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明細書 :ツールマーク照合システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-212650 (P2015-212650A)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 ツールマーク照合システム
国際特許分類 G01B  21/20        (2006.01)
G06T   7/00        (2006.01)
G01B  11/24        (2006.01)
FI G01B 21/20 101
G06T 7/00 300E
G01B 11/24 A
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-095015 (P2014-095015)
出願日 平成26年5月2日(2014.5.2)
発明者または考案者 【氏名】松原 雅昭
【氏名】中村 昌義
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2F065
2F069
5L096
Fターム 2F065AA52
2F065AA53
2F065FF10
2F065GG04
2F065LL18
2F065PP24
2F065QQ25
2F065QQ42
2F065SS01
2F065SS02
2F069AA66
2F069GG07
2F069NN25
2F069QQ01
5L096AA09
5L096BA03
5L096CA18
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
要約 【課題】ツールマークの機械的照合を実時間で実現する、ツールマーク照合システムを提供する。
【解決手段】ツールマーク照合処理装置103は、犯行現場105から採取した被照合ツールマーク106を複数格納する被照合テーブルに対し、照合対象となる工具110で作成したツールマークを格納する照合テーブルから、ツールマークの特徴的な部分である、ツールマークの断面形状に該当する照合YZ抜粋データを抜き出す。その上で、形状が一定になり難いツールマークの照合YZ抜粋データに対し、正規化処理を施す。そして、この照合YZ抜粋データと、被照合テーブル内の被照合抜粋データとを、多変量解析等の類似度演算処理にて、類似度を算出する。そして、被照合ツールマーク106を類似度に応じて並べ替え、表示部112に表示する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ツールマークの三次元形状を数値データとして出力する三次元測定装置と、
前記三次元測定装置が出力する第一のツールマークの三次元データと、前記三次元測定装置が出力する第二のツールマークの三次元データとを正規化して、両者の類似度を算出する照合演算処理部と
を具備する、ツールマーク照合システム。
【請求項2】
更に、
前記第一のツールマークの三次元データから断面形状を表す照合断面データを取得する入出力制御部を備え、
前記照合演算処理部は、前記照合断面データと前記第二のツールマークの三次元データとの類似度を算出するものである、
請求項1記載のツールマーク照合システム。
【請求項3】
更に、
表示部を備え、
前記入出力制御部は、前記照合演算処理部が算出した前記類似度に応じて、複数の前記第二のツールマークの三次元データを並べ替えて、前記表示部に表示する、
請求項2記載のツールマーク照合システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主に刑法犯罪捜査用途の、犯行現場に残されたツールマークをデータベースに登録し、証拠品のツールマークと照合する、ツールマーク照合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空き巣等の刑法犯は、被害者の居宅に侵入する際、市販の工具を用いてドアや窓の鍵をこじ開ける事が多い。工具を用いてドアや窓をこじ開ける際、ドアや窓の、工具が接触した箇所には、ツールマークと呼ばれる、工具痕の一種である擦過痕(引っ掻き傷)が残る場合がある。このツールマークは、人間の指紋と同様に、それぞれの工具に独自のパターンを呈する。したがって、ツールマークを指紋と同様に照合することができれば、犯人特定のために有力な物的証拠となり得る。
【0003】
なお、本発明の技術分野に近い先行技術文献を特許文献1に示す。特許文献1には、試料表面に意図的なマーキングを施すことなく、高い精度で同一点探索を行うことができる特定部位検出方法の技術内容が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-203999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、ツールマークを照合する手段は、人間の目視にのみ頼っていた。歪みの少ない画像情報が得られる指紋とは異なり、ツールマークは形状が一定になり難い。このため、ツールマークの機械的照合は困難であった。ツールマークの機械的照合ができない、ということは、客観的な判定ができない、ということにも繋がる。したがって、人間の目視に頼らない、ツールマークの機械的照合は、ツールマークに物的証拠としての客観性を担保するためにも必要である。
【0006】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、ツールマークの機械的照合を実時間で実現する、ツールマーク照合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のツールマーク照合システムは、ツールマークの三次元形状を数値データとして出力する三次元測定装置と、三次元測定装置が出力する第一のツールマークの三次元データと、三次元測定装置が出力する第二のツールマークの三次元データとを正規化して、両者の類似度を算出する照合演算処理部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ツールマークの機械的照合を実時間で実現する、ツールマーク照合システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態であるツールマーク照合システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】レーザ共焦点顕微鏡の概略を示すブロック図である。
【図3】MEMSミラーアレイ205と、MEMSミラーアレイ205上に設けられるマイクロミラーの状態を示す概略図と、試料上に照射される光スポットの状態を示す概略図である。
【図4】ツールマーク照合処理装置のハードウェア構成を示すブロック図と、ソフトウェアの機能を示すブロック図である。
【図5】ツールマークの構造を示す概略図である。
【図6】レーザ共焦点顕微鏡から出力される、ツールマークデータの一例と、ツールマークデータを一部抜粋したデータの一例である。
【図7】ツールマークの一例として、プレートに対し、マイナスドライバーを斜めに配置してツールマークを形成する状況を説明する概略図と、その凹凸形状グラフと、正規化処理を施した正規化凹凸形状グラフと、ツールマークの一例として、プレートに対し、マイナスドライバーを並行に配置してツールマークを形成する状況を説明する概略図と、その凹凸形状グラフと、正規化処理を施した正規化凹凸形状グラフである。
【図8】正規化された被照合ツールマークと、照合テーブルに基づきトリミングされた後正規化された照合YZ抜粋データとの関係を示す概略図である。
【図9】本実施形態のツールマーク照合処理装置の、処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】表示部に表示される類似度ランキング表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ツールマーク照合システム101の全体構成]
図1は、本発明の実施形態であるツールマーク照合システム101の全体構成を示すブロック図である。
ツールマーク照合システム101は、レーザ共焦点顕微鏡102と、これに接続されるツールマーク照合処理装置103よりなる。
レーザ共焦点顕微鏡102は、例えば特開2006-133499号公報等に開示される、レーザ光と、マイクロマシン(Micro Electro Mechanical System)の一つであるMEMSミラーアレイを利用して、短時間で広範囲の測定部位をスキャンして、測定部位の三次元形状を数値データとして出力する装置(三次元測定装置)である。
例えばUSBケーブル104にてレーザ共焦点顕微鏡102に接続される、ツールマーク照合処理装置103の実体は一般的なパソコンであり、これにツールマークデータ照合プログラムを実行することで、パソコンをツールマーク照合処理装置103として機能させる。

【0011】
ツールマーク照合処理装置103は、種々の犯行現場105に残された被照合ツールマーク106をレーザ共焦点顕微鏡102にて読み取り、データ化して、これを後述する被照合テーブル411(図4参照)に記憶する。被照合テーブル411には、被照合ツールマーク106の他、犯行の日時、犯行現場105の場所等、被照合ツールマーク106の詳細情報が格納される。次に、半田や真鍮、あるいは低融点合金等の柔らかい金属、またはプラスチックやアクリル等の合成樹脂のプレート107に、捜査の過程で取得したマイナスドライバー108やバールのようなもの109等の、押収品である工具110で傷つけて、プレート107に照合ツールマーク111を作成する。次に、照合ツールマーク111をレーザ共焦点顕微鏡102にて読み取り、データ化して、これを後述する照合テーブル412(図4参照)に記憶する。そして、照合テーブル412内のツールマークデータと、被照合テーブル411内の複数のツールマークデータとを照合して、類似度を算出する。
算出した類似度は、被照合テーブル411の並べ替えのキーとして使用する。類似度で降順にて並べ替えた被照合テーブル411の内容は、被照合ツールマーク106の詳細情報と共に、ツールマーク照合処理装置103の表示部112に表示される。被照合テーブル411のうち、最も顕著な類似度を示したレコードの被照合ツールマーク106が、照合ツールマーク111と一致する可能性が高いツールマークであると推測できる。照合ツールマーク111と被照合ツールマーク106との類似度の高さが、押収品である工具110が犯行に使われた可能性の高さに繋がる。

【0012】
[レーザ共焦点顕微鏡102の概略]
図2は、レーザ共焦点顕微鏡102の概略を示すブロック図である。
図2において、光源201は例えばタングステンランプ、キセノンランプ、発光ダイオード又はレーザ光源(各種レーザと光束を拡大・集束する光学系とレーザ光の位相をランダム化する拡散回転板とを用いたもの)である。光源201から出射した光は、集光光学系202によってMEMSミラーアレイ205に集光される。集光光学系202とMEMSミラーアレイ205との間には波長選択フィルタ203及びダイクロイックミラー204が配置されている。このため、MEMSミラーアレイ205に到達する光は、波長選択フィルタ203によって蛍光を励起するための波長が選択された、励起光である。図2では図面が煩雑になるため、一部の光束の光路しか記載していないが、集光光学系202はMEMSミラーアレイ205の二次元面全体にほぼ一様均一に光が当たるように構成されている。

【0013】
MEMSミラーアレイ205は、基板302内に多数のマイクロミラー301(図3参照)が二次元アレイ状に配列された構成を有する。各々のマイクロミラー301には、それぞれに対応して基板302上に図示しない電磁駆動部が設けられており、制御部220によって制御されるMEMSミラー駆動部221から電磁駆動部に供給される電流に応じて、各マイクロミラー301の反射面の傾斜角度が変化する。すなわち、各々のマイクロミラー301に設けられる各々の電磁駆動部は、制御部220からMEMSミラー駆動部221によって独立して駆動制御される。なお、MEMSミラーアレイ205としては直交する2軸を中心にそれぞれ回動可能な2自由度型、3軸を中心にそれぞれ回動可能な3自由度型などを用いてもよく、駆動方式も電磁型でなく静電型等の他の方式でもよい。

【0014】
光源201から出射し、波長選択フィルタ203とダイクロイックミラー204を通じてMEMSミラーアレイ205に当たった励起光は、MEMSミラーアレイ205上の各マイクロミラー301の電磁駆動部がオンの駆動状態にあるか、オフの駆動状態にあるかで、屈折方向が変わる。
電磁駆動部がオンの駆動状態のマイクロミラー301に反射した励起光は、対物レンズ206に向かって進み、対物レンズ206によりステージ207上に載置された試料208に集光される。
電磁駆動部がオフの駆動状態のマイクロミラー301に反射した励起光は、光トラップ212に入射して吸収される。この光トラップ212を設けることによって、迷光が試料208に入射することを極力防止することができる。

【0015】
試料208上で励起光の照射点に存在する蛍光性分子は、励起光によって励起されて、蛍光を放出する。この蛍光はMEMSミラーアレイ205から対物レンズ206を通じて入射された励起光と逆の方向に進行する。つまり、図2では下方から対物レンズ206に入射し、対物レンズ206によりMEMSミラーアレイ205に集光される。そして、再びMEMSミラーアレイ205の、電磁駆動部がオンの駆動状態のマイクロミラー301に当たって反射した光は、光源201に向かって進む。しかし、励起光よりも波長の長い蛍光は、ダイクロイックミラー204を透過せずに、ダイクロイックミラー204によって反射される。そして、この反射された蛍光は集光光学系209で集光され、波長選択フィルタ210で蛍光のみの波長が選択された後に、撮像素子211の受光面に入射する。
撮像素子211の出力信号は、A/D変換器222によってデジタルデータに変換され、USBインターフェース223を通じて外部に出力される。出力されるデータの形式は任意である。本実施形態では一例として、データ互換性の高いCVS(カンマ区切り形式)テキストデータを用いるものとする。

【0016】
図3Aは、MEMSミラーアレイ205と、MEMSミラーアレイ205上に設けられるマイクロミラー301の状態を示す概略図である。
図3Bは、試料208上に照射される光スポットの状態を示す概略図である。
前述の通り、MEMSミラーアレイ205上に設けられる、各々のマイクロミラー301の傾斜角度は、制御部220の制御の下に、MEMSミラー駆動部221により制御される。各々のマイクロミラー301は制御部220によって、それぞれ独立にオン/オフ状態に制御される。オン状態のマイクロミラー301(ON)は、対物レンズ206へ極小スポットの光を発する、一種のピンホールであるとみなすことができる。したがって、複数のマイクロミラー301を同時にオン状態とすることは、複数のピンホールカメラを設けることに相当する。しかし、共焦点ピンホールの効果を得るためには、オン状態である1個のマイクロミラー301の周囲の、所定範囲内のマイクロミラー301が全てオフ状態とする必要がある。そうしないと、被写界深度を大きくできるピンホールの効果が得られなくなってしまう。この制約によって、同時にオン状態にできるマイクロミラー301の間隔が決まる。例えば、図3Aに示すように、あるマイクロミラー301Cについて、その周囲の範囲304では遮光を行う必要がある場合について考えると、同時にオン状態とするマイクロミラー301の間隔を、図3AのX方向及びY方向とも2個空けるものとする。

【0017】
例えばMEMSミラーアレイ205が図3Aに示すようなオン/オフパターンであるとき、試料208上の平面的な光スポットのパターンは図3Bに示すようになる。即ち、オン状態であるマイクロミラー301(ON)に対応した箇所にそれぞれ極小径の光スポットSが形成される。各光スポットSにおける蛍光が撮像素子211の受光面上にそれぞれ集光されるから、撮像素子211では、同時に試料208上の複数点の蛍光を検出することができる。

【0018】
制御部220は、上記のような適切なオン/オフパターンの制御データを図示しないROMに記憶しておき、その制御データに従い、オン状態とするマイクロミラー301を図3A中に示すようにX方向及びY方向に順次切り替える。このとき、試料208上の光スポットS1は図3Bに示すように走査される。各々の光スポットが一斉に同様に走査されることで、試料208上の、MEMSミラーアレイ205が受光できる撮像領域の走査が遂行される。試料208上の撮像領域には同時に複数の光スポットが形成されているため、1個の光スポットの移動範囲が狭くても、つまり走査時間が短くても、撮像領域を全て漏れなく且つ一様に走査することができる。

【0019】
[ツールマーク照合処理装置103の構成]
図4Aは、ツールマーク照合処理装置103のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のパソコンよりなるツールマーク照合処理装置103は、CPU401、ROM402、RAM403、ハードディスク装置等の不揮発性ストレージ404、表示部112、操作部405、USBインターフェース406(図4中「USB I/F」と略記)がバス407に接続される。

【0020】
図4Bは、ツールマーク照合処理装置103のソフトウェアの機能を示すブロック図である。
USBインターフェース406を通じてレーザ共焦点顕微鏡102から受信したツールマークのデータは、入出力制御部410を通じて、被照合テーブル411または照合テーブル412のいずれかに記憶される。その際、受信したツールマークのデータをどちらのテーブルに記憶させるかは、入出力制御部410と表示部112と操作部405が構成するGUI(Graphical User Interface)にて、ユーザの選択操作によって決定する。また、入出力制御部410が提供するGUIの機能には、照合テーブル412から被照合テーブル411のデータと照合するためのデータを選択して抜き出すための、照合範囲特定処理部413も含まれている。
照合演算処理部414は、複数種類の多変量解析関数にて、入出力制御部410によって特定された照合テーブル412のデータと、被照合テーブル411のデータとを照合し、類似度を算出する。照合演算処理部414が機能として備える多変量解析関数は例えば、標準化ユークリッド距離、ピアソンの積率相関係数、Tanimoto係数、Dice係数、コサイン係数、スピアマンの順位相関係数、平均値比及び標準偏差比を備える。勿論、これらに限られず、マハラノビス距離や単純な乗算処理であってもよい。各々の多変量解析関数は公知の技術であるので、詳細は省略する。これら多変量解析演算は演算量が多いので、必要に応じて近年普及しているGPGPU(general-purpose computing on graphics processor units:GPUを用いる汎用目的計算処理)を利用することが好ましい。

【0021】
[ツールマークの構造とツールマークデータの構成]
図5は、ツールマークの構造を示す概略図である。
図5において、ツールマークの一例として、プレート107の表面を空き巣犯罪に使用される代表的な工具110であるマイナスドライバー108にて犯行現場105やプレート107を削った場合に、犯行現場105やプレート107の表面に生じるツールマーク501を想定して、ツールマーク501の構造と、このツールマーク501を表現するツールマークデータの構成を説明する。
マイナスドライバー108の先端は、一見すると平坦であるように見えるが、肉眼では識別し難い凹凸が存在する。この凹凸が、ツールマーク501の線状の凹凸となって現れる。
マイナスドライバー108の先端の移動方向、すなわち線状のツールマーク501に平行な方向をX軸、プレート107の表面上にてこのX軸方向に直交する方向をY軸とする。そして、ツールマーク501の凹凸の高さ方向をZ軸とする。
ツールマーク501を、Y-Z面にて切断すると、ツールマーク501の断面の凹凸形状を観察できる。このツールマーク501の断面の凹凸形状を二次元平面のグラフにしたものが、凹凸形状グラフ502である。凹凸形状グラフ502は、横軸がY軸、縦軸がZ軸の、ツールマーク501の断面の凹凸形状を表すグラフである。
断面の凹凸形状をX軸方向に積分すると、ツールマーク501をプレート107の上面から見下ろした、平面凹凸形状になる。このツールマーク501をプレート107の上面から見下ろした状態で、ツールマーク501の深さを色で表現したカラーマップ画像が、平面凹凸マップ503である。平面凹凸マップ503は、横軸がY軸、縦軸がX軸の、ツールマーク501の深さ(Z軸)を色で表現したカラーマップ画像である。

【0022】
図6Aは、レーザ共焦点顕微鏡102から出力される、ツールマークデータ601の一例である。
ツールマークデータ601は、ツールマークのX軸方向の座標をフィールドとして、Y軸方向の座標をレコードとして、X軸とY軸の交点におけるZ軸の高さを値とする、テーブルである。なお、第一フィールドはY軸の座標情報を示す値であり、第一レコードはX軸の座標情報を示す値である。すなわち、図6Aのツールマークデータ601は、図5の平面凹凸マップ503の実体に等しい。
照合テーブル412は、このツールマークデータ601が格納される。
被照合テーブル411は、このツールマークデータ601が、犯行現場105の数に応じて複数、格納される。

【0023】
図6Bは、ツールマークデータ601を一部抜粋したデータの一例である。
ツールマークは、Z軸方向の値(高さ)を、X軸方向で見るか、Y軸方向で見るかで、大きく異なる。Z軸方向の高さは、X軸方向で見ると殆ど変化がない。しかし、Y軸方向で見ると、ツールの凹凸形状そのものを表す変化を示す。したがって、ツールマークデータ601同士を比較するには、X軸方向の値は無視して、Y-Z平面同士で比較すると、計算量が少なく済む。これ以降、このY-Z平面で表されるデータをYZ抜粋データ602と呼ぶ。YZ抜粋データ602をグラフにしたものが、図5の凹凸形状グラフ502である。

【0024】
図4Bの照合範囲特定処理部413は、照合テーブル412に格納されているツールマークデータ601から、X軸方向の位置をGUIにてユーザに選択させる。
始めに、照合範囲特定処理部413は、表示部112に平面凹凸マップ503を表示させ、この平面凹凸マップ503上にY軸方向に平行な線を表示する。ユーザは、この線をマウス等のポインティングデバイスを用いて、適切な位置に移動させる。そして、図示しない決定ボタンをクリックする等の動作を行うことで、線上に該当するX軸方向の位置のフィールドに存在するYZ抜粋データ602を抜粋して、照合YZ抜粋データを作成する。これ以降、このツールマークデータ601に対するX軸方向の選択動作をX方向抜粋と呼ぶ。なお、照合YZ抜粋データの対になる存在として、被照合テーブル411に含まれるツールマークデータ601から抜粋したYZ抜粋データ602を、被照合YZ抜粋データと呼ぶ。
次に、X軸方向のフィールドの照合YZ抜粋データに基づく凹凸形状グラフ502を表示する。そして、この凹凸形状グラフ502の両端に、Z軸方向に平行な線を二本、表示する。ユーザは、この線をポインティングデバイスを用いて、適切な位置に移動させる。凹凸形状グラフ502の両端部分は道具のエッジに相当し、この部分は道具の欠損が生じ易い。結果として、エッジの部分は不安定なデータになり易い傾向があるので、必要に応じて照合対象から除外する。また、マイナスドライバー108の先端部分が一部欠けている等の、ツールマークが極めて特徴的であり、十分な照合結果が得られるのであれば、計算量を少なくする効果も期待できる。これ以降、この照合YZ抜粋データに対するY軸方向の選択動作をトリミングと呼ぶ。
なお、X方向抜粋は、本実施形態のツールマーク照合処理装置103には必須であるが、トリミングは必ずしも必須ではない。

【0025】
照合演算処理部414は、照合範囲特定処理部413によって照合テーブル412から抜き出された照合YZ抜粋データを、被照合テーブル411に格納されている全てのツールマークデータ(被照合YZ抜粋データの集合体)との照合演算を、前述の多変量解析関数にて行う。しかし、多変量解析を行う前に、ツールマークには独特の、データの前処理を行う必要がある。
図7Aは、ツールマークの一例として、プレート107に対し、マイナスドライバー108を斜めに配置してツールマークを形成する状況を説明する概略図である。
図7Bは、図7Aにおいてマイナスドライバー108を斜めに配置して形成されたツールマークの、凹凸形状グラフである。
図7Cは、図7Bの凹凸形状グラフに対して正規化処理を施した、正規化凹凸形状グラフである。
図7Dは、ツールマークの一例として、プレート107に対し、マイナスドライバー108を並行に配置してツールマークを形成する状況を説明する概略図である。
図7Eは、図7Dにおいてマイナスドライバー108を平行に配置して形成されたツールマークの、凹凸形状グラフである。
図7Fは、図7Eの凹凸形状グラフに対して正規化処理を施した、正規化凹凸形状グラフである。

【0026】
図7Aと図7Dを比較して判るように、プレート107面上に作成されるツールマークは、工具110をプレート107に対し並行に当てるか、斜めに当てるかで、その幅が大きく変わる。また、図7Bと図7Eを比較して判るように、ツールマークは、工具110をプレート107に対して押し付ける力の大きさによって、その深さが大きく変わる。そこで、この幅と深さを、照合テーブル412から抜き出された照合YZ抜粋データと、被照合テーブル411から抜き出す被照合YZ抜粋データとで、正規化処理する。
図7Aにおいて、ツールマークの幅はd1である。一方、図7Dにおいて、ツールマークの幅はd2である。
図7Bにおいて、ツールマークの最大深さはV1である。一方、図7Eにおいて、ツールマークの最大深さはV2である。
そこで、照合演算処理部414は、多変量解析に先立ち、図7Cに示すように、幅d1をd3に拡大し、最大深さV1をV3に拡大する。また同様に、図7Fに示すように、幅d2をd3に拡大し、最大深さV2をV3に拡大する。このように、多変量解析による照合演算処理をより精緻に実行できるように、データを揃える。

【0027】
図8は、被照合ツールマーク106を正規化したものと、照合テーブル412に基づきトリミングされた後正規化された照合YZ抜粋データ801との関係を示す概略図である。
図8において示される正規化被照合ツールマーク803の基となる被照合ツールマーク106は、犯行現場105一件分のデータである。被照合テーブル411には、この被照合ツールマーク106のデータが犯行現場105の数だけ複数個存在する。それら被照合ツールマーク106は、X軸方向に複数の被照合YZ抜粋データ802を有する。図8の正規化被照合ツールマーク803は、被照合ツールマーク106に正規化処理を施したものである。
照合テーブル412は、被照合ツールマーク106と同じ、犯行現場105一件分のデータに相当する。図8の照合YZ抜粋データ801は、照合テーブル412からX方向抜粋を行い、トリミングを施し、更に正規化を施した照合YZ抜粋データである。
正規化被照合ツールマーク803と、正規化されトリミングされた照合YZ抜粋データ801を比較すると、トリミングの効果により、正規化YZ抜粋データのY軸方向の幅が、正規化被照合ツールマーク803のY軸方向の幅と比べて狭くなっている。もし、被照合ツールマーク106と照合YZ抜粋データ801が、同一の工具110で作成されたツールマーク同士であれば、照合YZ抜粋データ801をY軸方向に移動しながら被照合ツールマーク106と比較すると、高い類似度を示す位置が現れる確率が高まる。

【0028】
図9は、本実施形態のツールマーク照合処理装置103の、処理の流れを示すフローチャートである。なお、ツールマーク照合処理装置103は、予め複数の犯行現場105から被照合ツールマーク106のデータ収集を行った状態であるものとする。
処理を開始すると(S901)、入出力制御部410はUSBインターフェース406を通じてレーザ共焦点顕微鏡102から照合ツールマーク111のデータを受信して、照合テーブル412に記憶する(S902)。そして、受信した照合ツールマーク111のデータを、平面凹凸マップ503として表示部112に表示すると共に、平面凹凸マップ503上にカーソルを表示して、当該カーソル上の凹凸形状グラフ502を表示部112に表示する(S903)。そして、ユーザによるX軸方向の位置の指定操作と、Y軸方向のトリミング位置の指定操作を待つ(S904)。ユーザからX軸方向及びY軸方向の位置の指定を受けると、入出力制御部410は当該X軸座標情報及びY軸座標情報を基に、照合YZ抜粋データを作成する(S905)。

【0029】
次に、入出力制御部410は、照合演算処理部414による照合処理に先立ち、照合YZ抜粋データのY軸方向とZ軸方向の正規化処理を行う(S906)。この正規化処理の際、入出力制御部410は被照合テーブル411を参照する。先ず、被照合テーブル411内に存在する被照合YZ抜粋データの、Y軸方向の幅が、トリミングされていない照合YZ抜粋データの幅よりも大きい場合は、照合の対象から除外する。何故ならば、トリミングされていない照合YZ抜粋データは、図7Dのように傾かせず、かつ、ツール断面全体のツールマークを計測している。一方、現場に残された被照合YZ抜粋データは傾いていたり、ツール断面の一部だけの痕跡が残っている可能性があるため、前者より大きくなることがない。したがって、照合YZ抜粋データの幅より大きい被照合YZ抜粋データは、照合YZ抜粋データを作成した工具から作成される可能性がない。
次に、被照合テーブル411内に存在する被照合YZ抜粋データの、Y軸方向の幅が、トリミングされていない照合YZ抜粋データの幅よりも極端に小さい場合も、照合の対象から除外する。すなわち、照合テーブル412の基となる工具110の先端の形状から、物理的に作成できない被照合ツールマーク106は照合対象から外す。そして、照合対象となった被照合ツール マーク106の、Y軸方向の幅の最大値と、Z軸方向の高さの最大値を取得する。更に、照合YZ抜粋データのY軸方向の幅と、Z軸方向の高さも含めて、Y軸方向の幅の最大値と、Z軸方向の高さの最大値を得る。こうして、照合YZ抜粋データのY軸方向の幅と、Z軸方向の高さを、Y軸方向の幅の最大値と、Z軸方向の高さの最大値に合わせるべく、係数を算出して、正規化する。

【0030】
次に、入出力制御部410は、照合演算処理部414に対し、照合YZ抜粋データと被照合YZ抜粋データの照合処理を行わせる(S907)。このステップS907において、照合演算処理部414は、Y軸方向の幅の最大値と、Z軸方向の高さの最大値を用いて、照合対象となった被照合テーブル411内に存在する全ての被照合YZ抜粋データを正規化した後、多変量解析演算にて、正規化されトリミングされた照合YZ抜粋データとの類似度を算出する。
照合演算処理部414が照合処理を終了したら、入出力制御部410は、被照合ツールマーク106に存在する全ての被照合YZ抜粋データの類似度の最大値を、当該被照合ツールマーク106の類似度とする。そして、被照合テーブル411に複数存在する被照合ツールマーク106を、類似度で並べ替えて(S908)、表示部112に表示し(S909)、一連の処理を終了する(S910)。

【0031】
図10は、表示部112に表示される類似度ランキング表示の例である。図9のステップS909の実行結果に該当する。
図10の画面イメージ中、類似度を表すフィールドに、百分率単位の類似度と、棒グラフが表示されている。また、コメントを表すフィールドには試験用データの詳細情報が記されているが、この項目に犯行現場105に関する諸情報を記載することで、犯罪捜査に役立てることができる。

【0032】
以上説明した実施形態には、以下に記す応用例が可能である。
(1)上述の実施形態では、押収された工具110がどの犯行現場105で利用されたかを照合するために、工具110が作成した照合ツールマーク111を測定し、犯行現場105から測定した被照合ツールマーク106を比較照合するものであった。犯罪捜査にツールマークを照合する場面は、これに限られない。例えば、複数の犯行現場105の被照合ツールマーク106同士を照合する。類似度が極めて高い複数の被照合ツールマーク106があった場合、それら被照合ツールマーク106同士は同じ工具が使用されたもの、すなわち同一犯の犯行であると判断することができる。この場合、被照合テーブル411内に格納されている複数の被照合ツールマーク106を、照合の対象とする。

【0033】
(2)上述の実施形態では、直線方向に生じたツールマークを例示していたが、回転方向に生じたツールマークを対象にすることも可能である。
(3)本実施形態のツールマーク照合処理装置103は、YZ抜粋データの作成を省略することで、そのまま指紋照合処理装置として転用が可能である。すなわち、二次元平面の画像情報の類似度を、多変量解析処理にて算出することで、客観的な指紋照合の機械的処理を実現できる。

【0034】
本実施形態では、ツールマーク照合システム101を開示した。
ツールマーク照合処理装置103は、犯行現場105から採取した被照合ツールマーク106を複数格納する被照合テーブル411に対し、照合対象となる工具110で作成したツールマークを格納する照合テーブル412から、ツールマークの特徴的な部分である、ツールマークの断面形状に該当する照合YZ抜粋データを抜き出す。その上で、形状が一定になり難いツールマークの照合YZ抜粋データに対し、正規化処理を施す。そして、この照合YZ抜粋データと、被照合テーブル411内の被照合抜粋データとを、多変量解析等の類似度演算処理にて、類似度を算出する。そして、被照合ツールマーク106を類似度に応じて並べ替え、表示部112に表示する。
このように本実施形態によれば、人間の目視に頼らず、ツールマークの機械的照合を実時間で実現する、ツールマーク照合システムを提供することができる。

【0035】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性或は不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0036】
101…ツールマーク照合システム、102…レーザ共焦点顕微鏡、103…ツールマーク照合処理装置、104…USBケーブル、105…犯行現場、106…被照合ツールマーク、107…プレート、108…マイナスドライバー、110…工具、111…照合ツールマーク、112…表示部、201…光源、202…集光光学系、203…波長選択フィルタ、204…ダイクロイックミラー、205…MEMSミラーアレイ、206…対物レンズ、207…ステージ、208…試料、209…集光光学系、210…波長選択フィルタ、211…撮像素子、212…光トラップ、220…制御部、221…MEMSミラー駆動部、222…A/D変換器、223…USBインターフェース、301…マイクロミラー、302…基板、304…範囲、401…CPU、402…ROM、403…RAM、404…不揮発性ストレージ、405…操作部、406…USBインターフェース、407…バス、410…入出力制御部、411…被照合テーブル、412…照合テーブル、413…照合範囲特定処理部、414…照合演算処理部、501…ツールマーク、502…凹凸形状グラフ、503…平面凹凸マップ、601…ツールマークデータ、602…YZ抜粋データ、801…照合YZ抜粋データ、802…被照合YZ抜粋データ、803…正規化被照合ツールマーク
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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