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明細書 :生体試料中の個別多種及び/又は混合多種の疾患関連自己抗体の検出方法、キット及び検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-203683 (P2015-203683A)
公開日 平成27年11月16日(2015.11.16)
発明の名称または考案の名称 生体試料中の個別多種及び/又は混合多種の疾患関連自己抗体の検出方法、キット及び検出装置
国際特許分類 G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI G01N 33/543 595
G01N 33/53 N
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-084841 (P2014-084841)
出願日 平成26年4月16日(2014.4.16)
発明者または考案者 【氏名】鉢村 和男
【氏名】佐藤 雄一
【氏名】長塩 亮
【氏名】前田 忠計
【氏名】狩野 有作
出願人 【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
審査請求 未請求
テーマコード 2G054
Fターム 2G054AA06
2G054AA07
2G054AB05
2G054CA23
2G054CE02
要約 【課題】生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定可能な検出方法を提供する。
【解決手段】本発明の検出方法は、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を、同一反応相にて同時に検出する方法であって、エバネッセント波励起蛍光法を用いることを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を、同一反応相にて同時に検出する方法であって、エバネッセント波励起蛍光法を用いることを特徴とする、検出方法。
【請求項2】
前記疾患関連自己抗体が、疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記疾患関連自己抗体が、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体である、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記生体試料中の疾患関連自己抗体を、基板上に固定された個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原と反応させる工程と、前記基板上に前記疾患関連抗原を介して捕捉された前記疾患関連自己抗体に結合する、蛍光物質で標識された二次抗体を反応させる工程と、前記基板上の蛍光物質をエバネッセント波により励起する工程と、前記基板上の蛍光物質から放出された蛍光を検出する工程と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記蛍光物質で標識された二次抗体が、グロブリンタイプ又はサブクラス特異的に反応する、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
エバネッセント波励起蛍光法を用いて、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を同一反応相にて同時に検出するためのキットであって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質が同一反応相に固定された基板と、それら疾患関連タンパク質に対する自己抗体を認識する蛍光物質で標識された二次抗体とを備えたことを特徴とする、キット。
【請求項7】
前記疾患関連自己抗体が、疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記疾患関連自己抗体が、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体である、請求項6又は7に記載のキット。
【請求項9】
前記蛍光物質で標識された二次抗体が、グロブリンタイプ又はサブクラス特異的に反応する、請求項6~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
疾患関連自己抗体検出用検出装置であって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原が固定された基板と、前記基板の表面にエバネッセント波を発生させる照射手段と、前記エバネッセント波により励起された蛍光物質から放出された蛍光を検出する検出手段と、を備える、検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中の個別多種及び/又は混合多種の疾患関連自己抗体の検出方法、キット及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患の存在や進行度の指標として、現在、生体試料中の様々な疾患関連抗原が測定されている。例えば、腫瘍マーカーとして、様々な腫瘍関連抗原が測定されている。しかしながら、癌患者では、腫瘍関連抗原が増加する前に、様々な腫瘍関連抗原に対する自己抗体が増加することが明らかにされてきた(例えば、非特許文献1~4を参照)。そこで、腫瘍関連抗原を検出するよりも、腫瘍関連抗原に対する自己抗体を検出した方が癌の早期発見につながる場合がある。癌に限らず、他の疾患においても、疾患関連自己抗体(疾患関連抗原に対する自己抗体)は、疾患の早期発見につながる新たな疾患マーカーである。
【0003】
近年、腫瘍マーカーとして、血液中のp53タンパク質に対する自己抗体を検出する検査方法が保険適用の対象として認可された。現在、p53タンパク質に対する自己抗体の検出は、酵素免疫測定法(ELISA法)のみによって行われている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. M. A. WHITEHOUSE and E. J. HOLBOROW, Br Med J, 4, 511-513, 1971
【非特許文献2】Imai H., et al., Clin Cancer Res, 1, 417-424, 1995
【非特許文献3】Murray A., et al., Ann Oncol, 21, 1687-1693, 2010
【非特許文献4】Werner S.,et al., Int J Cancer, doi:10. 1002/ijc.28807, 2014[Epub ahead of print]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らは、ELISA法による疾患関連自己抗体の検出は、検出感度が不十分な場合があることを見出した。
更に、単一の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を検出する方式に留まらず、癌や難治性疾患の検出率等を向上させる検出方法が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定可能な検出方法を提供することを目的とする。本発明はまた、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定するためのキット及び疾患関連自己抗体検出用検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
(1)個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を、同一反応相にて同時に検出する方法であって、エバネッセント波励起蛍光法を用いることを特徴とする、検出方法。
(2)前記疾患関連自己抗体が、疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体である、(1)に記載の検出方法。
(3)前記疾患関連自己抗体が、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体である、(1)又は(2)に記載の検出方法。
(4)前記生体試料中の疾患関連自己抗体を、基板上に固定された個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原と反応させる工程と、前記基板上に前記疾患関連抗原を介して捕捉された前記疾患関連自己抗体に結合する、蛍光物質で標識された二次抗体を反応させる工程と、前記基板上の蛍光物質をエバネッセント波により励起する工程と、前記基板上の蛍光物質から放出された蛍光を検出する工程と、を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の検出方法。
(5)前記蛍光物質で標識された二次抗体が、グロブリンタイプ又はサブクラス特異的に反応する、(4)に記載の検出方法。
(6)エバネッセント波励起蛍光法を用いて、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を同一反応相にて同時に検出するためのキットであって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質が同一反応相に固定された基板と、それら疾患関連タンパク質に対する自己抗体を認識する蛍光物質で標識された二次抗体とを備えたことを特徴とする、キット。
(7)前記疾患関連自己抗体が、疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体である、(6)に記載のキット。
(8)前記疾患関連自己抗体が、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体である、(6)又は(7)に記載のキット。
(9)前記蛍光物質で標識された二次抗体が、グロブリンタイプ又はサブクラス特異的に反応する、(6)~(8)のいずれかにに記載のキット。
(10)疾患関連自己抗体検出用検出装置であって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原が固定された基板と、前記基板の表面にエバネッセント波を発生させる照射手段と、前記エバネッセント波により励起された蛍光物質から放出された蛍光を検出する検出手段と、を備える、検出装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定可能な検出方法を提供することができる。また、本発明により、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定するためのキット及び疾患関連自己抗体検出用検出装置を提供することができる。
更に、本発明によれば、癌や難治性疾患等のより早期発見を可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、エバネッセント波励起蛍光法による、7種類のタンパク質に対する自己抗体の検出結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[生体試料中の個別多種及び/又は混合多種の疾患関連自己抗体の検出方法]
1実施形態において、本発明は、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を、同一反応相にて同時に検出する方法であって、エバネッセント波励起蛍光法を用いる、検出方法を提供する。
本実施形態は、多種の腫瘍関連タンパク質や疾患関連タンパク質に対する自己抗体を一括操作で同時に測定し、その結果の組み合わせで癌や難治性疾患の検出率等を向上させる構成である。

【0011】
現在、日本で唯一の保険適用腫瘍関連自己抗体検査は抗p53自己抗体のみである。研究的にはp53タンパク質以外の多くの腫瘍関連タンパク質に対する自己抗体が報告されており、多種の自己抗体を同時測定することの有効性が説かれている。本実施形態は、その同時測定を、初めてエバネセント波を利用して簡単に可能とした。
これまで抗p53自己抗体をはじめ、腫瘍関連自己抗体の測定のほとんどはELISA法で行われており、多種同時測定を仮にELISA法で実施するためには、患者検体量やキット中の固相化抗原などの必要量が、かなり多いものとなっていた。また、低親和性自己抗体の偽陰性化問題も残る。
本実施形態は、ELISA法による測定と比較し、低親和性自己抗体の検出に優れ、患者検体量、疾患関連タンパク量(固相化抗原量)も少量ですみ、多種疾患関連タンパク質すべてと同一相で同時反応させることから操作性にも優れている。結果として、多種の腫瘍関連タンパク質に対する自己抗体を同時に確認できることから、検出(陽性)率がより高率となり、多くの患者で癌の早期発見が期待できる。
一方、難治性疾患と自己抗体の関連性も報告されており、本実施形態は癌のみならず、難治性疾患や自己免疫疾患等,自己抗体の検出が有効な疾患にも非常に有用となる。
本実施形態の検出方法について、以下詳細に説明する。

【0012】
(エバネッセント波励起蛍光法)
例えばガラス基板に入射する励起光の入射角を大きくし、全反射を起こさせると、全反射面の逆側の界面からエバネッセント光と呼ばれる光が約数百nm滲みだす。エバネッセント波励起蛍光法とは、この原理を応用した蛍光検出方法であり、エバネッセント場に蛍光色素を置いて、エバネッセント光で蛍光を励起することにより、ガラス基板の表面付近に存在する蛍光色素だけが蛍光を発し、蛍光観察における背景光を劇的に減らすことができる検出方法である。

【0013】
1実施形態において、上述の検出方法は、生体試料中の疾患関連自己抗体を、基板上に固定された個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原と反応させる工程と、前記基板上に前記疾患関連抗原を介して捕捉された前記疾患関連自己抗体に結合する、蛍光物質で標識された二次抗体を反応させる工程と、前記基板上の蛍光物質をエバネッセント波により励起する工程と、前記基板上の蛍光物質から放出された蛍光を検出する工程と、を含む。
疾患関連抗原は自己成分のみならず、菌体成分やウイルス抗原等、外来性分子であってもよい。
個別多種の疾患関連抗原が固定された基板とは、1スポットに個別の疾患関連抗原をスポットしたものを多スポット用意した基板を意味する。
混合多種の疾患関連抗原が固定された基板とは、1スポットに複数種類の疾患関連抗原を混合してスポットしたものを多スポット用意した基板を意味する。係る基板として、例えば肺癌に関連がある抗原を複数種類混合したスポットや、同様に乳癌関連抗原あるいは大腸癌関連抗原など、癌腫ごとに特異的に発現する複数種類のタンパク質を抗原として、これら複数種類を混合してスポットした基板等が挙げられる。
個別多種及び混合多種の疾患関連抗原が固定された基板とは、例えば、1スポットに個別の疾患関連抗原をスポットしたものと1スポットに複数種類の疾患関連抗原を混合してスポットしたものを多スポット用意した基板を意味する。

【0014】
生体としては、ヒト、ヒト以外の哺乳動物等が挙げられる。生体試料としては、例えば血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、鼻孔液、唾液等が挙げられる。
例えば、患者検体量はELISAでは1測定項目(ひとつの疾患関連タンパク質に対する自己抗体測定)につき最適化希釈されたものが50~100μL必要であるが、本実施形態では135以上のスポット(項目)に対して100μLで測定可能である。使用標識二次抗体量も患者検体量と同様であり、本実施形態は、患者に優しく、トータルな原価コストもELISA法と比較し格段に安価な測定法である。

【0015】
疾患関連自己抗体とは、生体試料中に含まれる、疾患関連抗原に対する抗体を意味する。疾患関連自己抗体としては、グロブリンタイプ(クラス)が、IgG型、IgM型、IgA型、IgD型、IgE型の抗体が挙げられ、IgG及びIgA型では、サブクラス特異的な抗体も挙げられる。

【0016】
疾患関連自己抗体を検出するための蛍光標識二次抗体には、蛍光標識された抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgM抗体、抗ヒトIgA抗体、抗ヒトIgD抗体、抗ヒトIgE抗体が挙げられ、抗ヒトIgG及びIgA抗体では、それぞれのサブクラスに特異的に反応する抗体も挙げられる。

【0017】
二次抗体に標識される蛍光物質としては、Cy3、Cy5、FITC、AMCA、PerCP、R-フィコエリトリン(RPE)、アロフィコエリトリン(APC)、テキサスレッド、プリンストンレッド、量子ドット、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)等が挙げられる。

【0018】
(個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原が固定された基板と生体試料とを接触させて、基板上に前記蛍光物質で標識された二次抗体を用いて疾患関連自己抗体を捕捉する工程)
基板は、エバネッセント波励起蛍光法用のものに、疾患関連抗原を固定したものである。基板としては、例えばガラスやプラスチック等の化成品が挙げられる。疾患関連抗原としては、悪性腫瘍の他、例えば厚生労働省が難病(難治性疾患)と指定する、消化器系疾患(潰瘍性大腸炎など)、呼吸器系疾患(特発性間質性肺炎など)、循環器系疾患(特発性拡張型心筋症など)、腎・泌尿器系疾患(IgA腎症など)、血液系疾患(特発性血小板減少性紫斑病など)、免疫系疾患(全身性エリテマトーデスなど)、内分泌系疾患(クッシング症候群など)、代謝系疾患(アミロイドーシスなど)、神経・筋疾患(ギランバレー症候群など)、皮膚・結合組織疾患(膿疱性乾癬など)、骨・関節系疾患(特発性大腿骨頭壊死症など)等で自己抗体が産生されるタンパク質が挙げられる。疾患関連抗原には、これらのタンパク質(自己成分)の他、例えば菌体成分やウイルス抗原等、外来性分子も含まれる。

【0019】
自己抗体が産生される腫瘍関連抗原としては、例えばp53、HER2、CEA、Cyclin B1等、多くのタンパク質が挙げられる。疾患関連抗原は、生体試料から精製されたタンパク質であってもよく、大腸菌、酵母、昆虫細胞等の宿主細胞内、又は、大腸菌抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、小麦胚芽抽出液等の無細胞発現系で発現された組換えタンパク質であってもよい。

【0020】
腫瘍関連抗原を基板に固定する方法としては、物理吸着による方法、エポキシ基、スクシンイミド基やマレイミド基等の反応基を有する化学リンカーを使用する方法等が挙げられる。

【0021】
基板には、例えば、9×15の合計135スポットのタンパク質を固相化することが可能で、レイアウトは自由に設計できる。
固相に必要な疾患関連タンパク質の量は、本実施形態においては、例えば、1~10μg/mL濃度のものが1スポットに付き4nL であり、標準的なELISA法の1~10μg/mL 濃度のものが50~100μL必要であることと比較し、格段に少なくてすむ。つまり、原価コストが嵩む抗原タンパク質量を本実施形態では圧倒的に少なく抑えることができる。

【0022】
疾患関連抗原が固定された基板と生体試料とを接触させると、生体試料中に含まれる疾患関連自己抗体が基板上に固定された疾患関連抗原に結合する。これによって、疾患関連自己抗体を基板上に捕捉することができる。次に、その抗体に結合する蛍光標識二次抗体を反応させる。

【0023】
(前記蛍光物質をエバネッセント波により励起する工程)
続いて、疾患関連自己抗体を介して、基板上に固定された蛍光標識二次抗体の蛍光物質をエバネッセント波により励起する。この工程には、例えば、エバネッセント波励起蛍光法による蛍光検出装置(商品名:GlycoStation(商標)Reader 1200、グライコテクニカ社製)が使用できる。

【0024】
(蛍光物質から放出された蛍光を検出する工程)
続いて、蛍光物質から放出された蛍光を検出する。エバネッセント波励起蛍光法は、測定が終始溶液状態で行なわれる均一系アッセイ(Homogeneous assay)であるため、検出工程中に洗浄等のB/F分離(Bond/Free分離)操作が不要である。このため、例えば、結合力の弱い低親和性抗体の検出にも影響を与えない。B/F分離を組み入れた測定も可能であり、B/F分離で疾患関連抗原への結合に影響を受けないような中~高親和性抗体の場合には、一層の高感度化が可能となる。血清サンプル中の疾患関連自己抗体量は、それに結合する蛍光標識二次抗体量に比例するため、蛍光強度を数値化し、疾患関連自己抗体を定量することができる。なお、ELISA法等の、固相化された抗体等を用いて反応、洗浄が行なわれる検出方法は、不均一系アッセイ(Heterogeneous assay)と呼ばれる。

【0025】
1実施形態において、疾患関連自己抗体は、難治性疾患関連自己抗体でもよいし、腫瘍関連自己抗体でもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
また、疾患関連自己抗体としては疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体であることが好ましく、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体であることがより好ましい。
遺伝子等に異常がなく、翻訳後修飾を受けた疾患関連タンパク質としては、例えばリン酸化、アセチル化、メチル化、ミリストイル化、グリコシル化等の修飾タンパク質が挙げられる。

【0026】
(疾患関連抗原)
疾患関連抗原としては、難治性疾患関連タンパク質や腫瘍関連タンパク質が挙げられる。
腫瘍関連タンパク質は、がん遺伝子又はがん抑制遺伝子によってコードされるタンパク質であることが好ましい。
がん遺伝子としては、sis等の増殖因子をコードする遺伝子群;erbB、fms、ret等のレセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子群;fes等の非レセプター型チロシンキナーゼをコードする遺伝子群;ras等のGTP/GDP結合タンパク質をコードする遺伝子群;src、mos、raf等のセリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子群;myc、myb、fos、jun、erbA等の核内タンパク質をコードする遺伝子群;crk等のシグナル伝達アダプター分子をコードする遺伝子群;Bcr-Abl等の融合遺伝子が挙げられる。
更に、がん遺伝子として、Shc、Grb2、Sos、MEK、Rho、Rac遺伝子等のRas-MAPキナーゼ経路関連遺伝子;PLCγ、PKC等のホスホリパーゼCガンマ-プロテインキナーゼC経路関連遺伝子;PI3K、Akt、Bad等のPI3K-Akt経路関連遺伝子;JAK、STAT等のJAK-STAT経路関連遺伝子;GAP、p180、p62等のGAP系経路関連遺伝子が挙げられる。

【0027】
がん抑制遺伝子としては、RB、p53、WT1、NF1、APC、VHL、NF2、p16、p19、BRCA1、BRCA2、PTEN、Eカドヘリン遺伝子等が挙げられる。

【0028】
また、疾患関連抗原は、1種類の癌腫から抽出される複数の腫瘍関連タンパク質であってもよい。即ち、1実施形態において、上述の検出方法は、癌腫別診断用であってもよい。

【0029】
癌腫としては、皮膚癌、肺癌、大腸癌、胃癌、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌等が挙げられる。上述したがん遺伝子及びがん抑制遺伝子をはじめとして、癌腫特異的な遺伝子の発現/変異パターンが存在することが報告されている。そのため、癌腫ごとの遺伝子発現プロファイル等に基づいて、疾患関連抗原を選択することにより、疾患の検出率を向上させることができる。

【0030】
一例として、乳癌関連抗原としては、p53、ER(Estrogen Receptor)、PgR(Progesterone Receptor)、HER2、CEA(Carcinoembryonic antigen)、CYFRA(Cytokeratin 19-fragments)、CA15-3(Cancer Antigen 15-3)、IGFBP2(IGF binding protein2)、Top2(Topoisomerase II)、MUC1(Mucin-1)、CyclinB1、CyclinD1、HSP-27(Heat shock protein27)、HSP-60(Heat shock protein60)、HSP-90(Heat shock protein90)、GIPC-1(GAIP-interacting protein-1)、c-myc、c-myb、NY-ESO-1、BRCA1(breast cancer susceptibility gene1)、BRCA2(breast cancer susceptibility gene2)、Endostatin、Lipophilin、Fibulin、CathepsinD等が挙げられる。

【0031】
腫瘍関連タンパク質としては、既に腫瘍マーカーとして日常検査で測定されているタンパク質を選定することが好ましい。抗p53自己抗体以外でも、既知腫瘍マーカーに対する自己抗体が検出された意義は高く、抗p53自己抗体が一般的な腫瘍マーカーより早期に陽性となる事実を考慮すると、他の多くの既知腫瘍マーカーに対する自己抗体も、それら腫瘍マーカーが陽性となる以前の癌病期初期から産生されている可能性が高い。最適抗原を組み合わせることで、癌の早期発見率は格段に向上する。

【0032】
[生体試料中の疾患関連自己抗体を検出するためのキット]
1実施形態において、本発明は、エバネッセント波励起蛍光法を用いて、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を同一反応相にて同時に検出するためのキットであって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連タンパク質が同一反応相に固定された基板と、それら疾患関連タンパク質に対する自己抗体を認識する蛍光物質で標識された二次抗体とを備えた、キットを提供する。

【0033】
(抗疾患関連自己抗体に対する抗体)
上述したように、本キットにおける疾患関連自己抗体は、疾患関連タンパク質の少なくとも一部に対する抗体であってもよい。また、上述したように、本キットにおける疾患関連自己抗体は、野生型疾患関連タンパク質、変異型疾患関連タンパク質、および修飾を受けた疾患関連タンパク質からなる群から選ばれる、少なくとも一種に対する抗体であってもよい。また、上述したように、本キットにおける蛍光物質で標識された二次抗体は、グロブリンタイプ又はサブクラス特異的に反応するもものであってもよい。

【0034】
本実施形態に係るキットは、生体試料や抗疾患関連自己抗体に対する抗体を希釈するための緩衝液を更に含んでいてもよい。

【0035】
[抗疾患関連自己抗体検出用検出装置]
1実施形態において、本発明は、疾患関連自己抗体検出用検出装置であって、個別多種及び/又は混合多種の疾患関連抗原が固定された基板と、前記基板の表面にエバネッセント波を発生させる照射手段と、前記エバネッセント波により励起された蛍光物質から放出された蛍光を検出する検出手段と、を備える、検出装置を提供する。

【0036】
検出装置は、疾患関連自己抗体検出用であり、疾患関連抗原は、難治性疾患関連抗原でもよい。また、検出装置は、腫瘍関連自己抗体検出用であり、疾患関連抗原が、腫瘍関連抗原であってもよい。

【0037】
(疾患関連抗原が固定された基板)
本実施形態の検出装置において、疾患関連抗原が固定された基板の材質、固定される疾患関連抗原、固定方法等は、上述した基板と同様であってもよい。

【0038】
(基板の表面にエバネッセント波を発生させる照射手段)
基板の表面にエバネッセント波を発生させる照射手段(発生手段)としては、全反射によりエバネッセント波を発生させるものであればよい。このような照射手段として、具体的には、例えば、エバネッセント波励起蛍光法による蛍光検出装置(商品名:GlycoStation(商標)Reader 1200、グライコテクニカ社製)のエバネッセント波照射部を使用することができる。エバネッセント波の光源としては、レーザー、LED、水銀ランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。照射するエバネッセント波の波長は、光源やダイクロックミラー、フィルター等を変更することにより、変更可能であることが好ましい。

【0039】
(エバネッセント波により励起された蛍光物質から放出された蛍光を検出する検出手段)
エバネッセント波の発生(照射)により励起された蛍光物質から放出された蛍光を検出する検出手段としては、例えばCCDカメラが挙げられる。検出装置は、基板の蛍光画像を取得し、基板上の特定のスポットの蛍光強度を数値化するプログラムを備えていてもよい。このような検出手段として、具体的には、例えば、エバネッセント波励起蛍光法による蛍光検出装置(商品名:GlycoStation(商標)Reader 1200、グライコテクニカ社製)の蛍光検出部を使用することができる。

【0040】
本実施形態によれば、多種の疾患関連タンパク質に対する生体試料中の自己抗体を高感度に同時検出することで、これまで以上の、癌や難治性疾患等のより早期発見を可能とする技術を提供できる。
【実施例】
【0041】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
64人の乳癌患者を対象とし、エバネッセント波励起蛍光法でp53タンパク質を含む7種類の腫瘍関連タンパク質に対する自己抗体を検出し比較した。
【実施例】
【0043】
(p53タンパク質に対する自己抗体のELISA法による検出)
乳癌患者64人から血清サンプルを採取した。これらの血清サンプル中に存在する、p53タンパク質に対する自己抗体をELISA法により測定した。測定には、現在日常の臨床検査で使用されている測定キット(MESACUP anti-p53テスト、株式会社医学生物学研究所製)を使用した。野生型完全長p53タンパク質を固定化したプラスチックプレートのウェルに、検査対象の血清を添加して反応させ、ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG抗体でp53タンパク質に対する自己抗体を検出した。
【実施例】
【0044】
その結果、64サンプル中10サンプルでp53タンパク質に対する自己抗体が検出された。また、残りの54サンプルからはp53タンパク質に対する自己抗体が検出されなかった。
【実施例】
【0045】
(p53タンパク質を含む7種類のタンパク質に対する自己抗体のエバネッセント波励起蛍光法による検出)
上述したELISA法で検査対象としたものと同一の64人の血清サンプルについて、エバネッセント波励起蛍光法によりp53、ER、PgR、HER2、CEA、CYFRA、CA15-3に対する自己抗体を検出した。
【実施例】
【0046】
まず、エバネッセント波励起蛍光法による蛍光検出装置(商品名:GlycoStation(商標)Reader 1200、グライコテクニカ社製)用のガラス基板のウェルに、野生型完全長p53タンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;FLJ92943AAAF)、ERタンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;FLJ94220AAAN)、PgRタンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;100016179_F)、HER2タンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;FLJ02812AAAN、FLJ02812WAAN)、CEAタンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;93953AAAF)、CYFRA(CYTOKERATIN19FRAGMENT)タンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;FLJ93770AAAF)、CA15-3(MUC1)タンパク質(産業総合研究所、Entry clone ID;FLJ60927AAAN)の各々を10μg/mLの濃度で4nLずつスポット状に滴下し、基板上のエポシキ基と各タンパク質のアミノ基とを反応させ固定化した。続いて、ガラス基板を界面活性剤添加リン酸緩衝液で洗浄後、界面活性剤添加リン酸緩衝液にて10倍希釈した上述の血清サンプルを135スポットあたり100μLずつ添加し、室温で1時間反応させた。続いて、135スポットあたり100μLずつ、100倍希釈したCy3標識ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(Jackson社製、型番109-165-098)を添加し、室温で0.5時間反応させた。続いて、エバネッセント波励起蛍光法による蛍光検出装置(商品名:GlycoStation(商標)Reader 1200、グライコテクニカ社製)でCy3の蛍光を検出し、蛍光強度を数値化した。
2000RLU(相対蛍光単位)をカットオフ値とし、2000RLU以上の蛍光が検出されたサンプルを陽性、2000RLU未満の蛍光が検出されたサンプルを陰性と判断した。7種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時検出した結果を図1に示す。
【実施例】
【0047】
実施例において、乳癌患者で有効とされる抗p53自己抗体の陽性率はELISA法では15.6%(10/64)であったのに対し、図1に示すように、7種類のタンパク質のうち、いずれかの腫瘍関連自己抗体が陽性となった例の陽性率は45.3%(29/64)と多種腫瘍関連自己抗体の測定で、ELISA法による抗p53自己抗体のみの陽性率より、2.90倍(45.3/15.6)にも増加した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、p53タンパク質を含む7種類のタンパク質に対する自己抗体検出での実施例で判るように、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定可能な検出方法を提供することができる。また、本発明により、生体試料中の多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定するためのキット及び抗疾患関連自己抗体検出用検出装置を提供することができる。
癌や難治性疾患で自己抗体の測定意義は高い。疾患の早期発見に効率的な自己抗体を産生しやすい疾患関連タンパク質を吟味し、組み合わせて自己抗体を測定すれば、高い陽性率は強く期待できる。癌や難治性疾患で自己抗体が産生されるタンパク質は多く報告されている。多種の疾患関連タンパク質に対する自己抗体を同時に簡単に測定できる本願発明によって、疾患別自己抗体プロファイリング化が可能となれば、癌や難治性疾患の早期発見、治療効果の判定等に有用な情報が提供できる。

図面
【図1】
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