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明細書 :筋状態変化検出装置及びストレッチング評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-221122 (P2015-221122A)
公開日 平成27年12月10日(2015.12.10)
発明の名称または考案の名称 筋状態変化検出装置及びストレッチング評価装置
国際特許分類 A61B   5/00        (2006.01)
A61H   1/02        (2006.01)
FI A61B 5/00 101N
A61H 1/02 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-106731 (P2014-106731)
出願日 平成26年5月23日(2014.5.23)
発明者または考案者 【氏名】藤江 正克
【氏名】小林 洋
【氏名】岡村 尚美
【氏名】築根 まり子
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 4C117
Fターム 4C117XB01
4C117XD11
4C117XD31
4C117XE27
4C117XJ12
4C117XR03
要約 【課題】ストレッチ運動のように、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位の状態変化を正確に検出する。
【解決手段】本発明に係る筋状態変化検出装置は、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位を一定の力で押圧したときの反力に基づき、当該筋部位の経時的な状態変化を検出する装置である。この筋状態変化検出装置では、経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間とを対数変換した値について、反力と時間との関係を直線近似し、当該直線が別種の直線に遷移したタイミングを筋部位の状態が変化したタイミングと推定する処理を行われる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位を一定の力で押圧したときの反力に基づき、当該筋部位の経時的な状態変化を検出する筋状態変化検出装置において、
経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間とを対数変換した値について、前記反力と前記時間との関係を直線近似し、当該直線が別種の直線に遷移したタイミングを前記筋部位の状態が変化したタイミングと推定する処理を行うことを特徴とする筋状態変化検出装置。
【請求項2】
所定の筋部位に対して行ったストレッチ運動中に、当該筋部位の筋緊張が緩和するタイミングを検出するストレッチング評価装置であって、
前記筋部位を一定の力で押圧し、当該筋部位からの反力を一定時間毎に計測する押込み反力計測手段と、当該押込み反力計測手段で計測された前記反力に基づき、ストレッチ運動中の筋粘弾性の変化を連続的に検出することで、前記筋緊張が緩和するタイミングを推定する筋緊張緩和推定手段とを備えたことを特徴とするストレッチング評価装置。
【請求項3】
前記筋緊張緩和推定手段では、経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間とを対数変換した値について、前記反力と前記時間との関係を直線近似し、当該直線が別種の直線に遷移したタイミングを前記筋緊張が緩和したタイミングと推定することを特徴とする請求項2記載のストレッチング評価装置。
【請求項4】
前記筋緊張緩和推定手段は、経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間から、所定の関係式を用いて前記筋緊張の緩和評価用の指標値を求める演算部と、当該演算部で求められた前記指標値に基づき、前記筋緊張の緩和タイミングを判定する判定部とを備えたことを特徴とする請求項2記載のストレッチング評価装置。
【請求項5】
前記指標値は、応力緩和の影響を除外した見かけの弾性率を意味する筋粘弾性率と、弾性に対する粘性の比率を表す筋粘弾比とからなり、
前記演算部では、前記指標値をパラメータとする前記反力と前記時間との関係を示す関係式に、経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間とを代入して、前記指標値を求める演算処理を行うことを特徴とする請求項4記載のストレッチング評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、筋状態変化検出装置及びストレッチング評価装置に係り、特に、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位について、応力緩和の影響を除外し、筋粘弾性の経時的な変化のみから、筋部位の経時的な状態変化を検出する筋状態変化検出装置及びストレッチング評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運動時の障害予防や運動後の疲労回復等を目的として、当該運動前後に、反動を付けずに対象となる筋肉を伸張しながらその姿勢を維持するストレッチ運動(静的ストレッチング)が広く行われている。当該静的ストレッチングは、筋肉の緊張(筋緊張)を緩和することにより、個人が有する筋肉本来の柔軟性を維持し、運動時における筋肉、腱、靭帯等へのストレスを軽減することで障害を予防するとともに、筋肉周囲の血液の循環を良好にして疲労物質の除去を促すこと等の効果が期待できる。このような効果を最大限に高めるには、筋が弛緩する時間、すなわち、筋緊張緩和に必要十分となるストレッチングの継続時間を把握することが重要である。しかしながら、ストレッチング中の筋の緊張状態の変化を計測することは困難であり、また、筋肉の柔軟性等には個人差が存在するため、ストレッチングの継続時間の推奨値は明確でない。
【0003】
ところで、筋緊張が緩和すると、筋弾性率が低下することが知られており、ストレッチング中に筋弾性率の変化を正確に検知できれば、筋緊張が緩和するタイミングを検知することも可能である。この際、ストレッチングによって伸張している筋部位を押圧した際の反力(押込み反力)から、当該筋部位の筋弾性率(硬度)を取得可能な筋硬度計を利用した手法が考えられる(非特許文献1参照)。当該筋硬度計による筋弾性率の取得は、押込み反力の値が筋弾性率及び筋伸縮量にそれぞれ比例する性質が利用される。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】内山孝憲、大杉健司、村山光義,「押し込み反力計測による筋の硬さ評価-等尺性収縮力依存性と筋疲労の影響-」,バイオメカニズム,バイオメカニズム学会,2006年9月,Vol.18,pp.19-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した手法を利用しても、静的ストレッチング中における筋緊張の緩和タイミングを正確に検出できないという不都合がある。すなわち、一時的な筋肉の状態を計測する場合には、押込み反力の計測値から筋弾性率を求めることが出来ても、ストレッチング中に連続計測を行う場合、押込み反力の経時的な変化には、筋肉の粘性要素を含めた応力緩和の影響が支配的に現れてしまうため、筋弾性率の経時的変化のみを正確に把握することが困難であり、筋緩和状態を適切に評価することができない。
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意、実験研究を行った結果、押込み圧力の連続計測において、応力緩和成分を分離可能な粘弾性モデルを用い、静的ストレッチング中における筋緊張の緩和タイミングを推定する新たな手法を創出し、当該手法の検証実験を行った結果、有用性が証明された。そこで、当該手法につき以下に詳述する。
【0007】
分数次微分(分数階微分)を用いた公知の粘弾性モデルをストレッチングにおける筋肉の状態に適用すると、次式(1)のように表される。
【数1】
JP2015221122A_000003t.gif
ここで、Fは押込み反力、tはストレッチ運動の継続時間、xは筋伸張量、rは、弾性に対する粘性の比率を表す筋粘弾比、Gは筋粘弾性率とした。ここで、筋粘弾性率Gは、応力緩和の影響を除外した見かけの弾性率を意味し、筋緊張緩和によって値が低下する性質のものである。
ストレッチング中は、筋伸張量が一定のxであると仮定すると、上式(1)より、次式(2)が得られる。
【数2】
JP2015221122A_000004t.gif
そして、当該式(2)を更に対数変換すると、次式(3)が得られる。
【数3】
JP2015221122A_000005t.gif

【0008】
ここで、筋伸張による応力緩和現象のみが起こり、筋粘弾性が変化しないとき、すなわち、筋粘弾比rと筋粘弾性率Gが一定のときは、上式(3)により、logtとlogFとの関係は、一次関数で表されることになり、上式(3)の第1項の係数及び第2項の切片が定数となる。従って、このとき、上式(3)は、両対数グラフ上において直線で現れる。一方、ストレッチング中のある時間に筋緊張緩和が起こったとすると、筋粘弾比rや筋粘弾性率Gが変化するため、両対数グラフ上において、logtとlogFとの関係を示す直線は、筋緊張緩和前の直線に対して異なる直線となる。
【0009】
そこで、本発明者らは、ストレッチング中において、ストレッチ運動の開始から所定時間毎に、押込み反力Fをリアルタイムに計測し、時間tと、当該時間tにおける押込み反力Fをそれぞれ対数変換し、隣接する時間におけるそれらの値から、上式(3)を用いて、筋粘弾比rと筋粘弾性率Gを計算し続け、当該計算値に有意な低下が見られた時間を筋緊張が緩和したタイミングと推定する手法を新たに創出した。
【0010】
本発明は、以上の発明者らの知見に基づき創出されたものであり、その目的は、ストレッチ運動のように、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位の状態変化を正確に検出することができる筋状態変化検出装置及びストレッチング評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位を一定の力で押圧したときの反力に基づき、当該筋部位の経時的な状態変化を検出する筋状態変化検出装置において、経時的に取得された前記反力と各反力が得られた時間とを対数変換した値について、前記反力と前記時間との関係を直線近似し、当該直線が別種の直線に遷移したタイミングを前記筋部位の状態が変化したタイミングと推定する処理を行う、という構成を採っている。
【0012】
また、本発明は、所定の筋部位に対して行ったストレッチ運動中に、当該筋部位の筋緊張が緩和するタイミングを検出するストレッチング評価装置であって、前記筋部位を一定の力で押圧し、当該筋部位からの反力を一定時間毎に計測する押込み反力計測手段と、当該押込み反力計測手段で計測された前記反力に基づき、ストレッチ運動中の筋粘弾性の変化を連続的に検出することで、前記筋緊張が緩和するタイミングを推定する筋緊張緩和推定手段とを備える、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筋を伸張しながら所定の身体部分を一定姿勢で維持する場合に、当該身体部分の筋部位について、応力緩和の影響を分離して筋弾性率の変化のみを検出することができ、当該筋弾性率の変化に基づく筋部位の状態変化のタイミングを正確に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るストレッチング評価装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0016】
図1は、本実施形態に係るストレッチング評価装置の構成を示すブロック図である。このストレッチング評価装置10は、被評価者が所定の筋部位に対して行ったストレッチ運動中に、当該筋部位の筋緊張が緩和したタイミング(時刻)を検出し、当該タイミングからストレッチ運動の有効性を被評価者に認識させるための装置である。

【0017】
前記ストレッチング評価装置10は、図1に示されるように、筋部位を所定の大きさの力で押圧し、当該筋部位からの反力を一定時間毎に検出する押込み反力計測手段12と、押込み反力計測手段12で計測された反力から、ストレッチ運動中の筋粘弾性の変化を連続的に検出することで、前記筋緊張が緩和するタイミングを推定する筋緊張緩和推定手段13と、筋緊張緩和推定手段13により推定された筋緊張の緩和状態等の情報を提示する提示手段14とを備えている。

【0018】
前記押込み反力計測手段12は、ストレッチング運動によって伸張される筋部位に取り付ける力センサユニット(図示省略)により構成される。当該力センサユニットは、力センサの感圧面上に樹脂製の圧子を突出させた構造となっており、測定対象となる筋部位の存在する脚部や腕部にベルト等で巻き付けられ、当該筋部位に着脱自在に固定される。当該力センサユニットが筋部位に装着された状態では、前記圧子により、当該筋部位が一定の力で押し込まれ、この押込みに対する反力(以下、「押込み反力」と称する)が、前記力センサによって一定時間毎に測定されるようになっている。なお、前記押込み反力計測手段12としては、前述の構造に限定されるものではなく、対象となる筋部位への押込みと、当該押込みによる押込み反力を経時的に検出可能な限りにおいて、種々の構造のセンサや計測機器の代替適用が可能である。

【0019】
前記筋緊張緩和推定手段13は、以下の処理を実行させるプログラムがインストールされたコンピュータからなる。すなわち、ここでは、ストレッチ運動を開始してからの時間と、各時間にいて押込み反力計測手段12で計測された押込み反力とをそれぞれ対数変換した値について、前記押込み反力と前記時間との関係を直線近似し、当該直線が別種の直線に遷移したタイミングを筋緊張が緩和したタイミングと推定する処理が行われる。

【0020】
この筋緊張緩和推定手段13は、反力と各反力が得られた時間から、予め記憶された関係式を用いて筋緊張の緩和評価用の指標値を求める演算部16と、演算部16で求められた指標値に基づき、筋緊張の緩和タイミングを判定する判定部17とを備えている。

【0021】
前記演算部16では、押込み反力と当該押込み反力が得られた時間とがそれぞれ対数変換され、これら対数変換値と、その前のタイミングにおける押込み反力と時間の各対数変換値とから、前記関係式により、応力緩和の影響を分離して筋緊張緩和のタイミングを判定するための指標となる筋粘弾性率G及び筋粘弾比rの各値が、前記指標値として求められる。ここで、筋粘弾性率Gは、応力緩和の影響を除外した見かけの弾性率に相当し、筋緊張緩和によって値が低下する性質を有する指標である。また、筋粘弾比rは、弾性に対する粘性の比率を表す指標であり、0から1までの間の値を採る。この筋粘弾比rは、0に近づく程、弾性体の要素が強く、1に近づく程、粘性体の要素が強くなる。

【0022】
すなわち、ここでは、経時的な押し込み反力F及び時間tから、次に示す前記関係式を用いて、筋粘弾性率G及び筋粘弾比rの各指標値が求められる。なお、筋伸張量xは、定数であり、一定値が予め記憶され、或いは、任意の所定値が予め入力される。
【数4】
JP2015221122A_000006t.gif

【0023】
前記判定部17では、押込み反力が計測される各時間において求められた筋粘弾性率Gと筋粘弾比rが、その前の時間までの筋粘弾性率Gと筋粘弾比rに対して有意差が生じたか否かが判定される。そして、ここで有意差が生じたと判定された場合に、そのときの時間で筋緊張が緩和状態に変化したと判定される。すなわち、ここでは、対比する各時間の筋粘弾性率G及び/又は筋粘弾比rが、予め設定された閾値未満である場合には、筋緊張状態が継続していると判定される。逆に、各時間の筋粘弾性率G及び/又は筋粘弾比rが、予め設定された閾値以上である場合には、筋緊張が緩和した状態に変化したと判定される。

【0024】
前記提示手段14では、判定部17で筋緊張が緩和状態に変化したと判定された場合に、被評価者やその他の者に、被評価者が行ったストレッチ運動の継続時間が妥当である旨の情報を提示するようになっている。この提示手段14としては、特に限定されるものではなく、当該情報を画像で表示可能な各種の表示装置、前記情報を音声や刺激等で提示可能なスピーカーや刺激提示装置等、種々の装置を採用することができる。

【0025】
なお、前記実施形態では、本発明をストレッチング評価装置10に適用した場合を図示説明したが、本発明はこれに限らず、筋緊張緩和推定手段13を独立した装置として構成し、外部から経時的に入力された押込み反力に基づいて、前述と同様に、応力緩和の影響を分離して筋部位の経時的な状態変化を検出するための筋状態変化検出装置とすることもできる。この筋状態変化検出装置は、一例として、医療目的の触診補助に用いることが想定される。

【0026】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 ストレッチング評価装置
12 押込み反力計測手段
13 筋緊張緩和推定手段(筋状態変化検出装置)
16 演算部
17 判定部
図面
【図1】
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