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明細書 :アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブ、並びにアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-184231 (P2015-184231A)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブ、並びにアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法
国際特許分類 G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
G01N  27/447       (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 31/00 S
G01N 31/22 124
G01N 27/26 301B
G01N 27/26 301A
G01N 27/26 315K
G01N 27/26 331E
G01N 21/64 F
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-063074 (P2014-063074)
出願日 平成26年3月26日(2014.3.26)
発明者または考案者 【氏名】原賀 智子
【氏名】佐藤 義行
【氏名】齋藤 伸吾
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100145920、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 聡
【識別番号】100139103、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 卓志
【識別番号】100139114、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 貞嗣
審査請求 未請求
テーマコード 2G042
2G043
Fターム 2G042AA01
2G042BC03
2G042CA02
2G042CA10
2G042CB03
2G042DA06
2G042DA08
2G042EA02
2G042FA06
2G042FB02
2G043AA01
2G043BA01
2G043CA03
2G043DA01
2G043EA01
2G043EA19
2G043HA01
2G043KA02
2G043KA05
2G043KA09
2G043LA02
2G043NA11
要約 【課題】安定な蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を形成するアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブを提供する。
【解決手段】アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが下記式(1)で示される化合物がアルカリ性水溶液に溶解されて得られる。
【化1】
JP2015184231A_000004t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で示される化合物がアルカリ性水溶液に溶解されて得られるアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブ。
【化1】
JP2015184231A_000003t.gif

【請求項2】
アメリシウム及びキュリウムを含む試料と請求項1に記載されたアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体が混合液中に形成される工程(A)、
蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動され、第二配位子の寄与によってそれぞれの錯体が分離される工程(B)、
蛍光強度が測定される工程(C)を含む、アメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブ、並びに上記プローブが使用されるアメリシウム及びキュリウムの迅速かつ簡便な分離及び定量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、放射性同位元素を扱う研究施設等の放射性物質を扱う施設から排出される廃液及び廃棄物はアクチノイド化合物を含有し得る。当該廃液及び廃棄物がアクチノイド化合物を含有する場合、当該廃液及び廃棄物が処分される前に、当該廃液及び廃棄物中のアクチノイド濃度が測定されなければならない。当該廃液及び廃棄物中のアクチノイドのうちのα線放出核種の外部からの非破壊測定は困難である。従って、従来、上記α線放出核種は、溶媒抽出、沈殿分離、抽出クロマトグラフィー等の化学分離法により分離され、濃度が測定されていた。しかし、上記化学分離法の操作は煩雑であり、廃液等の二次廃棄物の発生量も多い。そこで、分離性能が高く、分析作業が簡易で、二次廃棄物の発生量が少ないキャピラリー電気泳動法による上記アクチノイドの分離と濃度測定が試みられるようになった。
なお、キャピラリー電気泳動法の簡単な説明は次のとおりである。試料溶液が泳動液(分離用溶液)で満たされたキャピラリーに注入され、次に、電圧がキャピラリーの両端に印加され、上記試料溶液中のイオンが移動され、分析対象物が分離される。
【0003】
アクチノイドのうち化学的性質が類似するアメリシウム及びキュリウムがキャピラリー電気泳動法により分離された後、シリコン半導体検出器によるα線測定が検討された(例えば、非特許文献1参照)。また、キャピラリー電気泳動法による分離の後、γ線が測定される方法も検討された(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)。更に、pptレベルの微量のアクチノイドがオンキャピラリー(試料溶液に対して非接触)で検出されるよう、アクチノイド検出用蛍光性試薬が開発され、アメリシウムが検出された(例えば、非特許文献3参照)。一方、アメリシウム及びキュリウムに化学的性質が類似するランタノイドがキャピラリー電気泳動法と蛍光性試薬が用いられる三元錯形成法(第二配位子が泳動液に添加され、イオンの移動度に差を生じさせ、分析対象物が分離される方法)により相互に分離させる方法が検討された(例えば、非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】H. Kikunaga et al., Proc. Radiochim. Acta, 1 (2011) 167-171
【非特許文献2】T. Mori et al., Chemistry Letters, Vol.37, No.1 (2008) 48-49
【非特許文献3】Tomoko Haraga et al., Proceedings of the ASME 14th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2011), Reims, France, 2011, Paper 59092, 5p
【非特許文献4】S. Saito et al., Analyst, 132, (2007) p237-241
【0005】

【特許文献1】特開2009-115507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、化学的性質が類似するアメリシウム及びキュリウムがキャピラリー電気泳動法により分離された後、pptレベルの微量のアメリシウム及びキュリウムがオンキャピラリーで検出されるよう、アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが求められていたが、そのようなプローブは見出されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、安定な蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を形成するアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブの提供である。
本発明が解決しようとする別の課題は、上記アメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが使用されるアメリシウム及びキュリウムの迅速かつ簡便な分離及び定量分析方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、非特許文献3及び4に記載されている、下記式(1)で示される2-(4-フルオレセイン-チオカルバミル-アミノベンジル)-エチレンジアミン四酢酸(FTC-ABEDTA)が、アルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物が、安定な蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を形成し、かつ蛍光性アメリシウム錯体と蛍光性キュリウム錯体をキャピラリー電気泳動法により分離する条件を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明のアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブは、下記式(1)で示される化合物がアルカリ性水溶液に溶解されて得られる。
【化1】
JP2015184231A_000002t.gif

【0009】
本発明のアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法は、アメリシウム及びキュリウムを含む試料と上記式(1)で示されるアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが混合され、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体が混合液中に形成される工程(A)、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を含む混合液がキャピラリー中で電気泳動され、第二配位子の寄与によってそれぞれの錯体が分離される工程(B)、蛍光強度が測定される工程(C)を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブは、安定な蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体を形成し、アメリシウムとキュリウムをキャピラリー電気泳動法により分離する。本発明のアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法は、アメリシウム及びキュリウムの迅速かつ簡便な分離及び定量分析方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブが金属イオンと錯体を形成している様子を示す図
【図2】本発明のアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置の模式図
【図3】本発明の蛍光プローブ、金属イオン及び第二配位子により形成されると推認される錯体を示す図
【図4】蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体の電気泳動図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブは、FTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られる。FTC-ABEDTAは、知られた化合物である(例えば、非特許文献3、非特許文献4、特開2009-150650号公報参照)。本発明のアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブは、アメリシウムイオン、キュリウムイオン等の金属イオンと安定な蛍光性錯体を形成する(図1)。光が上記プローブに照射されると、上記プローブは蛍光を発する。

【0013】
図2は、本発明のアメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析方法で使用されるキャピラリー電気泳動装置の模式図である。最初に、キャピラリー3内が泳動液で洗浄され、キャピラリー3内は泳動液で満たされる。次に、FTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物とアメリシウムイオン、キュリウムイオンで形成された蛍光性アメリシウム錯体、蛍光性キュリウム錯体を含む試料溶液が入った容器が、陽極部2の泳動液が入った容器と交換され、圧力差又は落差により、当該試料溶液がキャピラリー3に注入された後、速やかに泳動液が入った容器が元の位置に戻される。その後、電圧が電源1に印加されると、当該錯体はキャピラリー3内の泳動液中を陰極部4方向へ移動する。
移動中にレーザー光が照射されると、蛍光性アメリシウム錯体、蛍光性キュリウム錯体等の金属錯体は蛍光を発する。当該蛍光の強度が検出され、アメリシウム及びキュリウムの分離及び定量分析が実施される。なお、キャピラリー電気泳動により分離された蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体は、それぞれ回収され、α線測定に利用され得る。

【0014】
上記泳動液は、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体の電気泳動移動度に差を生じさせるため、第二配位子を含有する。当該第二配位子の具体例はイミノ二酢酸である。第二配位子は、FTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物及び金属イオンと共に、三元錯体を形成していると考えられる(図3)。つまり、蛍光部位と配位部位がスペーサー部位を介して結合する構造を有する上記イオン化合物の配位部位、金属イオン(図3ではアメリシウムイオン)及び第二配位子(図3ではイミノ二酢酸イオン)が錯形成していると考えられる。上記泳動液中のイミノ二酢酸の好ましい濃度は2.5×10-4M~6.3×10-4Mである。上記泳動液中のイミノ二酢酸の濃度が小さすぎたり、大きすぎる場合、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体の電気泳動移動度に差がなくなるため、アメリシウム及びキュリウムを分離できなくなり得る。上記泳動液の好ましいpHは9~12である。上記泳動液のpHが小さすぎる場合と大きすぎる場合、蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体の発光強度が低下し、定量分析に適さなくなる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0016】
各種溶液の調製
(1)蛍光性試薬水溶液の調製
2-(4-フルオレセイン-チオカルバミル-アミノベンジル)-エチレンジアミン四酢酸(FTC-ABEDTA)((株)同仁化学研究所製、試験研究用)が秤量され、超純水に溶解されて、1×10-3M水溶液が調製され、蛍光性試薬水溶液とされた。
【実施例】
【0017】
(2)アメリシウム(243Am)溶液の調製
α線スペクトロメトリにより検定された243Am標準溶液が分取され、放射能濃度18kBq/ml(1×10-5M相当)の0.33M硝酸溶液が調製され、243Am溶液とされた。
【実施例】
【0018】
(3)キュリウム(248Cm)溶液の調製
α線スペクトロメトリにより検定された248Cm標準溶液が分取され、放射能濃度1.6kBq/ml(4×10-5M相当)の0.33M硝酸溶液が調製され、248Cm溶液とされた。
【実施例】
【0019】
(4)ホウ酸水溶液の調製
ホウ酸(MERCK社製、純度99.9999%)が超純水に溶解され、0.1Mホウ酸水溶液が調製され、当該水溶液のpHが水酸化ナトリム溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)で10.0に調整された。
【実施例】
【0020】
(5)イミノ二酢酸水溶液の調製
イミノ二酢酸((株)同仁化学研究所製、試験研究用)が超純水に溶解され、0.1Mイミノ二酢酸水溶液が調製された。
【実施例】
【0021】
(6)トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)水溶液の調製
CyDTA((株)同仁化学研究所製、純度99.0%)が超純水に溶解され、1×10-3MのCyDTA水溶液が調製された。なお、CyDTAが超純水に溶解されない場合、水酸化ナトリウム水溶液が添加される。
【実施例】
【0022】
試料溶液の調製
上記蛍光性試薬水溶液、243Am溶液、248Cm溶液及びホウ酸水溶液が混合され、水酸化ナトリウム水溶液(関東化学(株)製、等級 Ultrapur)が添加され、蛍光性試薬濃度が4.0×10-7M、243Am濃度が1.0×10-7M、248Cm濃度が1.0×10-7M、ホウ酸濃度が2.0×10-2M、pHが9.6~10.0である試料溶液が調製された。
【実施例】
【0023】
泳動液の調製
上記ホウ酸水溶液、イミノ二酢酸水溶液及びCyDTA水溶液が混合され、上記水酸化ナトリウム水溶液が添加され、ホウ酸濃度が1.2×10-2M、イミノ二酢酸濃度が4.0×10-4M、CyDTA濃度が2.5×10-5M、pHが10.0である泳動液が調製された。
【実施例】
【0024】
キャピラリー電気泳動
電気泳動装置はAgilent Technologies社製G7100、検出器はレーザー励起蛍光検出器(Picometrics社製ZETALIF Discovery)、レーザー光源はMelles Griot社製Blue Solid-State Laser System 85-Z48804、励起波長は488nmであった。キャピラリーは集光レンズ付き溶融シリカキャピラリー(Picometrics社製、内径50μm、外径375μm、全長69cm、有効長50cm)であった。
【実施例】
【0025】
キャピラリーが1M水酸化ナトリウム水溶液で10分間、超純水で10分間、上記泳動液で10分間順次洗浄された。次に、キャピラリー内が上記泳動液で満たされ、7nLの試料溶液が圧力50mbar、注入時間5秒で加圧法により陽極部側からキャピラリー内に注入され、20kVの電圧が印加され、電気泳動装置の温度が25℃とされて電気泳動が実施された。レーザー励起蛍光検出器のレーザー出力は8mA、光電子倍増管の電圧は500Vであった。図4は蛍光性アメリシウム錯体及び蛍光性キュリウム錯体の電気泳動図である。FTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物とアメリシウムイオンで形成された蛍光性アメリシウム錯体のピーク(図4のAm)及びFTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物とキュリウムイオンで形成された蛍光性キュリウム錯体のピーク(図4のCm)が検出され、FTC-ABEDTAがアルカリ性水溶液に溶解されて得られるイオン化合物がアメリシウム及びキュリウム測定用蛍光プローブとされるキャピラリー電気泳動法で、アメリシウム及びキュリウムの分離分析が可能であるとわかった。
更に、検量線法による定量分析も可能であるとわかった。検出限界値は、アメリシウム及びキュリウムともに、1.0×10-9Mであり、2.0×10-7Mまで定量分析可能であった。なお、金属イオン濃度が高い場合、試料を希釈して定量分析可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の蛍光プローブは、アメリシウムイオン、キュリウムイオンとそれぞれ安定な蛍光性錯体を形成する。これらの錯体はキャピラリー中で電気泳動され、当該錯体が発する蛍光の強度が測定される。従って、本発明の蛍光プローブは、電気泳動装置が用いられるアメリシウム及びキュリウムの迅速かつ簡便な分離及び定量分析方法で使用される。
【符号の説明】
【0027】
1…電源、2…陽極部、3…キャピラリー、4…陰極部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3