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明細書 :RE123結晶膜作成方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-209363 (P2015-209363A)
公開日 平成27年11月24日(2015.11.24)
発明の名称または考案の名称 RE123結晶膜作成方法。
国際特許分類 C01G   3/00        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01B  12/06        (2006.01)
FI C01G 3/00
C01G 1/00 ZAAS
H01B 13/00 565D
H01B 12/06
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-092661 (P2014-092661)
出願日 平成26年4月28日(2014.4.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.26th International Symposium on Superconductivity 2013 予稿集 平成25年11月18日発行 2.26th International Symposium on Superconductivity 2013 平成25年11月20日発表
発明者または考案者 【氏名】舩木 修平
【氏名】山田 容士
【氏名】中山 文也
【氏名】奥西 亮太
【氏名】宮地 優悟
出願人 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
5G321
Fターム 4G047JA03
4G047JC02
4G047KD09
5G321AA02
5G321AA04
5G321BA01
5G321BA07
5G321CA04
5G321CA21
5G321CA24
5G321CA27
5G321CA28
5G321DB28
5G321DB47
要約 【課題】従来の気相成長法に比して低温かつ高速成膜可能であって真空環境を必要としないRE123結晶膜作成方法を提供すること。
【解決手段】希土類系銅酸化物高温超伝導体REBaCu(ただし、REは希土類元素を表し、yは6~7を表す。)を基板上に膜成長させる方法であって、RE:Ba:Cuの組成比が1:2~3:2~7の間となる様に調整した原料を、溶融させた水酸化に溶解させること(溶融水酸化物法)で、500℃を越え700℃未満の還元雰囲気下において基板上にREBaCuを膜成長させることを特徴とする結晶膜作成方法である。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
希土類系銅酸化物高温超伝導体REBaCu(ただし、REは希土類元素を表し、yは6~7を表す。)を基板上に膜成長させる方法であって、
RE:Ba:Cuの組成比が1:2~3:2~7の間となる様に調整した原料を、500℃を越え700℃未満の還元雰囲気下において、溶融した水酸化物に溶解させ、基板上にREBaCuを膜成長させることを特徴とする結晶膜作成方法。
【請求項2】
前記基板は、エッチピット様の凹凸が表面に存在する基板であることを特徴とする請求項1に記載の結晶膜作成方法。
【請求項3】
基板に、NdGaO、LaAlO、MgO、または、SrTiOを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶膜作成方法。
【請求項4】
水酸化物としてKOH、NaOH、LiOH、Ba(OH)、または、これらの混合物を用いることを特徴とする請求項1、2または3に記載の結晶膜作成方法。
【請求項5】
NdGaO、LaAlO、MgO、または、SrTiOの単結晶基板であって、表面に、化学的、物理的、または、機械的手法により形成されたエッチピット様の凹凸が形成されたことを特徴とするREBaCu(ただし、REは希土類元素を表し、yは6~7を表す。)の結晶膜成長用基板。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、RE123結晶膜作成方法および作成用基板に関し、特に、低温かつ高速成膜可能なRE123結晶膜作成方法および作成用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液体窒素より高い温度で超伝導性を示すものとして、希土類系銅酸化物高温超伝導体が知られている。そのうち、REBaCu(以降において、適宜RE123と表記する。なお、REは希土類元素を、yは6~7を示す)は、他の高温超伝導体と比して、磁場中における臨界電流密度が高いという特徴をもつ。従って、超伝導ケーブルや超伝導フィルタ等への応用が期待でき盛んに研究されている。従来は、主としてRE123は気相成長法により膜成長させて得ていた。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
気相成長法は、高真空かつ900℃程度の高温環境を要する。さらに、成膜速度が約0.1μm/minと非常に遅い。従って成膜コストの低減化が困難であるという問題点があった。また、超伝導ケーブルを作製する場合、高い温度に起因し、基材である金属テープからRE123膜へ金属元素が拡散し、超伝導特性を劣化させてしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】中山文也ら「溶融水酸化物法を用いた低温・低酸素雰囲気下におけるYBCOの合成」第60回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集11-031(2013年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、従来の気相成長法に比して低温かつ高速成膜可能であって真空環境を必要としないRE123結晶膜作成方法を提供することを目的とする。また、RE123をエピタキシャル成長させるのに好適な基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、希土類系銅酸化物高温超伝導体REBaCu(ただし、REは希土類元素を表し、yは6~7を表す。)を基板上に膜成長させる方法であって、RE:Ba:Cuの組成比が1:2~3:2~7の間となる様に調整した原料を、500℃を越え700℃未満の還元雰囲気下において、溶融した水酸化物に溶解させ(溶融水酸化物法を用い)、基板上にREBaCuを膜成長させることを特徴とする結晶膜作成方法である。
なお、好ましくは550℃以上650度以下である。基板は、必ずしも板状である必要はなく、広く、RE123と格子定数が近似した、エピタキシャル成長させる種となりうるものであれば特に限定されない。組成比については、この範囲内にあれば好適にRE123を得ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記基板は、エッチピット様の凹凸が表面に存在する基板であることを特徴とする請求項1に記載の結晶膜作成方法である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、基板に、NdGaO、LaAlO、MgO、または、SrTiOを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶膜作成方法である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、水酸化物としてKOH、NaOH、LiOH、Ba(OH)、または、これらの混合物を用いることを特徴とする請求項1、2または3に記載の結晶膜作成方法である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、NdGaO、LaAlO、MgO、または、SrTiOの単結晶基板であって、表面に、化学的、物理的、または、機械的手法により形成されたエッチピット様の凹凸が形成されたことを特徴とするREBaCu(ただし、REは希土類元素を表し、yは6~7を表す。)の結晶膜成長用基板である。
物理的手法としては、イオンでスパッタしたり、イオンを照射したりする例を挙げることができ、機械的な手法としては、粗い材料で表面に傷をつける例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の気相成長法に比して低温かつ高速成膜可能であって真空環境を必要としないRE123結晶膜作成方法を提供することができる。また、RE123をエピタキシャル成長させるのに好適な基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】RE123結晶膜作成し一部膜を剥離させた試料の表面写真である。
【図2】熱処理温度の違いによる結晶膜のXRDパタンの測定結果を示した図である。
【図3】熱処理温度の違いによる結晶膜のφスキャンの測定結果を示した図である。
【図4】熱処理温度の違いによる電気抵抗率の温度依存性を測定した結果を示した図である。
【図5】超伝導に向けての抵抗率低下開始点Tonsetおよび抵抗0となる温度Tzeroの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
ここでは、REとしてYを、基板としてNdGaO(001)を、溶融剤としてKOHを採用してY123結晶膜の作成をおこなった。

【0014】
まず、原料としてY,BaCO,CuOを、組成比がY:Ba:Cu=1:2:3になる様に10g秤量した。これを、2mm×5mmの(001)面をもつNdGaO結晶、および、KOH10gととともに、アルミナるつぼに入れ、還元雰囲気にするためNフローとして加熱処理した。

【0015】
加熱は、常温から、設定した熱処理温度まで3時間かけて昇温し、設定温度にて12時間保持し、その後加熱を終了した(3時間程度で常温となる)。ここで、設定した熱処理温度は、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃とした。

【0016】
その後、KOHおよびKCO除去のため、水およびエタノールを加え超音波洗浄し、基板を取り出した。

【0017】
最後に、試料に酸素を導入するためアニール処理した。これは、常温から450℃まで1時間かけて昇温し、450℃にて5時間保持し、その後12時間かけて450℃から350度へ降温させておこなった。

【0018】
図1は、試料の表面写真である(設定温度は650℃である)。写真から明らかな様に、基板表面には正方形の多数のエッチピットが形成され、これを充填しかつ覆う様に表面全体にわたり膜が形成されていることを確認した。結晶成長の観点から、凹凸はエッチピット様であれば良いといえる。すなわち、化学的手法に限定されず、基板表面に、物理的または機械的にエッチピット様凹凸を形成させることよっても結晶膜を成長させることができる。図示は省略するが、粗い材料により基板表面に傷をつけても実際に結晶成長することを確認した。

【0019】
次に、表面の膜の配向性を特定するためXRDパタンを測定した。結果を図2に示す。図から明らかな様に、熱処理温度が500℃である場合は原料が残存するが、500℃を越えるとY123、しかもc軸配向したもののみが形成されることが確認できた。ただし、熱処理温度が700℃以上であるとY211(YBaCuO)も形成されることも確認された。

【0020】
また、φスキャンをおこなった結果を図3に示す。図から、熱処理温度が500℃を越えると基板に対して45℃ずれた結晶しか存在せず、Y123が面内配向していることを確認した。

【0021】
従来では、Y123結晶膜を作成するためには、900℃程度まで温度を上げる必要があったが、本方法によれば350℃以上低い温度にて成膜でき、しかも、基板に対してc軸配向し、かつ、面内配向した結晶が得られる。また、真空とする必要もない。従って、高い導電性を有する超伝導体材料として利用でき、製造コストも低減することができる。

【0022】
なお、各熱処理温度における、電気抵抗率の温度依存性を測定した結果、および、超伝導に向けての抵抗率低下開始点Tonsetおよび抵抗0となる温度Tzeroの関係を、それぞれ図4および図5に示した。図から、超伝導転移点は概ね液体窒素温度77K以上であるが、熱処理温度が550℃を越え700℃以下であれば、TonsetとTzeroはいずれも77K超となる。特に熱処理温度が650℃では、Tonset≒Tzeroであり最も良好な結晶性であることが確認できた。

【0023】
なお、設定温度における熱処理時間を20分として別途膜成長させ、膜厚を測定したところ、約20μmであり、従来の気相成長法と比して高速な成膜を可能とする方法であるといえる。

【0024】
以上の例以外にも、RE123の結晶膜を同様な方法により得ることができる。
まず、化学的な手法にて表面にエッチピット様の凹凸を形成させるのは、溶融剤KOH以外にも、NaOH、LiOH、Ba(OH)、または、これらの混合物などの強アルカリを用いることができる。

【0025】
また、表面に物理的な手法にて凹凸を形成させるのには、レーザーアブレーション、スパッタリング、イオン照射などを用いることができる。また、傷をつけるなどの機械的な手法にて表面に凹凸を形成させてもよい。

【0026】
また、基板には、RE123と格子整合性の良い、LaAlO、MgO、または、SrTiOなどを用いてもよい。これらにエッチピット様の凹凸を形成させたものはRE123の結晶膜成長用基板として用いることができる(液相成長法に限定されず、気相成長法用の基板として用いてもよい)。また、基板の上に、RE123、REBaCu、または、RE123と格子整合性の良い酸化物膜、をエピタキシャル成長させたものも、RE123の結晶成長用基板として用いてもよい。

【0027】
REは、Yのほか、La,Pr,Nd、Pm,Sm、Eu,Gd、Tb,Dy、Ho,Er,Tm、Yb,Luがあるので、これらを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、平面的または一方向に長い結晶膜を形成できるので、送電ロスを極限まで低減できる超伝導ケーブルや、周波数選択性を高め損失を極めて低減できる超伝導フィルタ、また、物性評価装置などに利用できる。
【0029】
超伝導ケーブルの場合は、従来は、コーテッドコンダクター方式のケーブル作製が試みられてきたものの、気相成長法に由来する高温成膜が影響し、金属テープからの金属拡散が品質に影響を与えるが、本発明では低温成膜(かつ高速成膜)できるので、品質の高いケーブルを提供できる。
【0030】
また、超伝導ケーブルの長尺化のための接合にRE123を用いてもよい。これにより、接触部分の電気抵抗をゼロにできると共に接合部分も含めた系全体が超伝導からなるRE123系超伝導ケーブルの実現も期待できる。
【0031】
また、電気抵抗ゼロ、ジョセフソン効果などを利用した物性評価装置(SQUID等)が開発されているが、液体ヘリウムによる冷却を必要とし、稼働コストが高くなってしまうという課題があった。本発明では、液体窒素温度下において稼働可能であり、系全体を銅酸化物高温超伝導体から成る装置とすることも可能となる。
【0032】
なお、本方法を基礎とする引上げ法を確立することにより、気相成長法(0.1μm/min)の100倍の速さの成膜も可能となる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図1】
4