TOP > 国内特許検索 > タンパク質の保存方法 > 明細書

明細書 :タンパク質の保存方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-184030 (P2015-184030A)
公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
発明の名称または考案の名称 タンパク質の保存方法
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
C07K   1/00        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
FI G01N 1/28 J
C07K 1/00
G01N 27/62 V
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-058219 (P2014-058219)
出願日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発明者または考案者 【氏名】武森 信曉
【氏名】武森 文子
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100129757、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久彦
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
2G052
4H045
Fターム 2G041CA01
2G041FA12
2G052AA30
2G052AB18
2G052AD06
2G052AD26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045EA50
4H045GA45
要約 【課題】本発明は、タンパク質を固体状態で且つ常温で安定的に保存するための方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るタンパク質の保存方法は、上記タンパク質の存在下、アクリルアミドと特定のジスルフィド化合物との混合物を重合させることにより、上記タンパク質を含むアクリルアミドゲルを調製する工程、および、上記タンパク質を、上記アクリルアミドゲル中で保存する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
タンパク質を保存するための方法であって、
上記タンパク質の存在下、アクリルアミドと下記式(I)で表されるジスルフィド化合物との混合物を重合させることにより、上記タンパク質を含むアクリルアミドゲルを調製する工程、
【化1】
JP2015184030A_000005t.gif
[式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1-6アルキル基を示し、X1とX2はそれぞれ独立して酸素原子または窒素原子を示し、Y1とY2はそれぞれ独立してC1-6アルキレン基を示す]
および、上記タンパク質を、上記アクリルアミドゲル中で保存する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、上記アクリルアミドゲルを上記保存工程前に脱水する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記タンパク質を常温で保存する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記タンパク質を保存しつつ移動させる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、上記アクリルアミドゲルを還元処理することにより可溶化し、上記タンパク質を上記アクリルアミドゲルから取り出す工程を含む請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
水混和性有機溶媒を用いて上記アクリルアミドゲルを脱水する請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
上記タンパク質が質量分析に付されるべきものである請求項1~6に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、常温でもタンパク質を安定的に保存するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酵素などのタンパク質を含む試料を常温で放置すると、細菌や、試料に含まれるプロテアーゼなどにより分解することなどがある。よって、医療診断、食品検査、製薬研究、基礎生命科学研究などの技術分野においては、例えばタンパク質成分の分析に用いる生体試料は、プロテアーゼなどによるタンパク質成分の分解を回避するために、一般的にはプロテアーゼ阻害剤や各種タンパク質変性剤などを添加したのち、0℃以下の低温環境で保存したり輸送したりすることが行われている。
【0003】
しかし、長期間に及ぶ保存や輸送の際に低温環境を維持することは容易ではなく、僅かな量のタンパク質試料の保存や輸送のためにも多大な費用が必要となる。そこで、常温環境下におけるタンパク質の保存安定性を向上させるための方法が種々開発されている。
【0004】
例えば非特許文献1では、濾紙上で乾燥させた血液試料につき、質量分析によりタンパク質を解析した例が報告されている。
【0005】
また、特許文献1には、タンパク質を溶液状で保存するための溶液として、特定のペプチドを含む溶液が開示されている。特許文献2には、タンパク質溶液にグアニジン塩酸塩などを添加してタンパク質の二次構造を変化させることにより、その保存安定性を向上させる方法が開示されている。特許文献3には、試料中にイミノカルボン酸またはその塩を添加してヘムタンパク質の保存安定性を向上させる方法が開示されている。特許文献4には、酵素の安定化剤として、3個以上の単糖が結合したオリゴ糖が開示されている。特許文献5には、タンパク質を粘土鉱物組成物に吸着させることを特徴とするタンパク質の保存方法または搬送方法が開示されている。
【0006】
しかし上記技術では、タンパク質溶液に安定化剤が添加されており、未知のタンパク質の場合、かかる安定化剤がタンパク質の分析の妨げになるおそれがある。また、タンパク質溶液をプラスチックチューブに入れて長期間保存しておくと、タンパク質がプラスチックチューブの表面に不可逆的に付着してしまう現象が見られる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2012-92095号公報
【特許文献2】特開2011-147440号公報
【特許文献3】特開2009-97956号公報
【特許文献4】特開2004-317359号公報
【特許文献5】特開2003-289862号公報
【0008】

【非特許文献1】Andrew G.Chambersら,J.Am.Soc.Mass Spectrom.,24(9),pp.1338-1345(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、タンパク質試料の保存方法としては凍結保存が一般的であるが、長期に及ぶ保存や輸送には多大なコストがかかるという問題がある。
【0010】
また、タンパク質試料を濾紙上で乾燥する方法がある(非特許文献1)。しかし、濾紙上の乾燥試料は破損し易く、試料損失の可能性も極めて高い。
【0011】
さらに、タンパク質試料の溶液に安定化剤を添加してタンパク質の保存安定性を向上させるための技術も開発されている(特許文献1~5)。しかし、保存対象であるタンパク質が未知のものである場合、安定化剤がその分析の妨げになる可能性がある。例えば、質量分析など高感度な分析を用いて解析を行う場合、添加した安定化剤や界面活性剤などの夾雑物が分析の妨げになることがある。また、溶液状態の保存では、長距離の輸送が困難になる場合がある。
【0012】
そこで本発明は、タンパク質を固体状態で且つ常温で安定的に保存するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の架橋剤で架橋したポリアクリルアミドゲルを用いれば、タンパク質を固体状態で且つ常温で安定的に保存できることを見出して、本発明を完成した。
【0014】
以下、本発明を示す。
【0015】
[1] タンパク質を保存するための方法であって、
上記タンパク質の存在下、アクリルアミドと下記式(I)で表されるジスルフィド化合物との混合物を重合させることにより、上記タンパク質を含むアクリルアミドゲルを調製する工程、
【0016】
【化1】
JP2015184030A_000002t.gif

【0017】
[式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1-6アルキル基を示し、X1とX2はそれぞれ独立して酸素原子または窒素原子を示し、Y1とY2はそれぞれ独立してC1-6アルキレン基を示す]
および、上記タンパク質を、上記アクリルアミドゲル中で保存する工程を含むことを特徴とする方法。
【0018】
[2] さらに、上記アクリルアミドゲルを上記保存工程前に脱水する工程を含む上記[1]に記載の方法。上記アクリルアミドゲルを脱水しておけば、上記タンパク質をより一層安定的に保存することが可能になる。
【0019】
[3] 上記タンパク質を常温で保存する上記[1]または[2]に記載の方法。本発明方法によれば、タンパク質を常温で保存することができ、保存に要する手間やコストを抑制することが可能になる。
【0020】
[4] 上記タンパク質を保存しつつ移動させる上記[3]に記載の方法。
【0021】
[5] さらに、上記アクリルアミドゲルを還元処理することにより可溶化し、上記タンパク質を上記アクリルアミドゲルから取り出す工程を含む上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。本発明方法によれば、タンパク質を常温で安定的に保存できるだけでなく、保存後においてアクリルアミドゲルからタンパク質を容易に分離することができる。
【0022】
[6] 水混和性有機溶媒を用いて上記アクリルアミドゲルを脱水する上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
【0023】
[7] 上記タンパク質が質量分析に付されるべきものである上記[1]~[6]に記載の方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明方法によれば、タンパク質を固体状態で且つ常温で安定的に保存することができる。よって、溶液状態での保存とは異なり、例えばタンパク質試料を複数国間で長距離輸送するような場合にも便利である。また、常温で保存できることから、長時間の保存や長距離の輸送でも冷却が必要ないため、コストが顕著に抑制される。さらに、保存後にタンパク質を非常に容易に取り出すことが可能であり、また、安定化剤を用いないため、保存後において未知のタンパク質も良好に分析することができる。よって本発明は、タンパク質を含む試料やタンパク質自体の保存方法として、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明方法により保存した後のタンパク質と、新鮮なタンパク質との分析結果を比較するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明方法を工程毎に説明する。

【0027】
1. ゲルの調製工程
本工程では、保存対象であるタンパク質の存在下、アクリルアミドとジスルフィド化合物(I)との混合物を重合させることにより、上記タンパク質を含むアクリルアミドゲルを調製する。

【0028】
本発明方法で保存するタンパク質は、保存すべきものであれば特に制限されない。例えば、酵素などの精製タンパク質やタンパク質を含む試料を挙げることができる。タンパク質を含む試料としては、例えば、血清、血漿、尿、唾液、骨髄液、リンパ液などの生体試料などを挙げることができる。

【0029】
ジスルフィド化合物(I)は、下記式で表される。

【0030】
【化2】
JP2015184030A_000003t.gif

【0031】
[式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子またはC1-6アルキル基を示し、X1とX2はそれぞれ独立して酸素原子または窒素原子を示し、Y1とY2はそれぞれ独立してC1-6アルキレン基を示す]
本発明において「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、最も好ましくはメチルである。

【0032】
「C1-6アルキレン基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の二価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、s-ブチレン、t-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等である。好ましくはC1-4アルキレン基であり、より好ましくはC1-2アルキレン基であり、最も好ましくはエチレンである。

【0033】
1とR2、X1とX2、Y1とY2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、ジスルフィド化合物(I)の合成のし易さ等から同一であることが好ましい。

【0034】
ジスルフィド化合物(I)は、両端にアクリロイル基を有することから、ポリアクリルアミド鎖を架橋してゲル化することが可能である。その一方で、ジスルフィド結合を有することから、還元剤により容易に切断されるので、保存後に還元剤によりゲルを可溶化してタンパク質を取り出すことが可能である。

【0035】
ジスルフィド化合物(I)としては、例えば、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン(以下、「BAC」と略記する場合がある)を挙げることができる。BACは、以下の化学構造を有するものである。

【0036】
【化3】
JP2015184030A_000004t.gif

【0037】
重合反応は、一般的な電気泳動用ポリアクリルアミドゲルの製造条件に従って行えばよい。例えば、溶媒としては、一般的にトリス-塩酸緩衝液が用いられるが、保存対象であるタンパク質の安定性や溶解性を考慮した緩衝液を用いてもよい。また、タンパク質が溶解し難い場合には、界面活性剤を用いてもよい。さらに、保存対象であるタンパク質のジスルフィド結合を還元剤により事前に切断しておいてもよい。

【0038】
反応液中における各試薬の濃度は適宜調整すればよいが、例えば、タンパク質の濃度は0.05g/L以上、15g/L以下、アクリルアミドの濃度は10w/v%以上、50w/v%以下、ジスルフィド化合物(I)の濃度は0.05w/v%以上、5w/v%以下とすることができる。また、アクリルアミドに対するジスルフィド化合物(I)の割合は25質量%以上、50質量%以下とすることができる。当該割合が25質量%以上であれば、アクリルアミドを十分に架橋することができる。一方、当該割合が50質量%以下であれば、ゲルを構成するポリアクリルアミドの主鎖の分子量を確保することができ、十分な強度を有するゲルがより確実に得られる。

【0039】
重合反応は、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどの重合開始剤とテトラメチルエチレンジアミンなどの重合促進剤を適量加えることにより開始することができる。

【0040】
反応条件も適宜調整すればよいが、例えば、反応温度は常温から60℃以下程度とし、10分間以上、5時間以下程度反応させることができる。

【0041】
反応後、得られたゲルを公知の洗浄剤で洗浄することが好ましい。

【0042】
2. 乾燥工程
本工程では、上記工程で得られたゲルを乾燥することが好ましい。本工程の実施は任意であるが、乾燥することによりタンパク質の保存安定性が向上し、また、輸送時の利便性も改善される。

【0043】
乾燥手段は特に制限されず、例えば、得られたゲルを濾紙の上に載せて吸水させることが考えられる。しかし、この方法ではゲル内部の水分まで有効に除去することはできないため、次いで、加熱乾燥や減圧乾燥してもよい。

【0044】
その他、ゲルを簡便かつ有効に乾燥するために、ゲルを水混和性有機溶媒で洗浄したり或いは水混和性有機溶媒に浸漬するなどして脱水してもよい。ここで、水混和性有機溶媒とは、水と任意の割合で混合可能な有機溶媒をいい、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンを挙げることができる。

【0045】
3. 保存工程
本発明では、タンパク質を、上記で得られたアクリルアミドゲルに含有された状態で保存する。かかる状態で保存することにより、従来方法のように安定化剤を用いたり冷却することなく、タンパク質を常温で安定的に保存することが可能になる。例えば、本発明によりタンパク質を含む生体試料などを常温で簡便に保存しても、タンパク質は安定な状態に維持されるため、保存後のタンパク質試料も、保存前のタンパク質試料と同様に、質量分析装置など高感度な分析装置で分析することが可能である。

【0046】
なお、本発明における「保存」には、上記ゲルやタンパク質に対する特別な処理が行われない限り、移動を伴う保存、即ち、輸送や搬送も含まれるものとする。

【0047】
本発明において「常温」とは、特に温度制御しない場合の温度をいい、具体的な温度をいうものではない。しかし、例えば、日本工業規格では5℃以上、35℃以下を示し、日本薬局法では15℃以上、25℃以下をいう。

【0048】
本発明によれば、タンパク質を常温で保存することができるが、保存が長期に及ぶ場合などでは、高温多湿の環境は避け、遮光し、脱酸素剤を用いるといった条件のうち1以上で保存することが好ましい。

【0049】
保存期間は特に制限されず、必要な期間保存すればよいが、例えば、5日以上、30年以下とすることができる。

【0050】
4. ゲル内消化
保存したタンパク質を同定すべき場合には、任意ではあるが、上記保存工程の前または後において、ペプチドマスマッピングなどのために、トリプシンなどの部位特異的エンドプロテアーゼなどを用いてタンパク質をゲル内消化してもよい。具体的には、プロテアーゼを含む緩衝液などにゲルを入れ、用いるプロテアーゼに適した温度、通常は20℃以上、40℃以下でゲル内消化を行ってもよい。

【0051】
5. タンパク質の取り出し工程
タンパク質を保存した後は、ジスルフィド化合物(I)による架橋鎖を還元剤で切断してゲルを可溶化することにより、タンパク質をゲルから容易に取り出すことができる。

【0052】
具体的には、例えばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノールなどの還元剤の水溶液にゲルを加えて撹拌することにより、ゲルは容易に溶解する。かかる反応は常温で十分に進行し、撹拌時間は1分間以上、30分間以下程度でよい。なお、種々の還元剤の中でも、本発明では、ジスルフィド架橋ポリアクリルアミドゲルに対する高い分解効率やタンパク質の高回収率から、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンを最も好適に用いる。

【0053】
反応後、ポリアクリルアミドは水系溶媒中に溶解しているが、例えば、アセトニトリルなどの水混和性有機溶媒を加えた上で遠心分離することにより、沈殿させることができる。水混和性有機溶媒の濃度を調整することにより、タンパク質は溶解したままでポリアクリルアミドのみ不溶化することができるので、タンパク質とポリアクリルアミドを容易に分離することが可能である。また、界面活性剤など分析に悪影響を与えるような夾雑物がゲル中に含まれていても、ゲルの分離後、かかる夾雑物とタンパク質を分離することは容易である。

【0054】
得られた溶液中のタンパク質は、クロマトグラフィなどでさらに精製してもよい。得られるタンパク質は、プロテアーゼや雑菌などの影響もなく保存工程前のタンパク質と基本的に同じものであり、保存前のタンパク質と同様に分析や使用することが可能であり得る。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0056】
参考例1
(1) タンパク質試料を含むアクリルアミドゲルの調製
インフォームド・コンセントを得た3名の健常ドナーから、血清サンプルを得た。マルチプルアフィニティ除去システム(Agilent Technologies社製「MARS Human-14」)を用い、ヒト血清に含まれる主要な14のタンパク質を除去し、他のタンパク質を沈殿させ、使用するまで-80℃で保存しておいた。
【実施例】
【0057】
当該タンパク質(5μg)をSDS溶解バッファー(5μL)に再溶解し、200mMジチオトレイトール(1μL)で還元した後、1.2Mアクリルアミド(1μL)でアルキル化した。当該還元的アルキル化タンパク質溶液(7μL)を、0.2mL容チューブ中、30%/0.8%(w/v)アクリルアミド/N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC)の溶液(5μL)と混合した。当該混合液に1.5%ペルオキソ二硫酸アンモニウム(1μL)とテトラメチルエチレンジアミン(0.5μL)を加えて重合した。得られたポリアクリルアミドゲルを2mLの洗浄液A(50v/v%メタノール+5v/v%酢酸)で30分間ずつ2回洗浄し、さらに2mLの洗浄液B(50mM炭酸水素アンモニウム+50v/v%アセトニトリル)で30分間洗浄した。次いで、ゲルをアセトニトリル(200μL)で15分間脱水した後、室温で15分間風乾した。
【実施例】
【0058】
(2) ゲル内消化
100mM炭酸水素アンモニウム溶液(20μL)中、トリプシン(0.1μg)とエンドプロテアーゼLys-C(0.1μg)を使い、37℃でゲル内消化を行った。次いで、ゲルに25mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン溶液(40μL)を加えて10分間激しく撹拌することにより、ゲルを還元して溶解した。得られた溶液をアセトニトリル(60μL)と混合し、30秒間撹拌した。当該溶液を15,000×gで3分間遠心分離し、上清を別のプラスチックチューブに移し、遠心濃縮機で濃縮した。固相抽出カラムを使い、濃縮液に含まれるペプチドを精製した。
【実施例】
【0059】
(3) 質量分析
トリプル四重極/リニアハイブリッドLC/MS/MSシステム(AB SCIEX社製「QTRAP5500」)を用い、上記ペプチドを分析した。ペプチドの分離には、C18逆相カラム(75μm ID×15cm)を用いた。Selected reaction monitering(SRM)データの定量解析には、Skyline software(B.MacLeanら,Bioinformatics,26,pp.966-968(2010))を用いた。
【実施例】
【0060】
実施例1
上記参考例1(1)で調製したBACアクリルアミドゲルを、アセトニトリルを用いて完全に脱水した後、プラスチックチューブに入れて20℃で1週間保存した。次いで、上記参考例1(2)と同様に、トリプシンとエンドプロテアーゼLys-Cを含む溶液にゲルを加えてゲル内消化を行い、上記参考例1(3)と同様にしてSRM定量解析を行った。参考例1の結果と実施例1の結果を比較するためのグラフを図1に示す。
【実施例】
【0061】
通常のタンパク質試料は、安定性や状態にもよるが、吸着防止処理をした特殊容器内において数度以下、場合によっては-30~-80℃で保存する必要がある。それに対して、図1に示す結果のとおり、BACアクリルアミドゲル中で乾燥保存したタンパク質試料は、20℃で1週間保存した場合であっても、保存前と同様の質量分析結果を示し、保存前とほとんど変わらない状態にあることが明らかとなった。
図面
【図1】
0