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明細書 :吻合手術用補助クリップ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年12月14日(2015.12.14)
発明の名称または考案の名称 吻合手術用補助クリップ
国際特許分類 A61B  17/11        (2006.01)
A61B  17/12        (2006.01)
FI A61B 17/11
A61B 17/12 320
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 29
出願番号 特願2014-507833 (P2014-507833)
国際出願番号 PCT/JP2013/058398
国際公開番号 WO2013/146614
国際出願日 平成25年3月22日(2013.3.22)
国際公開日 平成25年10月3日(2013.10.3)
優先権出願番号 2012080485
優先日 平成24年3月30日(2012.3.30)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】菊田 健一郎
【氏名】岡 潔
【氏名】関 健史
【氏名】赤津 朋宏
【氏名】勝見 英明
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
【識別番号】000115359
【氏名又は名称】ヨシダ工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4C160
Fターム 4C160DD26
4C160DD29
4C160MM33
要約 対象血管に吻合用血管を吻合するために用いられる補助クリップであって、一対の装着部1、2と、それらを連結する連結部(図1の形態ではばね部)3とを有する。装着部の基本形状は互いに等しい半円筒状であり、その内側に対象血管をはめ込むことができる。また、装着部の胴体壁面には、吻合用血管を接続するための吻合用貫通孔Hが設けられている。一対の装着部1、2は、開閉可能にかつ対象血管に装着し得るように連結部3によって互いに連結されており、図1の形態では、装着部1、2を互いに合わせる方向にばね部からばね荷重が作用している。
特許請求の範囲 【請求項1】
対象血管に吻合用血管を吻合するために用いられる補助クリップであって、
一対の装着部を有し、それぞれの装着部の基本形状は互いに等しい半円筒状であって、その半円筒状の内側の半径は、前記対象血管をはめ込むことができるように選択されており、それによって、前記一対の装着部は、円筒状となるように互いに1つに合わせることで前記対象血管に装着され得るようになっており、
少なくとも一方の装着部の胴体壁面には、前記吻合用血管を接続するための吻合用貫通孔が設けられており、
前記一対の装着部には、前記対象血管に装着可能であるように互いに開閉できかつ互いが1つに合わせられた状態が維持され得るように、互いを開閉可能に連結する連結部が設けられていることを特徴とする、
吻合手術用補助クリップ。
【請求項2】
上記連結部として、ばね部が一対の装着部を連結しており、
一対の装着部が、円筒状となるように互いに1つに合わせられた状態において、開閉可能にかつ装着部同士を互いに合わせる方向にばね荷重が作用するように、前記ばね部によって連結されている、請求項1記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項3】
ばね部のばね荷重を発生する部分が、ねじりコイルばねであって、
該ねじりコイルばねの両端部からそれぞれ延びる腕部が、タスキがけ状に交差して上記一対の装着部にそれぞれ接合されており、それによって、前記2つの腕部に対して、前記タスキがけ状に交差する部分よりもねじりコイルばね側に位置する部分に、それらが互いに近づくように外力を加えることによって一対の装着部が開き、該外力を解くことによって一対の装着部が閉じる構成となっている、
請求項2記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項4】
一対の装着部のそれぞれには、それら装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの合わせ目となる部分に、上記連結部として外側に張り出したツバ部が設けられており、該ツバ部同士を互いに合わせた状態とし留め具によって該ツバ部同士を固定し得る構成となっている、請求項1記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項5】
上記留め具がネジまたは縫合用糸であって、
これらネジまたは縫合用糸によって該ツバ部同士を固定し得るように、互いに合わせられるツバ部には、貫通孔と貫通孔、または、貫通孔とめねじが設けられている、請求項4記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項6】
一対の装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの2つの合わせ目のうちの一方の合わせ目には、該一対の装着部が互いに開閉できるように上記連結部として蝶番が設けられており、かつ、
一対の装着部のそれぞれには、前記2つの合わせ目のうちの他方の合わせ目に、外側に張り出したツバ部が上記連結部として設けられており、該ツバ部同士を互いに合わせた状態として留め具によって該ツバ部同士を固定し得る構成となっている、請求項1記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項7】
上記留め具がネジまたは縫合用糸であって、
これらネジまたは縫合用糸によって該ツバ部同士を固定し得るように、互いに合わせられるツバ部には、貫通孔と貫通孔、または、貫通孔とめねじが設けられている、請求項4記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項8】
吻合用貫通孔が、装着部の基本形状である半円筒状の中心軸に沿った方向に長軸を持つ楕円形であって、該楕円形の長軸と短軸の長さの比(長軸:短軸)が、(1.3:1)~(1.7:1)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項9】
吻合用貫通孔の周囲には、縫合針および縫合糸を通過させるための縫合用孔が、間隔をおいて複数設けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の吻合手術用補助クリップ。
【請求項10】
装着部の内面には、吻合用貫通孔を塞ぐ位置に縫合用フィルムが接着されており、さらに、該縫合用フィルムには、吻合用貫通孔の開口端と同心状に、該開口端により小さい開口を持った貫通孔が形成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の吻合手術用補助クリップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、目的対象の血管に別の血管の端部を吻合し連通させる手術(血管吻合手術)をより容易に行うための補助具に関し、とりわけ、脳領域の血管吻合手術に有用な補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳内の血管に、狭窄・閉塞や、大型の脳動脈瘤が生じた場合の治療法として、該血管にバイパス用の血管を吻合しバイパス(迂回路)を形成する血管吻合手術(バイパス手術)がある。以下、本明細書では、バイパス等が施されるべき目的対象の血管を「対象血管」と呼び、該対象血管に吻合してバイパス管等となる管(血管や人工管)を「吻合用血管」と呼んで区別する。
【0003】
従来、日本国内では、脳内の血管に対する血管吻合手術は、主として次の手順で行われていた。
図9(a)に示すように、対象血管100の所定区間100Sの両端を止血クリップ(T10、T20)で挟み、血流を一時的に遮断する。前記所定区間の中央のハッチングを施した部分は、狭窄や脳動脈瘤などの疾患の存在を示唆している。前記止血クリップとしては特許文献1に記載された脳動脈瘤クリップなどが挙げられる。
次に、対象血管の血管外表面のうち、吻合すべき部分に縫合糸を通してつまみ上げ(図示せず)、そのつまみ上げた血管を、剪刀(医療用のハサミ)で切除して血管壁に貫通孔を形成し、吻合用孔110、120とする(図9(b))。このとき、形成される吻合用孔の形状は、対象血管の長手方向に沿った方向に長軸を持つ楕円形(長軸と短軸との比は約1.5:1)となるよう術者により調整される。これは、吻合用血管を斜めに連結することで、分岐・結合部近辺にて最適な血流動態と壁面せん断応力(WSS)を得るためである。
次に、図9(c)に示すように、対象血管100と吻合用血管200とが隙間なく吻合されるように、互いの吻合部形状を合わせて縫合を行い、最後に、止血クリップを外して血流を再開させる。
【0004】
上記のように、従来の血管吻合手術は、止血クリップによる止血に起因して脳が一時的な虚血状態に陥るので、脳血管障害のリスクを伴う手術であった。また、手術の対象となる脳内血管が外径2mm程度の細い場合もあるので、縫合作業は困難であり、術時間への影響は術者の経験や技術に大きく左右されるものであった。
【0005】
一方、オランダのユトレヒト大学では、血流を遮断することなく吻合用血管を吻合するための装置を開発している(特許文献3)。
この装置は、図10に示す写真図のとおり、吻合用血管内に挿通し得るよう先端がカテーテルと同様の管状となった装置であって、ELANA(Excimer Laser-Assisted Non-occlusive Anastomosis)と命名されている。以下、本明細書においても、特許文献3記載の構成を持った装置を、ELANAと呼んで説明する。
図10に示すとおり、ELANAの先端面の外周縁部にはレーザー出射口が環状に設けられ、中央部には多数の吸引口が設けられている。レーザー光の光源はエキシマレーザー装置である。レーザー出射口から環状に照射されるレーザー光によって、対象血管の管壁を円形に切り取ることができ、かつ、切り取られた管壁片を吸引口に吸い着けて回収できるようになっている。
ELANAを用いた術式は、2011年には米国FDAの認可も取得しており、医療機器としての販売も認められている(現在、日本では未だ認可されていない)。
【0006】
図11は、ELANAを用いて対象血管の管壁に穴をあけ、吻合用血管を吻合する術式の手順を示している。
先ず、図11(a)に示すように、吻合用血管200にリング状の補助治具T30を通し、吻合用血管の一方の端部(先端部)を外側へと反転させる。次に、対象血管100の血流を遮断せずに、吻合用血管をリング状の補助治具T30と共に対象血管100に吻合する。図中のT40は縫合用の糸である。
次に、図11(b)に示すように、吻合用血管内にELANAを挿入し、図11(c)に示すように、対象血管の管壁を吸引しながら、先端からレーザー光L10を管壁に照射する。これによって、図11(d)に示すように該管壁に穴をあけ、切り取った管壁片130を吸引口に吸い着けて回収する。
この処置を、対象血管の2箇所に対して別個に行い、最後に2本の吻合用血管の各他端部同士を縫合して連結し一本のバイパス管を完成させる。
【0007】
しかしながら、本発明者等が上記のようなELANAを用いた術式を検討したところ、リング状の補助治具T30と吻合用血管200とを対象血管100の外面に吻合するための最初の縫合作業(図11(a)に示す作業)が非常に難しく、改善すべき問題であることが分かった。これは、吻合用血管200が最初は対象血管100の表面に固定されていないことが主な原因である。特に脳の奥部において、細い対象血管の壁面に小さいリング状の補助治具を装着した細い吻合用血管を吻合する作業は、極めて繁雑で難しい作業である。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2003-199750号公報「脳動脈瘤クリップ」
【特許文献2】特開2006-081597号公報「動脈瘤クリップ挟着用鉗子」
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/331793号明細書「LASER CATHETER FOR BYPASS SURGERY AND ASSEMBLY COMPRISING SAID CATHETER」
【0009】

【非特許文献1】脳神経外科ジャーナル,第4巻6号,Page 588-592(1995.11),「新チタン製脳動脈瘤クリップの臨床試験 CT、MRIに及ぼす影響(原著論文)」
【非特許文献2】日本バイオレオロジー学会年会プログラム・抄録集,第34巻96貢,2011年6月,「バイパス手術における血管吻合角度の血流への影響」
【非特許文献3】Neurosurgical Focus, Vol. 24, No. 2, 2008, “Excimer laser-assisted nonocclusive anastomosis: An emerging technology for use in the creation of intracranial-intracranial and extracranial-intracranial cerebral bypass”
【非特許文献4】山浦晶 編集、脳神経外科手術アトラス(下巻)、PP96-99、医学書院出版
【非特許文献5】Arch Surg,115(2), 216~223,1980, "Hemodynamics for the vascular surgeon"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、対象血管に容易に装着することが可能であり、脳内での血管の縫合作業をより少なくすることもでき、上記した従来技術における吻合作業の困難性を解消することを可能にする補助治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)対象血管に吻合用血管を吻合するために用いられる補助クリップであって、
一対の装着部を有し、それぞれの装着部の基本形状は互いに等しい半円筒状であって、その半円筒状の内側の半径は、前記対象血管をはめ込むことができるように選択されており、それによって、前記一対の装着部は、円筒状となるように互いに1つに合わせることで前記対象血管に装着され得るようになっており、
少なくとも一方の装着部の胴体壁面には、前記吻合用血管を接続するための吻合用貫通孔が設けられており、
前記一対の装着部には、前記対象血管に装着可能であるように互いに開閉できかつ互いが1つに合わせられた状態が維持され得るように、互いを開閉可能に連結する連結部が設けられていることを特徴とする、
吻合手術用補助クリップ。
(2)上記連結部として、ばね部が一対の装着部を連結しており、
一対の装着部が、円筒状となるように互いに1つに合わせられた状態において、開閉可能にかつ装着部同士を互いに合わせる方向にばね荷重が作用するように、前記ばね部によって連結されている、上記(1)記載の吻合手術用補助クリップ。
(3)ばね部のばね荷重を発生する部分が、ねじりコイルばねであって、
該ねじりコイルばねの両端部からそれぞれ延びる腕部が、タスキがけ状に交差して上記一対の装着部にそれぞれ接合されており、それによって、前記2つの腕部に対して、前記タスキがけ状に交差する部分よりもねじりコイルばね側に位置する部分に、それらが互いに近づくように外力を加えることによって一対の装着部が開き、該外力を解くことによって一対の装着部が閉じる構成となっている、上記(2)記載の吻合手術用補助クリップ。
(4)一対の装着部のそれぞれには、それら装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの合わせ目となる部分に、上記連結部として外側に張り出したツバ部が設けられており、該ツバ部同士を互いに合わせた状態とし留め具によって該ツバ部同士を固定し得る構成となっている、上記(1)記載の吻合手術用補助クリップ。
(5)上記留め具がネジまたは縫合用糸であって、
これらネジまたは縫合用糸によって該ツバ部同士を固定し得るように、互いに合わせられるツバ部には、貫通孔と貫通孔、または、貫通孔とめねじが設けられている、上記(4)記載の吻合手術用補助クリップ。
(6)一対の装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの2つの合わせ目のうちの一方の合わせ目には、該一対の装着部が互いに開閉できるように上記連結部として蝶番が設けられており、かつ、
一対の装着部のそれぞれには、前記2つの合わせ目のうちの他方の合わせ目に、外側に張り出したツバ部が上記連結部として設けられており、該ツバ部同士を互いに合わせた状態として留め具によって該ツバ部同士を固定し得る構成となっている、上記(1)記載の吻合手術用補助クリップ。
(7)上記留め具がネジまたは縫合用糸であって、
これらネジまたは縫合用糸によって該ツバ部同士を固定し得るように、互いに合わせられるツバ部には、貫通孔と貫通孔、または、貫通孔とめねじが設けられている、上記(4)記載の吻合手術用補助クリップ。
(8)吻合用貫通孔が、装着部の基本形状である半円筒状の中心軸に沿った方向に長軸を持つ楕円形であって、該楕円形の長軸と短軸の長さの比(長軸:短軸)が、(1.3:1)~(1.7:1)である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の吻合手術用補助クリップ。
(9)吻合用貫通孔の周囲には、縫合針および縫合糸を通過させるための縫合用孔が、間隔をおいて複数設けられている、上記(1)~(8)のいずれかに記載の吻合手術用補助クリップ。
(10)装着部の内面には、吻合用貫通孔を塞ぐ位置に縫合用フィルムが接着されており、さらに、該縫合用フィルムには、吻合用貫通孔の開口端と同心状に、該開口端により小さい開口を持った貫通孔が形成されている、上記(1)~(9)のいずれか1項に記載の吻合手術用補助クリップ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吻合手術用補助クリップ(以下、「当該補助クリップ」とも言う)では、円筒体を縦に2つに割って得たような形状を持った一対の部材を装着部とし、それらを互いに開閉することができ、かつ、それらをもとの円筒へと合わせた状態を維持し得るように、装着部同士を開閉可能に連結する連結部を設けているので、対象血管の特定部分を覆うように該血管に容易に装着し固定し得るようになっている。
さらに、該装着部の胴体壁面には、吻合用血管を接続し得るように吻合用貫通孔が設けられているので、手術の現場で脳内の血管に直接縫合を行う場合であっても、当該補助クリップを不動に保持することで吻合すべき部位が静止し、縫合作業が改善される。
また、予め別の作業環境の下で、該装着部の吻合用貫通孔に対して吻合用血管を接続しておくことも可能である。これによって、対象血管に対して手術の現場で吻合用血管を縫合するといった困難な作業を回避することも可能である。よって、脳内手術の現場において、顕微鏡を覗きながらの縫合作業の回数を減らすことができるため、手術時の吻合作業の負担を減らすことができ、上記したELANAのような吻合器具がより使い易くなる。
【0013】
また、本発明の好ましい一つの形態では、一対の装着部をばね部によってもとの円筒へと合わせるように連結しているので、クリップの開閉操作一回で、対象血管に簡単に装着しその状態を維持し得るようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による吻合手術用補助クリップの好ましい一実施形態の例を示した図であり、図1(a)は吻合用貫通孔を見せた正面図、図1(b)は図1(a)の側面図である。これらの図に示された各主要部と各符号との対応関係は、次のとおりである。1;装着部、2;装着部、3;ばね部(連結部)、3a;ばね部のばね本体部分、3b;ばね部の腕部、3c;ばね部の腕部、H;吻合用貫通孔。
【図2】図2は、図1の形態による当該補助クリップをクリップ鉗子によって開閉する様子を示した図である。図2(a)は当該補助クリップが閉じた状態、図2(b)は当該補助クリップが開いた状態を示している。
【図3】図3は、本発明による吻合手術用補助クリップの他の形態を示した図である。図3(a)は、吻合用貫通孔の周囲にさらに縫合用の針および糸を通すための縫合用孔を設けた形態を示した正面図である。図3(b)は、前記の縫合用孔を利用して、吻合用貫通孔に吻合用血管が縫合された状態を示した斜視図である。
【図4】図4は、本発明による吻合手術用補助クリップの他の形態を示した図である。図4(a)は、吻合用貫通孔の周縁付近および装着部内面に、対象血管と吻合用血管との吻合に介在させるための縫合用フィルムを接着した形態を示した正面図である。図4(b)は、前記の縫合用フィルムを利用して、吻合用貫通孔に吻合用血管が縫合された状態を示した斜視図である。
【図5】図5は、本発明による吻合手術用補助クリップの他の形態を示した図である。図5(a)は、全体の様子を示す斜視図である。同図(a)、(c)では、装着部の内側に添付されるフィルム6の存在がわかり易いように、装着部1が透明であるかのようにして内部のフィルム6を見せている。図5(b)は、一対の装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせた状態を、中心軸の方向に沿って見たときの図である。図5(c)は、図5(a)、(b)の補助クリップを上方から見たときの図である。
【図6】図6は、本発明による吻合手術用補助クリップのさらなる他の形態を示した図である。図6(a)は、当該補助クリップの一方の装着部に対象血管をはめ込み、他方の装着部を開いた状態で示した斜視図である。図6(b)は、一対の装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせた状態を、中心軸の方向に沿って見たときの図である。
【図7】図7は、図4に示した吻合手術用補助クリップを対象血管に装着し、吻合用血管を縫合し、ELANAを挿入して対象血管に開口を形成するまでの一連の操作の流れを描いた図である。
【図8】図8は、図7に引き続いて、バイパス形成を完了するまでの一連の操作の流れを示した図である。
【図9】図9は、従来の血管吻合手術(とりわけ、バイパス形成手術)の一連の操作の流れを示した図である。
【図10】図10は、従来技術による血管吻合用の装置であるELANAの先端面を見せた拡大写真図である。非特許文献3を引用。
【図11】図11は、従来技術の装置であるELANAを用いて対象血管の管壁に貫通孔をあけ、吻合用血管を吻合する術式の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の吻合手術用補助クリップの構成を、実施例に沿って詳細に説明する。
図1に形態の一例を示すように、当該補助クリップは、一対の装着部1、2と、それらを連結するばね部3とを有する構成となっている。それぞれの装着部1、2の基本形状は、互いに等しい半円筒状であって、図3(b)の斜視図のように、それらを1つに合わせると円筒状となる。この半円筒形状の内側の断面形状である半円形の半径は、対象血管をはめ込むことができるように選択されている。よって、対象血管を挟むように一対の装着部1、2を合わせることによって、対象血管の胴体周囲をとりまいて覆う筒として該血管に装着し得るようになっている。
また、一対の装着部1、2のうち、少なくとも一方の装着部(図1の例では片方の装着部1)の胴体壁面には、吻合用貫通孔Hが設けられており、その吻合用貫通孔Hに対して(即ち、装着部1に対して)、または、内部に保持される対象血管に対して、吻合用血管を接続することが可能となっている。
前記一対の装着部1、2には、対象血管に装着可能であるように互いに開閉できかつ互いが1つに合わせられた状態が維持され得るように、装着部1、2を開閉可能に連結する連結部が設けられている。図1の例では、ばね部3が連結部であって、一対の装着部1、2は、円筒状となるように互いに1つに合わせられた状態において、該ばね部3によって開閉可能に連結されており、かつ装着部1、2同士を互いに合わせる方向にばね部3からのばね荷重が作用する構成となっている。

【0016】
以上の構成によって、例えば、図2(b)に示すように、ばね部に対してばね荷重に抗する外力を加えることで、一対の装着部1、2を簡単に開閉することができ、よって、対象血管への装着もワンタッチとなっている。図2(a)、(b)に示した例では、特許文献2に記載されたような動脈瘤クリップ挟着用鉗子(II)によってばね部のねじりコイルばねを変位させて、当該補助クリップ(I)の装着部を開閉している。

【0017】
ばね部3は、一対の装着部を開閉可能にかつそれらを互いに合わせる方向にばね荷重が作用するように連結するものであればよく、2つの部材をばね力によって互いに密着させておくような連結構造であれば、公知のあらゆる機構を利用してよい。
単純な構造としては、弾性材料からなる板状やU字状のばね部材などによって、一対の装着部の一方の合わせ目を蝶番のように連結する形態が例示される。ただしそのような形態では、装着部同士を開くためには、それらが開く方向に外力を加える必要がある。その場合には、グリップ部を握ることで先端部が開く工具が種々存在するので、それらの工具が適用できるように、工具先端が係合し得る部分を設けておけばよい。
図1には、ばね部の好ましい形態が示されている。同図の形態では、ばね部3のばね荷重を発生する部分(ばね本体部分)3aが、ねじりコイルばねであり、その両端部からそれぞれ延びる腕部3b、3cが、タスキがけ状に交差して、一対の装着部1、2にそれぞれ接合されている。このような接合によって、前記2つの腕部3b、3cのそれぞれに対して、前記タスキがけ状に交差する部分よりもねじりコイルばね側に位置する部分(押圧部)に、それら腕部3b、3cが互いに近づくように外力(圧縮力)を加えれば、一対の装着部を開くことができる。図2は、その具体的な開閉操作の様子を示しており、当該補助クリップ(I)の押圧部をクリップ鉗子(II)の先端部で圧縮・解放して、当該補助クリップを開閉している。
図2(b)のように、外部からの単純な圧縮力で装着部が開くという構造は、使い方が簡単であるため、手術時の吻合作業の負担を減らすことができる。
一対の装着部の開閉の移動量は、特に限定はされないが、対象血管にスムーズに装着し得るよう、対象血管の直径と同程度以上に開くことが好ましい。

【0018】
ばね部が装着部を互いに合わせようとする荷重は、特に限定はされないが、既存の脳動脈瘤クリップの圧縮力および操作性の点からは、例えば、特許文献1に記載された脳動脈瘤クリップの開閉に要するトルク0.5~2.5〔N-m〕程度が好ましい。
ばね本体部分をねじりコイルばねとする場合、その巻き数は、材料や線材の太さ、腕の長さに応じて適宜決定すればよい。

【0019】
装着部の基本形状は半円筒状であり、一対の装着部が対象血管の外周に均等に接触する点からは、その断面形状(半円筒の中心軸に垂直に切断したときの断面の形状)、特に内面の断面形状は、半円形(扇形の中心角度が180度のもの)であることが好ましいが、半円形に近い形状(扇形の中心角度が180度を中心として±3度程度のもの)であってもよい。
以下、そのような半円形に近い断面形状をも含めて、装着部の断面形状を単に「半円形」と呼ぶ。

【0020】
装着部の内面の断面形状である半円形は、対象血管が好ましくはまり込むように、即ち、一対の装着部を合わせて円筒状としたときに対象血管の全周に好ましくフィットするように、その半円形の半径を選択すればよい。以下、前記半円形の半径を、単に「装着部の内側の半径」とも呼ぶ。
装着部の内側の半径は、該装着部を対象血管に装着し吻合手術を行ったときに、該装着部の端部から血液が漏洩しないように、対象血管に隙間無くぴったりフィットするような半径であることが好ましい。よって、生体に悪影響を及ぼすような血流減少が生じない程度の安全な範囲内において、対象血管の弾力性を利用して該血管の外径を微量だけ縮小(例えば、医師の決定による90%~99%程度の縮小、場合によってはそれを超える安全範囲内での縮小)させるように、該血管を締め付けて隙間を無くすような半径としてもよい(非特許文献5)。実際の対象血管は、金属直管のような円筒とは全く異なり、屈曲し外径も不定であるため、手術の現場において医師が適切な内側半径の装着部を選択するのが好ましい態様である。また、装着部と対象血管との間に医師の決定による微量の隙間をもたせてもよく、その場合には、その隙間を医療用の接着剤などで充填し、血液が漏洩しないようにシールすればよい。
一方、対象血管の外径は、生体の部位によって0.5mm(小動脈)~10.0mm(大動脈)など様々であるが、とりわけ人間の脳では、吻合手術を行うべき対象血管の外径は2.5mm~4.0mm程度である。
よって、人間の脳の血管を対象とする場合には、装着部の内側の半径は、0.8mm~2.2mmが好ましい範囲であり、なかでも1.25mm~2.0mmが特に好ましく有用な範囲である。
当該補助クリップは、装着部の内側の半径を段階的に変えて得られる多数の製品を揃えておき、手術に望んで対象血管に適合するサイズのものを選択できるようにしてもよい。
また、一対の対象血管の合わせ目に生じる隙間の量をネジやスペーサーなどで調整し得る構成とすることによって、対象血管の太さに対応して内部の寸法を微調整し得るようにしてもよい。

【0021】
装着部の壁部の厚さは、材料の強度や内径に応じて適宜決定してよい。人間の脳の血管を対象とする場合、上記した装着部の内側の半径の範囲では、壁部の厚さは0.3mm~0.7mm程度が好ましい厚さである。なかでも、装着部の内側の半径2.0~3.0mmに対して、厚さ0.5mmは、適度に薄く、材料によって適度な強度を付与することができるので、好ましい半径と厚さの組合せ例である。

【0022】
装着部の長さ(図1(a)に示した端面間の距離L)は、吻合用血管を接続するための吻合用貫通孔を設けることができる長さであればよい。通常、対象血管が太くなれば、それに応じて吻合用血管も太くなり、吻合用貫通孔の開口も大きくなるので、装着部の長さは、装着部の内側の半径に比例した値とすることが好ましい。
一例を挙げると、装着部の内側の半径が1.0mmの場合には、装着部の長さは7.0mm~9.0mm、特に8mm程度が好ましい長さであり、装着部の内側の半径が1.5mmの場合には、装着部の長さは11.0mm~13.0mm、特に12mm程度が好ましい長さである。

【0023】
吻合用貫通孔は、一対の装着部のうち、少なくとも一方の装着部の胴体壁面に設けられる。通常の態様では、図9のような一般的なバイパスに対応すべく、図1に示すように、一方の装着部の胴体壁面に設けられる。
これに対して、対象血管の特定箇所に2つまたはそれ以上の血管を吻合するというような特殊な場合に対応すべく、両方の装着部に吻合用貫通孔を各1つまたはそれ以上設ける態様であってもよい。
図1(a)の態様では、吻合用貫通孔の開口は、装着部の胴体壁面に閉じた円形や楕円形を描いている。これに対して、一対の装着部の互いの合わせ目に、吻合用貫通孔の開口形状を半分に割った切り欠きをそれぞれの装着部に形成しておき、一対の装着部を合わせたときに、その合わせ目に1つの閉じた円形や楕円形の開口ができるような態様としてもよい。

【0024】
吻合用貫通孔は、吻合用血管を好ましく接続し得るような形状と大きさとすればよい。
人間の脳の血管を対象とする場合、吻合手術を行うべき対象血管の外径は上記のように、2.0mm~4.0mm程度であり、その場合に用いられる吻合用血管の外径は3.0mm~5.0mm程度である。
吻合用貫通孔に吻合用血管を接続する場合の接続態様としては、主として下記(A)、(B)の態様が挙げられる。
(A)吻合用血管の端面を吻合用貫通孔内に挿入した状態で、該吻合用血管を装着部に固定する態様。この態様では、0.2mm~1.0mm程度の径の差(隙間)が生じるように、吻合用血管の外径よりも吻合用貫通孔の開口を大きく取るのが好ましい。
(B)吻合用血管の端面が、吻合用貫通孔内に入り込まず、吻合用貫通孔の開口周囲において装着部の外面に接触した状態で、該吻合用血管を装着部に固定する態様。この態様では、吻合用血管の内径と吻合用貫通孔の開口とを一致させるのが好ましい。
上記(A)、(B)のなかでも、血管内異物の影響による血栓の形成の抑制、吻合用血管と対象血管間の内壁再生成(再癒着)の促進、縫合の作業性、接続状態の良否の点などからは、上記(B)の方が好ましい態様である。それぞれの場合の、吻合用貫通孔の開口寸法は、吻合用血管の外径に適合するよう、適宜決定すればよい。

【0025】
吻合用貫通孔の開口形状は、吻合用血管を直角に接続する場合には円形となる。ただし、平面図では円形であるが、実際には、2つの円柱を交差させたときの相貫による立体的な環状形となる。
また、図9のように吻合用血管を斜めに接続するようなバイパスでは、図3(b)に示す縫合角度(対象血管と吻合用血管との交差角度)θは30度~60度が好ましく、特に40度が好ましく、これによって血流を阻害することなく好ましいバイパスとなる。この場合の吻合用貫通孔の開口形状は、図1(a)、図3(a)に示すように楕円形となる。この楕円形は、前記円形の場合と同様、2つの円柱を斜めに交差させたときの相貫による立体的な環状形である。この楕円形は、装着部の中心軸に沿った方向(=対象血管の長手方向に沿った方向)が長軸となる。
前記の楕円形(開口を正視したときの平面図に現れる楕円形)の長軸と短軸との比は、図3(b)に示した斜めの縫合角度θの点から、(1.3:1)~(1.7:1)が好ましく、1.5:1程度がより好ましい比率である。
例えば、装着部の内側の半径が1mm(一対の装着部による円筒状の直径の内径が2mm)の場合、前記の楕円形の好ましい寸法例は、長軸長2.5mm、短軸長1.7mmである。また、装着部の内側の半径が1.5mm(一対の装着部による円筒状の直径の内径が3mm)の場合、前記の楕円形の好ましい寸法例は、長軸長3.8mm、短軸長2.5mmである。

【0026】
吻合用貫通孔に吻合用血管を接続する際の接続方法は特に限定はされず、医療用の接着剤を用いて接合しても良いし、縫合によって接続してもよい。
図3は、吻合用貫通孔に吻合用血管を縫合によって接続するための好ましい態様を示している。同図の態様では、図3(a)に示すように、吻合用貫通孔Hの周囲に、縫合針および縫合糸を通過させるための縫合用孔4が間隔をおいて複数(図の例では等間隔に8個)設けられており、この縫合用孔を利用して、図3(b)に符号5で縫合部を示すように、吻合用血管Pの先端部を装着部に縫い付けることが可能になっている。
縫合に用いられる糸と針のサイズは、糸サイズ(6-0)~(9-0)、針サイズ3mm~6mm(3/8丸針)が好ましく、なかでも糸サイズ(7-0)、針サイズ4mm(3/8丸針)がより汎用的で好ましいサイズである。
縫合用孔4の口径は、用いられる縫合用針や糸の太さに応じて決定すればよいが、脳の血管に対する手術では、該縫合用孔4の口径は0.4mm~0.6mm程度が好ましく、特に0.5mmが好ましい寸法である。

【0027】
図4は、吻合用貫通孔に吻合用血管を縫合によって接続するための好ましい他の態様を示している。同図の態様では、図4(a)に隠れ線(破線)で示すように、装着部の内面に、吻合用貫通孔Hを塞ぐように縫合用フィルム6が接着されており、該縫合用フィルム6には、吻合用貫通孔Hの開口と同心状に、該開口より小さい開口を持った貫通孔6hが形成されている。これによって、吻合用貫通孔Hの開口内には、全周にわたって縫合用フィルム6が同量だけ張り出している。
図4に示す態様では、吻合用貫通孔Hの開口内に張り出した縫合用フィルム6を縫い代として利用し、図4(b)に符号7で縫合部を示すように、吻合用血管Pの先端部を該縫合用フィルム6に縫い付けることが可能になっている。図4(b)では、吻合用貫通孔Hの開口内に張り出した縫合用フィルム6が装着部の外側まで引っ張り出されて管状になっている。

【0028】
図4に示す態様において、吻合用貫通孔の開口内に張り出す縫合用フィルムの張り出し量は、開口のサイズによっても異なるが、脳内の血管に対する血管吻合手術の場合には、0.3mm~0.7mm程度が好ましい量である。吻合用貫通孔の開口に対する縫合用フィルムの開口も楕円形となり、例えば、吻合用貫通孔の開口が長軸長3.8mm、短軸長2.5mmの楕円形の場合、縫合用フィルムの開口は、長軸長が3.0mm、短軸長2.0mmの楕円形が好ましく、その長軸長、短軸長は、それぞれ、吻合用貫通孔の開口の長軸長、短軸長の0.8倍であることが好ましい。

【0029】
図4に示す態様において、吻合用血管の先端部と縫合用フィルムとを縫合する際には、単純に両者を付き合わせただけの状態で縫合してもよいが、どちらか一方を他方の外側に重なり合うようにして縫合するのが好ましい態様である。特に、縫合部付近における血栓生成の抑制,血管内壁の再生成・癒着の促進の観点から、対象血管と吻合用血管の内壁同士が吻合されるように、縫合用フィルムを外側に、吻合用血管を内側にして縫合することが好ましい。
尚、図4の縫合用フィルムと、図3(a)に示した縫合用孔とを、両方備えた態様であってもよい。

【0030】
縫合用フィルムの素材は、生体親和性、柔軟性、縫合に耐える強度などを有するものであればよく、例えば、人工血管の管壁を構成するための公知の素材やシリコーン系軟質材料からなるフィルムなどが好ましいものとして挙げられる。人工血管の管壁を構成するための公知の素材としては、例えば、ポリエステルなどの化学繊維からなる布や不織布、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などのポリマーからなるフィルム、生体材料からなるフィルム、これらの複合材料からなるフィルムなどが挙げられる。

【0031】
縫合用フィルムの厚さは、素材によっても異なるが、脳内の血管に対する血管吻合手術の場合には、装着部の内側の半径が1.25mm~2.0mmと小さい点、縫合用フィルムが厚過ぎると対象血管に影響を与える点、薄過ぎると縫合に必要な強度が得られない点などを考慮すると、0.4mm~0.6mm程度が好ましい厚さである。

【0032】
縫合用フィルムは装着部の内面全面を覆うように設けてもよいし、図4(a)のように、吻合用貫通孔の周囲の領域だけを覆うように設けてもよい。
縫合用フィルムを装着部の内面に接合する方法は特に限定はされず、溶着などの方法を用いてもよいが、シアノアクリレートを主成分にした医療用の接着剤などを用いて接着するのが好ましい態様である。

【0033】
当該補助クリップの装着部の端部や合わせ目から血液を漏洩させないためのシールが必要であれば、上記した生体用接着剤の充填、生体用接着剤を塗布した人工血管や縫合用フィルムなどを適宜シールとして付与すればよい。

【0034】
図5は、当該補助クリップの他の形態(特に連結部の他の形態)を示している。同図に示すように、一対の装着部1、2のそれぞれには、それら装着部を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの合わせ目となる部分(装着部1では1aと1b、装着部2では2aと2b)に、連結部として外側に張り出したツバ部(1fa、1fb、2fa、2fb)が設けられている。該ツバ部は、図5(b)に示すように、ツバ部1faとツバ部2faとが一方で対応し、ツバ部1fbとツバ部2fbとが他方で対応している。
装着部の各部の詳細や吻合用貫通孔Hの詳細などについては上記した態様と同様である。同図の態様では、図4の形態と同様にフィルム6が設けられており、フィルム6には吻合用貫通孔Hの開口より小さい開口を持った貫通孔6hが形成されているが、図3の態様と同様に縫合用孔を設けてもよい。

【0035】
一対の装着部を互いに分離した形態とし、それぞれの合わせ目となる部分にツバ部を設けることによって、図5(b)、(c)に示すように、該ツバ部を利用して、留め具Sa、Sbによってツバ部同士を固定することが容易になる。このような態様は、上記のばね部に比べて装着がワンタッチではないが、構成が簡単で互いをしっかりと固定できるという利点がある。

【0036】
ツバ部を設ける場合の留め具の好ましい態様としては、ネジ、縫合用糸、医療用接着剤などが挙げられる。
図5に示す形態では、留め具(Sa、Sb)としてネジを用いており、一方のツバ部1faにネジを通過させる貫通孔を設け、他方のツバ部2faに該ネジをねじ込むためのメネジを形成して両ツバ部を固定している。
また、一方のツバ部1fa、他方のツバ部2faの両方に貫通孔を設け、縫合用糸やボルト・ナットによって該ツバ部同士を固定してもよいし、医療用に使用可能な材料からなるリベットによって両ツバ部をかしめる構成としてもよい。

【0037】
図5に示すような態様では、ツバ部と留め具とで連結部を構成しているが、このような態様に限らず、次に例示するように、互いに分離独立している一対の装着部を合わせて留めることができる態様であれば連結部として利用可能である。
(i)ツバ部に加えて、または、ツバ部を設けず、医療用接着剤を連結部として用い、一対の装着部の合わせ目を接着する態様。
(ii)ツバ部を設けず、連結用の薄板部品を、合わせ目をまたぐように当てて、医療用接着剤で接着する態様。
(iii)上記(ii)の連結用の薄板部品を一方の装着部に一体的に設けておく態様。
(iv)一対の装着部を円筒状に合わせ、縫合用糸を胴体に巻き付けて縛る態様。

【0038】
図6は、当該補助クリップの他の形態(特に連結部の他の形態)を示している。同図に示す形態では、一対の装着部1、2を円筒状となるように互いに1つに合わせたときの2つの合わせ目のうちの一方の合わせ目に、蝶番Jが連結部として設けられており、装着部1、2が互いに開閉できるようになっている。
装着部1、2には、他方の合わせ目に、外側に張り出したツバ部(1f、2f)が連結部として設けられており、留め具Saと貫通孔1hとメネジ2hとによって該ツバ部(1f、2f)同士を固定し得る構成となっている。この他方の合わせ目におけるツバ部と留め具との態様は、図5の形態についての説明と同様、ネジ、縫合用糸、医療用接着剤を用いた態様の他、上記(i)~(iv)などの態様であってよい。
装着部の各部の詳細や吻合用貫通孔Hの詳細などについては上記した態様と同様である。また、同図の形態でも、図5の形態と同様にフィルム6が設けられているが、縫合用孔を設ける態様であってもよい。
蝶番を設けたことによって、図6(a)に示すように、対象血管Qに対する装着が容易になる。

【0039】
上記の蝶番としては、通常の扉や蓋の開閉に使用される複雑な機構のものや、単なる平板や線材の両端が一対の装着部に接合される態様であってもよい。図5の形態において連結部として説明した上記(ii)の態様(ツバ部を設けず、連結用の薄板部品を、合わせ目をまたぐように当てて、医療用接着剤で接着する態様)は、本発明における簡単な蝶番の一態様と解釈することもできる。
当該補助クリップは繰り返しの開閉を行う必要はないから、塑性変形するような材料であっても破壊しなければ蝶番として利用可能である。
蝶番の材料は、生体親和性を有し、一対の装着部を互いに安全につなぎ止めることができる公知の金属やポリマーなどが好ましい。

【0040】
図1の形態では、ばね部は一対の装着部が互いに閉じるように設けられているが、図6の形態では、ばね部材を蝶番とし、一対の装着部を互いに開くように該蝶番を設ける態様であってもよい。図6のように、本形態では、他方の合わせ目にツバ部と留め具などの連結部が存在するので、蝶番が一対の装着部を開こうとしても、それに抗して装着部同士を閉じたまま固定することができる。

【0041】
吻合に利用可能な吻合用血管は、特に限定はされないが、従来の血管吻合に用いられる患者本人の膝下から採取した伏在静脈(吻合用血管としたときの長さが200mm以上)や、肘から手かけて走行する橈骨動脈(吻合用血管としたときの長さが200mm以下)を用いることが好ましい(例えば、非特許文献4)。

【0042】
装着部、ばね部、連結部の各材料は、プラスチック、金属など、耐食性、生体親和性、各部に必要な機械的強度や弾性を持つ医療用の材料であればよく、それぞれに別個の材料を適宜用いてもよい。好ましい材料としては、従来より、脳動脈瘤用クリップ(特許文献1)などで臨床使用されているチタニウム合金(Ti-6Al-4V)が挙げられ、装着部、ばね部にこの材料を用いることが好ましい態様として挙げられる。

【0043】
以下、図4に示す態様の当該補助クリップを用いる場合を例として、脳内の対象血管に対してバイパスを付与する手術の手順を図7、図8に示す。
先ず、図7(a)に示すように、当該補助クリップ(I)の装着部の内面に医療用接着材8を塗布する。当該補助クリップ(I)の吻合用貫通孔には、予め吻合用血管P1が縫合されている。
次に、図7(b)に示すように、対象血管Qの吻合すべき位置(患部を挟んだ2箇所のうちの一方)に、当該補助クリップを図2に示す要領でワンタッチ装着する。
次に、図7(c)に示すように、従来技術として説明したELANAの先端部を吻合用血管P1に挿入する。ELANAの前方には対象血管Qの管壁外面が露出している。
次に、図7(d)に示すように、ELANAによって、対象血管Qの管壁を吸引しながらレーザー光を照射して管壁に穴をあけ、切り取った管壁片Q1を吸引口に吸い着ける。
次に、図8(a)に示すように、止血クリップR1を用いて対象血管からの血流を遮断し、ELANAを引き抜く。
次に、図8(b)に示すように、他方の吻合すべき位置に対しても、上記手順と同様にして、吻合用血管P2が縫合された補助クリップ(I)’を装着し、ELANAによって対象血管Qの管壁に穴をあけ、切り取った管壁片を吸引口に吸い着け、止血クリップR2を用いて対象血管からの血流を遮断し、ELANAを引き抜く。
最後に、図8(c)に示すように、吻合用血管P1、P2の端部同士を縫合し、止血クリップR1、R2を外し、バイパス血管作成の手術を完了する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によって、対象血管への吻合用血管の縫合を回避することが可能になり、また、対象血管に簡単に装着できるので、従来技術であるELANAを用いる際の吻合作業が困難であるという問題を解消することが可能になった。
【0045】
本出願は、日本で出願された特願2012-080485(出願日:2012年3月30日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10