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明細書 :アミノアシルヌクレオチド化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-172013 (P2015-172013A)
公開日 平成27年10月1日(2015.10.1)
発明の名称または考案の名称 アミノアシルヌクレオチド化合物の製造方法
国際特許分類 C07H  19/20        (2006.01)
FI C07H 19/20
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-048194 (P2014-048194)
出願日 平成26年3月11日(2014.3.11)
発明者または考案者 【氏名】本家 孝一
【氏名】小槻 日吉三
【氏名】片岡 正典
【氏名】福井 千春
出願人 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100129757、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久彦
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
Fターム 4C057AA18
4C057BB01
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC01
4C057DD01
4C057LL17
4C057LL19
4C057LL20
4C057LL21
4C057LL29
要約 【課題】本発明は、特定のアミノアシルヌクレオチド化合物を効率良く製造するための方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアミノアシルヌクレオチド化合物の製造方法は、トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤の存在下、特定のヌクレオチド化合物とアミノ酸化合物とを縮合させる工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I1)または(I2)で表されるアミノアシルヌクレオチド化合物を製造するための方法であって、
【化1】
JP2015172013A_000007t.gif
[式中、
1~R3は、独立して水素原子またはリン酸基の保護基を示し;
4は、水素原子、水酸基、保護水酸基、C1-6アルコキシ基、2-(C1-6アルコキシ)エトキシ基またはハロゲン原子を示し;
1およびB2は、独立して下記式で表される何れかの核酸塩基基:
【化2】
JP2015172013A_000008t.gif
[式中、R7~R13は、独立して水素原子またはアミノ基の保護基を示す]を示し;
5は下記式(II)で表されるアミノ酸基を示し且つR6は水素原子を示すか、或いは、R5は水素原子を示し且つR6は下記式(II)で表されるアミノ酸基を示す:
【化3】
JP2015172013A_000009t.gif
[式中、
14は、水素原子またはアミノ基の保護基を示し;
15は、アミノ酸側鎖、または、水酸基もしくはアミノ基を介して糖が結合しているセリン側鎖、トレオニン側鎖、アスパラギン側鎖、チロシン側鎖もしくはグルタミン側鎖を示す]]
トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤の存在下、下記式(III1)または(III2)で表されるヌクレオチド化合物と下記式(IV)で表されるアミノ酸化合物とを縮合させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化4】
JP2015172013A_000010t.gif
[式中の基は上記と同義を示す]
【請求項2】
上記トリアジン系縮合剤をヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して2倍モル以上、10倍モル以下用いる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記オキシム系活性化剤をヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して0.5倍モル以上、5倍モル以下用いる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記トリアジン系縮合剤として4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライドを用いる請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記オキシム系活性化剤として1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアミノアシルヌクレオチド化合物を効率良く製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、特定のアミノ酸の一部に糖鎖が結合しているタンパク質の総称であり、様々な機能を有し、生体内でも重要な役割を担っている。
【0003】
例えば、細胞膜に存在するタンパク質や細胞から分泌されるタンパク質の多くは、その構造中に糖鎖を有する糖タンパク質であり、生体内に存在するタンパク質の60~70%程度は糖タンパク質であるといわれている。また、細胞表面に発現した糖タンパク質の糖鎖は、生体内の他の細胞との接着に関与するのみならず、細菌やウィルスが細胞に接着する際のリガンドとなったり、細胞間の情報伝達に重要な役割を果たす場合もある。さらに、糖鎖によりタンパク質が安定化したり、高親水性の糖鎖を有する糖タンパク質が組織を保護するといった作用も有する。また、がん化した細胞では、正常細胞に比べて糖タンパク質の糖鎖構造に違いが生じる。その他、生理活性を有する糖タンパク質では、糖鎖によりその活性が制御されている。例えば、赤血球の産生促進作用を有する糖タンパク質であるエリスロポエチンは、その糖鎖末端のシアル酸が欠如したのみで血中半減期が減少し、活性をほとんど示さなくなってしまう。
【0004】
上記のとおり、様々な作用を有し、また、生体機能の解明や新薬開発の鍵となり得る糖タンパク質であるが、近年における遺伝子工学の目覚しい発展にもかかわらず、その研究は十分に進んでいないのが現状である。その理由として、糖タンパク質の活性などは、その糖鎖構造が僅かに異なるのみで影響を受ける一方で、糖タンパク質の人工的な合成が非常に難しいことが挙げられる。
【0005】
例えば、ヒトのサイトカインや抗体などのタンパク質を製造する手段として、これらの遺伝子をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に組み込む方法が知られている。しかし、この方法で得られる糖タンパク質の糖鎖構造は不均一であり、活性が十分でないのみならず、体内で免疫応答反応を引き起こす場合もある。
【0006】
そこで、非特許文献1の方法では、有機合成により糖ペプチドを合成し、それらを連結して糖タンパク質を合成している。この方法により、生理活性を有するエリスロポエチンが合成されている。しかし、糖タンパク質を製造するに当たっては、特定のアミノ酸の側鎖に特定の糖鎖を結合させなければならないため、この方法には大変な手間や時間がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、非特許文献2のとおり、無細胞翻訳システムを用いることが考えられる。具体的には、当該システムでは、終止コドンの1つであるUAGコドンをはじめとする非コードコドンへ特異的に結合するものであり且つ非天然アミノ酸が結合したtRNAを調製する。また、当該非天然アミノ酸を導入したい位置に上記コドンを組み込んだmRNAを調製する。これらを用いてペプチド合成を行うことにより、所望の位置に非天然アミノ酸が導入されたペプチドを得ることができる。非特許文献2では、非天然アミノ酸として、β-水酸基を介してグルコースなどが導入されたセリンが、リボースの3’位に結合したリン酸-デオキシシトシン-リン酸-アデノシン(pdCpA)が合成されている。当該化合物が結合したtRNAを用い、無細胞翻訳システムでペプチドを合成すれば、所望の位置に特定の糖鎖を有する糖タンパク質が得られる可能性がある。
【0008】
上記無細胞翻訳システムでは、糖タンパク質に限らず、リボースの2’位または3’位に所望のアミノ酸が結合した化合物が必要である。しかし、その原因は必ずしも明らかではないが、ヌクレオチドの2’位または3’位の水酸基とアミノ酸からアミノアシル化合物を得る反応の収率は非常に低く、当該化合物が非常に高価なものとなってしまっているという問題がある。
【0009】
例えば非特許文献3には、グリシンのカルボキシ基をシアノメチル基により活性化してpdCpAに結合させた実験例が開示されているが、全体の収率は30%程度である。また、非特許文献4には、1,1’-カルボニルジイミダゾールを用いてpdCpAとアミノ酸を縮合した例が開示されているが、収率などは全く記載されておらず、また、pdCpAに対して約11倍モルものアミノ酸が用いられている。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】Y.Kajiharaら,Angew.Chem.Int.Ed.,48,pp.9557-9560(2009)
【非特許文献2】M.Hechtら,Carbohydrate Research,330,pp.149-164(2001)
【非特許文献3】Michiel Lodderら,Methods,36,pp.245-251(2005)
【非特許文献4】Takayoshi Watanabeら,Journal of Bioschience and Bioengineering,105(3),pp.211-215(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、無細胞翻訳システムでペプチドを合成する方法は確立しているが、当該システムで必要なアミノアシルヌクレオチド化合物の合成収率は非常に低く、また、pdCpAに対して大過剰量のアミノ酸を必要とすることから、当該システムの普及の足枷となっている。
【0012】
そこで本発明は、特定のアミノアシルヌクレオチド化合物を効率良く製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、縮合剤としてトリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤とを組み合わせて用いることにより、一方の原料化合物を大過剰用いなくても、特定のアミノアシルヌクレオチド化合物の合成収率が顕著に向上することを見出して、本発明を完成した。
【0014】
以下、本発明を示す。
【0015】
[1] 下記式(I1)または(I2)で表されるアミノアシルヌクレオチド化合物を製造するための方法であって、
【0016】
【化1】
JP2015172013A_000002t.gif

【0017】
[式中、
1~R3は、独立して水素原子またはリン酸基の保護基を示し;
4は、水素原子、水酸基、保護水酸基、C1-6アルコキシ基、2-(C1-6アルコキシ)エトキシ基またはハロゲン原子を示し;
1およびB2は、独立して下記式で表される何れかの核酸塩基基:
【0018】
【化2】
JP2015172013A_000003t.gif

【0019】
[式中、R7~R13は、独立して水素原子またはアミノ基の保護基を示す]を示し;
5は下記式(II)で表されるアミノ酸基を示し且つR6は水素原子を示すか、或いは、R5は水素原子を示し且つR6は下記式(II)で表されるアミノ酸基を示す:
【0020】
【化3】
JP2015172013A_000004t.gif

【0021】
[式中、
14は、水素原子またはアミノ基の保護基を示し;
15は、アミノ酸側鎖、または、水酸基もしくはアミノ基を介して糖が結合しているセリン側鎖、トレオニン側鎖、アスパラギン側鎖、チロシン側鎖もしくはグルタミン側鎖を示す]]
トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤の存在下、下記式(III1)または(III2)で表されるヌクレオチド化合物と下記式(IV)で表されるアミノ酸化合物とを縮合させる工程を含むことを特徴とする方法。
【0022】
【化4】
JP2015172013A_000005t.gif
[式中の基は上記と同義を示す]
【0023】
[2] 上記トリアジン系縮合剤をヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して2倍モル以上、10倍モル以下用いる上記[1]に記載の方法。
【0024】
[3] 上記オキシム系活性化剤をヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して0.5倍モル以上、5倍モル以下用いる上記[1]または[2]に記載の方法。
【0025】
[4] 上記トリアジン系縮合剤として4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライドを用いる上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【0026】
[5] 上記オキシム系活性化剤として1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いる上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0027】
無細胞翻訳システムによるペプチド合成では、目的のアミノ酸が結合したアミノアシルヌクレオチド化合物が必要となるが、従来方法ではおそらく立体障害などのため、原料アミノ酸を大過剰に用いても収率が低く、当該アミノアシルヌクレオチド化合物は非常に高価であった。
【0028】
それに対して本発明によれば、特定の縮合剤と縮合反応用添加剤との組み合わせを用いることにより、一方の原料化合物を大過剰用いなくても良好な収率で上記アミノアシルヌクレオチド化合物を合成することが可能になる。よって本発明は、無細胞翻訳システムによるペプチド合成をより簡便に一般的なものとすることができるものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、アミノアシルヌクレオチド化合物(I1)または(I2)を、トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤の存在下、当該アミノアシルヌクレオチド化合物(I1)または(I2)に対応する原料化合物であるヌクレオチド化合物(III1)または(III2)とアミノ酸化合物(IV)とを縮合させることにより製造することができる。

【0030】
ヌクレオチド化合物(III1)または(III2)は、当業者であれば、公知の核酸製造法や公知方法の改良方法に基づいて合成することができる。

【0031】
なお、本工程に加え、本工程以前または以降の何れの工程においても、適時、各保護基を各反応に適したものに変更してもよいものとする。適切な保護基と保護反応および脱保護反応は、当業者であれば公知方法から適宜選択することができる。例えば、T.W.Green,P.G.M.Wuts,“PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS”,JOHN WILEY & SONS,Inc.や、Beaucage,S.ら,Tetrahedron,1992,48,pp.2223-2311を参照すればよい。

【0032】
従来方法では、一般的に、反応の平衡を傾かせるためヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対してアミノ酸化合物(IV)を大過剰用いざるをえなかった。しかし本発明では、アミノ酸化合物(IV)を大過剰用いる必要はない。例えば、ヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して、アミノ酸化合物(IV)を0.8倍モル以上、2倍モル以下用いることができる。当該割合としては、1倍モル以上が好ましく、また、1.8倍モル以下が好ましく、1.5倍モル以下がより好ましく、1.2モル倍以下がさらに好ましい。

【0033】
本発明方法では、トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤との組み合わせを用いる。トリアジン系縮合剤としては、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウム ヘキサフルオロホスフェート(COMU)を挙げることができる。

【0034】
オキシム系活性化剤は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、エチル (ヒドロキシイミノ)シアノアセタート(Oxyma)を挙げることができる。

【0035】
トリアジン系縮合剤とオキシム系活性化剤の使用量は適宜調整すればよく、具体的には予備実験などで決定すればよいが、例えば、トリアジン系縮合剤は原料化合物であるヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して1倍モル以上、20倍モル以下用いることができる。当該割合としては、2倍モル以上が好ましく、3倍モル以上がより好ましく、4倍モル以上がさらに好ましく、また、10倍モル以下が好ましく、8倍モル以下がより好ましく、6倍モル以下がさらに好ましい。オキシム系活性化剤は同じくヌクレオチド化合物(III1)または(III2)に対して0.2倍モル以上、10倍モル以下用いることができる。当該割合としては、0.5倍モル以上が好ましく、1倍モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上がさらに好ましく、また、5倍モル以下が好ましく、4倍モル以下がより好ましく、3倍モル以下がさらに好ましい。

【0036】
本工程は、通常、溶媒中で実施する。使用できる溶媒としては、各化合物を適度に溶解することができ且つ反応を阻害しないものであれば特に制限されず、適宜選択すればよい。例えば、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;ジクロロメタンやジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;1,4-ジオキサンやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ピリジンなどのピリジン系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;これら2以上の混合溶媒を挙げることができる。なお、本工程では脱水縮合反応を行うので、溶媒は事前に乾燥しておくことが好ましい。また、溶媒の使用量は、各化合物を溶解できる範囲で適宜調整すればよい。

【0037】
但し、反応液は塩基性に維持する必要がある。よって、例えば塩基性であるトリアジン系縮合剤よりも酸性のオキシム系活性化剤を多く用いる場合には、反応液を塩基性に保つべく、リン酸緩衝液や酢酸緩衝液など、pH8以上、11以下程度の塩基性緩衝液を反応液に添加することが好ましい。

【0038】
反応温度は適宜調整すればよいが、通常、10℃以上、80℃未満とすることができる。また、反応時間も適宜調整すればよく、例えば、ヌクレオチド化合物(III1)または(III2)とアミノ酸化合物(IV)のうち使用量の少ない方が反応液中から検出されなくなるまでとしたり、或いは予備実験などで決定することができる。通常は、1時間以上、10時間以下程度とすることができる。

【0039】
反応終了後は、一般的な後処理を行えばよい。例えば、溶媒を減圧留去した後、クロマトグラフィなどで精製すればよい。なお、反応後、水が存在し且つ塩基性状態であると目的化合物であるアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)が分解するおそれがある。そのような場合には、後処理中に酸性緩衝液を加え、全体の液性を酸性に維持することが好ましい。

【0040】
本発明で製造されるアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)は、例えば、無細胞翻訳システムを用いたペプチド合成において、所望のアミノ酸を導入するために用いることができる。また、水酸基またはアミノ基を介して糖が結合しているセリン、トレオニン、アスパラギン、チロシンまたはグルタミンを結合させたアミノアシルヌクレオチド化合物は、当該糖部分に、例えばエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼなどを用いて所望の糖鎖を結合させた上で無細胞翻訳システムによりペプチドを合成したり、或いは、本発明に係るアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)を使って上記セリン等を含むペプチドを合成した上で、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼなどを用いて、糖部分に所望の糖鎖を結合させることもでき得る。なお、無細胞翻訳システムでは、通常、アミノアシルヌクレオチド化合物(I1)のようなジヌクレオチドが用いられるが、最近、アミノアシルヌクレオチド化合物(I2)のようなモノヌクレオチドを用いる方法も開発されている。

【0041】
本発明で製造されるアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)において、R1~R3は、独立して水素原子またはリン酸基の保護基を示す。リン酸基の保護基としては、例えば、C1-6アルキル基などのアルキル系リン酸保護基;β-シアノエチル基などの置換アルキル系リン酸保護基;フェニルアミノ基などのアミド系リン酸保護基;フェニルチオ基などのチオエステル系リン酸保護基;ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ニトロベンジル基などのベンジル系保護基;フェニル基やp-(メチルメルカプト)フェニル基などのフェニル系保護基などを挙げることができる。好適には、核酸誘導体の合成で汎用されるβ-シアノエチル基が好ましい。

【0042】
4は、水素原子、水酸基、保護水酸基、C1-6アルコキシ基、2-(C1-6アルコキシ)エトキシ基またはハロゲン原子を示す。保護水酸基は、保護基で保護された水酸基を意味し、水酸基の保護基としては、例えば、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、o-またはp-ニトロベンジル基、p-ハロベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基などのベンジル系保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル系保護基;アセチル基やベンゾイル基などのアシル系保護基;メトキシメチル基、p-メトキシベンジルオキシメチル基、t-ブトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基などのアルコキシメチル系保護基などを挙げることができる。「2-(C1-6アルコキシ)エトキシ基」は、エトキシ基の2位にC1-6アルコキシ基が置換した基をいう。例えば2-メトキシエトキシ基は、CH3OCH2CH2O-の構造を有する。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。R4のハロゲン原子としては、フッ素原子が好適である。

【0043】
1およびB2は、独立して、アデニル基、グアニル基、ウラシル基、チミニル基、シトシニル基、ヒポキサンチニル基から選択される核酸塩基基を示す。これら核酸塩基基中のアミノ基は、保護されていてもよい。当該保護基としては、例えば、ベンジル基やジ(4-メトキシフェニル)メチル基などのベンジル系保護基;アリル基などのアリル系保護基;メチルカルバメート基、エチルカルバメート基、9-フルオレニルメチルカルバメート基、t-ブチルカルバメート基などのカルバメート系保護基;アセチル基、ベンゾイル基、イソプロピルカルボニル基、フェノキシアセチル基などのアシル系保護基などを挙げることができる。なお、核酸塩基基中の-NHR7基などにおいては、保護基であるR7等は、例えば、ジメチルアミノメチレン基、ベンジリデン基、ジフェニルメチレン基などのイミン系保護基や、環状保護基など、-N=R7等の形でアミノ基を保護するものであってもよいものとする。

【0044】
なお、R4が水素原子、B1がシトシニル基であり且つB2がアデニル基であるアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)は、既存の無細胞翻訳システムで用いられるtRNAで非天然アミノ酸の結合部分として有用である。

【0045】
5とR6は、一方が水素原子であり、他方がアミノ酸基(II)である。なお、アミノ酸基(II)が2’位に結合している化合物と3’位に結合している化合物とは等価であり、溶液中では遷移状態を経て互いに平衡である。

【0046】
14はアミノ基の保護基を示す。アミノ基の保護基としては、核酸塩基基中のアミノ基の保護基と同様のものを例示することができる。

【0047】
15は、アミノ酸側鎖、または、水酸基もしくはアミノ基を介して糖が結合しているセリン側鎖、トレオニン側鎖、アスパラギン側鎖、チロシン側鎖もしくはグルタミン側鎖を示す。アミノ酸側鎖がカルボキシ基などの活性基を有する場合には、当該活性基は保護されていてもよい。また、プロリンの場合には、R14とR15が結合されてピロリジン環が形成されていてもよいものとする。また、セリン側鎖に結合している糖としては、例えば、自然界に存在する多くの糖タンパク質の糖鎖の根本部に相当するN-アセチルグルコサミンを挙げることができる。

【0048】
本発明に係るアミノアシルヌクレオチド化合物(I1)および(I2)は、塩であってもよい。当該塩としては、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ピリジニウム塩などの第四級アンモニウム塩;アンモニウム塩;ジアザビシクロウンデセニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩など、その他の1~3級アンモニウム塩;塩化物塩や臭化物塩などのハロゲン化物塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0050】
実施例1
アミノ酸誘導体であるN-Boc-Phe(50μmol)、縮合剤として4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)(250μmol)、および、縮合反応用添加剤として1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(100μmol)を乾燥DMF(500μL)に溶解した。別途、リン酸-デオキシシトシン-リン酸-アデノシン(pdCpA)(50μmol)を乾燥DMF(500μL)に溶解した。当該ヌクレオシド溶液を上記アミノ酸溶液に加え、室温で5時間攪拌した。反応液を下記条件のHPLCで分析し、得られたチャートから、目的化合物であるアミノアシルヌクレオチド化合物の収率を求めた。
HPLC条件
カラム: π-NAPカラム(ナカライテスク社製,φ4.6mm×250mm)
溶離液: 酢酸アンモニウム水溶液:アセトニトリル=70:30→20:80
【実施例】
【0051】
結果を表1に示す。なお、表1中の数字は、用いたアミノ酸1モルに対する縮合剤と縮合反応用添加剤の相対的モル数を示す。
【実施例】
【0052】
【表1】
JP2015172013A_000006t.gif
【実施例】
【0053】
表1に示す結果のとおり、DMT-MMとHOBtとの組み合わせを用いることによって、ヌクレオチドとアミノ酸を等モル用いても、良好な収率でアミノアシルヌクレオチド化合物が得られることが明らかとなった。