシウム(CaClOH)と、水酸化カルシウム(Ca(OH))とを含み、さらに、鉛および/または金属アルミニウムを含む焼却灰と、水およびセメントとを混合した後、該混合物中の液分を採取し、該液分のpHが12を超える場合は、該混合物にさらに塩化カルシウムを添加して、該pHを12以下にする、焼却灰の処理方法。
【請求項2】
前記混合物中の液分のカルシウムイオン濃度が0.5M以上である、請求項1に記載の焼却灰の処理方法。
【請求項3】
前記pHが12以下になった混合物から固液分離して得られた塩化カルシウムを含む液分を、前記塩化カルシウムの全部または一部としてリサイクルする、請求項1または2に記載の焼却灰の処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰に含まれる鉛の溶出や金属アルミニウムの発泡を抑制するために、焼却灰のpHを低減する焼却灰の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却灰は、表1に示すように、一般に、両性金属である鉛や金属アルミニウムを含むほか、焼却炉の排ガス中の塩化水素を中和するために吹き込まれた消石灰やその中和生成物である塩化カルシウムを含む。そして、焼却灰の液性は、未反応のままで残存する消石灰のため、一般に水酸化カルシウムの溶解平衡から最大pH12.7程度のアルカリ性を示す。
【0003】
【表1】
JP2015217314A_000002t.gif

【0004】
鉛は両性金属であるから、鉛の溶解度は、非特許文献1の図1に示すように、pH12以下では低いがpH12を超えると急に高くなる。また、金属アルミニウムは、下記反応式に示すように、アルカリ性の液中では水を還元して水素ガスが発生する。
2Al+6OH+6HO → 2Al(OH)+6OH+3H
ただし、前記反応により生成する水酸化アルミニウムは難溶性であるため、弱アルカリ性では、金属アルミニウムの表面に難溶性被膜が形成されて前記反応は停止する。しかし、pH12を超える強アルカリ性では、水酸化アルミニウムが水溶性のアルミン酸に変わるため、前記反応は停止することなく水素ガスが発生し続ける。
【0005】
通常、焼却灰は、防塵や減容化のため、焼却灰の質量の数%~50%程度のセメントを用いて固型化処理した後、最終処分場内に埋め立て処分されている。
そして、前記セメントの種類や添加量により、セメント固型化物のpHは13を超える場合がある。該pHでは、図1に示すように鉛の溶解度は10-2Mを超え、また、セメントの凝結の初期段階から水素ガスが多量に発生して、焼却灰とセメントの混練物が膨張し、硬化体の組織が脆くなる。さらに、水素ガスの発生が甚だしい場合、前記混練物は1個の硬化体を形成することなく発泡したり、崩壊して大小の脆弱な塊状物になり、該塊状物からの鉛の溶出は増加することが予想される。ちなみに、水質汚濁防止法に規定する鉛の排水基準は0.3mg/L(1.4×10-6M)である。
【0006】
そこで、特許文献1では、焼却灰をアルカリまたは酸で処理して金属アルミニウムを除いた後に、セメントを用いて固型化する方法がいくつか提案されている。具体的には、請求項1の発明は、金属アルミニウム等が残存する焼却灰をアルカリ水溶液で処理し、金属アルミニウム等を水酸化物にした後、脱水し、セメントを加えて固型化する方法である。また、請求項2の発明は、前記焼却灰を酸で処理し、金属アルミニウム等をアルミニウム塩とした後、中和して脱水し、セメントを加えて固型化する方法である。さらに、請求項3の発明は、セメントを加えて固型化する際に、重金属イオン固定剤を加える方法である。
しかし、請求項1の発明は、焼却灰をアルカリ水溶液で処理するから、鉛の溶解度がより高くなって鉛が溶出し易くなり、その分、重金属イオン固定剤の添加量が増加してコスト高になると予想される。
また、焼却飛灰は1~40質量%もの未反応の水酸化カルシウムを含むから、前記請求項2の発明では、本来、金属アルミニウム等を塩にする目的で添加した酸の大部分は、目的外の水酸化カルシウムとの反応に消費されるため、多量の酸の添加が必要な場合があり、実用性に乏しいと考える。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】株式会社ポーラーズ研究所 ホームページ、[online]、[平成26年4月28日検索]、インターネット<URL:http://www.pollars.co.jp/hihai.html>
【0008】

【特許文献1】特開平09-314092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、鉛や金属アルミニウムを含む焼却灰中の鉛の溶出や金属アルミニウムの発泡を抑制するための、焼却灰の低コストかつ簡易な処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、前記目的にかなう方法を検討したところ、i)塩化カルシウムは焼却灰のpHを低下させること、また、ii)焼却灰中に含まれる塩化カルシウムを有効に活用すれば、薬剤コストを削減できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を有する焼却灰の処理方法である。
[1]塩化カルシウム(CaCl)および/または水酸化塩化カルシウム(CaClOH)と、水酸化カルシウム(Ca(OH))とを含み、さらに、鉛および/または金属アルミニウムを含む焼却灰と、水およびセメントとを混合した後、該混合物中の液分を採取し、該液分のpHが12を超える場合は、該混合物にさらに塩化カルシウムを添加して、該pHを12以下にする、焼却灰の処理方法。
[2]前記混合物中の液分のカルシウムイオン濃度が0.5M以上である、前記[1]に記載の焼却灰の処理方法。
[3]前記pHが12以下になった混合物から固液分離して得られた塩化カルシウムを含む液分を、前記塩化カルシウムの全部または一部としてリサイクルする、前記[1]または[2]に記載の焼却灰の処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の焼却灰の処理方法は、焼却灰中の塩化カルシウムや、不足する場合にさらに外部から補充した塩化カルシウムが、水酸化カルシウムに優先して溶出するため、水酸化カルシウムの溶出が抑制されてpHが低下し、鉛の溶出や水素ガスの発生を簡易に低減できる。また、本発明の焼却灰の処理方法は、焼却灰中に元々含まれる塩化カルシウムを有効に活用できるため、その分、薬剤コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】pHと鉛の溶解度の関係を示す図である。
【図2】焼却飛灰中のカルシウムイオン濃度と焼却飛灰のpHの関係を示す図である。
【図3】焼却飛灰がセメント固型化により発砲した状況を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前記のとおり、塩化カルシウムや鉛等を含む焼却灰と、水およびセメントとを混合して得た混合物中の液のpHが12を超える場合は、該混合物にさらに塩化カルシウムを混合して、該pHを12以下にする焼却灰の処理方法等である。
以下、本発明について、焼却灰、水、セメント、塩化カルシウム、および焼却灰等の混合方法に分けて詳細に説明する。

【0015】
1.焼却灰
本発明が対象とする焼却灰は、塩化カルシウム(CaCl)および/または水酸化塩化カルシウム(CaClOH)と、水酸化カルシウム(Ca(OH))とを含み、さらに、鉛および/または金属アルミニウムを含む焼却灰である。前記水酸化塩化カルシウムは、水酸化カルシウムと塩化カルシウムとの単なる混合物ではなく、固有のX線回折パターンを有する化合物である。また、本発明において焼却灰とは、飛灰および/または主灰をいう。
塩化カルシウムは潮解性が高く、焼却炉中では存在しても、飛灰として回収され、粉塵対策として散水される場合が多いため、実験室で測定をすると塩化カルシウムはX線回折法では検出されないことも多い。したがって、塩化カルシウムの含有量は、溶出したカルシウムイオンが塩化カルシウムからのものであると仮定して求める。
塩化カルシウムは、表1に示すように、焼却灰中に4~24質量%程度含まれ、また水酸化カルシウムより水中への溶出速度や溶解度が高い。したがって、本発明の焼却灰の処理方法においてpHが低下するメカニズムは、焼却灰に加水することにより塩化カルシウム由来のカルシウムイオンの濃度が高くなり、カルシウムイオンの共通イオン効果により水酸化カルシウムの溶出が抑制されるものと推察される。よって、本発明では、焼却灰に元々存在する塩化カルシウムを有効に活用できるため、その分、薬剤コストを削減できる。

【0016】
2.水
本発明において用いる水は、特に制限されず、水道水、雨水、スラッジ水、および下水処理水等が挙げられる。また、水の混合量は、焼却灰100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは25質量部以上である。水の混合量が5質量部未満では、セメントの強度発現に必要な水が足りない場合がある。

【0017】
3.セメント
本発明において用いるセメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、石炭灰含有セメント、およびエコセメントからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
セメントの混合量は、焼却灰100質量部に対し、好ましくは5~100質量部である。該混合量が該範囲にあれば、焼却灰の防塵や減容化が可能である。

【0018】
4.塩化カルシウム
本発明において用いる塩化カルシウムは、工業製品および試薬のいずれでもよい。また、塩化カルシウムの使用形態は、粉粒体または水溶液にして用いることができるが、混合の容易性から、好ましくは水溶液である。
さらに、前記塩化カルシウムは、pH12以下に調整した焼却飛灰の洗浄水、および本発明の焼却灰の処理方法においてpHが12以下になった前混合物から固液分離して得られた塩化カルシウムを含む液分等の塩化カルシウム含有水が挙げられる。該塩化カルシウム含有水を、外部から混合する塩化カルシウムの全部または一部代替として有効活用すれば、さらにその分、薬剤コストを削減できる。

【0019】
5.焼却灰等の混合方法
焼却灰、水およびセメントの混合は、特に制限されず、i)焼却灰と水を混合した後、該混合物にセメントを混合する方法、ii)セメントと水を混合した後、該混合物に焼却灰を混合する方法、iii)セメント、水および焼却灰を一緒(同時)に混合する方法が挙げられる。いずれの方法でも、焼却灰を湿潤状態で混合するため、焼却灰中の鉛等の有害物質の飛散を防止することができる。なお、混合装置は、強制練りミキサ、混練造粒機、混練押出機等が使用できる。また、成型は、流し込み、振動締固め、転圧など混合物のレオロジー特性に応じて種々の方法を用いることができる。
また、焼却灰中に水酸化カルシウムが過剰に含まれる場合や、固型化に必要なセメントが多くなる場合等において、焼却灰に元々含まれる塩化カルシウムの量では、焼却灰のpHを12以下にできない場合は、さらに外部から塩化カルシウムを添加して混合し、pHを12以下にする。なお、混合のし易さから塩化カルシウムは水溶液の形態で混合するとよい。

【0020】
焼却灰、水、セメント、および塩化カルシウムの混合物中の液分のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0.5M以上である。該濃度が0.5M以上であれば、図2に示すように、前記混合物中の液のpHは12.0以下になる。なお、該濃度は、より好ましくは0.7M以上である。
【実施例】
【0021】
表1に示す流動床炉飛灰100質量部(乾燥状態に換算して)に対し、水を95質量部(該飛灰に含まれる水分を含む)、普通ポルトランドセメントを75質量部添加して、ホバートミキサを用いて3分間混練した(1回目の混練)。1回目の混練物の液分のpHは12.2であった。また、1回目の混練の間や、型枠に充填中にも水素ガスが発生した。発泡した硬化体の例を図3に示す。
次に、該混練物中に、流動床炉飛灰100質量部(乾燥状態に換算して)に対し塩化カルシウムを10質量部添加して3分間混練した(2回目の混練)。2回目の混練物の液分のpHは11.1であった。また、2回目の混練の間、水素ガスは発生しなかった。なお、水素ガスの発生は、金属アルミニウム上に生成している酸化被膜の厚さに依存すると考えられ、飛灰に金属アルミニウム試薬を添加すると、水素ガスはより発生しやすくなり、また、時間が経過した飛灰やロットによっては水素ガスの発生時期が遅れることもあった。
また、1回目および2回目の混練物の液分中の鉛の濃度を、誘導イオンプラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて測定した結果、1回目の液分では1×10-5M、2回目の液分では2×10-7Mであり、pHが低いほど鉛の濃度が低い。したがって、本発明の焼却灰の処理方法は、焼却灰からの鉛の溶出や水素ガスの発生を簡易に低減することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2